説明

眼精疲労緩和装置、及び眼精疲労緩和方法

【課題】より適切にユーザの眼を保湿する眼精疲労緩和装置、及び眼精疲労緩和方法を提供すること。
【解決手段】ユーザの眼精疲労を検出した場合に、ユーザの眼100に向けて加湿空気を吹き出す眼精疲労緩和装置において、加湿空気を吹き出す吹出口4とユーザの眼100との間の距離を測定する距離測定手段32と、距離測定手段32による測定結果に基づいて吹出口4から吹き出される加湿空気の状態を調節する空調手段34と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの眼精疲労を検出した場合に、ユーザの眼に向けて加湿空気を吹き出す眼精疲労緩和装置、及び眼精疲労緩和方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザの眼精疲労を検出した場合に、ユーザの眼に向けて加湿空気を吹き出す眼精疲労緩和装置として、ユーザの眼を撮影した画像を画像処理して眼の状態を判定し、その判定結果に応じて加湿空気を吹き出すものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この眼精疲労緩和装置では、ユーザの眼が乾く虞があるか乾いている場合に、加湿空気がユーザの眼に向けて吹き出される。これにより、眼の乾燥を防いだり、眼の乾燥を解消したりすることができる。その結果、眼の乾きに近因する不快感や疲れを解消することができる。また、この眼精疲労緩和装置では、車室内の温度及び湿度に基づいて吹出口から吹き出される加湿空気の温度や湿度を調節する。これにより、適切に眼を保湿することができる。
【特許文献1】特開2004−189082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の眼精疲労緩和装置では、吹出口付近での加湿空気の風速が弱過ぎるとユーザの眼に加湿空気が十分に届かない。一方、吹出口付近での加湿空気の風速が強過ぎるとユーザの眼が乾燥する。また、吹出口付近での加湿空気の湿度が高過ぎると窓ガラスが曇ったり、効率的に眼精疲労を緩和できなくなったりする。一方、吹出口付近での加湿空気の湿度が低過ぎると眼精疲労の緩和効果が低い。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、より適切にユーザの眼を保湿する眼精疲労緩和装置、及び眼精疲労緩和方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、第1の発明は、ユーザの眼精疲労を検出した場合に、前記ユーザの眼に向けて加湿空気を吹き出す眼精疲労緩和装置において、
前記加湿空気を吹き出す吹出口と前記ユーザの眼との間の距離を測定する距離測定手段と、
前記距離測定手段による測定結果に基づいて前記吹出口から吹き出される加湿空気の状態を調節する空調手段と、
を備える。
【0006】
第2の発明は、第1の発明に係る眼精疲労緩和装置であって、前記空調手段は、前記距離測定手段による測定結果に基づいて前記吹出口から吹き出される加湿空気の湿度及び/又は風速を調節する。
【0007】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る眼精疲労緩和装置であって、前記空調手段は、前記距離測定手段により測定された前記距離が長くなるほど、前記吹出口から吹き出される加湿空気の湿度が高くなるように調節する。
【0008】
第4の発明は、第1〜第3いずれか1つの発明に係る眼精疲労緩和装置であって、前記空調手段は、前記距離測定手段により測定された前記距離が長くなるほど、前記吹出口から吹き出される加湿空気の風速が高くなるように調節する。
【0009】
第5の発明は、ユーザの眼精疲労を検出した場合に、前記ユーザの眼に向けて加湿空気を吹き出す眼精疲労緩和方法において、
前記加湿空気を吹き出す吹出口と前記ユーザの眼との間の距離を測定する距離測定ステップと、
前記距離測定ステップによる測定結果に基づいて前記吹出口から吹き出される加湿空気の状態を調節する空調ステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より適切にユーザの眼を保湿する眼精疲労緩和装置、及び眼精疲労緩和方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0012】
図1は、本発明の眼精疲労緩和装置の構成の一例を示す機能ブロック図である。図2は、眼精疲労緩和装置の車両搭載状態の一例を示す概略図であり、(a)は側面図、(b)は車室内図である。
【0013】
眼精疲労緩和装置は、ユーザの眼精疲労を検出した場合に、ユーザの眼に向けて加湿空気を吹き出すものである。例えば、眼精疲労緩和装置は、加湿器10と、送風ファン20と、制御部30とを備える。以下、各構成について詳説していく。
【0014】
加湿器10は、吸入口2から吸入された乾燥空気を加湿するものである。例えば、加湿器10は、図1に示すように、吸入口2と吹出口4とを連通するダクト6内に配置され、水を貯留する水タンク12と、水タンク12内に配設され超音波を発生する振動子14とを含み構成される。この加湿器10は、振動子14により水タンク12内の水を振動させて、水面から霧を発生させる。発生した霧は、吸入口2から吸入された乾燥空気に触れて、蒸発、吸収される。これにより、吸入口2から吸入された乾燥空気が加湿される。
【0015】
送風ファン20は、加湿器10により加湿された加湿空気を送風させるものである。例えば、送風ファン20は、図1に示すように、吸入口2と吹出口4とを連通するダクト6内に配置され、送風モータ22と、羽根車24とを含み構成される。羽根車24は、プロペラ状の複数の羽根を周方向に沿って所定間隔で備える。この羽根車24は、ダクト6と略同軸に配置され、送風モータ22により軸回りに回転されると、加湿空気を軸方向に吸い込み軸方向に送風する。送風ファン20により送風される加湿空気は、吹出口4から吹き出される。
【0016】
吹出口4は、加湿空気がユーザの眼に向けて吹き出されるように開口される。吹出口4は、ユーザの運転操作、パソコン操作等の操作を妨げない位置に設置される。例えば、吹出口4は、図2に示すように、運転席の前上方の天井に設置されてもよく、或いは、運転席前方のインストルメントパネルに設置されてよい。この吹出口4は、加湿空気が運転席のユーザの眼100に向けて吹き出されるように開口されている。なお、吸入口2は、車室内の空気を吸入するように開口されている。
【0017】
また、吹出口4は、例えば、図2に示すように、矩形状に開口されている。吹出口4付近のダクト6内には、互いに平行な複数の羽板8が並設されている。羽板8により加湿空気が羽板8の主面と平行に整流されて、矢印D方向(以下、「吹出方向D」という)に吹き出される。
【0018】
各羽板8は、図1に示すように、所定軸(以下、「回動軸」という)の軸回りに回動可能に支持されている。各羽板8が回動モータ9の回転駆動力によって回動軸の軸回りに回動されると、加湿空気の吹出方向Dが変わる。各羽板8の回動軸は、上下方向と平行に設けられてもよく、この場合、各羽板8の回動によって加湿空気の吹出方向Dが左右に変化される。また、各羽板8の回動軸は、車幅方向(左右方向)と平行に設けられてもよく、この場合、各羽板8の回動によって加湿空気の吹出方向Dが上下に変化される。
【0019】
制御部30は、加湿器10の出力、送風ファン20の出力、吹出口4に設けられる羽板8の回動角を制御するものである。制御部30は、マイクロコンピュータによって構成され、例えば、CPU、制御プログラムを格納するROM、演算結果等を格納する読書き可能なRAM、時間を計測するタイマ、演算等の処理の回数を計測するカウンタ、入力インターフェイス、及び出力インターフェイス等を有する。この制御部30は、距離測定手段32、空調手段34に対応するプログラムをROM等の記録媒体に格納し、それらプログラムの処理をCPUに実行させて各種手段を実現する。なお、各種手段32、34の詳細については、後述する。
【0020】
制御部30には、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等の車内ネットワークを介して、操作部40、表示部50、撮像カメラ62、湿度センサ64、及び風速センサ66が接続されている。
【0021】
操作部40は、ユーザが操作しやすい位置、好ましくは、ユーザが手を伸ばすだけで操作できるような位置に配置される。例えば、操作部40は、図2に示すように、インストルメントパネル上面の中央部に配置される。また、操作部40は、複数の感圧式の操作スイッチが配置される透明タッチパネルを備える。透明タッチパネルの構造は一般的なものであってよい。透明タッチパネル上での操作信号(操作位置信号)は、制御部30に供給される。
【0022】
制御部30は、透明タッチパネル22上での操作信号(操作位置信号)に応じた機能(後述の表示部50での操作メニュー画像の切り替えを含む)を実現させるように各種車載機器(例えば、眼精疲労緩和装置、ナビゲーション装置)を制御する。尚、本実施例の操作部40における操作スイッチは、感圧式の操作スイッチであるが、静電容量式のスイッチや押しボタン式のスイッチ等、操作スイッチの方式ないし種類に限定は無い。
【0023】
表示部50は、液晶ディスプレイ等で構成され、ユーザが見やすい位置、好ましくは、ユーザが運転操作やパソコン操作中の視野を大きく変えることなく見ることができるような位置に配置される。例えば、表示部50は、図2に示すように、操作部40である透明タッチパネルの背面に重ねて配置される。
【0024】
表示部50で表示される画像出力ないし映像出力は、制御部30により制御される。制御部30は、例えばナビゲーション装置の一部(描画プロセッサを含む)であってよく、この場合、表示部50に対して、後述の操作メニュー画像の他、地図画像等が供給され表示される。
【0025】
図3は、表示部50で表示される操作メニュー画像の一例を示す図である。表示部50には、制御部30による制御下で、図3に示すように、操作部40に対するユーザの操作を支援する操作メニュー画像が表示される。操作メニュー画像は、操作部40における操作スイッチの配置位置及びその機能を表す。操作メニュー画像は、操作部40に対する操作で実現される各種機能を、ユーザに知らせると共に、当該各種機能を実現するために操作されるべき各操作スイッチの位置を、ユーザに知らせる役割を果たす。
【0026】
図3(A)に示す例では、操作メニュー画像は、操作部40における7つの操作スイッチを模した図形画像F1〜F7を含む。操作メニュー画像内における図形画像F1〜F7のサイズ及び位置は、操作部40における対応する操作スイッチの操作領域のサイズ及び位置に対応する。この表示部50を見るユーザは、操作部40において操作スイッチが上下3列に配列されていることを知ると共に、各図形画像F1〜F7内の文字を見ることで、各操作スイッチを操作して実現できる機能を知ることができる。
【0027】
例えば、ユーザが吹出口4からの加湿空気の吹出方向Dの設定をしたいと思った場合、ユーザは、“方向左”、“方向右”の文字を含む図形画像F1、F2に対応する位置にある操作スイッチのいずれかを押せばよいことを理解することができる。また、ユーザが吹出口4からの加湿空気の風速の設定をしたいと思った場合、ユーザは、“風速大”、“風速小”の文字を含む図形画像F3、F4に対応する位置にある操作スイッチのいずれかを押せばよいことを理解することができる。また、ユーザが吹出口4からの加湿空気の湿度の設定をしたいと思った場合、ユーザは、“湿度大”、“湿度小”の文字を含む図形画像F5、F6に対応する位置にある操作スイッチのいずれかを押せばよいことを理解することができる。図形画像F1〜F6に対応する位置にある操作スイッチのいずれかが1回押される毎に、制御部30は、対応する加湿器10の出力、送風ファン20の出力、又は吹出口4に設けられる羽板8の回動角を所定量ずつ変化させる制御を行う。
【0028】
図3(B)に示す操作メニュー画像は、ユーザが感じる眼の疲労感を入力するための操作メニュー画像であり、例えば図3(A)の“疲労感”の文字を含む図形画像F7に対応する位置にある操作スイッチを操作した場合に表示される。同様に、操作メニュー画像内における文字入力用の図形画像のサイズ及び位置は、操作部40における対応する文字入力用の操作スイッチの操作領域のサイズ及び位置に対応する。この表示部50を見るユーザは、同様に、各図形画像内の文字を見ることで、各操作スイッチを操作してユーザが感じる眼100の疲労感の有無を入力することができる。“疲労有”が入力されると、制御部30は、ユーザが眼精疲労の状態にあると判定し、“疲労無”が入力されると、ユーザが眼精疲労の状態にないと判定する。なお、疲労感の有無を入力する操作メニュー画像の代わりに、疲労感を多段階で入力する操作メニュー画像が用意されてもよい。
【0029】
操作メニュー画像は、各種用意されてよく、操作部40における操作状況等に応じて、適宜切り替えられてよい。この場合、当該操作メニュー画像の切り替えに応じて、操作部40における操作スイッチの配置位置及びその機能が変更される。かかる構成では、操作部40において多くの車載機器の操作スイッチを実現することができ、操作スイッチの効率的な集約を図ることができる。例えば、操作部40には、図3には示していないが、メールや電話、周辺施設案内等の情報通信系の車載機器の操作のみならず、オーディオ装置の各種操作のための各種操作スイッチが実現されてよい。
【0030】
撮像カメラ62は、ユーザの眼100の位置を検出したり、ユーザの眼精疲労を検出したり、加湿空気を吹き出す吹出口4とユーザの眼100との間の距離を測定したりするために用いられる。
【0031】
撮像カメラ62は、CCDやCMOS等の光電変換素子を含み構成され、例えば、図2に示すように、吹出口4付近に運転席を俯瞰するように配置される。光電変換素子は、ユーザである運転者の眼100を含む方向を撮影して入射した光を光電変換する。撮像カメラ62は、蓄積した電荷を電圧として読み出した後増幅してA/D変換を施し所定の輝度階調(例えば、256階調)のデジタル画像に変換する。運転者の眼100を含む方向を撮影して得られた動画像は、制御部30へ供給される。
【0032】
ユーザの眼100の位置を検出する場合、制御部30は、撮像カメラ62から供給された動画像を画像処理して、動画像でのユーザの眼100の座標位置(画素)を検出する。例えば、予め登録された顔の標準画像データによるマッチング処理を行う方法、カラーの動画像を用いて黒い瞳孔の領域を検出する方法等がある。このようにして検出された動画像でのユーザの眼100の座標位置に基づいて、ユーザの眼100の位置が認識される。このユーザの眼100の位置の認識は、所定時間毎に行われる。
【0033】
ユーザの眼精疲労を検出する場合、制御部30は、撮像カメラ62から供給された動画像を画像処理して、ユーザの瞬きの頻度を検出する。ユーザの瞬きの頻度を検出する方法には、例えば、ユーザの黒い瞳孔の領域の面積変化を検出する方法、ユーザの上瞼と下瞼との距離変化を検出する方法等がある。
【0034】
通常、人間の瞬きは、20回/分程度であるが、運転操作やパソコン操作等に集中していると、1/2〜1/4程度に低下することがある。そうすると、眼球表面の角膜や結膜を保護する涙液が蒸発し易くなる。涙液の蒸発が進むと、角膜や結膜が乾燥して傷つき易くなるため、眼100が疲れやすくなる。
【0035】
一方、眼100が疲れると、瞬きの回数が増える。瞬きの回数を増やすことで、涙液が眼球表面の全体に均一に分布され、涙膜が形成されるので、眼100の疲れが緩和される。
【0036】
そこで、例えば、制御部30は、ユーザの瞬きの頻度が所定値(例えば、30回/分)以上である場合に、ユーザが眼精疲労の状態にあると判定し、ユーザの瞬きの頻度が所定値(例えば、30回/分)未満である場合に、ユーザが眼精疲労の状態にないと判定する。このユーザの眼精疲労状態の検出は、所定時間毎に行われる。
【0037】
また、ユーザの眼精疲労を検出する場合、制御部30は、撮像カメラ62から供給された動画像を画像処理して、ユーザの涙膜の状態を検出してもよい。ユーザの涙膜の状態を検出する方法には、例えば、ユーザの眼100に向けて断面格子状の有色光を照射して、眼球表面に映る(眼球表面で反射される)有色光の形状を検出する方法がある。
【0038】
涙液の蒸発が進み、眼球表面の涙膜の一部が蒸発すると、眼球表面に映る有色光の形状が変化する。このため、動画像での眼球表面に映る有色光の形状変化に基づいて、ユーザの眼球表面の乾燥度(涙膜の安定性)を評価することができる。
【0039】
したがって、例えば、制御部30は、涙膜の安定性が所定値より高い場合に、ユーザが眼精疲労の状態にあると判定し、涙膜の安定性が所定値以下である場合に、ユーザが眼精疲労の状態にないと判定する。このユーザの眼精疲労状態の検出は、所定時間毎に行われる。
【0040】
制御部30は、操作部40からの操作信号や撮像カメラ62から供給された動画像の画像処理の結果に基づいてユーザの眼精疲労を検出する。そして、ユーザの眼精疲労が検出されると、加湿器10により吸入口2から吸入された乾燥空気を加湿させ、送風ファン20により加湿空気を吹出口4からユーザの眼100に向けて所定時間吹き出させる。これにより、ユーザの眼100を保湿することができ、ユーザの眼精疲労を緩和することができる。
【0041】
また、制御部30は、撮像カメラ62から供給された動画像の画像処理の結果に基づいてユーザの眼100の位置を検出すると、吹出口4からの加湿空気の吹出方向Dがユーザの眼100に向くように吹出口4に設けられる羽板8を回動させてもよい。これにより、ユーザの眼100の位置が変動した場合に、適切にユーザの眼100を保湿することができる。
【0042】
更に、制御部30は、ユーザの眼精疲労が検出されると、オーディオ装置に警告音や音声案内を出力させてもよく、或いは、表示部50に警告画像や眼精疲労度を0〜100の間で数値化した数字画像を表示させてもよい。このように、ユーザの五感を刺激してユーザの注意を喚起することにより、ユーザに休息を促すことができる。
【0043】
湿度センサ64は、加湿空気の吹出口4付近での湿度を検出するものである。湿度センサ64は、例えば、吹出口4付近のダクト6内に設置される。湿度センサ64は、周知の構成であってよく、例えば、加湿空気の相対湿度(%RH)に応じて水分を吸収、放出して誘電率が変化する高分子膜を含み構成されてもよく、或いは、加湿空気の相対湿度(%RH)に応じて水分を吸着して電気伝導率が変化するセラミックスの多孔質体を含み構成されてもよい。湿度センサ64から加湿空気の相対湿度(%RH)に応じて出力される電気信号は、制御部30に供給される。
【0044】
制御部30は、湿度センサ64から出力される電気信号に基づいて加湿空気の吹出口4付近での相対湿度を検出する。
【0045】
風速センサ66は、加湿空気の吹出口4付近での風速を検出するものである。風速センサ66は、例えば、吹出口4付近のダクト6内に設置される。風速センサ66は、周知の構成であってよく、例えば、風速の高低による温度変化に応じて電気抵抗が変化するサーミスタを含み構成される。風速センサ66から加湿空気の風速に応じて出力される電気信号は、制御部30に供給される。
【0046】
制御部30は、風速センサ66から出力される電気信号に基づいて加湿空気の吹出口4付近での風速を検出する。
【0047】
次に、制御部30が有する各種手段32、34について説明する。制御部30は、所定時間毎に各種手段32、34を実行する。
【0048】
距離測定手段32は、加湿空気を吹き出す吹出口4とユーザの眼100との間の距離を測定するものである。
【0049】
例えば、距離測定手段32は、吹出口4付近に設置されるステレオカメラ62で略同時に撮像された一対の顔画像を画像処理して、各顔画像でのユーザの眼100の座標位置(画素)を検出する。そして、距離測定手段32は、略同時に撮像された一対の顔画像でのユーザの眼100の形状や位置等の視差に基づいて、吹出口4とユーザの眼100との間の距離を測定する。
【0050】
空調手段34は、距離測定手段32による測定結果に基づいて吹出口4から吹き出される加湿空気の状態を調節するものである。例えば、空調手段34は、距離測定手段32による測定結果に基づいて吹出口4から吹き出される加湿空気の湿度及び風速を調節する。
【0051】
図4は、ユーザの眼付近での相対湿度と眼精疲労の緩和効果との関係の一例を示す図である。ユーザの眼100付近での相対湿度が高くなるほど、眼球表面上に水蒸気飽和層が形成されやすくなる。このため、眼球表面の涙液が蒸発し難くなり、眼精疲労の緩和効果が高くなる。なお、ユーザの眼100付近での相対湿度が所定値を超えると、眼精疲労の緩和効果が飽和する。
【0052】
図5は、ユーザの眼付近での風速と眼精疲労の緩和効果との関係の一例を示す図である。ユーザの眼100付近での風速が強くなるほど、眼球表面上に水蒸気飽和層が形成され難くなる。このため、眼球表面の涙液が蒸発しやすくなり、眼精疲労の緩和効果が低くなる。
【0053】
ユーザの眼100に向けて加湿空気を吹き出す場合、吹出口4付近での加湿空気の風速が弱過ぎるとユーザの眼100に加湿空気が十分に届かない。一方、吹出口4付近での加湿空気の風速が強過ぎるとユーザの眼100が乾燥する。また、吹出口4付近での加湿空気の湿度が高過ぎると車両の窓ガラスが曇ったり、効率的に眼精疲労を緩和できなくなったりする。一方、吹出口4付近での加湿空気の湿度が低過ぎると眼精疲労の緩和効果が低い。したがって、これらを考慮して、吹出口4付近での加湿空気の状態(例えば、相対湿度、風速)が最適になるように加湿器10の出力、送風ファン20の出力を設定し、ユーザの眼100を保湿する。
【0054】
また、ユーザの眼100に向けて加湿空気を吹き出す場合、ユーザの眼100付近での空気の状態は、加湿空気を吹き出す吹出口4とユーザの眼100との間の距離に応じて変化する。例えば、吹出口4とユーザの眼100との間の距離が長くなると、ユーザの眼100付近での風速が弱くなり、相対湿度が低くなる。これは、吹出口4とユーザの眼100との間の距離が長くなるほど、加湿空気が周囲に拡散するためである。
【0055】
図6は、吹出口とユーザの眼との間の距離と、吹出口付近での加湿空気の相対湿度の最適値との関係の一例を示す図である。図6に示すように、吹出口4とユーザの眼100との間の距離が長くなるほど、吹出口4付近での加湿空気の相対湿度の最適値が高くなる(大きくなる)。これは、吹出口4とユーザの眼100との間の距離が長くなるほど、加湿空気が周囲に拡散するためである。
【0056】
図7は、吹出口とユーザの眼との間の距離と、吹出口付近での加湿空気の風速の最適値との関係の一例を示す図である。図7に示すように、吹出口4とユーザの眼100との間の距離が長くなるほど、吹出口4付近での加湿空気の風速の最適値が高くなる(大きくなる)。これは、吹出口4とユーザの眼100との間の距離が長くなるほど、加湿空気が周囲に拡散するためである。
【0057】
図6、図7に相当するマップデータは、制御部30のROM等の記録媒体に予め格納され、必要に応じて読み出される。
【0058】
制御部30は、距離測定手段32により加湿空気を吹き出す吹出口4とユーザの眼100との間の距離を測定させ、その測定結果に基づいて、空調手段34により吹出口4から吹き出される加湿空気の湿度及び風速を調節させる。湿度及び風速を調節する際に、湿度センサ64及び風速センサ66により検出された吹出口4付近での湿度及び風速を、図6、図7に相当するマップデータと照らして、加湿器10、送風ファン20の出力を制御する。これにより、運転席の座席シートが前後にスライドされる場合等、吹出口4とユーザの眼100との間の距離が変動する場合に、より適切にユーザの眼100を保湿することができる。
【0059】
次に、制御部30が実行する処理の一例について図8を参照して説明する。図8は、制御部30が実行する処理の一例を示すフローチャートである。制御部30は、所定時間毎にS11以降の処理を実行する。
【0060】
最初に、制御部30は、ユーザが眼精疲労の状態にあるか否かを判定する(ステップS11)。ユーザが眼精疲労の状態にない場合(ステップS11、NO)、今回の処理を終了する。
【0061】
また、ユーザが眼精疲労の状態にある場合(ステップS11、YES)、制御部30は、距離測定手段32により、吹出口4とユーザの眼100との間の距離を測定する(ステップS12)。
【0062】
続いて、制御部30は、空調手段34により、距離測定手段32による測定結果に基づいて吹出口4から吹き出される加湿空気の湿度及び風速を調節して(ステップS13)、吹出口4からユーザの眼100に向けて加湿空気を所定時間吹き出させ(ステップS14)、今回の処理を終了する。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0064】
例えば、本実施例の眼精疲労緩和装置は、運転者の眼精疲労を緩和するものであるとしたが、ユーザの眼精疲労を緩和するものである限り、ユーザの種類に制限はなく、例えば、パソコン操作者の眼精疲労を緩和するものであってもよい。
【0065】
また、本実施例の加湿器10は、超音波振動子14により水を振動させて水面から霧を発生させる加湿方式であるとしたが、加湿方式に制限はなく、例えば、電熱コイル等により水を加熱沸騰させ水蒸気を発生させる加湿方式であってもよく、或いは、水を吸着した多孔質体に乾燥空気を通風させる加湿方式であってもよい。
【0066】
また、本実施例の制御部30は、操作部40からの操作信号や撮像カメラ62から供給された動画像の画像処理の結果に基づいてユーザの眼精疲労を検出するとしたが、ユーザの眼精疲労の検出方法に制限はなく、例えば、周知の携帯用アコモドポリレコーダを用いて視標にユーザの眼100のピントが合うまでのピント調節時間を測定してもよい。この場合、例えば、制御部30は、ユーザのピント調節時間が所定値を超えると、ユーザが眼精疲労の状態にあると判定し、ユーザのピント調節時間が所定値以下であると、ユーザが眼精疲労の状態にないと判定する。
【0067】
また、本実施例の距離測定手段32は、吹出口4付近に設置されるステレオカメラ62で略同時に撮像された一対の顔画像を画像処理して吹出口4とユーザの眼100との間の距離を測定するとしたが、距離の測定方法に制限はなく、例えば、吹出口4付近に設置されるレーダセンサにより不可視光をユーザの顔に向けて照射してその反射光を受光し吹出口4とユーザの眼100との間の距離を測定してもよい。
【0068】
また、本実施例の空調手段34は、吹出口4とユーザの眼100との間の距離に基づいて、吹出口4から吹き出される加湿空気の状態を調節するとしたが、吹出口4とユーザの眼100との間の距離の代わりに、車両のシートの位置若しくは高さに基づいて加湿空気の状態を調節してもよい。例えば吹出口4がインストルメントパネルや車両前方の天井に設置されている場合、シート位置がステアリングから離れているほど、加湿空気の相対湿度及び/又は風速が高くなるようにしてもよいし、吹出口4がインストルメントパネルにある場合、シートが高めであるほど相対湿度及び/又は風速が高くなるようにしてもよいし、吹出口が車両前方の天井に設置されている場合、シートが低めであるほど相対湿度及び/又は風速が高くなるようにしてもよい。また、車両のシート位置及び高さの両方を考慮して、加湿空気の状態を調節してもよい。
【0069】
また、本実施例の空調手段34は、吹出口4から吹き出される加湿空気の湿度及び風速を調節するとしたが、加湿空気の状態を調節する限り、調節対象に制限はなく、例えば、加湿空気の湿度又は風速のいずれかのみを調節してもよく、或いは、加湿空気の温度を調節してもよい。
【0070】
また、本実施例の操作部40は、タッチパネル操作によりユーザの眼100の疲労感を入力するとしたが、音声認識によりユーザの眼100の疲労感を入力するものであってもよい。
【0071】
また、本実施例の眼精疲労緩和装置では、従来例と同様に、車室内の温度及び湿度に基づいて吹出口4から吹き出される加湿空気の温度や湿度を調節してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の眼精疲労緩和装置の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【図2】眼精疲労緩和装置の車両搭載状態の一例を示す側面図である。
【図3】表示部で表示される操作メニュー画像の一例を示す図である。
【図4】ユーザの眼付近での相対湿度と眼精疲労の緩和効果との関係の一例を示す図である。
【図5】ユーザの眼付近での風速と眼精疲労の緩和効果との関係の一例を示す図である。
【図6】加湿空気を吹き出す吹出口とユーザの眼との間の距離と、吹出口付近での加湿空気の相対湿度の最適値との関係の一例を示す図である。
【図7】加湿空気を吹き出す吹出口とユーザの眼との間の距離と、吹出口付近での加湿空気の風速の最適値との関係の一例を示す図である。
【図8】制御部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
2 吸入口
4 吹出口
6 ダクト
8 羽板
10 加湿器
20 送風ファン
30 制御部
32 距離測定手段
34 空調手段
40 操作部
50 表示部
62 撮像カメラ(ステレオカメラ)
64 湿度センサ
66 風速センサ
100 ユーザの眼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの眼精疲労を検出した場合に、前記ユーザの眼に向けて加湿空気を吹き出す眼精疲労緩和装置において、
前記加湿空気を吹き出す吹出口と前記ユーザの眼との間の距離を測定する距離測定手段と、
前記距離測定手段による測定結果に基づいて前記吹出口から吹き出される加湿空気の状態を調節する空調手段と、
を備える眼精疲労緩和装置。
【請求項2】
前記空調手段は、前記距離測定手段による測定結果に基づいて前記吹出口から吹き出される加湿空気の湿度及び/又は風速を調節する請求項1記載の眼精疲労緩和装置。
【請求項3】
前記空調手段は、前記距離測定手段により測定された前記距離が長くなるほど、前記吹出口から吹き出される加湿空気の湿度が高くなるように調節する請求項1又は2記載の眼精疲労緩和装置。
【請求項4】
前記空調手段は、前記距離測定手段により測定された前記距離が長くなるほど、前記吹出口から吹き出される加湿空気の風速が高くなるように調節する請求項1〜3いずれか一項記載の眼精疲労緩和装置。
【請求項5】
ユーザの眼精疲労を検出した場合に、前記ユーザの眼に向けて加湿空気を吹き出す眼精疲労緩和方法において、
前記加湿空気を吹き出す吹出口と前記ユーザの眼との間の距離を測定する距離測定ステップと、
前記距離測定ステップによる測定結果に基づいて前記吹出口から吹き出される加湿空気の状態を調節する空調ステップと、
を備える眼精疲労緩和方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−64509(P2010−64509A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229891(P2008−229891)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】