説明

着座検知装置

【課題】便座への着座を高精度に検知することが可能な、電波による人体検知方式の着座検知装置を提供する。
【解決手段】タンクカバー2の前部かつ倒伏状態の便座3よりも高位に発信器6が設置されている。倒伏した便座3に人が着座していないと、発信器6からの電波が直接的に便座3のヒータ5で受信され、受信信号強度が高くなる。便座3に人が着座すると、発信器6からの電波が遮られ、ヒータ5による受信信号強度が低下する。便座3を起立させると、発信器6からの電波が直接的には入射せず、ヒータ5による受信信号強度が低下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座着座者を検知する着座装置に係り、特に電波によって便座着座者を検知する着座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電波を利用したトイレ用の人体検知装置としては、送信波と受信波の周波数の差を検出して動きを検知するドップラー式のものが提案されている。ドップラー式人体検知装置は、送信波の周波数と受信波の周波数の差分により動きを検出すると共に、その差分信号の振幅の大小で距離の概略を判断できるように構成している。また、便器装置内に組み込むことによって生じる内部反射等の定在波の影響を打ち消すため、低周波成分をカットする構成としている。しかしながら、このドップラー式人体検知装置は、停止状態の人体の検知が難しい。
【0003】
特開2002−71824号には、マイクロ波センサのドップラ効果と反射の大きさによって人体を検知することが記載されているが、反射強度だけでは着座の検知精度は低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−71824
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、便座への着座を高精度に検知することが可能な、電波による人体検知方式の着座検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(請求項1)の着座装置は、人体の便座への着座を検知する着座検知装置において、着座者検知用電波信号を送信する送信部と、該着座者検知用電波信号を受信する受信部と、該受信部の受信信号強度の低下に基づいて着座の判定を行う判定手段とを有する着座検知装置であって、該送信部及び該受信部が、着座した人体を挟む位置に設けられており、該送信部及び該受信部の少なくとも一方が倒伏状態の便座の上面よりも高位に設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の着座検知装置は、請求項1において、便器の前方に存在する人体を検知する人体検知センサを有しており、前記送信部及び前記受信部の少なくとも一方は、該人体検知センサが人体を検知すると作動することを特徴とするものである。
【0008】
請求項3の着座検知装置は、請求項1又は2において、便座支持部材と、該便座支持部材に支持された便座とを有しており、前記送信部は、該便座支持部材のうち倒伏状態の該便座の上面よりも高位に設けられており、前記受信部は、該便座の少なくとも前部に設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4の着座検知装置は、請求項1ないし3のいずれか1項において、便座の起立又は倒伏を検知する便座状態検知手段と、該便座状態検知手段の検知結果と前記受信部の受信信号強度の低下とに基いて着座の判定を行う判定手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項5の着座検知装置は、請求項1又は2において、便座支持部材と、該便座支持部材内に配置された機器と、該機器を遠隔操作するためのリモコンとを有しており、前記送信部及び前記受信部のうち、一方が該便座支持部材に設けられており、他方が該リモコンに設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項6の着座検知装置は、請求項5において、前記便座支持部材は、便器の前方に存在する人体を検知する人体検知センサと、該人体検知センサの人体検知に基づいて前記リモコンに起動信号を送信する起動信号送信手段とを有しており、該リモコンは、該起動信号を受信するとウェイクアップモードに移行することを特徴とするものである。
【0012】
請求項7の着座検知装置は、請求項5又は6において、前記着座者検知用電波信号は、前記リモコンの機器操作信号とは異なることを特徴とするものである。
【0013】
請求項8の着座検知装置は、請求項1又は2において、便座支持部材と、該便座支持部材内に配置された機器と、該機器を遠隔操作するためのリモコンとを有しており、前記送信部が、該便座支持部材及び該リモコンから離隔した場所に設けられており、前記受信部が、該便座支持部材に設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明(請求項1)の着座検知装置では、送信部及び受信部が、着座した人体を挟む位置に設けられているため、着座した人体を確実に検知することができる。また、これら送信部及び該受信部の少なくとも一方が倒伏状態の便座の上面よりも高位に設けられているため、着座した人体のより上半身側を検知することが可能となり、着座者が座り直す際に若干腰を浮かしたりした場合にあっても、着座者を検知することができる。さらに、電波を用いて着座者を検知しているため、陶器製、樹脂製等の便器、便座、便座ボックス等による電波の遮断による減衰が少ない。このため、送信部及び受信部の設置位置が限定されない。また、赤外線を用いる場合には送信部及び受信部の設置箇所に赤外線の透過窓等を設ける必要があるのに対し、本発明では電波を用いるため、送信部及び受信部の設置箇所に窓等を設ける必要がない。
【0015】
上記送信部及び受信部とは別に、便器の前方に存在する人体を検知する人体検知センサを有し、送信部及び受信部の少なくとも一方は、該人体検知センサが人体を検知すると作動するようにしてもよい(請求項2)。これにより、送信部及び受信部の少なくとも一方の消費電力を節約することができる。なお、送信部及び受信部の一方のみを人体検知時にのみ作動させる場合には、他方は人体の検知の有無にかかわらず、常時作動させておく。
【0016】
本発明において、便座支持部材と、該便座支持部材に支持された便座とを有しており、前記送信部は、該便座支持部材のうち倒伏状態の該便座の上面よりも高位に設けられており、前記受信部は、該便座の少なくとも前部に設けられていてもよい(請求項3)。倒伏状態の便座に人が座っていないと、送信部からの電波が人体で遮られることなく受信部によって受信されるので、受信部の受信信号強度が高い。この倒伏状態の便座に人が着座すると、送信部から便座前部に向った電波が人体で遮られるので、受信部の受信信号強度が低下する。これにより、便座への着座が検知される。
【0017】
この場合、送信部は、起立状態の便座の中間部よりも下位に設けられていてもよい。この場合、送信部からの電波は起立状態の便座前部の受信部に対し直接的には全く又は殆ど入射しない。洋風便器の直近に男子小便使用者が立った場合、電波がこの使用者で反射されて受信部に受信される。この受信信号の強度は、前記倒伏状態の便座の非着座時の受信信号強度に比べて低いので、男子小便使用者であると判別することができる。
【0018】
なお、倒伏状態の便座に人体が着座した場合、及び起立状態の便座の受信部に反射電波が受信された場合のいずれも、受信信号強度は便座倒伏かつ非着座時の受信信号強度よりも低い。この場合、便座の起倒伏態を検知し、この検知結果と受信信号強度とに基いて、着座であるか男子小便使用であるか判定を行うようにすれば、判定精度がさらに高いものとなる(請求項4)。
【0019】
本発明では、暖房便座のヒータを受信部として利用することにより、制作コストを低減することができる。
【0020】
送信部及び受信部のうち、一方が便座支持部材に設けられており、他方がリモコンに設けられていてもよい(請求項5)。これにより、これら便座支持部材及びリモコンとは別体に送信部及び受信部を設ける場合と比べて、部品点数が少なくなり、トイレルーム内の意匠性にも優れる。
【0021】
この場合、便座支持部材は、便器の前方に存在する人体を検知する人体検知センサと、該人体検知センサの人体検知に基づいてリモコンに起動信号を送信する起動信号送信手段とを有しており、該リモコンは、該起動信号を受信するとウェイクアップモードに移行するようにしてもよい(請求項6)。このように、人体検知時にのみリモコンをウェイクアップモードにすることにより、リモコンの消費電力を節約することができる。
【0022】
この着座者検知用電波信号は、リモコンの機器操作信号とは異なっていてもよい(請求項7)。これにより、着座者の誤検知及び機器の誤操作が回避される。
【0023】
本発明では、便座支持部材と、該便座支持部材内に配置された機器と、該機器を遠隔操作するためのリモコンとを有しており、送信部が、該便座支持部材及び該リモコンから離隔した場所に設けられており、受信部が、該便座支持部材に設けられていてもよい(請求項8)。これにより、リモコンの設置位置に拘束されることなく、送信部を所望の位置に設置することができ、着座者をより正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施の形態に係る着座検知装置を備えた洋風便器の斜視図である。
【図2】第1の実施の形態に係る着座検知装置を備えた洋風便器の側面図である。
【図3】第1の実施の形態に係る着座検知装置を備えた洋風便器の側面図である。
【図4】第1の実施の形態に係る着座検知装置の回路ブロック図である。
【図5】第1の実施の形態に係る着座検知装置の受信信号強度を示す説明図である。
【図6】第1の実施の形態に係る着座検知装置の変形例を示す斜視図である。
【図7】第1の実施の形態に係る着座検知装置の異なる変形例を示す斜視図である。
【図8】第2の実施の形態に係る着座検知装置を備えたトイレルーム内の斜視図である。
【図9】第2モードを説明するグラフである。
【図10】図8の便座ボックス内の回路ブロック図である。
【図11】図8のリモコン内の回路ブロック図である。
【図12】第8図の送信部及び受信部からの各信号の送受信のタイミングを説明するグラフである。
【図13】アンテナαから送信される電波を説明する図面であり、(a)は第8図のトイレルームの平面図、(b)はアンテナαから送信される電波の送信角度を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1の実施の形態]
第1図〜第5図を参照して第1の実施の形態について説明する。なお、本明細書において、「前後」は、便座に座った便器使用者にとっての前後を表わす。
【0026】
第1図(a),(b),(c)の通り、陶器又は合成樹脂製の洋風便器1の上面後部に、便座支持部材としてタンクカバー2が設置されている。このタンクカバー2はポリプロピレン等の電波透過性を有した合成樹脂製である。タンクカバー2内には、便器1の鉢部等に洗浄水を供給するためのロータンクや人体臀部を温水で洗浄するための温水洗浄ノズル、臀部乾燥用の温風ファン等の機器のほか、電波発信器6を有した人体検知システムが設置されている。
【0027】
このタンクカバー2の下部前縁に便座3及び便蓋4が起倒方向回動可能に取り付けられている。なお、第1図(a)では便座3及び便蓋4が倒伏しており、第1図(b)では便蓋4のみが起立し、第1図(c)では便座3及び便蓋4が起立している。
【0028】
便座3は、内孔3aを有した本体部3bと、該本体部の後縁から後方に延出した1対のヒンジアーム3c,3cとを有している。便座3は、各ヒンジアーム3c,3cに設けられたヒンジ軸を介してタンクカバー2に枢支されている。この実施の形態では、便蓋4のヒンジ軸は、便座3のヒンジ軸と同軸となっている。便座3は、ゴム足(裏足)やヒータ5を除いてポリプロピレン等の電波透過性の合成樹脂よりなる。便蓋4は、全体がポリプロピレン等の電波透過性の合成樹脂よりなる。
【0029】
便座3には、暖房用のヒータ5が設けられている。このヒータ5は通電により発熱する線状の発熱体よりなり、便座3の内孔3aの周囲に引き回されている。この便座3に通電するためのハーネスは、便座3のヒンジ軸を通ってタンクカバー2内に引き込まれている。
【0030】
タンクカバー2内の最下部よりも所定距離上位部分における、タンクカバー2の前面部に、前方かつ略水平方向に向って好ましくは2.4〜2.5GHzの電波を発信する送信部としての発信器6が設けられている。第1図(b)の通り、この発信器6は、倒伏状態の便座3の本体部3bの上面よりも上位かつ起立状態の便座3の前後方向中間部よりも下位に設置されている。なお、この実施の形態では、第1図(c)の通り、発信器6は起立した便座3の本体部3bの後縁よりも下位に、かつ第1図(a)の通り、倒伏状態の便蓋4の本体部の上面よりも上位に設けられている。発信器6は、倒伏状態の便座3の本体部3bの上面よりも100〜1500mm特に150〜300mm高位に位置することが好ましい。
【0031】
第4図の通り、便座ヒータ5は、タンクカバー2内のヒータ通電回路7によって直流100Vが印加されて通電される。
【0032】
発信器6からの電波又はその反射波を受信することによりヒータ5に流れる高周波電流は、コンデンサCを介して結合トランス8の1次側コイルを流れる。結合トランス8の出力は、コンデンサCを介して増幅回路9に入力され、その出力信号が制御及び人体検知判定を行う信号処理回路10に入力される。この信号処理回路10には、便座3の起立又は倒伏状態を検知するための便座状態センサ11からの信号も入力されている。この便座状態センサ11としては、便座3の回動位相を検知するロータリエンコーダや、リミットスイッチ、静電容量型センサなど各種のものを用いることができる。
【0033】
第2図(a)のように、倒伏した便座3に人Pが着座していない場合、発信器6からの電波RWは、直接的に即ち途中で人Pに遮られることなく便座3のヒータ5に入射するので、第5図の「非着座」時の通り、受信信号強度が高いものとなる。
【0034】
第2図(b)のように、倒伏した便座3に人Pが着座すると、発信器6からの電波RWの大部分が人Pに遮られるので、ヒータ5の受信信号強度は第5図の「着座」時の通り低いものとなる。これにより、着座と非着座とが検知される。なお、この実施の形態では、便座3の起立倒伏状態がセンサ11で検知されているので、受信信号強度低下は着座によるものであると正確に判定でき、便座3への着座、非着座を高精度に判別することができる。
【0035】
第3図(a)のように便座3及び便蓋4が起立しており、かつ便器1の前方に人Pがいない場合、発信器6からの電波RWは便座3の本体部3bの下側を通って前方に放射され、便座3のヒータ5に直接的には全く又は殆ど受信されない。そのため、受信信号強度は低いものとなる。
【0036】
第3図(b)のように、便座3及び便蓋4が起立している状態で便器1の前方に人Pが近接して立つと、発信器6からの電波RWが人Pで反射され、反射電波が便座3のヒータ5で受信され、第3図(a)の場合よりも受信信号強度が高くなる。ただし、この反射波による受信信号強度は、第2図(a)の便座倒伏かつ非着座状態に比べると低い「微高」レベルとなるので、男子小便使用であると判定される。なお、この実施の形態では、便座3の起倒状態がセンサ11によって検知されているので、この微高レベルの受信信号強度と便座起立とに基づいて、男子小便使用であることを高精度にて判別することができる。
【0037】
第1図(a)のように便座3及び便蓋4が倒伏している状態のトイレルームに人Pが入り、リモコンの便座開スイッチ操作等によって便座3を起立させると、第5図の「便座起立回動」の通り、受信信号強度が非着座時のレベルから第5図の最低レベルまで低下する。次いで、人Pが男子小便使用すべく便器1の前部に近づくと(即ち、第3図(b)の状態になると)、第5図の「男子小便使用」時の通り、受信信号強度が最低レベルよりも少し高い「微高」レベルとなる。この人Pが便器1から遠ざかると、受信信号強度はほぼ最低レベルまで低下する。その後、リモコンの便座閉スイッチ操作等によって便座3を倒伏させると、発信器6からの電波がヒータ5で直接的に受信されるので、第5図の「便座倒伏回動」時のように受信信号強度が再び非着座時のレベルまで高くなる。
【0038】
このようにして、着座の有無及び男子小便使用が検知可能である。
【0039】
前述の通り、この実施の形態では、便座状態センサ11によって便座の起立倒伏状態を検知しているので、受信信号レベルの変化が着座によるものか便座の回動によるものであるか、男子小便使用によるものであるかを正確に区別して判別することができる。例えば、着座状態で少し腰を浮かせたとき及び男子小便使用のいずれでも、受信信号レベルは「微高」レベルとなるが、前者では便座3が倒伏し、後者では便座3は起立しているので、着座状態で腰を少し浮かせたときの受信信号レベル(微高)と、男子小便使用による受信信号レベル(微高)とを正確に区別して便器使用状態を判別することができる。
【0040】
上記実施の形態では便座支持部材としてタンクカバー2が用いられているが、第6図、第7図に示す便座ボックス12,15等であってもよい。各便座ボックス12,15に便座13,16及び便蓋14,17が取り付けられている。第7図の符号18は便器を示す。各便座ボックス12,15の前縁上部に発信器6が設置され、各便座13,16に設けられたヒータによって電波を受信する。発信器6は、倒伏状態の便座13,16の本体部の上面よりも高位に設置されている。
【0041】
上記実施の形態では、便座ヒータによって電波受信部を構成しているが、便座ヒータとは別に受信用のアンテナを便座に設けてもよい。この場合、アンテナは、便座の少なくとも前部に設けられる。この場合の前部とは、便座の本体部の前後方向長さの中間よりも前部を表わす。アンテナは、便座の前部にのみ設けられるのが好ましいが、前部及び後部に設けられてもよい。
【0042】
本発明では、タンクカバー2又は便座ボックス12,15等の便座支持部材にドップラー効果による人体検知用の電波受信器を設け、ドップラー効果による人体検知を行うようにしてもよい。
【0043】
[第2の実施の形態]
第8図〜第13図を参照して第2の実施の形態について説明する。
【0044】
第8図の通り、陶器又は合成樹脂製の洋風便器21の上面後部に、便座支持部材として便座ボックス22が設置されている。この便座ボックス22はポリプロピレン等の電波透過性を有した合成樹脂製である。便座ボックス22の側面には手動式フラッシュハンドル25が設置されている。また、該便座ボックス22内には、人体臀部を温水で洗浄するためのシャワーノズル及びビデノズル、臀部乾燥用の温風ファン等の機器が設置されている。
【0045】
この便座ボックス22の下部前縁に、合成樹脂製の便座23及び便蓋24が起倒方向回動可能に取り付けられている。
【0046】
この便座ボックス22内には、第10図の通り、人体検知信号送受信回路31、電波通信送受信回路32、これらの切替回路33及びアンテナαが設けられており、これらにより受信部30が構成されている。この便座ボックス22内には、さらにシャワー駆動回路36、ビデ駆動回路37のほか、これら駆動回路36,37を制御する制御信号出力回路35が設けられている。
【0047】
詳細は後述するが、この人体検知信号送受信回路31は、トイレルーム内に入室した人体を検知するための回路である。また、この電波通信送受信回路32は、リモコン40との通信及び着座者の有無の判定を行うための回路である。さらに、この切替回路33は、該人体検知信号送受信回路31が作動する人体検知モードaと、該電波通信送受信回路32が作動するリモコン通信モードbとの切替を行うための回路である。
【0048】
便座ボックス22内の電気回路は、図示しないコード、プラグを介して商用電源(AC100V)から給電される。この洋風便器21は、図示しないホース及び止水栓を介して水道水が供給可能とされている。
【0049】
トイレルームの壁面にリモコン40が設置されている。このリモコン40の前面に、シャワースイッチ41、ビデスイッチ42、停止スイッチ43、液晶等の表示部45が設けられている。リモコン40には、洋風便器21に洗浄水を供給するフラッシュスイッチなど、その他の各種スイッチが設けられてもよい。
【0050】
さらに、このリモコン40内には、第11図の通り、アンテナβ、送受信回路51及び信号処理回路52よりなる送信部50が設けられている。
【0051】
上記便座ボックス22の受信部30及びリモコン40の送信部50は、電波の送受信が可能とされている。
【0052】
すなわち、便座ボックス22の受信部30は、人体検知信号送受信回路31が作動しているときには(人体検知モードa)、人体検知用発信信号Aを間欠的に送信すると共に、この信号Aがトイレルーム内の人体に反射してなる人体検知反射信号Bを受信可能とされている。この人体検知反射信号Bに基づいて、人体のトイレルーム内への入室を検知することができる。また、電波通信送受信回路32が作動しているときには(リモコン通信モードb)、着座検知開始信号C及び着座検知停止信号Cを送信可能であると共に、リモコン40の送信部50からの信号(後述するスイッチ操作信号及び着座検知用受信信号E)を受信可能とされている。なお、この受信部30の動作例の詳細については、後述する。
【0053】
また、リモコン40の送信部50は、スリープモードとウェイクアップモードとに切替可能とされている。スリープモードにおいては、便座ボックス22からの信号(上記着座検知開始信号C)を受信可能とされている。このスリープモードにおいては、着座検知用発信信号Dの送信が停止されている。一方、ウェイクアップモードにおいては、便座ボックス22に向けて着座検知用発信信号Dの送信が間欠的に送信されると共に、便座ボックス22からの信号(上記着座検知停止信号C)を受信可能とされている。さらに該リモコン40の送信部50は、スリープモードとウェイクアップモードのいずれにおいても、スイッチ41〜43の操作信号を送信可能とされている。なお、スリープモードにおいて上記着座検知開始信号Cを受信するとウェイクアップモードに移行し、ウェイクアップモードにおいて上記着座検知停止信号Cを受信するとスリープモードに復帰する。この送信部50の動作例の詳細についても、後述する。
【0054】
上記受信部30のアンテナα及び送信部50のアンテナβからは、好ましくは2.4〜2.5GHzの電波を送受信可能とされている。本実施の形態では、このアンテナαとして、第13図(a)、(b)の通り、主ビームとサイドローブとを送信するものを用いる。これにより、1本のアンテナαを用いて、便器21の前方の人体に向けて信号を送信することができると共に、リモコン40に向けて信号を送信することができる。但し、主ビームが便器21の前方からリモコン40までの広範囲を放射するアンテナαを用いてもよい。なお、アンテナβとしては、アンテナαよりも放射角度の小さい(指向性の高い)ものを用いることができる。これらアンテナα及びアンテナβは、人体が便座23に着座したときに、これらアンテナα、βが該着座者の上半身を挟むような位置に設置されている。これらアンテナα、βの設置位置は、便座23の上面よりも高位となっている。
【0055】
このように構成された着座検知装置の動作例について以下に説明する。
【0056】
<トイレルーム内に人体が入室していない場合>
トイレルーム内に人体が入室していない場合には、以下に説明する通り、便座ボックス22が人体検知モードaのみを行う第1モードになると共に、リモコン40がスリープモードとなっている。
【0057】
この人体検知モードaにおいては、便座ボックス22内の人体検知信号送受信回路31が作動する。これにより、アンテナαから人体検知用発信信号A(第12図)が間欠的に送信される。また、該信号Aが人体を反射してなる人体検知反射信号B(第12図)を、該人体検知信号送受信回路31が受信可能とされる。但し、現時点では人体が入室していないため、人体検知反射信号Bは受信されない。
【0058】
また、このスリープモードにおいては、リモコン40の送信部50からの着座検知用発信信号D(第12図)の発信が停止されている。これにより、消費電力の節約が図られる。
【0059】
<トイレルーム内に人体が入室した場合>
トイレルーム内に人体が入室すると、以下に説明する通り、便座ボックス22が人体検知モードaとリモコン通信モードbとを繰り返す第2モードになると共に、リモコン40がウェイクアップモードとなる。これにより、便座ボックス22内の受信部30は、人体検知モードaの期間において入室した人体を検知すると共に、リモコン通信モードbの期間において入室した人体の着座の有無を判定する。
【0060】
すなわち、トイレルーム内に人体が入室すると、上記人体検知用発信信号Aが人体に反射してなる人体検知反射信号Bが、人体検知信号送受信回路31によって受信され、人体の入室が検知される。人体の入室が検知されると、先ず便座ボックス22内の該切替回路33が電波通信送受信回路32を作動させ、アンテナαからリモコン40に向けて着座検知開始信号C(第12図)を送信させる。次いで、第9図に示す通り、該切替回路33が人体検知信号送受信回路31と電波通信送受信回路32とを交互に作動させることにより、人体検知モードa(人体検知信号送受信回路31が作動するモード)と以下に説明するリモコン通信モードb(電波通信送受信回路32が作動するモード)とを繰り返す第2モードに移行する。
【0061】
この着座検知開始信号Cをリモコン40の送受信回路51がアンテナβを介して受信すると、リモコン40がウェイクアップモードとなり、第12図に示す通り、送信部50が着座検知用発信信号Dを間欠的に送信する。
【0062】
このリモコン40からの着座検知用発信信号Dは、便座ボックス22内の受信部30が上記リモコン通信モードbになっている期間にアンテナαによって受信されると、電波通信送受信回路32が着座検知用受信信号Eとして受信する。現時点では、人体が便座23に着座していないため、この着座検知用発信信号Dが着座者によって遮断されることはなく、この着座検知用受信信号E(E)は高強度となる(第12図)。
【0063】
一方、受信部30が人体検知モードaになっている期間には、上記の通り、便座ボックス22内の人体検知信号送受信回路31が、人体検知用発信信号Aを送信すると共に人体検知反射信号Bを受信する。第12図に示す通り、入室した人体が洋風便器21に近づくに従い、この人体検知反射信号B(B〜B)の強度は高くなる。
【0064】
このように、人体検知モードaのときには入室した人体を検知することができ、リモコン通信モードbのときには人体の着座の有無を判定することができる。なお、人体検知モードaの1回の継続期間は0.01〜0.5mS特に0.01〜0.1mSであるのが好ましく、リモコン通信モードbの1回の継続期間は8〜9mS特に8.9〜9mSであるのが好ましい。人体検知モードaの1回の継続期間は、リモコン通信モードbの1回の継続期間の0.1〜5%特に0.1〜1%であるのが好ましい。
【0065】
<人体が着座した場合>
このように便座ボックス22が第2モードかつリモコン40がウェイクアップモードとなっている状態において、人体が着座すると、受信部30が着座を判定する。
【0066】
すなわち、人体が便座23に着座すると、人体検知モードaの期間において、便座ボックス22内の人体検知信号送受信回路31が人体検知反射信号B(第12図)を検知する。この着座時には、非着座時よりも人体が受信部30に近づいているため、着座時の人体検知反射信号Bの強度は非着座時の人体検知反射信号B〜Bの強度よりも大きい。
【0067】
また、リモコン通信モードbの期間において、便座ボックス22内の電波通信送受信回路32が、着座検知用受信信号Eを受信する。ここで、着座した人体が、リモコン40からの上記着座検知用発信信号Dの一部を遮断するため、着座時における着座検知用受信信号Eの強度は、着座前の着座検知用受信信号Eの強度と比べて著しく小さくなる。
【0068】
この着座時における着座検知用受信信号Eの強度の変化(信号Eの強度−信号Eの強度)と、上記人体検知反射信号Bの強度とに基づいて、人体の便座23への着座が判定される。
【0069】
この着座が判定されると、便座ボックス22の制御信号出力回路35がシャワー駆動回路36及びビデ駆動回路37を作動可能とする。これにより、リモコン40のスイッチ41,42が操作されるとシャワー洗浄及びビデ洗浄が行われ、スイッチ43が操作されるとこれら洗浄が停止される。このように、着座時にのみシャワー洗浄及びビデ洗浄を行うことが可能であるため、誤って離座時にこれらスイッチ41,42を操作したときに、シャワーノズル及びビデノズル(図示略)から便器21の外側に水が噴射されることが防止される。
【0070】
なお、リモコン40のスイッチ41〜43が操作されると、第9図の該人体検知モードaの期間よりも長時間にわたり、スイッチ操作信号が送信される。これにより、該人体検知モードaの期間中にスイッチ41〜43が操作されたときであっても、その次のリモコン通信モードbにおいて確実にスイッチ操作信号を電波通信送受信回路32が受信することができ、シャワー洗浄及びビデ洗浄を確実に行うことが可能である。但し、該人体検知モードaの期間中にスイッチ41〜43が操作されたときには、その次のリモコン通信モードbに移行するまで待機してからスイッチ41〜43の操作信号を発信するようにしてもよい。このようにしても、確実にスイッチ操作信号を電波通信送受信回路32が受信することができる。
【0071】
<人体が離座し、トイレルームからの退室を開始した場合>
人体が離座して便器21から離れるに従い、人体検知モードaで検知される人体検知反射信号B〜B(第12図)が小さくなる。また、リモコン通信モードbで検知される着座検知用受信信号Eの強度が着座時の着座検知用受信信号Eよりも大きくなる。
【0072】
この離座時における着座検知用受信信号Eの強度の変化(信号Eの強度−信号Eの強度)と、該人体検知反射信号Bの強度とに基づいて、人体の便座23への離座が判定される。この離座が判定されると、便座ボックス22の制御信号出力回路35は、シャワー駆動回路36及びビデ駆動回路37を作動不能となる。
【0073】
<人体がトイレルームからの退室を完了した場合>
人体がトイレルームから退室すると、人体検知モードaにおいて、人体検知反射信号Bが検知されなくなる。これにより、人体が退室したと判定され、便座ボックス22のアンテナαから着座検知停止信号Cを送信した後、便座ボックス22が第1モードに復帰する。
【0074】
また、この着座検知停止信号Cをリモコン40のアンテナβが受信することにより、リモコン40がスリープモードに戻り、着座検知用発信信号Dの送信が停止される。
【0075】
なお、上記人体検知用発信信号A、人体検知反射信号B、着座検知開始信号C,着座検知停止信号C、着座検知用発信信号D、着座検知用受信信号E及びリモコン40の各スイッチ41〜43のスイッチ操作信号は、それぞれ、周波数、波形、振幅等を異ならせて区別可能とされている。
【0076】
本実施の形態によると、人体の着座を高精度にて判定することができる。すなわち、仮に人体検知反射信号B〜Bの強度に基づいて着座を判定する場合、当該信号Bの強度は人体が便器21に近づくに従って徐々に変化するため、着座を高精度に判定することが困難である。これに対して本実施の形態では、アンテナα及びアンテナβが、着座者の上半身を挟む位置に設けられているため、着座時に着座検知用受信信号Eが急激に減少し、着座を高精度に判定することができる。さらに本実施の形態では、この着座検知用受信信号Eに加えて上記人体検知反射信号Bをも考慮して着座を判定しているため、着座をより高精度に判定することができる。但し、この着座検知用受信信号Eのみに基づいて着座を判定してもよい。
【0077】
上記実施の形態では、切替回路33を設置することにより、人体検知信号送受信回路31と電波通信送受信回路32とでアンテナαを兼用するようにしているが、切替回路33を省略し、これら回路31,32のそれぞれに専用のアンテナα,αを設けてもよい。この場合、人体の検知を継続している期間において、上記第2モード(第9図)のように人体検知モードaとリモコン通信モードbとが重複しないようにこれらのモードを交互に行ってもよいが、重複させてもよく、例えば人体検知モードa及びリモコン通信モードbの少なくとも一方を常時継続してもよい。また、人体検知信号送受信回路31専用のアンテナαは、リモコン40に向けて電波を送信する必要がないため、便器前方(第13図の主ビームの方向)のみに電波を送信する、指向性の高いアンテナを用いることができる。なお、人体検知信号送受信回路31及び電波通信送受信回路32の発信回路が兼用となっていてもよく、これにより、コストの低減及び受信部30のコンパクト化が図られる。
【0078】
本実施の形態では、トイレルーム内に人体が入室していないときに、人体検知用発信信号Aを間欠的に送信しているが、連続的に送信してもよい。但し、間欠的に送信する方が、リモコン40の消費電力を節約することができる点で好ましい。
【0079】
本実施の形態では、トイレルーム内の人体の入室がない場合には、リモコン40からの着座検知用発信信号Dの送信を停止しているため、リモコン40の電力消費量が節約される。但し、公衆トイレなどのように使用頻度が高い場合などにあっては、入室がない場合でも着座検知用発信信号Dの送信を継続してもよい。
【0080】
本実施の形態では、着座検知用送信信号Dをリモコン40が送信し、着座検知用受信信号Eを便座ボックス22が受信しているが、反対に、着座検知用送信信号Dを便座ボックス22が送信し、着座検知用受信信号Eをリモコン40が受信するようにしてもよい。
【0081】
[その他の実施の形態]
本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、第2の実施の形態における送信部50をリモコン40とは別体とし、この送信部50をリモコン40から離隔した場所に設置してもよい。これにより、リモコン40の設置位置に拘束されることなく、人体の着座をより精度よく検知し得る箇所に、この送信部50を設置することができる。この送信部50の設置箇所としては、トイレルームの壁面でもよく、天井面でもよく、トイレルームのドアでもよい。また、第2の実施の形態の受信部30を便座ボックス22とは別体としてもよい。また、送信部50及び受信部30を便座ボックス22及びリモコン40とは別体とし、これらをトイレルームの壁面、天井面、ドア等に設けてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1,18 洋風便器
2 タンクカバー
3,13,16 便座
5 便座ヒータ
6 発信器
12,15,22 便座ボックス
受信部30
31 人体検知信号送受信回路
32 電波通信送受信回路
33 切替回路
40 リモコン
50 送信部
51 送受信回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の便座への着座を検知する着座検知装置において、
着座者検知用電波信号を送信する送信部と、
該着座者検知用電波信号を受信する受信部と、
該受信部の受信信号強度の低下に基づいて着座の判定を行う判定手段と
を有する着座検知装置であって、
該送信部及び該受信部が、着座した人体を挟む位置に設けられており、
該送信部及び該受信部の少なくとも一方が倒伏状態の便座の上面よりも高位に設けられていることを特徴とする着座検知装置。
【請求項2】
請求項1において、便器の前方に存在する人体を検知する人体検知センサを有しており、
前記送信部及び前記受信部の少なくとも一方は、該人体検知センサが人体を検知すると作動することを特徴とする着座検知装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、便座支持部材と、該便座支持部材に支持された便座とを有しており、
前記送信部は、該便座支持部材のうち倒伏状態の該便座の上面よりも高位に設けられており、
前記受信部は、該便座の少なくとも前部に設けられていることを特徴とする着座検知装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
便座の起立又は倒伏を検知する便座状態検知手段と、
該便座状態検知手段の検知結果と前記受信部の受信信号強度の低下とに基いて着座の判定を行う判定手段と
を備えたことを特徴とする着座検知装置。
【請求項5】
請求項1又は2において、便座支持部材と、該便座支持部材内に配置された機器と、該機器を遠隔操作するためのリモコンとを有しており、
前記送信部及び前記受信部のうち、一方が該便座支持部材に設けられており、他方が該リモコンに設けられていることを特徴とする着座検知装置。
【請求項6】
請求項5において、前記便座支持部材は、便器の前方に存在する人体を検知する人体検知センサと、該人体検知センサの人体検知に基づいて前記リモコンに起動信号を送信する起動信号送信手段とを有しており、
該リモコンは、該起動信号を受信するとウェイクアップモードに移行することを特徴とする着座検知装置。
【請求項7】
請求項5又は6において、前記着座者検知用電波信号は、前記リモコンの機器操作信号とは異なることを特徴とする着座検知装置。
【請求項8】
請求項1又は2において、便座支持部材と、該便座支持部材内に配置された機器と、該機器を遠隔操作するためのリモコンとを有しており、
前記送信部が、該便座支持部材及び該リモコンから離隔した場所に設けられており、
前記受信部が、該便座支持部材に設けられていることを特徴とする着座検知装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−37331(P2012−37331A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176425(P2010−176425)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】