説明

着脱可能な自由に回転する止血弁

【課題】弁ハブが取り付けられるカテーテルに対するハブの様々な配置が容易なアクセスポートを提供する。
【解決手段】ハウジング内に収容された止血弁2を含む弁ハブであって、ハウジングが上部および下部を有し、アクセスポートが止血弁の垂直軸に合わせて配置されており、弁ハブの下部が、弁ハブがその垂直軸の周りを自由に回転するようにルアーフィッティングなどのコネクタ5内に係合されている弁ハブに関する。また、そのような弁ハブおよびカテーテルを含む医療装置、ならびに、そのような装置の組み立て方法およびそのような装置を用いる医療処置の実施方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内インターベンションおよび他の医療処置の分野において静脈または動脈用アクセスカテーテル、カテーテルイントロデューサ、ガイドシースおよびイントロデューサシースなどの装置と共に使用される止血弁および弁ハブ、ならびに、弁、弁ハブおよびカテーテルまたはイントロデューサを含む医療装置、そのような装置の組み立て方法および患者に対する医療処置の実施方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願の参照)
本発明は、2008年9月19日に出願された米国仮特許出願第61/098,502号に基づき優先権を主張するものであり、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
イントロデューサやカテーテルは、医療処置で使用されることが多く、一般に、患者の体外の場所から患者の体内部位、例えば、脈管構造への管腔アクセスを提供するように設計されている。典型的なイントロデューサまたはカテーテルは、体内に薬剤を送達すること、患者の体内から組織を取り出す導管として機能させること、電気刺激を与えること、診断検査のために機能を測定すること、あるいは、検査または治療のためにカメラやプローブなどを患者の体内に導入することを含む様々な目的のために使用することができる。
【0004】
通常、導入カテーテルは、患者の脈管構造内にその一端から挿入され、その近位端(すなわち、体の外側にある端部)は、処置中の失血を最小にするための弁を含む。様々な用途において、カテーテルの近位端に、患者の体の管腔を通る望ましくない血液の流れを防止するための弁を設けることができる。例えば、イントロデューサまたはカテーテルを静脈または動脈などの患者の体の管腔内に最初に挿入する際は、多くの場合、カテーテルによって出血を制御することが望ましい。脈管構造からの望ましくない血液の流れを防止するように設計された弁は通常止血弁と呼ばれる。
【0005】
止血弁および他の弁は、一般に、患者の体外の場所にある管腔アクセス装置に取り付けられている。該弁のカテーテルへの取付部分は、ルアーロックフィッティングの形態であることが多い。ルアーロックフィッティングは、一般に、圧嵌/螺嵌によって一緒に保持される雄型と雌型を連結するテーパー式フィッティングを含む。
【0006】
また、手術によっては、2つ以上のカテーテルを挿入しなければならない場合もある。
【0007】
従って、弁を含む弁ハブは、弁、ルアーフィッティング、および、該弁ハブの軸に合わせて配置されたアクセスポートだけではなくそれ以上を含む場合もある。例えば、医療処置にとって有益であれば、第2のアクセスポートを設けてもよい。ただし、第2のアクセスポートが該弁ハブと同軸上には配置されていない。第2のアクセスポートは、サイドアームを含むサイドポートアタッチメントの形態であってもよい。
【0008】
従って、弁ハブの軸に合わせて配置されていない弁ハブの任意の形態(feature)によって、弁ハブが取り付けられるカテーテルに対するハブの様々な配置が提供される。例えば、サイドアームを含むサイドポートアタッチメントは、ハブから斜めに延びていてもよく、この角度は、医療処置に関連する多くの機能上の理由から重要である場合がある。該ハブがそのルアーフィッティングに関して固定されている場合、サイドアームを含む止血弁の形態とそれが取り付けられるカテーテルとの間には一定の関係が存在することもある。
【0009】
止血弁によって、カテーテルへの取り付け前に、ルアーフィッティングとの関係で使用者にハブの形態を選択させることが多い。従って、ハブとカテーテル(ひいては、止血弁に取り付けられる任意の構造物(features))との関係は、特定の医療処置における固有の要求または目的によって影響を受けることがあるため、処置者は医療処置前に選択することができる。ただし、一旦止血弁をカテーテルに固定して取り付けてしまうと、ハブをルアーフィッティングに対して回転させることができなくなってしまう。従って、該弁の相対的回転を可能にする前にルアー接続を部分的または完全に解放しなければならない。そのため、処置の途中で患者の要求または処置者の要求が変わった場合、あるいは、患者または処置用機器の位置を移動させなければならない場合には、処置者は弁またはカテーテルの位置を再調整することができない。これは、明らかに不便なことであり、最悪な状況ではさらなる失血などの合併症を引き起こす可能性がある。
【0010】
さらに、様々な状況において、外科的処置での弁/カテーテルの組み合わせの有用性が限られている場合もある。例えば、大きな組織片または他の大きな物体を患者の体から取り出す場合、あるいは、弁を迂回してカテーテル内に器具を直接挿入することが望ましいと思われる場合などである。そのような状況では、カテーテルをルアーフィッティングから一時的に取り外すことができ、さらには、組織または他の物体をそこから取り出すことができると共に、弁をカテーテルに再び取り付けた後、処置を継続することができると有利である。
【発明の概要】
【0011】
従って、当該技術分野では、弁ハブを回転可能にし、ルアーフィッティングとは独立して構成することができ、かつ、医療処置中の使用における柔軟性、適応性および容易性を向上させる改良された装置および方法が求められている。
【0012】
特定の実施形態では、本発明は弁ハブに関し、この弁ハブは、
(a)垂直軸およびその垂直軸に合わせて配置されたアクセスポートを有する静的止血弁と、
(b)上部および下部を含み、静的止血弁を収容するハウジングと、
を含み、
該弁ハブの下部が、該止血弁がその垂直軸の周りを自由に回転するようにコネクタの内部に係合されている。
【0013】
特定の実施形態では、本発明は医療装置に関し、この医療装置は、
(a)細長い本体を有するカテーテルと、
(b)上端および下端を有するコネクタと、
(c)自由に回転する弁ハブと、
を含み、
該カテーテルが該コネクタの下端を介して該コネクタに接続され、自由に回転する該弁ハブが該コネクタの上端を介して該コネクタに接続されている。
【0014】
他の実施形態では、本発明は医療装置の組み立て方法に関し、この方法は、
(a)カテーテルの一端をコネクタの下端に取り付ける工程と、
(b)弁ハブの下部を該コネクタの上端内に挿入する工程と、
を含み、
工程(b)の後も、該弁ハブがその垂直軸の周りを完全に回転する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】現在の技術による弁の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による止血弁の斜視図である。
【図3】現在の技術による弁の側面断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による止血弁の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の開示において引用される全ての参考文献は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。ただし、本明細書での用語の定義と引用される任意の参考文献との間に矛盾がある場合には、本開示内容に従う。
【0017】
本発明で使用される「上の」および「下の」、ならびに、「上部の」および「下部の」という用語はそれぞれ相対的記述として使用され、図に示されている方向を指す。例えば、「上の」および「上部の」という用語は、図2および図4に描かれている装置の上および上部に一致する方向を指す。しかし、当業者であれば、実際には、本明細書に示されている相対的方向を維持しながら本発明の装置を任意の方向に回転させることができることが分かるであろう。
【0018】
様々な実施形態では、本発明は、コネクタ内に係合されている間も完全かつ自由に回転可能な弁ハブを含む装置に関する。様々な実施形態では、本発明は、医療処置の過程でカテーテルからの取り外しおよびカテーテルへの再取り付けが可能な弁ハブのみ、あるいは、弁ハブおよびコネクタの組み合わせを含む装置に関する。
【0019】
添付の図に示す例示の実施形態では、装置のハウジングは、クロスカット弁(cross-cut valve:CCV)ハウジング内に収容された静的止血弁である。本発明で使用される「弁ハブ」という用語は、CCVハウジング内に収容されたこの静的止血弁を指すように使用される。本発明の弁ハブは、全体または一部が、ガラス、金属、あるいは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む任意のプラスチック材料などのポリマー材料、ならびに、ゴム、繊維ガラス、あるいは、医療装置に有用であり、不活性かつ滅菌可能な任意の他の材料で作製されていてもよい。
【0020】
特定の実施形態では、CCVハウジングは、「x」に類似した一般的な形態の2つのスリットを含む。特定の実施形態では、一方のスリットがハウジングの上面に配置され、他方のスリットが底面に配置されている。本発明の装置では、例えば、スリットのパターンを変えたほかの種類の弁が有用な場合もある。本発明で使用される「静的止血弁」という用語によって、本発明の実施形態において有用な弁を、チューヒー・ボースト(Tuohy-Borst)型回転弁と区別する。
【0021】
様々な実施形態では、本発明のコネクタ(例えば、ルアーロックフィッティング)は、弁ハブ(ハウジング内に配置された弁を含む弁ハブ)の底面に取り付けられている。図4に示す実施形態では、CCVハウジングは、止血弁を収容し、該ハウジングは、ハウジング内の該弁へのアクセスを可能にする穴を画定するキャップ1をさらに含む。従って、特定の実施形態では、該弁をハウジング内に事前に収容してもよく、次いで、弁ハブ全体をコネクタ内に挿入することができる。あるいは、他の実施形態では、最初にハウジングをコネクタ内に挿入し、キャップ1によって画定された穴を通してハウジング内に弁全体を別々に挿入してもよい。特定の実施形態では、弁ハブの組み立て時にキャップは存在していないが、組み立て完了後にキャップ1を取り付けて弁を所定の位置に保持する。特定の実施形態では、キャップによって弁ハブの上部全体を覆う。該キャップは弁ハブの上方だけでなく両側にも延びる大型のキャップである。
【0022】
また、図4に示す実施形態はサイドアームコネクタ6も含む。サイドアームは本発明の実施形態にとって有用な場合もある、というのは、サイドアームは、造影剤または薬物(例えば、抗凝固薬、疼痛治療または外科医が必要であるとみなす任意の他の病状のための薬物)などの各種薬剤の注入ならびに吸引のための経路、および、例えば、検査および診断あるいは医療処置時の患者の病状の監視のための血液サンプルまたは組織サンプルなどの物質を取り出すための経路を提供できるからである。該サイドアームから挿入可能でさらに有用な薬剤については、Stevensに付与された米国特許第5,693,025号に記載されている。その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
現在の技術には、回転するハウジングフィッティングまたはロックカラーを有する止血弁を目的とした医療装置について教示または示唆するものはない。例えば、Chuらに付与された米国特許第5,989,223号および第5,489,274号は、回転可能な弁遮断装置について記載されている。これらの特許文献では、回転は、画定された通路を創出または遮断するために、装置の一部の開放/弛緩または閉鎖/締め付けを行う機能を有する。従って、回転は本発明の装置および方法のように自由ではない、というのは、いずれその一部が完全に弁内にねじ込まれるか、あるいは、弁から完全に緩められて取り外され、その結果、処置が中断されるからである。本発明では、このような結果を、弁ハブおよびハウジングフィッティングまたはロックカラーの持続的で自由な回転を可能にすることで回避する。
【0024】
図1および図3はそれぞれ、当該技術分野で現在使用されている弁の斜視断面図である。これらの図から分かるように、現在使用されている弁はハウジング内に完全に固定された下部弁棒を含むため、ハウジング内に収容されている間はその位置を変えることや回転させることができない。これにより密閉が得られるが、この密閉は弁の形態の柔軟性を犠牲にして行われる。図3は下部弁棒がロックカラー内に固定されている状態を示している。
【0025】
対照的に、本発明の装置および方法は、弁ハブ(すなわち、弁+ハウジング)がコネクタ内に保持されている間でも完全に回転することができ、該弁ハブをその所望の位置から取り外すことなく弁ハブの自由な回転が可能であるということを特徴とする。特定の実施形態では、ガスケットの存在により、密閉をさらに強化することができ、それにより漏出を防ぎながらも、なお弁がその垂直軸の周りを円滑かつ自由に回転することができる。特定の実施形態では、油、シリコーン、シロキサンを含有する組成物または摩擦係数が低い任意の他の組成物などの潤滑組成物を添加することによって、円滑かつ自由な回転がさらに促進される。
【0026】
従って、本発明の医療装置は、公知の装置よりも多くの利点を提供する。例えば、弁ハブが常に完全に回転可能であるため、操作者は、医療処置などの過程で変更が生じる可能性のある他の器具の位置、患者の要求、患者の位置によって必然的に決定される部品の相対的位置を調整することができる。これは、該装置がサイドアームを含む場合に特に有用である。従来から使用されている装置および方法では、弁および/またはカテーテルを四方八方に動かす場合であっても接続状態を安定に保つために、外科医または操作者の時間および注意力を装置の監視に費やされなければならないため、サイドアームの存在により処置が複雑になる。しかし、本発明では、弁ハブが回転可能であることから、医療処置の中断を懸念することなく、部品をより容易に取り扱うことができる。弁ハブまたは該装置の他の部品を取り外した後復元できないことを懸念することなく、操作者は注意力をより効果的に実際の処置に集中させることができる。
【0027】
図4は、内部部品を含む、本発明の装置の断面図である。弁ハブを提供するためのハウジング3内に収容された弁2が示されており、ハウジング上にキャップ1がさらに示されている。該ハウジングは、上部7および下部8を含む。図4に示す実施形態では、コネクタの内部は、ハウジング8の下部に沿った点で弁ハブと接触するガスケット4、ならびに、ハウジングの下部を収容するコネクタ(この場合、ルアーロックフィッティング)5をさらに含む。また、サイドポートアタッチメント6も示されている。図4から分かるように、該ガスケットによってさらなる密閉が得られ、それにより弁ハブを一定の位置に保つことができ、さらに、医療処置の前、医療処置の間および医療処置の後でも弁ハブを常に自由に回転させることができるにも関わらず、コネクタからの離脱を防止することができる。本発明で使用される「自由に回転する」という用語は、回数の制限なしに、コネクタに取り付けられた状態で弁ハブの位置を実質的に変えることなく、あるいは、医療処置におけるそれらの本来の目的に応じた装置の望ましい機能を損なうことなく、弁ハブがほぼ垂直な軸の周りを最大360°(すなわち、1周)回転することができることを意味する。
【0028】
特定の実施形態では、コネクタはルアーフィッティングである。該コネクタは、弁ハブの下部に接続している上端と、カテーテルの端部に着脱可能に取り付けることができる下端を有する。特定の実施形態では、コネクタの下端は、ネジ山9をさらに含んでいてもよい。カテーテルまたはイントロデューサへの接続は解放可能であるため、必要性が生じた場合には、操作者(例えば、外科医、看護師または技術者)がカテーテルをルアーフィッティングから取り外し、所望であればいつでもそれを再び取り付けて処置を継続することができる。様々な実施形態では、操作者が行う取り付けおよび再取り付け工程は手作業で行なってもよい。取り付けの際には、カテーテルとコネクタの下端によって密閉が得られるが、この密閉は、患者に悪影響を与えることなく、操作者が必要に応じて容易に解放および再密閉されることが好ましい。特定の実施形態では、クランプ、除去可能な接着剤または通常の接着剤、あるいは、医療処置の過程で操作者によって容易かつ好都合に取り外しおよび再取り付け可能な任意の同様な手段によって、コネクタまたはカテーテルのどちらか一方を互いに対してねじ込んで取り付けてもよい。
【0029】
特定の実施形態では、本発明の医療装置は、医療装置の技術分野で一般に使用されるカテーテルまたはイントロデューサを含む。特定の実施形態では、カテーテルは、ガラス、プラスチックまたは他のポリマー材料を含む柔軟なカテーテルであってもよく、細長くてもよいし、使用時は比較的平らな状態であってもよく(すなわち、成形不可能な軟質の可撓性材料で構成されていてもよく)、あるいは、医療装置を患者の管腔内に容易に挿入させるために様々に湾曲した形状に変形可能な十分な硬さを有していてもよい。他の実施形態では、カテーテルは、その原形とは実質的に異なる他の形状に手作業で成形することができない程、完全に剛体であってもよい。カテーテルは、様々な実施形態では、細長いあるいは湾曲した形状であってもよい。
【0030】
特定の実施形態では、本発明は、弁ハブをコネクタに挿入する工程を含む、医療装置の組み立て方法に関する。特定の典型的な実施形態では、使用者は最初にコネクタにまだ取り付けられていないハウジングを用意する。弁を該ハウジング内に挿入し、キャップを所定の位置に配置して該弁ハブを用意してもよい。次いで、ガスケットを該コネクタの内部に滑り込ませた後、弁ハブをコネクタ内にはめ込んでもよい。あるいは、該ガスケットを弁ハブのハウジング部分の下部に滑り込ませ、所定の位置に保持すると共に、両方をコネクタ内に挿入してもよい。他の実施形態では、先にハウジングをコネクタに取り付けた後、弁をハウジング内に挿入してもよい。
【0031】
弁ハブを一旦コネクタ内に係合させた後は、その2つの部品のその後の分離を、例えば、コネクタの上部近傍での締まりばめによって防止してもよい。つまり、弁ハブの下部(本発明で使用される「弁ハブの下部」および「ハウジングの下部」という用語は、同義で用いられる)をコネクタ内の大径領域の所定の位置に保持すると共に、コネクタの上部に隣接する小径によって、弁ハブの下部のコネクタからの容易な離脱を防止してもよい。他の実施形態では、小径部は、コネクタの内部に沿った隆起部または突起部、あるいは、多数のタブの存在によって創出される。例えば、弁ハブの下部の一部または複数を下方に押圧された際に曲がることができる可撓性材料で作製してもよく、それにより、弁ハブの下部を、小径部を通過させてコネクタ内に挿入し、次いで、小径部領域の下方の位置に一旦はめ込み、大径部領域に完全にはめ込むことができるため、弁ハブの下部がコネクタ内に係合され、容易に離脱できなくなる。
【0032】
様々な実施形態では、弁ハブは、使用者が弁ハブの下部をルアーフィッティング内に容易に挿入することができるが、挿入されると、コネクタの大径部分が弁ハブの下部を所定の位置に保持し、弁ハブがコネクタから逆方向(上方)に滑落することを不可能にするように設計されている。つまり、弁ハブの下部を所定の位置に一旦「はめ込んで」しまうと、垂直位置に関しては、ルアーフィッティング内のその位置は固定される。ただし、弁ハブはなお連続的しかも間断なく、その垂直軸の周りを円周方向円形概ね水平方向に回転することができる。弁ハブの垂直方向に沿った幅または直径におけるこの差異は、例えば、弁ハブの長さに沿った窪み部分、あるいは隆起部などによって実現することができる。様々な実施形態では、弁ハブは、弁ハブの下部の断面幅が徐々に変化するように構成されている。例えば、弁ハブの最下位端を、全く力をかけずに小径領域を通過させる程に狭くしてもよい(ただし、必ずしも狭くするわけではない)が、弁の中央に向かう断面が小径部領域よりも幅広になり、それにより、弁ハブは、一旦十分な力で小径部領域を通過させて下方に押圧されると、所定の位置に保持される。
【0033】
特定の実施形態では、弁ハブの上部および下部の直径を一様にしてもよい。特定の実施形態では、重力などの力、あるいは、隆起部、突起部または多数のタブが下向きに配置された状態に保たれる自然な傾向のために、隆起部、突起部または多数のタブが所定の位置に留まっているため、隆起部、突起部または多数のタブを通過させる弁ハブの下部の挿入は容易に達成できるが、方向を逆にすること(すなわち、弁ハブの下部の取り外しを試みること)は容易に達成し得ないような方向に(例えば、下方に湾曲させて)コネクタの内部に沿って隆起部、突起部または多数のタブを配置してもよい。このようにして、本発明によって想定される他の方法では、その2つを一旦取り付けると、弁ハブがコネクタ内に保持される。
【0034】
また、本発明の医療装置の使用中に密閉を保つために、弁ハブの下部が、挿入して使用する際にガスケットと接触するように、ガスケットをコネクタの内部に設けてもよい。様々な実施形態では、ガスケットは、図4の断面で示しているような弁の周囲全体を囲む環状リングの形態であってもよい。そのような環状リングは、コネクタの内部または弁ハブの下部の一体部分であるか、あるいは、弁ハブの下部と接触する分離したリングまたはタブであってもよく、医療処置を容易にするための潤滑または密閉を与える。特に、弁ハブが該処置の間ずっと回転していることが想定される場合、該ガスケットは、様々な部品の円滑な回転の中断を防止したり、あるいは、コネクタ内の密閉を維持し、それにより漏出およびその後の処置の中断を回避するという有利な目的を果たすこともある。該ガスケットは、CCVハウジングとコネクタとを密着嵌合し、弁ハブまたは止血弁を通る流体の流入または流出を防止するのに役立つ。該ガスケットは、どのような追加の要素を該弁または該コネクタに取り付けても、CCVハウジングおよびコネクタの自由な回転を妨害しない。
【0035】
特定の実施形態では、本発明は、患者に対する医療処置の実施方法に関し、この方法は、
(a)コネクタの上端が本明細書に開示する実施形態による自由に回転する弁ハブと係合している状態で、カテーテルの第1の端部をコネクタの下端に着脱可能に取り付ける工程と、
(b)該カテーテルの第2の端部を患者の体の内部に挿入する工程と、
(c)該弁ハブをその垂直軸の周りを自由に回転させながら該カテーテルの位置を変える工程と、を含む。特定の実施形態では、本方法は、
(d)該カテーテルの第1の端部を該コネクタの下端から取り外す工程と、
(e)該カテーテルの第1の端部を該コネクタの下端に再び取り付ける工程と、
(f)該医療処置を継続する工程と、をさらに含んでいてもよい。
【0036】
締まりばめの重要な態様は、コネクタが任意の他の構造と係合されているか否かに関わらず、コネクタ(例えば、ルアーロックフィッティング)および弁ハブの自由な回転が可能であることである。該弁ハブは、コネクタ内に完全に係合されていても、コネクタの内部に配置された弁ハブの下部によって形成された軸の周りを自由に回転することができる。
【0037】
従って、該弁ハブは、コネクタがカテーテルなどの管腔アクセス装置と係合しているか否かに関わらず、コネクタ、例えばルアーロックフィッティングとは独立して回転することができる。従って、該弁ハブは、管腔アクセス装置との任意の関係で位置づけられ、いつでも任意の方法でその位置づけを変えることができる。
【0038】
本明細書で述べるように、本発明の装置および方法は、当該技術分野で知られている装置よりも多くの異なる利点を提供する。ほとんどの医療処置で見られるように、カテーテルおよび他の管腔アクセス装置を患者の体内に挿入する工程、ならびに、それらを頻繁に抜き出して装置を交換する工程は、多くの場合、操作を多くし、それにより、そのような物体に「衝突する」可能性を高めることに繋がる。当該技術分野で知られている弁の場合、弁がネジ機構によって取り付けられている場合には、偶発的な衝突によって、様々な部品のネジが緩み、その結果、漏出、不便および予想し得る危険が生じる可能性がある。
【0039】
さらに、医療装置が患者の体内の特定の所望の位置にある場合、移動させることが困難な場合もある。さらなる自由度を与えること(すなわち、弁ハブを自由に回転させることができること)によって、工程をより単純かつ便利にする。さらに、本発明の特定の実施形態では、カテーテルをコネクタに着脱可能に取り付けることができることにより、例えば、より大型の装置、例えば、ステントグラフト(サイズが大型の場合が多く、弁内にきつく嵌ることがある)をカテーテル内に挿入しなければならないとき、あるいは、患者の体内から組織などの物質を迅速に取り出さなければならないときに、操作者にさらなる選択肢を与えることができる。これらのいずれの場合であっても、該カテーテルの端部を該コネクタの下端から取り外し、さらなる挿入または取り外し工程を行い、該カテーテルの端部を該コネクタの下端に再び取り付け、それにより該処置を継続することは簡単なことである。
【0040】
本明細書に記載した全ての実施形態は例示であり、決して本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の精神から悦脱しない限り、本明細書に明確に記載していない他の形態で本発明を具体化してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)垂直軸および前記垂直軸に合わせて配置されたアクセスポートを有する静的止血弁と、
(b)上部および下部を含み、前記静的止血弁を収容するハウジングと、
を含み、
前記弁ハブの下部が、前記止血弁がその垂直軸の周りを自由に回転するようにコネクタの内部に係合されている弁ハブ。
【請求項2】
前記コネクタがルアーロックフィッティングである、請求項1に記載の弁ハブ。
【請求項3】
前記ハウジングの外面に、前記ハウジングおよび前記コネクタの内部の両方と接触した状態で配置されたガスケットをさらに含む、請求項2に記載の弁ハブ。
【請求項4】
前記ガスケットが前記ハウジングから取り出し可能である、請求項1に記載の弁ハブ。
【請求項5】
前記ハウジングがクロスカット弁(CCV)ハウジングである、請求項1に記載の弁ハブ。
【請求項6】
前記止血弁の前記アクセスポートと同軸上に配置されていない第2のアクセスポートを含むサイドポートアタッチメントをさらに含む、請求項1に記載の弁ハブ。
【請求項7】
前記弁ハブが、全体または一部に、ガラス、金属またはポリマー材料から選択される材料を含む、請求項1に記載の弁ハブ。
【請求項8】
前記コネクタが上端および下端を有し、前記弁ハブの下部が前記コネクタの上端によって前記コネクタ内に保持されており、カテーテルまたはイントロデューサが前記コネクタの下端によって前記コネクタに着脱可能に取り付けられている、請求項1に記載の弁ハブ。
【請求項9】
前記コネクタがカテーテルまたはイントロデューサへの接続のためのネジ山をその下端に含む、請求項8に記載の弁ハブ。
【請求項10】
(a)細長い本体を有するカテーテルと、
(b)上端および下端を有するコネクタと、
(c)自由に回転する弁ハブと、
を含み、
前記カテーテルが前記コネクタの下端を介して前記コネクタに接続され、前記自由に回転する弁ハブが前記コネクタの上端を介して前記コネクタに接続されている医療装置。
【請求項11】
前記弁ハブから延びるサイドポートアタッチメントをさらに含む、請求項10に記載の医療装置。
【請求項12】
前記弁ハブおよび前記コネクタの両方に接触しているガスケットをさらに含む、請求項10に記載の医療装置。
【請求項13】
医療装置の組み立て方法であって、
(a)カテーテルの一端をコネクタの下端に取り付ける工程と、
(b)弁ハブの下部を前記コネクタの上端内に挿入する工程と、
を含み、
工程(b)の後も、前記弁ハブがその垂直軸の周りを自由に回転する方法。
【請求項14】
患者に対する医療処置の実施方法であって、
(a)コネクタの上端が請求項1に記載の自由に回転する弁ハブと係合されている状態で、カテーテルの第1の端部を前記コネクタの下端に着脱可能に取り付ける工程と、
(b)前記カテーテルの第2の端部を患者の体内に挿入する工程と、
(c)前記弁ハブをその垂直軸の周りを自由に回転させながら前記カテーテルの位置を変える工程と、
を含む方法。
【請求項15】
(d)前記カテーテルの前記第1の端部を前記コネクタの下端から取り外す工程と、
(e)前記カテーテルの前記第1の端部を前記コネクタの下端に再び取り付ける工程と、
(f)前記医療処置を継続する工程と、
をさらに含む、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−69313(P2010−69313A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−218956(P2009−218956)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(502156504)テルモ メディカル コーポレイション (8)
【Fターム(参考)】