説明

着色ガラスセラミック材料およびそのようなガラスセラミック材料から作製された着色物品

酸化バナジウムを含む透明β−石英ガラスセラミック。そのようなガラスセラミックは、3mmの厚さに対して、赤外線範囲における良好な透過性、可視範囲における低い透過性、および青色範囲における相当な透過性を含む有利な光学的性質を有する。これらは、調理台の天板の材料として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、ここに参照することによりその全内容が引用される、2009年5月29日に出願された仏国特許出願第0953560号に優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ガラスセラミックの分野に関し、より詳細には、主結晶相としてβ−石英の固溶体を含む透明な暗色ガラスセラミックの分野に関する。そのようなガラスセラミックは、ハロゲンまたは放射熱タイプの加熱素子のような加熱素子を覆う、調理台の天板として使用できる。そのような天板は、通常3から5mmの厚さである。
【背景技術】
【0003】
β−石英ガラスセラミックから作製された物品の製造は、3つの主な連続的工程を有する。第1の工程は、無機ガラス、またはそのようなガラスの前駆体である無機原材料の混合物を溶融する工程を含み、通常は1550から1750℃の間で行われ、その後、得られた溶融ガラスを清澄する。第2の工程は、得られた溶融ガラスを冷却および成形する工程を含む。第3の工程は、冷却された成形ガラスを結晶化またはセラミック化する工程を含み、通常は適切な熱処理(結晶の核生成および成長の工程を含む)を含む。
【0004】
第1の工程に関して、ガラスの赤外線透過性を溶融のモードに適合させることが有利かもしれない。燃焼炉を使用することとの関連で(電力供給をしてまたはしないで)、溶融の効率を増加するために高い透過性(赤外線範囲で)を有するガラスを有することが好ましい。清澄作業に関して、適切な清澄剤には、As、Sb、SnO、CeO、および硫酸塩またはフッ化化合物、およびそれらの混合物が含まれる。AsおよびSb、特にAsは、広く使用されてきた。より毒性の少ない他のものが、AsおよびSbに代わるものとして最近提案されている。
【0005】
ガラスセラミックの調理台の天板、およびしたがってそれが作製されるガラスセラミックの規格は、特に厳しくてもよい。使用に適合する、機械的特性(破壊強度、熱ショック耐性等)並びに酸および塩基に対する耐化学性に加えて、そのような天板は、特定の光学的性質を有してもよい。そのような光学的性質には、以下が含まれてもよい:(i)使用中でないときに下にある加熱素子をユーザが識別できない、または識別が困難であるように、可視光の透過性が低いこと;(ii)まずユーザの目をくらませずに(熱い天板と接触して火傷する危険を減少するように)使用中の加熱素子を、および次に表示を識別できること;および(iii)特に加熱素子により生じる赤外線のエネルギー伝達特性が良好であること(食物を最短時間で加熱できるように)。
【0006】
暗色の、現行の調理台の天板は、酸化バナジウム(V)で着色される。酸化バナジウムは、溶融を行う前にガラスセラミックの前駆体であるガラスの原材料に加えてもよい。これにより、セラミック化後に得られるガラスガラスセラミックに、バナジウムの還元(+5価を有するバナジウムから+3価および/または+4価を有するバナジウムへ)に関連する、非常に深い赤褐色の陰影が与えられる。
【0007】
酸化バナジウムで着色されたこれらのガラスセラミックは、上記で想起される光学的性質を有し、特に、赤色範囲(600nmより上)の波長を通過させ、高温になった加熱素子および赤色範囲で発光する電子発光ダイオードを使用して作製される表示を、これらのガラスセラミックで作製される調理台の天板を通して目に見えるようにする。そのような天板は、青色光に対応する波長範囲450−480nmにおいて高い吸光度を有する。したがって、それらは青色電子発光ダイオードにより発される色をほとんどまたは全く透過しない。
【0008】
近年、そのようなガラスセラミック天板を通して青色表示を識別できることが要求されることが分かった。この要求を満たすために、上記の特性、特に光学的性質に加えて、青色光に対応する450から480nm(境界を含む)の間の可視範囲の波長の透過性がゼロではない天板が提案される。
【0009】
引用文献1には、赤外線範囲における透過性がMnO、Fe、CoO、NiO、V、Cr、およびそれらの混合物により調整されてもよい着色された透明ガラスセラミックが記載される。酸化バナジウムは、このガラスセラミック中に必ずしも存在しない。色素CoO、NiOおよびVの赤外線範囲の透過性における効果は識別されない。青色範囲における透過性の技術的問題は扱われていない。
【0010】
引用文献2には、主結晶相としてβ−石英の固溶体を含む透明ガラスセラミックが記載される。このガラスセラミックは、AsまたはSbを含まない。それどころか、前駆体ガラスの化学的清澄は、SnO2、CeO2、および硫酸塩またはフッ化化合物から選択される代替の清澄剤を使用して行われる。化学的清澄は、高品質の結果を得るために高温で(1700℃より高く、特に1975℃より高い温度で)行われ、少なくとも1つの還元剤と組み合わせたVにより着色される。このガラスセラミックは、4mmの厚さについて1600nmにおいて65%より大きい光透過性を有する。青色範囲における透過性の技術的問題はこの文献では扱われていない。
【0011】
引用文献3には、光源Cで測定される、全可視スペクトルに亘って積算される光透過性Yが、3mmの厚さで2.5から15までである、ガラスセラミックの調理台の天板が記載される。そのような高い透過性によって必然的に、使用中でない時に調理台の天板を通して加熱素子を見ることができるようになる。さらに、引用文献3には、所望の結果を得るため、バナジウムが主に酸化状態(V5+)で存在するためにほとんど彩色を有しない、酸化前駆体ガラスを使用することが提言される。このガラスのセラミック化中に、特にヒ素および/または鉄によりバナジウムが還元され、最終ガラスセラミックの暗色が生じる。しかしながら、セラミック化中にバナジウムは完全には還元されず、調理台の天板が受ける高温の結果として調理台の天板の使用の最中に還元され続けるであろう。これにより、調理台の天板が老朽化する現象が生じる。長い間に徐々に暗くなる。いずれにせよ、引用文献3は、青色、緑色、黄色、赤色の透過性、それどころか全ての色の透過性(示される高いY値参照)の技術的問題に関して、バナジウムの還元に実質的に基づくアプローチを生み出すものであります。
【0012】
青色の選択的透過性の特定の問題に関して、別のアプローチには、色素の共同作用を介する着色が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5,212,122号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1,313,675号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1,465,460号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記に照らして、本出願人は、酸化バナジウムを含み(すなわち暗色の)、主結晶相としてβ−石英の固溶体を含む、新しい透明ガラスセラミックを提案する。特徴として、本開示の1つの実施の形態を構成するそのような新しいガラスセラミックは、以下を同時に有する:
a)3mmの厚さに対して、1000から2500nmの間(赤外線)の任意の波長について、50%より大きいおよび有利には60%より大きい光透過性;
b)3mmの厚さに対して、光源Cで測定して、380から780nmの間の可視範囲において、1.5%から5%(境界を含む)の間の積算された透過性Y;および
c)3mmの厚さに対して、450から480nm(青色)の間の任意の波長について、0.5%より大きい、および有利には0.8%より大きい光透過性。
【0015】
このガラスセラミックは、良好な赤外線透過特性(上記のポイントa)を有する。本発明者は、著しく高い赤外線透過性は加熱時間の最適化において必ずしも好ましくないことに気付いたので、有利な改良形により、50%より大きいおよび有利には60%より大きい赤外線透過性は、1300nmにおいて80%以下にとどまることを提言する。
【0016】
このガラスセラミックは、可視光の透過性が低い(上記のポイントb)。示される積算透過性数値は、光源Cにより測定される値に対応する。
【0017】
このガラスセラミックは、青色に対応する450から480nm(境界を含む)の間の可視範囲の波長の透過性がゼロではない(上記のポイントc)。これは、3mmの厚さに対して、0.5%より大きい(有利には0.8%より大きい)前記波長の光透過性を有する。3mmの厚さに対して0.5%より大きい前記波長の光透過性は、1mmの厚さに対して約12%より大きい前記波長の光透過性に対応することに留意すべきである。
【0018】
したがって、そのようなガラスセラミックは、驚くべきことに、一方で赤色範囲および赤外線範囲において良好な透過性(TIR>50%)、および他方で、青色範囲において相当な透過性(Tblue>0.5%)を、可視範囲における全体の低い透過性(1.5%≦Y≦5%)と組み合わせる。これらの透過性数値は、3mmのガラスセラミック厚さについて与えられることが理解される。
【0019】
好ましい実施の形態に照らして、本開示のガラスセラミックは、その組成において、相当量の酸化ニッケルの不存在下で(または有利には酸化ニッケルの不存在下で)、酸化コバルトを酸化バナジウムと組み合わせる。
【0020】
所望のガラスセラミックの特性に関して(本明細書の導入部で概要を説明した規格)、酸化コバルトは酸化バナジウムについて好ましいパートナーであることが発見された。組み合わせて使用されるこの2つの酸化物は、検討中の材料において相補的に作用することができ、以下を同時に与える:
・青色光に対応する波長の相当な透過性、
・可視範囲における低い全体透過性、および
・赤外線範囲における良好な透過性。
【0021】
その上、コバルトは、ガラスセラミックの製造中にその中において二価形態を保つという利点を有する。したがって、その吸光性は酸化還元現象の影響を受けにくい。
【0022】
ここに開示されるガラスセラミックにおいて、酸化ニッケルは、酸化コバルトの波長範囲に比較的近い波長範囲(可視)における吸光性の原因であると考えられる。しかしながら、この吸光性は強いものではないと考えられる。したがって、所望の効果(低いY透過性を有する青色範囲における透過性)を得るために、大量の酸化ニッケルが導入されてもよく、これにより赤外線範囲における透過性が必然的に損なわれる。したがって、開示されるガラスセラミックは、ある実施の形態に照らして、相当量の酸化ニッケルを含まない。いかなる場合でも、存在する場合には、酸化ニッケルは、0.02質量%未満で存在する(酸化物の質量パーセントで表されるガラスセラミック組成に関して)。
【0023】
ある実施の形態によるガラスセラミックは、以下を含む:
・酸化バナジウム;
・酸化コバルト;および
・少量のまたはゼロの酸化ニッケル(NiO≦0.02質量%)。
【0024】
有利には、酸化ニッケルは含まれない。
【0025】
酸化バナジウムは、暗色の原因となる唯一の色素として見られる従来技術のガラスセラミックにおけるよりも少ない量で存在する。通常、0.2質量%以下の含有量で存在する。通常、0.01から0.2質量%の含有量で存在する。
【0026】
酸化コバルトは、有効量、通常は0.01から0.12質量%で存在する。
【0027】
開示されるガラスセラミック組成(酸化物の質量パーセントで表される)は、以下を含む:
・0.01%から0.2%の酸化バナジウム;
・0.01%から0.12%の酸化コバルト;および
・0.02%未満の酸化ニッケル(好ましくは酸化ニッケルを含まない)。
【0028】
酸化バナジウムの含有量に関して以下が指摘されてもよい。
【0029】
上記に、吸光性の原因はバナジウムの還元形態であることが示された。したがって、開示されるガラスセラミック中に必要なバナジウム含有量は、前駆体ガラス(多少の酸化条件)および組成物中に存在する他の多価成分、特に清澄剤の溶融を行うための的確な条件の作用として、極めて広い範囲(上記で提言された範囲である0.01から0.2質量%を参照)で変化し得る。
【0030】
ガラスセラミックは、通常はAs、Sb、SnO、CeO、および硫酸塩またはフッ化化合物、およびそれらの混合物から選択され、有利にはSnO、CeO、および硫酸塩またはフッ化化合物、およびそれらの混合物から選択される(この有利な改良形によれば、AsおよびSbは使用されない)、少なくとも1つの清澄剤を含んでもよい。ガラスセラミックは、有利には清澄剤として有効量のSnOを含む。
【0031】
したがって、ガラスセラミックは、存在するバナジウムの原子価レベルに多かれ少なかれ作用し得る、上記のような清澄剤を含む。バナジウムを大いに還元する傾向にあるSnOの存在下で(AsおよびSbを使用せずに)、酸化バナジウムの含有量は、0.01から0.04質量%まで変化してもよいが(そのような含有量で十分である)、ヒ素および/またはアンチモン(例えばAsおよび/またはSb)の存在下では、0.1から0.2質量%までのより高い含有量が含まれてもよい。
【0032】
の0.01から0.04質量%の低含有量に関して(従来技術の着色ガラスセラミックにおける従来の量よりずっと低い含有量)、そこから生じる赤外線範囲における「弱い」吸光性は、開示されるガラスセラミック製品中の酸化コバルトの存在により補われるということを付け加えてもよい。
【0033】
ある改良形によれば、ガラスセラミック製品の組成は、以下を含む:
・0.1から0.2質量%の酸化バナジウム;
・0.01から0.12質量%の酸化コバルト;
・0.02質量%未満の酸化ニッケル(有利には含まない);および
・前駆体ガラスの清澄剤として、有効量のAsおよび/またはSb(この有効量は通常0.1−1質量%である)。
【0034】
好ましい別の改良形によれば、ガラスセラミックの組成はAsおよびSbを含まず、以下を含む:
・0.01から0.04質量%の酸化バナジウム;
・0.01から0.12質量%および有利には0.001から0.07質量%の酸化コバルト;
・0.02質量%未満の酸化ニッケル(有利には含まない);および
・前駆体ガラスの清澄剤として、有効量のSnO(この有効量は通常0.05−0.5質量%であり、より一般には0.1−0.5質量%であり、有利には0.2−0.5質量%である)。
【0035】
Asおよび/またはSbが存在する場合、微量で、すなわち通常は200ppm未満の量で(前駆体ガラスの清澄に関して効力のない量)、存在してもよい。この微量は、例えば、出発原料中に存在する不純物に由来する。
【0036】
以外の着色要素として、CoO(および少量のNiO)がガラスセラミックの組成中に存在してもよいが、ガラスセラミックの可視範囲および赤外線範囲における透過性を著しく変えないように(および赤外線範囲における前駆体ガラスの透過性を著しく減少しないように)、少量である。有利には、開示されるガラスセラミックは、活性着色剤としてVおよびCoOを含む。
【0037】
ガラスセラミックは、出発原料中に不純物として存在する酸化鉄(Fe)を含む傾向がある。有利には、酸化鉄は、0.1質量%以下で存在し、したがって透過特性を著しく変えない。
【0038】
ここに開示されるガラスセラミックの概念は、任意の特定のタイプのβ−石英ガラスセラミックに限定されない。任意のタイプのβ−石英ガラスセラミック、特に組成が(酸化物の質量パーセントで表される)以下で実質的に構成されるβ−石英ガラスセラミックにおいて有効かもしれない:

そのような組成は、As、SbおよびSnOから選択される有効量の少なくとも1つの清澄剤を含む。
【0039】
有利には、開示されるガラスセラミックは、組成が(酸化物の質量パーセントで表される)以下で実質的に構成されるβ−石英ガラスセラミックを含む:

上記の組成は、与えられた酸化物のリスト「で実質的に構成される」ことが示された。これは、上記の組成において、列挙される酸化物の合計が少なくとも95質量%および通常は少なくとも98質量%を示すことを意味する。これは、組成中に酸化ランタンまたは酸化イットリウムのような他の成分が少量で見られることを完全に排除するものではない。VおよびCoO以外の色素の存在は所望でない。
【0040】
さらなる実施の形態によれば、本開示は、開示されるガラスセラミック組成から少なくとも部分的に作製される物品に関する。この物品は有利には、ここに開示されるガラスセラミック組成から完全に作製される。
【0041】
この物品は有利には、調理台の天板に属する。そのような調理台の天板は通常、完全にガラスセラミックから作製されるが、部分的にのみガラスセラミックから作製されることを排除しない(同じ天板上で、例えば、β−石英の領域と不透明β−リシア輝石の領域が存在し得る)。
【0042】
しかしながら、本出願の分野は、調理台の天板に限定されない。開示される物品は、特に調理器具または光学フィルタに属してもよい。
【0043】
さらなる実施の形態によれば、本開示は、開示されるガラスセラミックの前駆体である、リチウムアルミノケイ酸ガラスに関する。このガラスは有利には、上記のように、NiOをほとんどおよび好ましくは全く含まずに、VおよびCoOを両方(最も有利にはV、CoOおよびSnOを)含む組成を有する。このガラスは有利には、3mmの厚さに対して、1000から2500nmの間の任意の波長について、60%より大きい光透過性を有する。これにより溶融が容易となる。
【0044】
さらなる実施の形態によれば、上記のようなガラスセラミックを製造する方法が開示される。この方法は、連続的な溶融、清澄およびその後のセラミック化を確実にする条件下で、そのようなガラスセラミックの前駆体であるリチウムアルミノケイ酸ガラスの、またはそのようなリチウムアルミノケイ酸ガラスの前駆体である無機原材料の混合物の、熱処理を含む。この方法を、適切な材料を用いて行い、ここに開示されるようなガラスセラミックである、上記の新しい光学的性質を有する暗色β−石英ガラスセラミックを得ることができる。有利には、ある実施の形態によるガラスセラミック(すなわち組成がV、CoOを含み、NiOをほとんどまたは全く含まないガラスセラミック)の組成に対応する組成のガラスまたは無機ロード(load)を用いて行われる。
【0045】
さらなる実施の形態によれば、上記のような物品を製造する方法が開示される。この方法は、以下を含む:
・リチウムアルミノケイ酸ガラス、またはそのようなガラスの前駆体である無機原材料の混合物を溶融する工程であって、このガラスまたは混合物が、少なくとも1つの清澄剤を有効量であるが過剰量ではなく含み、その後に得られた溶融ガラスを清澄する工程;
・得られた清澄溶融ガラスを冷却し、同時に、標的の物品に所望の形態に成形する工程;および
・成形されたガラスをセラミック化する工程。
【0046】
この方法を、適切な材料を用いて行い、上記の新しい光学的性質を有するβ−石英ガラスセラミックを含む、またはそれから構成される構造である物品を得る。有利には、ある実施の形態によるガラスセラミック(すなわち組成がV、CoOを含み、NiOをほとんどまたは全く含まないガラスセラミック)の組成に対応する組成のガラスまたは無機ロードを用いて行われる。
【0047】
上記の2つの方法のセラミック化工程を行って、β−石英ガラスセラミックを得る。これは2つの連続的な工程を含む:
・通常15分間から2時間の間、製品が通常680℃から820℃の温度にされる、核生成の(第1)工程、および
・通常15分間から2時間の間、製品が通常870℃から990℃の温度にされる、結晶成長の(第2)工程。この結晶成長処理があまりに長くおよび/またはあまりに高温で行われると、β−石英の固溶体は、β−シリア輝石の固溶体に変わり、製品の不透明化を伴うことが当業者によく知られている。
【0048】
溶融が燃焼炉で行われる(および電力供給をするまたはしない)場合に特に有利である、上記の2つの方法のある改良形によれば、前駆体ガラス(出発材料として使用されるまたは無機ロードの溶融から生じる)は、3mmの厚さに対して、1000から2500nmの間の任意の波長について、60%より大きい光透過性を有する。したがって、溶融(および清澄)工程を最適化し得る。
【0049】
およびCoOの共同作用に基づいて、開示される実施の形態により得られるガラスセラミックおよびガラスセラミック物品の特徴的な着色は、このガラスセラミックおよびガラスセラミック物品を得るための方法の的確な実施条件(使用される出発材料、溶融温度等)の影響をやや受けやすい。これは非常に好都合な点である。
【0050】
さらなる実施の形態によれば、本開示は、上記の光学的性質を有するガラスセラミックまたは物品の調製のため、有利には上記の好都合な改良形によるガラスセラミックまたは物品の調製のために、酸化バナジウムおよび酸化コバルトを組み合わせた使用に関する。上記の規格(赤外線範囲における良好な透過性、可視範囲における低い透過性および青色範囲における相当な透過性)に関しては、ガラスセラミック相補作用内で、これらの2つの色素が引き起こす範囲で、組み合わせた使用を示すことが可能である。これらの2つの色素は、相当量の酸化ニッケルの不存在下で、有利には酸化ニッケルの不存在下で、およびいかなる場合でも0.2質量%未満の酸化ニッケルの存在下で、使用される。
【0051】
これらは有利には、清澄剤として作用するSnOの存在下で使用される。導入する様々の酸化物の有効量に関しては、上記を参照のこと。当業者は、本開示の価値をすでに理解したであろう。上記の開示は、次に以下の実施例により説明される。
【発明を実施するための形態】
【0052】
実施例A(実施の形態)および比較例1および2
前駆体ガラスの1kgバッチを製造するために、以下の表1の第1欄に与えられる比率(酸化物の質量パーセントで表される比率)で、出発材料を丁寧に混合する。
【0053】
混合物をケイ酸るつぼ中に置き、1650℃で溶融する。
【0054】
溶融の後、ガラスを6mmの厚さに巻き、680℃で1時間焼き戻す。
【0055】
ガラスの赤外線(IR)透過性Tを、3mm厚の研磨サンプルで測定した。
【0056】
次に、ガラスのサンプル(約10cm×10cmのプレートの形態)を、以下の熱処理にかけることによりセラミック化した:
・700℃への急速加熱、
・3℃/分の加熱速度で700℃から800℃への加熱、
・12℃/分の加熱速度で800℃から925℃への加熱、
・925℃で15分間の維持、
・炉の冷却速度における冷却。
【0057】
得られたガラスセラミックプレートの光学的性質を、研磨サンプルの3および1mm厚で測定した。光源C(2°におけるオブザーバ)を使用した。
【0058】
ガラスおよびガラスセラミックの光学的性質は、以下の表1の第2欄に与えられる。
【0059】
実施例Aは、ある実施の形態の例である。
【0060】
例1および2は、比較例である。例1のガラスセラミックは、過剰量のCoOを含み、赤外線範囲において過度に低い透過性を示す。例2のガラスセラミックは、NiOを含み、可視範囲で過度に高い透過性および赤外線範囲で過度に低い透過性を有する。
【表1】

【0061】
実施例B、C、DおよびE(実施の形態)
前駆体ガラスの2kgバッチを製造するために、以下の表2の第1欄に与えられる比率(酸化物の質量パーセントで表される比率)で、出発材料を丁寧に混合する。
【0062】
混合物を白金るつぼ中に置き、1650℃で溶融する。
【0063】
溶融の後、ガラスを6mmの厚さに巻き、650℃で1時間焼き戻す。
【0064】
ガラスの赤外線(IR)透過性Tを、3mm厚の研磨サンプルで測定した。
【0065】
次に、ガラスのサンプル(約10cm×10cmのプレートの形態)を、以下の熱処理にかけることによりセラミック化した。
【0066】
実施例B:
・650℃への急速加熱、
・650℃から820℃への24分間に亘る上昇、
・820℃から880℃への10分間に亘る上昇、
・880℃で10分間の維持、
・炉の冷却速度における冷却。
【0067】
実施例CおよびD:
・650℃への急速加熱、
・650℃から820℃への24分間に亘る上昇、
・820℃から970℃への10分間に亘る上昇、
・970℃で10分間の維持、
・炉の冷却速度における冷却。
【0068】
実施例E:
・650℃への急速加熱、
・650℃から820℃への31分間に亘る上昇、
・820℃から920℃への7分間に亘る上昇、
・920℃で10分間の維持、
・炉の冷却速度における冷却。
【0069】
得られたセラミック化ガラスプレート(ガラスセラミックプレート)の光学的性質を、3mm厚の研磨サンプル上で測定した。光源C(2°におけるオブザーバ)を使用した。
【0070】
ガラスおよびガラスセラミックの光学的性質は、以下の表2の第2欄に与えられる。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化バナジウムを含み、主結晶相としてβ−石英の固溶体を含む透明ガラスセラミックであって、以下:
3mmの厚さに対して、1000から2500nmの間の任意の波長について、50%より大きい光透過性;
3mmの厚さに対して、光源Cで測定して、380から780nmの間の可視範囲において、1.5%から5%の間の積算された透過性Y;および
c)3mmの厚さに対して、450から480nmの間の任意の波長について、0.5%より大きい光透過性、
を有することを特徴とするガラスセラミック。
【請求項2】
酸化バナジウム、酸化コバルトおよび0.02質量%未満の酸化ニッケルを含む組成を有することを特徴とする請求項1記載のガラスセラミック。
【請求項3】
酸化物の質量%で表して、以下:
0.01%から0.2%の酸化バナジウム、および
0.01%から0.12%の酸化コバルト、
を含む組成を有することを特徴とする請求項2記載のガラスセラミック。
【請求項4】
清澄剤として、0.1から0.2質量%の量で、有効量のAsおよび酸化バナジウムを含む組成を有することを特徴とする請求項2または3記載のガラスセラミック。

【公表番号】特表2012−528064(P2012−528064A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512518(P2012−512518)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/IB2010/052388
【国際公開番号】WO2010/137000
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(501059442)
【Fターム(参考)】