説明

着色硬化性組成物、カラーフィルタ、その製造方法、固体撮像素子、液晶表示装置、および色素多量体

【課題】色純度、耐光性、耐熱性、耐溶剤性に優れ、色移りが少なく、パターン成形性の良好な硬化膜を形成し得る色素多量体を含む着色硬化性組成物を提供する。
【解決手段】(a)キサンテン骨格を色素部位の部分構造として含む色素多量体、(b)重合性化合物、(c)光重合開始剤、及び、(d)有機溶剤を含有する着色硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置や固体撮像素子等に用いられるカラーフィルタの製造に好適な着色硬化性組成物、カラーフィルタ、その製造方法、固体撮像素子、液晶表示装置、および色素多量体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や固体撮像素子等に用いられるカラーフィルタを製造する方法の1つに、顔料分散法があり、この顔料分散法としては、顔料を種々の感光性組成物に分散させた着色硬化性組成物を用い、フォトリソ法によってカラーフィルタを製造する方法がある。すなわち、着色硬化性組成物を基板上にスピンコーターやロールコーター等を用いて塗布し、乾燥させて着色硬化性組成物の塗布膜を形成し、該塗布膜をパターン露光し現像することによって、着色された画素を得る。この操作を所望の色相分だけ繰り返すことで、カラーフィルタを作製する。
上記の方法は、顔料を用いることから光や熱に対して安定であると共に、フォトリソ法によってパターニングを行うことから位置精度が充分に確保され、液晶表示装置用カラーフィルタ等の製造に好適な方法として広く利用されてきた。
【0003】
一方、CCD等の固体撮像素子用のカラーフィルタにおいては、近年、更なる高精細化が望まれている。高精細化に伴い、パターンのサイズは微細化される傾向にあるが、従来から広く利用されてきた顔料分散法では、パターンのサイズをより微細化し解像度をより向上させることは困難と考えられている。その理由の一つは、微細なパターンにおいては、顔料粒子が凝集してできる粗大粒子が、色ムラを発生させる原因となるからである。したがって、近年では、これまで汎用に用いられてきた顔料分散法は、固体撮像素子のような微細パターンが要求される用途には、必ずしも適さない状況となっている。
【0004】
上記の背景のもと、高精細化、高解像度を達成するために、従来から着色剤として染料を用いることが検討されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、染料含有の着色硬化性組成物は、以下に示すような新たな問題点を有している。すなわち、
(1)分子分散状態である染料は、一般に分子集合体である顔料に比べて、耐光性、耐熱性に劣る、
(2)分子分散状態である染料は、一般に分子集合体である顔料に比べて、耐溶剤性に劣る、
(3)染料は、着色硬化性組成物中の他の成分との相互作用を示すことが多く、硬化部、非硬化部の溶解性(現像性)の調節が難しい、
(4)染料のモル吸光係数(ε)が低い場合には多量の染料を添加しなければならず、そのために着色硬化性組成物中の重合性化合物(モノマー)やバインダー、光重合開始剤等の他の成分を減らさざるを得ず、着色硬化性組成物の硬化性、硬化後の耐熱性、露光後の現像性等が低下する、等である。
【0005】
染料が抱えるこれらの問題点のうち、(4)染料のモル吸光係数(ε)を解決する染料として、キサンテン類(例えば、特許文献2参照。)があるが、耐光性、耐熱性は他の染料に対して劣る化合物が多く、その改善が強く望まれている。
また、染料を含む着色硬化性組成物には上記した問題点以外に、色移りの問題がある。
例えば、形成した緑色画素上に赤色画素を設けるために、赤色の染料を含む着色硬化性組成物を緑色画素上に塗設し、緑色の画素上の未露光の赤色硬化性組成物層を現像除去するが、緑色画素中の染料が赤色硬化性組成物に溶出し、或いは赤色着色硬化性組成物中の染料が緑色画素に移行し、緑色画素が消色、変色したり、緑色画素が赤味を帯びたりする現象、いわゆる「色移り」が発生しやすく、その改善が強く望まれている。
【0006】
さらに、染料を含む着色硬化性組成物には、着色画素を形成するカラーフィルタの製造工程、カラーフィルタを固体撮像素子等に組み込む工程等で着色画素が熱を受けたときに、染料の耐熱性の問題点以外に、染料が昇華しやすく、染料の昇華によって着色画素が消色、変色し、所望の色相が得られないといった問題点もあり、昇華した染料によって製造工程が汚染されるというような問題点もある。これを防止する技術として、重合性基を付与した染料を着色硬化性組成物に用いることが提案されている(例えば、特許文献3参照。)が、前述の色移り等に対しては十分な効果が得られず、また耐熱性の更なる改善が待ち望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−75375号公報
【特許文献2】特開2010−32999号公報
【特許文献3】特開2000−162429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
染料としてキサンテン類を含有する着色硬化性組成物には、より優れた耐光性と耐熱性が要求されていた。また、前記の問題点(2)に記載のように、染料を着色成分として用いるには耐溶剤性を向上させることが求められていた。
耐溶剤性とは、硬化部における着色成分が溶剤に溶出せず、着色画素中に保持される性能である。フォトリソ法によりRGBカラーフィルタを製造する際、各色のパターンを逐次的に形成させるため、着色パターンの上に色相の異なる着色硬化性組成物が覆う。その際、硬化部における着色成分が次色の着色硬化性組成物に溶出したり、次色の着色硬化性組成物に含まれる染料が着色画素に移行したりすると混色の問題が発生するため、カラーフィルタ製造工程では硬化部には高い耐溶剤性が求められる。この点、染料は分子分散状態であり、強い分子間力で集合体を形成している顔料に比べて耐溶剤性に劣る。
さらに、カラーフィルタの製造では、塗布、露光、現像工程後に、着色パターンの硬化度を上げるため加熱処理を行うことがあるので、硬化部での染料の固定性も問題になる。分子分散状態である染料は、分子集合体である顔料に比較して、小さな熱エネルギーで運動できるため、色相の異なる隣接パターンへ色移りしやすく、硬化部での染料の固定性は大きな課題であった。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
すなわち、本発明の第1の目的は、色純度、耐光性、耐熱性、耐溶剤性に優れ、色移りが少なく、パターン成形性の良好な硬化膜を形成し得る色素多量体を含む着色硬化性組成物を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、薄層化された場合でも、色純度、耐熱性、耐光性に優れた着色パターンを有するカラーフィルタ、該カラーフィルタの製造方法、該カラーフィルタ具備する固体撮像素子、および液晶表示装置を提供することにある。
さらに、本発明の第3の目的は、色純度、耐光性、耐熱性、耐溶剤性に優れ、色移りが少なく、パターン成形性の良好な着色硬化性組成物を形成し得る色素多量体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、各種色素を詳細に検討した結果、特定の構造を有するキサンテン化合物が良好な色相と高い吸光係数を有し、該キサンテン骨格を色素多量体に導入すること、特には、キサンテン骨格に重合性基を導入し重合成分として色素多量体にすることで、高い耐溶剤性を備え、色移りを低減し得る着色硬化性組成物を提供でき、かつ、上記色素多量体に必要によりアルカリ可溶性基を導入することで、パターン形成性に優れる(アルカリ現像液の濃度依存性が小さい)着色硬化性組成物を提供できるとの知見を得、本発明はかかる知見に基づいて達成された。
【0011】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> (a)キサンテン骨格を色素部位の部分構造として含む色素多量体、(b)重合性化合物、(c)光重合開始剤、及び、(d)有機溶剤を含有する着色硬化性組成物。
【0012】
<2> 前記キサンテン骨格が、下記一般式(M)で表されるキサンテン化合物由来の色素骨格である<1>に記載の着色硬化性組成物。
【0013】
【化1】

【0014】
〔一般式(M)中、R、R、R、およびRは各々独立に水素原子又は1価の置換基を表し、Rは各々独立に1価の置換基を表し、mは0から5の整数を表す。〕
【0015】
<3> 前記(a)色素多量体が、下記一般式(A)、一般式(B)、および一般式(C)で表される構成単位の少なくとも一つを含んでなるか、又は、一般式(D)で表される色素多量体である<1>又は<2>に記載の着色硬化性組成物。
【0016】
【化2】

【0017】
〔一般式(A)中、Xは重合によって形成される連結基を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、Dyeは前記一般式(M)から任意の水素原子を1個取り除いた色素残基を表す。〕
【0018】
【化3】

【0019】
〔一般式(B)中、Xは重合によって形成される連結基を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、AはDyeとイオン結合もしくは配位結合可能な基を表し、Dyeは前記一般式(M)から水素原子を1個除くことによりAとイオン結合もしくは配位結合可能な色素残基を表す。〕
【0020】
【化4】

【0021】
〔一般式(C)中、Lは単結合または2価の連結基を表し、Lが複数存在する場合はLの構造は同じであっても異なっていてもよい。Dyeは前記一般式(M)から任意の水素原子を2個取り除いた色素残基を表す。n3は1〜4の整数を表す。〕
【0022】
【化5】

【0023】
〔一般式(D)中、Lはn4価の連結基を表し、n4は2〜100の整数を表し、複数あるDyeは各々独立に前記一般式(M)から任意の水素原子を1個取り除いた色素残基を表す。〕
【0024】
<4> 前記(a)色素多量体が、さらにアルカリ可溶性基を有する色素多量体である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の着色硬化性組成物。
<5> 前記(c)光重合開始剤が、オキシム系化合物である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の着色硬化性組成物。
<6> <1>〜<5>のいずれか1項に記載の着色硬化性組成物を用いてなるカラーフィルタ。
<7> <1>〜<5>のいずれか1項に記載の着色硬化性組成物を基板上に塗布し、マスクを介して露光し、現像してパターン像を形成するカラーフィルタの製造方法。
【0025】
<8> <6>に記載のカラーフィルタを具備する固体撮像素子。
<9> <6>に記載のカラーフィルタを具備する液晶表示装置。
【0026】
<10> 下記一般式(M)で表されるキサンテン化合物由来の色素骨格を色素部位の部分構造とキサンテン骨格を色素部位の部分構造として含む色素多量体。
【0027】
【化6】

【0028】
〔一般式(M)中、R、R、R、およびRは各々独立に水素原子又は1価の置換基を表し、Rは各々独立に1価の置換基を表し、mは0から5の整数を表す。〕
【0029】
本発明は、画素パターンが薄膜(例えば厚み1μm以下)に形成され、2μm以下の微少サイズ(基板法線方向からみた画素パターンの辺長が例えば0.5〜2.0μm)の高精細さが求められ、良好な矩形の断面プロファイルが要求される固体撮像素子用のカラーフィルタの形成に特に有効である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、色純度、耐光性、耐熱性、耐溶剤性に優れ、色移りが少なく、パターン成形性の良好な硬化膜を形成し得る色素多量体を含む着色硬化性組成物を提供することができる。
また、薄層化された場合でも、色純度、耐熱性、耐光性に優れた着色パターンを有するカラーフィルタ、該カラーフィルタの製造方法、該カラーフィルタ具備する固体撮像素子、および液晶表示装置を提供することができる。
さらに、色純度、耐光性、耐熱性、耐溶剤性に優れ、色移りが少なく、パターン成形性の良好な着色硬化性組成物を形成し得る色素多量体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明の着色硬化性組成物、カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、固体撮像素子、液晶表示装置、および色素多量体について詳述する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0032】
本発明の着色硬化性組成物は、(a)キサンテン骨格を色素部位の部分構造として含む色素多量体、(b)重合性化合物、(c)光重合開始剤、及び、(d)有機溶剤を含有することを特徴とする。
本発明の着色硬化性組成物に用いる(a)キサンテン骨格を色素部位の部分構造として含む色素多量体について説明する。
【0033】
≪(a)キサンテン骨格を色素部位の部分構造として含む色素多量体≫
本発明における色素多量体は、以下に詳述するキサンテン骨格を色素部位の部分構造として含む色素多量体である。本発明の色素多量体に、キサンテン骨格を導入する方法は任意であり、重合性の単量体にキサンテン骨格を導入したものを重合、或いは、共重合させて多量体を得てもよく、多量体を形成した後に、高分子反応などによりキサンテン骨格を導入してもよい。
好ましい態様としては、上記一般式(A)、一般式(B)、及び、一般式(C)で表される少なくとも一つの構成単位を含んでなる多量体、または、上記一般式(D)で表される色素多量体が挙げられる。
【0034】
<本発明における色素多量体の好ましい物性>
本発明における色素多量体は、色純度、耐光性、耐熱性、耐溶剤性に優れ、色移りが少なく、パターン成形性の良好な硬化膜を形成し得ることから、カラーフィルタの着色パターン形成に好適な着色硬化性組成物に用いうる。そのような観点から、本発明における色素多量体の好ましい物性を挙げれば、本発明における色素多量体を着色硬化性組成物に適用する場合、着色パターン形成性を向上させる観点から、本発明における色素多量体は、アルカリ可溶性基を有することが好ましい。
【0035】
本発明における色素多量体にアルカリ可溶性基を導入する方法としては、特に制限はないが、アルカリ可溶性基を有する単量体を用いて色素多量体を合成することで導入することができ、また、色素多量体を合成した後にアルカリ可溶性基を導入することができる。
アルカリ可溶性基を有する単量体を用いて色素多量体を合成する場合、前記一般式(A)、一般式(B)、及び、一般式(C)で表される構成単位の少なくとも一つを含んでなる色素多量体、または前記一般式(D)で表される色素多量体の少なくとも1種が、アルカリ可溶性基を有していればよい。前記一般式(A)、一般式(B)、及び、一般式(C)で表される構成単位が、アルカリ可溶性基を有する単量体である場合、Dye部分(色素残基)にアルカリ可溶性基を有していてもよい。合成適合性の観点からは、Dye部分(色素残基)を有する構成単位を形成する単量体よりも、共重合成分として含まれる他のエチレン性不飽和結合含有単量体の少なくとも1種がアルカリ可溶性基を有する単量体であることが好ましい。
【0036】
本発明における色素多量体が有する好ましいアルカリ可溶性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、ヒドロキシル基、スルホンイミド基であり、好ましくは、カルボキシル基、スルホン酸基である。
また、前記した色素多量体の共重合成分として含まれる他のエチレン性不飽和結合含有単量体の好ましい単量体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−メチル−p−カルボキシスチレン等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等のジカルボン酸、メタクリルオキシエチルホスホン酸、スチレンスルホン酸、p−ヒドロキシスチレンなどであり、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0037】
本発明における色素多量体は、着色硬化性組成物に適用した場合の着色パターン形成性の観点から、アルカリ可溶性基を、酸価10〜400mgKOH/g含むことが好ましく、酸価30〜300mgKOH/g含むことがより好ましく、酸価50〜200mgKOH/g含むことが更に好ましい。
本発明において、酸価はJIS規格(JIS K 0070:1992)記載の方法により求める。
【0038】
本発明における色素多量体は、アルカリ溶液(pH9〜15)への溶解度が0.1質量%以上、80質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上、50質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上30質量%であることが好ましい。この領域にあることで、本発明の色素多量体を着色硬化性組成物等のアルカリ現像が必要な用途に使用する場合に、好適な形状の形成や、基板上の残渣を低減することができるようになる。
【0039】
本発明における色素多量体は、以下の有機溶剤に溶解することが好ましい。有機溶剤としては、エステル類(例えば、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル等)、エーテル類(例えばメチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、ケトン類(メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)が挙げられ、これら溶剤に対し、1質量%以上50質量%以下溶解することが好ましく、より好ましくは5質量%以上40質量%以下、更に好ましくは10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。この領域にあることで、本発明における色素多量体を着色硬化性組成物等に適用する際に、好適な塗布面状や、他色の着色硬化性組成物塗布後の溶出による濃度低下を低減するができるようになる。
【0040】
本発明における色素多量体のTgは50℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。また、熱質量分析(TGA測定)による5%質量減少温度が、120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることが更に好ましい。この領域にあることで、本発明における色素多量体を着色硬化性組成物等に適用する際の加熱プロセスに起因する濃度変化を低減することができるようになる。
【0041】
本発明における色素多量体の最大吸収波長(λmax)は510nm以上590nm以下であることが好ましく、530nm以上、570nm以下であることが好ましく、540nm以上555nm以下であることがより好ましい。この領域にあることで、着色硬化性組成物等に適用する際、色再現性の良いカラーフィルタを作製することができる。更に、本発明の色素多量体の450nmにおける吸光度に対し、最大吸収波長(λmax)の吸光度が1,000倍以上であることが好ましく、10,000倍以上であることがより好ましく、100,000倍以上であることが更に好ましい。この比率がこの範囲にあることで、本発明の色素多量体を着色硬化性組成物等に適用する際、特に青色カラーフィルタを作製する場合に、より透過率の高いカラーフィルタを形成することができる。
【0042】
また、本発明における色素多量体の単位質量あたりの吸光係数(以後ε’と記す。ε’=ε/平均分子量、単位:L/g・cm)が、30以上であることが好ましく、60以上であることがより好ましく、100以上であることが更に好ましい。この範囲にあることで、本発明における色素多量体を着色硬化性組成物に適用しカラーフィルタを作製する場合、色再現性の良いカラーフィルタを作製することができる。
【0043】
また、本発明における色素多量体は、前記色素多量体の最大吸収波長(λmax)と単位重量あたりの吸光係数の好ましい範囲を同時に満たすことが更に好ましい。
【0044】
本発明における色素多量体の好ましい分子量としては、3,000〜100,000であり、4,000〜50,000がより好ましく、5,000〜20,000が更に好ましい。この範囲にあることで本発明の効果を遺憾なく発揮することができ、溶剤への溶解性が良好で、しかも硬化して得られた着色硬化性組成物の膜(着色画素)は、耐光性、耐熱性、および耐溶剤性が良好である。
【0045】
<本発明における色素多量体の構造>
以下に、本発明における色素多量体の構造について詳細を記載する。
本発明における色素多量体は、キサンテン骨格を色素部位の部分構造として含む。
本発明における色素多量体は、該キサンテン骨格が、下記一般式(M)で表されるキサンテン化合物由来の色素骨格であることが好ましい。
【0046】
<一般式(M)で表されるキサンテン骨格>
本発明における色素多量体の好ましい態様は、下記一般式(M)で表されるキサンテン化合物由来の色素骨格を色素部位の部分構造として含む色素多量体である。
【0047】
【化7】

【0048】
一般式(M)中、R、R、R、およびRは各々独立に水素原子又は1価の置換基を表し、Rは各々独立に1価の置換基を表し、mは0から5の整数を表す。
【0049】
前記一般式(M)におけるR〜R、およびRが1価の置換基を表す場合の1価の置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24の、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−ノルボルニル基、1−アダマンチル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜18のアルケニル基で、例えば、ビニル基、アリル基、3−ブテン−1−イル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリール基で、例えば、フェニル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル基、4−ピリジル基、2−フリル基、2−ピリミジニル基、1−ピリジル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール−1−イル基)基、シリル基(好ましくは炭素数3〜38、より好ましくは炭素数3〜18のシリル基で、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリブチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ヘキシルジメチルシリル基)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルコキシ基で、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、ドデシルオキシ基、シクロアルキルオキシ基で、例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ基、1−ナフトキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環オキシ基で、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、
【0050】
シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアシルオキシ基で、例えば、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ドデカノイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルオキシ基で、例えば、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基で、例えば、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、フェノキシカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜48、よりこの好ましくは炭素数1〜24のカルバモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N−ブチルカルバモイルオキシ基、N−フェニルカルバモイルオキシ基、N−エチル−N−フェニルカルバモイルオキシ基)、スルファモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジエチルスルファモイルオキシ基、N−プロピルスルファモイルオキシ基)、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数1〜38、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニルオキシ基で、例えば、メチルスルホニルオキシ基、ヘキサデシルスルホニルオキシ基、シクロヘキシルスルホニルオキシ基)、
【0051】
アリールスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニルオキシ基で、例えば、フェニルスルホニルオキシ基)、アシル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアシル基で、例えば、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、テトラデカノイル基、シクロヘキサノイル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルシクロヘキシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のカルバモイル基で、例えば、カルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−エチル−N−オクチルカルバモイル基、N,N−ジブチルカルバモイル基、N−プロピルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N−メチルN−フェニルカルバモイル基、N,N−ジシクロへキシルカルバモイル基)、アミノ基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のアミノ基で、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、テトラデシルアミノ基、2−エチルへキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基)、
【0052】
アニリノ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは6〜24のアニリノ基で、例えば、アニリノ基、N−メチルアニリノ基)、ヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは1〜18のヘテロ環アミノ基で、例えば、4−ピリジルアミノ基)、カルボンアミド基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは2〜24のカルボンアミド基で、例えば、アセトアミド基、ベンズアミド基、テトラデカンアミド基、ピバロイルアミド基、シクロヘキサンアミド基)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のウレイド基で、例えば、ウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基、N−フェニルウレイド基)、イミド基(好ましくは炭素数36以下、より好ましくは炭素数24以下のイミド基で、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、シクロヘキシルオキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルホンアミド基で、例えば、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、ヘキサデカンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルアミノ基で、例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ基、N−エチル−N−ドデシルスルファモイルアミノ)、アゾ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアゾ基で、例えば、フェニルアゾ基、3−ピラゾリルアゾ基)、
【0053】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルチオ基で、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、オクチルチオ基、シクロヘキシルチオ)基、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールチオ基で、例えば、フェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環チオ基で、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、2−ピリジルチオ基、1−フェニルテトラゾリルチオ基)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルフィニル基で、例えば、ドデカンスルフィニル基)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルフィニル基で、例えば、フェニルスルフィニル基)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ヘキサデシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル基、1−ナフチルスルホニル基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のスルファモイル基で、例えば、スルファモイル基、N,N−ジプロピルスルファモイル基、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル基、N−エチル−N−フェニルスルファモイル基、N−シクロヘキシルスルファモイル基)、スルホ基、ホスホニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスホニル基で、例えば、フェノキシホスホニル基、オクチルオキシホスホニル基、フェニルホスホニル)、ホスフィノイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスフィノイルアミノ基で、例えば、ジエトキシホスフィノイルアミノ基、ジオクチルオキシホスフィノイルアミノ基)を表す。
【0054】
一般式(M)中のR〜Rで示される1価の置換基が、さらに置換可能な基である場合には、R〜Rで説明した置換基をさらに有していてもよく、2個以上の置換基を有している場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0055】
一般式(M)中のRとR、RとR、および、mが2以上の場合のR同士は、各々独立に、互いに結合して5員、6員、又は7員の飽和環、又は不飽和環を形成していてもよい。形成される5員、6員、及び7員の環が、さらに置換可能な基である場合には、前記R〜Rで説明した置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
一般式(M)中のRとR、RとR、および、mが2以上の場合のR同士は、各々独立に、互いに結合して、置換基を有しない5員、6員、又は7員の飽和環、又は不飽和環を形成する場合、置換基を有しない5員、6員、又は7員の飽和環、又は不飽和環としては、例えば、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピロリジン環、ピペリジン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環が挙げられ、好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環が挙げられる。
【0056】
前記一般式(M)で表されるキサンテン骨格を有する化合物のモル吸光係数は、膜厚の観点から、できるだけ大きいほうが好ましい。また、最大吸収波長λmaxは、色純度向上の観点から、520nm〜580nmが好ましく、530nm〜570nmが更に好ましい。なお、最大吸収波長、及びモル吸光係数は、分光光度計UV−2400PC(島津製作所社製)により測定されるものである。
前記一般式(M)で表されるキサンテン骨格を有する化合物の融点は、溶解性の観点から、高すぎない方がよい。
【0057】
前記一般式(M)で表されるキサンテン骨格を有する化合物は、文献記載の方法で合成することができる。具体的には、テトラへドロン レターズ、2003年、vol.44,No.23、4355〜4360頁、テトラへドロン、2005年、vol.61,No.12、3097〜3106頁などに記載の方法を適用することができる。
【0058】
本発明におけるさらに好ましい色素多量体について説明する。
キサンテン骨格を色素部位の部分構造として含む色素多量体としては、下記一般式(A)、一般式(B)、および一般式(C)で表される構成単位の少なくとも一つを含んでなるか、又は、一般式(D)で表される色素多量体が挙げられる。これらを順次説明する。
【0059】
<一般式(A)で表される構成単位>
【0060】
【化8】

【0061】
一般式(A)中、Xは重合によって形成される連結基を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、Dyeは前記一般式(M)から任意の水素原子を1個取り除いた色素残基を表す。
【0062】
前記一般式(A)中、Xは重合によって形成される連結基を表す。すなわち重合反応で形成される主鎖に相当する繰り返し単位を形成する部分を指す。なお、2つの*で表された部位が繰り返し単位となる。Xは、置換もしくは無置換の不飽和エチレン基を重合して形成される連結基、環状エーテルを開環重合して形成される連結基等が挙げられ、好ましくは、不飽和エチレン基を重合して形成される連結基である。具体的には以下に示す連結基等が挙げられるが、本発明における重合によって形成される連結基はこれらに限定されるものではない。
なお、下記(X−1)〜(X−15)において*で示された部位でLと連結していることを表す。
【0063】
【化9】

【0064】
一般式(A)中、Lは単結合または2価の連結基を表す。Lが2価の連結基を表す場合の2価の連結基としては、炭素数1〜30の置換もしくは無置換の直鎖、分岐もしくは環状アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブチレン基など)、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフタレン基等)、置換もしくは無置換のヘテロ環連結基、−CH=CH−、−O−、−S−、−NR−、−C(=O)−、−SO−、−SO−、下記一般式(2)で表される連結基、下記一般式(3)で表される連結基、又は下記一般式(4)で表される連結基等)、及びこれらを2個以上連結して形成される連結基〔例えば、−N(R)C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)N(R)−、−C(=O)O−、ここで、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。〕を表す。一般式(A)における2価の連結基は、本発明の効果を奏しうる範囲であれば何ら限定されない。
【0065】
【化10】

【0066】
〔前記一般式(2)〜一般式(4)中、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。Rは、水素原子、又は置換基を表す。kは、0〜4の整数を表す。kが2以上のときは、Rは同じであっても異なっていてもよい。一般式(2)〜一般式(4)中、*は、一般式(A)におけるX基と結合する位置を表し、**は、一般式(A)におけるDyeと結合する位置を表す。〕
【0067】
一般式(A)中、Dyeは前記一般式(M)から任意の水素原子を1個取り除いた色素残基を表す。
【0068】
以下に、一般式(A)で表される構成単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0069】
【化11】

【0070】
【化12】

【0071】
<一般式(B)で表される構造単位>
次に、一般式(B)で表される構成単位について詳細を説明する。
【0072】
【化13】

【0073】
一般式(B)中、Xは重合によって形成される連結基を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、AはDyeとイオン結合もしくは配位結合可能な基を表し、Dyeは前記一般式(M)から水素原子を1個除くことによりAとイオン結合もしくは配位結合可能な色素残基を表す。
【0074】
一般式(B)中のXで表される基、Lは、それぞれ前記一般式(A)におけるX、Lと同義の基を表し、好ましい範囲も同じである。
一般式(B)中のAで表される基としては、Dyeとイオン結合もしくは配位結合可能な基であればよく、イオン結合できる基としては、アニオン性基、カチオン性基のどちらでもよい。アニオン性基としては、カルボキシル基、ホスホ基、スルホ基、アシルスルホンアミド基、スルホンイミド基など、pKaが12以下のアニオン性基が好ましく、より好ましくはpKaが7以下であり、更に好ましくは、5以下である。
アニオン性基として好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。なお、以下に示すアニオン性基において、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。
【0075】
【化14】

【0076】
一般式(B)中のAで表されるカチオン性基としては、置換もしくは無置換のオニウムカチオン(例えば、置換もしくは無置換のアンモニウム基、ピリジニウム基、イミダゾリウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基など)が好ましく、特に置換アンモニウム基が好ましい。
カチオン性基として好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。なお、以下に示すカチオン性基において、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。
【0077】
【化15】

【0078】
以下に、一般式(B)で表される構成単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0079】
【化16】

【0080】
【化17】

【0081】
【化18】

【0082】
【化19】

【0083】
<一般式(C)で表される構成単位>
次に、一般式(C)で表される構成単位について詳細を説明する。
【0084】
【化20】

【0085】
一般式(C)中、Lは単結合または2価の連結基を表し、Lが複数存在する場合はLの構造は同じであっても異なっていてもよい。Dyeは前記一般式(M)から任意の水素原子を2個取り除いた色素残基を表す。n3は1〜4の整数を表す。
【0086】
前記一般式(C)中、Lで表される2価の連結基としては、炭素数1〜30の置換もしくは無置換の直鎖、分岐もしくは環状アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブチレン基など)、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフタレン基等)、置換もしくは無置換のヘテロ環連結基、−CH=CH−、−O−、−S−、−NR−、−C(=O)−、−SO−、−SO−,および、これらを2個以上連結して形成される連結基(例えば、−N(R)C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)N(R)−、−C(=O)O−、−N(R)C(=O)N(R)−など)が好適に挙げられる。ここで、前記各式中のRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。
【0087】
以下に一般式(C)中のLで表される2価の連結基として好適に使用される具体例を記載するが、本発明のLとしてはこれらに限定されるものではない。
【0088】
【化21】

【0089】
以下に、一般式(C)で表される構成単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0090】
【化22】

【0091】
【化23】

【0092】
<共重合成分>
本発明における色素多量体は、前記一般式(A)、一般式(B)、及び、一般式(C)で表される構成単位のみで形成されていてもよいが、他の構成単位と共に多量化されていてもよい。他の構成単位として好ましくは、以下に示す構成単位であり、それらの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0093】
【化24】

【0094】
【化25】

【0095】
<一般式(D)で表される色素多量体>
次に、一般式(D)で表される色素多量体について詳細を説明する。
【0096】
【化26】

【0097】
一般式(D)中、Lはn4価の連結基を表し、n4は2〜100の整数を表し、複数あるDyeは各々独立に前記一般式(M)から任意の水素原子を1個取り除いた色素残基を表す。
【0098】
前記一般式(D)中、n4は好ましくは2〜80であり、より好ましくは2〜40であり、特に好ましくは2〜10である。
一般式(D)において、n4が2の場合、Lで表される2価の連結基としては、炭素数1〜30の置換もしくは無置換の直鎖、分岐もしくは環状アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブチレン基など)、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフタレン基等)、置換もしくは無置換のヘテロ環連結基、−CH=CH−、−O−、−S−、−NR−、−C(=O)−、−SO−、−SO−、および、これらを2個以上連結して形成される連結基〔例えば、−N(R)C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)N(R)−、−C(=O)O−、−N(R)C(=O)N(R)−など〕が好適に挙げられる。ここで、前記各式中のRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。
【0099】
n4が3以上のn4価の連結基は、置換もしくは無置換のアリーレン基(1,3,5−フェニレン基、1,2,4−フェニレン基、1,4,5,8−ナフタレン基など)、へテロ環連結基(例えば、1,3,5−トリアジン基など)、アルキレン連結基等を中心母核とし、前記2価の連結基が置換して形成される連結基が挙げられる。
以下に、一般式(D)で表される色素多量体の具体例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0100】
【化27】

【0101】
以下に、本発明における色素多量体として好ましい例を、その構成単位(前記構成単位)と共重合質量比及び重量平均分子量と分散度とを含めて下記表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
本発明における色素多量体は、前記一般式(A)、一般式(B)、又は、一般式(C)で表される構成単位を、その一部として含むことが好ましいが、これらの中でも、一般式(A)で表される構成単位として含まれることが好ましい。
【0104】
本発明における色素多量体は、上記一般式(A)、一般式(B)、及び、一般式(C)で表される構成単位を質量比(質量%)で100質量%含むもの、すなわち、上記一般式(A)、一般式(B)、及び、一般式(C)で表される構成単位のみが重合してなる多量体でもよい。
着色力の観点からは、一般式(A)、一般式(B)、及び、一般式(C)で表される構成単位を質量比(質量%)で、色素多量体中に10質量%〜100質量%含むことが好ましく、20質量%〜100質量%含むことがより好ましく、30質量%〜100質量%含むことがさらに好ましい。
【0105】
本発明における色素多量体の合成方法について、上記例示したS−4を例にして説明する。
<例示化合物S−4の合成>
市販のキサンテン系色素(Acid Red 289:東京化成品)23g(0.034mol)をスルホラン(150ml)に添加し、5℃において攪拌している中にクロロスルホン酸40g(0.34mol)を滴下した。この溶液を内温80℃になるまで加熱し、その温度のまま4時間攪拌した。反応液を30℃程度まで下げた後、塩化チオニル40g(0.34mol)をゆっくり滴下し、再度80℃に加熱し4時間攪拌した。反応液を氷水に注加し、析出した酸クロリド体を濾別後乾燥した。
別途、アセトニトリルに溶解した2−アミノエタノール(1.2g、0.02mol)を内温5℃に冷却し、先に得られた酸クロリド体を徐々に添加した。反応液を40℃に上げ、4時間攪拌後、氷水に注加し、析出した結晶を濾別し、乾燥することで、アルコール体(5.7g、0.008mol)を得た。
アルコール体をN、N−ジメチルアセトアミド(50ml)に溶解後、メタクリル酸クロリドを5℃で添加し、そのまま3時間攪拌した。反応液を水に注加し、析出した結晶を濾別、乾燥することで、Q−1体(4.7g、0.0072mol)を得た。
【0106】
【化28】

【0107】
得られたQ−1(4g)とメタクリル酸(0.54g)、ドデカンチオール(0.1g)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと称する。)10.0gに溶解させ、85℃で攪拌しながらジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(0.2g)をPGMEA 1gに溶解させた溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始から4時間後、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(0.2g)を追加し、85℃でさらに2時間攪拌を続けた。反応溶液に、PGMEA 200ml、メタノール200mlを加え、攪拌しながら、反応液を滴下した。析出した結晶をろ過し、得られた結晶を減圧乾燥し、例示化合物S−4を3.9g得た。
S−4の構造は、H−NMRにより、前記Q−1の重合性基部位である5.56−6.12のピークの消失と、酸価測定によるメタクリル酸の導入を確認した。
【0108】
本発明における色素多量体の分子量は、重量平均分子量(Mw)で5000〜30000の範囲、数平均分子量(Mn)で3000〜20000の範囲であることが好ましい。より好ましくは、重量平均分子量(Mw)で5000〜25000の範囲、数平均分子量(Mn)で3000〜17000の範囲である。特に好ましくは、重量平均分子量(Mw)で5000〜20000の範囲、数平均分子量(Mn)で3000〜15000の範囲である。
本発明における色素多量体を着色硬化性組成物に適用し、カラーフィルタを製造する際の現像性の観点からは、特定重合体の重量平均分子量(Mw)は20000以下であることが好ましい。
【0109】
≪着色硬化性組成物≫
本発明の着色硬化性組成物は、着色剤として、本発明における上述の色素多量体を少なくとも1種含有し、さらに(b)重合性化合物、(c)光重合開始剤、及び、(d)有機溶剤を含有する。本発明の着色硬化性組成物は、熱、光またはその両方で硬化することを特徴とするものであり、必要によって、バインダー、及び架橋剤など他の成分を用いて構成することができる。
【0110】
本発明における色素多量体がその構造中に含む、キサンテン骨格を色素部位の部分構造として有する化合物の特性によって、本発明の着色硬化性組成物は、画素パターンが薄膜(例えば、厚み1μm以下)に形成される。したがって、本発明の着色硬化性組成物は、2μm以下の微少サイズ(基板法線方向からみた画素パターンの辺長が、例えば0.5〜2.0μm)の高精細さが求められ、良好な矩形の断面プロファイルが要求される固体撮像素子用のカラーフィルタの作製に特に好適である。
【0111】
本発明の着色硬化性組成物においては、前記色素多量体を1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本発明の着色硬化性組成物中における前記色素多量体の含有量は、前記色素多量体の分子量及びモル吸光係数によって異なるが、着色硬化性組成物の全固形分成分に対して、10質量%〜70量%が好ましく、10質量%〜50質量%がより好ましく、15質量%〜30質量%が最も好ましい。
【0112】
本発明の着色硬化性組成物、及び該着色硬化性組成物を用いたカラーフィルタには、本発明の効果を損なわない範囲で、前記色素多量体以外の着色剤も併せて用いることができる。例えば、550nm〜650nmに吸収極大を有するトリアリールメタン系の着色剤(例えば、C.I.アシッドブルー7、C.I.アシッドブルー83、C.I.アシッドブルー90、C.I.ソルベント・ブルー38、C.I.アシッド・バイオレット17、C.I.アシッド・バイオレット49、C.I.アシッド・グリーン3等)、500nm〜600nmに吸収極大を有するキサンテン系の色素、例えば、C.I.アシッド・レッド289等を使用できる。
【0113】
前記トリアリールメタン系の着色剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で使用でき、本発明の着色硬化性組成物の全固形分に対して、0.5質量%〜50質量%であることが好ましい。
【0114】
また、青色フィルタアレイを作製するためには、前記色素多量体を少なくとも1種とフタロシアニン系顔料を混合して用いることが好ましい。
【0115】
(フタロシアニン系顔料)
本発明に用い得るフタロシアニン系顔料としては、フタロシアニン骨格を有する顔料であれば特に制限されるものではない。また、フタロシアニン系顔料に含まれる中心金属としては、フタロシアニン骨格を構成できる金属であればよく、特に限定されない。その中でも、中心金属としては、マグネシウム、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウムが好ましく用いられる。
具体的には、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:5、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー17:1、C.I.ピグメントブルー75、C.I.ピグメントブルー79、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン37、クロロアルミニウムフタロシアニン、ヒドロキシアルミニウムフタロシアニン、アルミニウムフタロシアニンオキシド、亜鉛フタロシアニンが挙げられる。中でも、耐光性と着色力との点から、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:6、ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2が好ましく、特に、C.I.ピグメントブルー15:6が好ましい。
【0116】
本発明におけるフタロシアニン系顔料の着色硬化性組成物中における含有量は、着色硬化性組成物の全固形分成分に対して、10質量%〜70質量%が好ましく、20質量%〜60質量%がより好ましく、35質量%〜50質量%が最も好ましい。
また、前記キサンテン骨格を色素部位の部分構造として有する色素多量体とフタロシアニン系顔料との含有比は、キサンテン骨格を色素部位の部分構造として有する色素多量体との比で表すと、フタロシアニン系顔料:色素多量体=100:5〜100:100が好ましく、100:15〜100:75がより好ましく、100:25〜100:50が更に好ましい。
【0117】
(分散剤)
本発明の着色硬化性組成物は、顔料を含む場合、分散剤を含有することができる。
本発明に用いうる顔料分散剤としては、高分子分散剤〔例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物〕、及び、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン、顔料誘導体等を挙げることができる。
高分子分散剤は、その構造から更に直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子に分類することができる。
【0118】
高分子分散剤は顔料の表面に吸着し、再凝集を防止するように作用する。そのため、顔料表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子が好ましい構造として挙げることができる。
一方で、顔料誘導体は顔料表面を改質することで、高分子分散剤の吸着を促進させる効果を有する。
【0119】
顔料表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子としては、例えば、特開平3−112992号公報、特表2003−533455号公報等に記載の末端にりん酸基を有する高分子、特開2002−273191号公報等に記載の末端にスルホン酸基を有する高分子、特開平9−77994号公報等に記載の有機色素の部分骨格や複素環を有する高分子などが挙げられる。また、特開2007−277514号公報に記載の高分子末端に2個以上の顔料表面へのアンカー部位(酸基、塩基性基、有機色素の部分骨格やヘテロ環等)を導入した高分子も分散安定性に優れ好ましい。
【0120】
顔料表面へのアンカー部位を有するグラフト型高分子としては、例えば、特開昭54ー37082号公報、特表平8−507960号公報、特開2009−258668公報等に記載のポリ(低級アルキレンイミン)とポリエステルの反応生成物、特開平9−169821号公報等に記載のポリアリルアミンとポリエステルの反応生成物、特開平10−339949号、特開2004−37986号公報等に記載のマクロモノマーと、窒素原子モノマーとの共重合体、特開2003−238837号公報、特開2008−9426号公報、特開2008−81732号公報等に記載の有機色素の部分骨格や複素環を有するグラフト型高分子、特開2010−106268号公報等に記載のマクロモノマーと酸基含有モノマーの共重合体等が挙げられる。特に、特開2009−203462号公報に記載の塩基性基と酸性基を有する両性分散樹脂は、顔料分散物の分散性、分散安定性、及び顔料分散物を用いた着色硬化性組成物が示す現像性の観点から特に好ましい。
【0121】
顔料表面へのアンカー部位を有するグラフト型高分子をラジカル重合で製造する際に用いるマクロモノマーとしては、公知のマクロモノマーを用いることができ、東亜合成(株)製のマクロモノマーAA−6(末端基がメタクリロイル基であるポリメタクリル酸メチル)、AS−6(末端基がメタクリロイル基であるポリスチレン)、AN−6S(末端基がメタクリロイル基であるスチレンとアクリロニトリルの共重合体)、AB−6(末端基がメタクリロイル基であるポリアクリル酸ブチル)、ダイセル化学工業(株)製のプラクセルFM5(メタクリル酸2−ヒドロキシエチルのε−カプロラクトン5モル当量付加品)、FA10L(アクリル酸2−ヒドロキシエチルのε−カプロラクトン10モル当量付加品)、及び特開平2−272009号公報に記載のポリエステル系マクロモノマー等が挙げられる。これらの中でも、特に柔軟性且つ親溶剤性に優れるポリエステル系マクロモノマーが、顔料分散物の分散性、分散安定性、及び顔料分散物を用いた着色硬化性組成物が示す現像性の観点から特に好ましく、更に、特開平2−272009号公報に記載のポリエステル系マクロモノマーで表されるポリエステル系マクロモノマーが最も好ましい。
【0122】
顔料表面へのアンカー部位を有するブロック型高分子としては、特開2003−49110号公報、特開2009−52010号公報等に記載のブロック型高分子が好ましい。
【0123】
本発明に用いうる顔料分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、BYKChemie社製「Disperbyk−101(ポリアミドアミン燐酸塩)、107(カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアミド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和ポリカルボン酸)、EFKA社製「EFKA4047、4050〜4010〜4165(ポリウレタン系)、EFKA4330〜4340(ブロック共重合体)、4400〜4402(変性ポリアクリレート)、5010(ポリエステルアミド)、5765(高分子量ポリカルボン酸塩)、6220(脂肪酸ポリエステル)、6745(フタロシアニン誘導体)、6750(アゾ顔料誘導体)」、味の素ファンテクノ社製「アジスパーPB821、PB822、PB880、PB881」、共栄社化学社製「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合体)」、楠本化成社製「ディスパロンKS−860、873SN、874、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル)、DA−703−50、DA−705、DA−725」、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン重縮合物)」、「ホモゲノールL−18(高分子ポリカルボン酸)」、「エマルゲン920、930、935、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン86(ステアリルアミンアセテート)」、日本ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)、22000(アゾ顔料誘導体)、13240(ポリエステルアミン)、3000、17000、27000(末端部に機能部を有する高分子)、24000、28000、32000、38500(グラフト型高分子)」、日光ケミカル者製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)」、川研ファインケミカル(株)製 ヒノアクトT−8000E、三洋化成社製イオネットS−20等が挙げられる。
【0124】
これらの顔料分散剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明においては、特に、顔料誘導体と高分子分散剤とを組み合わせて使用することが好ましい。
また、本発明の顔料分散剤は、前記顔料表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子と伴に、アルカリ可溶性樹脂と併用して用いても良い。アルカリ可溶性樹脂としては、(メタ)アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を変性した樹脂が挙げられるが、特に(メタ)アクリル酸共重合体が好ましい。また、特開平10−300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマー共重合体、特開2004−300204号公報に記載のエーテルダイマー共重合体、特開平7−319161号公報に記載の重合性基を含有するアルカリ可溶性樹脂も好ましい。
【0125】
重合性組成物における顔料分散剤の含有量としては、着色剤である顔料100質量部に対して、1〜80質量部であることが好ましく、5〜70質量部がより好ましく、10〜60質量部であることが更に好ましい。
具体的には、高分子分散剤を用いる場合であれば、その使用量としては、顔料100質量部に対して、質量換算で5〜100部の範囲が好ましく、10〜80部の範囲であることがより好ましい。
また、顔料誘導体を併用する場合、顔料誘導体の使用量としては、顔料100質量部に対し、質量換算で1〜30部の範囲にあることが好ましく、3〜20部の範囲にあることがより好ましく、5〜15部の範囲にあることが特に好ましい。
【0126】
重合性組成物において、着色剤としての顔料を用い、顔料分散剤をさらに用いる場合、硬化感度、色濃度の観点から、着色剤及び分散剤の含有量の総和が、重合性組成物を構成する全固形分に対して30質量%以上90質量%以下であることが好ましく、40質量%以上85質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上80質量%以下であることが更に好ましい。
【0127】
<(b)重合性化合物>
本発明の着色硬化性組成物は、(b)重合性化合物の少なくとも一種を含有することによって好適に構成することができる。重合性化合物は、着色硬化性組成物をネガ型に構成する場合に主として含まれる。
尚、重合性化合物は、ナフトキノンジアジド化合物を含有するポジ型の系に、後述の光重合開始剤と共に含有でき、この場合には形成されるパターンの硬化度をより促進させることができる。以下、重合性化合物について説明する。
【0128】
上記重合性化合物として、具体的には、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られているものであり、本発明においてはこれらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの(共)重合体などの化学的形態のいずれであってもよい。本発明における重合性化合物は一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0129】
モノマー及びその(共)重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)やそのエステル類、アミド類、並びにこれらの(共)重合体が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、及び不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類、並びにこれらの(共)重合体である。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と、単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物や、単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更に、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
これらの具体的な化合物としては、特開2009−288705号公報の段落番号0095〜段落番号0108に記載されている化合物を本発明においても好適に用いることができる。
【0130】
また、前記重合性化合物としては、重合性モノマーとして、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン基を有する、常圧下で100℃以上の沸点を持つエチレン性不飽和基を持つ化合物も好ましい。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、等の単官能のアクリレートやメタアクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48−41708号、特公昭50−6034号、特開昭51−37193号各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタアクリレート及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0131】
また、常圧下で100℃以上の沸点を有し、少なくとも一つの付加重合可能なエチレン性不飽和基を持つ化合物としては、特開2008−292970号公報の段落番号[0254]〜[0257]に記載の化合物も好適である。
【0132】
上記のほか、下記一般式(MO−1)〜(MO−5)で表される、ラジカル重合性モノマーも好適に用いることができる。なお、式中、Tがオキシアルキレン基の場合には、炭素原子側の末端がRに結合する。
【0133】
【化29】

【0134】
前記一般式において、nは0〜14であり、mは1〜8である。一分子内に複数存在するR、T、は、各々同一であっても、異なっていてもよい。
上記一般式(MO−1)〜(MO−5)で表されるラジカル重合性モノマーの各々において、複数のRの内の少なくとも1つは、−OC(=O)CH=CH、又は、−OC(=O)C(CH)=CHで表される基を表す。
上記一般式(MO−1)〜(MO−5)で表される、ラジカル重合性モノマーの具体例としては、特開2007−269779号公報の段落番号0248〜段落番号0251に記載されている化合物を本発明においても好適に用いることができる。
【0135】
また、重合性モノマーとして、カプロラクトン構造を有する多官能性単量体を含有することが好ましい。
カプロラクトン構造を有する多官能性単量体としては、その分子内にカプロラクトン構造を有する限り特に限定されるものではないが、例えば、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセロール、トリメチロールメラミン等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸およびε−カプロラクトンをエステル化することにより得られる、ε−カプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。なかでも下記式(i)で表されるカプロラクトン構造を有する多官能性単量体が好ましい。
【0136】
【化30】

【0137】
(式(i)中、6個のRは全てが下記式(ii)で表される基であるか、または6個のRのうち1〜5個が下記式(ii)で表される基であり、残余が下記式(iii)で表される基である。)
【0138】
【化31】

【0139】
(式(ii)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、mは1または2の数を示し、「*」は結合手であることを示す。)
【0140】
【化32】

【0141】
(式(iii)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、「*」は結合手であることを示す。)
【0142】
このようなカプロラクトン構造を有する多官能性単量体は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA−20(上記式(i)〜(iii)においてm=1、式(ii)で表される基の数=2、Rが全て水素原子である化合物)、DPCA−30(同式、m=1、式(ii)で表される基の数=3、Rが全て水素原子である化合物)、DPCA−60(同式、m=1、式(ii)で表される基の数=6、Rが全て水素原子である化合物)、DPCA−120(同式においてm=2、式(ii)で表される基の数=6、Rが全て水素原子である化合物)等を挙げることができる。
本発明において、カプロラクトン構造を有する多官能性単量体は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0143】
本発明の着色硬化性組成物中における重合性化合物の含有量は、着色硬化性組成物中の固形分に対して0.1質量%〜90質量%が好ましく、1.0質量%〜80質量%がさらに好ましく、2.0質量%〜70質量%が特に好ましい。
【0144】
本発明の着色硬化性組成物中、本発明における色素多量体と重合性化合物との含有質量比(本発明における色素多量体:重合性化合物)は、薄層化の観点から、1:2〜20:1であることが好ましく、1:1〜10:1であることがより好ましい。
【0145】
<(c)光重合開始剤>
本発明の着色硬化性組成物は、(c)光重合開始剤を含有する。
光重合開始剤は、上述の重合性化合物を重合させ得るものであれば、特に制限はなく、特性、開始効率、吸収波長、入手性、コスト等の観点で選ばれるのが好ましい。
【0146】
光重合開始剤としては、例えば、ハロメチルオキサジアゾール化合物及びハロメチル−s−トリアジン化合物から選択される少なくとも1つの活性ハロゲン化合物、3−アリール置換クマリン化合物、ロフィン2量体、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物及びその誘導体、シクロペンタジエン−ベンゼン−鉄錯体及びその塩、オキシム系化合物、等が挙げられる。光重合開始剤の具体例については、特開2004−295116号公報の段落0070〜0077に記載のものが挙げられる。中でも、重合反応が迅速である点等から、オキシム系化合物が好ましい。
【0147】
前記オキシム系化合物(以下、「オキシム系光重合開始剤」ともいう)としては、特に限定はなく、例えば、特開2000−80068号公報、WO02/100903A1、特開2001−233842号公報等に記載のオキシム系化合物が挙げられる。
具体的な例としては、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ペンタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ヘキサンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ヘプタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(エチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(ブチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、1−(o−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(o−アセチルオキシム)−1−[9−メチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(o−アセチルオキシム)−1−[9−プロプル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(o−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−エチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(o−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−ブチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノンなどが挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0148】
これらのうち、より少ない露光量で形状(特に、固体撮像素子の場合はパターンの矩形性)の良好なパターンが得られる点で、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、1−(o−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン等のオキシム−o−アシル系化合物が特に好ましく、具体的には、例えば、OXE−01、OXE−02(以上、BASF社製)等が挙げられる。
【0149】
また、本発明においては、感度、経時安定性、後加熱時の着色の観点から、オキシム系化合物として、下記式(E)、および式(F)で表される化合物がより好ましい。
【0150】
【化33】

【0151】
上記式(E)および(F)中、R及びXは、各々独立に、1価の置換基を表し、Aは、2価の有機基を表し、Arは、アリール基を表す。nは、1〜5の整数である。
【0152】
Rとしては、高感度化の点から、アシル基が好ましく、具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、トルイル基が好ましい。
【0153】
Aとしては、感度を高め、加熱経時による着色を抑制する点から、無置換のアルキレン基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ドデシル基)で置換されたアルキレン基、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基)で置換されたアルキレン基、アリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基、スチリル基)で置換されたアルキレン基が好ましい。
【0154】
Arとしては、感度を高め、加熱経時による着色を抑制する点から、置換又は無置換のフェニル基が好ましい。置換フェニル基の場合、その置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン基が好ましい。
【0155】
Xとしては、溶剤溶解性と長波長領域の吸収効率向上の点から、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオキシ基、置換基を有してもよいアリールチオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基が好ましい。
また、式(E)、および(F)におけるnは1〜2の整数が好ましい。
【0156】
以下、式(E)、および(F)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0157】
【化34】

【0158】
また、本発明の着色硬化性組成物には、上記の光重合開始剤のほかに、特開2004−295116号公報の段落0079に記載の他の公知の光重合開始剤を使用してもよい。
【0159】
光重合開始剤は、1種単独で或いは2種以上を組み合わせて含有することができる。
着色硬化性組成物の全固形分中における光重合開始剤の含有量(2種以上の場合は総含有量)は、本発明の効果をより効果的に得る観点から、3質量%〜20質量%が好ましく、4質量%〜19質量%がより好ましく、5質量%〜18質量%が特に好ましい。
【0160】
<(d)有機溶剤>
本発明の着色硬化性組成物は、(d)有機溶剤を含有する。
有機溶剤は、並存する各成分の溶解性や着色硬化性組成物としたときの塗布性を満足できるものであれば、基本的には特に制限はなく、特に、バインダーの溶解性、塗布性、安全性を考慮して選ばれることが好ましい。
【0161】
有機溶剤としては、エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸アルキルエステル類(例:オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル(具体的には、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等が挙げられる。))、3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル等(具体的には、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等が挙げられる。))、2−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル等(具体的には、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル等が挙げられる。))、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル(具体的には、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル等が挙げられる。)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等が挙げられる。
【0162】
また、エーテル類としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等が挙げられる。
ケトン類としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等が挙げられる。
芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレン等が好適に挙げられる。
【0163】
これらの有機溶剤は、前述の各成分の溶解性、及びアルカリ可溶性バインダーを含む場合はその溶解性、塗布面状の改良などの観点から、2種以上を混合することも好ましい。この場合、特に好ましくは、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選択される2種以上で構成される混合溶液である。
【0164】
有機溶剤の着色硬化性組成物中における含有量としては、組成物中の全固形分濃度が10質量%〜80質量%になる量が好ましく、15質量%〜60質量%になる量がより好ましい。
【0165】
(他の成分)
本発明の着色硬化性組成物は、上述の各成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、アルカリ可溶性バインダー、架橋剤などの他の成分を含んでいてもよい。
【0166】
−アルカリ可溶性バインダー−
アルカリ可溶性バインダーは、アルカリ可溶性を有すること以外は特に限定はなく、好ましくは、耐熱性、現像性、入手性等の観点から選択することができる。
【0167】
アルカリ可溶性バインダーとしては、線状有機高分子重合体であり、且つ、有機溶剤に可溶で、弱アルカリ水溶液で現像できるものが好ましい。このような線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマー、例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等が挙げられ、同様に側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体が有用である。また、2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステルのエーテルダイマーである特定構造の化合物を重合してなる重合体(例えば、特開2004−300203号公報に記載の化合物)等も有用である。
【0168】
本発明におけるバインダーの別の好ましい例として、下記一般式(ED)で示される化合物(以下、適宜「エーテルダイマー」と称する。)由来の構造体を重合成分として含むポリマーが挙げられる。
【0169】
【化35】

【0170】
前記一般式(ED)中、R21およびR22は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。
エーテルダイマー由来の構造単位を含むバインダーを用いることにより、本発明の重合性組成物は、耐熱性とともに透明性にも極めて優れた硬化塗膜を形成しうるという利点を有することになる。
前記エーテルダイマーを示す前記一般式(ED)中、R21およびR22で表される置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基としては、特に制限はないが、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、t−アミル、ステアリル、ラウリル、2−エチルヘキシル等の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル等のアリール基;シクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、ジシクロペンタジエニル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル等の脂環式基;1−メトキシエチル、1−エトキシエチル等のアルコキシで置換されたアルキル基;ベンジル等のアリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。これらのなかでも、特に、メチル、エチル、シクロヘキシル、ベンジル等のような酸や熱で脱離しにくい1級または2級炭素の置換基が耐熱性の点で好ましい。
【0171】
前記エーテルダイマーの具体例としては、例えば、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−プロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソプロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−アミル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ステアリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ラウリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−エチルヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−メトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−エトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジフェニル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチルシクロヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ジシクロペンタジエニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(トリシクロデカニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソボルニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジアダマンチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−メチル−2−アダマンチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート等が挙げられる。
【0172】
これらのなかでも特に、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートが好ましい。これらエーテルダイマー由来の構造単位は、バインダー中に1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれていてもよい。
前記一般式(ED)で示される化合物由来の単量体を含んでなるバインダーは、一般式(ED)で示される化合物由来の構造体以外の他の単量体を含む共重合体であってもよい。併用可能な他の単量体としては、前掲のバインダーの構成成分として挙げた単量体が同様に挙げられ、エーテルダイマーの特性を損なわない範囲で適宜、併用される。
【0173】
上述したものの他、本発明におけるアルカリ可溶性バインダーとしては、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等や、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、ポリ(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、等も有用である。また、線状有機高分子重合体は、親水性を有するモノマーを共重合したものであってもよい。この例としては、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、2級若しくは3級のアルキルアクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、ビニルトリアゾール、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、分岐若しくは直鎖のプロピル(メタ)アクリレート、分岐若しくは直鎖のブチル(メタ)アクリレート、又は、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。その他、親水性を有するモノマーとしては、テトラヒドロフルフリル基、燐酸基、燐酸エステル基、4級アンモニウム塩基、エチレンオキシ鎖、プロピレンオキシ鎖、スルホン酸基及びその塩由来の基、モルホリノエチル基等を含んでなるモノマー等も有用である。
【0174】
また、アルカリ可溶性バインダーは、架橋効率を向上させるために、重合性基を側鎖に有してもよく、例えば、アリル基、(メタ)アクリル基、アリルオキシアルキル基等を側鎖に含有するポリマー等も有用である。上述の重合性基を含有するポリマーの例としては、ダイヤナ-ルNRシリーズ(三菱レイヨン株式会社製)、Photomer6173(COOH含有 polyurethane acrylic oligomer. Diamond Shamrock Co.Ltd.,製)、ビスコートR−264、KSレジスト106(いずれも大阪有機化学工業株式会社製)、サイクロマーPシリーズ、プラクセル CF200シリーズ(いずれもダイセル化学工業株式会社製)、Ebecryl3800(ダイセルユーシービー株式会社製)などが挙げられる。また、硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロルヒドリンとのポリエーテル等も有用である。
【0175】
これら各種アルカリ可溶性バインダーの中でも、耐熱性の観点からは、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましく、現像性制御の観点からは、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましい。
【0176】
前記アクリル系樹脂としては、ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等から選ばれるモノマーからなる共重合体や、前記のPhotomer6173、KSレジスト−106、サイクロマーPシリーズ等が好ましい。
【0177】
アルカリ可溶性バインダーは、現像性、液粘度等の観点から、重量平均分子量(GPC法で測定されたポリスチレン換算値)が1000〜2×10の重合体が好ましく、2000〜1×10の重合体がより好ましく、5000〜5×10の重合体が特に好ましい。
【0178】
−架橋剤−
本発明の着色硬化性組成物に補足的に架橋剤を用い、着色硬化性組成物を硬化させてなる着色硬化膜の硬度をより高めることもできる。
架橋剤としては、架橋反応により膜硬化を行なえるものであれば、特に限定はなく、例えば、(a)エポキシ樹脂、(b)メチロール基、アルコキシメチル基、及びアシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換された、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物又はウレア化合物、(c)メチロール基、アルコキシメチル基、及びアシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換された、フェノール化合物、ナフトール化合物又はヒドロキシアントラセン化合物、が挙げられる。中でも、多官能エポキシ樹脂が好ましい。
架橋剤の具体例などの詳細については、特開2004−295116号公報の段落0134〜0147の記載を参照することができる。
【0179】
−重合禁止剤−
本発明の着色硬化性組成物においては、該着色硬化性組成物の製造中又は保存中において、重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために、少量の重合禁止剤を添加することが望ましい。
本発明に用いうる重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。
重合禁止剤の添加量は、全組成物の質量に対して、約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。
【0180】
−界面活性剤−
本発明の着色硬化性組成物には、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤の各種界面活性剤を使用できる。
特に、フッ素系界面活性剤を含有することで、塗布液としたときの液特性(特に、流動性)をより向上させ、塗布厚の均一性や省液性をより改善することができる。
すなわち、フッ素系界面活性剤を含有する重合性組成物においては、被塗布面と塗布液との界面張力を低下させることにより被塗布面への濡れ性が改善され、被塗布面への塗布性が向上する。このため、少量の液量で数μmから数十μm程度の薄膜を形成した場合であっても、厚みムラの小さい均一厚の膜形成をより好適に行える点で有効である。
【0181】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は3質量%〜40質量%が好適であり、より好ましくは5質量%〜30質量%であり、特に好ましくは7質量%〜25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であると、塗布厚均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中への溶解性も良好である。
【0182】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F554、同F780、同F781(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC1068、同SC−381、同SC−383、同S393、同KH−40(以上、旭硝子(株)製)、等が挙げられる。
【0183】
また、カチオン系界面活性剤として具体的には、フタロシアニン誘導体(市販品EFKA−745(森下産業社製))、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業社製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社油脂化学工業社製)、W001(裕商社製)等が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤として具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセリンエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル(BASF社製のプルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2、テトロニック304、701、704、901、904、150R1等)、ソルスパース20000(ゼネカ社製)等が挙げられる。
アニオン系界面活性剤として具体的には、W004、W005、W017(裕商社製)等が挙げられる
【0184】
シリコーン系界面活性剤としては、例えばトーレシリコーン株式会社製「トーレシリコーンDC3PA」、「同SH7PA」,「同DC11PA」,「同SH21PA」,「同SH28PA」、「同SH29PA」、「同SH30PA」、「同SH8400」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「TSF−4440」、「TSF−4300」、「TSF−4445」、「TSF−444(4)(5)(6)(7)6」、「TSF−44 60」、「TSF−4452」、信越シリコーン株式会社製「KP341」、ビッグケミー社製「BYK307」、「BYK323」、「BYK330」等が挙げられる。
界面活性剤は2種類以上を組み合わせてもよい。
【0185】
−その他の添加物−
着色硬化性組成物には、必要に応じて、各種添加物、例えば、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を配合することができる。これらの添加物としては、特開2004−295116号公報の段落0155〜0156に記載のものを挙げることができる。
本発明の着色硬化性組成物においては、特開2004−295116号公報の段落0078に記載の増感剤や光安定剤、同公報の段落0081に記載の熱重合防止剤を含有することができる。
【0186】
また、非露光領域のアルカリ溶解性を促進し、着色硬化性組成物の現像性の更なる向上を図る場合には、該組成物に有機カルボン酸、好ましくは分子量1000以下の低分子量有機カルボン酸の添加を行なうことが好ましい。
具体的には、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、ジエチル酢酸、エナント酸、カプリル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、メチルコハク酸、テトラメチルコハク酸、シトラコン酸等の脂肪族ジカルボン酸;トリカルバリル酸、アコニット酸、カンホロン酸等の脂肪族トリカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、クミン酸、ヘメリト酸、メシチレン酸等の芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、トリメシン酸、メロファン酸、ピロメリト酸等の芳香族ポリカルボン酸;フェニル酢酸、ヒドロアトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、マンデル酸、フェニルコハク酸、アトロパ酸、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸ベンジル、シンナミリデン酢酸、クマル酸、ウンベル酸等のその他のカルボン酸が挙げられる。
【0187】
〔着色硬化性組成物の調製方法〕
本発明の着色硬化性組成物は、前述の成分を混合することで調製される。
なお、着色硬化性組成物の調製に際しては、着色硬化性組成物を構成する各成分を一括配合してもよいし、各成分を溶剤に溶解・分散した後に逐次配合してもよい。また、配合する際の投入順序や作業条件は特に制約を受けない。例えば、全成分を同時に溶剤に溶解・分散して組成物を調製してもよいし、必要に応じては、各成分を適宜2つ以上の溶液・分散液としておいて、使用時(塗布時)にこれらを混合して組成物として調製してもよい。
上記のようにして調製された着色硬化性組成物は、好ましくは、孔径0.01μm〜3.0μm、より好ましくは孔径0.05μm〜0.5μm程度のフィルタなどを用いて濾別した後、使用に供することができる。
【0188】
本発明の着色硬化性組成物は、保存安定性に優れ、更に、耐光性に優れた着色硬化膜を形成することができるため、液晶表示装置(LCD)や固体撮像素子(例えば、CCD、CMOS等)に用いられるカラーフィルタなどの着色画素形成用として、また、印刷インキ、インクジェットインキ、及び塗料などの作製用途として好適に用いることができる。特に、CCD、及びCMOS等の固体撮像素子用の着色画素形成用として好適に用いることができる。
【0189】
≪カラーフィルタ及びその製造方法≫
次に、本発明の着色硬化性組成物を用いてカラーフィルタを製造する方法(本発明のカラーフィルタの製造方法)について説明する。
本発明のカラーフィルタの製造方法では、まず、支持体上に、既述の本発明の着色硬化性組成物を回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布方法により塗布して、着色硬化性組成物層を形成し、その後、必要に応じて、予備硬化(プリベーク)を行い、該着色硬化性組成物を乾燥させる(塗布工程)。
【0190】
本発明のカラーフィルタの製造方法に用いられる支持体としては、例えば、液晶表示素子等に用いられる無アルカリガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス(パイレックス(登録商標)ガラス)、石英ガラス、及びこれらに透明導電膜を付着させたものや、CCDやCMOS等の固体撮像素子等に用いられる光電変換素子基板などが挙げられる。これらの基板は、各画素を隔離するブラックストライプが形成されている場合もある。また、これらの支持体上には、必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止、或いは表面の平坦化のために、下塗り層を設けてもよい。
【0191】
なお、着色硬化性組成物を支持体上に回転塗布する際には、液の滴下量を低減のため、着色硬化性組成物の滴下に先立ち、適当な有機溶剤を滴下、回転させることにより、着色硬化性組成物の支持体への馴染みをよくすることができる。
【0192】
本発明の着色硬化性組成物を塗布する工程において、例えば、塗布装置吐出部のノズル、塗布装置の配管部、塗布装置内等に着色硬化性組成物が付着した場合でも、公知の洗浄液を用いて容易に洗浄除去することができる。この場合、より効率の良い洗浄除去を行うためには、本発明の着色硬化性組成物に含まれる溶剤として前掲した溶剤を洗浄液として用いることが好ましい。
【0193】
また、特開平7−128867号公報、特開平7−146562号公報、特開平8−278637号公報、特開2000−273370号公報、特開2006−85140号公報、特開2006−291191号公報、特開2007−2101号公報、特開2007−2102号公報、特開2007−281523号公報などに記載の洗浄液も、本発明の着色硬化性組成物の洗浄除去用の洗浄液として好適に用いることができる。
洗浄液としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、又はアルキレングリコールモノアルキルエーテルを用いることが好ましい。
洗浄液として用いうるこれら溶剤は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
溶剤を2種以上混合する場合、水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤とを混合してなる混合溶剤が好ましい。水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤との質量比は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜80/20である。混合溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の混合溶剤で、その比率が60/40であることが特に好ましい。
なお、着色硬化性組成物に対する洗浄液の浸透性を向上させるために、洗浄液には、着色感光性組成物が含有しうる界面活性剤として前掲した界面活性剤を添加してもよい。
【0194】
上記プリベークの条件としては、ホットプレートやオーブンを用いて、70℃〜130℃で、0.5分間〜15分間程度加熱する条件が挙げられる。
また、着色硬化性組成物により形成される着色硬化性組成物層の厚みは、目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、0.2μm〜5.0μmであることが好ましく、0.3μm〜2.5μmであることが更に好ましく、0.3μm〜1.5μm最も好ましい。なお、ここでいう着色硬化性組成物層の厚さは、プリベーク後の膜厚である。
【0195】
続いて、本発明のカラーフィルタの製造方法では、支持体上に形成された着色硬化性組成物層には、マスクを介した露光が行われる(露光工程)。
この露光に適用し得る光若しくは放射線としては、g線、h線、i線、KrF光、ArF光が好ましく、特にi線が好ましい。照射光にi線を用いる場合、100mJ/cm〜10000mJ/cmの露光量で照射することが好ましい。
また、露光した着色硬化性組成物層は、次の現像処理前にホットプレートやオーブンを用いて、70℃〜180℃で、0.5分間〜15分間程度加熱することができる。
また、露光は、着色硬化性組成物層中の着色剤の酸化褪色を抑制するために、チャンバー内に窒素ガスを流しながら行なうことができる。
【0196】
続いて、露光後の着色硬化性組成物層に対し、現像液にて現像を行う(現像工程)。これにより、ネガ型若しくはポジ型の着色されたパターン(レジストパターン)を形成することができる。
現像液は、着色硬化性組成物層の未硬化部(非露光部)を溶解し、硬化部(露光部)を溶解しないものであれば、種々の有機溶剤の組み合わせや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ-[5,4,0]-7-ウンデセン等の有機、無機のアルカリ性化合物の水溶液を用いることができる。
現像液がアルカリ性水溶液である場合、アルカリ濃度が好ましくはpH11〜13、更に好ましくはpH11.5〜12.5となるように調整するのがよい。特に、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドを、濃度が0.001質量%〜10質量%、好ましくは0.01質量%〜5質量%となるように調整したアルカリ性水溶液を現像液として用いることができる。
現像時間は、30秒〜300秒が好ましく、更に好ましくは30秒〜120秒である。現像温度は、20℃〜40℃が好ましく、更に好ましくは23℃である。
現像は、パドル方式、シャワー方式、スプレー方式等で行うことができる。
【0197】
また、アルカリ性水溶液を用いて現像した後は、水で洗浄することが好ましい。洗浄方式も、目的に応じて適宜選択されるが、シリコンウエハ基板等の支持体を回転数10rpm〜500rpmで回転させつつ、その回転中心の上方より純水を噴出ノズルからシャワー状に供給してリンス処理を行うことができる。
【0198】
その後、必要に応じて、形成されたパターン(レジストパターン)に対し後加熱及び/又は後露光を行い、パターンの硬化を促進させてもよい(後硬化工程)。
【0199】
−紫外線照射工程−
紫外線照射工程は、前記パターン形成工程で現像処理を行なった後のパターンに、現像前の露光処理における露光量[mJ/cm]の10倍以上の照射光量[mJ/cm]の紫外光(UV光)を照射する。パターン形成工程での現像処理と後述の加熱処理との間に、現像後のパターン(着色硬化性組成物)にUV光を所定時間、照射することにより、後に加熱された際に色移りするのを効果的に防止でき、耐光性が向上する。
【0200】
UV光を照射する光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、DEEP UVランプなどを用いることができる。中でも、照射される紫外光中に275nm以下の波長光を含み、かつ275nm以下の波長光の照射照度[mW/cm]が紫外光中の全波長光の積分照射照度に対して5%以上である光を照射できるものが好ましい。紫外光中の275nm以下の波長光の照射照度を5%以上とすることで、着色画素間や上下層への色移りの抑制効果及び耐光性の向上効果をより効果的に高めることができる。この点から、前記パターン形成工程での露光に用いられるi線等の輝線などの光源と異なる光源、具体的には高圧水銀灯、低圧水銀灯などを用いて行なうことが好ましい。中でも、前記同様の理由から、紫外光中の全波長光の積分照射照度に対して7%以上が好ましい。また、275nm以下の波長光の照射照度の上限は、25%以下が望ましい。
【0201】
なお、積分照射照度とは、分光波長ごとの照度(単位面積を単位時間に通過する放射エネルギー;[mW/m])を縦軸とし、光の波長[nm]を横軸とした曲線を引いた場合に照射光に含まれる各波長光の照度の和(面積)をいう。
【0202】
UV光の照射は、前記パターン形成工程での露光時の露光量の10倍以上の照射光量[mJ/cm2]として行なう。本工程での照射光量が10倍未満であると、着色画素間や上下層間における色移りを防止できず、また耐光性も悪化する。
中でも、UV光の照射光量は、パターン形成工程での露光時の露光量の12倍以上200倍以下が好ましく、15倍以上100倍以下がより好ましい。
【0203】
この場合、照射される紫外光における積分照射照度が200mW/cm以上であることが好ましい。積分照射照度が200mW/cm以上であると、着色画素間や上下層への色移りの抑制効果及び耐光性の向上効果をより効果的に高めることができる。中でも、250〜2000mW/cmが好ましく、300〜1000mW/cmがより好ましい。
後加熱は、ホットプレートやオーブンを用いて、100℃〜300℃で実施することが好ましく、更に好ましくは、150℃〜250℃である。また、後加熱時間は、30秒〜30000秒が好ましく、更に好ましくは、60秒〜1000秒である。
一方、後露光は、g線、h線、i線、KrF、ArF、UV光、電子線、X線等により行うことができるが、g線、h線、i線、UV光が好ましく、特に、UV光が好ましい。UV光の照射(UVキュア)を行う際は、20℃以上50℃以下(好ましくは25℃以上40℃以下)の低温で行うことが好ましい。UV光の波長は、200nm〜300nmの範囲の波長を含んでいることが好適であり、光源としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ等を使用することができる。照射時間としては、10秒〜180秒、好ましくは20秒〜120秒、更に好ましくは30秒〜60秒である。
後露光と後加熱は、どちらを先に行ってもよいが、後加熱に先立って、後露光を実施することが好ましい。後露光で硬化を促進させることにより、後加熱過程で見られるパターンの熱ダレやすそ引きによる形状の変形を抑止するためである。
【0204】
このようにして得られた、着色されたパターンがカラーフィルタにおける画素を構成することになる。
複数の色相の画素を有するカラーフィルタの作製においては、前述の塗布工程、露光工程、及び現像工程(必要に応じて硬化工程)を所望の色数に合わせて繰り返せばよい。
【0205】
本発明のカラーフィルタの製造方法により得られたカラーフィルタ(本発明のカラーフィルタ)は、本発明の着色硬化性組成物を用いていることから、耐光性に優れたものとなる。
そのため、本発明のカラーフィルタは、液晶表示装置や、CCDイメージセンサー、CMOSイメージセンサー等の固体撮像素子及びこれを用いたカメラシステムに用いることができ、中でも、着色パターンが微少サイズで薄膜に形成され、しかも良好な矩形の断面プロファイルが要求される固体撮像素子の用途、特に100万画素を超えるような高解像度のCCD素子やCMOS素子等の用途に好適である。
【0206】
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、本発明のカラーフィルタを備えたものである。本発明のカラーフィルタは、高い耐光性を有するものであり、このカラーフィルタを備えた固体撮像素子は優れた色再現性を得ることが可能となる。
【0207】
固体撮像素子の構成としては、本発明のカラーフィルタを備え、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はないが、例えば、次のような構成が挙げられる。
即ち、支持体上に、CCDイメージセンサー(固体撮像素子)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオード及びポリシリコン等からなる転送電極を有し、その上に、本発明のカラーフィルタを設け、次いで、マイクロレンズを積層する構成である。
【0208】
また、本発明のカラーフィルタを備えるカメラシステムは、色材の光褪色性の観点から、カメラレンズやIRカット膜が、ダイクロコートされたカバーガラス、マイクロレンズ等を備えており、その材料の光学特性は、400nm以下のUV光の一部又は全部を吸収するものであることが望ましい。また、カメラシステムの構造としては、色材の酸化褪色を抑止するため、カラーフィルタへの酸素透過性が低減されるような構造になっていることが好ましく、例えば、カメラシステムの一部又は全体が窒素ガスで封止されていることが好ましい。
【0209】
<液晶表示装置、有機EL表示装置>
本発明のカラーフィルタは、液晶表示装置用、および有機EL表示装置用のカラーフィルタに用いられる。本発明のカラーフィルタを備えた液晶表示装置、および有機EL表示装置は、表示画像の色合いが良好で表示特性に優れた高画質画像を表示することができる。
【0210】
表示装置の定義や各表示装置の詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置、および有機EL表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置、および有機EL表示装置に適用できる。
【0211】
本発明のカラーフィルタは、カラーTFT方式の液晶表示装置に用いてもよい。カラーTFT方式の液晶表示装置については、例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)1996年発行)」に記載されている。更に、本発明はIPSなどの横電界駆動方式、MVAなどの画素分割方式などの視野角が拡大された液晶表示装置や、STN、TN、VA、OCS、FFS、及びR−OCB等にも適用できる。
また、本発明のカラーフィルタは、明るく高精細なCOA(Color-filter On Array)方式にも供することが可能である。COA方式の液晶表示装置にあっては、カラーフィルタ層に対する要求特性は、前述のような通常の要求特性に加えて、層間絶縁膜に対する要求特性、すなわち低誘電率及び剥離液耐性が必要とされることがある。本発明のカラーフィルタにおいては、色相に優れた染料多量体を用いることから、色純度などの良い色合いに優れるので、解像度が高く長期耐久性に優れたCOA方式の液晶表示装置を提供することができる。なお、低誘電率の要求特性を満足するためには、カラーフィルタ層の上に樹脂被膜を設けてもよい。
これらの画像表示方式については、例えば、「EL、PDP、LCDディスプレイ−技術と市場の最新動向−(東レリサーチセンター調査研究部門 2001年発行)」の43ページなどに記載されている。
【0212】
本発明の液晶表示装置は、本発明のカラーフィルタ以外に、電極基板、偏光フィルム、位相差フィルム、バックライト、スペーサ、視野角保障フィルムなど様々な部材から構成される。本発明のカラーフィルタは、これらの公知の部材で構成される液晶表示装置に適用することができる。これらの部材については、例えば、「'94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場(島 健太郎 (株)シーエムシー 1994年発行)」、「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表 良吉(株)富士キメラ総研、2003年発行)」に記載されている。
バックライトに関しては、SID meeting Digest 1380(2005)(A.Konno et.al)や、月刊ディスプレイ 2005年12月号の18〜24ページ(島 康裕)、同25〜30ページ(八木隆明)などに記載されている。
【0213】
本発明のカラーフィルタを液晶表示装置に用いると、従来公知の冷陰極管の三波長管と組み合わせたときに高いコントラストを実現できるが、更に、赤、緑、青のLED光源(RGB−LED)をバックライトとすることによって輝度が高く、また、色純度の高い色再現性の良好な液晶表示装置を提供することができる。
【実施例】
【0214】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0215】
[実施例1−1]
(1)レジスト溶液Aの調製(ネガ型)
下記の成分を混合して溶解し、レジスト溶液Aを調製した。
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと称する。) 5.20部
・シクロヘキサノン(以下、CyHと称する。) 52.60部
・バインダー 30.50部
(メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸/メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル共重合体、モル比=60:20:20、平均分子量30200(ポリスチレン換算)、41%シクロヘキサノン溶液)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 10.20部
・重合禁止剤(p−メトキシフェノール) 0.006部
・フッ素系界面活性剤(DIC(株)製F−475) 0.80部
・光重合開始剤:4-ベンズオキソラン−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリ
アジン(みどり化学(株)製TAZ−107) 0.58部
【0216】
(2)下塗り層付ガラス基板の作製
ガラス基板(コーニング1737)を0.5%NaOH水で超音波洗浄した後、水洗、脱水ベーク(200℃/20分)を行った。次いで、上記(1)で得たレジスト溶液Aを洗浄したガラス基板上に乾燥後の膜厚が2μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、220℃で1時間加熱乾燥させて、下塗り層付ガラス基板を調製した。
【0217】
(3)着色硬化性組成物の調製
(3−1)C.I.Pigment Blue15:6分散液の調製
上記C.I.Pigment Blue15:6分散液は、以下のようにして調製されたものである。
即ち、C.I.Pigment Blue15:6を11.8部(平均粒子径55nm)、及び顔料分散剤BYK−161(BYK社製)を5.9部、PGMEA82.3部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合・分散して、顔料分散液を調製した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cmの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、顔料分散液(C.I.Pigment Blue15:6分散液)を得た。得られた顔料分散液について、顔料の平均1次粒子径を動的光散乱法(Microtrac Nanotrac UPA−EX150(日機装社製))により測定したところ、24nmであった。
【0218】
(3−2)着色硬化性組成物の調製
下記の各成分を混合して、着色硬化性組成物を得た。
・溶剤:CyH 1.133部
・アルカリ可溶性樹脂:メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸の共重合体(20%CyH溶液) 1.009部(モル比=70:30、重量平均分子量30000)
・重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製 KAYARAD DPHA) 0.225部
・界面活性剤:ソルスパース20000(1%シクロヘキサン溶液、ゼネカ製) 0.125部
・オキシム系光重合開始剤(下記構造の化合物) 0.087部
・色素多量体(例示化合物S−1) 0.183部
・Pigment Blue 15:6分散液 2.418部
(固形分濃度13.57%、顔料濃度11.80%)
・界面活性剤:グリセロールプロポキシレート(1%シクロヘキサン溶液) 0.048部
【0219】
【化36】

【0220】
(4)着色硬化性組成物の露光・現像(画像形成)
上記(3)で得た着色硬化性組成物を、上記(2)で得た下塗り層付ガラス基板の下塗り層の上に乾燥後の膜厚が0.6μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃で120秒間プリベークした。
次いで、露光装置UX3100−SR(ウシオ電機(株)製)を使用して、塗布膜に365nmの波長で線幅2μmのマスクを通して、200mJ/cmの露光量で照射した。露光後、現像液CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を使用して、25℃40秒間の条件で現像した。その後、流水で30秒間リンスした後、スプレー乾燥した。その後、200℃で15分間ポストベークを行った。
【0221】
(5)評価
着色硬化性組成物を用いてガラス基板上に塗設された塗布膜の耐熱性、耐溶剤性、耐光性を下記のようにして評価した。評価結果は下記表2に示す。
【0222】
〔耐熱性〕
上記(3)で得た着色硬化性組成物が塗布されたガラス基板を、該基板面で接するように200℃のホットプレートに載置して1時間加熱した後、色度計MCPD−1000(大塚電子(株)製)にて、加熱前後での色差(ΔEab値)を測定して熱堅牢性を評価する指標とし、下記判定基準に従って評価した。ΔEab値は、値の小さい方が、耐熱性が良好なことを示す。なお、ΔEab値は、CIE1976(L,a,b)空間表色系による以下の色差公式から求められる値である(日本色彩学会編 新編色彩科学ハンドブック(昭和60年)p.266)。
ΔEab={(ΔL+(Δa+(Δb1/2
−判定基準−
◎:ΔEab値<3
○:3≦ΔEab値<5
△:5≦ΔEab値≦15
×:ΔEab値>15
【0223】
〔耐溶剤性〕
上記(4)で得たポストベーク後の各種塗膜の分光を測定した(分光A)。この塗膜に対し、この上に上記(1)で得たレジスト溶液Aを膜厚1μmとなるように塗布しプリベークを行った後、CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)現像液を使用して23℃・120秒間の条件で現像を行い、再度分光を測定した(分光B)。この分光A、Bの差より色素残存率(%)を算出し、これを、耐溶剤性を評価する指標とした。この数値は100%に近いほど耐溶剤性に優れていることを示す。
−判定基準−
○:染料残存率>90%
△:70%≦染料残存率≦90%
×:染料残存率<70%
【0224】
〔耐光性〕
上記(4)で得たポストベーク後の各種塗膜の分光を測定した(分光A)。この塗膜に対し、キセノンランプを10万luxで20時間照射した(200万lux・h相当)。キセノンランプ照射の前後での塗膜の色差(ΔEab値)を測定し、耐光性の指標とした。なお、ΔEab値の小さいほうが、耐光性が良好であり、判断基準は以下の通りである。
−判定基準−
◎:ΔEab値<3
○:3≦ΔEab値<5
△:5≦ΔEab値≦15
×:ΔEab値>15
【0225】
[実施例1−2〜1−17、比較例1−1〜1−2]
実施例1−1の(3)着色硬化性組成物の調製において、例示化合物S−1を下記表2に記載の着色剤に変更(但し、等質量)した以外、実施例1−1と同様にしてパターンを形成し、更に同様の評価を行った。評価結果は表2に示す。表2中の比較色素1、及び比較色素2(C.I.アシッド・レッド 87)の構造を下記に示す。
【0226】
【化37】

【0227】
【表2】

【0228】
[実施例2−1〜2−17、比較例2−1〜2−2]
実施例1−1〜1−17及び比較例1−1〜1−2で用いた着色硬化性組成物をそれぞれ用いてカラーフィルタを以下の手順で作製し、実施例2−1〜2−17及び比較例2−1〜2−2として色移り評価を実施した。評価結果は下記表3に示す。
【0229】
−単色カラーフィルタの作製−
実施例1−1において作製した(2)下塗り層付ガラス基板上に、実施例1−1〜1−17及び比較例1−1〜1−2で用いた着色硬化性組成物をそれぞれ用いて、乾燥膜厚が1μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃で120秒間プリベークし、着色膜を形成した。この着色膜に対して、7.0μmの正方ピクセルが基板上の4mm×3mmの領域に配列されたマスクパターンを介してi線ステッパー(キャノン(株)製FPA−3000i5+)により、200[mJ/cm]の露光量、照度1200mW/cm(積分照射照度)で露光した。露光後、現像液(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製CD−2000、60%)を用いて23℃で60秒間、パドル現像し、パターンを形成した。次いで、流水で20秒間リンスした後、スプレー乾燥させた。その後、現像工程後の紫外線照射工程として、パターンが形成されたガラス基板全体に、高圧水銀灯(ウシオ電機(株)UMA−802−HC552FFAL)を用いて10000[mJ/cm]の紫外線を照射した。照射後、220℃で300秒間、ホットプレートでポストベーク処理し、ガラス基板上に着色パターンを形成した。なお、高圧水銀灯からの照射光に含まれる275nm以下の波長光は、10%である。
【0230】
−色移り評価−
上記のようにして作製したカラーフィルタの着色パターン形成面に、乾燥膜厚が1μmとなるようにCT−2000L溶液(下地透明剤、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を塗布し、乾燥させて、透明膜を形成した後、200℃で5分間加熱処理を行なった。加熱終了後、着色パターンに隣接する透明膜の吸光度を顕微分光測定装置(大塚電子(株)製LCF−1500M)にて測定した。得られた透明膜の吸光度の値の割合[%]を、加熱前に測定した着色パターンの吸光度に対して算出し、色移りを評価する指標とした。
−判定基準−
隣接ピクセルへの色移り(%)
◎:隣接ピクセルへの色移り<1%
○:1%<隣接ピクセルへの色移り≦10%
△:10%≦隣接ピクセルへの色移り≦30%
×:隣接ピクセルへの色移り>30%
【0231】
【表3】

【0232】
上記表2、および表3に示すように、本発明の色素多量体を用いた実施例1−1〜1−17は、いずれも優れた耐熱性、耐溶剤性、および耐光性を示した。また、本発明の色素多量体を用いた実施例2−1〜2−17は、いずれも隣接パターンへの色移りが抑制されたものであることがわかる。
【0233】
なお、実施例1−1における光重合開始剤を以下の構造の化合物OXE−01、およびOXE−02にそれぞれ変更した着色硬化性組成物は、実施例1−1と同様の結果が得られ、オキシム系開始剤を用いた着色硬化性組成物は、良好な耐熱性、耐溶剤性、耐光性がえられることがわかった。
なお、OXE−01、およびOXE−02はいずれもBASF社の市販の開始剤である。
【0234】
【化38】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)キサンテン骨格を色素部位の部分構造として含む色素多量体、(b)重合性化合物、(c)光重合開始剤、及び、(d)有機溶剤を含有する着色硬化性組成物。
【請求項2】
前記キサンテン骨格が、下記一般式(M)で表されるキサンテン化合物由来の色素骨格である請求項1に記載の着色硬化性組成物。
【化1】


〔一般式(M)中、R、R、R、およびRは各々独立に水素原子又は1価の置換基を表し、Rは各々独立に1価の置換基を表し、mは0から5の整数を表す。〕
【請求項3】
前記(a)色素多量体が、下記一般式(A)、一般式(B)、および一般式(C)で表される構成単位の少なくとも一つを含んでなるか、又は、一般式(D)で表される色素多量体である請求項1又は請求項2に記載の着色硬化性組成物。
【化2】


〔一般式(A)中、Xは重合によって形成される連結基を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、Dyeは前記一般式(M)から任意の水素原子を1個取り除いた色素残基を表す。〕
【化3】


〔一般式(B)中、Xは重合によって形成される連結基を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、AはDyeとイオン結合もしくは配位結合可能な基を表し、Dyeは前記一般式(M)から水素原子を1個除くことによりAとイオン結合もしくは配位結合可能な色素残基を表す。〕
【化4】


〔一般式(C)中、Lは単結合または2価の連結基を表し、Lが複数存在する場合はLの構造は同じであっても異なっていてもよい。Dyeは前記一般式(M)から任意の水素原子を2個取り除いた色素残基を表す。n3は1〜4の整数を表す。〕
【化5】


〔一般式(D)中、Lはn4価の連結基を表し、n4は2〜100の整数を表し、複数あるDyeは各々独立に前記一般式(M)から任意の水素原子を1個取り除いた色素残基を表す。〕
【請求項4】
前記(a)色素多量体が、さらにアルカリ可溶性基を有する色素多量体である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の着色硬化性組成物。
【請求項5】
前記(c)光重合開始剤が、オキシム系化合物である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の着色硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の着色硬化性組成物を用いてなるカラーフィルタ。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の着色硬化性組成物を基板上に塗布し、マスクを介して露光し、現像してパターン像を形成するカラーフィルタの製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載のカラーフィルタを具備する固体撮像素子。
【請求項9】
請求項6に記載のカラーフィルタを具備する液晶表示装置。
【請求項10】
下記一般式(M)で表されるキサンテン化合物由来の色素骨格を色素部位の部分構造として含む色素多量体。
【化6】


〔一般式(M)中、R、R、R、およびRは各々独立に水素原子又は1価の置換基を表し、Rは各々独立に1価の置換基を表し、mは0から5の整数を表す。〕

【公開番号】特開2012−32754(P2012−32754A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249974(P2010−249974)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】