説明

着色組成物、着色光硬化性組成物、カラーフィルタ、液晶表示装置、及び固体撮像素子

【課題】残渣が殆どなく、現像後のパターンも良好で、コントラストが高く、耐熱性が良好な着色組成物の提供。
【解決手段】(a)顔料、(b)酸性基を有する顔料誘導体、(c)高分子化合物を含む着色組成物であって、その着色組成物を乾燥膜厚が1.0μmの塗膜にしたときに、KOH濃度が0.05質量%のアルカリ水溶液に30秒以下で溶解することを特徴とする着色組成物及び/或いは着色硬化性組成物であって、(a)顔料は、(b)酸性基を有する顔料誘導体、あるいは(c)高分子化合物で被覆されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料の分散性に優れ、着色組成物および着色光硬化性組成物の着色力、現像性等に優れ、塗料、印刷インキ、カラー表示板等の広い範囲で好適に使用し得る着色組成物、及び着色光硬化性組成物、該着色光硬化性組成物を用いて製造されたカラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタは、有機顔料や無機顔料を分散させた着色組成物と、多官能モノマー、重合開始剤、アルカリ可溶性樹脂及びその他の成分とを含有して着色光硬化性組成物とし、これを用いてフォトリソ法、インクジェット法などにより着色パターンを形成することで製造されている。
【0003】
近年、カラーフィルタは、液晶表示装置(LCD)用途ではモニターのみならずテレビへと用途が拡大しており、この用途拡大に伴い、色度、コントラストなどにおいて高度の色特性が要求されるに至っている。また、固体撮像素子(イメージセンサ)用途においても同様に色むらの低減、色分解能の向上など高度の色特性が求められるようになっている。
【0004】
上記のような要求に対して、顔料の粒子径をより微細化すると共に、分散性のより高いものが必要とされ、顔料の分散性を高めるためには、通常、例えばフタロシアニン顔料の表面にその誘導体化合物で顔料表面を改質し、改質された表面に吸着しやすい極性官能基を有する低分子量樹脂分子などの分散剤を用いて、顔料の分散化ないし分散安定化を図りつつ、顔料、表面改質剤、分散剤を含む顔料組成物を得ている。そして、得られた顔料組成物に更にアルカリ可溶性樹脂、光重合性組成物、光重合開始剤及びその他成分を含有して光硬化性組成物とし、これを用いてフォトリソ法などによりカラーフィルタを得ている。
【0005】
高度の色特性を得ようとするために、顔料の粒子径を微細化することが有効な手段である。しかし、微細化すると顔料粒子の表面積が大きくなって、顔料の分散性が悪化し、この改良のために顔料表面を改質する表面改質剤や分散剤の量がより多く必要になる。例えば、コントラストの向上のために、表面改質剤や分散剤の量が顔料量の10〜20質量%をも使用されるようになってきており、このため表面改質剤や分散剤がカラーフィルタの色特性に与える影響を無視することができなくなる。また着色パターンを形成する現像性が大幅に悪化することになる。
【0006】
顔料の分散性を向上させるために、種々の顔料誘導体を用いることが報告されている(例えば特許文献1、2参照)。しかしながらこれらの技術をもってしても、微細化顔料の分散性を確保するためには顔料誘導体、あるいは分散剤を多量に使用する必要がある。このため現像性が極端に悪化し、製造適性のない着色光硬化性組成物しか得られなかった。
また微細化した顔料の強い2次凝集を抑制することを目的として、ソルトミリング工程時に、ロジンまたはロジン誘導体を添加して顔料を処理し、該顔料の分散体を用いてコントラストの高いカラーフィルタを得る技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、これらの方法によっても、更に高くなるコントラスト等の色特性改良の市場要求に応じることはできず、微細化した顔料における更に高度な分散性、分散安定性が望まれていた。また製造適性のある現像ラチチュードの広い着色光硬化性組成物の開発が市場ニーズとして高いのである。
上記のように顔料粒子の微細化と画像のコントラスト等の色特性だけに着目すればある程度の改善効果が得られるのであるが、安価で、生産性の高いカラーフィルタを得ようとすると現像ラチチュードが狭く、使用できるものではなかった。
【特許文献1】特開2006-265528号公報
【特許文献2】特開2007-79094号公報
【特許文献3】特許第3130217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたものである。即ち本発明が解決しようとする課題は、高い顔料分散性と分散後の分散安定性とを有し、コントラスト等の色特性が良好な着色組成物を得ることである。さらに現像性が良好で、着色画素のパターンを広い現像ラチチュードで得ることができる着色光硬化性組成物を得ることである。これによって生産性が良好なカラーフィルタを提供し、コントラストが高く、耐熱性が良好で、色特性の良好な液晶表示装置用のカラーフィルタを提供し、また色むらが低減され、色分解が良好な固体撮像素子用カラーフィルタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> (a)顔料、(b)酸性基を有する顔料誘導体、(c)高分子化合物を含む着色組成物であって、その着色組成物により乾燥膜厚が1.0μmの塗膜を形成したときに、該塗膜が、KOH濃度が0.05質量%のアルカリ水溶液に30秒以下で溶解することを特徴とする着色組成物。
<2> (a)顔料が(c)高分子化合物で被覆されてなることを特徴とする<1>に記載の着色組成物。
<3> (a)顔料が、(b)酸性基を有する顔料誘導体で被覆されてなることを特徴とする<1>または<2>に記載の着色組成物。
<4> (b)酸性基を有する顔料誘導体が、スルホン酸基及び/或いはスルホン酸塩を有する顔料誘導体である<1>から<3>のいずれか1項に記載の着色組成物。
<5> <1>から<4>のいずれか1項に記載の着色組成物が光重合性化合物及び光重合開始剤を含有することを特徴とする着色光硬化性組成物。
【0009】
<6> 基板上に、<5>に記載の着色光硬化性組成物を用いてなる着色パターンを有することを特徴とするカラーフィルタ。
<7> <6>に記載のカラーフィルタを備えたことを特徴とする液晶表示装置。
<8> <6>に記載のカラーフィルタを備えたことを特徴とする固体撮像素子。
【0010】
さらに好ましい実施態様としては
<9> N−フェニルマレイミドを構成成分とするアクリル系樹脂を含む<5>に記載の着色光硬化性組成物。
<10> (メタ)アクリロイロキシ基を置換基として有する脂環を側鎖に有するアクリル系樹脂を含む<5>に記載の着色光硬化性組成物。
<11> ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを共重合したアクリル系樹脂を含む<5>に記載の着色光硬化性組成物。
<12> さらにポリスチレンマクロモノマーを構成成分とするアクリル系樹脂を含む<5>に記載の着色光硬化性組成物。
<13> 前記(c)高分子化合物が、グラフト型高分子化合物である<1>記載の着色組成物。
【0011】
色特性の改良のため顔料を微細化すると表面積が増大し、且つ顔料の破砕によって新表面が出現するが、この新表面は表面エネルギーが高く、このため微細化された顔料は凝集し易い。本発明では、微細化された顔料の高エネルギー表面を、酸性基を有する顔料誘導体と高分子化合物とで吸着し、被覆させることによって凝集を防止する。このことによって、微細化された顔料は一次粒子で安定化されているものと推定される。特に本発明の酸性基を有する顔料誘導体と高分子化合物は分子の大きさが異なり、高分子化合物で被覆された顔料表面の隙間に、比較的低分子である顔料誘導体が入り込んで表面エネルギーの高い吸着点を被覆し、高い分散効果を発揮するものと思われる。
顔料誘導体は酸性基を有しているので、アルカリ現像時において非露光部は高い溶解性を示し、現像ラチチュードが大きく、色濃度が高い即ち顔料濃度が高くなっても良好なパターン形状を得ることができたものと思われる。また酸性基を有する顔料誘導体を用いることにより、顔料表面が酸性化し、顔料が現像されやすくなるので、高分子化合物あるいはアルカリ可溶性樹脂でのアルカリ現像性機能を小さくできることによって高分子化合物あるいはアルカリ可溶性樹脂の耐熱着色を小さくできるものと考えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い顔料分散性と分散後の分散安定性とを有し、コントラスト等の色特性が良好な加工顔料とそれを用いた顔料分散液を得ることができる。さらに現像性が良好で、着色画素のパターンを広い現像ラチチュードで得ることができる着色光硬化性組成物を得ることができる。これによって生産性が良好なカラーフィルタを提供し、コントラストが高く、耐熱性が良好で、しかも色特性の良好な液晶表示装置用のカラーフィルタ、および色むらが低減され、色分解が良好な固体撮像素子用カラーフィルタを得ることができる。また本発明はポストベークでの熱による着色が防止され、これによっても色特性の向上に寄与している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
<着色組成物>
本発明の着色組成物は、(a)顔料、(b)酸性基を有する顔料誘導体、(c)高分子化合物を必須成分とするものである。
【0014】
本発明の着色組成物を乾燥膜厚が1.0μmの塗膜にしたときに、KOH濃度が0.05質量%のアルカリ水溶液に30秒以下で溶解させるために用いられる方法としては、
i)着色組成物に用いる高分子化合物やアルカリ可溶性樹脂の酸価を高めることによりアルカリ現像液との親和性を高める方法、
ii)酸性部位を有する光重合性化合物を用いる方法、
iii)アルカリ現像液のアルカリ濃度を高める方法、
iv)感度の低い光重合性開始剤を用いたり、少ない官能基を有するモノマーを用いたり、膜厚を厚くしたり、露光量を低くして光重合性化合物の架橋密度を低下させる方法、
v)ミリング時に酸性基を有する樹脂を添加することにより、酸性基を有する樹脂で覆い、顔料粒子のアルカリ現像液との親和性を高くする方法、
vi)酸性の顔料誘導体を用いる場合に、顔料誘導体の酸性度を高める、顔料誘導体の酸性置換基数を高める、或いは顔料誘導体の添加量を高めるなどの方法が挙げられる。
【0015】
好ましくは、i)高分子化合物などの酸価を高める方法、ii)酸性部位を有する光重合性化合物を用いる方法、v)ミリング時に酸性基を有する樹脂を添加する方法、vi)顔料誘導体の酸性度を高める、顔料誘導体の酸性置換基数を高める、或いは顔料誘導体の添加量を高める方法であり、特に好ましくは、i)高分子化合物などの酸価を高める方法、v)ミリング時に酸性基を有する樹脂を添加する方法、vi)顔料誘導体の酸性度を高める、顔料誘導体の酸性置換基数を高める、或いは顔料誘導体の添加量を高める方法である。
【0016】
i)の高分子化合物などの酸価を高める方法としては、具体的には酸価が50mgKOH/gから500mgKOH/gの高分子化合物が用いられ、好ましくは、酸価が80mgKOH/gから400mgKOH/gの高分子化合物であり、特に好ましくは、酸価が95mgKOH/gから300mgKOH/gの高分子化合物である。
【0017】
v)のミリング時に酸性基を有する樹脂を添加する方法として、具体的には(a)顔料の項にて説明する。
【0018】
vi)の顔料誘導体の酸性度を高める方法として、具体的には、酸性基としてスルホン酸基、スルホン酸の金属塩、スルホン酸のアンモニウム塩、カルボン酸基、リン酸基を用いることであり、好ましくは、酸性基としてスルホン酸基、スルホン酸の金属塩、スルホン酸のアンモニウム塩を用いる方法である。顔料誘導体の添加量を高める方法として、具体的には、酸性基を有する顔料誘導体の顔料に対する含有量が、0.1〜50質量%であり、より好ましくは1.0〜40質量%であり、さらに好ましくは10〜30質量%である。
【0019】
以下に本発明で用いる各成分について説明する。
(a)顔料
本発明で用いる(a)顔料としては、従来公知の種々の無機顔料又は有機顔料を適宜選択して用いることができる。
【0020】
顔料としては、本発明の着色組成物がカラーフィルタの着色パターンに用いられ、その際に高透過率であることが好ましいこと等を考慮すると、有機顔料が好ましく、また、なるべく粒子サイズの小さいものを使用することが好ましい。
着色組成物及びこれを含有する着色光硬化性組成物のハンドリング性と色特性とを考慮すると、着色組成物に使用する顔料の平均1次粒子径としては、60nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、5〜25nmが最も好ましい。該粒径が前記範囲内であると、透過率が高く、色特性が良好であると共に、高いコントラストのカラーフィルタを形成するのに有効である。
平均1次粒子径は、SEM或いはTEMで観察し、粒子が凝集していない部分で粒子サイズを100個計測し、平均値を算出することによって求める。
【0021】
本発明に使用する顔料は必要な場合には、ミリングによって微細化することが可能である。ミリングに関しては後述するが、ミリング工程に供される前の顔料の粒子径としては、25〜60nm程度である。
【0022】
前記無機顔料としては、金属酸化物、金属錯塩等で示される金属化合物を挙げることができ、具体的には、鉄、コバルト、アルミニウム、カドミウム、鉛、銅、チタン、マグネシウム、クロム、亜鉛、アンチモン等の金属酸化物、及び前記金属の複合酸化物を挙げることができる。
【0023】
前記有機顔料としては、例えば、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279、
C.I.Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,60,64,66,79,79のCl置換基をOHに変更したもの,80、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42、
C.I.Pigment Brown 25,28、
C.I.Pigment Black 1,7等を挙げることができる。
但し、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
【0024】
これらの中で好ましく用いることができる顔料として、以下のものを挙げることができる。
C.I.Pigment Yellow 11,24,108,109,110,138,139,150,151,154,167,180,185、
C.I.Pigment Orange 36,71、
C.I.Pigment Red 122,150,171,175,177,209,224,242,254,255,264、
C.I.Pigment Violet 19,23,32、
C.I.Pigment Blue 15:1,15:3,15:6,16,22,60,66、
C.I.Pigment Green 7,36,37、
C.I.Pigment Black 1,7
【0025】
これら有機顔料は、単独若しくは色純度を上げるため種々の組合せて用いることができる。有機顔料の組合せの具体例を以下に示す。
例えば、赤の顔料としては、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料を単独で、又は、それらの少なくとも1種と、ジスアゾ系黄色顔料、イソインドリン系黄色顔料、キノフタロン系黄色顔料又はペリレン系赤色顔料、アントラキノン系赤色顔料、ジケトピロロピロール系赤色顔料と、を混合して用いることができる。
例えば、アントラキノン系顔料としては、C.I.ピグメント・レッド177が挙げられ、ペリレン系顔料としては、C.I.ピグメント・レッド155、C.I.ピグメント・レッド224が挙げられ、ジケトピロロピロール系顔料としては、C.I.ピグメント・レッド254が挙げられ、色再現性の点でC.I.ピグメント・イエロー83、C.I.ピグメント・イエロー139又はC.I.ピグメント・レッド177との混合が好ましい。また、赤色顔料と他顔料との質量比は、100:5〜100:80が好ましい。100:4以下では400nmから500nmの光透過率を抑えることが困難で色純度を上げることが出来ない場合がある。また100:81以上では発色力が下がる場合がある。特に、上記質量比としては、100:10〜100:65の範囲が最適である。なお、赤色顔料同士の組み合わせの場合は、色度に併せて調整することができる。
【0026】
また、緑の顔料としては、ハロゲン化フタロシアニン系顔料を1種単独で、又は、これとジスアゾ系黄色顔料、キノフタロン系黄色顔料、アゾメチン系黄色顔料、若しくはイソインドリン系黄色顔料とを混合して用いることができる。
例えば、このような例としては、C.I.ピグメント・グリーン7、36、37とC.I.ピグメント・イエロー83、C.I.ピグメント・イエロー138、C.I.ピグメント・イエロー139、C.I.ピグメント・イエロー150、C.I.ピグメント・イエロー180又はC.I.ピグメント・イエロー185との混合が好ましい。緑顔料と黄色顔料との質量比は、100:5〜100:200が好ましい。上記質量比が100:5未満では400〜450nmの光透過率を抑えることが困難となり色純度を上げることができない場合がある。また100:200を越えると主波長が長波長寄りになりNTSC目標色相からのずれが大きくなる場合がある。上記質量比としては100:20〜100:150の範囲が特に好ましい。
【0027】
青の顔料としては、フタロシアニン系顔料を、1種単独で、又は、これとジオキサジン系紫色顔料とを混合して用いることができる。
特に好適な例として、C.I.ピグメント・ブルー15:6とC.I.ピグメント・バイオレット23との混合を挙げることができる。
青色顔料と紫色顔料との質量比は、100:0〜100:100が好ましく、より好ましくは100:70以下である。
【0028】
また、ブラックマトリックス用途に好適な顔料としては、カーボンブラック、グラファイト、チタンブラック、酸化鉄、酸化チタン単独又は混合を用いることができ、カーボンブラックとチタンブラックとの組合せが好ましい。
また、カーボンブラックとチタンブラックとの質量比は、100:0〜100:60の範囲が好ましい。100:61以上では、分散安定性が低下する場合がある。
【0029】
−(b)酸性基を有する顔料誘導体−
本発明に用いられる顔料誘導体は、顔料色素構造と、有機連結基と、酸性官能基により構成されていれば特に限定されない。(b)酸性基を有する顔料誘導体の構造としては、下記の一般式(1)あるいは一般式(2)で表すことができる。
【0030】
【化1】

【0031】
【化2】

【0032】
一般式(1)、および一般式(2)で、[Pig]は顔料色素構造を示し、wは鎖状および分岐状有機連結基を示す。Aは酸性の官能基を示す。pおよびmは1〜10の整数を表す。
【0033】
<顔料色素構造>
顔料色素構造としては、一般式(1)、一般式(2)の[Pig]で表される部分であり、顔料母核構造、或いは顔料部分構造が挙げられる。顔料分散液として用いる場合に、用いる顔料の構造と同じであっても異なっていてもよいが、顔料と顔料誘導体との相互作用の観点から、顔料構造と同一または類似していることが好ましい。顔料母核構造の例としては、ハンザイエロー系、ジスアゾイエロー系、ベンズイミダゾロン系、レーキレッド系、トルイジンレッド系、ナフトールAS系、イソインドリン系、イソインドリノン系、キナクリドン系、ペリレン系、アンスラキノン系、ジケトピロロピロール系、ジオキサジンバイオレット系、フタロシアニン系、アゾメチン系、プテリジン系、ナフトール系、ピラゾロン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キサンテン系、インダジン系、カーボンブラックなど各種の顔料色素構造を用いることができる。例として、顔料構造としては、下記に示す構造を用いることができる(式中、Xは酸性官能基を有する本特許に該当する置換である。一分子中に二個以上のXを含む場合は、各々のXは異なるものでもよい。)。顔料色素構造としては、顔料の構造或いは顔料の部分構造であればよく、下記の特定の顔料構造に限定されない。
【0034】
【化3】

【0035】
【化4】

【0036】
【化5】

【0037】
【化6】

【0038】
【化7】

【0039】
【化8】

【0040】
【化9】

【0041】
【化10】

【0042】
【化11】

【0043】
【化12】

【0044】
【化13】

【0045】
【化14】

【0046】
<酸性官能基>
本発明における顔料誘導体の酸性基は、一般式(1)あるいは一般式(2)におけるAであり、スルホン酸基、金属イオンを対イオンとして有するスルホン酸塩、炭素数1〜12のモノアルキルアンモニウムイオン、炭素数1〜24のジアルキルアンモニウムイオン、炭素数1〜36のトリアルキルアンモニウムイオンを対イオンとして有するスルホン酸塩、カルボン酸基、リン酸基、水酸基、ホウ酸基が挙げられる。この中で現像での残渣低減の観点から、好ましくはスルホン酸基、金属イオンを対イオンとして有するスルホン酸塩、カルボン酸基が挙げられ、基板上への残渣がより残りにくい酸性基としてより好ましくはスルホン酸基、金属イオンを対イオンとして有するスルホン酸塩が挙げられる。スルホン酸塩の対イオンである金属イオンとしては、周期律表の第1−13族から選ばれる金属イオンを用いることができ、好ましくは周期律表の第1−2族から選ばれる金属イオンを用いることができ、より好ましくは、カリウムイオン、ナトリウムイオンを用いることができる。
【0047】
本発明の着色組成物における顔料誘導体の酸性基は、複数の種類の酸性基を組み合わせて用いることができる。例えば、スルホン酸基とカルボン酸基、スルホン酸基と金属イオンを対イオンとして有するスルホン酸塩、スルホン酸基とカルボン酸基と炭素数1〜36のトリアルキルアンモニウムイオンを対イオンとして有するスルホン酸塩、スルホン酸基とカルボン酸基と炭素数1〜72のトリアルキルアンモニウムイオンを対イオンとして有するスルホン酸塩と水酸基が挙げられる。酸性官能基の組み合わせはこれらに限定されるものではない。
【0048】
<連結基>
本発明における酸性基を有する顔料誘導体の連結基は、一般式(1)あるいは一般式(2)におけるwであり、2価以上の有機連結基である。
【0049】
有機連結基としては、2価以上の連結基であれば、特に限定されないが、好ましくは、鎖上に置換されていてもよい又は鎖中に連結基が導入されていてもよい線状又は分岐状アルキレン基、鎖上に置換されていてもよい又は鎖中に連結基が導入されていてもよい線状ポリ(アルキレンオキシ)基、鎖上に置換されていてもよい又は鎖中に連結基が導入されていてもよい線状もしくは分岐状不飽和炭化水素基等が挙げられる。線状又は分岐状アルキレン基、線状ポリ(アルキレンオキシ)基、線状又は分岐状不飽和炭化水素基における鎖上への置換基としては、特に限定されないが、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のフルオロアルキル基、アリル基、炭素数1〜24のアラルキル基、炭素数1〜24のアリール基、炭素数1〜24のヘテロアリール基、炭素数1〜24の置換基を有していてもよいアミノ基、炭素数1〜24個のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜24個のアリールオキシカルボニル基、炭素数1〜24個のアルキルアミノカルボニル基、炭素数1〜24個のアリールアミノカルボニル基、炭素数1〜24個のアルキルカルバモイル基、炭素数1〜24個のアリールカルバモイル基、又はカルバモイルオキシ基等が挙げられる。線状又は分枝状アルキレン基、線状ポリ(アルキレンオキシ)基、線状又は分枝状不飽和炭化水素基における鎖中の連結基としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、エステル基、アミド基、ウレア基、カルバモイル基等が挙げられる。上記の各線状ポリ(アルキレンオキシ)基の繰返し数は、2から12が好ましく、より好ましくは、2から6である。
【0050】
本発明における顔料誘導体の具体例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
【化15】

【0052】
【化16】

【0053】
【化17】

【0054】
【化18】

【0055】
【化19】

【0056】
【化20】

【0057】
【化21】

【0058】
【化22】

【0059】
【化23】

【0060】
【化24】

【0061】
【化25】

【0062】
【化26】

【0063】
【化27】

【0064】
【化28】

【0065】
【化29】

【0066】
【化30】

【0067】
本発明における酸性基を有する顔料誘導体の顔料に対する含有量としては、0.1〜50質量%であり、より好ましくは1.0〜40質量%であり、さらに好ましくは10〜30質量%である。含有量が前記範囲内であると、分散安定性が高く、コントラスト等の色特性を損なわないので好ましい。
本発明における顔料誘導体は、1種単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
−(c)高分子化合物−
本発明に用いられる(c)高分子化合物は、線状ポリマー、グラフトポリマー、ブロックポリマー、末端変性型ポリマーなどが使用でき、これらの構造のアクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリイミド系の高分子化合物を好適に用いることができる。
これらの中でもグラフト構造の高分子化合物、線状ポリマーが好ましく、特にグラフト構造の高分子化合物が特に好ましい。以下本発明に好ましい線状ポリマー及びグラフト型高分子化合物について説明する。
【0069】
本発明で使用される線状ポリマーは、1,000以上100000以下の重量平均分子量を有する高分子化合物であり、(メタ)アクリレート系モノマー、スチレンモノマー等のラジカル重合性モノマーを重合したものであれば、特に限定されない。
【0070】
本発明で使用されるグラフト型高分子化合物は、1,000以上100000以下の重量平均分子量を有するグラフト型高分子化合物、即ち、主鎖(幹ポリマー)構造に、所定の分子量を有する側鎖(枝ポリマー)が結合してなる構造を有する高分子化合物であれば、特に制限を受けない。
本発明のグラフト型高分子化合物の幹部(主鎖)は、ポリスチレン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル等により構成されるものが好適に挙げられる。
また、本発明のグラフト型高分子化合物の枝部(グラフト鎖)は、ポリスチレン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル等により構成されるものが好適に挙げられる。
なお、本明細書においては、「アクリル」、「メタクリル」及び「アクリレート」、「メタクリレート」のいずれか或いは双方を指す場合、それぞれ「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」と記載する場合がある。
また、本発明のグラフト型高分子化合物を総称して特定グラフト型高分子化合物ということがある。
【0071】
このように、グラフト鎖を有する構造であれば、幹部と枝部は同じポリマー種で形成されたものであってもよく、互いに異なっていてもよい。また、幹部、枝部のポリマー鎖には、目的に応じて種々の部分構造を含むことができる。例えば、幹部に顔料吸着性に優れた官能基を導入することで、特定グラフト型高分子化合物の顔料表面への吸着性をより向上させることができる。
本発明に好適に用いうる特定グラフト型高分子化合物を合成する際、主鎖を形成するモノマー由来の構造単位とともに、末端にエチレン性不飽和2重結合を有する重合性オリゴマーに由来する構造単位を共重合させることが、導入されるグラフト鎖の鎖長や特性を制御し、顔料への吸着性に優れ、また、経時的な安定性に優れた高分子化合物を得られという観点から好ましい。
【0072】
特定グラフト型高分子化合物において側鎖構造の形成に有用な末端にエチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマーは、所定の分子量を有する化合物であることからマクロモノマーとも呼ばれる。以下の説明では、本発明における「末端にエチレン性不飽和結合を有する重合性オリゴマー」を、適宜、「重合性オリゴマー」又は「マクロモノマー」と称する場合がある。
本発明において所望により用いられる重合性オリゴマーは、ポリマー鎖部分とその末端のエチレン性不飽和二重結合を有する重合可能な官能基の部分からなる。このようなエチレン性不飽和二重結合を有する基は、ポリマー鎖の一方の末端にのみ有することが、所望のグラフト重合体を得るという観点から好ましい。エチレン性不飽和二重結合を有する基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基が好ましく、特に(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0073】
本発明に係る特定グラフト型高分子化合物の合成に用いられるマクロモノマーは、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が500〜10,000の範囲であることが好ましく、1,000〜9,000の範囲であることが特に好ましい。
着色組成物に含有される顔料の分散性及び分散安定性、該着色組成物を適用して得られたカラーフィルタのコントラストの観点からは、マクロモノマーの数平均分子量(Mn)は500以上であることが好ましい。また、着色組成物を含有する光硬化性組成物によりカラーフィルタを製造する際の現像性の観点からは、マクロモノマーの数平均分子量(Mn)は10,000以下であることが好ましい。
【0074】
マクロモノマーにおけるポリマー鎖の部分は、アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、及びブタジエンからなる群より選ばれる少なくとも一種のモノマーから形成される単独重合体又は共重合体、あるいは、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、又はポリカプロラクトンであってもよい。
これらのポリマー鎖はさらに置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としてはハロゲン原子、アルケニル基、アリール基、水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイル基等が挙げられる。
【0075】
なお、ポリマー鎖を形成するアルキル(メタ)アクリレート、N−アルキル(メタ)アクリルアミド等におけるアルキル基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、2−メトキシエチル基、2−ブロモプロピル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、3−メチル−2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、4−メチル−2−ヘキセニル基、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基、クロロベンジル基、ブロモベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、メトキシベンジル基、ジメチルベンジル基、ジメトキシベンジル基、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基、ビシクロ〔3.2.1〕オクト−2−イル基、1−アダマンチル基、ジメチルアミノプロピル基、アセチルアミノエチル基、N,N−ジブチルアミノカルバモイルメチル基などが挙げられる。
このようなアルキル基のうち、無置換アルキル基、又は、ハロゲン原子、アリール基、若しくは水酸基で置換されたアルキル基が好ましく、特に無置換アルキル基が好ましい。
【0076】
これらのポリマー鎖のなかでも、得られるグラフト型高分子化合物の分散安定性、現像性の観点からは、無置換、或いは、置換基として水酸基、炭素数1から4のアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、無置換、或いは、置換基として炭素数1から4のアルキル基を有するN−アルキル(メタ)アクリルアミド、無置換、或いは、置換基として炭素数1から4のアルキル基を有するN,N’−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、無置換、或いは、置換基として炭素数1から4のアルキル基、炭素数1から4のアルコキシ基を有するスチレン、(メタ)アクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種のモノマーから形成される単独重合体又は共重合体、ポリカプロラクトン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドが好ましく、無置換、或いは、置換基として水酸基、炭素数1から4のアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート、無置換、或いは、置換基として炭素数1から4のアルキル基を有するN,N’−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、無置換、或いは、置換基として炭素数1から4のアルコキシ基を有するスチレン、(メタ)アクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種のモノマーから形成される単独重合体又は共重合体、ポリカプロラクトンが特に好ましい。
グラフト型高分子化合物を合成するのに有用なマクロモノマーとしては、下記一般式(5)で表されるオリゴマーが好ましく挙げられる。
【0077】
【化31】

【0078】
一般式(5)のR11及びR13は、各々独立に水素原子又はメチル基を表す。
一般式(5)のR12は炭素原子数1〜12のアルキレン基を含む連結基を表し、該連結基は、炭素原子数1〜12のアルキレン基であってもよいし、複数の当該アルキレン基がエステル結合、エーテル結合、アミド結合等を介して連結したものであってもよい。R12におけるアルキレン基として好ましくは、炭素原子数2〜4のアルキレン基である。R12におけるアルキレン基は、さらに、水酸基、アルコキシ基の如き置換基を有していてもよい。
11は、置換基を有してもよいフェニル基、−COOR14、シアノ基、−CONR1516を表す。ここで、R14は、炭素原子数1〜12のアルキル基、フェニル基又は炭素原子数7〜10のアリールアルキル基を表す。R15、R16は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基を表す。R14、R15、R16、及びY11がアルキル基、フェニル基を表す場合、これらはさらに置換基を有してもよく、ここで導入可能な置換基としては、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。
11は、好ましくは、フェニル基、シアノ基又は−COOR14であり、ここでR14は炭素原子数1〜12のアルキル基を表す。Y11は、分散安定性、現像性の点から、−COOR14、又は、シアノ基であることが最も好ましい。
qは10〜200の整数を表す。
一般式(5)のマクロモノマーにおいてq個連結される構造単位は1種のみでもよく、2種以上の構造単位を含む共重合体であってもよいが、複数種の構造単位を含む場合、R13、Y11として、互いに異なる2種以上が存在することもできる。
【0079】
上記重合性オリゴマーの具体例としては、ポリ−2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリスチレンポリマー、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ−n−ブチル(メタ)アクリレート、ポリ−i−ブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアセトアセトキシエチルメタクリレート、ポリ−2−メトキシエチルメタクリレート、ポリ−2−メトキシエトキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、N,N’−ジメチルアクリルアミドそれらの共重合体であって、分子末端の一個に(メタ)アクリロイル基が結合したポリマーが好適に挙げられる。
【0080】
上記重合性オリゴマーは、市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよく、該市販品としては、例えば、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー(Mn=6000、商品名:AS−6、東亜合成化学工業(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AA−6、東亜合成化学工業(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリ−n−ブチルアクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AB−6、東亜合成化学工業(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートオリゴマー(Mn=7000、商品名:AA−714、東亜合成化学工業(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリブチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートオリゴマー(Mn=7000、商品名:707S、東亜合成化学工業(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリ2−エチルヘキシルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートオリゴマー(Mn=7000、商品名:AY−707S、AY−714S、東亜合成化学工業(株)製)などが挙げられる。
特定グラフト型高分子化合物は、末端にエチレン性不飽和2重結合を有する重合性オリゴマーに由来する共重合単位を、1種のみ含むものであってもよいし、2種以上を含んでもよい。
【0081】
特定グラフト型高分子化合物における上記共重合単位の含有量としては、上記重合性オリゴマーが20〜80質量%であり、好ましくは40〜80質量%である。重合性オリゴマーの含有量が上記範囲において、分散溶媒への溶解性が適切に維持され、分散安定化のために必要な吸着層を十分に確保することが可能となり、且つ、この加工顔料を用いて硬化性組成物を形成した場合にも現像性を損なうことがない。
【0082】
次に、本発明に係る特定グラフト型高分子化合物の主鎖構造について説明する。
特定グラフト型高分子化合物の幹部(主鎖)は、ポリスチレン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル等のいずれにより構成されるものであってもよいが、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル骨格であることが好ましい。
グラフト型高分子化合物及び線状ポリマーの顔料への吸着を高める目的で、前記主鎖骨格を形成するモノマー及び、グラフトを形成するための前述のマクロモノマーに加えて、顔料に吸着し得る官能基を有するモノマーをさらに共重合させてグラフト型高分子化合物を得ることが好ましい。
顔料に吸着し得る官能基を有するモノマーとしては、具体的には、有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマー、酸性基を有するモノマー、塩基性窒素原子を有するモノマー、イオン性基を有するモノマーなどを挙げることができる。
なお、ここで、これら顔料に吸着し得る官能基は、主鎖構造を形成する重合性の部分構造に直接結合してもよく、また。下記の構造単位又は該構造単位が組み合わさって構成される連結基を介して結合していてもよい。
【0083】
【化32】

【0084】
有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマーとしては、下記一般式(3)で表される単量体または、マレイミド、マレイミド誘導体であることが好ましい。下記一般式(4)で表される単量体であることが特に好ましい。
【0085】
【化33】

【0086】
一般式(3)中、Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。一般式(3)のRは、単結合、又は2価の連結基を表す。一般式(3)のYは、−CO−、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、又はフェニレン基を表す。Zは含窒素複素環構造を有する基を表す。
で表されるアルキル基は置換基を有するものであってもよく、導入可能な置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5、より好ましくは炭素数1〜3)、メトキシ基、エトキシ基、シクロヘキシロキシ基等が挙げられる。
で表される好ましいアルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基が挙げられる。
としては、水素原子又はメチル基が最も好ましい。
【0087】
一般式(3)中、Rは、単結合又は2価の連結基を表す。該2価の連結基としては、アルキレン基が好ましい。該アルキレン基としては、炭素数1〜12のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜12のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜8のアルキレン基が更に好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基が特に好ましい。
で表されるアルキレン基は、ヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子)を介して2以上連結したものであってもよい。
で表される好ましいアルキレン基として具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が挙げられる。
で表される好ましいアルキレン基が置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基等が挙げられる。
で表される2価の連結基としては、上記のアルキレン基の末端において、−O−、−S−、−C(=O)O−、−CONH−、−C(=O)S−、−NHCONH−、−NHC(=O)O−、−NHC(=O)S−、−OC(=O)−、−OCONH−、及び−NHCO−から選ばれるヘテロ原子又はヘテロ原子を含む部分構造を有し、該ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む部分構造を介してZと連結するものであってもよい。
【0088】
一般式(3)中、Zは複素環構造を有する基を表す。複素環構造を有する基としては、例えば、フタロシアニン系、不溶性アゾ系、アゾレーキ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アントラピリジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、チオインジゴ系の色素構造や、例えば、チオフェン、フラン、キサンテン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ジオキソラン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、ジオキサン、モルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、トリアジン、トリチアン、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンゾチアゾール、コハクイミド、フタルイミド、ナフタルイミド、ヒダントイン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、アントラキノン、ピラジン、テトラゾール、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンズイミダゾール、ベンズトリアゾール、環状アミド、環状ウレア、環状イミド等の複素環構造が挙げられる。
これらの複素環構造は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、脂肪族エステル基、芳香族エステル基、アルコキシカルボニル基、等が挙げられる。
Zは、炭素数が6以上である含窒素複素環構造を有する基であることがより好ましく、炭素数が6以上12以下である含窒素複素環構造を有する基であることが特に好ましい。炭素数が6以上である含窒素複素環構造として具体的には、フェノチアジン環、フェノキサジン環、アクリドン環、アントラキノン環、ベンズイミダゾール構造、ベンズトリアゾール構造、ベンズチアゾール構造、環状アミド構造、環状ウレア構造、及び環状イミド構造が好ましく、下記一般式(4)、(6)又は(7)で表される構造であることが特に好ましい。
【0089】
【化34】

【0090】
一般式(4)中、Fは、単結合、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基など)、−O−、−S−、−NR−、及び−C(=O)−からなる群より選ばれるいずれかである。ここで、Rは、水素原子又はアルキル基を表す。Rがアルキル基を表す場合のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクタデシル基などが挙げられる。
上記した中でも、一般式(4)におけるFとしては、単結合、メチレン基、−O−、又は−C(=O)−が好ましく、−C(=O)−が特に好ましい。
【0091】
一般式(7)中、Y及びZは、各々独立に、−N=、−NH−、−N(R)−、−S−、又は−O−を表す。Rは、アルキル基を表し、Rがアルキル基を表す場合のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクタデシル基などが挙げられる。
上記した中でも、一般式(7)における、Y及びZとしては、−N=、−NH−、及び−N(R)−が特に好ましい。Y及びZの組み合わせとしては、Y及びZのいずれか一方が−N=であり、他方が−NH−である組み合わせ、イミダゾリル基が挙げられる。
【0092】
一般式(4)、(6)、及び(7)中、環B、環B、環C、及び環Eは、各々独立に、芳香環を表す。該芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、インデン環、アズレン環、フルオレン環、アントラセン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピロール環、イミダゾール環、インドール環、キノリン環、アクリジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、アクリドン環、アントラキノン環等が挙げられ、中でも、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環、フェノキサジン環、アクリジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、アクリドン環、アントラキノン環が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環が特に好ましい。
【0093】
具体的には、一般式(4)における環B及び環Bとしては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、等が挙げられる。
一般式(6)における環Cとしては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、等が挙げられる。
一般式(7)における環Eとしては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、等が挙げられる。
【0094】
一般式(4)、(6)又は(7)で表される構造の中でも、分散性、分散液の経時安定性の点からは、ベンゼン環、ナフタレン環を有するものがより好ましく、一般式(4)又は(7)においては、ベンゼン環を有するものが更に好ましく、一般式(6)においては、ナフタレン環を有するものが更に好ましい。
【0095】
本発明に係る特定グラフト型高分子化合物の合成に好適に用いうる有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマーのより具体的な例である、前記一般式(1)で表される単量体、マレイミド、マレイミド誘導体の好ましい具体例〔例示モノマー(M−1)〜(M−33)〕を以下に挙げるが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0096】
【化35】

【0097】
【化36】

【0098】
【化37】

【0099】
【化38】

【0100】
本発明に係る特定グラフト型高分子化合物は、一般式(3)で表される単量体、マレイミド、マレイミド誘導体に由来する重合単位に代表される顔料吸着性を有する官能基をもつ単量体を、1種のみ含んで合成されてもよく、2種以上を含んで合成されてもよい。
一般式(3)で表される単量体、マレイミド、マレイミド誘導体の中でも、一般式(3)で表される単量体を用いることが、顔料への吸着性向上の観点から好ましい。
【0101】
特定グラフト型高分子化合物において、一般式(3)で表される単量体、マレイミド、マレイミド誘導体に由来する共重合単位の含有量は、特に制限はないが、重合体に含有される全構造単位を100質量%とした場合に、一般式(3)で表される単量体、マレイミド、マレイミド誘導体に由来する共重合単位を5質量%以上含有することが好ましく、10〜50質量%含有することがより好ましい。
即ち、顔料の1次粒子の凝集体である2次凝集体の生成を効果的に抑制、あるいは、2次凝集体の凝集力を効果的に弱めるためには、一般式(3)で表される単量体、マレイミド、マレイミド誘導体に由来する共重合単位の含有量は5質量%以上であることが好ましい。また、着色組成物を含有する光硬化性組成物によりカラーフィルタを製造する際の現像性の観点からは、一般式(3)で表される単量体に由来する共重合単位の含有量は50質量%以下であることが好ましい。
【0102】
特定グラフト型高分子化合物は、顔料に吸着し得る官能基としての酸性基を有することが好ましく、このため、合成の際に、酸性基を有するモノマーを共重合させることが好ましい。
前記「酸性基」として、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、モノ硫酸エステル基、リン酸基、モノリン酸エステル基、ホウ酸基が好ましい例として挙げられ、カルボン酸基、スルホン酸基、モノ硫酸エステル基、リン酸基、モノリン酸エステル基がより好ましく、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基が特に好ましい。
合成に用いうる酸性基を有するモノマーの例としては、カルボキシル基を有するビニルモノマーやスルホン酸基を有するビニルモノマーが挙げられる。
カルボキシル基を有するビニルモノマーとして、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシル基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの無水物含有モノマーを用いてもよい。なおこれらの内では、共重合性やコスト、溶解性などの観点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
また、スルホン酸基を有するビニルモノマーとして、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられ、リン酸基を有するビニルモノマーとして、リン酸モノ(2−アクリロイルオキシエチルエステル)、リン酸モノ(1−メチル−2−アクリロイルオキシエチルエステル)などが挙げられる。
特定グラフト型高分子化合物及び線状ポリマーが酸性基を有することにより、着色組成物を光硬化性組成物に適用した場合において、未露光部の現像除去性に優れる。
特定重合体は、酸性基を有する単量体に由来する共重合単位を、1種のみ含むものであってもよいし、2種以上を含んでもよい。
【0103】
本発明における特定グラフト型高分子化合物及び線状ポリマーは、その分子中に酸性基、より好ましくはカルボキシル基を含むことが好ましく、含有量としては、カルボキシル基を50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下の範囲で含むことが好ましい。即ち、着色光硬化性組成物に適用し、現像に供した際、現像液中での析出物の生成抑制という点、更に、顔料の1次粒子の凝集体である2次凝集体の生成を効果的に抑制、或いは、2次凝集体の凝集力を効果的に弱めるためには、カルボキシル基を50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下の範囲で含むことが好ましい。
【0104】
また、顔料に吸着し得る官能基としては、塩基性窒素原子も好ましく挙げられ、特定グラフト型高分子化合物の合成に用いうる塩基性窒素原子を有するモノマーにおける「塩基性窒素原子を有する基」としては、例えば、アミノ基(−NH)、置換イミノ基(−NHR、−NR10、ここで、R、R、及びR10は各々独立に、炭素数1から20までのアルキル基、炭素数6以上のアリール基、炭素数7以上のアラルキル基を表す。)、下記式(a1)で表されるグアニジル基、下記式(a2)で表されるアミジニル基などが好ましい例として挙げられる。
【0105】
【化39】

【0106】
式(a1)中、R24及びR25は各々独立に、炭素数1から20までのアルキル基、炭素数6以上のアリール基、炭素数7以上のアラルキル基を表す。
式(a2)中、R26及びR27は各々独立に、炭素数1から20までのアルキル基、炭素数6以上のアリール基、炭素数7以上のアラルキル基を表す。
【0107】
これらの中でも、アミノ基(−NH)、置換イミノ基(−NHR、−NR10、ここで、R、R、及びR10は各々独立に、炭素数1から10までのアルキル基、フェニル基、ベンジル基を表す。)、前記式(a1)で表されるグアニジル基〔式(a1)中、R24及びR25は各々独立に、炭素数1から10までのアルキル基、フェニル基、ベンジル基を表す。〕、前記式(a2)で表されるアミジニル基〔式(a2)中、R26及びR27は各々独立に、炭素数1から10までのアルキル基、フェニル基、ベンジル基を表す。〕などがより好ましい。
特に、アミノ基(−NH)、置換イミノ基(−NHR、−NR10、ここで、R、R、及びR10は各々独立に、炭素数1から5までのアルキル基、フェニル基、ベンジル基を表す。)、前記式(a1)で表されるグアニジル基〔式(a1)中、R24及びR25は各々独立に、炭素数1から5までのアルキル基、フェニル基、ベンジル基を表す。〕、前記式(a2)で表されるアミジニル基〔式(a2)中、R26及びR27は各々独立に、炭素数1から5までのアルキル基、フェニル基、ベンジル基を表す。〕などが好ましく用いられる。
【0108】
塩基性窒素原子を有する官能基の具体例としては、(メタ)アクリル酸エステルとして、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸1−(N,N−ジメチルアミノ)−1、1−ジメチルメチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノヘキシル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジイソプロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−n−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−i−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モルホリノエチル、(メタ)アクリル酸ピペリジノエチル、(メタ)アクリル酸1−ピロリジノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−メチル−2−ピロリジルアミノエチル及び(メタ)アクリル酸N,N−メチルフェニルアミノエチルなどが挙げられる。
また、(メタ)アクリルアミド類として、N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノプロピル)メタクリルアミド、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1、1−ジメチルメチル(メタ)アクリルアミド及び6−(N,N−ジエチルアミノ)ヘキシル(メタ)アクリルアミド、モルホリノ(メタ)アクリルアミド、ピペリジノ(メタ)アクリルアミド、N−メチル−2−ピロリジル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられ、スチレン類として、N,N−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジメチルアミノメチルスチレン等、が挙げられる。
【0109】
また、特定グラフト型高分子化合物の合成に際しては、顔料に吸着し得る官能基としてのウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、水酸基を有するモノマーを用いることも可能である。
前記「ウレア基」として、例えば、−NR15CONR1617(ここで、R15、R16、及びR17は各々独立に、水素原子或いは、炭素数1から20までのアルキル基、炭素数6以上のアリール基、炭素数7以上のアラルキル基を表す。)が好ましい例として挙げられ、−NR15CONHR17(ここで、R15及びR17は各々独立に、水素原子或いは、炭素数1から10までのアルキル基、炭素数6以上のアリール基、炭素数7以上のアラルキル基を表す。)がより好ましく、−NHCONHR17(ここで、R17は水素原子或いは、炭素数1から10までのアルキル基、炭素数6以上のアリール基、炭素数7以上のアラルキル基を表す。)が特に好ましい。
【0110】
前記「ウレタン基」として、例えば、−NHCOOR18、−NR19COOR20、−OCONHR21、−OCONR2223(ここで、R18、R19、R20、R21、R22及びR23は各々独立に、炭素数1から20までのアルキル基、炭素数6以上のアリール基、炭素数7以上のアラルキル基を表す。)などが好ましい例として挙げられ、−NHCOOR18、−OCONHR21(ここで、R18、R21は各々独立に、炭素数1から20までのアルキル基、炭素数6以上のアリール基、炭素数7以上のアラルキル基を表す。)などがより好ましく、−NHCOOR18、−OCONHR21(ここで、R18、R21は各々独立に、炭素数1から10までのアルキル基、炭素数6以上のアリール基、炭素数7以上のアラルキル基を表す。)などが特に好ましい。
【0111】
前記「配位性酸素原子を有する基」としては、例えば、アセチルアセトナト基、クラウンエーテルなどが挙げられる。
前記「炭素数4以上の炭化水素基」としては、炭素数4以上のアルキル基、炭素数6以上のアリール基、炭素数7以上のアラルキル基などが好ましい例として挙げられ、炭素数4〜20アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基などがより好ましく、炭素数4〜15アルキル基(例えば、オクチル基、ドデシル基など)、炭素数6〜15のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基など)、炭素数7〜15のアラルキル基(例えばベンジル基など)などが特に好ましい。
前記「アルコキシシリル基」としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基などが挙げられる。
具体的には、例えば、以下の構造のモノマーを挙げることができる。
【0112】
【化40】

【0113】
顔料に吸着し得る官能基である「イオン性官能基」としては、アニオン性の官能基及びカチオン性の官能基がある。
アニオン性の官能基として、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、モノ硫酸エステル基、リン酸基、モノリン酸エステル基、ホウ酸基など酸性基のアルカリ金属塩や、前記酸性基と有機アミンとの塩などが挙げられる。
酸性基のアルカリ金属塩としては、Na塩、K塩などが挙げられ、−COONa、−COO、−SONa、等が挙げられる。
酸性基と有機アミンとの塩としては、−COOHN323334、−SOHN353637(R32、R33、R34、R35、R36、及びR37は、それぞれ独立に、水素原子、或いは、置換基(例えば、水酸基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基、炭素数1から6までのアシルオキシ基、炭素数1から6までのアルコキシ基、炭素数2から7までのアルコキシカルボニル基、シアノ基、炭酸エステル基など)等が挙げられる。
【0114】
また、カチオン性の官能基としては、下記一般式で表される塩も好適に挙げられる。
【0115】
【化41】

【0116】
上記一般式中、R48、R49、R50、R51は、それぞれ独立に、水素原子、或いは、置換基を有していてもよく、また、連結して飽和又は不飽和環状構造を形成していてもよい炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。
は、ハロゲンアニオン(例えば、Cl、Br、I)、RCOO、RSOなどの有機酸アニオン(Rは、置換基を有していてもよく、また連結して飽和或いは不飽和環状構造を形成していてもよい炭素数1から18のアルキル基、アリール基、アラルキル基)などの陰イオンを表す。
は、窒素と共に複素環基を形成する原子団を表す。
【0117】
顔料に吸着し得る官能基であるイオン性基を有するイオン性ビニルモノマーの例としては、アニオン性ビニルモノマーとして、前記酸性基を有するビニルモノマーのアルカリ金属塩や、有機アミン(例えば、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール等の3級アミン)との塩などが挙げられる。
カチオン性ビニルモノマーとしては、前記含窒素ビニルモノマーを、ハロゲン化アルキル(炭素数1〜18のアルキル基:ハロゲン原子:塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子);塩化ベンジル、臭化ベンジル等のハロゲン化ベンジル;メタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸エステル(炭素数1〜18のアルキル基);ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等のアリールスルホン酸アルキルエステル(炭素数1〜18のアルキル基);硫酸ジアルキル(炭素数1〜4のアルキル基)等で4級化させたもの、ジアルキルジアリルアンモニウム塩などが挙げられる。
顔料に吸着し得る官能基を有するモノマーは、分散する顔料の種類に応じて、適宜選択することができる。即ち、被覆する有機顔料が有する骨格と同一、又は、類似の骨格を有するもの、顔料中に存在する官能基と相互作用を形成しやすいものなどを選択することがより好ましい。特定グラフト型高分子化合物の合成に顔料に吸着し得る官能基を有するモノマーを用いる際には、これらモノマーは目的に応じ、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0118】
特定グラフト型高分子化合物は、その効果を損なわない範囲において、更に、共重合可能なビニルモノマーに由来する共重合単位を含んでいてもよい。
ここで使用可能なビニルモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエーテル類、ビニルアルコールのエステル類、スチレン類、(メタ)アクリロニトリルなどが好ましい。このようなビニルモノマーの具体例としては、例えば以下のような化合物が挙げられる。
【0119】
(メタ)アクリル酸エステル類の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β−フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチルなどが挙げられる。
【0120】
クロトン酸エステル類の例としては、クロトン酸ブチル、及びクロトン酸ヘキシル等が挙げられる。
ビニルエステル類の例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、及び安息香酸ビニルなどが挙げられる。
マレイン酸ジエステル類の例としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、及びマレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
フマル酸ジエステル類の例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、及びフマル酸ジブチルなどが挙げられる。
イタコン酸ジエステル類の例としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、及びイタコン酸ジブチルなどが挙げられる。
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ブチルアクリル(メタ)アミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミドなどが挙げられる。
【0121】
ビニルエーテル類の例としては、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、及びメトキシエチルビニルエーテルなどが挙げられる。
スチレン類の例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt−Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、及びα−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0122】
本発明でより効果的なグラフト型高分子化合物の好ましい態様は、少なくとも前述のマクロモノマー、有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマーを共重合したもので、さらに好ましくは、前述のマクロモノマー、前述の一般式(1)で表されるモノマー、酸性基を有するモノマーを共重合したものである。
また、本発明の線状ポリマーの好ましい態様は、有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマーを共重合したもので、さらに好ましくは、前述の一般式(1)で表されるモノマー、酸性基を有するモノマーを共重合したものである。
この態様により、顔料吸着に優れ、かつ現像性に優れた着色組成物を与えることができる。
【0123】
本発明における(c)高分子化合物の好ましい分子量は、重量平均分子量(Mw)で5000〜100000の範囲、数平均分子量(Mn)で2500〜50000の範囲であることが好ましい。また、重量平均分子量(Mw)で10000〜50000の範囲、数平均分子量(Mn)で5000〜30000の範囲であることがより好ましい。
特に、重量平均分子量(Mw)で10000〜30000の範囲、数平均分子量(Mn)で5000〜15000の範囲であることが最も好ましい。
即ち、顔料の1次粒子の凝集体である2次凝集体の生成を効果的に抑制、或いは、2次凝集体の凝集力を効果的に弱めるための観点からは、(c)高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は1000以上であることが好ましい。また、着色光硬化性組成物に適用し、現像に供した際の現像性の観点からは、(c)高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は30000以下であることが好ましい。
【0124】
本発明における(c)高分子化合物としては、好ましくはグラフト型高分子化合物であり、さらに〔化31〕の一般式(1)を含むことが好ましい。これによって顔料の分散性が向上し、分散安定性の良好な着色組成物が得られる。また耐熱性が向上し、ポストベーク前後での着色の変化が小さく好ましい。
【0125】
(合成方法)
特定グラフト型高分子化合物は、主鎖構造を形成するための重合性単量体、ポリマーの枝部を形成するための重合性オリゴマー(マクロモノマー)と、好ましくは、一般式(1)で表される単量体に代表される如き顔料に吸着しうる官能基を有する単量体と、さらに、所望により共重合成分として他のラジカル重合性化合物とを用い、通常のラジカル重合法によって製造することができる。一般的には、懸濁重合法あるいは溶液重合法などを用いる。
このような特定重合体を合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合してもよい。
【0126】
該ラジカル重合の際、ラジカル重合開始剤を使用することができ、また、さらに連鎖移動剤を使用することができる。
ラジカル重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス−(2,4’−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチルのようなアゾ化合物、ベンゾイルパーオキシドのような過酸化物、及び過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムのような過硫酸塩などが利用できる。
また、連鎖移動剤としては、例えば、2−メルカプトエタノール、ドデシルメルカプタンなどが利用できる。
【0127】
〔加工顔料の製造〕
本発明では、(a)顔料に、(b)酸性基を有する顔料誘導体と、(c)高分子化合物とを被覆することが好ましく、更に好ましくは、顔料の微細化と同時に、(b)酸性基を有する顔料誘導体と、(c)高分子化合物とを用いて被覆した加工顔料とすることが効果的である。
【0128】
以下、加工顔料の製造方法を説明する。
加工顔料の製造は、i)顔料、ii)水溶性の無機塩、iii)実質的にii)水溶性の無機塩を溶解しない少量の水溶性の有機溶剤、iv)酸性基を有する顔料誘導体、およびv)高分子化合物など)を混合し、ニーダー等で機械的に混練する工程(この工程をソルトミリングと称する)、この混合物を水中に投入し、ハイスピードミキサー等で攪拌しスラリー状とする工程、更に、このスラリーを濾過、水洗して、その後、乾燥する工程を経て実施される。
このような製造方法により、微細で、且つ、乾燥時の顔料の凝集が少ない本発明の加工顔料が得られる。
【0129】
加工顔料の製造方法をより具体的に説明する。
まず、有機顔料と水溶性の無機塩との混合物に、湿潤剤として、少量の水溶性の有機溶剤を加え、ニーダー等で強く練り込んだ後、この混合物を水中に投入し、ハイスピードミキサー等で攪拌しスラリー状とする。
ここで、ソルトミリングに用いられる混練機としては、二本ロール、三本ロール、ボールミル、トロンミル、ディスパー、ニーダー、コニーダー、ホモジナイザー、ブレンダー、単軸もしくは2軸の押出機等が挙げられる。
本発明においては、ソルトミリング時に、上記した水溶性の有機溶剤に、酸性基を有する顔料誘導体、および高分子化合物を併用することにより、更に微細で、且つ、表面が酸性基を有する顔料誘導体と高分子化合物とによって被覆され、乾燥時の顔料の凝集が少ない加工顔料を得ることができる。
なお、酸性基を有する顔料誘導体、および高分子化合物を加えるタイミングは、ソルトミリング工程の初期にすべてを添加してもよく、それぞれを分割して添加してもよい。酸性基を有する顔料誘導体と高分子化合物とは、独立して添加しても良いし、混合して添加してもよい。
【0130】
次に、このスラリーを濾過、水洗して、必要により、乾燥することにより、微細化された顔料、即ち、本発明の加工顔料が得られる。
なお、油性のワニスに分散して用いる場合には、乾燥前の処理顔料(濾過ケーキと呼ぶ)を一般にフラッシングと呼ばれる方法で、水を除去しながら油性のワニスに分散することも可能である。また、水系のワニスに分散する場合は、処理顔料は乾燥する必要がなく、濾過ケーキをそのままワニスに分散することができる。
乾燥凝集を防ぐ方法として、上記スラリー中にアルカリ水溶液に溶解したアルカリ可溶性樹脂を添加し、充分攪拌混合した後に塩酸又は硫酸等の酸性水溶液で中和して樹脂を顔料に沈着させるか、塩化カルシウム又は塩化バリウム等の水溶性の多価金属塩の水溶液を添加して樹脂を析出させて顔料に沈着させることにより、乾燥凝集を防ぐことも可能である。
【0131】
以下、本発明の加工顔料を製造する際に用いられる各成分について説明する。
【0132】
〔ii)水溶性の無機塩〕
本発明に用いられる水溶性の無機塩は、水に溶解するものであれば特に限定されず、塩化ナトリウム、塩化バリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等を用いることができるが、価格の点から、塩化ナトリウム、又は硫酸ナトリウムを用いるのが好ましい。
ソルトミリングの際に用いる無機塩の量は、処理効率と生産効率の両面から、有機顔料の1〜30質量倍、特に5〜25質量倍であることが好ましい。
有機顔料に対する無機塩の量比が大きいほど微細化効率が高いが、1回の顔料の処理量が少なくなるためである。
【0133】
〔iii)実質的にii)水溶性の無機塩を溶解しない少量の水溶性の有機溶剤〕
本発明に用いられる水溶性の有機溶剤は、前述の顔料、水溶性の無機塩を湿潤する働きをするものであり、水に溶解(混和)し、且つ、併用する水溶性の無機塩を実質的に溶解しないものであればよく、特に限定されるものではない。
但し、ソルトミリング時に温度が上昇し、溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から、沸点120℃以上の高沸点溶剤が好ましい。
【0134】
本発明に用いられる水溶性の有機溶剤としては、例えば、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液状のポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、液状のポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0135】
水溶性の有機溶剤の添加量としては、水溶性の無機塩に対して、5質量%〜50質量%が好ましい。より好ましくは、水溶性の無機塩に対して10質量%〜40質量%であり、最適には、水溶性の無機塩に対して15質量%〜35質量%である。添加量が5質量%未満であると、均一な混練が難しくなり、顔料の粒子サイズの分布が大きくなって好ましくない。添加量が50質量%以上であると、混練組成物がやわらかくなりすぎ、混練組成物にシェアがかかりにくくなるために、十分な微細化効果が得られなくなる。
【0136】
本発明において、水溶性の有機溶剤はソルトミリング初期に全てを添加してもよいし、分割して添加してもよい。
また、水溶性の有機溶剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0137】
〔iv〕酸性基を有する顔料誘導体〕
本発明において、(b)酸性基を有する顔料誘導体はソルトミリング時に全てを添加しても良く、一部添加してもよい。ソフトミリング時に添加する場合には、質量比で、顔料:酸性基を有する顔料誘導体=100:3〜100:30の範囲で用いられることが好ましく、より好ましくは100:5〜100:20の範囲であり、更に好ましくは100:5〜100:15の範囲である。
この範囲で用いることで、顔料の色調を維持しながら、顔料を微細化することができる。
【0138】
〔v〕高分子化合物〕
本発明において、ソルトミリングに用いられる(c)高分子化合物は、質量比で、顔料:高分子化合物=100:3〜100:60の範囲で用いられることが好ましく、より好ましくは100:3〜100:40の範囲であり、更に好ましくは100:5〜100:30の範囲である。
この範囲で用いることで、ソルトミリングに用いられる水溶性無機塩が顔料を効率的に粉砕できるとともに、高分子化合物が顔料に効率的に覆うことができる。
【0139】
また、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、上述の特定高分子化合物の他に、他の高分子化合物を同時に使用してもよい。
他の高分子化合物としては、室温において固体であり、水不溶性で、かつソルトミリング時の湿潤剤に用いる水溶性の有機溶剤に少なくとも一部可溶であるものが好ましく、天然樹脂、変性天然樹脂、合成樹脂、天然樹脂で変性された合成樹脂等が用いられる。
本発明において、乾燥した加工顔料を得る場合には、他の高分子化合物としては室温で固体であるものが好ましい。
【0140】
天然樹脂としてはロジンが代表的であり、変性天然樹脂としては、ロジン誘導体、繊維素誘導体、ゴム誘導体、タンパク誘導体及びそれらのオリゴマーが挙げられる。
合成樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。天然樹脂で変性された合成樹脂としては、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。
【0141】
合成樹脂としては、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物が挙げられる。
【0142】
本発明の加工顔料を製造する際、本発明の(c)高分子化合物と他の高分子化合物とを併用する場合には、他の高分子化合物の割合は、全高分子化合物に対して50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0143】
以上のようにして作製された本発明の着色組成物は、顔料が吸着性に優れた(b)酸性基を有する顔料誘導体と(c)高分子化合物とにより被覆されているため、後述のように、着色組成物あるいは着色光硬化性組成物とした場合、優れた分散性と分散安定性に優れたものとすることができる。
【0144】
次に本発明の被覆顔料について説明するが、遊離量についてまず説明する。加工した顔料をプロピレングリコールモノメチルエーテルで洗浄したときの遊離した量(酸性基を有する顔料誘導体と特定高分子化合物との総和)を測定し、加工顔料の調整時に使用した酸性基を有する顔料誘導体と特定高分子化合物との総和(仕込み量)で除した値を遊離量%として定義する。本発明で被覆顔料とは遊離量%が、好ましくは70〜100質量%であり、より好ましくは80〜100質量%、さらに好ましくは85〜100質量%である。通常の吸着では、このような高い値は得られない。
【0145】
具体的な実験方法は、加工顔料を1−メトキシ−2−プロパノールで洗浄して、遊離量を算出する。その方法は、加工顔料10gを1−メトキシ−2−プロパノール100ml中に投入し、振とう機で室温で3時間、振とうさせた。その後遠心分離機で80,000rpmで8時間かけて顔料を沈降させ、上澄み液部分の固形分を乾燥法から求めた。顔料から遊離した高分子化合物の質量を求め、初期の処理に使用した高分子化合物の質量との比から、遊離率(%)を算出した。
【0146】
市販等の加工顔料の遊離率は、以下の方法で測定できる。即ち、顔料を溶解する溶剤(例えばジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、蟻酸、硫酸など)で、加工顔料全体を溶解した後に、高分子化合物と顔料とに、溶解性の差を利用して有機溶剤で分離して、「初期の処理に使用した高分子化合物の質量」として算出する。別途、加工顔料を1−メトキシ−2−プロパノールで洗浄して、得られた上記の遊離量を、この「初期の処理に使用した高分子化合物の質量」で除して遊離率(%)を求める。
遊離率は小さいほど顔料への被覆率が高く、分散性、分散安定性が良好である。遊離率の好ましい範囲は30%以下、より好ましくは20%以下、最も好ましくは15%以下である。理想的には0%である。
【0147】
本発明の着色組成物は、加工顔料に加えて分散剤を含有することができる。分散剤の含有により、顔料の分散性をさらに向上させることができる。 分散剤としては、例えば、公知の顔料分散剤や界面活性剤を適宜選択して用いることができる。
【0148】
具体的には、多くの種類の化合物を使用可能であり、例えば、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社化学工業(株)製)、W001(裕商(株)社製)等のカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤;W004、W005、W017(裕商(株)社製)等のアニオン系界面活性剤;EFKA−46、EFKA−47、EFKA−47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450(いずれもチバ・スペシャルテイケミカル社製)、ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(いずれもサンノプコ社製)等の高分子分散剤;ソルスパース3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、24000、26000、28000などの各種ソルスパース分散剤(日本ルーブリゾール(株)社製);アデカプルロニックL31,F38,L42,L44,L61,L64,F68,L72,P95,F77,P84,F87、P94,L101,P103,F108、L121、P−123(旭電化(株)製)及びイソネットS−20(三洋化成(株)製)、Disperbyk 101,103,106,108,109,111,112,116,130,140,142,162,163,164,166,167,170,171,174,176,180,182,2000,2001,2050,2150(ビックケミー(株)社製)が挙げられる。その他、アクリル系共重合体など、分子末端もしくは側鎖に極性基を有するオリゴマーもしくはポリマーが挙げられる。
【0149】
分散剤の着色組成物中における含有量としては、既述の顔料の質量に対して、1〜100質量%が好ましく、3〜70質量%がより好ましい。
着色組成物に添加する他の高分子としては、アルカリ現像性を高めるために、後述のアルカリ可溶性樹脂が好適である。
【0150】
分散の方法は、例えば、本発明の加工顔料を溶剤と予め混合してホモジナイザー等で予め分散しておいたものを、縦型もしくは横型のサンドグラインダーミル、ピンミル、スリットミル、超音波分散機等を使用し、0.01〜1mmの粒径のガラス、ジルコニア等でできたビーズで微分散処理し、着色組成物を得る。分散時間としては、3〜10時間程度が好適である。このとき必要によって上記した分散剤や他の高分子を添加して分散することができる。
なお、混練、分散についての詳細は、T.C.Patton著”Paint Flow and Pigment Dispersion”(1964年 John Wiley and Sons社刊)等に記載されている。
【0151】
<着色光硬化性組成物>
本発明の着色光硬化性組成物は、既述の本発明の着色組成物と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光重合開始剤とを含んでなり、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。なお、本発明の着色組成物の詳細については既述の通りである。以下、各成分を詳述する。
【0152】
<アルカリ可溶性樹脂>
アルカリ可溶性樹脂としては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えばカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基など)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。このうち、更に好ましくは、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものである。
【0153】
上記の線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマーが好ましい。例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号、特開2004−287409号および特開2006−323399号等の各公報に記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等であり、さらに側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体も好ましいものとして挙げられる。
【0154】
アルカリ可溶性樹脂の具体的な構成単位については、特に(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他の単量体との共重合体が好適である。ここで(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸を合わせた総称であり、以下も同様に(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートの総称である。
【0155】
前記(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。ここで、アルキル基及びアリール基の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
前記アルキル(メタ)アクリレート及びアリール(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0156】
前記ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、CH=CR2829、CH=C(R28)(COOR30)〔ここで、R28は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R29は炭素数6〜10の芳香族炭化水素環を表し、R30は炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜12のアラルキル基を表す。〕、等を挙げることができる。
【0157】
これらの中では特に、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、メチルメタアクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、ポリ−n−ブチルアクリレートマクロモノマー、ポリスチレンマクロモノマー、およびN−フェニルマレイミドから選ばれた1種以上と、(メタ)アクリル酸との共重合体が好ましく、さらに2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを共重合した高分子化合物が好適である。
上記のマクロモノマーで市販品として入手できるものとしては、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AA−6、東亜合成化学工業(株)製)及び片末端メタクリロイル化ポリ−n−ブチルアクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AB−6、東亜合成化学工業(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー(Mn=6000、商品名:AS−6、東亜合成化学工業(株)製)を挙げることができる。特にポリスチレンマクロモノマー、およびN−フェニルマレイミド用いると現像パターンが良好で、残渣も少なく好都合である。
【0158】
またカルボキシル基を含むアクリル系樹脂と分子内に脂環式エポキシ基及び不飽和結合を共に有する化合物との反応により得られる不飽和基含有アクリル系樹脂も好ましいものである。更にエポキシ樹脂と不飽和基含有カルボン酸の反応物をさらに多塩基性カルボン酸またはその無水物と反応させて得られる高分子化合物も好適である。不飽和基含有アクリル樹脂を使用すると特に感度を上げることができ、さらに良好なパターン形状が得られ易い。
市販品としてはサイクロマーP ACA200、同200M、同230AA、同250、同300、同320、同210(いずれもダイセル化学工業株式会社製)などが使用できる。
【0159】
これらのアルカリ可溶性樹脂は任意の量で混合して用いることができる。
アルカリ可溶性樹脂の光硬化性組成物中における含有量としては、該組成物の全固形分に対して、1〜15質量%が好ましく、より好ましくは、2〜12質量%であり、特に好ましくは、3〜10質量%である。
【0160】
<光重合性化合物>
光重合性化合物としては、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上である化合物が好ましく、中でも4官能以上のアクリレート化合物がより好ましい。
【0161】
前記少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上である化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能のアクリレートやメタアクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化したもの、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48−41708号、特公昭50−6034号、特開昭51−37193号公報に記載のウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号公報に記載のポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタアクリレートを挙げることができる。
更に、日本接着協会誌Vol.20、No.7、300〜308頁に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用できる。
【0162】
また、特開平10−62986号公報において一般式(1)及び(2)としてその具体例と共に記載の、前記多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後に(メタ)アクリレート化した化合物も用いることができる。
以上の光重合性化合物の中で好ましいものは、アクリロイル基を1分子中に3個以上、さらに好ましくは4個以上有するものである。具体的には、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びこれらのアクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介している構造が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。
【0163】
また、特公昭48−41708号、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。市販品としては、ウレタンオリゴマーUAS−10、UAB−140(山陽国策パルプ社製)、UA−7200」 (新中村化学社製、DPHA−40H(日本化薬社製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社製)などが挙げられる。
また、酸基を有するエチレン性不飽和化合物類はアルカリ水溶液への溶解速度を調節するために好適に用いることができ、市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製のカルボキシル基含有3官能アクリレートであるTO−756、及びカルボキシル基含有5官能アクリレートであるTO−1382などが挙げられる。
【0164】
光重合性化合物は、1種単独で用いる以外に、2種以上を組み合わせて用いることができる。
光重合性化合物の光硬化性組成物中における含有量としては、該組成物の全固形分100部に対して、3〜60部が好ましく、より好ましくは20〜50部である。光重合性化合物の含有量が前記範囲内であると、硬化反応が充分に行なえる。
【0165】
<光重合開始剤>
光重合開始剤としては、例えば、特開平57−6096号公報に記載のハロメチルオキサジアゾール、特公昭59−1281号公報、特開昭53−133428号公報等に記載のハロメチル−s−トリアジン等活性ハロゲン化合物、米国特許USP−4318791、欧州特許公開EP−88050A等の各明細書に記載のケタール、アセタール、又はベンゾインアルキルエーテル類等の芳香族カルボニル化合物、米国特許USP−4199420明細書に記載のベンゾフェノン類等の芳香族ケトン化合物、Fr−2456741明細書に記載の(チオ)キサントン系又はアクリジン系化合物、特開平10−62986号公報に記載のクマリン系又はビイミダゾール系の化合物、特開平8−015521号公報等のスルホニウム有機硼素錯体等、等を挙げることができる。
【0166】
前記光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ケタール系、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾイル系、キサントン系、活性ハロゲン化合物(トリアジン系、ハロメチルオキサジアゾール系、クマリン系)、アクリジン類系、ビイミダゾール系、オキシムエステル系等が好ましい。
【0167】
前記アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−トリル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1などを好適に挙げることができる。
【0168】
前記ケタール系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタールなどを好適に挙げることができる。
【0169】
前記ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’−(ビスジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−(ビスジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、を好適に挙げることができる。
【0170】
前記ベンゾイン系又はベンゾイル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインイソプロピルエーテル、ゼンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、メチルo−ベンゾイルベゾエート等を好適に挙げることができる。
【0171】
前記キサントン系光重合開始剤としては、例えば、ジエチルチオキサントン、ジイソプロピルチオキサントン、モノイソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、等を好適に挙げることができる。
【0172】
前記活性ハロゲン光重合開始剤(トリアジン系,オキサジアゾール系,クマリン系)としては、例えば、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(1−p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−ビフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メチルビフェニル)−s−トリアジン、p−ヒドロキシエトキシスチリル−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、メトキシスチリル−2,6−ジ(トリクロロメチル−s−トリアジン、3,4−ジメトキシスチリル−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−ベンズオキソラン−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−ブロモ−p−N,N−(ジエトキシカルボニルアミノ)−フェニル)−2,6−ジ(クロロメチル)−s−トリアジン、4−(p−N,N−(ジエトキシカルボニルアミノ)−フェニル)−2,6−ジ(クロロメチル)−s−トリアジン,2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキソジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(シアノスチリル)−1,3,4−オキソジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(ナフト−1−イル)−1,3,4−オキソジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−スチリル)スチリル−1,3,4−オキソジアゾール,3−メチル−5−アミノ−((s−トリアジン−2−イル)アミノ)−3−フェニルクマリン、3−クロロ−5−ジエチルアミノ−((s−トリアジン−2−イル)アミノ)−3−フェニルクマリン、3−ブチル−5−ジメチルアミノ−((s−トリアジン−2−イル)アミノ)−3−フェニルクマリン等を好適に挙げることができる。
【0173】
前記アクリジン系光重合開始剤としては、例えば、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン等を好適に挙げることができる。
【0174】
前記ビイミダゾール系光重合開始剤としては、例えば、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体等を好適に挙げることができる。
【0175】
上記以外に、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、O−ベンゾイル−4’−(ベンズメルカプト)ベンゾイル−ヘキシル−ケトキシム、2,4,6−トリメチルフェニルカルボニル−ジフェニルフォスフォニルオキサイド、ヘキサフルオロフォスフォロ−トリアルキルフェニルホスホニウム塩等が挙げられる。
【0176】
本発明では、以上の光重合開始剤に限定されるものではなく、他の公知のものも使用することができる。例えば、米国特許第2,367,660号明細書に記載のビシナールポリケトルアルドニル化合物、米国特許第2,367,661号及び第2,367,670号明細書に記載のα−カルボニル化合物、米国特許第2,448,828号明細書に記載のアシロインエーテル、米国特許第2,722,512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3,046,127号及び第2,951,758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3,549,367号明細書に記載のトリアリルイミダゾールダイマー/p−アミノフェニルケトンの組合せ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール系化合物/トリハロメチール−s−トリアジン系化合物、J.C.S. Perkin II(1979)1653−1660、J.C.S.PerkinII(1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385号公報記載のオキシムエステル化合物等が挙げられる。
また、これらの光重合開始剤を併用することもできる。
【0177】
光重合開始剤の光硬化性組成物中における含有量としては、該組成物の全固形分に対して、0.1〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5.0質量%である。光重合開始剤の含有量が前記範囲内であると、重合反応を良好に進行させて強度の良好な膜形成が可能である。
<増感色素>
本発明において必要に応じて増感色素を添加することが好ましい。この増感色素が吸収しうる波長の露光により上記重合開始剤成分のラジカル発生反応や、それによる重合性化合物の重合反応が促進されるものである。このような増感色素としては、公知の分光増感色素又は染料、又は光を吸収して光重合開始剤と相互作用する染料又は顔料が挙げられる。
【0178】
(分光増感色素又は染料)
本発明に用いられる増感色素として好ましい分光増感色素又は染料は、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、フタロシアニン類(例えば、フタロシアニン、メタルフタロシアニン)、ポルフィリン類(例えば、テトラフェニルポルフィリン、中心金属置換ポルフィリン)、クロロフィル類(例えば、クロロフィル、クロロフィリン、中心金属置換クロロフィル)、金属錯体(例えば、下記化合物)、アントラキノン類、(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、等が挙げられる。
【0179】
【化42】

【0180】
より好ましい分光増感色素又は染料の例を以下に例示する。
特公平37−13034号公報に記載のスチリル系色素;特開昭62−143044号公報に記載の陽イオン染料;特公昭59−24147号公報記載のキノキサリニウム塩;特開昭64−33104号公報記載の新メチレンブルー化合物;特開昭64−56767号公報記載のアントラキノン類;特開平2−1714号公報記載のベンゾキサンテン染料;特開平2−226148号公報及び特開平2−226149号公報記載のアクリジン類;特公昭40−28499号公報記載のピリリウム塩類;特公昭46−42363号公報記載のシアニン類;特開平2−63053号記載のベンゾフラン色素;特開平2−85858号公報、特開平2−216154号公報の共役ケトン色素;特開昭57−10605号公報記載の色素;特公平2−30321号公報記載のアゾシンナミリデン誘導体;特開平1−287105号公報記載のシアニン系色素;特開昭62−31844号公報、特開昭62−31848号公報、特開昭62−143043号公報記載のキサンテン系色素;特公昭59−28325号公報記載のアミノスチリルケトン;特開平2−179643号公報記載の色素;特開平2−244050号公報記載のメロシアニン色素;特公昭59−28326号公報記載のメロシアニン色素;特開昭59−89303号公報記載のメロシアニン色素;特開平8−129257号公報記載のメロシアニン色素;特開平8−334897号公報記載のベンゾピラン系色素が挙げられる。
【0181】
(350〜450nmに極大吸収波長を有する色素)
増感色素の他の好ましい態様として、以下の化合物群に属しており、且つ、350〜450nmに極大吸収波長を有する色素が挙げられる。
例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)が挙げられる。
【0182】
更に好ましい増感色素の例としては、下記一般式(XIV)〜(XVIII)で表される化合物が挙げられる。
【0183】
【化43】

【0184】
(一般式(XIV)中、Aは硫黄原子又はNR50を表し、R50はアルキル基又はアリール基を表し、Lは隣接するA及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子又は硫黄原子を表す。)
以下に、一般式(XIV)で表される化合物の好ましい具体例〔(F−1)〜(F−5)〕を示す。
【0185】
【化44】

【0186】
【化45】

【0187】
(一般式(XV)中、Ar及びArはそれぞれ独立にアリール基を表し、−L−による結合を介して連結している。ここでLは−O−又は−S−を表す。また、Wは一般式(XIV)に示したものと同義である。)
一般式(XV)で表される化合物の好ましい例としては、以下のもの〔(F−6)〜(F−8)〕が挙げられる。
【0188】
【化46】

【0189】
【化47】

【0190】
(一般式(XVI)中、Aは硫黄原子又はNR59を表し、Lは隣接するA及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基又はアリール基を表す。)
一般式(XVI)で表される化合物の好ましい例としては、以下のもの〔(F−9)〜(F−11)〕が挙げられる。
【0191】
【化48】

【0192】
【化49】

【0193】
(一般式(XVII)中、A、Aはそれぞれ独立に−S−、又は−NR63を表し、R63は置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L、Lはそれぞれ独立に、隣接するA、A及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R61、R62はそれぞれ独立に一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成することができる。)
一般式(XVII)で表される化合物の好ましい例としては、以下のもの〔(F−12)〜(F−15)〕が挙げられる。
【0194】
【化50】

【0195】
また、そのほかに、本発明に用いられる好適な増感色素として、下記式(XVIII)で表されるものが挙げられる。
【0196】
【化51】

【0197】
(一般式(XVIII)中、Aは置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子ないし−N(R)−を表し、Yは酸素原子又は−N(R)−を表す。R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は、一価の非金属原子団を表し、AとR、R、Rとは、それぞれ互いに結合して、脂肪族性又は芳香族性の環を形成することができる。)
【0198】
ここで、R、R、Rが一価の非金属原子団をあらわすとき、好ましくは、置換若しくは無置換のアルキル基又はアリール基を表す。
次に、R、R、Rの好ましい例について具体的に述べる。好ましいアルキル基の例としては、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状、及び環状のアルキル基を挙げることができ、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基を挙げることができる。これらの中では、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、並びに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
【0199】
置換アルキル基の置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団の基が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N−アルキルウレイド基、N,N−ジアルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N,N−ジアリールウレイド基、N−アルキル−N−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N−アルキル−N−アルキルウレイド基、N−アルキル−N−アリールウレイド基、N,N−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N,N−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N−アリール−N−アルキルウレイド基、N−アリール−N−アリールウレイド基、N,N−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N,N−ジアリール−N−アリールウレイド基、N−アルキル−N−アリール−N−アルキルウレイド基、N−アルキル−N−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO H)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスホノ基(−PO)及びその共役塩基基(以下、ホスホナト基と称す)、ジアルキルホスホノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスホノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスホノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−POH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナト基と称す)、モノアリールホスホノ基(−POH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナト基と称す)、ホスホノオキシ基(−OPO2)及びその共役塩基基(以後、ホスホナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPOH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナトオキシ基と称す)、モノアリールホスホノオキシ基(−OPOH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、シリル基が挙げられる。
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、これらは更に置換基を有していてもよい。
【0200】
また、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基等を挙げることができる。
【0201】
ヘテロアリール基としては、窒素、酸素、硫黄原子の少なくとも一つを含有する単環、又は多環芳香族環から誘導される基が用いられ、特に好ましいヘテロアリール基中のヘテロアリール環の例としては、例えば、チオフェン、チアスレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサジン、ピロール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドリジン、インドイール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キナゾリン、シノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナンスリン、アクリジン、ペリミジン、フェナンスロリン、フタラジン、フェナルザジン、フェノキサジン、フラザン、フェノキサジン等が挙げられ、これらは、更にベンゾ縮環してもよく、また置換基を有していてもよい。
【0202】
また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基、等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(GCO−)におけるGとしては、水素、並びに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。これら置換基のうち、更により好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスホナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスホナト基、ホスホノオキシ基、ホスホナトオキシ基、アリール基、アルケニル基、アルキリデン基(メチレン基等)が挙げられる。
【0203】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状並びに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。
【0204】
上記置換基とアルキレン基を組み合わせることにより得られるR、R、又はRとして好ましい置換アルキル基の具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキソエチル基、2−オキソプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトプロピル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスホノブチル基、ホスホナトヘキシル基、ジエチルホスホノブチル基、ジフェニルホスホノプロピル基、メチルホスホノブチル基、メチルホスホナトブチル基、トリルホスホノヘキシル基、トリルホスホナトヘキシル基、ホスホノオキシプロピル基、ホスホナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、等を挙げることができる。
【0205】
、R、又はRとして好ましいアリール基の具体例としては、1個から3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものを挙げることができ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、を挙げることができ、これらのなかでは、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
【0206】
、R、又はRとして好ましい置換アリール基の具体例としては、前述のアリール基の環形成炭素原子上に置換基として、(水素原子以外の)1価の非金属原子団の基を有するものが用いられる。好ましい置換基の例としては前述のアルキル基、置換アルキル基、並びに、先に置換アルキル基における置換基として示したものを挙げることができる。このような、置換アリール基の好ましい具体例としては、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシエトキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチルチオフェニル基、トリルチオフェニル基、エチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、モルホリノフェニル基、アセチルオキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシフェニル基、N−フェニルカルバモイルオキシフェニル基、アセチルアミノフェニル基、N−メチルベンゾイルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、アリルオキシカルボニルフェニル基、クロロフェノキシカルボニルフェニル基、カルバモイルフェニル基、N−メチルカルバモイルフェニル基、N,N−ジプロピルカルバモイルフェニル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルフェニル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、スルファモイルフェニル基、N−エチルスルファモイルフェニル基、N,N−ジプロピルスルファモイルフェニル基、N−トリルスルファモイルフェニル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基、ジエチルホスホノフェニル基、ジフェニルホスホノフェニル基、メチルホスホノフェニル基、メチルホスホナトフェニル基、トリルホスホノフェニル基、トリルホスホナトフェニル基、アリルフェニル基、1−プロペニルメチルフェニル基、2−ブテニルフェニル基、2−メチルアリルフェニル基、2−メチルプロペニルフェニル基、2−プロピニルフェニル基、2−ブチニルフェニル基、3−ブチニルフェニル基、等を挙げることができる。
【0207】
なお、R及びRの更に好ましい例としては、置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられる。また、Rの更に好ましい例としては、置換若しくは無置換のアリール基が挙げられる。その理由は定かではないが、このような置換基を有することで、光吸収により生じる電子励起状態と開始剤化合物との相互作用が特に大きくなり、開始剤化合物のラジカル、酸又は塩基を発生させる効率が向上するためと推定される。
【0208】
次に、一般式(XVIII)におけるAについて説明する。Aは置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環の具体例としては、一般式(XVIII)におけるR、R、又はRについての前述の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
中でも、好ましいAとしては、アルコキシ基、チオアルキル基、アミノ基を有するアリール基が挙げられ、特に好ましいAとしてはアミノ基を有するアリール基が挙げられる。
【0209】
次に、式(XVIII)におけるYについて説明する。Yは上述のA及び隣接炭素原子と共同して、複素環を形成するのに必要な非金属原子団を表す。このような複素環としては縮合環を有していてもよい5、6、7員の含窒素、或いは含硫黄複素環が挙げられ、好ましくは5、6員の複素環がよい。
【0210】
含窒素複素環の例としては例えば、L.G.Brookerら著、ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)第73巻(1951年)、p.5326−5358及び参考文献に記載されるメロシアニン色素類における塩基性核を構成するものとして知られるものをいずれも好適に用いることができる。
具体例としては、チアゾール類(例えば、チアゾール、4−メチルチアゾール、4−フェニルチアゾール、5−メチルチアゾール、5−フェニルチアゾール、4,5−ジメチルチアゾール、4,5−ジフェニルチアゾール、4,5−ジ(p−メトキシフェニルチアゾール)、4−(2−チエニル)チアゾール、4,5−ジ(2−フリル)チアゾール等)、ベンゾチアゾール類(例えば、ベンゾチアゾール、4−クロロベンゾチアゾール、5−クロロベンゾチアゾール、6−クロロベンゾチアゾール、7−クロロベンゾチアゾール、4−メチルベンゾチアゾール、5−メチルベンゾチアゾール、6−メチルベンゾチアゾール、5−ブロモベンゾチアゾール、4−フェニルベンゾチアゾール、5−フェニルベンゾチアゾール、4−メトキシベンゾチアゾール、5−メトキシベンゾチアゾール、6−メトキシベンゾチアゾール、5−ヨードベンゾチアゾール、6−ヨードベンゾチアゾール、4−エトキシベンゾチアゾール、5−エトキシベンゾチアゾール、テトラヒドロベンゾチアゾール、5,6−ジメトキシベンゾチアゾール、5,6−ジオキシメチレンベンゾチアゾール、5−ヒドロキシベンゾチアゾール、6−ヒドロキシベンゾチアゾール、6ージメチルアミノベンゾチアゾール、5−エトキシカルボニルベンゾチアゾール、等)、ナフトチアゾール類(例えば、ナフト[1,2]チアゾール、ナフト[2,1]チアゾール、5−メトキシナフト[2,1]チアゾール、5−エトキシナフト[2,1]チアゾール、8−メトキシナフト[1,2]チアゾール、7−メトキシナフト[1,2]チアゾール、等)、チアナフテノ−7,6,4,5−チアゾール類(例えば、4−メトキシチアナフテノ−7,6,4,5−チアゾール、等)、オキサゾール類(例えば、4−メチルオキサゾール、5−メチルオキサゾール、4−フェニルオキサゾール、4,5−ジフェニルオキサゾール、4−エチルオキサゾール、4,5−ジメチルオキサゾール、5−フェニルオキサゾール等)、ベンゾオキサゾール類(ベンゾオキサゾール、5−クロロベンゾオキサゾール、5ーメチルベンゾオキサゾール、5−フェニルベンゾオキサゾール、6−メチルベンゾオキサゾール、5,6−ジメチルベンゾオキサゾール、4,6−ジメチルベンゾオキサゾール、6−メトキシベンゾオキサゾール、5−メトキシベンゾオキサゾール、4−エトキシベンゾオキサゾール、5−クロロベンゾオキサゾール、6ーメトキシベンゾオキサゾール、5−ヒドロキシベンゾオキサゾール、6−ヒドロキシベンゾオキサゾール、等)、
【0211】
ナフトオキサゾール類(例えば、ナフト[1,2]オキサゾール、ナフト[2,1]オキサゾール、等)、セレナゾール類(例えば、4−メチルセレナゾール、4−フェニルセレナゾール、等)、ベンゾセレナゾール類(例えば、ベンゾセレナゾール、5−クロロベンゾセレナゾール、5−メトキシベンゾセレナゾール、5−ヒドロキシベンゾセレナゾール、テトラヒドロベンゾセレナゾール、等)、ナフトセレナゾール類(例えば、ナフト[1,2]セレナゾール、ナフト[2,1]セレナゾール、等)、チアゾリン類(例えば、チアゾリン、4−メチルチアゾリン、4,5−ジメチルチアゾリン、4−フェニルチアゾリン、4,5−ジ(2−フリル)チアゾリン、4,5−ジフェニルチアゾリン、4,5−ジ(p−メトキシフェニル)チアゾリン等)、2−キノリン類(例えば、キノリン、3−メチルキノリン、5−メチルキノリン、7−メチルキノリン、8−メチルキノリン、6−クロロキノリン、8−クロロキノリン、6−メトキシキノリン、6−エトキシキノリン、6ーヒドロキシキノリン、8−ヒドロキシキノリン、等)、4−キノリン類(例えば、キノリン、6−メトキシキノリン、7−メチルキノリン、8−メチルキノリン、等)、1−イソキノリン類(例えば、イソキノリン、3,4−ジヒドロイソキノリン、等)、3−イソキノリン類(例えば、イソキノリン等)、ベンズイミダゾール類(例えば、1,3−ジメチルベンズイミダゾール、1,3−ジエチルベンズイミダゾール、1−エチル−3−フェニルベンズイミダゾール、等)、3,3−ジアルキルインドレニン類(例えば、3,3−ジメチルインドレニン、3,3,5−トリメチルインドレニン、3,3,7−トリメチルインドレニン、等)、2−ピリジン類(例えば、ピリジン、5−メチルピリジン、等)、4−ピリジン(例えば、ピリジン等)等を挙げることができる。また、これらの環の置換基同士が結合して環を形成していてもよい。
【0212】
また、含硫黄複素環の例としては、例えば、特開平3−296759号記載の色素類におけるジチオール部分構造を挙げることができる。
具体例としては、ベンゾジチオール類(例えば、ベンゾジチオール、5−t−ブチルベンゾジチオール、5−メチルベンゾジチオール、等)、ナフトジチオール類(例えば、ナフト[1,2]ジチオール、ナフト[2,1]ジチオール、等)、ジチオール類(例えば、4,5−ジメチルジチオール類、4−フェニルジチオール類、4−メトキシカルボニルジチオール類、4,5−ジメトキシカルボニルジチオール類、4,5−ジエトキシカルボニルジチオール類、4,5−ジトリフルオロメチルジチオール、4,5−ジシアノジチオール、4−メトキシカルボニルメチルジチオール、4−カルボキシメチルジチオール、等)等を挙げることができる。
【0213】
以上に述べた一般式(XVIII)における、Yが上述のA及び隣接する炭素原子と共同して形成する含窒素或いは含硫黄複素環の例のうち、下記一般式(XVIII-2)の部分構造式で表される構造を有する色素は、高い増感能を有する上、保存安定性にも非常に優れた感光性組成物を与えるため、特に好ましい。一般式(XVIII−2)で表される構造を有する色素は新規化合物として、特願2003−311253明細書に詳細に記載した化合物である。
【0214】
【化52】

【0215】
(一般式(XVIII−2)中、Aは置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子ないし−N(R)−を表す。R、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表し、AとR、R、R、Rは、それぞれ互いに結合して、脂肪族性又は芳香族性の環を形成することができる。)
一般式(XVIII−2)中、A及びRは一般式(XVIII)におけるのと同義であり、Rは一般式(XVIII)におけるRと、Rは一般式(XVIII)におけるRと、Rは一般式(XVIII)におけるRと、それぞれ同義である。
【0216】
次に本発明に用いられる一般式(XVIII)で表される化合物の好ましい態様である一般式(XVIII−3)で表される化合物について説明する。
【0217】
【化53】

【0218】
前記一般式(XVIII−3)中、Aは置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子ないし−N(R)−を表す。R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は、一価の非金属原子団であり、AとR、R、Rは、それぞれ互いに、脂肪族性又は芳香族性の環を形成するために結合することができる。Arは置換基を有する芳香族環又はヘテロ環を表す。但し、Ar骨格上の置換基は、そのハメット値の総和が0より大きいことを要する。ここでハメット値の総和が0より大きいとは、1つの置換基を有し、その置換基のハメット値が0より大きいものであってもよく、複数の置換基を有し、それらの置換基におけるハメット値の総和が0より大きいものであってもよい。
【0219】
一般式(XVIII−3)中、A及びRは一般式(XVIII)におけるものと同義であり、Rは一般式(XVIII)におけるRと、Rは一般式(XVIII)におけるRと同義である。また、Arは置換基を有する芳香族環又はヘテロ環を表し、具体例としては、先に一般式(XVIII)におけるAの説明に記載されたもののうち、置換基を有する芳香族環又はヘテロ環に係る具体例が同様に挙げられる。ただし、一般式(XVIII−3)におけるArに導入可能な置換基としては、ハメット値の総和が0以上であることが必須であり、そのような置換基の例としては、トリフルオロメチル基、カルボニル基、エステル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホキシド基、アミド基、カルボキシル基等を挙げることができる。これら置換基のハメット値を以下に示す。トリフルオロメチル基(−CF、m:0.43、p:0.54)、カルボニル基(例えば−COHm:0.36、p:0.43)、エステル基(−COOCH、m:0.37、p:0.45)、ハロゲン原子(例えばCl、m:0.37、p:0.23)、シアノ基(−CN、m:0.56、p:0.66)、スルホキシド基(例えば−SOCH、m:0.52、p:0.45)、アミド基(例えば−NHCOCH、m:0.21、p:0.00)、カルボキシル基(−COOH、m:0.37、p:0.45)等が挙げられる。かっこ内は、その置換基のアリール骨格における導入位置と、そのハメット値を表し、(m:0.50)とは、当該置換基がメタ位に導入された時のハメット値が0.50であることを示す。このうち、Arの好ましい例としては置換基を有するフェニル基を挙げることができ、Ar骨格上の好ましい置換基としてはエステル基、シアノ基が挙げられる。置換の位置としてはAr骨格上のオルト位に位置していることが特に好ましい。
【0220】
以下に、本発明に係る一般式(XVIII)で表される増感色素の好ましい具体例〔例示化合物(F1)〜例示化合物(F56)〕を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0221】
【化54】

【0222】
【化55】

【0223】
【化56】

【0224】
【化57】

【0225】
【化58】

【0226】
【化59】

【0227】
【化60】

【0228】
【化61】

【0229】
本発明に適用可能な前記増感色素の中でも、前記一般式(XVIII)で表される化合物が、深部硬化性の観点から好ましい。
【0230】
上記の増感色素に関しては、本発明の感光性組成物の特性を改良する目的で、以下のような種々の化学修飾を行うことが可能である。例えば、増感色素と、付加重合性化合物構造(例えば、アクリロイル基やメタクリロイル基)とを、共有結合、イオン結合、水素結合等の方法により結合させることで、架橋硬化膜の高強度化や、架橋硬化膜からの色素の不要な析出抑制効果向上を得ることができる。
【0231】
増感色素の含有量は、本発明のカラーフィルタ用着色感光性組成物の全固形分に対し、0.01〜20質量%が好ましく、より好ましくは、0.01〜10質量%であり、更に好ましくは0.1〜5質量%である。
増感色素の含有量がこの範囲であることで、超高圧水銀灯の露光波長に対して高感度であり、膜深部硬化性が得られると共に、現像マージン、パターン形成性の点で好ましい。
【0232】
<溶剤>
本発明の着色組成物及び光硬化性組成物は、一般に上記成分と共に溶剤を用いて好適に調製することができる。
溶剤としては、エステル類、例えば酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチルなどの3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等;エーテル類、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート等;ケトン類、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等;芳香族炭化水素類、例えばトルエン、キシレン、等が挙げられる。
【0233】
これらのうち、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が好適である。
溶剤は、単独で用いる以外に2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0234】
<その他成分>
本発明の光硬化性組成物には、必要に応じて、連鎖移動剤、フッ素系有機化合物、熱重合開始剤、熱重合成分、熱重合防止剤、着色剤、光重合開始剤、その他充填剤、上記のアルカリ可溶性樹脂以外の高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤などの各種添加物を含有することができる。
【0235】
(連鎖移動剤)
本発明の着色硬化性組成物に添加し得る連鎖移動剤としては、例えば、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどのN,N−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどの複素環を有するメルカプト化合物、および脂肪族多官能メルカプト化合物などが挙げられる。
連鎖移動剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0236】
<フッ素系有機化合物>
フッ素系有機化合物を含有することで、塗布液としたときの液特性(特に流動性)を改善でき、塗布厚の均一性や省液性を改善することができる。すなわち、基板と塗布液との界面張力を低下させて基板への濡れ性が改善され、基板への塗布性が向上するので、少量の液量で数μm程度の薄膜を形成した場合であっても、厚みムラの小さい均一厚の膜形成が可能である点で有効である。
【0237】
フッ素系有機化合物のフッ素含有率は3〜40質量%が好適であり、より好ましくは5〜30質量%であり、特に好ましくは7〜25質量%である。フッ素含有率が前記範囲内であると、塗布厚均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中への溶解性も良好である。
【0238】
フッソ系界面活性剤としては、末端、主鎖および側鎖の少なくともいずれかの部位にフルオロアルキルまたはフルオロアルキレン基を有する化合物を好適に用いることができる。具体的市販品としては、例えばメガファックF142D、同F172、同F173、同F176、同F177、同F183、同780、同781、同R30、同R08、同F−472SF、同BL20、同R−61、同R−90(大日本インキ(株)製)、フロラードFC−135、同FC−170C、同FC−430、同FC−431、Novec FC−4430(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG7105,7000,950,7600、サーフロンS−112、同S−113、同S−131、同S−141、同S−145、同S−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(旭ガラス(株)製)、エフトップEF351、同352、同801、同802(JEMCO(株)製)などである。
【0239】
フッ素系有機化合物は特に、塗布膜を薄くしたときの塗布ムラや厚みムラの防止に効果的である。また、更には液切れを起こしやすいスリット塗布においても効果的である。
フッ素系有機化合物の添加量は、光硬化性組成物の全質量に対して、0.001〜2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜1.0質量%である。
【0240】
<熱重合開始剤>
本発明の着色組成物には、熱重合開始剤を含有させることも有効である。熱重合開始剤としては、例えば、各種のアゾ系化合物、過酸化物系化合物が挙げられ、前記アゾ系化合物としては、アゾビス系化合物を挙げることができ、前記過酸化物系化合物としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートなどを挙げることができる。
【0241】
<熱重合成分>
本発明の着色組成物には、熱重合成分を含有させることも有効である。必要によっては、塗膜の強度を上げるために、エポキシ化合物を添加することができる。エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型、クレゾールノボラック型、ビフェニル型、脂環式エポキシ化合物などのエポキシ環を分子中に2個以上有する化合物である。
【0242】
例えばビスフェノールA型としては、エポトートYD−115、YD−118T、YD−127、YD−128、YD−134、YD−8125、YD−7011R、ZX−1059、YDF−8170、YDF−170など(以上東都化成製)、デナコールEX−1101、EX−1102、EX−1103など(以上ナガセ化成製)、プラクセルGL−61、GL−62、G101、G102(以上ダイセル化学製)の他に、これらの類似のビスフェノールF型、ビスフェノールS型も挙げることができる。またEbecryl 3700、3701、600(以上ダイセルユーシービー製)などのエポキシアクリレートも使用可能である。クレゾールノボラック型としては、エポトートYDPN−638、YDPN−701、YDPN−702、YDPN−703、YDPN−704など(以上東都化成製)、デナコールEM−125など(以上ナガセ化成製)、ビフェニル型としては3,5,3’,5’−テトラメチル−4,4’ジグリシジルビフェニルなど、脂環式エポキシ化合物としては、セロキサイド2021、2081、2083、2085、エポリードGT−301、GT−302、GT−401、GT−403、EHPE−3150(以上ダイセル化学製)、サントートST−3000、ST−4000、ST−5080、ST−5100など(以上東都化成製)などを挙げることができる。また1,1,2,2−テトラキス(p−グリシジルオキシフェニル)エタン、トリス(p−グリシジルオキシフェニル)メタン、トリグリシジルトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、o−フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、他にアミン型エポキシ樹脂であるエポトートYH−434、YH−434L、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の骨格中にダイマー酸を変性したグリシジルエステル等も使用できる。
【0243】
<界面活性剤>
本発明の着色組成物には、塗布性を改良する観点から、各種の界面活性剤を用いて構成することが好ましく、前述のフッソ系界面活性剤の他にノニオン系、カチオン系、アニオン系の各種界面活性剤を使用できる。中でも、前記のフッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が好ましい。
【0244】
ノニオン系界面活性剤の例として、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、モノグリセリドアルキルエステル類などのノニオン系界面活性剤が特に好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリル化エーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン-プロピレンポリスチリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレートなどのポリオキシエチレンジアルキルエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、エチレンジアミンポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物などのノニオン系界面活性剤があり、これらは花王(株)、日本油脂(株)、竹本油脂(株)、(株)ADEKA、三洋化成(株)などから市販されているものが適宜使用できる。上記の他に前述の分散剤も使用可能である。
【0245】
<その他の添加剤>
上記以外に、光硬化性組成物には各種の添加物を添加できる。添加物の具体例としては、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤、ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤、ガラス、アルミナ等の充填剤;イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの、アルコール可溶性ナイロン、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとから形成されたフェノキシ樹脂などのアルカリ可溶の樹脂などがある。
【0246】
また、未硬化部のアルカリ溶解性を促進し、着色組成物の現像性の更なる向上を図る場合には、着色組成物に有機カルボン酸、好ましくは分子量1000以下の低分子量有機カルボン酸の添加を行なうことができる。具体的には、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、ジエチル酢酸、エナント酸、カプリル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、メチルコハク酸、テトラメチルコハク酸、シトラコン酸等の脂肪族ジカルボン酸;トリカルバリル酸、アコニット酸、カンホロン酸等の脂肪族トリカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、クミン酸、ヘメリト酸、メシチレン酸等の芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、トリメシン酸、メロファン酸、ピロメリト酸等の芳香族ポリカルボン酸;フェニル酢酸、ヒドロアトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、マンデル酸、フェニルコハク酸、アトロパ酸、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸ベンジル、シンナミリデン酢酸、クマル酸、ウンベル酸等のその他のカルボン酸が挙げられる。
【0247】
<熱重合防止剤>
本発明の着色組成物には、以上のほかに更に、熱重合防止剤を加えておくことが好ましく、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンゾイミダゾール等が有用である。
【0248】
〜光硬化性組成物及びこれを用いたカラーフィルタの製造方法〜
<光硬化性組成物の調整>
本発明の光硬化性組成物は、既述の本発明の着色組成物にアルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、光重合開始剤、および溶剤などを添加して、さらに必要に応じて界面活性剤等の添加剤を加えてから、混合・撹拌し、濾過することによって調製することができる。
【0249】
本発明の光硬化性組成物を用いてカラーフィルタを製造する方法を以下に述べる。
<塗布・露光>
本発明の光硬化性組成物を、直接又は他の層を介して基板に回転塗布、スリット塗布、流延塗布、ロール塗布、バー塗布等の塗布方法により塗布して、光硬化性の塗布膜を形成し、所定のマスクパターンを介して露光し、露光後に未硬化部を現像液で現像除去することによって、各色(3色あるいは4色)の画素からなるパターン状皮膜を形成し、カラーフィルタとすることができる。
この際、使用する放射線としては、特にg線、h線、i線、j線等の紫外線が好ましい。液晶表示装置用のカラーフィルタは、プロキシミティ露光機、ミラープロジェクション露光機で主としてh線、i線を使用した露光が好ましく、固体撮像素子用のカラーフィルタでは、ステッパー露光機で主としてi線を使用することが好ましい。
【0250】
前記基板としては、例えば、液晶表示素子等に用いられる無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス、及びこれらに透明導電膜を付着させたものや、固体撮像素子等に用いられる光電変換素子基板、例えばシリコン基板等、並びにプラスチック基板が挙げられる。これらの基板上には、通常、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されていたり、密着促進等のために透明樹脂層を設けたりしている。プラスチック基板には、その表面にガスバリヤー層及び/又は耐溶剤性層を有していることが好ましい。
【0251】
このほかに、薄膜トランジスター(TFT)方式カラー液晶表示装置の薄膜トランジスター(TFT)が配置された駆動用基板(以下、「TFT方式液晶駆動用基板」という。)上にも本発明の光硬化性組成物からなるパターン状皮膜を形成し、カラーフィルタを作成することができる。その際に使用されるフォトマスクには、画素を形成するためのパターンのほか、スルーホールあるいはコの字型の窪みを形成するためのパターンも設けられている。TFT方式液晶駆動用基板における基板としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等を挙げることができる。これらの基板には、所望により、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理を施しておくこともできる。例えば、TFT方式液晶駆動用基板の表面上、あるいは該駆動基板の表面に窒化ケイ素膜等のパッシベーション膜を形成した基板等を挙げることができる。
【0252】
本発明の光硬化性組成物を基板に塗布する方法としては特に限定されるものではないが、スリット・アンド・スピン法、スピンレス塗布法等のスリットノズルを用いる方法(以下スリットノズル塗布法という)が好ましい。スリットノズル塗布法において、スリット・アンド・スピン塗布法とスピンレス塗布法は、塗布基板の大きさによって条件は異なるが、例えばスピンレス塗布法により第五世代のガラス基板(1100mm×1250mm)を塗布する場合、スリットノズルからの光硬化性組成物の吐出量は、通常、500〜2000マイクロリットル/秒、好ましくは800〜1500マイクロリットル/秒であり、また塗工速度は、通常、50〜300mm/秒、好ましくは100〜200mm/秒である。光硬化性組成物の固形分としては通常、10〜20%、好ましくは13〜18%である。
基板上に本発明の光硬化性組成物による塗膜を形成する場合、該塗膜の厚み(プリベーク処理後)としては、一般に0.3〜5.0μmであり、望ましくは0.4〜4.0μm、最も望ましくは0.5〜3.0μmである。
【0253】
<乾燥・プリベーク>
通常は塗布後にプリベーク処理を施す。必要によってプリベーク前に真空処理を施すことができる。真空乾燥の条件は、真空度が、通常、0.1〜1.0torr、好ましくは0.2〜0.5torr程度である。
プリベーク処理は、ホットプレート、オーブン等を用いて50〜140℃の温度範囲で、好ましくは70〜110℃程度であり、10〜300秒の条件にて行なうことができる。高周波処理などを併用しても良い。高周波処理は単独でも使用可能である。
【0254】
<現像>
現像処理では、露光後の未硬化部を現像液に溶出させ、硬化部分のみを残存させる。現像温度としては、通常20〜30℃であり、現像時間としては20〜90秒である。
現像液としては、未硬化部における光硬化性の光硬化性組成物の塗膜を溶解する一方、硬化部を溶解しないものであれば、いずれのものも用いることができる。具体的には、種々の有機溶剤の組合せやアルカリ性の水溶液を用いることができる。
【0255】
本発明の光硬化性組成物の塗布乾燥膜は、特にアルカリ現像液への溶解性が優れている。非露光部の溶解性が高いので、基板上の残渣が生じにくい。これは、顔料表面を被覆している顔料誘導体の酸性基のアルカリ現像液との親和性によって、光硬化性組成物に含まれるアルカリ可溶性樹脂が溶解した後も、顔料自身が被覆物とともに現像液に乳化的に溶解するものと考えられる。
【0256】
次に、光硬化性組成物の乾燥塗膜のアルカリ現像液への溶解性の測定方法を説明する。光硬化性組成物を乾燥膜厚が1.0μmの厚みになるように、ガラス基板上に塗布し、90℃60min恒温槽で乾燥した後、光硬化性組成物層を現像液CDK−1(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)の1%希釈液〔水酸化カリウムを質量分率で0.05%含み、ノニオン系界面活性剤を含む水溶液、23℃〕に浸漬した。浸漬時間は0秒から120秒まで1秒刻みとして、着色光硬化性組成物層が完全に消失するまでの時間を溶解時間とした。
【0257】
前記有機溶剤としては、本発明の着色組成物又は光硬化性組成物を調製する際に使用できる既述の溶剤が挙げられる。
前記アルカリ性の水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン等のアルカリ性化合物を、濃度が0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜1質量%となるように溶解したアルカリ性水溶液が挙げられる。アルカリ性水溶液には、例えばメタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤等を適量添加することもできる。
現像方式は、デイップ方式、シャワー方式、スプレー方式、パドル方式などいずれでもよく、これにスウィング方式、スピン方式、超音波方式などを組み合わせても良い。現像液に触れる前に、被現像面を予め水等で湿しておいて、現像むらを防ぐこともできる。また基板を傾斜させて現像することもできる。
【0258】
<リンス>
現像処理後は、余剰の現像液を洗浄除去するリンス工程を経て、乾燥を施した後、硬化を完全なものとするために、加熱処理(ポストベーク)が施される。
リンス工程は通常は純水で行うが、省液のために、最終洗浄で純水を用い、洗浄はじめは使用済の純水を使用したり、基板を傾斜させて洗浄したり、超音波照射を併用したりできる。
【0259】
<ポストベーク>
リンスの後で水切り、乾燥をした後に、通常約200℃〜250℃の加熱処理を行なう。この加熱処理(ポストベーク)は、現像後の塗布膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行なうことができる。
以上の操作を所望の色相数に合わせて各色毎に順次繰り返し行なうことにより、複数色の着色された硬化膜が形成されてなるカラーフィルタを作製することができる。
【0260】
本発明の着色組成物及び光硬化性組成物の用途として、主にカラーフィルタへの用途を中心に説明したが、カラーフィルタを構成する各着色画素を隔離するブラックマトリックスの形成にも適用することができる。
前記ブラックマトリックスは、顔料としてカーボンブラック、チタンブラックなどの黒色顔料を用いた本発明の着色組成物を露光、現像し、その後必要に応じて更にポストベークして膜の硬化を促進させることで形成できる。
【実施例】
【0261】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0262】
(1)顔料誘導体(I)、(II)、(III)の合成
顔料誘導体(I)、顔料誘導体(II)としては、特開平7−173406の方法により合成を行った。また、本発明の酸性基を有していない顔料誘導体(III)としては、特開2000−273346の方法により、合成した。
【0263】
【化62】

【0264】
【化63】

【0265】
【化64】

顔料誘導体(III)
【0266】
(2)高分子化合物の合成
(高分子化合物1の合成)
M−11 27.0g、MMA 126.0g、MAA 27.0g、および1-メトキシ-2-プロパノール 420.0gを、窒素置換した三つ口フラスコに導入し、攪拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて攪拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して90℃まで昇温する。これに2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬(株)製V−65)を1.69g加え、90℃にて2時間加熱攪拌を行った。2時間後、さらにV−65を1.69g加え、3時加熱攪拌の後、高分子化合物1の30質量%溶液を得た。
【0267】
得られた高分子化合物の重量平均分子量をポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した結果、2.0万であった。また、水酸化ナトリウムを用いた滴定から、固形分あたりの酸価は、98mgKOH/gであった。
【0268】
(高分子化合物2の合成)
M-6 27.0g、MMA 126.0g、MAA 27.0g、および1-メトキシ-2-プロパノール 420.0gを、窒素置換した三口フラスコに導入し、攪拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて攪拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して90℃まで昇温する。これに2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬(株)製V−65)を1.80g加え、90℃にて2時間加熱攪拌を行った。2時間後、さらにV−65を1.80g加え、3時加熱攪拌の後、高分子化合物2の30質量%溶液を得た。
【0269】
ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、得られた高分子化合物の重量平均分子量を測定した結果、2.1万であった。また、水酸化ナトリウムを用いた滴定から、固形分あたりの酸価は、99mgKOH/gであった。
【0270】
(3)加工顔料の調整
(加工顔料1)
C.I.ピグメントレッド254 50g、塩化ナトリウム 500g、高分子化合物1(30%溶液)25g、およびジエチレングリコール100gをステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、9時間混練した。次に、この混合物を約3リットルの水中に投入し、ハイスピードミキサーで約1時間撹拌した後に、ろ過、水洗して塩化ナトリウムおよび溶剤を除き、乾燥して被覆された加工顔料1を得た。
【0271】
(加工顔料2)
前記加工顔料1の調整で高分子化合物を用いず、同様の実験をし、加工顔料2を得た。
【0272】
(加工顔料3)
前記加工顔料1の調整で、高分子化合物1の代わりに高分子化合物2を用いて同様の実験をし、加工顔料3を得た。
【0273】
(加工顔料4)
前記加工顔料1の調整で、高分子化合物1の代わりに下記高分子化合物3を用いて同様の実験をし、加工顔料4を得た。
(高分子化合物3)
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=85/15(質量%)、重量平均分子量20,000
(加工顔料5)
前記加工顔料1の調整で、高分子化合物1の代わりに顔料誘導体(I)を5g用いて同様の実験をし、加工顔料5を得た。
(加工顔料6)
前記加工顔料1の調整で、仕込む際に高分子化合物1の他に、さらに顔料誘導体(I)も5g加えて同様の実験をし、加工顔料6を得た。
【0274】
(顔料の1次粒子径の測定)
顔料の1次粒子径は、得られた加工顔料を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察することにより求めた。
【0275】
(顔料の被覆度の評価)
得られた加工顔料10gを1−メトキシ−2−プロパノール 100mL中に投入し、振とう機にて室温で3時間、振とうさせた。その後、遠心分離機にて、80,000rpm、8時間かけて顔料を沈降させた。上澄み液部分の固形分を乾燥法から求めた。顔料から遊離した高分子化合物の量を求め、処理に使用した高分子化合物との比から、遊離率(%)を算出した。遊離率は小さいほど顔料への被覆度が高い。結果をまとめて表1に示す。
【0276】
【表1】

【0277】
表1から本発明の酸性基を有する顔料誘導体と高分子化合物で加工された顔料は、遊離率が小さく、被覆されていることがわかる。特に高分子化合物としてグラフト型高分子を使用した加工顔料の1および3は遊離率が小さく被覆度が高いことがわかる。
【0278】
(4) 着色組成物の調製
下記組成(1)の成分を混合し、ホモジナイザーを用いて回転数3,000r.p.m.で3時間撹拌して混合し、顔料を含む混合溶液を調製した。
〔組成(1)〕
・加工顔料 95部
・表2記載の顔料誘導体 5部
・分散剤(Disperbyk−161、BYK社製 30%溶液) 150部
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート 750部
続いて、上記より得られた混合溶液を、さらに0.3mmφジルコニアビーズを用いたビーズ分散機ディスパーマット(GETZMANN社製)にて6時間分散処理を行ない、その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2,000kg/cmの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、各加工顔料の着色組成物を得た。
【0279】
(5)着色光硬化性組成物の調製
まず、液晶表示装置用のカラーフィルタ形成用として顔料を含有する着色光硬化性組成物を調整した例を挙げて説明する。
[実施例1]
加工顔料1から得られた着色組成物を用いて、下記の着色光硬化性組成物を作製した。
・顔料分散液 2000部
・ジペンタエリスリトールペンタ・ヘキサアクリレート 80部
(光重合性化合物)
・1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム
(光重合開始剤) 30部
・ベンジルメタクリレート/メタクリル酸(=75/25[質量比])共重合体 (重量平均分子量:12,000)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(固形分30%) 300部
(アルカリ可溶性樹脂)
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート(溶剤) 390部
【0280】
実施例2〜9および比較例1〜3は、実施例1のアルカリ可溶性樹脂を表2のように変更して着色光硬化性組成物を調整した。
なお、表2で用いた樹脂溶液は以下の通りである。
高分子化合物4:ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/AS−6(東亜合成化学工業(株)製)共重合体の30%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液、質量比:30/15/55、Mw:20000
高分子化合物5:メタクリル酸/スチレン/ベンジルメタクリレート/N−フェニルマレイミド共重合体の30%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液、質量比:10/35/45/10、Mw:20000
高分子化合物6:ベンジルメタクリレート/アクリル酸共重合体(質量比:70/30、Mw:15000)にエポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートを付加した高分子化合物
【0281】
(6)カラーフィルタの調製
得られた着色光硬化性組成物を、100mm×100mmのガラス基板(コーニング社製1737)上に、プリベーク後の膜厚が2.0μmとなるように、スリット塗布した。90℃60秒間ホットプレートで乾燥(プリベーク)した。その後高圧水銀灯を光源とするプロキシミティ露光機で、露光量100mJ/cm(照度20mW/cm)を、マスクを介して露光した。マスクはライン幅10μmで、基板との距離は300μmである。露光後の塗膜をアルカリ現像液CDK−1(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)の28℃で1%の水溶液をシャワー状に散布した。その後純水で洗浄し、乾燥後に220℃のオーブンで1時間加熱処理(ポストベーク)し、着色基板(カラーフィルタ)を作製した。
コントラスト等の色特性を評価するときは、マスクを介さずに露光し、他は同様に処理したべタ基板を用いた。
【0282】
(7)着色基板の評価
作製した着色基板について、以下のような評価を行なった。結果を表2に示す。
【0283】
(i)コントラスト
上記で得られた着色基板の着色層の上に偏光板を置いて着色基板を挟み、偏光板が平行時の輝度と直交時の輝度とをトプコン社製のBM−5を用いて測定し、平行時の輝度を直交時の輝度で除して得られる値(=平行時の輝度/直交時の輝度)を、コントラストを評価するための指標とした。値が大きいほど高コントラストであることを示す。
【0284】
(ii)粘度
得られた着色組成物を調整後3時間経過後に、25℃における粘度をE型粘度計(商品名RE−810、東機産業(株)社製)により測定し、その結果を下記のように区別して表2に記載した。
<判定基準>
◎ : 50mPa・s未満
○ : 100mPa・s以上、50mPa・s未満
△ : 100mPa・s以上、200mPa・s未満
× : 200mPa・s以上
【0285】
(ii)アルカリ現像液溶解速度
着色光硬化性組成物をガラス基板上に塗布し、プリベーク処理を施した塗布基板を、現像液〔水酸化カリウムを質量分率で0.05%含み、ノニオン系界面活性剤を含む水溶液、28℃〕に浸漬して現像した。浸漬時間は0秒から120秒まで1秒刻みとして、着色層が完全に消失するまでの時間を溶出時間とし、この溶出時間と着色感光性樹脂組成物層の厚みとから、溶解速度を算出した。
【0286】
(iii)現像性
マスクを介した露光を施し、現像後の塗布基板を観察した。露光部の近傍の非露光部の基板上の残渣を光学顕微鏡で観察し、残渣評価とした。また現像パターンは断面をSEMで観察した。
残渣の評価は下記基準によった。
◎:非露光部には、残渣がまったく確認されなかった。
○:露光部の極近傍にだけ、僅かに残渣が見られた。実用上は全く問題がない。
△:非露光部に、残渣がわずかに確認された。実用上問題のない程度であった。
×:非露光部に、残渣が著しく確認された。
【0287】
パターン断面形状は順テーパが最も好ましく、矩形が次に好ましい。逆テーパは好ましくない。パターン評価は下記基準によった。
◎:テーパ角度が30以上70度未満の範囲(順テーパ)
○:テーパ角度が70以上90度未満の範囲(順テーパ)
△:テーパ角度が90度(矩形)
×:テーパ角度が90度を越える(逆テーパ)
(iv)耐熱性
ポストベーク後の着色ベタ基板を、更に230℃で1時間ホットプレートで加熱し、色度計(商品名:MCPD−1000、大塚電子(株)製)で、耐熱テスト前後の色差(ΔEab値)を測定した。ΔEab値の小さい方が、耐熱性が良好であることを示す。
【0288】
【表2】

【0289】
表2から、顔料と、酸性基を有する顔料誘導体と、および高分子化合物とで得た着色組成物を用い、アルカリ溶解速度の速い着色硬化性組成物は、現像残渣が少なく、またパターンが順テーパで現像性が良好であり、またコントラストが高く耐熱性が良好であることがわかる。着色組成物に高分子化合物を用いなかった比較例1および2はアルカリ溶解速度が遅く、現像性が不良であった。また酸性基を有さない顔料誘導体を用いた着色組成物で得られた着色硬化性組成物の比較例3は、アルカリ溶解速度が不足し現像性も好ましくなかった。
【0290】
次に、固体撮像素子用途のカラーフィルタ形成用として顔料を含有する着色光硬化性組成物を調整した例を挙げて説明する。
下記組成の成分を混合して溶解し、レジスト液を調製した。
<下塗り層用レジスト液の組成>
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 19.20部
(PGMEA:溶剤)
・乳酸エチル 36.67部
・樹脂(メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸/メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル共重合体(モル比=60/22/18)の40%PGMEA溶液) 30.51部
・エチレン性不飽和二重結合含有化合物(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
12.20部
・重合禁止剤(p−メトキシフェノール) 0.0061部
・フッ素系界面活性剤(F−475、大日本インキ化学工業(株)製) 0.83部
・光重合開始剤(トリハロメチルトリアジン系の光重合開始剤) 0.586部
(TAZ−107、みどり化学社製)
【0291】
〔下塗り層付シリコン基板の作製〕
6inchのシリコンウエハをオーブン中で200℃のもと30分加熱処理した。次いで、このシリコンウエハ上に前記レジスト液を乾燥膜厚が1.5μmになるように塗布し、更に220℃のオーブン中で1時間加熱乾燥させて下塗り層を形成し、下塗り層付シリコンウエハ基板を得た。
【0292】
[実施例10]
実施例1と同様に分散処理した顔料分散液を用いて下記組成比となるよう撹拌混合して着色光硬化性組成物を調製した。
・着色剤(顔料分散液(P2)) 600部
・重合開始剤(オキシム系光重合開始剤)
(CGI−124、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 30部
・TO−1382(東亞合成(株)製) 15部
(光重合性化合物東亜合成化学(株)製 カルボキシル基含有5官能アクリレート)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 20部
・アルカリ可溶性樹脂(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/AA−6(東亜合成化学工業(株)製)共重合体の30%PGMEA溶液、重量比:50/15/35、
Mw:18500) 30部
・溶媒(PGMEA) 900部
・基板密着剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン) 1部
【0293】
実施例11〜14および比較例4、5は、実施例10の加工顔料、顔料誘導体、およびアルカリ可溶性樹脂を表3のように変更して着色光硬化性組成物を調整した。
上記で調製した着色光硬化性組成物のアルカリ溶解速度および保存安定性(粘度)は、実施例1と同様に評価した。
残渣、パターン、および色むらは、得られた着色硬化性組成物を、下塗り層付きシリコンウエハに塗布し、下記に示す方法で評価した。
【0294】
−下塗り層付きシリコンウエハの調製−
下記組成の成分を混合して溶解し、透明レジスト液を調製した。
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 19.20部
(PGMEA:溶剤)
・乳酸エチル(溶剤) 36.67部
・メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸/メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル共重合体(モル比=60/22/18)の40%PGMEA溶液 30.51部
(バインダーポリマー)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA) 12.20部
(光重合性化合物)
・重合禁止剤(p−メトキシフェノール) 0.0061部
・フッ素系界面活性剤 0.83部
(F−475、大日本インキ化学工業(株)製)
・TAZ−107 0.586部
(みどり化学社製;トリハロメチルトリアジン系の光重合開始剤)
【0295】
6inchシリコンウエハを、オーブン中で200℃で30分間、加熱処理した。次いで、このシリコンウエハ上に前記透明レジスト液を乾燥膜厚が1.5μmになるように塗布し、更に220℃のオーブン中で1時間加熱乾燥させて下塗り層を形成し、下塗り層付シリコンウエハ基板を得た。
【0296】
−固体撮像素子着色パターンの形成−
前記で得られた下塗り層付シリコンウエハの下塗り層上に、着色層の乾燥膜厚が0.7μmになるように、着色光硬化性組成物を塗布した。次いで、この着色塗布基板を100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行なった。
次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を使用して365nmの波長でパターンが1.5μm四方のIslandパターンマスクを通して500mJ/cmの露光量で露光した。その後、露光後の着色層が形成されているシリコンウエハをスピン・シャワー現像機(DW−30型、(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置し、CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて23℃で60秒間、パドル現像を行なった後、該シリコンウエハを真空チャック方式で前記水平回転テーブルに固定し、回転装置によって該シリコンウエハを回転数50r.p.m.で回転させつつ、その回転中心の上方より純水を噴出ノズルからシャワー状に供給してリンス処理を行ない、その後、スプレー乾燥して、着色画素の付いたウエハ基板を得た。
【0297】
−残渣、パターンの評価−
残渣は、未露光部のウエハ表面をSEM観察し、以下の基準により判定した。
−評価基準−
○:未露光部には、残渣がまったく確認されなかった。
△:未露光部に残渣がわずかに確認されたが、実用上問題のない程度であった。
×:未露光部に残渣が著しく確認された。
【0298】
パターンは、断面形状をSEMで観察し、以下の基準により判定した。
−評価基準−
○:テーパ角が75°以上 100°未満
×:テーパ角が75°未満 もしくは 100°以上
【0299】
色むらの評価は、下塗り層付きウエハの代わりにガラス基板を使用し、またマスクを用いずにベタで露光する以外は、固体撮像素子着色パターンの形成の方法と同様にして評価用基板を作成した。輝度分布を下記方法で解析し、平均からのずれが±5%以内である画素が全画素数に占める割合をもとに行った。
輝度分布の測定方法について説明する。まず、着色層付きのガラス板の輝度分布を顕微鏡MX−50(オリンパス社製)にて撮影した画像を解析した。
なお輝度分布において、最も画素数の多い輝度を平均輝度と定義する。
−評価基準−
◎:平均からのずれが±5%以内である画素が全画素数中の99%以上
○:平均からのずれが±5%以内である画素が全画素数中の95%以上99%未満
×:平均からのずれが±5%以内である画素が全画素数中の95%未満
【0300】
【表3】

【0301】
表3から、本発明の着色組成物を用いて作成した着色光硬化性組成物は、アルカリ溶解速度が早く、残渣が殆どなく、現像後のパターンも良好である。しかも色むらが良好で、耐熱性が良好なことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)顔料、(b)酸性基を有する顔料誘導体、および(c)高分子化合物を含む着色組成物であって、その着色組成物により乾燥膜厚が1.0μmの塗膜を形成したときに、該塗膜が、KOH濃度が0.05質量%のアルカリ水溶液に30秒以下で溶解することを特徴とする着色組成物。
【請求項2】
(a)顔料が、(c)高分子化合物で被覆されてなることを特徴とする請求項1に記載の着色組成物。
【請求項3】
(a)顔料が、(b)酸性基を有する顔料誘導体で被覆されてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の着色組成物。
【請求項4】
(b)酸性基を有する顔料誘導体が、スルホン酸基及び/或いはスルホン酸塩を有する顔料誘導体である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の着色組成物が、光重合性化合物及び光重合開始剤を含有することを特徴とする着色光硬化性組成物。
【請求項6】
基板上に、請求項5に記載の着色光硬化性組成物を用いてなる着色パターンを有することを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項7】
請求項6に記載のカラーフィルタを備えたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
請求項6に記載のカラーフィルタを備えたことを特徴とする固体撮像素子。

【公開番号】特開2009−102532(P2009−102532A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276164(P2007−276164)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】