説明

瞬間的な高圧に対応するバルブ

バルブ10は、ハウジング12を備え、バルブ要素14は、例えば注射器32のような高圧発生源とチューブ34との間に形成された第2の流路72を通常時に阻害し、且つ可撓性を有している制御壁58を含んでいる第1の流路42に沿って、例えば圧力変換器30のような低圧で操作する装置と患者36に結合したチューブ34を通常時に流通している。前記制御壁は、注射器32からの一時的な高圧に応答して湾曲し、第2の流路72を開き、第1の流路42内部に湾曲し、これにより第1の流路を制限するので、注射器32からの一時的な高圧が作用した際に圧力変換器30の保護を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にバルブに関し、より具体的には医療分野で利用されるバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野では、長いチューブを患者の血管に結合し、これにより液体を血管内部に投与することを必要とする場合がある。患者の皮膚に長時間に亘りチューブを刺すことよりも、同一のチューブを他の医療目的のために利用可能であることは利点である。例えば、血管造影処理や他の介入造影操作の際に、造影剤は一般に高い圧力が作用した状態でチューブを通じて動脈に挿入されたカテーテルに射出され、診断や治療のために動脈網又は他の関連する器官の配置のX線画像を生成させる。チューブが圧力変換器に結合されているので、該チューブ内に形成された静水柱を利用して患者の動脈内の血圧を得ることができる。
【0003】
造影剤射出システムは、一般に非常に高い圧力、例えば300psi、可能であれば1000psi超の圧力を要求する。一般的には、手動式注射器又は自動式注射器を利用することによって、このような圧力が実現される。しかし、血圧変換器は、非常に感度が高い装置であって、例えば2psi以下のような低圧環境のために設計されている。従って、例えば造影剤の射出のような高圧で利用可能な同一のチューブに結合された場合に、重要な課題が存在する。この点に関して、圧力変換器を補助するための措置が採られなかった場合には、圧力変換器が破損する場合がある。
【0004】
このような損傷を防止するためには、三方コック(three-way stopcock)を利用することができる。第1のポートは(例えば生理食塩水源に結合可能なさらに長いチューブを介して)圧力変換器に結合されている。第2のポートは(直接又はさらに長いチューブを介して)注射器に結合されている。第3のポートは患者に至るチューブに結合されている。三方コックは、2つの位置の間で回転自在なレバーを有している。一方の位置では、圧力変換器用ポートはチューブ用ポートに流通し、注射器用ポートは圧力変換器用ポート及びチューブ用ポートの両方に流通している。当該位置では、圧力変換器は患者用チューブの静水柱の圧力を感知することができる。他方の位置では、注射器用ポートはチューブ用ポートに流通し、圧力変換器用ポートは注射器用ポート及びチューブ用ポートの両方から離脱している。当該他方の位置では、造影剤が射出可能とされる。圧力変換器用ポート及び注射器用ポートは如何なる時でも流通していない。結論として、圧力変換器は高圧源(すなわち注射器)と流体又は圧力的に連通していない。さらに、一時的に高圧が作用した、例えば造影剤が射出された際に、圧力変換器は高圧液体が射出される際に通過するチューブに連通しない。
【0005】
三方コックはこのように血管変換器の損傷を防止するために利用されるが、欠点を有していないという訳ではない。三方コックは手動で操作しなければならないので、移動診断手続を阻害又は遅延させる原因となる。さらに、レバーが所望の位置に回転しない場合には、理想的又は妥当な血圧読み取りが実現されない場合又は実現されなくなると、射出されなくなる。
【0006】
高圧が作用することから圧力変換器を保護するための他の手段は、様々な圧力の存否又は信号に応答する一連のバルブ、アクチュエータ、及び/又はピストンを有した自動式マニホールドである。このようなマニホールドも同様に欠点を有している。欠点には、嵩張るといったことも含まれる。前記マニホールドは、例えば手動式注射器と共に利用するように適合されている。
【特許文献1】米国特許第6,800,072号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、幾つかの動作部品又は手動操作を必要としないが、必要に応じて自動的に圧力変換器を保護すると共に高圧液体を流通させるように自動システム及び手動システムの両方で自動的に動作する、簡便な小型バルブを提供する。この目的を達成し、且つ本発明の技術的思想に従って、バルブは自身の内部にハウジング及びバルブ要素を備えている。このバルブ要素は、通常時に注射器とチューブとの間に形成された第2の流路を遮断するための可撓性を有する制御壁を含んでいる第1の流路に沿って、通常時に圧力変換器及びチューブを流通させている。しかし、制御壁が第1の流路内部に湾曲することによって、第1の流路を制限した場合に、前記バルブ要素は注射器からの一時的な高圧に応答して第2の流路を開放する。これにより高い圧力が注射器から一時的に作用している際に圧力変換器の保護が可能とされる。上記作用効果のすべてが必ずしも必要ではないが、制御壁が十分に湾曲し、第1の流路を完全に閉鎖することが望ましい。一時的な高い圧力の作用が終了した場合には、制御壁は湾曲状態から復帰し、第2の流路が閉鎖されるので、第1の流路が完全に元の状態に戻る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ハウジングは、3つの部分、すなわち圧力変換器を結合するための部分、注射器を結合するための部分、及び患者用チューブを結合するための部分から構成される。バルブ要素は、優位には2つの流路、すなわち圧力変換器用ポートとチューブ用ポートとの間に形成された流路、及び注射器用ポートとチューブ用ポートとの間に形成された流路を形成する制御壁を含んでいる。バルブ要素は、優位には、第1の流路が通常時に開放されていると共に第2の流路を閉鎖するように、通常時には第2の流路を備えたバルブシートに当接している接触部材を有している。接触部材は、注射器用ポートにおける高圧に応答することによって、バルブシートから離間するように移動し、これにより注射器から射出される液体のための第2の流路を開放し、注射器用ポートからチューブ用ポートに流通させる。この場合には、制御壁は第1の流路内部に湾曲し、第1の流路を制限又は完全に遮断する。一時的な高圧の作用が終了した場合には、接触部材は再びバルブシートに当接し、第2の流路を遮断する。制御壁は第1の流路の外側に向かって曲げ戻り、第1の流を完全に再び開放し、圧力変換器の適切な動作に必要な条件を再び構築する。
【0009】
本発明のバルブは、倒置した状態でも利用可能である。この点に関して、チューブ用ポートは効果的に密閉する。圧力変換器用ポートにおける負圧を発生させることは、注射器用ポートを通じて制御壁に高圧を作用させることと同一であるので、制御壁は第2の流路が開放されるように湾曲する。この装置は、バルブが注射器の充填を選択的に制御する点において有用である。
【0010】
接触部材は制御壁の一部を構成し、バルブシートはバルブのハウジングの一部を構成している。制御壁は略平坦且つ略平面であるので、良平面を形成する。一方の平面は第2の流路の一部を形成し、他方の平面は低圧用経路の一部を形成する。第1の流路は、D字状断面を有する部分を含んでいる。制御壁がD字状部分の平坦な部分を形成している。バルブ要素は円錐状区間を有し、該バルブ要素のトラフは第2の流路の一部を形成している。トラフの一の壁、例えば底壁が、優位には制御壁を形成している。
【0011】
バルブ要素は、第1の流路を形成するために弾性体を貫通する通路と、第2の流路の少なくとも一部を形成するために可撓性を有する壁を有するトラフとを備えた中実の該弾性体である。可撓性を有する壁は、優位には第1の流路の一部を形成し、且つ制御壁に作用する高圧に応答して第1の流路内部に湾曲し、これにより第1の流路を位置的に制限するように適合された制御壁を形成する。
【0012】
上述のように、本発明は、幾つかの動作部品や手作業を必要としないが、自動システム及び手動システムの両方で自動的に動作する簡便な小型バルブを提供し、これにより必要に応じて圧力変換器を自動的に保護すると共に所望の時に高圧液体を流通させることができる。本発明の前記目的及び前記利点並びに他の目的及び利点は、添付図面及びこれらに対応する説明によって明らかとなる。
【0013】
添付図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成するが、本明細書の実施例を表わしている。さらに、添付図面は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載と共に本発明の技術的思想を説明するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1〜図5は、本発明の技術的思想に基づいたバルブ10の一の実施例を表わす。バルブ10は、ハウジング12と、ハウジング12内に位置決めされたバルブ要素14を有している。ハウジング12は、自身の内部にバルブ要素14を受容可能な大きさとされたチャンバー18を形成する高剛性なプラスチック材料から成る本体部分16と、チャンバー18内部にバルブ要素14を固定状態で保持するための高剛性なプラスチック材料から成る端部キャップ20とを含んでいる。
【0015】
ハウジング12は、3つのポート22,24,26を含んでいる。ポート22は、低圧用ポートとして構成され、例えば圧力変換器30(図6を参照)のような低圧で動作する装置に結合可能とされる。ポート24は、高圧用ポートとして構成され、例えば注射器32(図6を参照)のような高圧発生源に結合可能とされる。ポート26は、共通ポート又はチューブポート(患者用チューブポート)として構成され、患者36(図6を参照)の循環系と連通するために患者用チューブ34(図6を参照)に結合可能とされる。図示の実施例では、チャンバー18はディスク状区間18a及び円錐状区間18bを有している。両区間は、ポート22,26が互いに同軸上に配置された状態で軸線40に沿って形成されている。
【0016】
バルブ要素14は、前方開口部46と後方開口部44との間に亘って延伸している通路42を有している中実の弾性体とされる。後方開口部44は、バルブ要素14のディスク状部分48内に形成されている。該バルブ要素は、ハウジング12のディスク状区間18a内に滑り嵌めされる大きさである。バルブ要素14は、ハウジング12の円錐状区間18b内に滑り嵌めされるように形成されたトラフ52を有している円錐状部分50を含んでいる。バルブ要素14がこのように受容された状態で、通路42がポート22とポート26との間に第1の流路を形成するように、前方開口部46及び後方開口部44は軸線40に沿ってポート22,26と位置合せされている。トラフ52は、左側壁54、右側壁56、後壁57、及び底壁58を有している。底壁58は弾性を有し、これにより制御壁を形成するように湾曲可能とされる。しかしながら、底壁は湾曲していない場合には略平坦な面とされるので、以下に説明するように対向する上面60及び下面62が形成される。
【0017】
ハウジング12は、高圧用ポート24の下方でチャンバー18内部に向かって延在する大きさ及び形状とされ、且つトラフ52内部に滑り嵌めされる大きさである突出部分64を含んでいる。突出部分64は、制御壁58の上面60と対向する略平坦な表面66を含んでいる。制御壁58に支持された接触部材68は、優位には制御壁58の上面60の一部によって形成され、通常時には表面66に支持されている。該表面には、矢印71(図4を参照)の如く流路42が開いた状態で高圧用ポート24と共通ポート26との間の流通を閉鎖するために、バルブシート70(優位には上面60及び平面66によって形成され、上面60及び平面66に沿って延在する)が形成されている。しかしながら、(図5の矢印73の如く)制御壁58の上面60に向けられた高圧用ポート24における圧力が高いので、制御壁58は該圧力を受けて湾曲し、これにより接触部材68がバルブシート70から離隔し、第2の流路72(図5を参照)が高圧用ポート24と共通ポート26との間で開放され、上面60に沿って形成される。一時的な高圧の作用が終了した場合には、制御壁58の弾性によって該制御壁が湾曲されていない状態に復帰するので、接触部材68が平面66及び/又はバルブシート70に当接し、これにより第2の流路72が閉じ、第1の流路42が元の状態に戻る。
【0018】
制御壁58、特に該制御壁の下面62が通路42の平坦な部分を形成しているので、通路42は、制御壁58の領域内において円筒状開口部44から円錐状部分50のD字状部分78に至る参照符号74の部分で狭窄している。従って、第1の流路42は、制御壁58の下面62に沿ってD字状の後方開口部46に至るまで延在している。通路部分78には、弧状の流路壁部分80が制御壁58に対向して(及び領域74の円筒状の壁を延長して)形成されている。制御壁58が第2の流路72を開口するように湾曲した場合には、制御壁58の一部が通路部分78の第1の流路42内部に向かって湾曲し、さらに(円錐状のバルブ要素部分50とハウジングの本体部分16の円錐状区間18bとの相互作用によって所定位置を維持する)弧状の流路壁部分80に向かって湾曲するので、第1の流路42は制限される。D字状の通路部分78は制御壁58の適切な動作に貢献する。この点に関して、流路壁部分80に類する弧状の壁部分の場合には、制御壁58は必ずしも屈曲(buckle)する必要はなく膨張又は湾曲すれば十分である。このような膨張又は湾曲は、制御壁58の上面60の表面領域が弧状の壁部分80の領域よりも小さいので容易に生じる。制御壁58は十分な可撓性を有しているので、流路壁部分80と接触して通路部分78の通路42を閉じることができる。該通路が閉鎖されていない場合であっても、高い圧力が一時的に作用する際に生じる低圧用ポート22に結合された圧力変換器30への逆流を低減することができる。従って、制御壁58は、高圧用ポート24における高い圧力の変動に反応し自動的に動作するので、第2の流路72の開口及び第1の流路42の制限を制御可能である。共通ポート26が効果的に密閉された状態における低圧用ポート22での負圧は、制御壁58の上面60に作用する高い圧力と同一の効果を有し、これにより第2の流路72が開口されることに留意すべきである。
【0019】
各ポート22,24,26は、関連する態様のバルブ要素14にボア81を通じて連通し、前記ポートに方向付けられたフランジ82を形成している。フランジ82は、言うまでもなく、関連するポートと協働することによってチューブの挿入長さを制限することができる。ハウジング12の本体部分16は、自身の内部に端部キャップ20を受容する開後端部84(図3を参照)を有している。フランジ壁86は、ディスク状区間18aと円錐状区間18bとの間で延在し、端部キャップ20がハウジング12内部にバルブ要素14を固定した場合に当接するように、バルブ要素のディスク状部分48のためのバルブシートを形成する。フランジ壁86は、環状の突起リングの形態をした1つ以上の突起88を含んでいるので、ハウジング12内部にバルブ要素14を固定することを補助することができる。端部キャップ20にも、必要であればこのような突起が形成されていても良い(図示しない)。端部キャップ20は、例えば(図示しないが、必要な場合には粗い表面又は突出部若しくは突起を有している)前記端部キャップの周囲部90と開後端部84の内面92との摩擦係合、及び/又は超音波溶接によってハウジング12に固定されている。
【0020】
本明細書で利用される“高圧(high pressure)”及び“低圧(low pressure)”という用語は、第1の流路42及び第2の流路72に作用する圧力が相違することを表わし、バルブ10のポートに関する参照として有益である。後者に関しては、これら用語は説明するポートを区別するために利用されるに過ぎず、実際に作用する圧力に関して利用を制限する訳ではない。前者に関しては、最も広い意味内容で解釈するべきであり、高圧は、(高圧用ポート24を介した高圧又は共通ポート26が効果的に密閉された状態における低圧用ポート22における負圧のうちいずれかの圧力によって)制御壁の上面60に作用する圧力が特に共通ポート26の近傍で第1の流路42内の圧力よりも高いので、接触部材68をバルブシート70から離間するように移動させることができる。しかしながら、幾つかの実施例では、高圧用ポート24における圧力が所定のクラッキング圧力を卓越した場合に限り、バルブ10は第2の流路内での流通を可能とするように構成されていることが優位である。このような実施例では、高圧用ポート24における圧力がクラッキング圧力を卓越するまで接触部材68がバルブシート70に当接した状態で、制御壁58が所定位置に維持されるようになっている。クラッキング圧力は、バルブ10の特定の目的に従って選定される。血液用圧力変換器30を利用可能な場所では、クラッキング圧力は、圧力変換器30が圧力に曝される危険性を低減するために少なくとも約2psiとなるように選定される。クラッキング圧力は、一般に制御壁58の大きさ、厚さ、及び硬度(durometer)によって決定されるが、このことは当業者にとっては言うまでもないことである。
【0021】
図6は、造影剤射出システム200に利用されるバルブ10を表わす。バルブ10の低圧用ポート22は、(センサ及び/又は使い捨てのドームを含んでいる場合がある)圧力変換器30に結合された長いチューブ202に結合されている。該圧力変換器は、順番にさらなる長いチューブ204を介して、(加圧されている場合がある)生理食塩水バッグ208に結合されたスパイク206に結合されている。フラッシュバルブ210は、圧力変換器30の上流側に設けられている。バルブ10の高圧用ポート24は、チューブ212を介して注射器32に結合されている(図6では手動式注射器であるが自動式注射器であっても良い)。例えばストップコック(stopcock)のようなバルブ214は、選択的に注射器32を造影剤供給装置216に結合するために注射器32とバルブ10との間に設けられたチューブ212に設けられている。このことは、当業者にとっては言うまでもないことである。造影剤供給装置216は、造影剤が充填されたバッグ又はボトルであって、特許文献1に開示されるリザーバー及び関連する構成部品を含んでいる場合もある。バルブ10の共通ポート26は、従来の如くカテーテル220又はこれに類するものを介して、例えば患者36の動脈のような循環系に連通した長い患者用チューブ34に結合されている。
【0022】
利用時には、静水柱(hydrostatic column)がチューブ34内に正常に形成され、バルブ10は、第1の流路42が開き且つ第2の流路72が略閉鎖した状態で(図4を参照)、静水柱を圧力変換器30に連通させるようなノミナル状態又は第1の状態にある。第1の状態では、圧力変換器30は正常に動作し、患者の動脈圧を表わす信号を生成する。高圧が高圧用ポートに一時的に作用した場合、例えば注射器32がチューブ34を介して患者36に造影剤を射出するように動作した場合には、バルブ10は図5に表わす第2の状態に移行する。第2の状態では、高圧が制御壁58の上面60に一時的に作用することによって制御壁58が湾曲し、これにより第2の流路が開いて、造影剤が共通ポート26を通じてチューブ34に流出する。注射器32は一般に約300psi〜約1200psiの圧力で造影剤を射出する。圧力変換器30は、一般に加圧され重大な損傷を受ける。しかしながら、第2の流路72が開くと共に、制御壁58は第1の流路42内部に向かって湾曲し、これにより流路を制限し、可能であれば閉鎖する。言い換えれば高圧が一時的に作用した場合における圧力変換器30の露出を制限する。高圧の一時的な作用が終了した場合には、制御壁58は湾曲していない状態に復帰し、これにより圧力変換器30が通常動作するように第2の流路が再び閉鎖され、第1の流路42が再構築される。
【0023】
図6の実施例では、バルブ214はストップコックである。図7に表わす代替的な実施例として、改良された造影剤射出システム200’は造影剤射出システム200に非常に似ている。バルブ214がバルブ10に類似した第2のバルブ10’に交換され、この第2のバルブは倒置された状態で接続されている。このように、バルブ10’の低圧用ポート22はバルブ10の高圧用ポート24に結合され、バルブ10’の高圧用ポート24が造影剤供給装置216に結合され、バルブ10’の共通ポート26は注射器32に結合されている。この場合には、造影剤が注射器32に引き込まれた際に負圧が発生するので、バルブ10’の制御壁58の下面62が壁に当接する。このような当接の原因は、前記制御壁の平面60で一時的に高圧が発生することである。従って、バルブ10’が第2の状態に移行するので、造影剤供給装置216からの造影剤が前記バルブの第2の流路72を介して注射器32を充填する。注射器32が自身の内部に造影剤を引き込むことができなくなった、又は前記注射器が患者36に造影剤を吐出若しくは投与するように動作している場合には前記負圧が発生するので、第2の流路72が閉じ且つ第1の流路42が制限されないので、上述のように造影剤をバルブ10上で操作することができる。
【0024】
前述のように、本発明は、単純な構造で小型のバルブであって、幾つかの動作に必要な構成部材又は手動操作を必要としないが、自動システム及び手動システムの両方で自動的に動作し、望んだ時に高圧流体を流すことができ、且つ必要に応じて圧力変換器を自動的に保護するバルブを提供する。
【0025】
本発明は、相当詳細に説明された1つ以上の実施例の説明によって示される。しかしながら、このような実施例は、本発明の技術的範囲を制限又は限定する訳ではない。当業者であれば、付加的な利点及び改良を容易に想到することができる。例えば、ハウジング12は本明細書に表わすT字状の形態ではなく、Y字状の形態とされる場合がある。さらに、バルブシート70は、ハウジング12の相違する表面又はバルブ要素14の一部分によって形成されている場合がある。さらに、接触部材68は、制御壁58以外のバルブ要素14の一部分によって支持されている場合がある。造影剤射出システムには、低圧用ポートが圧力変換器に結合された状態でバルブ10が設けられている。しかしながら、前記バルブは、第1の流路が例えばバルブ10の第1の流路42に沿って通常時に結合され、且つ第2の流路が例えば導入ポート24(introduction through port)によって選択的に結合可能である他のシステムでも利用可能である。このように、バルブ10が第2の流路を介して導入ポート24に通じる第1の流路42の流れに対して逆止弁(back check valve)として動作することは言うまでもない。従って、本発明は広い態様で解釈するべきであり、代表的な装置及び方法並びに図示説明した実施例の特定の詳細事項に限定される訳ではない。従って、出願人の本発明に対する技術的思想から逸脱することなく、変形例を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の技術的思想に基づいたバルブの一の実施例の拡大斜視図である。
【図2】図1のバルブの分解斜視図である。
【図3】図1のバルブのハウジングの本体部分の断面斜視図である。
【図4】本発明の技術的思想を説明するために異なる動作段階にある図1のバルブの断面図である。
【図5】本発明の技術的思想を説明するために異なる動作段階にある図1のバルブの断面図である。
【図6】図1のバルブを組み込んだ造影剤分配システムの一の実施例の概略図である。
【図7】2つの図1のバルブを組み込んだ図6の造影剤分配システムに類した造影剤分配システムの一の実施例の概略図である。
【符号の説明】
【0027】
10 バルブ
12 ハウジング
14 バルブ要素
16 本体部分
18 チャンバー
18a ディスク状区間
18b 円錐状区間
20 端部キャップ
22 低圧用ポート
24 高圧用ポート
26 共通ポート
30 圧力変換器
32 注射器
34 患者用チューブ
36 患者
40 軸線
42 第1の流路
44 後方開口部
46 前方開口部
48 ディスク状部分
50 円錐状部分
52 トラフ
54 左側壁
56 右側壁
57 後壁
58 底壁(制御壁)
60 上面
62 下面
64 突出部分
66 表面
68 接触部材
70 バルブシート
72 第2の流路
78 D字状部分
80 流路壁部分
81 ボア
82 フランジ
84 開後端部
86 フランジ壁
88 突起
90 周囲部
92 内面
200 造影剤射出システム
202 チューブ
204 チューブ
206 スパイク
208 生理食塩水バッグ
210 フラッシュバルブ
212 チューブ
214 バルブ
216 造影剤供給装置
220 カテーテル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧液体用ポート(22)、高圧液体用ポート(24)、及び共通ポート(26)を有しているハウジング(12)と、前記ポート間で前記ハウジング(12)内部に位置決めされたバルブ要素(14)とを備えているバルブであって、
前記バルブ要素(14)は、第1の表面(62)及び第2の表面(60)を備えた制御壁(58)を有し、
第1の流路(42)は、前記制御壁(58)の前記第1の表面(62)に沿って延在し、前記低圧液体用ポート(22)を前記共通ポート(26)に結合し、
第2の流路(72)は、前記制御壁(58)の前記第2の表面(60)に沿って延在し、前記高圧液体用ポート(24)を前記共通ポート(26)に結合しており、
前記バルブ要素(14)は、通常時に前記第2の流路(72)と関連するバルブシート(70)と当接することによって、前記第2の流路を閉鎖し、
接触部材(68)は、前記高圧液体用ポート(24)における高い圧力に応答することによって、前記バルブシート(70)から離間するように移動し、これにより前記第2の流路(72)を開放し、
前記制御壁(58)は、開放に応答して前記第1の流路(42)内部に向かって湾曲することを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記バルブシート(70)は、前記ハウジング(12)の一部であることを特徴とする請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記第1の表面及び前記第2の表面(62,60)は、前記制御壁(58)の両側面に位置決めされていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバルブ。
【請求項4】
前記制御壁(58)は、略平面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項5】
前記制御壁(58)は、略平坦であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項6】
前記制御壁(58)は、前記接触部材(68)を支持していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項7】
前記第2の表面(60)の一部は、前記接触部材(68)を形成していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項8】
前記制御壁(58)は、前記第2の流路(72)の開放に応答して湾曲した場合に前記第1の流路(42)を制限するように適合されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項9】
前記第1の流路(42)は、自身の両側部に前記制御壁(58)に対向した流路壁(80)を有し、
前記制御壁(58)は、前記第1の流路(42)内部に向かって湾曲し、これにより前記第1の流路が閉鎖された場合に、前記流路壁(80)に接触するように適合されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項10】
前記接触部材(68)は、所定のクラッキング圧力又は該クラッキング圧力よりも高い圧力に応答し、
前記クラッキング圧力は、少なくとも約2psiであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項11】
前記バルブ要素(14)は、前記第1の流路(42)が貫通して延在する円錐状部分(50)と前記第2の流路(70)の一部を形成する前記円錐状部分内に形成されたトラフ(52)とを有していることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項12】
前記トラフ(52)は、左側面(54)、右側面(56)、及び前記左側面及び前記右側面(54,56)と相互接続している底面(58)を有し、
前記トラフ(52)の前記左側面、前記右側面、及び前記底面(54,56,58)のうち一の面が制御壁を形成していることを特徴とする請求項11に記載のバルブ。
【請求項13】
前記底面(58)は、前記制御面(58)を形成していることを特徴とする請求項12に記載のバルブ。
【請求項14】
前記ハウジング(12)の前記低圧液体用ポート内に受容された端部キャップ(20)をさらに備え、
前記端部キャップ(20)は、前記バルブ要素(14)の前記第1の流路(42)と流通している入口通路(81)を有していることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項15】
前記端部キャップ(20)は、前記ハウジング(12)と摩擦係合することによって前記ハウジング(12)内に前記バルブ要素(14)を保持することを特徴とする請求項14に記載のバルブ。
【請求項16】
前記端部キャップ(20)は、前記ハウジング(12)に超音波溶着されることによって前記ハウジング(12)内に前記バルブ要素(14)を保持することを特徴とする請求項14又は15に記載のバルブ。
【請求項17】
前記端部キャップ(20)は、1つ以上の突起を備えた外側部分(90)を有し、前記ハウジング(12)と摩擦係合していることを特徴とする請求項14〜16のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項18】
前記ハウジング(12)は、少なくとも1つの突起(88)を備えたフランジ(86)を有し、
前記フランジは、前記バルブ要素(14)の外面と係合するように適合していることを特徴とする請求項14〜17のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項19】
少なくとも1つの前記突起(88)は、前記ハウジング(12)の前記フランジ(86)に環状に構成されていることを特徴とする請求項18に記載のバルブ。
【請求項20】
前記第1の流路(42)は、D字状断面を有する部分を備え、
前記制御壁(58)は、前記D字状断面を有する部分の一部を形成していることを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項21】
前記第1の流路(42)には、移行部分(74)が前記D字状断面を有する部分と前記端部キャップ(20)の前記入口通路(81)との間に位置決めされていることを特徴とする請求項14〜19のいずれか一項に従属する請求項20に記載のバルブ。
【請求項22】
前記第2の表面(60)の一部は、前記接触部材(68)を形成し、
前記バルブシート(70)は、前記ハウジング(12)の内面(66)であり、
前記制御壁(58)は、前記高圧液体用ポート(24)における高圧に応答することによって前記第2の表面(60)を前記ハウジング(12)の前記内面(66)から離間するように移動させ、これにより前記第2の流路(70)の開放を行ない、
前記制御壁(58)は、前記開放に応答して前記第1の流路(42)内部に湾曲し、前記第1の流路を閉鎖することを特徴とする請求項1〜21のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項23】
第1のポート(44)及び第2のポート(46)を有している中実体(14)と、前記第1のポート(44)から前記第2のポート(46)に至るまで延在し、これにより第1の流路(42)を形成している通路(42)と、外側部分(50)とを備えているバルブ要素であって、
前記外側部分(50)の内部には、トラフ(52)が形成され、
前記トラフは、前記トラフ(52)と前記第1の流路(42)との間に制御壁(58)を形成し、且つ可撓性を有している側面(54,56,58)を有しており、
前記制御壁(58)は、前記制御壁(58)に作用する高圧に応答して前記第1の流路(42)内部に湾曲するように適合され、これにより前記第1の流路(42)を一時的に制限することを特徴とするバルブ要素。
【請求項24】
前記制御壁(58)は、略平面であることを特徴とする請求項23に記載のバルブ要素。
【請求項25】
前記制御壁(58)は、略平坦であることを特徴とする請求項23又は24に記載のバルブ要素。
【請求項26】
前記第1の流路(42)には、D字状断面を有する部分(78)が形成され、
前記制御壁(58)は、前記D字状断面を有する部分(78)の一部を形成していることを特徴とする請求項23〜25のいずれか一項に記載のバルブ要素。
【請求項27】
前記第1のポート(42)は、略円状であり、
前記第1の流路(42)は、第1のポート(42)と前記D字状断面を有する部分(78)との間に位置決めされた移行部分(74)をさらに含んでいることを特徴とする請求項26に記載のバルブ要素。
【請求項28】
前記外側部分(50)は、円錐状であることを特徴とする請求項23〜27のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項29】
前記制御壁(58)は、前記制御壁(58)に作用する高い圧力に応答し、前記第1の流路(42)内部に湾曲することによって、前記第1の流路を閉鎖することを特徴とする請求項23〜28のいずれか一項に記載のバルブ要素。
【請求項30】
前記制御壁(58)は、所定のクラッキング圧力又は該クラッキング圧力よりも高い圧力に応答し、
前記クラッキング圧力は、少なくとも約2psiであることを特徴とする請求項23〜29のいずれか一項に記載のバルブ要素。
【請求項31】
低圧液体及び高圧液体の供給ラインへの流れを制御する方法において、
前記低圧液体を受容するための低圧液体用ポートと前記高圧液体を受容するための高圧液体用ポートとを有しているハウジングの共通ポートと流通している前記供給ラインを配置するステップと、
前記低圧液体用ポートと前記高圧液体ポートとの間で前記ハウジング内部に位置決めされたバルブ要素によって形成された第1の流路を通じて前記低圧液体を流通させるステップであって、前記第1の流路は、前記低圧液体用ポートを前記共通ポートに結合し、前記バルブ要素には、前記第1の流路の一部を形成する第1の表面と第2の流路の一部を形成する第2の表面とが設けられ、前記第2の流路は、前記高圧液体用ポートを前記共通ポートに結合し、前記バルブ要素は、通常時に前記第2の流路と関連したバルブシートに当接している接触部材をさらに含み、前記接触部材は、前記高圧液体用ポートにおける高圧に応答する前記ステップと、
前記高圧液体用ポートに前記高圧液体を流通させることによって、前記接触部材を前記バルブシートから離間するように移動させ、これにより前記第2の流路の開放を行なうステップであって、前記制御壁は、前記開放に応答して前記第1の流路内部に湾曲する前記ステップと、
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項32】
前記制御壁は、前記高圧液体用ポートに流通する前記高圧液体に応答して湾曲した場合に前記第1の流路を制限することを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記制御壁は、前記高圧液体用ポートに流通する前記高圧液体に応答して湾曲した場合に前記第1の流路を閉鎖することを特徴とする請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記高圧液体が、前記制御壁の所定のクラッキング圧力又は該クラッキング圧力よりも高い圧力で流れ、
前記クラッキング圧力は、少なくとも2psiであることを特徴とする請求項31〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の流路は、D字状断面を有する部分を備え、
前記制御壁は、前記D字状断面を有する部分の一部を形成していることを特徴とする請求項31〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記低圧液体用ポート内に端部キャップを受容することによって、前記ハウジング内部に前記バルブ要素を保持するステップを備え、
前記端部キャップは、前記バルブ要素の前記第1の流路と流通している入口通路を有していることを特徴とする請求項31〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
低圧液体及び高圧液体の供給ラインへの流れを制御する方法において、
ハウジングの共通ポートと流通した前記供給ラインを配置するステップであって、前記ハウジングが、前記低圧液体を受容するための低圧液体用ポートと前記高圧液体を受容するための高圧液体用ポートとを有している前記ステップと、
前記低圧液体用ポートと前記高圧液体用ポートとの間で前記ハウジング内部に位置決めされたバルブ要素によって形成された第1の流路を通じて前記低圧液体を流通させるステップであって、前記第1の流路は、前記共通ポートの前記低圧液体用ポートに流通させ、前記バルブ要素は、前記第1の流路の一部を形成する第1の表面と通常時には前記ハウジングの内面に当接する第2の表面とを有する制御壁を含み、前記制御壁は、前記高圧液体用ポートにおける高圧に反応する前記ステップと、
前記高圧液体を前記高圧液体用ポートに流通させることによって、前記ハウジングの前記内面から離隔するように前記第1の流路内部に向かって前記制御壁を湾曲させ、これにより前記第2の表面と前記内面との間に第2の流路を形成するステップであって、前記第2の流路は、前記高圧液体を前記共通ポートに流通させる前記ステップと、
を備えていることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−513256(P2009−513256A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537858(P2008−537858)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/041378
【国際公開番号】WO2007/050553
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(506246818)スミス・メディカル・エイエスディ・インコーポレーテッド (31)
【Fターム(参考)】