説明

短い生物学的活性を示す神経毒

本発明は医薬分野に関する。具体的には本発明は、被験者における生物学的効果の持続時間の低下を示す神経毒ポリペプチド(ここで、前記ポリペプチドはその軽鎖に少なくとも1つの分解シグナルを含む)をコードするポリヌクレオチド、ならびに、前記ポリヌクレオチド、それがコードするポリペプチド、およびそのポリペプチドと特異的に結合する抗体を含むものであるベクターおよび宿主細胞を意図する。さらに、本発明は、前記ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを含む医薬ならびにそれらの特定の治療応用に関する。さらに、本発明は、前記ポリペプチドおよび医薬を製造する方法を意図する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬分野に関する。具体的には、本発明は被験者における生物学的効果の持続時間の低下を示す神経毒ポリペプチド(ここで、前記ポリペプチドはその軽鎖に少なくとも1つの分解シグナルを含む)をコードするポリヌクレオチド、ならびに、前記ポリヌクレオチド、それがコードするポリペプチド、およびそのポリペプチドと特異的に結合する抗体を含むものであるベクターおよび宿主細胞を意図する。さらに、本発明は、前記ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを含む医薬ならびにそれらの特定の治療上の応用に関する。さらに、本発明は、前記ポリペプチドおよび医薬を製造する方法を意図する。
【背景技術】
【0002】
ボツリヌス菌および破傷風菌はそれぞれ非常に強力な神経毒、すなわちボツリヌス毒素(BoNT)および破傷風毒素(TeNT)を産生する。これらのクロストリジウム類神経毒素(CNT)は特異的に神経細胞と結合して神経伝達物質放出を破損する。各毒素は不活性な未プロセシングのおよそ150kDaの一本鎖タンパク質として合成される。翻訳後プロセシングはジスルフィド架橋の形成、および細菌のプロテアーゼによる限られたタンパク質分解(ニッキング)に関わる。活性のある神経毒は、ジスルフィド結合により連結された2つの鎖、ほぼ50kDaのN末端軽鎖およびほぼ100kDaの重鎖から成る。CNTは3つのドメイン、すなわち触媒性軽鎖、転位ドメイン(N末端の半分)および受容体結合ドメイン(C-末端の半分)を包含する重鎖から成る(Krieglstein 1990, Eur J Biochem 188, 39;Krieglstein 1991, Eur J Biochem 202, 41;およびKrieglstein 1994, J Protein Chem 13, 49を参照されたい)。ボツリヌス神経毒素は、150kDa神経毒タンパク質および付随する無毒の複合タンパク質を含む分子複合体として合成される。複合体のサイズはクロストリジウム菌株と個々の神経毒血清型に基づいて異なり、300kDa〜900kDaである。これらの複合化タンパク質は神経毒を安定化しかつ神経毒を分解に対して保護する(Chen 1998, Infect Immun 66(6): 2420-2425を参照されたい)。
【0003】
ボツリヌス菌は、ボツリヌス神経毒素(BoNT)A〜G型と呼ぶ7種の抗原的に異なる血清型を分泌する。全ての血清型は、破傷風菌により分泌される関係する破傷風神経毒素(TeNT)と一緒に、Zn2+-エンドプロテアーゼであって、SNAREタンパク質を切断することによりシナプスの開口分泌をブロックする(Couesnon, 2006, Microbiology, 152, 759を参照されたい)。CNTはボツリヌス中毒で見られる弛緩性筋肉麻痺を引き起こす(Fischer 2007, PNAS 104, 10447を参照されたい)。
【0004】
その毒性効果にも関わらず、ボツリヌス毒素は多数の疾患または障害に対する治療薬として使用されている。ボツリヌス毒素血清型Aは、合衆国において1989年にヒトに対する斜視、眼瞼痙縮、およびその他の障害の治療用に認可された。これはボツリヌス毒素Aタンパク質複合体として、例えば、商品名BOTOX(Allergan Inc)または商品名DYSPORT(Ipsen Ltd)のもとで市販されている。治療への応用については、複合体を治療すべき筋肉中に直接注射する。生理学的pHで毒素はタンパク質複合体から遊離して所望の薬理効果を生じる。改善された、複合体でない神経毒Aポリペプチド調製物が商標XEOMIN(Merz Pharmaceuticals GmbH)のもとで市販されている。ボツリヌス毒素の効果は単に一時的なものであり、その故に治療効果を維持するにはボツリヌス毒素の繰り返し投与を必要としうる。
【0005】
クロストリジウム神経毒は随意筋強度を弱めるので、斜視、頚部筋緊張異常を含む局所筋緊張異常、および良性の本態性眼瞼痙縮の有効な治療薬である。これらはさらに、片側顔面痙縮および局所痙縮の軽減、さらにまた、広範囲の他の適応症、例えば、胃腸障害、多汗症、および美容しわ矯正に有効であることが示されている(Jost 2007、Drugs 67、669を参照)。
【0006】
しかし、筋肉強度および収縮を弱めることはまた、医学的症状または疾患、例えば、創傷治癒、骨および腱骨折治療のための固定、特に痔核切除術、歯移植片の導入、もしくは股関節置換術(endoprothesis)に関する手術後の固定、ひざ関節形成術、眼科外科、ざ瘡、または過敏性腸疾患にとっても所望される。神経毒は通常、前記疾患または症状の効率的治療に実際必要とするより長い期間にわたってその生物学的効果を示す。しかし、長時間の筋肉麻痺は、前記医学的症状または疾患の治療法において有害であるかまたは少なくともそう好ましいものではない。しかし、所望の期間にわたってだけその生物学的効果を示す神経毒はまだ利用できない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Krieglstein 1990, Eur J Biochem 188, 39
【非特許文献2】Krieglstein 1991, Eur J Biochem 202, 41
【非特許文献3】Krieglstein 1994, J Protein Chem 13, 49
【非特許文献4】Chen 1998, Infect Immun 66(6): 2420-2425
【非特許文献5】Couesnon, 2006, Microbiology, 152, 759
【非特許文献6】Fischer 2007, PNAS 104, 10447
【非特許文献7】Jost 2007、Drugs 67、669
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の根底にある技術的課題は上記の必要性に応じる手段および方法を提供することにあると見ることができる。そして、この技術的課題は本請求項および本明細書において以下に特徴付けた実施形態により解決される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、それ故に、被験者における生物学的効果の持続時間の低下を示す神経毒ポリペプチド(ここで、前記ポリペプチドはその軽鎖に少なくとも1つの分解シグナルを含む)をコードするポリヌクレオチドに関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で使用する用語「ポリヌクレオチド」は一本鎖または二本鎖のDNA分子ならびにRNA分子を意味する。前記用語には、ゲノムDNA、cDNA、hnRNA、mRNAならびにかかる分子種の全ての天然もしくは人工的に改変された誘導体が包含される。ポリヌクレオチドは直鎖または環状分子であってもよい。さらに、前記神経毒ポリペプチドをコードする核酸配列だけでなく、本発明のポリヌクレオチドは、適当な転写および/または翻訳に必要なさらなる配列、例えば、5'または3'UTR配列を含んでもよい。本発明のポリヌクレオチドは抗原的に異なる血清型のボツリヌス神経毒素、すなわちBoNT/A、BoNT/B、BoNT/C1、BoNT/D、BoNT/E、BoNT/F、BoNT/G、または破傷風神経毒素(TeNT)の1つから誘導可能な改変された神経毒ポリペプチドをコードする。本発明の一態様において、前記ポリヌクレオチドは配列番号1(BoNT/A)、配列番号3(BoNT/B)、配列番号5(BoNT/C1)、配列番号7(BoNT/D)、配列番号9(BoNT/E)、配列番号11(BoNT/F)、配列番号13(BoNT/G)または配列番号15(TeNT)に示した核酸配列を含むものである。さらに一態様において、配列番号2(BoNT/A)、配列番号4(BoNT/B)、配列番号6(BoNT/C1)、配列番号8(BoNT/D)、配列番号10(BoNT/E)、配列番号12(BoNT/F)、配列番号14(BoNT/G)または配列番号16(TeNT)のいずれか1つに示したアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドが包含される。他の態様において、前記ポリヌクレオチドは1以上のヌクレオチド置換、欠失および/または付加を含む上述のポリヌクレオチドの変異体であって、これはさらに他の態様において1以上のアミノ酸置換、欠失および/または付加を有するコードされたアミノ酸をもたらしうる。さらに、本発明の変異体ポリヌクレオチドは他の態様において、配列番号:1、3、5、7、9、11、13または15のいずれか1つに示した核酸配列と少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一である核酸配列変異体、または配列番号:2、4、6、8、10、12、14、または16のいずれか1つに示したアミノ酸配列と少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列変異体を含むであろう。本明細書で使用する用語「同一の」は、配列を最高のマッチが得られるようにアラインした場合の2つの核酸配列またはアミノ酸配列の間の同一アミノ酸の数を確認することにより特徴付けられる配列同一性を意味する。これは、コンピュータープログラムでコードされて公開された技法または方法、例えば、BLASTP、BLASTNまたはFASTA(Altschul 1990, J Mol Biol 215, 403)を用いて計算することができる。一態様においては、パーセント同一性値を全体のアミノ酸配列にわたって計算する。当業者は色々な配列を比較するのに、様々なアルゴリズムに基づく一連のプログラムを利用することができる。この関係では、NeedlemanおよびWunsch、またはSmithおよびWatermanのアルゴリズムが特に信頼できる結果を与える。配列アラインメントを行うには、プログラムPileUp(Higgins 1989, CABIOS 5, 151)またはプログラムGapおよびBestFit(Needleman 1970, J Mol Biol 48; 443; Smith 1981, Adv Appl Math 2, 482)を用いることができ、これらはGCGソフトウエアパケット(Genetics Computer Group 1991, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711)の一部である。パーセント(%)で先に記述した配列同一性値は、本発明の他の態様において、プログラムGapを用いて全体領域にわたり、次の設定値:ギャップウエイト:50、長さウエイト:3、平均マッチ:10.000、および平均ミスマッチ:0.000を使用して決定するであろうし、特に断らない限り、これは常に配列アラインメントのための標準設定として使用するであろう。
【0011】
一態様において、上述の変異体ポリヌクレオチドはそれぞれ、神経毒ポリペプチド、すなわちBoNT/A、BoNT/B、BoNT/C1、BoNT/D、BoNT/E、BoNT/F、BoNT/Gまたは破傷風神経毒素(TeNT)の生物学的特性の1つ以上、そして他の態様において、全てを保持するポリペプチドをコードする。当業者は、全ての生物学的活性はタンパク質分解活性化後にだけ維持されるが、未プロセシングの前駆体がいくつかの生物学的機能を発揮しうるかまたは部分的に活性でありうることも想像しうることを理解するであろう。本明細書で使用する用語「生物学的特性」は(a)受容体結合、(b)内部移行、(c)エンドソーム膜を横切る細胞基質中への転位、および/または(d)シナプス小胞膜融合に関わるタンパク質の細胞内タンパク質分解切断を意味する。生物学的活性を評価するin vivoアッセイとしては、Pearceら(Pearce 1994, Toxicol Appl Pharmacol 128: 69-77)およびDresslerら(Dressler 2005, Mov Disord 20:1617-1619, Keller 2006, Neuroscience 139: 629-637)が記載したマウスLD50アッセイおよびex vivoマウス片側横隔膜アッセイが挙げられる。生物学的活性は通常マウス単位(MU)で表現される。本明細書で使用する1 MUは、腹腔内注入後に特定マウス集団の50%が死滅する神経毒成分の量、すなわちマウスi.p. LD50である。さらなる態様において、変異体ポリヌクレオチドは改善もしくは改変された生物学的特性を有する神経毒をコードしてもよく、例えば、これらは酵素認識について改善された切断部位を含んでもよくまたは受容体結合もしくは上記のいずれかの他の特性について改善されたものであってもよい。
【0012】
さらに、一態様において包含されるのは、検出可能マーカーペプチドまたはタグをさらに含む融合ポリペプチドである。一態様において、好適なタグはFLAG-タグ、Myc-タグまたはHis-タグであり、これらのタグはより効率的なタグ付きポリペプチドの精製も可能にする。検出可能マーカーには、一態様において、蛍光タンパク質、例えばGFP、BFPなどが含まれる。なおさらなる態様において、変異体ポリヌクレオチドは、異なる血清型の少なくとも2つの神経毒ポリペプチドの一部分を含む融合神経毒ポリペプチド、例えば、BoNT/Aの重鎖およびBoNT/Eの軽鎖を含む融合神経毒をコードするであろう。
【0013】
本発明のポリヌクレオチドがコードする神経毒ポリペプチドはさらに、その軽鎖に少なくとも1つの分解シグナルを含む。本発明の態様において、本発明のポリヌクレオチドがコードする神経毒ポリペプチドの前記軽鎖は、上述の特定の核酸配列もしくは上記のその変異体のいずれか1つを含むポリヌクレオチドがコードする軽鎖からの改変により得られる。神経毒ポリペプチドの軽鎖は前駆体ポリペプチド(一本鎖ポリペプチド)のタンパク質分解切断により作製される。軽鎖はタンパク質分解切断の結果として得た前駆体ポリペプチドのN末端部分である。以上言及した神経毒ポリペプチドの軽鎖のアミノ酸配列は、一態様において、次表に示した切断部位から推論することができる。
【表1】

【0014】
本明細書で使用する用語「分解シグナル」は、神経毒を施用した生物内に存在する内因性分解経路による神経毒ポリペプチドの分解の増加をもたらす神経毒ポリペプチドの軽鎖の改変を意味する。一態様において、分解経路はプロテアソーム分解経路またはリソソーム分解経路でありうる。他の態様において、分解経路は単に神経毒ポリペプチドの部分分解を、例えば、1以上のタンパク質分解切断ステップによりもたらす。前記分解シグナルは軽鎖中に導入しても(すなわち軽鎖内に(内部に)位置しても)またはそのN-またはC-末端に連結してもよい。当業者は好適な分解シグナルおよびそれらを神経毒ポリペプチドの軽鎖に導入または連結する方法を周知している。さらに、当業者は、組換え分子生物学技法または化学改変を応用することにより少なくとも1つの分解シグナルをもつかかる神経毒ポリペプチドをコードするするポリヌクレオチドを作製することができる。例えば、部位特異的突然変異誘発を用いて、以下に言及した分解シグナルを導入することができる。代わりに、神経毒ポリペプチドおよび想定する分解シグナルをコードする配列を含むポリヌクレオチドに対する核酸配列を設計し、その後、全体のポリヌクレオチドを化学合成することができる。
【0015】
一態様において、前記分解シグナルは、
a)少なくとも1つの内部または末端に導入されたPESTモチーフ、
b)少なくとも1つの内部または末端に導入されたE3リガーゼ認識モチーフ、
c)N末端オリゴ-リシン残基、
d)N末端に連結されたユビキチン、
e)N末端プロリンの塩基性アミノ酸による置換、
f)表面提示されたアミノ酸残基のリシンによる置換、および
g)N末端プロリンの塩基性アミノ酸による置換と表面提示されたアミノ酸残基のリシンによる置換との組み合わせ
からなる群より選択される。
【0016】
一態様において、E3リガーゼ認識モチーフは下表に示したコンセンサス配列を有する(ここで「X」は任意の天然アミノ酸を表す):
【表2】

【0017】
PESTモチーフは当技術分野で分解シグナルとして周知である(Rogers 1986, Science 234: 364-368、Rechsteiner 1996, TIBS 21: 267-271、Belizario 2008, Science 9: 210-220)。一態様において、PESTモチーフはRechsteiner 1996, TIBS 21: 267-271, Table 1(本明細書に参照により組み込まれる)において、次のタンパク質:GCN4、IκBα、Fos、オルニチンデカルボキシラーゼ、Cactus、CLN2、CLN3またはNIMAの任意の1つについて開示された配列を有する。
【0018】
本発明のポリヌクレオチドがコードする改変された神経毒ポリペプチドは、未改変の神経毒ポリペプチドと比較して、投与時に被験者における生物学的効果の持続時間の低下を示しうる。一態様において、被験者で観察される前記生物学的効果は筋肉麻痺、すなわち、筋肉の収縮能力の不活性化を生じるものである。一態様において、前記効果はいわゆるマウス走行アッセイにより試験することができる(Keller 2006, Neuroscience 139: 629-637)。当業者は前記生物学的効果を手間をかけずに確認することができる。生物学的効果の持続時間の低下は、一態様において、統計的に有意な持続時間の低下を意味する。効果の持続時間が統計的に有意に低下したかどうかは、当業者が標準の統計的検定、信頼区間の決定、p-値決定、スチューデントt-検定、マン・ホイットニー検定などを応用することにより決定することができる。好ましい信頼区間は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。p-値は好ましくは、0.1、0.05、0.01、0.005、または0.0001である。好ましくは、本発明で想定される確率は、診断が所与のコホートまたは集団の被験者の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%について正しいことを可能にするものである。一態様において、前記持続時間の低下は、通常の持続時間、すなわち、未改変の神経毒ポリペプチドについて観察される持続時間の75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、30%未満または20%未満、持続する。一態様において、通常の持続時間は、BoNT/Aの場合におよそ4か月、BoNT/Bの場合におよそ2か月、BoNT/Cの場合におよそ3〜4か月、またはBoNT/Eの場合におよそ4週間持続する(Foran, J Biol. Chem. 278(2): 1363-1371、Eleopra 1998, Neurosci Lett. 13, 256(3): 135-138、Eleopra 1997, Neurosci Lett. 14,224(2): 91-94、Sloop 1997, Neurology 49(1): 189-194、Washbourne 1998, J Physiol Paris 92(2): 135-139)。効果の持続時間は被験者における個々の影響、例えば、遺伝的背景、年齢、生活スタイルなどに依存し、それ故に、本明細書で意味するおおよその持続時間は、それぞれの神経毒ポリペプチド(例えば、BoNT/Aについては4ヶ月またはBoNT/Eについては4週間)に対して、25%以下、20%以下、15%以下、10 %以下、または5%以下の標準偏差で、以上に示した持続時間であることを意味する。
【0019】
有利なことに、本発明によると、投与時に被験者における生物学的効果の短縮を示すように神経毒ポリペプチドを改変できることが見出された。原則として、これは分解シグナルを前記神経毒ポリペプチドの軽鎖に導入もしくは連結することにより達成することができる、というのは、軽鎖の持続性が生物学的効果の持続期間と相関があるからである。神経毒ポリペプチドが誘発する生物学的効果の持続時間の短縮は、神経作用の不活性化、例えば、創傷治癒を促進するための筋肉麻痺を必要とする様々な医学的応用に有利である。
【0020】
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
【0021】
用語「ベクター」は、好ましくは、ファージ、プラスミド、ウイルスまたはレトロウイルスベクターならびに人工染色体、例えば細菌または酵母の人工染色体を包含する。さらに、この用語はまた、標的化構築物のゲノムDNA中への無作為または部位指定組込みが可能になる標的化構築物に関する。かかる標的化構築物は、好ましくは、以下に詳しく記載した相同的または異種組換えにとって十分な長さのDNAを含むものである。本発明のポリヌクレオチドを包含するベクターは、一態様において、さらに宿主における繁殖および/または選択のための選択マーカーを含む。このベクターは当技術分野で周知の様々な技法により宿主細胞中に組込むことができる。例えば、プラスミドベクターを沈降物、例えばリン酸カルシウム沈降物または塩化ルビジウム沈降物に、または帯電脂質との複合体にまたは炭素系クラスター、例えばフラーレンに導入することができる。あるいは、プラスミドベクターを熱ショックまたはエレクトロポレーション技法により導入することができる。ベクターがウイルスであれば、宿主細胞への施用前に適当なパッケージング細胞株を用いてin vitroでパッケージすることができる。レトロウイルスベクターは複製コンピテントまたは複製不全であってもよい。後者の場合、ウイルス繁殖は一般にコンピテント宿主/細胞だけで起こりうる。さらに、本発明の一態様において、ポリヌクレオチドは発現制御配列と機能しうる形で連結され、原核生物もしくは真核生物宿主細胞または前記ベクター中の単離画分における発現が可能である。ポリヌクレオチドの発現は、ポリヌクレオチドの翻訳可能なmRNA中への転写を含むものである。宿主細胞における発現を確かなものにする制御エレメントは当技術分野で公知である。一態様において、これらは転写の開始を確かなものにする制御配列および/または転写物の転写の終結および安定化を確かなものにするポリ-Aシグナルを含む。さらなる制御エレメントは転写ならびに翻訳エンハンサーを含んでもよい。原核生物の宿主細胞における発現を可能にする可能性のある制御エレメントには、例えば、大腸菌のlac-、trp-またはtac-プロモーターが含まれ、そして真核生物の宿主細胞における発現を可能にする制御エレメントの例は酵母のAOX1-またはGAL1-プロモーターまたは哺乳動物および他の動物細胞のCMV-、SV40-、RSV-プロモーター(Rous肉腫ウイルス)、CMV-エンハンサー、SV40-エンハンサーまたはグロビンイントロンである。さらに誘導可能な発現制御配列を本発明が包含する発現ベクターに用いることができる。かかる誘導可能なベクターは、tetまたはlacオペレーター配列、または熱ショックもしくは他の環境因子により誘導可能な配列を含んでもよい。好適な発現制御配列は当技術分野で周知である。転写の開始に関わるエレメントだけでなく、かかる制御エレメントはまた、ポリヌクレオチドの下流に転写終結シグナル、例えばSV40-ポリ-A部位またはtk-ポリ-A部位も含みうる。この関係で好適な発現ベクターは、Okayama-Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pBluescript(Stratagene)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogen)またはpSPORT1(Invitrogen)などが当技術分野で公知である。好ましくは、前記ベクターは発現ベクターおよび遺伝子導入または標的化ベクターである。ウイルス由来の発現ベクター、例えば、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、またはウシパピローマウイルスを、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターの標的化した細胞集団中への送達に用いることができる。当技術分野で周知の方法を用いて組換えウイルスベクターを構築することができる;例えば、Sambrook, Molecular Cloning A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y、およびAusubel, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1994)に記載の技法を参照されたい。
【0022】
さらに、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含むものである宿主細胞に関する。
【0023】
本明細書で使用する用語「宿主細胞」は、原核生物および真核生物の宿主細胞を包含する。一態様において、宿主細胞は細菌細胞、そして他の態様において、フィルミクテス門の細菌細胞である。一態様において、前記細菌宿主細胞は大腸菌宿主細胞である。他の態様において、宿主細胞はクロストリジウム属宿主細胞である。さらなる態様において、前記クロストリジウム属宿主細胞はボツリヌス菌宿主細胞、なおさらなる態様において、上述の7種の異なる細胞型のボツリヌス菌の1種である。さらに他の態様において、細菌宿主細胞は破傷風菌宿主細胞である。さらなる態様において、宿主細胞はバシラス菌宿主細胞、そして特定の態様において、バシラス・メガテリウム菌宿主細胞である。真核生物の宿主細胞は、一態様において、毒性タンパク質の産生に好適な動物細胞株の細胞または真菌の宿主細胞、例えば酵母宿主細胞である。
【0024】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドがコードするポリペプチドを包含する。
【0025】
本発明で使用する用語「ポリペプチド」は、他のタンパク質を本質的に含まない単離されたまたは本質的に精製されたポリペプチド(宿主細胞の複合タンパク質(HA70、HA17、HA33、またはNTNH(NBP)))またはさらに他のタンパク質を含むポリペプチド調製物を包含する。さらに、この用語は化学的に改変されたポリペプチドを含む。かかる改変物は、人工の改変物または天然の改変物であってもよい。以上述べたように、本発明のポリペプチドは上記の神経毒ポリペプチドの生物学的特性を有するであろう。さらに、これは投与時に被験者における生物学的効果の持続時間の短縮を示すであろう。本発明のポリペプチドは、一態様において、随所に詳しく記載されたポリペプチドの製造方法により製造することができる。本発明の一態様において、ポリペプチド調製物はまた、神経毒ポリペプチドとその複合化タンパク質の複合体を含むものであると想定している。
【0026】
さらに、本発明は、本発明のポリペプチドと特異的に結合する抗体に関する。
【0027】
本発明のポリペプチドに対する抗体は、公知の方法によって本発明による精製ポリペプチドまたはそれから誘導される好適な断片を用いて調製することができる。抗原として好適である断片は、当技術分野で公知の抗原性を確認するアルゴリズムにより同定することができる。かかる断片は本発明のポリペプチドからタンパク質分解消化により得てもよいし、または合成ペプチドであってもよい。一態様において、本発明の抗体はモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、一本鎖抗体、ヒトまたはヒト化抗体もしくは霊長類化、キメラ化抗体、またはそれらの断片である。また、本発明による抗体として含まれるものは、二重特異性抗体、合成抗体、抗体フラグメント、例えば、Fab、FvもしくはscFvフラグメントなど、またはこれらの化学的に改変された誘導体である。本発明の抗体は、本発明のポリペプチドと特異的に結合するであろう(すなわち、他のポリペプチドまたはペプチドと交差反応しない)。具体的には、本抗体はまた、未改変の神経毒ポリペプチドと交差反応しない。特異的結合は様々な周知の技法により試験することができる。抗体またはそれらのフラグメントは、HarlowおよびLane "Antibodies, A Laboratory Manual", CSH Press, Cold Spring Harbor, 1988に記載の方法を用いて得ることができる。モノクローナル抗体は、本来、Koehlerら(Koehler 1975, Nature 256 (1975), 495)またはGalfre.(Galfre 1981, Meth. Enzymol. 73 (1981))により記載された技法によって調製することができ、前記技法はマウス骨髄腫細胞と哺乳動物(抗原、すなわち、本発明のポリペプチドまたはその免疫原性断片により免疫感作したもの)由来の脾臓細胞との融合を含むものである。抗体は、例えば、本発明のポリペプチドの免疫沈降および免疫局在化に、ならびに、例えば、組換え生物における、前記ポリペプチドの存在のモニタリングに、および本発明によるタンパク質と相互作用する化合物の同定に用いることができる。例えば、BIAcore系で使用される表面プラズモン共鳴を用いて、本発明のタンパク質のエピトープと結合するファージ抗体の効率を増加することができる(Schier
1996, Human Antibodies Hybridomas 7, 97-105; Malmborg 1995, J. Immunol. Methods 183, 7-13)。
【0028】
一般に、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドは医薬として用いることができる。
【0029】
本発明で使用する用語「医薬」は、一態様において、生物学的活性のある神経毒ポリペプチドまたはそれを医薬活性化合物としてコードするポリヌクレオチドを含有する医薬組成物を意味する。前記医薬は様々な疾患または障害のヒトまたは動物の治療法に治療上有効な用量で用いることができる。前記医薬は所望の施用目的に応じて様々な技法により製剤化することができる。本発明による医薬の色々な態様を本明細書において以下に記載する。
【0030】
一態様において、本医薬は生物学的活性のある本発明の神経毒ポリペプチドおよび1種以上の製薬上許容される担体を医薬組成物として含むものである。製薬上許容される1種以上の担体は製剤の他の成分と共存し得てかつその受給者にとって有害でないという意味で許容されなければならない。使用する医薬担体としては、固体、ゲル、または液体が挙げられる。固体担体の例は、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などである。液状担体の例はグリセロール、リン酸緩衝化生理食塩水、水、乳濁液、様々なタイプの湿潤剤などである。好適な担体は以上述べたものならびに当技術分野で周知のものを含み、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvaniaを参照されたい。担体はまた、特に、医薬活性成分が本発明のポリヌクレオチドであれば、遺伝子治療用に好適なウイルスまたはレトロウイルスであってもよいことは理解されるであろう。
【0031】
一態様において、本医薬は希釈剤に溶解した後に投与するであろう。希釈剤はまた、その組み合わせの生物学的活性に影響を与えないように選択される。かかる希釈剤の例は蒸留水または生理食塩水である。さらに、医薬組成物または製剤は、他の担体または無毒、非治療用、非免疫原性の安定剤などを含んでもよい。従って、本発明の神経毒ポリペプチドは、一態様において、液状または凍結乾燥形態で存在してもよい。一態様において、本発明の神経毒ポリペプチドは、グリセロール、タンパク質安定剤(HSA)または非タンパク質安定剤(例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒアルロン酸もしくはフリーのアミノ酸)と一緒に存在してもよい。一態様において、好適な非タンパク質安定剤はWO2005/007185またはWO2006/020208に開示されている。
【0032】
他の態様において、本医薬は神経毒ポリペプチドを含有する溶液として提供しうる。さらに、溶液は上述の担体または安定剤を含有してもよい。神経毒ポリペプチドの安定な液状製剤は米国特許第7,211,261号が開示する態様で提供することができる。
【0033】
本医薬組成物は、一態様において、局所投与される。通常、本医薬は、所望の医療適用に応じて筋肉内または皮下(腺近くに)に投与しうる。しかし、化合物の性質と作用機序に応じて、医薬組成物は他の経路によって投与してもよい。
【0034】
治療上有効な用量は、本明細書で言及する症状または疾患に付随する症候群を予防、改善または治療する本発明の神経毒ポリペプチドまたはそのポリヌクレオチドの量を意味する。本化合物の治療効力と毒性は、細胞培養または実験動物における標準製薬手順、例えば、ED50(集団の50%に治療効果のある用量)およびLD50(集団の50%に致死性である用量)により確認することができる。治療効果と毒性効果の間の用量比が治療指数であり、これはLD50/ED50で表される。本発明の医薬は、一態様において、個々の受給者に応じた用量調節を予測する目的で、処方者または使用者説明書に投薬推奨を含むものでありうる。
【0035】
本明細書で言及する医薬は、本明細書に記載した疾患または症状を治療または改善または予防する目的で少なくとも1回投与するように開発される。しかし、前記医薬を1回以上投与してもよい。
【0036】
本発明による医薬は、本発明のさらなる態様において、生物学的活性のある神経毒ポリペプチドに加えて、その製剤化中に医薬組成物に加える薬物を含んでもよい。
【0037】
さらに、本発明は、創傷治癒、骨および腱骨折治療のための固定、特に、痔核切除術、歯移植片の導入、もしくは股関節置換術(endoprothesis)に関する手術後の固定、ひざ関節形成術、眼科手術、ざ瘡、または過敏性腸疾患を治療する医薬を調製するための、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドの使用に関する。
【0038】
前記医学的症状または疾患に関連する症候群は当業者には周知であり、医学の標準的教科書、例えば、ステッドマン(Stedman)またはシレンベル(Pschyrembl)に記載されている。
【0039】
さらに本発明はまた、被験者が神経毒治療法に感受性があるかどうかを確認する診断医薬を調製するための、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの使用に関する。
【0040】
以上言及した診断医薬は以上言及した神経毒ポリペプチド医薬である。しかし、本医薬は、一時的にかつ単に被験者が神経毒ポリペプチドにそもそも応答するかどうかの確認または好適な投薬レジメンの確認を可能にする投薬レジメンで施用されるであろう。前記神経毒ポリペプチドは(その上、治療能力を有するとしても)、この態様において、治療または改善のためより主に診断の目的で使用されるので、これを含有する医薬は「診断医薬」と呼ばれる。従って、改変された神経毒ポリペプチドによるかかる時間の限られた予備スクリーニングは、未改変の神経毒を用いる治療法に感受性のある被験者を選択する上で、ならびに好適な投薬を確認する上で手助けになりうる。通常さらに長時間にわたって持続しうる未改変の神経毒に基づく治療法の潜在的副作用を、本発明の改変された神経毒ポリペプチドが誘発する生物学的効果の持続時間の低下によって低減することができる。
【0041】
本発明は本発明のポリヌクレオチドがコードする神経毒ポリペプチドの製造方法を包含するものであって、
a)本発明の宿主細胞を本発明のポリヌクレオチドがコードする神経毒ポリペプチドの発現を可能にする培養条件のもとで培養するステップ、および
b)ステップa)の宿主細胞培養から本発明のポリヌクレオチドがコードする神経毒ポリペプチドを得るステップを含むものである。
【0042】
本ポリペプチドは、一態様において、アフィニティクロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)および沈降技法(抗体沈降を含む)を含む、全ての通常の精製技法により培養から得ることができる。さらに、一態様において、本発明の方法により得る神経毒ポリペプチドは複合化タンパク質を含まなくてもよい。他の態様において、神経毒ポリペプチドは神経毒ポリペプチドに加えて複合化タンパク質を含む複合体として取得することができる。さらに、本明細書で使用する取得という用語は、神経毒ポリペプチドの活性化を含む。この活性化は(一本鎖)神経毒ポリペプチド前駆体のタンパク質分解切断により達成することができ、この切断は、細胞内で、内因性または外因性(例えば、組換え発現された)プロテアーゼによって、または細胞外で、例えば、上述の精製の前、中、または後に、切断可能な条件下で、神経毒ポリペプチドをプロテアーゼと接触させることによって行うことができる。
【0043】
さらに、本発明による医薬を製造する方法に関し、前記方法は本発明の上述の方法のステップおよび本発明のポリヌクレオチドがコードする神経毒ポリペプチドを医薬として製剤化するさらなるステップを含むものである。
【0044】
医薬を製造するためのかかる方法は、品質、医薬の安全、および医薬の効力を保証するために、医薬に対するGMP標準により行うことは理解されるであろう。医薬の好適な製剤は本明細書の随所に記載されている。当業者は、しかし、どうすればかかる製剤を作ることができるかを周知している。
【0045】
本発明はまた、本発明の方法のステップおよび神経毒ポリペプチドを化粧組成物として製剤化するさらなるステップを含むものである化粧組成物を製造する方法も包含する。
【0046】
本明細書で使用する「化粧組成物」は上記の医薬組成物について記載したように製剤化することができる。化粧組成物についても、同様に、本発明の化合物は一態様において、実質的に純粋な形態で用いることを想定している。不純物は、しかし、医薬に対するほど致命的でないかも知れない。化粧組成物は、さらなる態様において、筋肉内で施用される。本発明のなおさらなる態様において、神経毒を含有する化粧組成物は抗しわ剤として製剤化することができる。
【0047】
本発明はまた、かかる化粧組成物、および抗しわ剤として使う化粧組成物を調製するための本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドの使用に関する。
【0048】
本明細書に引用した全ての参考文献は、その全ての開示内容および本明細書で特に記載した開示内容について、本明細書に参照により組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者における生物学的効果の持続時間の低下を示す神経毒ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、前記ポリペプチドはその軽鎖に少なくとも1つの分解シグナルを含む、上記ポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記生物学的効果が被験者の筋肉麻痺を生じる、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記持続時間の低下が4、3または2週間未満、持続する、請求項1または2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記分解シグナルが
a)少なくとも1つの内部または末端に導入されたPESTモチーフ;
b)少なくとも1つの内部または末端に導入されたE3リガーゼ認識モチーフ;
c)N末端オリゴ-リシン残基;
d)N末端に連結されたユビキチン;
e)N末端プロリンの塩基性アミノ酸による置換;
f)表面提示されたアミノ酸残基のリシンによる置換;および
g)N末端プロリンの塩基性アミノ酸による置換と表面提示されたアミノ酸残基のリシンによる置換との組み合わせ
からなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
ポリペプチドの前記軽鎖が、
a)配列番号1、3、5、7、9、11、13または15に示したヌクレオチド配列を有する核酸配列;
b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、または16に示したアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列;および
c)a)またはb)の核酸配列と少なくとも40%同一である核酸配列
からなる群より選択される核酸配列を含むポリヌクレオチドがコードする軽鎖から、改変により得たものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項6に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項8】
前記細胞が大腸菌細胞またはクロストリジウム菌もしくはバシラス菌細胞である、請求項7に記載の宿主細胞。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドがコードするポリペプチド。
【請求項10】
請求項9のポリペプチドと特異的に結合する抗体。
【請求項11】
医薬として使用するための請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
医薬として使用するための請求項9に記載のポリペプチド。
【請求項13】
創傷治癒、骨および腱骨折治療のための固定、特に痔核切除術、歯移植片の導入、もしくは股関節置換術(endoprothesis)に関する手術後の固定、ひざ関節形成術、眼科外科、ざ瘡、または過敏性腸疾患の治療用医薬を調製するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項9に記載のポリペプチドの使用。
【請求項14】
a)請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドがコードする神経毒ポリペプチドの発現を可能にする条件のもとで請求項7に記載の宿主細胞を培養するステップ、および
b)請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドがコードする神経毒ポリペプチドをa)の細菌培養から取得するステップ
を含むものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドがコードする神経毒ポリペプチドを製造する方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法のステップおよび請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドがコードする神経毒ポリペプチドを医薬として製剤化するさらなるステップを含む、医薬の製造方法。

【公表番号】特表2012−531191(P2012−531191A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516796(P2012−516796)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059398
【国際公開番号】WO2011/000929
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(511202045)メルツ ファルマ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲーアーアー (4)
【Fターム(参考)】