説明

短繊維状物定量供給装置

【課題】ハンドリング性を向上させるために集束させた短繊維状物の集束を解かずに供給することを目的とする短繊維状物の定量供給装置の提供。
【解決手段】材料を貯蔵するホッパ部1とその下部に材料を排出するための導入部2および、筒状の排出部を設けたホッパを持ち、導入部2から排出部にかけて、材料を搬出するためのスクリュウ4を持つ材料搬送装置において、導入部下部の相当内半径Rとスクリュウ外半径rとの比R/rが1.1≦R/r≦1.3であり、かつ導入部下部から2Rの部分における開口幅LとRの比L/Rが1.5≦L/R≦2.2であることを特徴とする短繊維状物定量供給装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチックのコンパウンドにおいて、短繊維状物を定量的に供給する装置に関するものであり、さらに詳しくは、収束した短繊維状物の束を解かずに供給するための従来装置の改良に係るものである。
【背景技術】
【0002】
押出機において、樹脂と短繊維状物を混練することで、機械強度を向上させた短繊維強化樹脂ペレットを得ることは一般的に知られており、広く用いられている。
【0003】
その中で短繊維状物を定量供給する方法としては材料を貯蔵するホッパと材料を切り出すスクリュウを持つとともに、ホッパ部からスクリュウ部へ材料を供給する導入部と材料を搬送、排出する排出部で構成されるスクリュウフィーダによって切り出す方法、またはスクリュウフィーダにベルトコンベア状の搬送装置を組み合わせたベルトフィーダが知られているが、どちらの方法においてもスクリュウフィーダによって材料を切り出す部分については共通している。一般的なスクリュウフィーダとして、例えば特許文献1では粒状物のフィーダにおいて、スクリュウ外径と排出口内径の大きさを粒状物の径の2倍よりも大きくすることで、材料を定量的供給できるようにする事が提案されている。
【0004】
一方、短繊維強化樹脂ペレットの製造で用いられる短繊維状物は一般的に、直径が5〜20μm程度の円柱状または同程度の長さの楕円状の断面を持ち、通常、1〜10mm程度の長さの単繊維であるが、押出機までの供給におけるハンドリング性を向上させるために、エポキシ樹脂などの収束剤を用い、幅1〜10mm程度、厚み1mm以下の束状に加工されたものを用いる。
【0005】
短繊維状物を供給するスクリュウフィーダとしては、例えば特許文献2では外周に引っかかりのある棒材を螺旋状に形成したコイルスクリュウを用いることで、短繊維状物がスリップせずに定量供給する事ができるフィーダを提案している。
【0006】
しかしながら、短繊維状物をフィーダで搬送する過程で、短繊維状物にせん断がかかることで、収束が解けて単繊維となることがある。単繊維は搬送性が悪いため、ホッパ内で滞留しやすく、滞留する中で複雑に絡み合い塊を形成することで、ホッパ内でブリッジを形成し閉塞してしまい、短繊維状物の定量供給が困難になる問題があった。
【0007】
そこで、例えば特許文献3では、短繊維状物の供給方法として、材料搬出用のリボンスクリュウの外側に攪拌用のスクリュウを設けることで、短繊維状物の絡み合いを強制的にほぐしつつ、さらに突崩棒により搬出用スクリュウに材料を供給することで安定供給を図る方法を提案している。
【0008】
しかしながら、特許文献3の方法では突出棒や攪拌スクリュウなどの部品が必要となり、装置の構造が複雑になるとともに、攪拌スクリュウによるせん断で短繊維状物の集束を解く効果が促進されるというマイナス効果がある。一旦解けた単繊維になると、フィーダ以降の押出機への供給ラインにおいても、短繊維状物とともに供給される随伴エアや押出機側からのエアの逆流によって、単繊維が舞い上がり、浮遊、滞留する間に静電気によって集束して塊状物を形成し、それが供給ラインを閉塞させる。仮に閉塞しない場合においても塊状物が一気に押出機へ供給されることで、押出機への短繊維状物の供給量が変動する事態が発生する。そうなると、樹脂やその他添加剤との配合比率は所定の処方とはならないため、出来た樹脂ペレットは製品とならず、区分し廃棄せざるを得ないため、その損害は非常に大きいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭50−37170号公報
【特許文献2】特開昭52−140178号公報
【特許文献3】特開昭50−19180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、短繊維状物定量供給装置において、供給装置内で短繊維状物の集束が解けることを抑制し、押出機に至るまで定量供給できる短繊維状物定量供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意検討し、短繊維状物定量供給装置において、短繊維状物の集束を解かずに安定して押出機へ供給する方法を見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明の短繊維状物定量供給装置は、下記(1)の構成からなる。
(1)材料を貯蔵するホッパ部とその下部に材料を排出するための導入部および、筒状の排出部を設けたホッパを持ち、導入部から排出部にかけて、材料を搬出するためのスクリュウを持つ材料搬送装置において、導入部下部の相当内半径Rとスクリュウ外半径rとの比R/rが1.1≦R/r≦1.3であり、かつ導入部下部から2Rの部分における開口幅LとRの比L/Rが1.5≦L/R≦2.2であることを特徴とする短繊維状物定量供給装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、集束された短繊維状物をフィーダで定量供給する際に、集束が解けて単繊維になることを抑制し、安定的に押出機へ供給する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】短繊維状物定量供給装置の概略図
【図2】図1に示した短繊維状物定量供給装置のA−A’断面図(本発明)
【図3】ベルトフィーダ型の短繊維状物定量供給装置の概略図
【図4】比較例2の短繊維状物定量供給装置のA−A’断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の短繊維状物定量供給装置の実施形態などについて図などを用いて説明する。
【0016】
本発明の短繊維状物定量供給装置で搬送される短繊維状物は特に限定しないが、例えばガラス繊維、炭素繊維などが用いられる。また、ハンドリング性向上のため集束剤により、単繊維を集束させた束状で供給される。集束剤ついては特に限定しないが、アクリルやウレタンなどが用いられる。短繊維状物の長さとしては特に限定はしないが、通常1〜10mmのものが用いられる。集束した短繊維状物の幅、厚みについては特に限定されることは無いが、通常1〜10mm程度の幅を持ち、厚みは1mm以下のものがよく用いられる。
【0017】
図1は本発明の一実施形態である短繊維状物定量供給装置の概略断面図である。短繊維状物はホッパ部1に貯蔵され、下部の導入部2へ搬送される。導入部へ供給された短繊維状物はスクリュウ4の回転によって、排出部3へ定量的に搬送される。排出部においても同様にスクリュウ4の回転によって、排出部出口から次工程へ供給される。短繊維状物の供給量はスクリュウ回転数を変化させることによって任意に調整する事が出来るが、さらに定量性を高めるために装置全体の重量を秤で測定しながら、単位時間当たりの重量変化量をもとに単位時間当たりの供給量を計算し、目的の供給量に合致するようにスクリュウ回転数を自動調整する機構を備えても良い。
【0018】
本装置において、ホッパ部1、導入部2、排出部3、スクリュウ4の材料としては特に限定されないが、加工のしやすさや短繊維状物との接触摩耗による異物混入を避けるために強度のある金属材料を用いることが好ましい。また、金属材料としては特に限定しないが、長期使用における錆の発生による金属異物混入を避けるためにステンレスを用いる事がより好ましい。
【0019】
ホッパ部1の容積は供給量に見合う貯蔵量にする事が出来る。また、傾斜角度は短繊維状物の流動が抑制されない範囲で任意に設定する事が出来る。
導入部2は、短繊維状物の滞留を防止するために、少なくとも下部については半円形状である必要がある。
【0020】
排出部3は、導入部と同様に短繊維状物の滞留を防止するために断面が円形状である必要がある。任意に径を設定できるが、導入部との境界部での滞留を防止するために、導入部と同径または導入部より大きい事が好ましく、導入部での滞留を防止するために導入部と同型である事が好ましい。また、その排出部の出口の形状については特に限定はされず、短繊維状物をそのまま水平方向へ排出することや、排出部下部を一部切り欠いて下部方向に排出する事も出来る。
【0021】
スクリュウ4はその回転により短繊維状物を搬送する働きをするために螺旋状の形状を持つ。また、短繊維状物の圧縮による閉塞を防止するためにコイル形状をしている事が好ましいが、スクリュウ強度向上のため、中心に軸を有し、コイル状スクリュウとの間に隙間を有した状態で連結した形状をとることができる。また、コイル状スクリュウには短繊維状物のスリップを防止するために棒材を使用することが好ましい。
【0022】
図2は図1に示した短繊維状物定量供給装置のA−A’断面図であり、Rは導入部下部の相当内半径、rはスクリュウ外半径、Lは導入部下部から2Rの部分での開口部を示す。ここでR/rは1.1〜1.3にする必要がある。1.1より小さい場合、短繊維状物がスクリュウと排出部内径のクリアランスに挟まってしまい、スクリュウの回転がロックする事がある。また、同様にクリアランスに挟まると、スクリュウ軸が芯ズレを起こし、スクリュウと排出部内壁が接触することで、スクリュウや排出部の欠損による異物混入が発生する事があるため好ましくない。1.3より大きくなると、スクリュウの回転による搬送力が及ばない空間が出来、搬送されない短繊維状物の滞留が発生し搬送される短繊維状物の摩擦により、集束が解ける現象が発生し、単繊維になった繊維が再集束し、塊を形成することによって定量供給性が確保できなくなる。Rとrは短繊維状物の供給量によって任意に設定する事が出来るが、物理的に短繊維状物が供給できないほど小さい形状にする事は出来ない。
【0023】
また、L/Rについては、1.5〜2.2にする必要がある。2.2より大きいと、スクリュウの回転による搬送力が及ばない空間が出来、搬送されない短繊維状物の滞留が発生し搬送される短繊維状物の摩擦により、集束が解ける減少が発生し、単繊維になった繊維が再集束し、塊を形成することによって定量供給性が確保できなくなるため好ましくない。一方、Lが小さい場合、スクリュウ径rが大きい場合または短繊維状物の供給量が少ない場合においては、供給量を満足する能力を持つ事が出来るが、導入部への短繊維状物の供給量が制限され、導入部への短繊維状物の充填率が不安定になるため、定量性を保つ事が難しくなる。よって、1.5以上である必要があり、好ましくは1.8以上である。
Rについては短繊維状物が搬送されるだけの大きさが必要であり、下限は供給対象となる短繊維状物の形状に支配される。具体的には短繊維状物の長さと幅のうち、大きい方に対して2倍以上である事が好ましい。
【0024】
また、図3は図1に示したスクリュウフィーダの後工程にベルト搬送装置を設置したベルトフィーダ状の供給装置の概略図であり、本発明の一実施形態である。本形態の装置において、スクリュウフィーダから短繊維状物はベルト5の上に供給される。モーターに接続されたベルト駆動軸6の回転により、排出口8に向かって搬送され、排出口から次工程へ搬送される。ベルトフィーダケーシング7は機械保護ならびに外部からの異物混入するのを防ぐ目的で設置されている。本形態の装置において短繊維状物の供給量の定量性を高めるために、ベルトの単位長さに積載された短繊維状物重量を連続的に秤で測定し、単位時間当たりのベルト移動量との積で単位時間当たりの供給量を自動計算し、目的の供給量に合致するようにベルト回転数を自動調整する機構を備えても良い。
【0025】
ベルト5の材質としては特に限定されないが、耐久性、柔軟性に優れた材料が用いられ、例えばポリウレタンなどの材料が用いられる。また、ベルトフィーダケーシング7の材質としては特に限定されないが、加工性、強度面から金属材料が用いられることが多く、錆の発生による異物混入防止の観点から、耐錆処理を施すかまたはステンレスを使用する事が好ましい。また、内部の確認や清掃を行うために、ケーシングの側面や上部を取り外せるような構造にすることが出来る。
【実施例】
【0026】
次に実施例及び比較例によって、本発明の効果を具体的に説明する。
【0027】
本実施例では図3に示したベルトフィーダの例である株式会社クボタのワイドレンジベルトウェイングフィーダを用いて、日本電気硝子株式会社のガラス繊維の供給を行った。
【0028】
本実施例及び比較例では、ガラス繊維を最大で400時間連続的に供給し、連続供給可能な時間、ならびに排出口でのガラス繊維の集束状態の相対評価を実施した。ワイドレンジベルトウェイングフィーダ、ガラス繊維、評価方法について以下に説明する。
【0029】
(1)ベルトフィーダ
本実施例及び比較例に使用したベルトフィーダは以下の通りである。
制御機構としてはベルト上の短繊維状物の秤量とベルト速度によって、単位時間あたりの供給量を調整するとともに、スクリュウの回転数を自動調整することによってベルト上に供給する短繊維状物の量を自動調整する。
【0030】
名称 :ワイドレンジベルトウェイングフィーダ(株式会社クボタ)
型式 :BW−300−2B
ベルト幅 :300mm
ベルト部秤量:1kg
秤部働長 :250mm
ベルト速度 :0.833〜4.167m/min
【0031】
(2)ガラス繊維
本実施例及び比較例に使用したガラス繊維の特性は以下の通りである。
材料 :ガラス繊維 CS03T−120H(日本電気硝子(株))
形状
ガラス単繊維:繊維径=9.5〜11.5μm
長さ =2〜4mm
ガラス繊維束:平均幅=2mm
厚み =0.5mm以下
【0032】
(3)スクリュウ、排出部形状
本実施例及び比較例に使用したスクリュウ排出部形状は以下の通りである。
【0033】
実施例1
導入部下部の相当内半径 R=32.5mm
スクリュウ外径 r=25mm(R/r=1.3)
導入部下部から2Rの部分における開口部 L=65mm(L/R=2)
【0034】
比較例1
導入部下部の相当内半径 R=47.5mm
スクリュウ外径 r=32.5mm(R/r=1.46)
導入部下部から2Rの部分における開口部 L=95mm(L/R=2)
【0035】
比較例2
導入部下部の相当内半径 R=40mm
スクリュウ外径 r=32.5mm(R/r=1.23)
導入部下部から2Rの部分における開口部 L=95mm(L/R=2.375)。
【0036】
(4)評価方法
本実施例及び比較例における評価は、ガラス繊維を300kg/hrの供給量で連続供給し、連続供給可能な時間、ならびに排出口でのガラス繊維の集束状態の相対評価を実施した。なお、連続供給可能時間についてはn=3で実験を行いその平均値で評価した。
【0037】
実施例及び比較例の結果を表1に示す。比較例では収束が解け、排出口で塊状物が発生するとともに、塊状物がホッパ内でも発生し、ブリッジを形成することでフィーダ自身の調整範囲では所定供給量を達成できずに、供給不良を起こす現象が確認された。一方、実施例では排出口での集束短繊維状物の解繊が抑制されており、フィーダとしても400時間の連続運転においてトラブルなく供給可能な事がわかる。
【0038】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明により得られる短繊維状物定量供給装置は、短繊維状物強化プラスチックを製造する際に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 ホッパ部
2 導入部
3 排出部
4 スクリュウ
5 搬送ベルト
6 ベルト駆動軸
7 ベルトフィーダケーシング
8 排出口
R 導入部下部の相当内半径
r スクリュウ外半径
L 導入部下部から2Rの部分における開口部L

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を貯蔵するホッパ部とその下部に材料を排出するための導入部および、筒状の排出部を設けたホッパを持ち、導入部から排出部にかけて、材料を搬出するためのスクリュウを持つ材料搬送装置において、導入部下部の相当内半径Rとスクリュウ外半径rとの比R/rが1.1≦R/r≦1.3であり、かつ導入部下部から2Rの部分における開口幅LとRの比L/Rが1.5≦L/R≦2.2であることを特徴とする短繊維状物定量供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−110904(P2011−110904A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271737(P2009−271737)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】