説明

石油樹脂組成物、接着剤組成物およびその製造方法

【課題】 接着性が高く、色調が良好で、しかも臭気の改善された石油樹脂組成物、およびこの石油樹脂組成物を含有する接着剤組成物ならびにその製造方法を提供すること。
【解決手段】 石油樹脂系の非水添炭化水素樹脂を含有する石油樹脂組成物であって、前記石油樹脂組成物を、温度150℃、30分間の条件で加熱した場合におけるガス中のアルデヒドの濃度が、15ppm以下、酸の濃度が、5ppm以下である石油樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油樹脂組成物、接着剤組成物およびその製造方法に係り、さらに詳しくは、接着性が高く、色調が良好で、しかも臭気の改善された石油樹脂組成物および接着剤組成物ならびにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体などの熱可塑性高分子化合物と、粘着付与剤と、からなる熱溶融型接着剤が、様々な分野で用いられている。
【0003】
このような熱溶融型の接着剤に含まれる粘着付与剤としては、たとえば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、およびこれらの水素添加物などが用いられている。これらのなかでも、特に、工業生産に適しており、しかも品質安定性が高いという理由より、石油樹脂が好適に使用されている。石油樹脂は、通常、塩化アルミニウムを重合触媒として用い、石油精製における特定の留分を重合して製造される。
【0004】
また、上記のような石油樹脂を含む熱溶融型接着剤を、たとえば、使い捨て紙おむつ、衛生ナプキンなどの衛生用品に使用する場合には、これらの製品が一般消費者向けの製品であるため、見かけ上の商品価値を損なわないよう、色調が良好であることが求められている。
【0005】
ところが、上記のような石油樹脂は、暗色を呈しており、色調が良好でないため、衛生用品の熱溶融型接着剤に使用するには不適当であった。そのため、石油樹脂を、衛生用品の熱溶融型接着剤として使用する際には、水素添加物とすることにより、色調を向上させることが行われていた。しかしながら、このように石油樹脂を水素添加物とするためには、水素添加工程が必要となることや、製造コストが上昇してしまうという問題があった。
【0006】
本出願人は、水素添加を行なわなくても、色調の良好な石油樹脂を得るための方法を、以下に示す特許文献1および2において、既に提案している。特許文献1においては、所定の特性を有する石油樹脂系炭化水素樹脂に、2,2,6,6−テトラアルキル−4−ピペリジル基を有する抗酸化剤を含有させることにより、色調の改善を達成している。また、特許文献2では、炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体単位30〜95重量%およびスチレン単位70〜5重量%からなる石油樹脂において、軟化点や、重量平均分子量などを制御することにより、色調の改善を達成している。
【0007】
そして色調が改善された結果、上述の衛生用品への展開の可能性が大幅に向上した。しかしその一方で、上述の衛生用品においては、色調が良好であると同時に、一般消費者に不快感を与えないようにするために、臭気が低いことも要求されている。したがって、これら非水添系の石油樹脂において、臭気のさらなる改善が望まれていた。
【0008】
【特許文献1】特開2003−213073号公報
【特許文献2】国際公開第2004/65439号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、接着性が高く、色調が良好で、しかも臭気の改善された石油樹脂組成物、およびこの石油樹脂組成物を含有する接着剤組成物ならびにその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、石油樹脂組成物を所定条件下で加熱した際におけるガス中の特定成分の含有量を一定量に制御することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の第1の観点に係る石油樹脂組成物は、
石油樹脂系の非水添炭化水素樹脂を含有する石油樹脂組成物であって、
前記石油樹脂組成物を、温度150℃、30分間の条件で加熱した場合におけるガス中のアルデヒドの濃度が、15ppm以下である。
【0012】
本発明の第2の観点に係る石油樹脂組成物は、
石油樹脂系の非水添炭化水素樹脂を含有する石油樹脂組成物であって、
前記石油樹脂組成物を、温度150℃、30分間の条件で加熱した場合におけるガス中の酸の濃度が、5ppm以下である石油樹脂組成物。
【0013】
本発明の第1の観点および第2の観点の石油樹脂組成物において、好ましくは、
前記石油樹脂組成物を、温度150℃、30分間の条件で加熱した場合におけるガス中のアルデヒドの濃度が、15ppm以下であり、かつ、酸の濃度が、5ppm以下である。
【0014】
本発明において、「ガス中のアルデヒドの濃度」及び「ガス中の酸の濃度」とは、前記石油樹脂組成物を、温度150℃、30分間の条件で加熱した場合に該石油樹脂組成物から放出されたアルデヒド又は酸の、加熱雰囲気に対する濃度のことであり、具体的には、該石油樹脂組成物から放出されたアルデヒド又は酸の、例えば該石油樹脂組成物1gにつき12mlの体積分率を有する空間中の濃度が前記規定範囲にあれば本発明の石油樹脂組成物の技術的範囲に含まれる。
【0015】
また、前記「ガス中のアルデヒドの濃度」および前記「ガス中の酸の濃度」は、それぞれ、アセトアルデヒド換算および酢酸換算の濃度である。
これらの濃度の測定方法としては、特に限定されないが、たとえば、アセトアルデヒドまたは酢酸を検知可能な検知管を使用して測定することができる。具体的には、石油樹脂組成物10gを、120mlの容積中で加熱し、この石油樹脂組成物から発生したアセトアルデヒドまたは酢酸を、120mlの容積中に拡散させた場合における、アセトアルデヒドまたは酢酸の含有割合を測定することにより求めることができる。
なお、本発明において、非水添炭化水素樹脂とは、臭素価から算出される不飽和結合の量が、10[g/100g]以上である炭化水素樹脂を意味する。
【0016】
本発明の第3の観点に係る石油樹脂組成物は、石油樹脂系の非水添炭化水素樹脂を含有する石油樹脂組成物であって、リン系老化防止剤と、ヒンダードフェノール系老化防止剤および/またはヒンダードアミン系老化防止剤と、を含む。
第3の観点においては、石油樹脂系の非水添炭化水素樹脂に、リン系老化防止剤と、ヒンダードフェノール系老化防止剤および/またはヒンダードアミン系老化防止剤と、を含有させることにより、石油樹脂組成物を加熱した際におけるガス中のアルデヒド濃度、酸濃度を低減させることができる。
【0017】
第3の観点において、好ましくは、前記石油樹脂組成物を、温度150℃、30分間の条件で加熱した場合におけるガス中のアルデヒドの濃度が、15ppm以下である。
あるいは、前記石油樹脂組成物を、温度150℃、30分間の条件で加熱した場合におけるガス中の酸の濃度が、5ppm以下であることが好ましい。
より好ましくは、前記石油樹脂組成物を、温度150℃、30分間の条件で加熱した場合におけるガス中のアルデヒドの濃度が、15ppm以下であり、かつ、酸の濃度が、5ppm以下である。
【0018】
第3の観点において、前記リン系老化防止剤の含有量は、石油樹脂組成物全体100重量部に対して、0.08〜1.5重量部であることが好ましい。また、前記ヒンダードフェノール系老化防止剤および/またはヒンダードアミン系老化防止剤の含有量は、石油樹脂組成物全体100重量部に対して、0.1〜1.5重量部であることが好ましい。
【0019】
本発明の第1〜第3の観点に係る石油樹脂組成物において、好ましくは、前記石油樹脂系の非水添炭化水素樹脂は、炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体単位を含む樹脂である。
【0020】
本発明の接着剤組成物は、上記いずれかの石油樹脂組成物と、熱可塑性高分子化合物と、を含む接着剤組成物であって、
前記石油樹脂組成物の含有量が、前記熱可塑性高分子化合物100重量部に対して、30〜400重量部である。
【0021】
本発明の接着剤組成物の製造方法は、
上記の接着剤組成物を製造する方法であって、
前記石油樹脂系の非水添炭化水素樹脂と、前記熱可塑性樹脂高分子化合物と、を混合する工程を有し、
前記石油樹脂系の非水添炭化水素樹脂と、前記熱可塑性樹脂高分子化合物と、を混合する前に、予め前記石油樹脂系の非水添炭化水素樹脂に、老化防止剤を含有させておくことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、接着性が高く、色調が良好で、しかも臭気の改善された石油樹脂組成物、およびこの石油樹脂組成物を含有する接着剤組成物、ならびにその製造方法を提供することができる。そのため、本発明により提供される接着剤組成物は、使い捨て紙おむつや、衛生ナプキンなどの衛生用品に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の石油樹脂組成物、およびこの石油樹脂組成物を含有する接着剤組成物ならびにその製造方法について、詳細に説明する。
【0024】
石油樹脂組成物
本発明の石油樹脂組成物は、少なくとも、石油樹脂系の非水添炭化水素樹脂を含有する。本発明において、非水添炭化水素樹脂とは、臭素価から算出される不飽和結合の量が、10[g/100g]以上である炭化水素樹脂を意味する。この非水添炭化水素樹脂の臭素価は、15[g/100g]以上であることが好ましく、特に20[g/100g]以上であることが好ましい。
【0025】
そして、本発明の石油樹脂組成物は、温度150℃、30分間の条件で加熱した場合におけるガス中のアルデヒドの濃度が、アセトアルデヒド換算で、15ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは3.5ppm以下である。
【0026】
あるいは、本発明の石油樹脂組成物は、温度150℃、30分間の条件で加熱した場合におけるガス中の酸の濃度が、酢酸換算で、5ppm以下、好ましくは3ppm以下、より好ましくは2ppm以下である。
【0027】
本発明の石油樹脂組成物は、石油樹脂系の炭化水素樹脂として、水素添加していない非水添炭化水素樹脂を含有し、しかも、上記所定条件で加熱した場合におけるガス中のアルデヒドの濃度および/または酸の濃度が、上記所定範囲内に制御されている。そのため、製造コストを低く保ちながら、臭気の低下を図ることができる。
なお、必ずしも明らかではないが、石油樹脂組成物の臭気の原因は、アルデヒドおよび/または酸の揮発が原因であると考えられる。そのため、本発明においては、上記所定条件で加熱した場合におけるガス中のアルデヒドの濃度および酸の濃度のいずれも上記所定範囲内に制御することが、より好ましい。
【0028】
上記アルデヒドの濃度および酸の濃度の測定方法としては、特に限定されないが、たとえば、以下の方法により測定することができる。
すなわち、まず、石油樹脂組成物10gを、容積が120mlの容器の中に入れ、次いで、温度150℃、30分間の条件で加熱する。そして、加熱した石油樹脂組成物を、120mlの容器に入れた状態で室温下に静置し、室温まで冷却する。そして、この容器内のガスを採取し、アセトアルデヒドおよび/または酢酸を検知可能な検知管により、アセトアルデヒド濃度および/または酢酸濃度を測定する。すなわち、本発明においては、石油樹脂組成物10gを上記条件で加熱した場合における、石油樹脂組成物10gから発生するアセトアルデヒドおよび/または酢酸の量を、120mlのガス中における濃度として求めている。
【0029】
本発明の石油樹脂組成物は、非水添炭化水素樹脂に加えて、老化防止剤として、リン系老化防止剤と、ヒンダードフェノール系および/またはヒンダードアミン系老化防止剤と、を含有する。リン系老化防止剤と、ヒンダードフェノール系および/またはヒンダードアミン系老化防止剤と、を含有することにより、炭化水素樹脂を水素添加することなく、上記所定条件で加熱した場合におけるガス中のアルデヒドの濃度および酸の濃度を上記所定範囲に好適に制御することができる。
以下、本発明の石油樹脂組成物を構成する非水添炭化水素樹脂、および老化防止剤について、具体的に説明する。
【0030】
非水添炭化水素樹脂
本発明の石油樹脂組成物は、石油樹脂系の非水添炭化水素樹脂を含有する。
本発明においては、非水添炭化水素樹脂としては、炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体単位を含む樹脂であることが好ましく、特に、炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体単位に加えて、さらに、芳香族ビニル系単量体、好ましくはスチレン単位を含む樹脂であることが好ましい。
【0031】
炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体単位の含有量は、非水添炭化水素樹脂100重量%に対して、好ましくは30〜95重量%、より好ましくは50〜85重量%である。炭素数4〜6のオレフィン性炭化水素単量体単位の含有量が少な過ぎると、接着性に劣ってしまう場合がある。一方、多過ぎると色調が悪化するとともに、接着性に劣る傾向にある。
【0032】
また、スチレン単位の含有量は、非水添炭化水素樹脂100重量%に対して、好ましくは5〜70重量%、より好ましくは15〜50重量%である。スチレン単位の含有量が少な過ぎると、色調が悪化するとともに、接着性に劣る傾向にある。一方、多過ぎると、接着性に劣ってしまう場合がある。
【0033】
上記炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体としては、炭素数4〜6のモノオレフィン性不飽和炭化水素および/またはジオレフィン性不飽和炭化水素が好適に用いられる。
【0034】
炭素数4〜6のモノオレフィン性不飽和炭化水素としては、たとえば、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、メチルブテン、メチルペンテン、ヘキセンなどの鎖状モノオレフィン;シクロペンテン、メチルシクロペンテン、シクロヘキセンなどの環状モノオレフィン;などが挙げられる。
【0035】
炭素数4〜6のジオレフィン性不飽和炭化水素としては、たとえば、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの鎖状共役ジエン;シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンなどの環状共役ジエン:1,2−ブタジエン、1,4−ペンタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。
【0036】
なお、本発明において、炭素数4〜6のモノオレフィン性不飽和炭化水素と、炭素数4〜6のジオレフィン性不飽和炭化水素との比率は、重量比で、20:80〜80:20の範囲とすることが好ましく、特に、25:75〜75:25の範囲とすることが好ましい。
【0037】
本発明においては、接着性の向上という観点より、炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体には、1,3−ペンタジエンを含有させることが好ましく、より好ましくは、その含有量を、オレフィン性不飽和炭化水素単量体全量100重量%に対して、25〜75重量%の範囲とする。
【0038】
なお、本発明の石油樹脂組成物を構成する非水添炭化水素樹脂には、その他必要に応じて、炭素数4〜6のオレフィン性炭化水素およびスチレンと共重合可能な他の単量体からなる単量体単位を含有していてもよい。そのような他の単量体としては、たとえば、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、2,4,4−トリメチル−2−ペンテン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジシクロペンタジエン、インデン、クマロンなどが挙げられる。
【0039】
非水添炭化水素樹脂の軟化点は、好ましくは60〜130℃であり、より好ましくは80〜120℃である。軟化点が、低くても高くても接着性に劣る傾向にある。
【0040】
非水添炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは1,500〜7,000である。重量平均分子量が、低くても高くても接着性に劣る傾向にある。また、非水添炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.2〜4であることが好ましく、1.5〜3.5であることがより好ましい。この比(Mw/Mn)を上記範囲とすることにより、接着剤組成物とした場合における接着性を向上させることができる。
【0041】
老化防止剤
本発明の石油樹脂組成物は、老化防止剤として、リン系老化防止剤と、ヒンダードフェノール系老化防止剤および/またはヒンダードアミン系老化防止剤と、を含む。本発明の石油樹脂組成物に、これらの系老化防止剤を含有させることにより、石油樹脂組成物の臭気を効果的に低減させることができる。
【0042】
上記リン系老化防止剤としては、たとえば、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル)−ジ−トリデシルホスファイト、2,2メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイトなどが挙げられる。これらのなかでも、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸が特に好ましい。リン系老化防止剤の含有量は、石油樹脂組成物全体100重量部に対して、好ましくは0.08〜1.5重量部、より好ましくは0.1〜0.5重量部である。リン系老化防止剤の含有量が少なすぎると、臭気抑制効果が得られなくなる傾向にある。一方、多すぎても、著しい改善効果はみられない。
【0043】
上記ヒンダードフェノール系老化防止剤としては、たとえば、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。これらのなかでも、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート及びペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましく、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが特に好ましい。
【0044】
上記ヒンダードアミン系老化防止剤としては、たとえば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕などが挙げられる。これらのなかでも、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートが特に好ましい。
【0045】
ヒンダードフェノール系老化防止剤および/またはヒンダードアミン系老化防止剤の含有量は、石油樹脂組成物全体100重量部に対して、好ましくは0.1〜1.5重量部、より好ましくは0.15〜1.0重量部である。ヒンダードフェノール系老化防止剤および/またはヒンダードアミン系老化防止剤の含有量が少なすぎると、臭気抑制効果が得られなくなるとともに、貯蔵安定性が劣る傾向にある。一方、多すぎても、著しい改善効果はみられない。
【0046】
また、本発明においては、リン系老化防止剤と、ヒンダードフェノール系老化防止剤および/またはヒンダードアミン系老化防止剤との比が、重量比で、好ましくは1:10〜10:1、より好ましくは1:5〜5:1である。この比が上記範囲から外れると、臭気低減効果が小さくなってしまう傾向にある。
【0047】
なお、本発明においては、上記以外の老化防止剤が含まれていても良い。このような老化防止剤としては、たとえば、3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンの反応性生物などのラクトン系老化防止剤;3,4−ジヒドロ−2,5,7,8−テトラメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)2H−ベンゾピラン−6−オールなどのビタミンE系老化防腐剤;ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート、ドデシル3,3’−チオジプロピオネート、ジオクタデシル3,3’−チオジプロピオネートなどの硫黄系老化防止剤;2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾールなどのベンゾトリアゾール系老化防止剤;2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−〔(ヘキシル)オキシ〕−フェノールなどのトリアジン系老化防止剤;オクタベンゾンなどのベンゾフェノン系老化防止剤;などが例示される。これら上記以外の老化防止剤の含有量は、石油樹脂組成物全体100重量部に対して、好ましくは0.01〜1.0重量部である。
【0048】
接着剤組成物
本発明の接着剤組成物は、上記した本発明の石油樹脂組成物と、熱可塑性高分子化合物と、を少なくとも含む。
本発明においては、上記石油樹脂組成物の含有量は、上記熱可塑性高分子化合物100重量部に対して、好ましくは30〜400重量部、より好ましくは50〜300重量部である。配合割合を上記範囲にすることで、接着性に優れる接着剤組成物が得られる。
【0049】
熱可塑性高分子化合物としては、熱溶融型接着剤の分野において従来から用いられている高分子化合物が使用できる。
このような熱可塑性高分子化合物としては、たとえば、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレンなどのゴム;低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリアミド、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂;芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性エラストマー;などが挙げられる。なかでも、エチレン−酢酸ビニル共重合体や、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体およびその水素添加物が好ましく使用できる。
【0050】
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体としては、酢酸ビニル単位含有量が、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは15〜40重量%、また、メルトフローレイトが1〜500g/10分であるものが好ましい。
【0051】
芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体およびその水素添加物としては、たとえば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体およびそれらの水素添加物が挙げられる。これらは、重量平均分子量(Mw)が、50,000〜100,000であることが好ましい。スチレン単位含有量は、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の場合、好ましくは25〜45重量%、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の場合は、好ましくは10〜30重量%である。
【0052】
本発明の接着剤組成物には、必要に応じて、上記の石油樹脂組成物以外の粘着付与剤を配合することができる。そのような粘着付与剤としては、たとえば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、共重合系(C5−C9系)石油樹脂、クマロン・インデン樹脂ならびにそれらの水素添加物;アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。
【0053】
本発明の接着剤組成物には、さらに必要に応じて、可塑剤、ワックス、充填剤、紫外線吸収剤などを所望量配合できる。
【0054】
可塑剤としては、たとえば、芳香族系プロセスオイル、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどの伸展油;液状ポリブテン、液状ポリイソブチレンなどの液状重合体が挙げられる。
【0055】
ワックスとしては、たとえば、カルナバワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプッシュワックス、ポリエチレンワックスなどが挙げられる。
【0056】
接着剤組成物の製造方法
本発明の接着剤組成物の製造方法は特に限定されないが、たとえば、次の方法により製造することができる。
すなわち、まず、上述した本発明の石油樹脂組成物を構成することとなる非水添炭化水素樹脂を製造する。そして、得られた非水添炭化水素樹脂と、上述の老化防止剤とを混合し、石油樹脂組成物とする。次いで、この石油樹脂組成物と、熱可塑性高分子化合物と、その他必要に応じて使用される添加剤と、を混練することにより、本発明の接着剤組成物を得ることができる。
以下、製造方法について具体的に説明する。
【0057】
まず、石油樹脂系の非水添炭化水素樹脂を製造する。
本発明において、非水添炭化水素樹脂を製造するための方法としては、特に限定されないが、窒素雰囲気下で炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体のうち少なくとも一部と、重合触媒とを予め接触させ、次いで、残りのオレフィン性不飽和炭化水素単量体と、スチレンとを添加し、重合反応を進行させる工程を採用することが好ましい。このような工程を採用することにより、得られる非水添炭化水素樹脂の淡色化を図ることができ、色調を向上させることができる。以下、非水添炭化水素樹脂の製造方法を詳細に説明する。
【0058】
まず、重合の開始前に、重合溶媒に、炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体のうち少なくとも一部と、重合触媒とを仕込み、これらを予め接触させた溶液を準備する。
【0059】
上記重合触媒と予め接触させておく炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体としては、好ましくはシクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンを用いる。シクロオレフィンは、上述のオレフィン性不飽和炭化水素単量体のなかでも、重合反応性が比較的に低いため、このように、予め重合触媒と接触させておくことにより、触媒の前処理剤的に用いることができるため、得られる非水添炭化水素樹脂の淡色化を促進させ、色調を向上させることができる。上記重合触媒と予め接触させておく炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体の量は、重量比で、重合触媒の5倍以上とすることが好ましい。
【0060】
上記重合触媒としては、工業的な取扱いの容易さから塩化アルミニウム、臭化アルミニウムなどのハロゲン化アルミニウムが用いられる。重合触媒の使用量は、重合に使用する単量体全体100重量部に対し、通常、0.1〜10重量部とする。
【0061】
上記重合溶媒としては、たとえば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、イソペンタン、メチルペンタンなどの脂肪族炭化水素や、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素が好適に用いられる。重合溶媒の使用量は、重合に使用する単量体全体100重量部に対し、通常、20〜1,000重量部、好ましくは50〜500重量部である。
【0062】
次いで、上記にて得られた溶液の温度を、好ましくは50℃以下、より好ましくは0〜50℃に調整し、残りの炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体と、スチレンとを連続的に添加し、重合反応を進行させる。これら残りの炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体と、スチレンとを添加する方法としては、特に限定されないが、これらを予め混合しておき、混合溶液の状態で添加する方法や、予め混合することなく、添加する方法のいずれでも良い。
また、重合反応時の圧力は、大気圧下でも加圧下でもよい。反応時間は、適宜選択できるが、通常、30分間〜12時間である。
【0063】
上記のように重合反応を行い、所望の重合転化率で、メタノール、アンモニア水溶液などの重合停止剤を添加して、重合反応を停止する。重合反応を停止した後には、溶媒に不溶な触媒残渣をろ過等により除去してもよい。そして、重合反応停止後、必要に応じて、未反応の単量体と溶媒を除去し、さらに水蒸気蒸留などにより低分子量のオリゴマー成分を除去し、冷却することにより、固体状の非水添炭化水素樹脂が得られる。
【0064】
得られた固体状の非水添炭化水素樹脂を、窒素雰囲気下で150〜300℃程度に加熱し、上述のリン系老化防止剤と、好ましくは、ヒンダードフェノール系老化防止剤および/またはヒンダードアミン系老化防止剤と、を添加・混合し、その後、得られた混合物を室温まで冷却することにより、石油樹脂組成物とする。
【0065】
次いで、上記にて得られた石油樹脂組成物と、熱可塑性高分子化合物と、その他必要に応じて使用される添加剤とを、150〜200℃で加熱溶融しながら混練することにより、接着剤組成物とする。
【0066】
なお、本発明の製造方法においては、非水添炭化水素樹脂に、直接、上述の老化防止剤を添加する(すなわち、接着剤組成物とする前に、予め上述の老化防止剤を添加する)点に最大の特徴を有している。そして、このような工程を採用することにより、得られる石油樹脂組成物および接着剤組成物の臭気を低減させることができる。なお、石油樹脂組成物に予め上述の老化防止剤を添加することなく、たとえば、石油樹脂組成物と熱可塑性高分子化合物とを混練する際に、上述のリン系老化防止剤と、ヒンダードフェノール系老化防止剤および/またはヒンダードアミン系老化防止剤と、を添加した場合には、臭気を低減させる効果が得難くなる傾向にある。この理由としては必ずしも明らかではないが、上述の老化防止剤を予め石油樹脂組成物に添加しない場合には、石油樹脂組成物が高温で保管されたり、または熱可塑性高分子化合物と混練する際に老化防止剤を添加した場合であっても、老化防止剤が均一に分散される前に加熱されてしまい、臭気の原因物質の生成を抑制できないことによると考えられる。
ただし、本発明においては、石油樹脂組成物と、熱可塑性高分子化合物とを混練する際にも必要に応じて、これらリン系老化防止剤や、ヒンダードフェノール系老化防止剤および/またはヒンダードアミン系老化防止剤、その他の老化防止剤を添加しても良い。
【0067】
このような工程を経て得られる本発明の接着剤組成物は、その調製後、直ちに基体に溶融塗布しても、一旦、棒状や粒状の形状に成形し、その成形物を塗布装置に供給してもよい。
【0068】
本発明の接着剤組成物は、熱溶融型接着剤組成物として用いることが好ましいが、溶媒に溶解または分散した状態で使用することもできる。この場合、溶媒としては、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;これらのハロゲン化物、水などが挙げられる。
【0069】
本発明の接着剤組成物は、通常、加熱溶融状態で基体に塗布される。
基体としては、たとえば、クラフト紙、和紙、上質紙、合成紙などの紙類;綿布、スフ布、ポリエステル布などの布類;セロハン、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルムなどの樹脂フィルム;アルミニウム箔、銅箔などの金属箔;ポリエステル製不織布、レーヨン製不織布などの不織布などが挙げられる。これらの基体は、予め、その表面をコロナ放電処理したり、プライマーを塗布したりしたものであってもよい。
【0070】
塗布装置としては、たとえば、加熱装置を備えた、ロールコーター、ノズル型アプリケーター、ジェット型アプリケーターなどが挙げられる。
【0071】
接着剤組成物を、基体に溶融塗布し、接着剤組成物が完全に固化する前に、基体を構成する材料と同一または異なる材料からなる被着体を圧着して接着することができる。また、フィルム状の基体に接着剤組成物を溶融塗布したものを、いわゆる、接着テープとして被着体に接着させることもできる。
【0072】
本発明の接着剤組成物は、使い捨て紙おむつ、衛生ナプキンなどの衛生用品;冷凍食品、生鮮食品、菓子などの食品梱包;自動車部品、機械部品などの部材梱包;テレビ、オーディオ製品、冷蔵庫などの電気製品梱包;伝票、書籍、カタログなどの製本用途;クラフト製袋、ポリプロピレン製袋、ポリエチレン製袋などの製袋用途;コート類のスソ止め、皮革や生地の貼り合わせ、芯地の接着などの衣料用途;などに適用でき、なかでも、接着性が高く、色調が良好であり、しかも臭気が低減されているため、衛生用品に好適に使用できる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例】
【0073】
以下に実施例、比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。これらの例中の〔部〕および〔%〕は、特に断わりのない限り重量基準である。ただし本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、石油樹脂組成物および接着剤組成物は、以下の方法により評価した。
【0074】
石油樹脂組成物の加熱時におけるアルデヒド量
まず、石油樹脂組成物10gを、120mlの耐熱性容器に入れて、アルミ箔でフタをした。そして、アルミ箔でフタをした耐熱性容器をオーブンに入れ、温度150℃、30分間の条件にて石油樹脂組成物を加熱し、その後、オーブンから取り出して、室温下に静置することにより室温まで冷却した。
次いで、この耐熱性容器のアルミ箔の上から、アセトアルデヒドを検知可能な検知管を差し込み、耐熱性容器内のガスを100ml吸引し、3分間静置した。そして、3分後におけるアセトアルデヒドの検出量より、アセトアルデヒド換算のアルデヒド量を求めた。なお、本実施例においては、アセトアルデヒドを検知可能な検知管として、GASTEC No.92L((株)ガステック製、検出範囲1〜20ppm)を使用した。このアルデヒド量は、低い方が好ましい。
【0075】
石油樹脂組成物の加熱時における酸量
検知管として、酢酸を検知可能な検知管であるGASTEC No.81L((株)ガステック製、検出範囲0.25〜10ppm)を使用した以外は、上記アルデヒド量の測定と同様にして、加熱により発生した酸量を測定した。この酸量は、低い方が好ましい。
【0076】
接着剤組成物の官能試験
接着剤組成物の官能試験は、臭気対策研究協会発行の臭気の嗅覚測定法における臭気強度表示法に従って行った。
具体的には、まず、1粒の大きさを約10mm×5mm×5mmとした接着剤組成物10gを120mlの耐熱性容器に入れて、アルミ箔でフタをした。そして、この接着剤組成物の入った耐熱性容器を、オーブンに入れて、温度150℃、30分間の条件で加熱し、加熱後の臭気の確認を行った。
臭気の確認は、石油樹脂の臭気に慣れていない(すなわち、普段の生活において、石油樹脂の臭気に触れることのない)6人のパネルにより行った。本試験においては、嗅覚疲労を防ぐため、6人のパネルを3人ずつの2班に分けて、1班ずつ臭気を嗅ぐという方法を採用した。また、臭気を嗅ぐサンプルの順番は、無作為とし、下記の指標に基づいて、0.5刻みの数値(すなわち、たとえば、わずかに臭うであれば「1」、わずかに臭うと、臭いがはっきり分かるの中間であれば「1.5」)で判定を行った。
0:無臭
1:わずかに臭う
2:臭いがはっきり分かる
3:強く臭う
4:強烈に臭う
なお、官能試験の結果は、6人のパネルの判定値のうち、最大値と最小値をそれぞれ除き、残りの4人の判定値を平均することにより求めた。官能試験の値は、小さいほうが好ましい。
【0077】
実施例1
非水添炭化水素樹脂の合成および石油樹脂組成物の製造
シクロペンタン100部、シクロペンテン23部、および重合触媒である塩化アルミニウム1.2重量部を反応容器に仕込み、溶液Aを調製した。一方、これとは別に、1,3−ペンタジエン38.5部、シクロペンテン9.5部、スチレン28部およびブテン類1部を混合し、溶液Bを調整した。そして、この溶液Bを、溶液Aの入った反応器に、連続的に添加し、重合反応を行った。なお、重合反応の際の温度は45℃とし、また、溶液Bの添加速度は、添加し始めから添加終了までの時間が60分となるように調整した。そして、溶液Bの添加が終了した後、さらに温度45℃、20分間の条件で後反応を行い、その後、反応器にメタノールとアンモニア水との混合液を添加して、重合反応を停止した。
【0078】
そして、重合体溶液から、重合反応を停止させた際に生成した沈殿物を、ろ過により除去した後、ろ過後の重合体溶液を蒸留釜に仕込み、窒素を吹き込みながら加熱し、重合溶媒と未反応の単量体とを除去した。次いで、蒸留釜内部の温度を240℃以上として、飽和水蒸気を吹き込みながら、低分子量のオリゴマー成分を留去し、溶融状態の非水添炭化水素樹脂を得た。
【0079】
そして、この溶融状態の非水添炭化水素樹脂100部に対して、ヒンダードフェノール系老化防止剤0.35部、およびリン系老化防止剤0.15部を添加し、混合した後、混合物を蒸留釜から取り出し、室温まで冷却して、石油樹脂組成物を得た。
【0080】
なお、本実施例においては、ヒンダードフェノール系老化防止剤として、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](表1中、AO−1)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(表1中、AO−2)を、リン系老化防止剤として、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸(表1中、AO−4)を、それぞれ使用した。
【0081】
上記にて得られた石油樹脂組成物について、加熱時におけるアルデヒド量および酸量を、上記方法により測定した。結果を表1に示す。なお、上記にて製造した非水添炭化水素樹脂の臭素価は、25[g/100g]であった。
【0082】
接着剤組成物の製造
上記にて得られた石油樹脂組成物100.5部、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(スチレン単位含量=40%、メルトフローレイト=13g/10分(測定温度:200℃、荷重:49.03N))45.7部、およびヒンダードフェノール系の老化防止剤であるペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.2部を、容器に入れ、180℃、60分間混練して、接着剤組成物を得た。
【0083】
得られた接着剤組成物について、上記の方法に従い、官能試験を行った。結果を表1に示す。
【0084】
実施例2〜5
石油樹脂組成物を製造する際に添加する老化防止剤の種類および添加量を表1に示すようにした以外は、実施例1と同様にして、石油樹脂組成物および接着剤組成物を製造した。そして、得られた石油樹脂組成物および接着剤組成物について実施例1と同様にして各評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
比較例1
ヒンダードフェノール系老化防止剤およびリン系老化防止剤の添加時期を、変更した以外は、実施例1と同様にして、石油樹脂組成物および接着剤組成物を製造した。すなわち、比較例1においては、ヒンダードフェノール系老化防止剤およびリン系老化防止剤の添加時期を、石油樹脂組成物の調製時ではなく、接着剤組成物の調製時とした。そして、得られた石油樹脂組成物および接着剤組成物について実施例1と同様にして各評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
比較例2〜5
石油樹脂組成物を製造する際に添加する老化防止剤の種類および添加量を表1に示すようにした以外は、実施例1と同様にして、石油樹脂組成物および接着剤組成物を製造した。そして、得られた石油樹脂組成物および接着剤組成物について実施例1と同様にして各評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
表1より、以下のことが確認できる。
すなわち、本発明の実施例1〜5の結果より、石油樹脂組成物の加熱時におけるアルデヒド量を15ppm以下、および酸量を5ppm以下とすることにより、接着剤組成物とした際における官能試験の評価値を低くすることができ、接着剤組成物の臭気を低減できることが確認できる。
【0089】
特に、実施例1においては、石油樹脂組成物に、ヒンダードフェノール系老化防止剤およびリン系老化防止剤を含有させることにより、石油樹脂組成物の加熱時におけるアルデヒド量および酸量を低減することが可能となったことが確認できる。また、この効果は、ヒンダードフェノール系老化防止剤およびリン系老化防止剤の添加量を変更した実施例2,4、ヒンダードフェノール系老化防止剤の代わりにヒンダードアミン系老化防止剤を使用した実施例3,5でも同様であった。
【0090】
一方、石油樹脂組成物の加熱時におけるアルデヒド量および酸量が、本発明の所定範囲より大きくなった比較例1〜5は、いずれも、接着剤組成物とした際における官能試験の評価値が高くなってしまい、接着剤組成物の臭気が強くなる結果となった。
【0091】
特に、比較例1〜5の結果より以下のことが確認できる。
比較例1の結果より、接着剤組成物に、ヒンダードフェノール系老化防止剤およびリン系の老化防止剤を添加した場合においても、これらの老化防止剤を、石油樹脂組成物を調製する際に含有させないと、接着剤組成物の官能試験の評価値が悪化してしまい、臭気の抑制効果が得難くなることが確認できる。
比較例2の結果より、硫黄系老化防止剤を添加しても、石油樹脂組成物の加熱時におけるガス中に含まれるアルデヒド量および酸量を低減すること、および接着剤組成物の臭気を低下することができないことが確認できる。なお、このことは、リン系老化防止剤を含有させない場合(比較例3)、ヒンダードフェノール系老化防止剤および/またはヒンダードアミン系老化防止剤を含有させない場合(比較例4)、ヒンダードフェノール系老化防止剤の添加量が、リン系老化防止剤の添加量に比較して多すぎる場合(比較例5)においても、同様であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油樹脂系の非水添炭化水素樹脂を含有する石油樹脂組成物であって、
前記石油樹脂組成物を、温度150℃、30分間の条件で加熱した場合におけるガス中のアルデヒドの濃度が、15ppm以下である石油樹脂組成物。
【請求項2】
石油樹脂系の非水添炭化水素樹脂を含有する石油樹脂組成物であって、
前記石油樹脂組成物を、温度150℃、30分間の条件で加熱した場合におけるガス中の酸の濃度が、5ppm以下である石油樹脂組成物。
【請求項3】
石油樹脂系の非水添炭化水素樹脂を含有する石油樹脂組成物であって、リン系老化防止剤と、ヒンダードフェノール系老化防止剤および/またはヒンダードアミン系老化防止剤と、を含む石油樹脂組成物。
【請求項4】
前記石油樹脂組成物を、温度150℃、30分間の条件で加熱した場合におけるガス中のアルデヒドの濃度が、15ppm以下であり、かつ、酸の濃度が、5ppm以下である請求項3に記載の石油樹脂組成物。
【請求項5】
前記リン系老化防止剤の含有量が、石油樹脂組成物全体100重量部に対して、0.08〜1.5重量部である請求項3または4に記載の石油樹脂組成物。
【請求項6】
前記ヒンダードフェノール系老化防止剤および/またはヒンダードアミン系老化防止剤の含有量が、石油樹脂組成物全体100重量部に対して、0.1〜1.5重量部である請求項3〜5のいずれかに記載の石油樹脂組成物。
【請求項7】
前記石油樹脂系の非水添炭化水素樹脂は、炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体単位を含む請求項1〜6のいずれかに記載の石油樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の石油樹脂組成物と、熱可塑性高分子化合物と、を含む接着剤組成物であって、
前記石油樹脂組成物の含有量が、前記熱可塑性高分子化合物100重量部に対して、30〜400重量部である請求項7に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の接着剤組成物を製造する方法であって、
前記石油樹脂系の非水添炭化水素樹脂と、前記熱可塑性樹脂高分子化合物と、を混合する工程を有し、
前記石油樹脂系の非水添炭化水素樹脂と、前記熱可塑性樹脂高分子化合物と、を混合する前に、予め前記石油樹脂系の非水添炭化水素樹脂に、老化防止剤を含有させておくことを特徴とする接着剤組成物の製造方法。


【公開番号】特開2006−274191(P2006−274191A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−99456(P2005−99456)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】