説明

石炭の粉砕システム

【課題】石炭、特に揮発分が多い石炭を、安全かつ安価に粉砕できるシステムを提供すること。
【解決手段】石炭を貯蔵する貯蔵タンク2と、過熱水蒸気を発生させる過熱水蒸気発生装置3と、前記過熱水蒸気発生装置3から供給された過熱水蒸気Sを搬送用流体として導入しながら前記貯蔵タンク2から供給された石炭Wを粉砕する粉砕機4と、前記粉砕機4により粉砕された微粉炭W’を搬送用流体である過熱水蒸気S’から分離し捕集する集塵機7とを備える石炭の粉砕システム1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭、特に揮発分が多い石炭の粉砕システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ボイラー或いはセメントキルン等において、燃料価格の面から石炭の微粉砕物を燃料として用いることが行なわれている。
かかる石炭の微粉砕物は、通常、分級機構が内蔵された竪型ミルを用いて石炭を連続的に粉砕し、粉砕された微粉炭をバグフィルタ等により捕集することにより得られている。この方式では、竪型ミルに供給される石炭の乾燥、分級機構による石炭粒子の分級及び粉砕された微粉炭の搬送用として、加熱された搬送用流体が竪型ミル内に導入される。
【0003】
上記搬送用流体として、省エネの観点等から、セメント製造設備であるキルンから排出された熱風排ガスを用いた技術が特許文献1に開示されている。また、爆発防止の観点等から、窒素、二酸化炭素等の不活性ガスを搬送用流体として用いた技術が特許文献2に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特許第2844799号公報
【特許文献2】特開平5−31396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、先ず特許文献1に開示されたような、キルンからの熱風排ガスを搬送用流体として用いた技術にあっては、廃熱の有効利用の観点からは好ましいものであったが、該熱風排ガス中の酸素の存在によって、粉砕した微粉炭が爆発する虞があった。特に、歴青炭、亜歴青炭、褐炭のような揮発分の多い石炭を粉砕する場合には、この爆発の危険性は高いものであった。また、キルンからの熱風排ガスを用いる方法では、石炭の処理量が少ない場合、また原料石炭中の水分量が少ない場合等には、温度が高すぎて集塵機であるバグフィルタで火災を生じさせる危険性があり、この場合、温度調節のために低温空気を混合することとすると、酸素濃度が高くなり、上記微粉炭の爆発の可能性が更に高くなるという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に開示された窒素、二酸化炭素等の不活性ガスを搬送用流体として用いる技術にあっては、粉砕機等における爆発の危険性は少なくなるものの、この方法による場合には、大量の不活性ガスを必要とするため、その費用が嵩み、石炭の粉砕コストが高騰すると言う問題があった。
【0007】
本発明は、上述した背景技術が有する問題点に鑑みて成されたものであって、その目的は、石炭、特に揮発分が多い石炭を、安全かつ安価に粉砕できるシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、本発明は、次の〔1〕〜〔4〕に記載の石炭の粉砕システムとした。
〔1〕 石炭を貯蔵する貯蔵タンクと、過熱水蒸気を発生させる過熱水蒸気発生装置と、前記過熱水蒸気発生装置から供給された過熱水蒸気を搬送用流体として導入しながら前記貯蔵タンクから供給された石炭を粉砕する粉砕機と、前記粉砕機により粉砕された微粉炭を搬送用流体である過熱水蒸気から分離し捕集する集塵機とを備えることを特徴とする、石炭の粉砕システム。
〔2〕 上記石炭が、揮発分が20重量%以上の石炭であることを特徴とする、上記〔1〕に記載の石炭の粉砕システム。
〔3〕 上記粉砕機が、分級機構を内蔵する竪型ミルであることを特徴とする、上記〔1〕又は〔2〕に記載の石炭の粉砕システム。
〔4〕 上記集塵機から排出された搬送用流体である過熱水蒸気を、上記過熱水蒸気発生装置を介して粉砕機に戻す循環ルートを備えることを特徴とする、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の石炭の粉砕システム。
【0009】
上記した本発明によれば、粉砕機によって石炭と単位体積当たりの保有熱量の大きな過熱水蒸気とを接触させながら石炭を乾燥しながら粉砕させるため、石炭を効率よく粉砕できる。また、過熱水蒸気には酸素が少ないため、粉砕機等における爆発が生じ難く、石炭を安全に粉砕できる。また、集塵機から排出された過熱水蒸気を、循環ルートを設けることにより粉砕機に戻す構成とすることは、熱量の損失が少なく、さらに熱効率の高いシステムを構築できる。
【0010】
ここで、上記本発明に係る石炭の粉砕システムにおいて、上記循環ルートに余剰の水蒸気を排出する排出部を設け、該排出部から排出された水蒸気を処理する凝縮器或いは燃焼炉等を設けた構成とすれば、循環する水蒸気量を定量に保つことができるとともに、石炭から発生した揮発分等の大気中への拡散を防ぐことができるために好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記した本発明によれば、石炭、特に揮発分が多い石炭を、安全かつ安価に粉砕できるシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る石炭の粉砕システムの実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る石炭の粉砕システムの一実施の形態を示したフロー図であって、この粉砕システム1は、石炭を貯蔵する貯蔵タンク2と、過熱水蒸気を発生させる過熱水蒸気発生装置3と、前記過熱水蒸気発生装置3から供給された過熱水蒸気Sを搬送用流体として導入しながら前記貯蔵タンク2から供給された石炭Wを粉砕する粉砕機4と、石炭Wを前記粉砕機4に定量供給する供給装置5と、過熱水蒸気Sを前記粉砕機4に供給するブロワ6と、前記粉砕機4により粉砕された微粉炭W’を搬送用流体である過熱水蒸気S’から分離し捕集する集塵機7と、上記集塵機7により回収された微粉炭W’を貯蔵する貯蔵タンク8と、前記集塵機7により微粉炭W’から分離された過熱水蒸気S’を循環させる循環ブロワ9とで主に構成されている。
【0014】
石炭の貯蔵タンク2は、原料である塊状の石炭Wを貯蔵するために設けられる。石炭Wとしては、歴青炭、亜歴青炭、褐炭のような揮発分の多い石炭、具体的には、無水無灰基準での揮発分が20重量%以上の石炭が、本発明においては特に対象となる。これは、かかる揮発分の多い石炭は、爆発の危険性が高いためである。この貯蔵タンク2には、下部に石炭Wを粉砕機4に定量供給するためのスクリューフィーダ等の供給装置5が付設され
ている。
【0015】
過熱水蒸気発生装置3は、本実施の形態においては、運転初期において過熱水蒸気Soを発生させるボイラー3aと、該過熱水蒸気So及び循環する過熱水蒸気S’を所望の温度に加熱する熱交換器3bとから構成されている。ボイラー3aとしては、例えばセメント焼成設備からの廃熱を利用して過熱水蒸気Soを発生させる廃熱ボイラーを利用することができる。また、熱交換器3bとしては、同じくセメント焼成設備からの廃熱を利用したプレート式熱交換器が好適に使用できる。ブロワ6は、上記過熱水蒸気発生装置3の水蒸気排出側に設けられ、過熱水蒸気Sを粉砕機4に供給する。なお、過熱水蒸気Sを循環使用しない場合は、過熱水蒸気発生装置3としては、ボイラー3aのみであっても良い。
【0016】
粉砕機4は、上記過熱水蒸気発生装置3から供給された過熱水蒸気Sを搬送用流体として導入しながら、上記貯蔵タンク2から定量供給された石炭Wを粉砕するために備えられる。粉砕機4としては、分級機構を内蔵する竪型ミル、例えばローラーミル(ロッシェミル)、リングボールミル等が好適に用いられる。
【0017】
ローラーミル(ロッシェミル)を粉砕機4として用いた場合の、本発明に係る石炭の粉砕状況を図2に示す。図2において、4aは粉砕テーブル、4bは粉砕ローラー、4cは分級部、4dは石炭の投入口、4eは搬送用流体の導入口、4fは粉砕された微粉炭の排出口である。投入口4dより投入された石炭Wは、粉砕部である粉砕テーブル4a上に落下し、そこで粉砕ローラー4bにて粉砕される。粉砕された石炭Wは、ミル下部の導入口4eから導入された過熱水蒸気Sにより乾燥されながらミル上部へ搬送され、分級部4cにおいて粗粒子と微粒子に分級される。粗粒子は内壁に沿って粉砕テーブル4a上に再び落下して再粉砕され、微粒子は製品(微粉炭)W’として搬送用流体である過熱水蒸気S’とともに排出口4fからミル外に搬送される。
【0018】
集塵機7は、上記粉砕機4により粉砕された微粉炭W’を搬送用流体である過熱水蒸気S’から分離し捕集するために備えられる。集塵機7としては、例えばバグフィルタが用いられる。貯蔵タンク8は、上記集塵機7により捕集された微粉炭W’を貯蔵するために設けられ、該貯蔵タンク8に一旦貯蔵された微粉炭W’は、例えば計量フィーダ10により一定量ずつ切り出され、ブロワ11からの搬送用空気Aにより気粉混合器12を介してキルンバーナ(図示せず)に供給される。
【0019】
循環ブロワ9及び循環ダクト13は、上記集塵機7において微粉炭W’から分離された搬送用流体である過熱水蒸気S’を過熱水蒸気発生装置3の熱交換器3bを介して再び上記粉砕機4に戻すために設けられる。循環ダクト13の途中には、余剰水蒸気S”を排出するための余剰水蒸気排出部14が設けられ、該余剰水蒸気排出部14の後段には、排出された余剰水蒸気S”中の揮発分等を処理する凝縮器或いは燃焼炉(図示せず)等が設けられる。
【0020】
次に、上記構成を有する本発明に係る粉砕システムの動作について、図1を参照しながら説明する。
【0021】
先ず、原料である石炭Wを貯蔵タンク2に一時的に貯蔵するとともに、セメント焼成設備の廃熱等を利用して運転されるボイラー3aによって過熱水蒸気Soを発生させ、該過熱水蒸気Soを熱交換器3bにより所望の温度まで加熱する。即ち、過熱水蒸気発生装置3によって過熱水蒸気Sを発生させる。
【0022】
続いて、粉砕機4の上部投入口4dから、上記貯蔵タンク2からの石炭Wを供給装置5を介して定量供給するとともに、粉砕機4の下部導入口4eから、上記過熱水蒸気発生装置3からの過熱水蒸気Sをブロワ6を介して導入する。この過熱水蒸気Sの温度は、200℃〜500℃程度であるため、単位体積当たりの保有熱量が大きく、石炭Wを乾燥させるのに十分な熱量を有する。また、酸素を含まない過熱水蒸気Sを用いているため、粉砕機4等における爆発の虞もない。
【0023】
次に、集塵器7によって、粉砕機4で粉砕された微粉炭W’を搬送用流体である過熱水蒸気S’から分離し捕集する。集塵機7により捕集された微粉炭W’は、貯蔵タンク8に一旦貯蔵され、計量フィーダ10により一定量ずつ切り出され、ブロワ11からの搬送用空気Aにより気粉混合器12を介して、例えばセメント焼成設備のキルンバーナ(図示せず)に供給される。
【0024】
一方、集塵機7において微粉炭W’から分離された過熱水蒸気S’は、循環ブロワ9及び循環ダクト13によって、過熱水蒸気発生装置3の熱交換器3bに戻され,ここで加熱されて所望の高温度の過熱水蒸気Sとされた後、再び搬送用流体として粉砕機4に導入される。これによって、過熱水蒸気を循環させ、粉砕機4内を流れる過熱水蒸気量を確保するとともに、熱量の損失を抑え、熱効率の高いシステムを構築している。
【0025】
また、循環ダクト13に滞留する余剰水蒸気S”は、余剰水蒸気排出部14を介して適宜外部に排出し、凝縮器(図示せず)によって液体に戻して回収する構成とすることにより、循環する水蒸気量を定量に保つとともに、石炭Wから発生した揮発分等の大気中への拡散を防止することができる。なお、余剰水蒸気S”は、燃焼炉等で燃焼させて揮発分を処理する構成としてもよい。
【0026】
以上、本発明に係る石炭の粉砕システムの実施の形態について説明したが、本発明は、何ら既述の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想の範囲内において、種々の変形及び変更が可能であることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明にかかる石炭の粉砕システムの一実施の形態を示したフロー図である。
【図2】本発明において用いる粉砕機の一実施例を示した図である。
【符号の説明】
【0028】
1 粉砕システム
2 石炭の貯蔵タンク
3 過熱水蒸気発生装置
3a ボイラー
3b 熱交換器
4 粉砕機
5 供給装置
6 ブロワ
7 集塵機
8 微粉炭の貯蔵タンク
9 循環ブロワ
10 計量フィーダ
11 ブロワ
12 気粉混合器
13 循環ダクト
14 余剰水蒸気排出部
W 石炭
S 過熱水蒸気
A 搬送用空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を貯蔵する貯蔵タンクと、過熱水蒸気を発生させる過熱水蒸気発生装置と、前記過熱水蒸気発生装置から供給された過熱水蒸気を搬送用流体として導入しながら前記貯蔵タンクから供給された石炭を粉砕する粉砕機と、前記粉砕機により粉砕された微粉炭を搬送用流体である過熱水蒸気から分離し捕集する集塵機とを備えることを特徴とする、石炭の粉砕システム。
【請求項2】
上記石炭が、揮発分が20重量%以上の石炭であることを特徴とする、請求項1に記載の石炭の粉砕システム。
【請求項3】
上記粉砕機が、分級機構を内蔵する竪型ミルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の石炭の粉砕システム。
【請求項4】
上記集塵機から排出された搬送用流体である過熱水蒸気を、上記過熱水蒸気発生装置を介して粉砕機に戻す循環ルートを備えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の石炭の粉砕システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−202079(P2009−202079A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45671(P2008−45671)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】