説明

石炭ガス化ガスのCO2分離回収装置

【課題】CO分離回収装置に供給するパージ用の窒素ガスに少量の酸素が含まれていた場合でも、触媒の酸化を抑制して前記触媒の還元を不要とし、CO分離回収装置の起動時間の短縮を可能とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置を提供する。
【解決手段】
石炭ガス化ガス中のCOをシフト触媒によりCOに転換するCOシフト反応装置で生成されたCOを石炭ガス化ガスから分離して回収する石炭ガス化ガスのCO分離回収装置において、CO分離回収装置の起動時又は停止時に、パージ窒素を供給するパージ窒素流路と、水素ガスを供給する水素ガス流路とを夫々配設し、COシフト反応装置の上流側となる主系統の流路に、水素ガス流路を通じて供給された水素ガスと反応してパージ窒素に含有する酸素を燃焼させる燃焼触媒を充填した燃焼触媒器を設け、燃焼触媒器の上流側となる主系統の流路に脱硫器を設置して構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭ガス化システムで発生したガス化ガスと蒸気を混合し、シフト反応器においてシフト反応させて発生したCOを吸収液にて吸収除去する石炭ガス化ガスのCO分離回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭やバイオマスをガス化してガスタービンの燃料として利用する技術(IGCC等)では、特に石炭をガス化した場合はその石炭の炭種によって異なるが、石炭ガス化による生成ガスの代表成分は体積割合で55%が一酸化炭素、20%が水素、20%が窒素ガス、3%が二酸化炭素ガス、2%が水蒸気やその他成分である。
【0003】
したがって、石炭ガス化による生成ガスの主成分である一酸化炭素と水蒸気から二酸化炭素と水素を得る下記(1)式のシフト反応が、一般的に化学プラント等の二酸化炭素回収システムでは活用されている。
【0004】
CO+HO→CO+H・・・(1)
即ち、シフト反応器によって上記(1)式のシフト反応を起し、石炭をガス化した石炭ガスを一旦、水素ガスと二酸化炭素に転換して、水素ガスはガスタービンの燃料ガスとして活用し、二酸化炭素は後流の二酸化炭素吸収搭で吸収液により吸収するものである。尚、この時のシフト反応は発熱反応である。
【0005】
二酸化炭素回収システムで通常用いられる高温シフト反応器(鉄系触媒充)+低温シフト反応器(銅、亜鉛系触媒充填)の組合せでは、二酸化炭素回収システムの起動、停止時に通過するパージ窒素中に酸素が存在すると、充填した触媒の一部の酸化と次回起動時の還元を繰り返し、触媒が劣化し、触媒の寿命が短くなる。また、酸化した触媒の還元操作に時間を要する。
【0006】
石炭ガス化システムで準備される窒素は一般的に純度が低く、0.5%程度の酸素が含まれるため、二酸化炭素回収システム起動、停止のたびに進行するシフト触媒劣化は回避できない。
【0007】
公知例の特開2003−89505号公報には、COシフト部を含む改質器の前段に酸素除去部を設け、改質器が停止時にCOシフト部の触媒に浸入して触媒の性能を低下させる外気中の酸素を、前記酸素除去部の酸素除去触媒により改質装置の内部に残留する水素と反応させて除去する燃料電池システムに関する技術が開示されている。
【0008】
また、公知例の特開平11−116975号公報には、ガス化発電プラントにおいて起動昇温時のガス精製装置に用いられる吸収液の劣化を防止するために吸収塔の上流に部分燃焼装置を設け、起動昇温に前記部分燃焼装置によって生成したガス中の酸素を燃料の軽油等の燃焼と共に燃焼させて低下し、吸収液の劣化原因である生成ガス中の酸素濃度を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−89505号公報
【特許文献2】特開平11−116975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記特開2003−89505号公報に記載された構成の燃料電池システムは、COシフト部の触媒に侵入しようとする外気中の酸素を改質装置の内部に残留する水素によって除去する技術を開示しているに過ぎない。
【0011】
この特開2003−89505号公報に開示された技術では、石炭ガス化ガスのCO分離回収装置の起動時及び停止時に該CO分離回収装置に供給するパージ用の窒素ガスに少量の酸素が含まれている場合に、この酸素によって酸化されたCOシフト反応装置の触媒を再生させることが必要となる。
【0012】
この結果、前記COシフト反応装置の触媒を再生させるために時間を要するので、前記CO分離回収装置の起動時間に長時間を要することになる。
【0013】
また、前記特開平11−116975号公報に記載された構成のガス化発電プラントは、ガス精製装置内の吸収液劣化に関する技術を開示しているに過ぎない。
【0014】
この前記特開平11−116975号公報の技術には石炭ガス化ガスのCO分離回収装置は開示されていないが、このCO分離回収装置の起動時及び停止時に該CO分離回収装置に供給するパージ用の窒素ガスに少量の酸素が含まれている場合には、この酸素によって酸化されたCOシフト反応装置の触媒を再生させることが必要となる。
【0015】
この結果、前記COシフト反応装置の触媒を再生させるために時間を要するので、前記CO分離回収装置の起動時間に長時間を要することになる。
【0016】
本発明の目的は、石炭ガス化ガスのCO分離回収装置の起動時及び停止時に、シフト反応器の触媒の性能低下を防止するために該CO分離回収装置に供給するパージ用の窒素ガスに少量の酸素が含まれていた場合に、触媒の酸化を抑制して前記触媒の還元を不要とし前記CO分離回収装置の起動時間の短縮を可能とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の石炭ガス化ガスのCO分離回収装置は、主系統の流路を流下する石炭ガス化ガス中のCOをシフト触媒によりCOに転換する該主系統の流路に設置されたCOシフト反応装置を備え、このCOシフト反応装置によって生成されたCOを石炭ガス化ガスから分離して回収する石炭ガス化ガスのCO分離回収装置において、前記CO分離回収装置の起動時又は停止時に、パージ窒素を前記COシフト反応装置の上流側となる該CO分離回収装置の主系統の流路に供給するパージ窒素流路を配設し、水素ガスを前記COシフト反応装置の上流側となる該CO分離回収装置の主系統の流路に供給する水素ガス流路を配設し、前記COシフト反応装置は上流側のシフト反応器と下流側のシフト反応器によって構成し、前記上流側のシフト反応器の上流側となる主系統の流路に、該水素ガス流路を通じて供給された水素ガスと反応してパージ窒素に含有する酸素を燃焼させる燃焼触媒を充填した燃焼触媒器を設け、前記燃焼触媒器の上流側となる主系統の流路に水洗塔を設置したことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の石炭ガス化ガスのCO分離回収装置は、主系統の流路を流下する石炭ガス化ガス中のCOをシフト触媒によりCOに転換する該主系統の流路に設置されたCOシフト反応装置を備え、このCOシフト反応装置によって生成されたCOを石炭ガス化ガスから分離して回収する石炭ガス化ガスのCO分離回収装置において、前記CO分離回収装置の起動時又は停止時に、パージ窒素を前記COシフト反応装置の上流側となる該CO分離回収装置の主系統の流路に供給するパージ窒素流路を配設し、水素ガスを前記COシフト反応装置の上流側となる該CO分離回収装置の主系統の流路に供給する水素ガス流路を配設し、前記COシフト反応装置は上流側の高温シフト反応器と下流側の低温シフト反応器によって構成し、前記高温シフト反応器の内部に該水素ガス流路を通じて供給された水素ガスと反応してパージ窒素に含有する酸素を燃焼させる燃焼触媒を充填した燃焼触媒器を設けたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の石炭ガス化ガスのCO分離回収装置は、主系統の流路を流下する石炭ガス化ガス中のCOをシフト触媒によりCOに転換する該主系統の流路に設置されたCOシフト反応装置を備え、このCOシフト反応装置によって生成されたCOを石炭ガス化ガスから分離して回収する石炭ガス化ガスのCO分離回収装置において、前記CO分離回収装置の起動時又は停止時に、パージ窒素を前記COシフト反応装置の上流側となる該CO分離回収装置の主系統の流路に供給するパージ窒素流路を配設し、水素ガスを前記COシフト反応装置の上流側となる該CO分離回収装置の主系統の流路に供給する水素ガス流路を配設し、前記COシフト反応装置は上流側の高温シフト反応器と下流側の低温シフト反応器によって構成し、前記高温シフト反応器の内部に該水素ガス流路を通じて供給された水素ガスと反応してパージ窒素に含有する酸素を燃焼させる燃焼触媒を充填した燃焼触媒器を設け、前記高温シフト反応器の上流側となる主系統の流路に脱硫器を設置すると共に、この脱硫器の内部に該水素ガス流路を通じて供給された水素ガスと反応してパージ窒素に含有する酸素を燃焼させる燃焼触媒を充填したことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の石炭ガス化ガスのCO分離回収装置は、主系統の流路を流下する石炭ガス化ガス中のCOをシフト触媒によりCOに転換する該主系統の流路に設置されたCOシフト反応装置を備え、このCOシフト反応装置によって生成されたCOを石炭ガス化ガスから分離して回収する石炭ガス化ガスのCO分離回収装置において、前記CO分離回収装置の起動時又は停止時に、パージ窒素を前記COシフト反応装置の上流側となる該CO分離回収装置の主系統の流路に供給するパージ窒素流路を配設し、水素ガスを前記COシフト反応装置の上流側となる該CO分離回収装置の主系統の流路に供給する水素ガス流路を配設し、前記COシフト反応装置は上流側のシフト反応器と下流側のシフト反応器によって構成し、前記上流側のシフト反応器の上流側となる主系統の流路に、該水素ガス流路を通じて供給された水素ガスと反応してパージ窒素に含有する酸素を燃焼させる燃焼触媒を充填した燃焼触媒器を設け、前記燃焼触媒器の上流側となる主系統の流路に水洗塔を設置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、石炭ガス化ガスのCO分離回収装置の起動時及び停止時に、シフト反応器の触媒の性能低下を防止するために該CO分離回収装置に供給するパージ用の窒素ガスに少量の酸素が含まれていた場合に、触媒の酸化を抑制して前記触媒の還元を不要とし前記CO分離回収装置の起動時間の短縮を可能とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施例である石炭ガス化ガスのCO分離回収装置の概略系統図。
【図2】本発明の第2実施例である石炭ガス化ガスのCO分離回収装置の概略系統図。
【図3】図2に示した本発明の第2実施例の石炭ガス化ガスのCO分離回収装置に備えられた高温シフト反応器への燃焼触媒の設置状況を示す第1実施態様の高温シフト反応器の断面構造図。
【図4】本発明の第3実施例である石炭ガス化ガスのCO分離回収装置の概略系統図。
【図5】図4に示した本発明の第3実施例の石炭ガス化ガスのCO分離回収装置に備えられた高温シフト反応器への燃焼触媒の設置状況を示す第2実施態様の高温シフト反応器の断面構造図。
【図6】本発明の第4実施例である石炭ガス化ガスのCO分離回収装置の概略系統図。
【図7】図1、図2、図4及び図6に示した本発明の実施例である石炭ガス化ガスのCO分離回収装置に備えられた高温シフト反応器及び低温シフト反応における特性図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施例である石炭ガス化ガスのCO分離回収装置について図面を参照して以下に説明する。
【実施例1】
【0024】
本発明の第1実施例である石炭ガス化ガスのCO分離回収装置について図1を用いて説明する。
【0025】
図1において、本実施例である石炭ガス化ガスのCO分離回収装置は、ガスタービンの燃料となる石炭ガス化ガスを石炭から生成する石炭ガス化プラント(図示せず)から供給された原料石炭ガスである石炭ガス化ガスを脱硫が可能な温度まで温度を上げる、及び/或いは、外部から供給された窒素ガスであるパージ窒素中に含まれた酸素を燃焼触媒で燃焼可能な温度まで上げる原料空気予熱器1と、前記原料空気予熱器1を流下して供給された石炭ガス化ガスから石炭ガス化ガス中の硫黄分を取除く脱硫器2を主系統となる流路61に備えている。
【0026】
前記CO分離回収装置は、該CO分離回収装置の起動時、停止時にパージ窒素としての窒素ガスをCO分離回収装置の主系統の流路61に供給するパージ窒素流路71に設置され、パージ窒素の流量を調節するパージ用窒素ガス供給弁17と、このパージ窒素中に含まれる酸素を燃焼(O+2H→2HO)させるための水素ガスを供給する水素ガス流路72に設置され、水素の流量を調節する水素流量調節弁18とが備えられている。
【0027】
前記CO分離回収装置には、前記パージ窒素流路71を通じて供給されるパージ窒素中に含まれる酸素を、前記水素ガス流路72を通じて供給される水素ガス、もしくは石炭ガス化ガスに含有する水素を用いて燃焼(O+2H→2HO)させるための燃焼触媒を充填した燃焼触媒器20が、脱硫器2の下流側となる流路61に設置されている。
【0028】
前記燃焼触媒器20には水素とパージ窒素中に含まれる酸素を混合する予混合器19が設置されており、外部から蒸気流路73を通じて前記供給された高圧蒸気である蒸気を燃焼触媒器20の下流側の流路61に加えるミキサー3が設置されている。
【0029】
前記CO分離回収装置は、脱硫器2、予混合記、燃焼触媒器20及びミキサー3をそれぞれ経て主系統の流路61を流下した石炭ガス化ガス中のCOと蒸気からシフト触媒を介してCOとHにシフト反応(CO+HO→CO+H)させる前記流路61に設置した高温シフト反応器5を備えている。
【0030】
前記CO分離回収装置の高温シフト反応器5の上流側となる主系統の流路61には、該流路61を流下した石炭ガス化ガスにシフト反応可能な温度まで上げる、もしくはパージ窒素の温度を上げる主系統の流路61に設置した原料空気予熱器4が設置されている。
【0031】
前記CO分離回収装置の高温シフト反応器5の下流側となる主系統の流路61には、前記高温シフト反応器5を出たシフト反応後の石炭ガス化ガス(シフトガス)を該流路61を通じて流下させ、後段の低温シフト反応器で反応可能な温度まで冷却するシフトガス冷却器6と、このシフトガス冷却器6を出て主系統の流路61を通じて流下した石炭ガス化ガス中のCOと蒸気からシフト触媒を介してCOとHにシフト反応(CO+HO→CO+H)する低温シフト反応器7とがそれぞれ備えられている。
【0032】
前記CO分離回収装置は、前記低温シフト反応器7を出て流路61を通じて流下したシフト反応後の石炭ガス化ガス(シフトガス)を冷却し、シフトガス中の余剰蒸気を凝縮させる該流路61に設置したシフトガス冷却器8と、前記シフトガス冷却器8を出て流路61を通じて流下したシフトガスを気液分離する該流路61に設置したノックアウトドラム9と、前記高温シフト反応器5と低温シフト反応器7との間の流路61に設置されており、該低温シフト反応器7で低温シフト反応が可能な温度となるように前記高温シフト反応器5を出たシフトガスの温度を調節する温度調節器10を備えている。
【0033】
前記CO分離回収装置は、ノックアウトドラム9でドレンを分離したシフトガスを前記高温シフト反応器5及び低温シフト反応器7に再度供給するように、該ノックアウトドラム9の下流側の流路61から分岐して、これらのシフト反応器5及びシフト反応器7をバイパスするバイパス流路62が配設されており、前記バイパス流路62には該高温シフト反応器5及び低温シフト反応器7にシフトガスをリサイクルガスとして再度供給するために該リサイクルガスを昇圧するリサイクルガス圧縮機11が設置されている。
【0034】
前記バイパス流路62には前記リサイクルガス圧縮機11で昇圧されたシフトガスが再度リサイクルガスとして高温シフト反応器5及び低温シフト反応器7に供給するリサイクルガスの流量及び圧力調整を行うリサイクルガス量調整弁12が備えられている。
【0035】
前記CO分離回収装置は、前記脱硫器2で脱硫した石炭ガス化ガスをシフト反応させないで下流側のCOの回収を行う機器に供給するために、高温シフト反応器5及び低温シフト反応器7をバイパスするバイパス流路63が配設されており、このバイパス流路63を通じてノックアウトドラム9出口まで前記石炭ガス化ガスをバイパスさせて供給している。
【0036】
前記バイパス流路63にはCOの回収を行う機器でのCO回収率を調節するために前記石炭ガス化ガスの供給量を調節する原料石炭ガスバイパス量調節弁13が設置されている。
【0037】
前記CO分離回収装置は、前記ノックアウトドラム9を出て流路61を通じて流下したシフトガスのうち、流路61から分岐してバイパス流路62を流下して再度、高温シフト反応器5及び低温シフト反応器7に供給されるリサイクルガスを除いたシフトガスと、流路61に設置した高温シフト反応器5及び低温シフト反応器7をバイパスしてバイパス流路63を通じて供給された石炭ガス化ガスとが合流した混合ガスを吸収塔15の入口温度まで下げる前記流路61に設置されたシフトガス冷却器14と、前記シフトガス冷却器14を出て前記流路61を流下した前記合流したガスに含まれたシフトガス中のCOを吸収液に吸収させる吸収塔15とを備えている。
【0038】
この吸収塔15ではCOを吸収した吸収液を再生塔(図示せず)に供給し、前記再生塔によって再生したCOを含まない吸収液が前記吸収塔15に供給されるように、吸収液が循環する(図示せず)ように構成されている。
【0039】
そして前記吸収塔15で吸収液によって合流したガスに含まれたシフトガス中のCOを分離して精製ガスを生成し、この精製ガスが該吸収塔15の出口から精製ガスノックアウトドラム16を経由して前記流路61を通じてガスタービン(図示せず)に燃料として供給される。
【0040】
精製ガスノックアウトドラム16は、吸収塔15から出たキャリーオーバーした吸収液を補足する装置である。
【0041】
前記CO分離回収装置では、該CO分離回収装置の起動時、停止時にパージ窒素をCO分離回収装置に供給する場合にパージ窒素に含まれた少量の酸素を燃焼触媒器に水素ガスを供給して反応させて燃焼させているが、パージ用の窒素ガスに酸素が含まれていると酸素によって酸化されたCOシフト反応装置の触媒を再生させねばならないので、パージ窒素中の酸素が完全に燃焼したか確認する必要がある。
【0042】
そのために前記CO分離回収装置では、ノックアウトドラム9の下流側となる流路61にパージ窒素中に含まれる水素濃度を測定する水素分析計23を設け、この水素分析計23で測定されたパージ窒素中の水素濃度の値に基いて前記水素ガス流路に設置した水素流量調節弁18に操作信号を出力する制御装置100を設置して、所定の時間パージ、及び機器の昇温を行っている。
【0043】
前記制御装置100においては、水素分析計23で検出したパージ窒素中の水素濃度の測定値を該制御装置100に設けた水素濃度の設定値(水素濃度約2%)と比較して両者の偏差信号を求め、この偏差信号に基づいて水素流量調節弁18の開度を調整することによって、前記酸素燃焼器20に供給される水素ガスの流量を調節し、ノックアウトドラム9の下流側の流路61を流下するパージ窒素中の水素濃度が約2%程度の水素濃度を維持するように水素ガス流量を制御するものである。
【0044】
即ち、水素分析計23で検出したパージ窒素中の水素濃度が2%を超えている場合はパージ窒素中の酸素濃度がほぼ0%であることを意味するので水素流量調節弁18の開度を絞り、水素ガス流路72を経由して主系統の流路61に供給される水素ガスの流量を減少させる。
【0045】
また、水素分析計23で検出したパージ窒素中の水素濃度が2%未満になった場合はパージ窒素中の酸素濃度が増加する傾向にあることを意味するので水素流量調節弁18の開度を開き、水素ガス流路72を経由して主系統の流路61に供給される水素ガスの流量を増加させる。
【0046】
ところで、前記燃焼触媒器20に用いられる触媒の活性成分には、白金金属系(Pt、Pd、Rh)、及び遷移金属(Cu、Mn、Co、Fe、Ni等)の酸化物が用いられるが、本実施例の触媒の活性成分は低中温(室温〜800℃)で最も活性の高いパラジウムおよび/または白金を用いた。
【0047】
また、前記燃焼触媒器20に用いられる触媒の担体には耐熱性で高表面積な酸化物が用いられるのが一般的であり、本実施例ではAl、SiO、ZrOのいずれか、或いはこれらの混合物や複合酸化物を用いた。
【0048】
本実施例のCO分離回収装置においては、CO分離回収装置の起動時、停止時に、水素分析計23で検出したパージ窒素中の水素濃度の測定値に基づいて制御装置100によって水素流量調節弁18の開度を調整して所定の時間パージ、及び機器の昇温をする。
【0049】
このように、パージ窒素ガスに混入させる水素ガスの流量を制御して燃焼触媒器20で反応させることで、パージ窒素ガス中に含む微量の酸素を除去(O+2H→2HO)している。
【0050】
そして、燃焼触媒器20による酸素除去後の高純度窒素を用いて、原料予熱器4、高温シフト反応器5、シフトガス冷却器6、低温シフト反応器7、シフトガス冷却器8、ノックアウトドラム9、シフトガス冷却器14、吸収塔15、精製ガスノックアウトドラム16、及びリサイクル系統をパージする。
【0051】
パージに用いた高純度窒素は酸素を含まないため、高温シフト反応器5及び低温シフト反応器7に用いられるシフト触媒の酸化を防止できる。このように触媒が酸化しないため、後の触媒還元処理をする必要がなく、CO分離回収装置の起動時間の削減が可能となる。
【0052】
また、空気分離設備でパージ窒素用の高純度窒素を作成しようとすると莫大なコストがかかり、設備も大きくなるが、燃焼触媒器20を用いた場合には、その化学反応によって低純度窒素から高純度窒素を作成できるため、低コスト、かつコンパクトな設備でパージ用の高純度窒素を生成することが可能となる。
【0053】
本実施例によれば、石炭ガス化ガスのCO分離回収装置の起動時及び停止時に、シフト反応器の触媒の性能低下を防止するために該CO分離回収装置に供給するパージ用の窒素ガスに少量の酸素が含まれていた場合に、触媒の酸化を抑制して前記触媒の還元を不要とし前記CO分離回収装置の起動時間の短縮を可能とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置が実現できる。
【実施例2】
【0054】
本発明の第2実施例である石炭ガス化ガスのCO分離回収装置について図2を用いて説明する。
【0055】
図2に示した本実施例である石炭ガス化ガスのCO分離回収装置は、図1に示した第1実施例である石炭ガス化ガスのCO分離回収装置と基本的な構成及び作用は同じであるので、両者に共通した構成及び作用の説明は省略し、相違する部分のみ以下に説明する。
【0056】
ところで、本実施例のCO分離回収装置では、第1実施例の予混合器19を有する燃焼触媒器20に替えて、高温シフト反応器5の内部に燃焼触媒を設置する構成の第1実施態様を図3に示している。
【0057】
即ち、図2に示した本発明の第2実施例の石炭ガス化のCO分離回収装置に備えられた高温シフト反応器5に燃焼触媒を設置する構成の第1実施態様について図3を用いて説明する。
【0058】
図3に示した高温シフト反応器5に燃焼触媒を設置する構成において、高温シフト反応器5は反応容器5aを備えており、この高温シフト反応器5には、石炭ガス化ガス、もしくはパージ窒素を供給する原料入口ノズル24がその先端が内部に延伸した延伸部を有するように、反応容器5aの上部に設置されている。
【0059】
また高温シフト反応器5には、シフト触媒を経た石炭ガス化ガスのシフト反応後のシフトガスを高温シフト反応器5から排出する、もしくはパージ窒素中に含まれる酸素燃焼後の高純度窒素を排出するガス出口ノズル25が反応容器5aの底部に設置されている。
【0060】
図3に示した第1実施態様の高温シフト反応器5では、前記反応容器5aの内部にパージ窒素中に含まれる酸素を燃焼するための燃焼触媒21を充填する容器である燃焼触媒容器26と、石炭ガス化ガス、もしくは高純度窒素がシフト触媒へ満遍なく行渡るためのセラミックボール27と、シフト反応をするための高温シフト触媒28とがそれぞれ備えられている。この燃焼触媒21を充填した燃焼触媒容器26は高温シフト触媒28よりも上流側に設置されている。
【0061】
図3に示したように高温シフト反応器5を構成することによって、燃焼触媒容器26が反応容器5aの内部で原料入口ノズル24を覆う形になり、該原料入口ノズル24を通じて反応容器5aの内部に供給されたパージ窒素は必ず燃焼触媒容器26の内部に設置した燃焼触媒21を通過する。
【0062】
また、原料入口ノズル24の先端側となる燃焼触媒容器26には該原料入口ノズル24から内部に供給した石炭ガス化ガスの流れを反転させて分散するガイド部26aが備えられている。
【0063】
燃焼触媒容器26に備えたガイド部26aの存在によって、該原料入口ノズル24を通じて反応容器5aの内部に供給された石炭ガス化ガス、もしくはパージ窒素の流れは反転して分散し、この反転した流れが燃焼触媒容器26に充填した燃焼触媒を通過するように構成されているので、石炭ガス化ガス、もしくはパージ窒素は満遍なく燃焼触媒21並びに高温シフト触媒28に行渡る。
【0064】
前記燃焼触媒容器26内に充填された燃焼触媒21の機能はパージ窒素中に含まれる酸素を燃焼させるためのものである。
【0065】
本実施例のCO分離回収装置では、第1実施例の予混合器19を有する燃焼触媒器20に替えて、高温シフト反応器5の内部に、CO分離回収装置の起動時、停止時に供給されるパージ窒素中に含まれる酸素を水素供給流路から導いた水素を供給して燃焼触媒で燃焼(O+2H→2HO)させるため、もしくは石炭ガス化ガスに含有する水素を燃焼触媒で燃焼(O+2H→2HO)させるための燃焼触媒を充填した粒状燃焼触媒21が設置されている。
【0066】
前記高温シフト反応器5の内部に設置した粒状燃焼触媒21の触媒の活性成分にも、白金金属系(Pt、Pd、Rh)、及び遷移金属(Cu、Mn、Co、Fe、Ni等)の酸化物が用いられるが、低中温(室温〜800℃)で最も活性の高いパラジウムおよび/または白金とした。また、担体には耐熱性で高表面積な酸化物が用いられるのが一般的で、Al、SiO、ZrO、及びこれらの混合物、複合酸化物が用いられる。
【0067】
前記CO分離回収装置では、該CO分離回収装置の起動時、停止時にパージ窒素をCO分離回収装置に供給する場合にパージ窒素に含まれた少量の酸素を燃焼触媒器に水素ガスを供給して反応させて燃焼させているが、パージ用の窒素ガスに酸素が含まれていると酸素によって酸化されたCOシフト反応装置の触媒を再生させねばならないので、パージ窒素中の酸素が完全に燃焼したか確認する必要がある。
【0068】
そのために前記CO分離回収装置では、ノックアウトドラム9の下流側となる流路61にパージ窒素中に含まれる水素濃度を測定する水素分析計23を設け、この水素分析計23で測定されたパージ窒素中の水素濃度の値に基いて前記水素ガス流路に設置した水素流量調節弁18に操作信号を出力する制御装置100を設置して、所定の時間パージ、及び機器の昇温を行っている。
【0069】
本実施例のCO分離回収装置においては、CO分離回収装置の起動時、停止時に、パージ窒素ガスに水素ガスを混入させて高温シフト反応器5の内部に設置した粒状燃焼触媒21で反応させることで、パージ窒素ガス中に含む微量の酸素を除去(O+2H→2HO)している。
【0070】
そして、粒状燃焼触媒21による酸素除去後の高純度窒素を用いて、高温シフト反応器5、シフトガス冷却器6、低温シフト反応器7、シフトガス冷却器8、ノックアウトドラム9、シフトガス冷却器14、吸収塔15、精製ガスノックアウトドラム16、及びリサイクル系統をパージする。
パージに用いた高純度窒素は酸素を含まないため、高温シフト反応器5及び低温シフト反応器7に用いられるシフト触媒の酸化を防止できる。このように触媒が酸化しないため、後の触媒還元処理をする必要がなく、CO分離回収装置の起動時間の削減が可能となる。
【0071】
高温シフト反応器5の中に粒状燃焼触媒21を充填することで、燃焼触媒器20の設置が不要となり、低コストかつコンパクトな設備でパージ用の高純度窒素を生成することが可能となる。
【0072】
本実施例によっても、石炭ガス化ガスのCO分離回収装置の起動時及び停止時に、シフト反応器の触媒の性能低下を防止するために該CO分離回収装置に供給するパージ用の窒素ガスに少量の酸素が含まれていた場合でも、触媒の酸化を抑制して前記触媒の還元を不要とし前記CO分離回収装置の起動時間の短縮を可能とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置が実現できる。
【実施例3】
【0073】
本発明の第3実施例である石炭ガス化ガスのCO分離回収装置について図4を用いて説明する。
【0074】
図4に示した本実施例である石炭ガス化ガスのCO分離回収装置は、図2に示した第2実施例である石炭ガス化ガスのCO分離回収装置と基本的な構成及び作用は同じであるので、両者に共通した構成及び作用の説明は省略し、相違する部分のみ以下に説明する。
【0075】
ところで、本実施例のCO分離回収装置では、第1実施例の予混合器19を有する燃焼触媒器20に替えて、高温シフト反応器5の内部に燃焼触媒を設置する構成の第2実施態様を図5に示している。
【0076】
即ち、図4に示した本発明の第3実施例の石炭ガス化のCO分離回収装置に備えられた高温シフト反応器5に燃焼触媒を設置する構成の第2実施態様を図5を用いて説明する。
【0077】
図5に示した高温シフト反応器5に燃焼触媒を設置する構成において、高温シフト反応器5は反応容器5aを備えており、この高温シフト反応器5には、石炭ガス化ガス、もしくはパージ窒素を供給する原料入口ノズル24が反応容器5aの上部に設置され、シフト触媒を経た石炭ガス化ガスのシフト反応後のシフトガスを高温シフト反応器5から排出する、もしくはパージ窒素中に含まれる酸素燃焼後の高純度窒素を排出するガス出口ノズル25が反応容器5aの底部に設置されている。
【0078】
図5に示した第2実施態様の高温シフト反応器5では、前記反応容器5aの内部にパージ窒素中に含まれる酸素を燃焼するための燃焼触媒21が充填されている。また、石炭ガス化ガス、もしくは高純度窒素がシフト触媒へ満遍なく行渡るためのセラミックボール27と、シフト反応をするための高温シフト触媒28とがそれぞれ備えられている。この燃焼触媒21は高温シフト触媒28よりも上流側に設置されている。
【0079】
原料入口ノズル24の近傍の高温シフト反応器5の内部には該原料入口ノズル24から内部に供給した石炭ガス化ガスの流れを分散する分散器29が備えられている。
【0080】
図5に示したように高温シフト反応器5を構成することによって、分散器29が反応容器5aの内部で原料入口ノズル24を覆う形になり、該原料入口ノズル24を通じて反応容器5aの内部に供給された石炭ガス化ガス、もしくはパージ窒素の流れが分散器29によって分散され、石炭ガス化ガス、もしくはパージ窒素は満遍なく燃焼触媒21並びに高温シフト触媒28に行渡る。
【0081】
前記反応容器5aの内部に充填された燃焼触媒21の機能はパージ窒素中に含まれる酸素を燃焼させるためのものである。
【0082】
本実施例のCO分離回収装置では、パージ窒素中に含まれる酸素と外部から供給する水素、もしくは石炭ガス化ガスに含有する水素を燃焼触媒によって十分に燃焼(O+2H→2HO)させるため、燃焼触媒である粒状燃焼触媒21を前記高温シフト反応器5の内部に充填させるだけでなく、粒状燃焼触媒22を前記脱硫器2の内部にも充填した構成を採用している。
【0083】
前記高温シフト反応器5の内部に充填した粒状燃焼触媒21の触媒、並びに前記脱硫器2の内部に充填した粒状燃焼触媒22の触媒の活性成分にも、白金金属系(Pt、Pd、Rh)、及び遷移金属(Cu、Mn、Co、Fe、Ni等)の酸化物が用いられるが、低中温(室温〜800℃)で最も活性の高いパラジウムおよび/または白金とした。また、担体には耐熱性で高表面積な酸化物が用いられるのが一般的で、Al、SiO、ZrO、及びこれらの混合物、複合酸化物が用いられる。
【0084】
前記CO分離回収装置では、該CO分離回収装置の起動時、停止時にパージ窒素をCO分離回収装置に供給する場合にパージ窒素に含まれた少量の酸素を燃焼触媒器に水素ガスを供給して反応させて燃焼させているが、パージ用の窒素ガスに酸素が含まれていると酸素によって酸化されたCOシフト反応装置の触媒を再生させねばならないので、パージ窒素中の酸素が完全に燃焼したか確認する必要がある。
【0085】
そのために前記CO分離回収装置では、ノックアウトドラム9の下流側となる流路61にパージ窒素中に含まれる水素濃度を測定する水素分析計23を設け、この水素分析計23で測定されたパージ窒素中の水素濃度の値に基いて前記水素ガス流路に設置した水素流量調節弁18に操作信号を出力する制御装置100を設置して、所定の時間パージ、及び機器の昇温を行っている。
【0086】
本実施例のCO分離回収装置においては、CO分離回収装置の起動時、停止時に、パージ窒素ガスに水素ガスを混入させて高温シフト反応器5の内部に充填した粒状燃焼触媒21、及び脱硫器2の内部に充填した粒状燃焼触媒22でそれぞれ反応させることで、パージ窒素ガス中に含む微量の酸素を除去(O+2H→2HO)している。
【0087】
そして、粒状燃焼触媒22及び粒状燃焼触媒21による酸素除去後の高純度窒素を用いて、高温シフト反応器5、シフトガス冷却器6、低温シフト反応器7、シフトガス冷却器8、ノックアウトドラム9、シフトガス冷却器14、吸収塔15、精製ガスノックアウトドラム16、及びリサイクル系統をパージする。
【0088】
パージに用いた高純度窒素は酸素を含まないため、高温シフト反応器5及び低温シフト反応器7に用いられるシフト触媒の酸化を防止できる。このように触媒が酸化しないため、後の触媒還元処理をする必要がなく、CO分離回収装置の起動時間の削減が可能となる。
【0089】
高温シフト反応器5の内部に粒状燃焼触媒21を、脱硫器2の内部に粒状燃焼触媒22をそれぞれ充填することで燃焼触媒器20の設置が不要となり、低コストかつコンパクトな設備でパージ用の高純度窒素を生成することが可能となる。
ジ用の高純度窒素を生成することが可能となる。
【0090】
また、高温シフト反応器5の中に粒状燃焼触媒21を充填し、脱硫器2の内部の最下流側にも同じ粒状燃焼触媒22を充填して燃焼触媒を2重に充填することで、パージ窒素中に含有された少量の酸素を十分に燃焼させることが可能となる。
【0091】
即ち、脱硫器2の内部には脱硫触媒層が充填されているが、この脱硫触媒層の下流側となる脱硫器2の内部の最下流側に燃焼触媒を層状に充填させた構成である。
【0092】
図5に示した第2実施態様の高温シフト反応器5は、図4に示した本発明の第3実施例の石炭ガス化のCO分離回収装置に備えられた高温シフト反応器5に適用できるだけでなく、図2に示した本発明の第2実施例の石炭ガス化のCO分離回収装置に備えられた高温シフト反応器5にも適用できるものである。
【0093】
同様に、図3に示した第1実施態様の高温シフト反応器5は、図2に示した本発明の第2実施例の石炭ガス化のCO分離回収装置に備えられた高温シフト反応器5に適用できるだけでなく、図4に示した本発明の第3実施例の石炭ガス化のCO分離回収装置に備えられた高温シフト反応器5にも適用できるものである。
【0094】
本実施例によっても、石炭ガス化ガスのCO分離回収装置の起動時及び停止時に、シフト反応器の触媒の性能低下を防止するために該CO分離回収装置に供給するパージ用の窒素ガスに少量の酸素が含まれていた場合に、触媒の酸化を抑制して前記触媒の還元を不要とし前記CO分離回収装置の起動時間の短縮を可能とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置が実現できる。
【実施例4】
【0095】
本発明の第4実施例である石炭ガス化ガスのCO分離回収装置について図6を用いて説明する。
【0096】
図6に示した本実施例である石炭ガス化ガスのCO分離回収装置は、図1に示した第1実施例である石炭ガス化ガスのCO分離回収装置と基本的な構成及び作用は同じであるので、両者に共通した構成及び作用の説明は省略し、相違する部分のみ以下に説明する。
【0097】
図6に示した本実施例の石炭ガス化のCO分離回収装置においては、図1に示した第1実施例のCO分離回収装置で主系統の流路61に設置されて石炭ガス化ガスから石炭ガス化ガス中の硫黄分を取除く脱硫器2に替えて、石炭ガス化ガスからサワーシフト触媒の触媒毒であるハロゲンを除去する水洗塔50が設置されている。
【0098】
更に本実施例の石炭ガス化のCO分離回収装置においては、第1実施例のCO分離回収装置で主系統の流路61に設置されて石炭ガス化ガス中のCOと蒸気からシフト触媒を介してCOとHにシフト反応(CO+HO→CO+H)させる高温シフト反応器5及び低温シフト反応器7に替えて、石炭ガス化ガス中のCOと蒸気からシフト触媒を介してCOとHにシフト反応(CO+HO→CO+H)させる上流側のサワーシフト反応器40と、サワーシフト反応器40を出た石炭ガス化ガス中のCOと蒸気からシフト触媒を介してCOとHにシフト反応(CO+HO→CO+H)させる下流側のサワーシフト反応器41がそれぞれ設置されている。
【0099】
前記上流側のサワーシフト反応器40及び下流側のサワーシフト反応器41には、触媒の活性を維持するために耐硫黄性および、耐重金属性触媒であるサワーシフト触媒(コバルト/モリブテン系触媒)が用いられている。
【0100】
本実施例のCO分離回収装置においても、CO分離回収装置の起動時、停止時に、水素分析計23で検出したパージ窒素中の水素濃度の測定値に基づいて制御装置100によって水素流量調節弁18の開度を調整して所定の時間パージ、及び機器の昇温をする。
【0101】
このように、パージ窒素ガスに混入させる水素ガスの流量を制御して燃焼触媒器20で反応させることで、パージ窒素ガス中に含む微量の酸素を除去(O+2H→2HO)している。
【0102】
そして、燃焼触媒器20による酸素除去後の高純度窒素を用いて、原料予熱器4、前段のサワーシフト反応器40、シフトガス冷却器6、後段のサワーシフト反応器41、シフトガス冷却器8、ノックアウトドラム9、シフトガス冷却器14、吸収塔15、精製ガスノックアウトドラム16、及びリサイクル系統をパージする。
【0103】
パージに用いた高純度窒素は酸素を含まないため、複数のサワーシフト反応器を構成する上流側のサワーシフト反応器40及び下流側のサワーシフト反応器41のシフト触媒の酸化を防止できる。このように触媒が酸化しないため、後の触媒還元処理をする必要がなく、CO分離回収装置の起動時間の削減が可能となる。
【0104】
さらに、本実施例のサワーシフト反応器40及びサワーシフト反応器41に採用したサワーシフトは耐硫黄性であるため脱硫の必要がなく、脱硫器2を設置する必要がない。また、運転温度域が250〜500℃と広いため温度調節器10及びシフトガス冷却器6での温度調節を低温シフト反応器7を設置した場合に比較して厳密に管理する必要がない。
【0105】
本実施例によっても、石炭ガス化ガスのCO分離回収装置の起動時及び停止時に、シフト反応器の触媒の性能低下を防止するために該CO分離回収装置に供給するパージ用の窒素ガスに少量の酸素が含まれていた場合に、触媒の酸化を抑制して前記触媒の還元を不要とし前記CO分離回収装置の起動時間の短縮を可能とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置が実現できる。
【0106】
次に図1、図2、及び図4に示した本発明の各実施例の石炭ガス化ガスのCO分離回収装置に備えられた高温シフト反応器5及び低温シフト反応器7の機能について図7を用いて説明する。
【0107】
前記各実施例の石炭ガス化ガスのCO分離回収装置に備えられた高温シフト反応器5及び低温シフト反応器7に設置されるCOシフト触媒には、硫黄が触媒毒となる高温シフト触媒(鉄/クロム系触媒)および/または低温シフト触媒(銅/亜鉛系触媒)を用いる。
【0108】
高温シフト反応器5に用いられる高温シフト触媒と、低温シフト反応器7に用いられる低温シフト触媒の反応は上記(1)式と同じであるが、触媒に用いられている金属の違いにより、運転温度に違いが生じる。
【0109】
図7に夫々示すように、高温シフト触媒の運転温度は約300〜500℃であり、低温シフト触媒の運転温度は約180〜290℃である。上記(1)式は発熱反応であり、高温シフト反応器5入口で300℃であっても高温シフト反応器5の出口では450℃となる。
【0110】
そこで、後段の低温シフト反応器7でシフト反応させるために、シフトガス冷却器6によってシフトガスを所望の温度に冷却させればよい。
【0111】
また、図7に一点鎖線で示すシフト反応平行線が低温帯で100%近傍となっているように、高いシフト反応率を得るためには低温でシフト反応させる必要があるが、高温シフト触媒は運転温度域が低温シフト触媒に比較し大きく運転制御に有利であるため、前記した本実施例のCO分離回収装置のように、高温シフト反応器と低温シフト反応器を組合せて構成することで高いシフト反応率を効率的に得ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、石炭ガス化システムで発生したガス化ガスと蒸気を混合し、シフト反応器においてシフト反応させて発生したCOを吸収液にて吸収除去する石炭ガス化CO分離回収装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0113】
1:原料予熱器1、2:脱硫器、3:ミキサー、4:原料予熱器2、5:高温シフト反応器、6:シフトガス冷却器1、7:低温シフト反応器、8:シフトガス冷却器2、9:ノックアウトドラム、10:温度調節弁、11:リサイクルガス圧縮機、12:リサイクルガス量調節弁、13:原料石炭ガスバイパス量調節弁、14:シフトガス冷却器3、15:吸収塔、16:精製ガスノックアウトドラム、17:パージ用窒素ガス供給弁、18:水素流量調節弁、19:予混合器、20:燃焼触媒器、21:粒状燃焼触媒、22:粒状燃焼触媒、23:水素分析計、24:原料入口ノズル、25:ガス出口ノズル、26:燃焼触媒容器、26a:ガイド部、27:セラミックボール、28:高温シフト触媒、29:分散器、40:サワーシフト反応器、41:サワーシフト反応器、50:水洗塔、61:主系統の流路、62、63:バイパス流路、71:パージ用窒素ガス流路:72:水素ガス流路、73:蒸気流路、100:制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主系統の流路を流下する石炭ガス化ガス中のCOをシフト触媒によりCOに転換する該主系統の流路に設置されたCOシフト反応装置を備え、このCOシフト反応装置によって生成されたCOを石炭ガス化ガスから分離する機器によって回収する石炭ガス化ガスのCO分離回収装置において、
前記CO分離回収装置の起動時又は停止時に、パージ窒素を前記COシフト反応装置の上流側となる該CO分離回収装置の主系統の流路に供給するパージ窒素流路を配設し、
水素ガスを前記COシフト反応装置の上流側となる該CO分離回収装置の主系統の流路に供給する水素ガス流路を配設し、
前記COシフト反応装置の上流側となる主系統の流路に、該水素ガス流路を通じて供給された水素ガスと反応してパージ窒素に含有する酸素を燃焼させる燃焼触媒を充填した燃焼触媒器を設け、
前記燃焼触媒器の上流側となる主系統の流路に脱硫器を設けたことを特徴とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置。
【請求項2】
主系統の流路を流下する石炭ガス化ガス中のCOをシフト触媒によりCOに転換する該主系統の流路に設置されたCOシフト反応装置を備え、このCOシフト反応装置によって生成されたCOを石炭ガス化ガスから分離する機器によって回収する石炭ガス化ガスのCO分離回収装置において、
前記CO分離回収装置の起動時又は停止時に、パージ窒素を前記COシフト反応装置の上流側となる該CO分離回収装置の主系統の流路に供給するパージ窒素流路を配設し、
水素ガスを前記COシフト反応装置の上流側となる該CO分離回収装置の主系統の流路に供給する水素ガス流路を配設し、
前記COシフト反応装置は上流側の高温シフト反応器と下流側の低温シフト反応器によって構成し、
前記高温シフト反応器の内部に該水素ガス流路を通じて供給された水素ガスと反応してパージ窒素に含有する酸素を燃焼させる燃焼触媒を充填した第2の燃焼触媒器を設けたことを特徴とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置。
【請求項3】
主系統の流路を流下する石炭ガス化ガス中のCOをシフト触媒によりCOに転換する該主系統の流路に設置されたCOシフト反応装置を備え、このCOシフト反応装置によって生成されたCOを石炭ガス化ガスから分離する機器によって回収する石炭ガス化ガスのCO分離回収装置において、
前記CO分離回収装置の起動時又は停止時に、パージ窒素を前記COシフト反応装置の上流側となる該CO分離回収装置の主系統の流路に供給するパージ窒素流路を配設し、
水素ガスを前記COシフト反応装置の上流側となる該CO分離回収装置の主系統の流路に供給する水素ガス流路を配設し、
前記COシフト反応装置は上流側の高温シフト反応器と下流側の低温シフト反応器によって構成し、
前記高温シフト反応器の内部に該水素ガス流路を通じて供給された水素ガスと反応してパージ窒素に含有する酸素を燃焼させる燃焼触媒を充填した第2の燃焼触媒器を設け、
前記高温シフト反応器の上流側となる主系統の流路に脱硫器を設置すると共に、この脱硫器の内部に該水素ガス流路を通じて供給された水素ガスと反応してパージ窒素に含有する酸素を燃焼させる燃焼触媒を充填したことを特徴とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置。
【請求項4】
主系統の流路を流下する石炭ガス化ガス中のCOをシフト触媒によりCOに転換する該主系統の流路に設置されたCOシフト反応装置を備え、このCOシフト反応装置によって生成されたCOを石炭ガス化ガスから分離する機器によって回収する石炭ガス化ガスのCO分離回収装置において、
前記CO分離回収装置の起動時又は停止時に、パージ窒素を前記COシフト反応装置の上流側となる該CO分離回収装置の主系統の流路に供給するパージ窒素流路を配設し、
水素ガスを前記COシフト反応装置の上流側となる該CO分離回収装置の主系統の流路に供給する水素ガス流路を配設し、
前記COシフト反応装置は上流側のサワーシフト反応器と下流側のサワーシフト反応器によって構成し、
前記上流側のサワーシフト反応器の上流側となる主系統の流路に、該水素ガス流路を通じて供給された水素ガスと反応してパージ窒素に含有する酸素を燃焼させる燃焼触媒を充填した燃焼触媒器を設け、
前記燃焼触媒器の上流側となる主系統の流路に水洗塔を設置したことを特徴とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の石炭ガス化ガスのCO分離回収装置において、
前記COシフト反応装置の上流側となる主系統の流路に該主系統の流路を流下するパージ窒素に含有する水素の濃度を測定する水素濃度計を設け、
前記水素ガス流路に該水素ガス流路を通じて供給する水素ガスの流量を調節する水素流量調節弁を設け、
前記水素濃度計で測定した水素濃度の計測値に基づいて前記水素流量調節弁の開度を制御する制御装置を設置したことを特徴とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の石炭ガス化ガスのCO分離回収装置において、
前記COシフト反応装置は前記主系統の流路に設置された高温シフト反応器と低温シフト反応器から構成されており、
前記高温シフト反応器の上流側に石炭ガス化ガスを予熱する予熱器を設置し、
前記高温シフト反応器の下流側及び低温シフト反応器の下流側に生成したシフトガスを冷却する冷却器をそれぞれ設置し、
前記低温シフト反応器の下流側に設置した冷却器よりも下流側にシフトガスに含まれた水分を分離する水分分離器を設置したことを特徴とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置。
【請求項7】
請求項4に記載の石炭ガス化ガスのCO分離回収装置において、
前記COシフト反応装置は前記主系統の流路に設置された上流側のサワーシフト反応器と下流側のサワーシフト反応器から構成されており、
前記上流側のサワーシフト反応器の上流側に石炭ガス化ガスを予熱する予熱器を設置し、
前記上流側のサワーシフト反応器の下流側及び下流側のサワーシフト反応器の下流側に生成したシフトガスを冷却する冷却器をそれぞれ設置し、
前記下流側のサワーシフト反応器の下流側に設置した冷却器よりも下流側にシフトガスに含まれた水分を分離する水分分離器を設置したことを特徴とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の石炭ガス化ガスのCO分離回収装置において、
前記COシフト反応装置をバイパスして石炭ガス化ガスの一部を石炭ガス化ガスからCOを分離して回収する前記機器に供給する第1のバイパス流路を配設し、
前記COシフト反応装置で生成されたシフトガスの一部を前記COシフト反応装置をバイパスしてリサイクルガスとして供給する第2のバイパス流路を配設し、
前記第2のバイパス流路に該第2のバイパス流路を流下するリサイクルガスを圧縮して昇圧する圧縮機を設置し、
このリサイクル圧縮機で圧縮され該第2のバイパス流路を通じて供給したリサイクルガスを前記シフト反応装置の上流側の主系統の流路にて前記石炭ガス化ガスの一部と混合させ、この混合ガスを前記シフト反応装置に再度、供給するようにしたことを特徴とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置。
【請求項9】
請求項4に記載の石炭ガス化ガスのCO分離回収装置において、
前記水洗塔では原料石炭ガスをハロゲン除去しており、前記COシフト反応装置に設置したサワーシフト反応器に充填するCOシフト触媒は、触媒の活性を維持するために耐硫黄性および、耐重金属性触媒であるサワーシフト触媒(コバルト/モリブテン系触媒)を用いていることを特徴とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の石炭ガス化ガスのCO分離回収装置において、
前記COシフト反応装置は前記主系統の流路に設置された高温シフト反応器と低温シフト反応器から構成されており、
前記高温シフト反応器に充填されるCOシフト触媒には硫黄が触媒毒となる高温シフト触媒(鉄/クロム系触媒)を用い、前記低温シフト反応器に充填されるCOシフト触媒には硫黄が触媒毒となる低温シフト触媒(銅/亜鉛系触媒)を用いることを特徴とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の石炭ガス化ガスのCO分離回収装置において、
前記燃焼触媒器に充填される燃焼触媒の活性成分にはパラジウム、または白金を用いることを特徴とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置。
【請求項12】
請求項2又は請求項3に記載の石炭ガス化ガスのCO分離回収装置において、
前記高温シフト反応器の内部に設けた第2の燃焼触媒器に充填される燃焼触媒は、シフト触媒層の上流側となる位置に層状に充填されることを特徴とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置。
【請求項13】
請求項3に記載の石炭ガス化ガスのCO分離回収装置において、
前記脱硫器の内部に燃焼触媒を充填した第3の燃焼触媒器が設置されており、この第3の燃焼触媒器に充填される燃焼触媒は脱硫触媒層の下流側となる位置に層状に充填されることを特徴とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置。
【請求項14】
請求項12項又は請求項13に記載の石炭ガス化ガスのCO分離回収装置において、
前記高温シフト反応器の内部に設けた第2の燃焼触媒器に充填される燃焼触媒、又は前記脱硫器の内部に設けた第3の燃焼触媒器に充填される燃焼触媒の活性成分には、パラジウム、または白金を用いることを特徴とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置。
【請求項15】
請求項12に記載の石炭ガス化ガスのCO分離回収装置において、
前記高温シフト反応器の内部にはシフト触媒と、該シフト触媒の上流側に位置する別の燃焼触媒とが設置され、
前記高温シフト反応器の上部に石炭ガス化ガスを該高温シフト反応器の内部に供給する入口ノズルが設置され、高温シフト反応器の底部に該シフト触媒を経た石炭ガス化ガスを該高温シフト反応器から排出する出口ノズルが設置され、
前記入口ノズルには高温シフト反応器の内部に延伸した延伸部を備えており、この入口ノズルの延伸部の先端側に該入口ノズルの延伸部から供給した石炭ガス化ガスの流れを反転させるガイド部を有する第2の燃焼触媒容器を設けたことを特徴とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置。
【請求項16】
請求項12に記載の石炭ガス化ガスのCO分離回収装置において、
前記高温シフト反応器の内部にはシフト触媒と、該シフト触媒の上流側に位置する別の燃焼触媒とが設置され、
前記高温シフト反応器の上部に石炭ガス化ガスを該高温シフト反応器の内部に供給する入口ノズルが設置され、高温シフト反応器の底部に該シフト触媒を経た石炭ガス化ガスを該高温シフト反応器から排出する出口ノズルが設置され、
前記入口ノズル近傍の高温シフト反応器の内部には該入口ノズルから供給した石炭ガス化ガスの流れを分散させる分散器を設けたことを特徴とする石炭ガス化ガスのCO分離回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−25642(P2012−25642A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168026(P2010−168026)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】