説明

石膏ボード用のアンカー

【課題】 4つの脚部を有するアンカーおいて隣接する脚部をリブなどで結合すると、リブで結合されている2つの脚部の間にビスが入り込まずそのリブが割れないので、確実にリブが割れるアンカーを提供する。
【解決手段】 基端に頭部を有し、先端に穿孔刃を有し、その間の胴部の外周に雄ネジが形成されており、4つの割溝を胴部の先端寄りから基端方向に亘って設けることにより4つの脚部が形成され、軸線方向から見て4つの割溝は十字形をなし、軸線に関し点対称をなす2つの脚部の先端部に仮連結部が架け渡され、該仮連結部に前記穿孔刃が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に建築関係で使用される石膏ボード用のアンカーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の石膏ボード用アンカーであって胴部を四つ割にして4つの脚部を形成したものは、隣り合う2つの脚部を一組としてその間の割溝内で対向する内面を部分的に結ぶ1つのリブが設けられ、さらに他の一組の脚部も同様にして1つのリブが設けられている。
【0003】
このように、従来のアンカーは4つの脚部を有し、リブは割溝内に設けられているから、アンカーの先端には4つの脚部の尖った先端が存在する。したがって、使用時にアンカーをボードにねじ込むときに脚部の尖った4つの先端がボードに当たって引っ掛るので、アンカーがボードに入りづらいのである。また、一組の脚部が1つのリブで結合され、他の一組の脚部も1つのリブで結合されているが、この一組の脚部と他の一組の脚部はリブで結合されていない。したがって、アンカーをボードにねじ込んだあとで比較的細いビスをねじ込むときに一組の脚部と他の一組の脚部同士はリブで結合されていないので容易に広げられるが、リブで結合されている2つの脚部の間にビスが入り込む構造でないからリブが割れずに脚部が完全に開脚されない虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−100810号公報
【特許文献2】登録実用新案第3009696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、4つの脚部を有するアンカーにおいて隣接する脚部をリブなどで結合すると、リブで結合されている2つの脚部の間にビスが入り込まないのでそのリブが割れない虞があることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1は、基端に頭部を有し、先端に穿孔刃を有し、その間の胴部の外周に雄ネジが形成されており、4つの割溝を胴部の先端寄りから基端方向に亘って設けることにより4つの脚部が形成され、軸線方向から見て4つの割溝は十字形をなし、軸線に関し点対称をなす2つの脚部の先端部に仮連結部が架け渡され、この仮連結部に前記穿孔刃が設けられ、且つ仮連結部は開脚の際に切断可能である構成である。
【0007】
請求項2は、仮連結部が形成されていない2つの自由端脚部の先端は、仮連結部が形成されている2つの脚部の先端部よりも基端寄りに存在する要素が請求項1に付加された構成である。
【0008】
請求項3は、仮連結部が形成されている2つの脚部の間の空間部であって仮連結部に隣接する先端空間部が、2つの自由端脚部の先端よりもアンカーの先端寄りに位置して露出している要素が請求項2に付加された構成である。
【0009】
請求項4は、十字形をなす割溝により断面が扇形に形成された脚部であって、仮連結部が形成されている2つの脚部の扇形の頂部が少なくとも先端空間部の範囲で面取りされている要素が請求項3に付加された構成である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1は、4つの割溝を胴部の先端寄りから基端方向に亘って設けることにより4つの脚部が形成され、軸線方向から見て4つの割溝は十字形をなし、軸線に関し点対称をなす2つの脚部の先端部に仮連結部が架け渡され、この仮連結部に前記穿孔刃が設けられ、仮連結部は開脚の際に切断可能である。したがって、仮連結部が形成されている2つの脚部は軸線を中心に対向するように位置している。これにより、石膏ボードに取り付けたアンカーにビスをねじ込んで行くと、ビスは両脚部の間に入り込み両脚部を離す方向に圧力を加えるので仮連結部は確実に切断される。登録実用新案第3009696号公報の図面には、2つの脚部を有しそれらの間に仮連結部を設けたアンカーが開示され、明細書にスリット部を軸心方向から見て90度のピッチで十文字状に形成し、各々のスリット部に仮連結部を配設することについて記載されている。しかし、本発明のような、軸線に関し点対称をなす2つの脚部の先端部に仮連結部が架け渡された構造については開示されておらず、本発明は4つの脚部を有し且つ仮連結部を確実に切断できるアンカーを提供することができる。
【0011】
請求項2は、仮連結部が形成されていない2つの自由端脚部の先端が、仮連結部が形成されている2つの脚部の先端部よりも基端寄りに存在している。したがって、仮連結部に設けられた穿孔刃の穿孔によってアンカーが石膏ボードにねじ込まれ、自由端脚部は穿孔刃の穿孔に干渉しないから穿孔を円滑に行い得る。
【0012】
請求項3は、仮連結部が形成されている2つの脚部の間の空間部であって仮連結部に隣接する先端空間部が、2つの自由端脚部の先端よりもアンカーの先端寄りに位置して露出している。したがって、アンカーを石膏ボードにねじ込むときに、削られた石膏の粒子が先端空間部で流入と流出を順次繰り返しながら取り込まれているので、アンカーの中空部に入る粒子の量を減らしてビスのねじ込みを円滑に行うことができる。
【0013】
請求項4は、十字形をなす割溝により断面が扇形に形成された脚部であって、仮連結部が形成されている2つの脚部の扇形の頂部は少なくとも先端空間部の範囲で面取りされている。アンカーは先細りに形成されていてビスをねじ込むための中空部も先端近くでかなり細く形成されている。したがって、ビスをアンカーにねじ込むとき必要以上にきつい場合があり円滑にねじ込むことができないのであるが、脚部の角部を面取りすることによってビスを円滑にねじ込むことができる。また、少なくとも先端空間部の範囲で面取りされているから、その面取りによって先端空間部の幅が広がるので削られた石膏の粒子をより多く取り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明の正面図である。
【図2】図2は本発明の側面図である。
【図3】図3は本発明を先端側から見た図である。
【図4】図4は図1における拡大A−A断面図である。
【図5】図5は図1における拡大B−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について説明する。アンカー1は中空であってプラスチックで一体に形成されている。基端に頭部2を有し、先端に穿孔刃3を有している。それらの間の胴部4の外周に雄ネジ5が形成されている。図1に示すように正面から見た胴部4の先端寄りから基端方向に向かって2つの割溝6,7が設けられている。一方の割溝6は他方の割溝7よりも浅い。さらに図3に示すように胴部4の背面側にも割溝8,9が設けられている。一方の割溝8は他方の割溝9よりも浅い。割溝6と割溝8の深さはほぼ同じで、割溝7と割溝9の深さはほぼ同じである。割溝6と割溝8とは直線状につながっており、割溝7と割溝9も直線状につながっており、図3に示すようにアンカー1を軸線方向から見たときに4つの割溝は十字形をなしている。
【0016】
胴部4に割溝6,7,8,9を設けることにより4つの脚部10,11,12,13が形成されている。脚部11の先端部16と脚部13の先端部17の間に仮連結部14が架け渡されている。仮連結部14の中央部15は断面が楕円形に形成され、中央部15の先端が先鋭な穿孔刃3に形成されている。仮連結部14は最終的には切断する必要があるので約0.5mmに薄く形成されている部分を有する。
【0017】
仮連結部14が架け渡されていない脚部10,12は先端18,19が自由端であるから、それらの脚部10,12はこれ以降、自由端脚部と呼ぶ。自由端脚部10,12は脚部11,13の先端部をカットした如き形状をなし、したがって自由端脚部10,12の先端18,19は脚部11,13の先端部16,17よりも基端寄りに位置する。これにより、脚部11,13の間の空間であって仮連結部14に隣接する先端空間部20は、自由端脚部10,12に遮られることなく露出する。
【0018】
先端空間部20は使用時に大きな効果を発揮する。すなわち、石膏ボードに穿孔刃3を宛がいドライバーでアンカー1を回転させると穿孔刃3が石膏を削ることにより粒子が出る。これがアンカー1の空間部に入り込むと、アンカー1を石膏ボードに取り付けてビスをねじ込むときにビスを円滑にねじ込むことができない。先端空間部20を設けることにより、削られた石膏の粒子が先端空間部で流入と流出を順次繰り返しながら取り込まれているので、アンカーの中空部に入る粒子の量を減らしてビスのねじ込みを円滑に行うことができる。
【0019】
図4に示すように、断面が扇形の脚部11,13の頂部が面取りされて面取りされた面21,22が形成されている。面取りされた分だけ先端空間部20の幅が広がって、削られた石膏の粒子をより多く取り込むことができる。この面取りされた面21,22は浅い割溝6,8の溝底の位置まで延在している。また、図3に示すように、自由端脚部10,12にも面取りされた面23,24が形成されている。この面取りされた面23,24も浅い割溝6,8の溝底まで延在している。
【0020】
また、図示しないが頭部2には電動ドライバーの係合部が形成されていて、電動ドライバーの先端を係合させてアンカー1を回転し石膏ボードにねじ込むことができる。
【0021】
次に本発明の使用方法を説明する。厚みが9.5mmの薄い石膏ボードに使用する場合について説明する。アンカー1の穿孔刃3を石膏ボードに宛がい、頭部の係合部に電動ドライバーの先端を係合させてアンカー1を石膏ボードに一杯にねじ込む。ねじ込まれたアンカー1の胴部4の一部は石膏ボードの裏面から突き抜ける。そして、その突き抜けの程度は、深い割溝7,9の溝底が石膏ボードの裏面からわずかに外に出るくらいである。この状態ではまだ深い割溝7,9も浅い割溝6,8も拡開していない。
【0022】
次に、ビスを頭部2から胴部4の中にねじ込んでいく。そうすると、ビスの圧力によって仮連結部14は切断され、脚部11,13及び脚部10,12は開脚する。アンカーを厚みが12.5mmの比較的厚い石膏ボードに使用する場合は、石膏ボードにねじ込まれたアンカー1の石膏ボードからの突き抜けの程度は、浅い割溝6,8の溝底が石膏ボードの裏面とほぼ同じ平面にある程度である。そして、この場合も前述した薄い石膏ボードと同様の使用方法により最終的にビスの圧力によって仮連結部14は切断され、脚部11,13及び脚部10,12は開脚する。
【産業上の利用可能性】
【0023】
4つの割溝により形成された4つの脚部の中の、軸線に関し点対称をなす2つの脚部の先端部に切断可能な仮連結部を架け渡したので、アンカーにビスをねじ込むときに仮連結部を確実に切断することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 アンカー
2 頭部
3 穿孔刃
4 胴部
5 雄ネジ
6 割溝
7 割溝
8 割溝
9 割溝
10 自由端脚部
11 脚部
12 自由端脚部
13 脚部
14 仮連結部
15 中央部
16 先端部
17 先端部
18 先端
19 先端
20 先端空間部
21 面取りされた面
22 面取りされた面
23 面取りされた面
24 面取りされた面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空に形成された石膏ボード用のアンカーであって、基端に頭部を有し、先端に穿孔刃を有し、その間の胴部の外周に雄ネジが形成されており、4つの割溝を胴部の先端寄りから基端方向に亘って設けることにより4つの脚部が形成され、軸線方向から見て4つの割溝は十字形をなし、軸線に関し点対称をなす2つの脚部の先端部に仮連結部が架け渡され、該仮連結部に前記穿孔刃が設けられ、且つ仮連結部は開脚の際に切断可能であることを特徴とするアンカー。
【請求項2】
仮連結部が形成されていない脚部である2つの自由端脚部の先端は、仮連結部が形成されている2つの脚部の先端部よりも基端寄りに存在する請求項1記載のアンカー。
【請求項3】
仮連結部が形成されている2つの脚部の間の空間部であって仮連結部に隣接する先端空間部は、2つの自由端脚部の先端よりもアンカーの先端寄りに位置して露出している請求項2記載のアンカー。
【請求項4】
十字形をなす割溝により断面が扇形に形成された脚部であって、仮連結部が形成されている2つの脚部の扇形の頂部は、少なくとも先端空間部の範囲で面取りされている請求項3記載のアンカー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−156438(P2010−156438A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7(P2009−7)
【出願日】平成21年1月3日(2009.1.3)
【出願人】(504290778)株式会社プロドーグ (1)
【Fターム(参考)】