説明

研削加工装置および研削加工方法

【課題】内周面および外周面をもつワークの内外周面の研削加工を効率的に行う。
【解決手段】ベアリングの外輪等の同心円上に内周面Wiおよび外周面Woが並ぶワークWの当該周面を研削する方法であって、ワークWを、その軸線方向一端面Weを磁力で吸着することによりチャック16により保持する。そして、内周面Wiに対応する内遊面用砥石車26と外周面Woに対応する外周面用砥石車27とが軸方向に並んだ状態で砥石軸20に固定されたヘッド12を用いて、ワークWと砥石車26,27とを相対回転させながら、ワークWの内周面Wiを内周面用砥石車26により研削する工程と外周面Woを外周面用砥石車27により研削する工程とを連続して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベアリングの内輪や外輪等、内周面および外周面を被研削面とするワークの研削加工装置および研削加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒形状等のワークに関し、外周面を被研削面とするワークを研削する場合には、ワークの内周面を保持した状態でワークの外側から砥石車を外周面に押し付けて研削を行い(円筒研削)、他方、内周面を被研削面とするワークを研削する場合には、ワークの外周面を保持した状態でワークの内側から砥石車を内周面に押し付けて研削を行う(内面研削)ようにしている。その場合、ワークの内周面(又は外周面)に、軸線方向に複数の被研削面を有するワークについては、これらの被研削面にそれぞれ対応する砥石面をもつ砥石車を共通の砥石軸に装着しておき、これらの砥石車を使って各被研削面を順次研削することが行われている(特許文献1)。
【特許文献1】特公昭47−10320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
内周面および外周面の双方を被研削面とするワークについては、上記のように外周面の加工と内周面の加工との間でワークの保持を一旦解除してワークの保持位置を変更する必要がある。そのため、例えば外周面の加工後、内周面の加工前には必ずワークの芯出しをやり直す必要があり、同一のワークについて外周面および内周面を加工するには手間がかかった。
【0004】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、内周面および外周面を被研削面とするワークの研削加工をより効率的に行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
出願人は、例えばベアリングの内輪や外輪等のようなワークでは、被研削面である内周面の中心位置と外周面の中心位置とが一致するため、ワークをその中心軸回りに回転させたままでその内周面と外周面とを研削すれば各周面を効率的に研削することができると考えた。そして、この点に基づき、上記課題を解決するための一つの手段として以下のような研削加工装置を考えついた。
【0006】
すなわち、本発明に係る研削加工装置は、同心円上に内周面と外周面とが並ぶ中空状のワークの前記各面を研削する装置であって、ワークの軸線方向一端面に当接する当接面を有し、前記内周面および外周面を開放した状態で、前記端面を前記当接面で吸着することによりワークを保持するワーク保持部材と、前記当接面と直交する軸回りに前記ワーク保持部材を回転駆動する第1駆動手段と、ワークの前記内周面を研削するための砥石面をもつ内周面用砥石車および前記外周面を研削するための砥石面をもつ外周面用砥石車を一体に備える加工用ヘッドと、前記砥石車を回転駆動する第2駆動手段と、前記ワーク保持部材と加工用ヘッドとを相対的に移動させる移動手段と、を備え、この移動手段が、前記ワーク保持部材に保持されてこのワーク保持部材と一体に回転駆動されるワークの内周面に対して前記内周面用砥石車の砥石面を当接させる位置と、前記ワークの外周面に対して前記外周面用砥石車の砥石面を当接させる位置とに前記ワーク保持部材と加工用ヘッドとを相対的に移動させるように構成されているものである。
【0007】
そして、本発明に係る研削加工方法は、上記の研削加工装置を用いた研削加工方法であって、同心円上に内周面と外周面とが並ぶワークを、その軸線方向一端面を前記当接面に当接させ、かつ前記内周面および前記外周面の中心と前記ワーク保持部材の回転中心とを一致させた状態で当該ワーク保持部材により保持させ、前記各駆動手段によりワーク保持部材および砥石車を回転駆動した状態で、前記ワークの内周面に対して前記内周面用砥石車の砥石面が当接する位置と前記ワークの外周面に対して前記外周面用砥石車の砥石面が当接する位置とに前記ワーク保持部材と加工用ヘッドとを相対的に移動させることにより、前記ワークの内周面および外周面を研削するようにしたものである。
【0008】
このように、ワークをその軸線方向一端面を吸着することにより保持し、内周面および外周面を開放した状態で、内周面用砥石車および外周面用砥石車を一体に備えた研削用ヘッドを用いて前記内周面および外周面を加工することで、ワークの内周面および外周面を連続的に加工することが可能となり、同心円上に内周面および外周面が並ぶワークの研削加工を効率的に行うことができる。
【0009】
なお、ワークを、その軸線方向一端面を吸着して保持する上記の構成では、砥石軸の先端がワーク保持部材に接触するといった不都合が生じることが考えられる。しかし、このような不都合は、次の構成により解消される。すなわち、前記ワーク保持部材は、本体部分と、この本体部分におけるワーク保持側の面から突出してその先端に前記当接面を備える突出部分とを備え、この突出部分の前記当接面は、当該ワーク保持部材により保持された前記ワークの内周面に対して前記内周面用砥石車の砥石面を当接させた状態および外周面に対して前記外周面用砥石車の砥石面を当接させた状態の何れの状態においても、前記本体部分のワーク保持側の面と前記加工用ヘッドとの接触を阻止する程度まで、前記ワーク保持側の面から離間している。この構成によると、上記のような不都合を解消することが可能となる。
【0010】
この場合、前記内周面用砥石車および前記外周面用砥石車は、前記加工用ヘッドの共通の砥石軸に対して軸方向に並んだ状態で装着され、前記ワーク保持部材における突出部分の前記当接面は、前記各砥石車のうち砥石軸の後端側に位置する砥石車を被研削面に当接させた状態において、前記砥石軸の先端面と前記ワーク保持側の面との接触を阻止する程度まで、前記ワーク保持側の面から離間しているのが好適である。
【0011】
このような構成によれば、砥石軸の共通化により各砥石車の駆動系および制御系を共通化することが可能となるので、製造コストの低廉化および制御負担の低減を図ることが可能となる。
【0012】
また、この構成において、前記加工用ヘッドは、前記砥石軸の先端側に位置する砥石車の径寸法よりも後端側に位置する砥石車の径寸法の方が大きいものであるのが好適である。
【0013】
つまり、前記砥石軸の後端側に位置する砥石車の径寸法よりも先端側に位置する砥石車の径寸法の方が大きい構成でもよいが、この場合には、後端側に位置する砥石車を被研削面に当接させると、先端側に位置する砥石車が当該被研削面よりもワーク側にはみ出すため、当該先端側の砥石車とワーク保持部材の前記突出部分とが接触し易くなる。これに対して上記のような構成によれば、後端側に位置する砥石車を被研削面に当接させた場合でも、先端側に位置する砥石車が当該被研削面よりもワーク側にはみ出すことがないため、先端側の砥石車と前記突出部分との接触を難なく回避することができる。
【0014】
また、上記の構成においては、前記砥石軸の先端側に前記内周面用砥石車が装着され、その後側に前記外周面用砥石車が装着されているのが好適である。
【0015】
この構成によれば、砥石軸の先端部分のうちワークの内周面の研削時に当該ワークの内側に挿入される部分が少なくなるため、ワーク内周面の研削時にワーク保持部材(突出部分)と加工用ヘッドとの干渉を回避し易くなる。
【0016】
なお、ワーク保持部材はワーク端面を負圧吸着することにより保持するものでもよいが、ワークをより強力に保持することが求められる場合、前記ワーク保持部材は、前記ワークを磁力により保持するものであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、同心円上に内周面と外周面とが並ぶ中空状のワークに関し、その内周面および外周面の研削作業を連続的に行うことが可能となる。従って、ベアリングの内輪や外輪のようなワークの内周面および外周面の研削加工をより効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の好ましい実施の形態について図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る研削加工装置の概略を示す側面図である。この研削加工装置は、同心円上に内周面と外周面とが並ぶ中空状のワーク、例えばクロスローラガイドベアリング等のベアリングレース(内輪、外輪)をワークとしてその内周面および外周面を研削するものである。当実施形態では、ベアリングの外輪をワークとする場合について説明する。
【0020】
図1に示すように、研削加工装置のコラム10には、その上部に加工用のヘッド12が設けられ、このヘッド12の下方に、ワークW(ベアリングの外輪)を保持するためのチャック16(本発明にかかるワーク保持部材に相当する)を備えたベッド14が設けられている。
【0021】
前記ヘッド12は、鉛直方向(以下、Z軸方向という)に延びる砥石軸20と、この砥石軸20を回転可能に保持するホイールヘッド22と、前記砥石軸20を回転駆動する駆動モータ24を含む駆動機構(本発明にかかる第2駆動手段に相当する)等とから構成されている。
【0022】
このヘッド12は、Z軸方向および水平方向(同図では紙面に直交する方向;以下、X軸方向という)に移動可能に構成されている。すなわち、前記コラム10には、X軸方向に延びる固定レール32が固定され、これら固定レール32にテーブル30が移動可能に装着されるとともに、このテーブル30がX軸駆動モータ34を駆動源とするX軸移動機構に連結されている。また、このテーブル30に、Z軸方向に延びる図外の固定レールが固定され、この固定レールに前記ヘッド12が移動可能に装着されるとともに、このヘッド12がZ軸駆動モータ28を駆動源とするZ軸移動機構に連結されている。この構成により、ヘッド12がモータ28,34の駆動によりX軸およびZ軸方向に移動するようになっている。なお、当実施形態では、これらモータ28,34等を含むヘッド12の移動機構が本発明に係る移動手段に相当する。
【0023】
前記砥石軸20には、ワークWを研削するための2種類の砥石車が軸方向に並んだ状態で固定されている。具体的には、ワークWの内周面を研削するための砥石面をもつ内周面用砥石車26と、同外周面を研削するための砥石面をもつ外周面用砥石車27とが先端側(下側)からこの順番で前記砥石軸20に固定されている。
【0024】
ここで、ワークWは、上記の通りクロスローラベアリングの外輪である。この外輪は、図3に示すように、ローラ接触面となるV溝が周方向に連続する内周面Wiと、軸線と略平行な断面形状を有する外周面Woと、軸線と直交する平坦な端面Weとを有している。上記内周面用砥石車26は、このワークWのうち内周面Wiの前記V溝の部分、つまりローラ接触面を研削するものであり、従って、当該砥石車26としては両テーパ型の砥石車が砥石軸20に固定されている。一方、外周面用砥石車27は外周面Woを研削するものであり、従って、当該砥石車27としては平型又はリング型等の砥石車が砥石軸20に固定されている。
【0025】
各砥石車26,27はその径寸法がワークWの内径よりも小さく、かつ後端側に固定される外周面用砥石車27の径寸法が、先端側の内周面用砥石車26の径寸法より若干大きく設定されている。また、これらの砥石車26,27は、スペーサ25を挟んで軸方向に所定間隔、例えばワークWの軸線方向の厚み寸法と同等、あるいは当該寸法よりも若干大きい間隔を隔てて砥石軸20に固定されている。
【0026】
前記チャック16はワークWを磁力で保持するいわゆる電磁チャックであり、当実施形態では、永電磁式チャックが適用されている。このチャック16は、短円柱型の形状を有しており、図1および図2に示すように、ワークWの吸着面をもつ本体部分40と、この本体部分40を回転駆動する駆動機構(本発明にかかる第1駆動手段に相当する)等から構成されている。
【0027】
本体部分40は、その上部に前記吸着面となる磁極板42を備えている。磁極板42には、その表面部分に略扇型の磁極駒44が周方向に一定間隔で埋設されており、これにより磁極板42の表面(上面)であってその周縁部以外の領域に、当該磁極板42の素材から構成される部分(以下、必要に応じて磁極部43という)と磁極駒44とが周方向に交互に設けられている。磁極板42と磁極駒44とは分極板45(セパレータ)により磁気的に分離されている。そして、図示を省略するが、本体部分40には、永久磁石と、これを励磁するためのコイルが前記磁極板42の下方部に内蔵されており、このコイルへの通電による永久磁石の着磁、脱磁によって前記磁極部43および磁極駒44に形成される磁束がコントロールされ、その結果、当該本体部分40によるワークWの吸着、剥離が行われるように構成されている。
【0028】
なお、通常は、磁極板42により直接ワークWをチャック(吸着・保持)するが、当実施形態では、磁極板42のワーク保持側の面にリテーナ50が固定されており、チャック16によるワークWの吸着はこのリテーナ50を介して行われる。
【0029】
リテーナ50は、ヘッド12とチャック16(磁極板42)との干渉を回避するためのものであり、磁極板42の表面(本発明に係るワーク保持側の面に相当する)からZ軸方向に突出するように設けられており、その先端にワークWを吸着保持する後記当接面56aが設けられている。リテーナ50のZ軸方向の長さ寸法(磁極板42の表面と当接面56aとの間隔)は、チャックしたワークWの内周面Wiに前記内周面用砥石車26の砥石面を当接させた状態および外周面Woに対して外周面用砥石車27の砥石面を当接させた状態の何れの状態においても、磁極板42の表面とヘッド12との接触が起こらない程度の寸法に設定されている。すなわち、この実施形態では、チャック16の本体部分40が本発明に係るワーク保持部材の本体部分に相当し、リテーナ50が同突出部分に相当する。
【0030】
リテーナ50は、図2に示すように、磁極板42の上面に、その同心円上に一定間隔で配置された状態で固定されている。各リテーナ50は、図3および図4に示すように、磁極板42上にセットされるリテーナ本体52と、磁極板42に形成されるT型スロット溝46に挿入されるT型ナット54とから構成されており、リテーナ本体52に対してその上方から挿入されるボルト55がT型ナット54に螺合挿入され、これによってリテーナ本体52とボルト55が磁極板42を挟み込んだ状態で結合されることにより磁極板42に固定されている。
【0031】
T型スロット溝46は、磁極部43および磁極駒44にそれぞれ対応して放射状に設けられており、これにより各磁極部43および磁極駒44にそれぞれ各リテーナ50が固定されている。リテーナ50のうち少なくともリテーナ本体52は磁性体から構成されており、従って、前記コイルへの通電が行われると、磁極部43および磁極駒44を介して各リテーナ50に磁束が形成され、これによってワークWをチャックし得るように構成されている。なお、当実施形態では、周方向に磁極部43および磁極駒44が合計32個並んでおり、従って、32個のリテーナ50が磁極板42に固定されている。
【0032】
各リテーナ50には、その先端(上端)にアダプタ56が固定されている。このアダプタ56は、ワークWを直接吸着保持する部分であり、その先端にはワークWの端面Weに対応した平坦な前記当接面56aが形成されている。なお、アダプタ56の厚み寸法(ワークWの径方向に相当する厚み寸法;図3では左右方向の厚み寸法)は、ワークWの外径寸法よりも小さく、かつ内径寸法よりも大きい寸法に設定されている。これにより芯出しを行った状態、つまり、チャック16の回転中心とワークWの中心(内周面Wiの中心および外周面Woの中心)とが一致するようにワークWをチャック16に位置決めした状態で、ワークWの内周面Wiおよび外周面Woがそれぞれアダプタ56よりも径方向にはみ出すようになっている。
【0033】
各アダプタ56は、ボルト57によりリテーナ本体52に対して着脱可能に固定されており、ワークWの種類に応じてその端面形状に対応した当接面56aを有するアダプタ56と交換することにより、別形状のワークWを支持できるようになっている。
【0034】
チャック16の前記駆動機構は、図1に示すように、前記ベッド14に回転可能に支持され、前記チャック16の本体部分40中心に連結されるZ軸方向の駆動軸36と、この駆動軸36を、減速機構を介して駆動する駆動モータ38等から構成されている。
【0035】
次に、この研削加工装置を用いた上記ワークWの研削加工方法について説明する。
【0036】
この装置を用いて上記ワークWを加工するには、まず、ワークWをチャック16にセットする。具体的には、ワークWの端面Weがアダプタ56の前記当接面56aに当接するように各リテーナ50の上端部にワークWを載置し、この状態で芯出しを行う。すなわち、チャック16の回転中心とワークWの中心とが一致するようにワークWを位置決めする。芯出しは、例えばチャック16を脱磁し、ワークWの外周面外周面Woにダイヤルゲージを当て、ワークWを低速で回転させた状態で、ワークWをプラスチックハンマで叩き、ワークWの外周面Woの振れが無くなるように、チャック16に対するワークWの相対位置を調整することにより行う。
【0037】
ワークWの芯出しが完了した後、チャック16によりワークWをチャックし、その後、当該チャック16を駆動してワークWを回転させる。また、これと同期して前記砥石軸20を駆動して砥石車26,27を回転させる。
【0038】
そして、ヘッド12をワークWの外側に移動させて外周面用砥石車27の砥石面がワークWの外周面Woに対向するように配置し、この状態でヘッド12をX軸方向に移動させる(切込み送りを行う)。これにより図5(a)に示すようにワークWの外周面Woを外周面用砥石車27により研削する。この際、上記のようにリテーナ50の上端部分でワークWが保持され、ワークWと磁極板42とが離間していることによって、ヘッド12の先端(砥石軸20の先端面)と磁極板42との干渉が回避される。
【0039】
こうしてヘッド12を所定量だけX軸方向に切込み送りすることにより外周面Woの研削が終了すると、次いで、ヘッド12をワークWの内側に挿入する。そして、内周面砥石車26の砥石面をワークWの内周面Wiに対向させ、この状態で、ヘッド12を切込み送りする。これによって図5(b)に示すようにワークWの内周面Wiを内周面用砥石車26により研削する。この場合にも、外周面Woの研削時と同様に、ヘッド12の先端と磁極板42との干渉が回避される。
【0040】
このようにしてヘッド12に固定された砥石車26,27を使ってワークWの外周面Woおよび内周面Wiを連続して加工する。
【0041】
以上のように、この内面研削装置では、ワークWの軸線方向一端面Weをチャック16によりチャックすることにより内周面Wiおよび外周面Woを開放した状態で当該各面Wi,Woの研削加工を行うので、ワークWの保持位置を途中で変更する(ワークWの芯出しをやり直す)ことなくワークWの内周面Wiおよび外周面Woを加工することができる。従って、上記のようにワークW(ベアリングの外輪)の内周面Wiおよび外周面Woの研削作業を連続的に行うことができ、ワークWの研削加工を効率化することができる。
【0042】
特に、この装置は、磁極板42に固定したリテーナ50の先端でワークWを吸着することによってワークWを磁極板42から離間した位置で保持する構成となっているので、ヘッド12(特に砥石軸20の先端)とチャック16(磁極板42)とが干渉することがない。従って、上記のようにワークWの端面Weをチャック16によりチャックしながらも、ワークWの研削加工を支障なく行うことができる。
【0043】
なお、上述した研削加工装置および研削加工方法は、本発明に係る研削加工装置および方法の好ましい実施の形態であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0044】
例えば、実施形態では、軸線方向の厚み寸法が比較的小さいベアリングの外輪をワークWとするため、ヘッド12と磁極板42との干渉回避の目的でリテーナ50を組み込んでいるが、干渉のおそれがないワークについては、リテーナ50を取り外した状態で直接ワークWを磁極板42で吸着させるようにしてもよい。例えば、軸線方向の厚み寸法が大きい筒状のワークであって軸線方向一端側の限られた領域を被研削面とするようなものの場合には、リテーナ50を取り外した状態でワークWをチャック16の磁極板42で直にチャックするようにしてもよい。
【0045】
また、実施形態のヘッド12は、各砥石車26,27が共通の砥石軸20に固定された構成となっているがこれに限定されるものではない。例えば、ヘッド12に互いに平行な一対の砥石軸が設けられ、これらの砥石軸に砥石車26,27が個別に固定された構成であってもよい。この場合、砥石車26,27は一体に駆動されるもの、あるいは個別に駆動されるもののいずれの構成であってもよい。但し、実施形態のような構成によれば、砥石軸20の共通化により各砥石車26,27の駆動系および制御系を共通化できるので、製造コストの低廉化および制御負担の低減を図ることができるという利点がある。
【0046】
また、実施形態では、砥石軸20に、内周面用砥石車26として両テーパ型の砥石車を、外周面用砥石車27として平型あるいはリング型等の砥石車をそれぞれ固定しているが、これは上記の通りワークWとしてクロスローラベアリングの外輪を加工する場合の例であって、砥石車の形状、サイズ、数、順序等はこれに限定されるものではない。砥石軸20に固定する砥石車の形状、サイズ、数、順序等は、ワークWの内周面および外周面の具体的な形状や、チャック16との干渉回避等の諸事情を考慮して適宜選定すればよい。
【0047】
また、実施形態では、ワークWの内周面Wiと外周面Woのみを研削する例を示したが、外周面用砥石車27をカップ砥石とし、図6(a)のように外周面用砥石車27の径を大きくすることにより、又は図6(b)のように内周面用砥石車26と外周用砥石車27の配置を逆にすることにより、ワークWの内周面Wi、外周面Woに加え、一方の端面Weの加工を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る研削加工装置の一例を示す側面概略図である。
【図2】研削加工装置に組み込まれたチャックを示す平面略図である。
【図3】チャックの構成を示す図2のA−A線断面図である。
【図4】チャックの構成を示す図3のB−B線断面図である。
【図5】研削加工装置によるワーク(ベアリングの外輪)の加工方法の一例を説明する図である((a)はワークの外周面を研削する工程、(b)はワークの内周面を研削する工程をそれぞれ示す)。
【図6】研削加工装置によるワーク端面の加工方法の一例を説明する図である((a)は、図5と同じ砥石配置で、(b)は図5と逆の砥石配置でワーク端面を加工する例をそれぞれ示す)。
【符号の説明】
【0049】
10 コラム
12 ヘッド
16 チャック
20 砥石軸
26 内周面用砥石車
27 外周面用砥石車
W ワーク
We 端面
Wi 内周面
Wo 外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心円上に内周面と外周面とが並ぶ中空状のワークの前記各面を研削する装置であって、
ワークの軸線方向一端面に当接する当接面を有し、前記内周面および外周面を開放した状態で、前記端面を前記当接面で吸着することによりワークを保持するワーク保持部材と、
前記当接面と直交する軸回りに前記ワーク保持部材を回転駆動する第1駆動手段と、
ワークの前記内周面を研削するための砥石面をもつ内周面用砥石車および前記外周面を研削するための砥石面をもつ外周面用砥石車を一体に備える加工用ヘッドと、
前記砥石車を回転駆動する第2駆動手段と、
前記ワーク保持部材と加工用ヘッドとを相対的に移動させる移動手段と、を備え、
この移動手段は、前記ワーク保持部材に保持されてこのワーク保持部材と一体に回転駆動されるワークの内周面に対して前記内周面用砥石車の砥石面を当接させる位置と、前記ワークの外周面に対して前記外周面用砥石車の砥石面を当接させる位置とに前記ワーク保持部材と加工用ヘッドとを相対的に移動させることを特徴とする研削加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の研削加工装置において、
前記ワーク保持部材は、本体部分と、この本体部分におけるワーク保持側の面から突出してその先端に前記当接面を備える突出部分とを備え、
この突出部分の前記当接面は、当該ワーク保持部材により保持された前記ワークの内周面に対して前記内周面用砥石車の砥石面を当接させた状態および外周面に対して前記外周面用砥石車の砥石面を当接させた状態の何れの状態においても、前記本体部分のワーク保持側の面と前記加工用ヘッドとの接触を阻止する程度まで、前記ワーク保持側の面から離間していることを特徴とする研削加工装置。
【請求項3】
請求項2に記載の研削加工装置において、
前記内周面用砥石車および前記外周面用砥石車は、前記加工用ヘッドの共通の砥石軸に対して軸方向に並んだ状態で装着され、
前記ワーク保持部材における突出部分の前記当接面は、前記各砥石車のうち砥石軸の後端側に位置する砥石車を被研削面に当接させた状態において、前記砥石軸の先端面と前記ワーク保持側の面との接触を阻止する程度まで、前記ワーク保持側の面から離間していることを特徴とする研削加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載の研削加工装置において、
前記砥石軸の先端側に位置する砥石車の径寸法よりも後端側に位置する砥石車の径寸法の方が大きいことを特徴とする研削加工装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の研削加工装置において、
前記砥石軸の先端側に前記内周面用砥石車が装着され、その後側に前記外周面用砥石車が装着されていることを特徴とする研削加工装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の研削加工装置において、
前記ワーク保持部材は、ワークを磁力により保持することを特徴とする研削加工装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の研削加工装置を用いた研削加工方法であって、
同心円上に内周面と外周面とが並ぶワークを、その軸線方向一端面を前記当接面に当接させ、かつ前記内周面および前記外周面の中心と前記ワーク保持部材の回転中心とを一致させた状態で当該ワーク保持部材により保持させ、前記各駆動手段によりワーク保持部材および砥石車を回転駆動した状態で、前記ワークの内周面に対して前記内周面用砥石車の砥石面が当接する位置と前記ワークの外周面に対して前記外周面用砥石車の砥石面が当接する位置とに前記ワーク保持部材と加工用ヘッドとを相対的に移動させることにより、前記ワークの内周面および外周面を研削することを特徴とする研削加工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate