説明

研磨機、研磨機用キャリア及び研磨方法

【課題】柱状のワークの端面を小さな曲率半径でも効率よく球面研磨することができる研磨機、研磨機用キャリア及び研磨方法を提供する。
【解決手段】内部に狭窄部122を有する貫通孔に柱状のワーク30が挿入された研磨機用キャリアを、一方が他方に対して回転するように駆動されている上下定盤の間で自転させながら定盤に対して移動させることにより、ワーク30を狭窄部122を支点として不規則に揺動させる。この揺動により、ワーク30の端面を満遍なく定盤と擦り合わせることができ、これにより端面を球面に研磨することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子等を球面研磨するための研磨機、研磨機用キャリア及びそれらを用いた研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりレンズ等の光学素子を球面研磨するための研磨機としてオスカー式研磨機が知られている。図13にオスカー式研磨機50の主要部の概略構成を示す。オスカー式研磨機50はレンズ等のワーク51が上面に固定される固定皿52と、固定皿52に対向して配置される研磨皿53とを備える。固定皿52は下面中央から下方に突出する回転軸521を中心に回転する。研磨皿53の下面は所定の曲率を有しており、その面には研磨パッド54が取り付けられている。研磨皿53の上方には先端が水平面(紙面に垂直な面)内で揺動する揺動アーム55が配置され、その先端からカンザシ56と呼ばれる棒材が垂下している。研磨皿53はカンザシ56の下端に傾動自在に支持される。
【0003】
このようなオスカー式研磨機50を用いて球面研磨を行う際には、ワーク51を固定皿52にワックス等で固定した後、ワーク51と研磨パッド54の間に研磨剤を供給しながら、固定皿52の回転によってワーク51を回転させるとともに、揺動アーム55の揺動によって研磨皿53を往復運動させる。これにより、ワーク51の上面全体が球面に研磨される。
【0004】
図13では固定皿52に一つのワーク51を固定する例を示したが、図14に示すように固定皿57に小型レンズ等の複数のワーク58を固定してもよい。これにより複数のワーク58を一度に球面研磨することができる。
【0005】
球面研磨するための研磨機はオスカー式研磨機以外にも提案されている。特許文献1に記載の研磨機は、回転可能な円板状の砥石の上に球状のワークを置き、そのワークを上方からホルダで覆いながら砥石を回転させることで、ワークを転がして球面研磨を行う。
特許文献2に記載の研磨機では、上下定盤の間に複数の貫通孔を有するキャリアを配置し、各貫通孔に孔の高さよりも大きい球状のワークを入れる。それらを上下定盤で押さえつつ、上下定盤を互いに反対方向に回転させるとともにキャリアを遊星運動させることで、ワーク全面を球面研磨する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-31608号公報
【特許文献2】特開2002-326154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、半導体励起固体レーザ素子の端面にレーザ共振器のミラーの機能を持たせることが行われており、例えば、レーザ素子の一方の端面と、他方の端面側に配置した凹面ミラーとでレーザ共振器を形成することが提案されている。さらに、より小型、高効率、低価格を目指して、レーザ素子又はレーザ素子と非線形光学素子を接合したものの両端面に球面加工を施し、それらの球面でレーザ共振器を形成したモノリシックレーザ素子と呼ばれるレーザ素子も提案されている。通常、モノリシックレーザ素子は長さ1〜2mm程度の柱状のものであり、その柱の軸はレーザ結晶の結晶軸と一致させる。
【0008】
このような小型のレーザ素子の端面を小さな曲率半径(例えば数mm程度の曲率半径)で効率よく球面研磨することは従来の研磨機では容易ではない。オスカー式研磨機ではワーク端面を小さな曲率半径で研磨するためにはその曲率半径に対応した下面を有する研磨皿を用いなければならず、そのような研磨皿では一度に研磨することができるワークの個数が限られる。
オスカー式研磨機ではワックスによりワークを固定皿に固定する場合にも問題が生じる。柱状のレーザ素子を立てた状態で固定皿にワックスで固定する場合、多数のレーザ素子をその結晶軸が所定の方向を向くように精度よく固定することは容易ではない。また、ワークがワックス中において固定皿から浮いたような状態で固定された場合、研磨後のワークの長さに誤差が生ずる。
【0009】
特許文献1、2に記載の研磨機は球状のワークの全面を球面研磨するものであり、レーザ素子のように結晶軸の方向を管理しながらその端面を球面研磨する用途には用いることができない。
【0010】
本発明は以上のような課題を解決するために成されたものであり、その目的は、柱状のワークの端面を小さな曲率半径でも効率よく球面研磨することができる研磨機、研磨機用キャリア及び研磨方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明に係る研磨機用キャリアは、
柱状のワークを挿入するための1又は複数の貫通孔を有し、対向して配置された、それぞれの対向面を平行にした状態で一方が他方に対して回転するように駆動される上下定盤の間で自転しながら該定盤に対して移動する研磨機用キャリアであって、
前記貫通孔の内部に、挿入されたワークの側面との間に所定の隙間が形成されるような内径の狭窄部を有し、前記運動の間に該貫通孔に挿入されたワークが該狭窄部を支点として揺動することにより該ワークの端面が球面研磨されるものであることを特徴とする。
【0012】
また、上記課題を解決するために成された本発明に係る研磨機は、
a)対向して配置された、それぞれの対向面が平行である上下定盤と、
b)前記上下定盤を一方が他方に対して回転するように駆動させるための定盤駆動機構と、
c)柱状のワークを挿入するための1又は複数の貫通孔を有し、該貫通孔の内部に、挿入されたワークの側面との間に所定の隙間が形成されるような内径の狭窄部を有する研磨機用キャリアと、
d)前記研磨機用キャリアを前記上下定盤の間で自転させながら該定盤に対して移動させるためのキャリア駆動機構と、
を備え、前記研磨機用キャリアの運動の間に前記貫通孔に挿入されたワークが前記狭窄部を支点として揺動することにより該ワークの端面が球面研磨されるものであることを特徴とする。
【0013】
更に、上記課題を解決するために成された本発明に係る研磨方法は、
対向して配置された、それぞれの対向面を平行にした状態で一方が他方に対して回転するように駆動されている上下定盤の間で、1又は複数の貫通孔に柱状のワークが挿入された研磨機用キャリアであって、該貫通孔の内部に、ワークの側面との間に所定の隙間が形成されるような内径の狭窄部を有する研磨機用キャリアを自転させながら該定盤に対して移動させて、該狭窄部を支点としてワークを揺動させることにより、該ワークの端面を球面研磨することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る研磨機、研磨機用キャリア及び研磨方法によれば、内部に狭窄部を有する貫通孔に柱状のワークが挿入された研磨機用キャリアが、互いに回転する上下定盤の間で自転しながら定盤に対して複雑な運動を行うことにより、貫通孔に挿入されたワークが狭窄部を支点として不規則に揺動する。この揺動により、ワークの端面が満遍なく定盤と擦り合わされ、該端面がほぼ球面に研磨される。
【0015】
研磨されるワーク端面の曲率半径は、狭窄部からワーク端面までの距離によりほぼ定まる。従って、その距離を小さくすることにより、小さな曲率半径の端面研磨も容易となる。そのため、1枚の研磨機用キャリアに多数の貫通孔を設け、それぞれの貫通孔に短いワークを挿入しておけば、各ワークの端面を小さい曲率半径で一度に研磨することができる。
ワークはワックス等で固定する必要がなく貫通孔に挿入するだけでよい。端面はワークの主軸を中心として球面研磨されるため、ワークのセットに神経を使う必要がなく、短時間で容易にセットすることができる。また、ワークの研磨後の長さは上下定盤間の距離により定まるため、上記のように多数のワークを一度に研磨するときでも、各ワークの長さはほぼ一定となる
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1に係る研磨機用キャリアを説明する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図2】狭窄部を有する貫通孔の形成方法の一例を示す図。
【図3】実施例1に係る研磨機用キャリアの分解斜視図。
【図4】実施例1に係る研磨機用キャリアを説明する図であり、(a)は斜視図、(b)は貫通孔付近を切り出した断面斜視図である。
【図5】貫通孔にワークを挿入した状態を説明する図であり、(a)はワークが直立しているときの縦断面図、(b)はワークが傾斜しているときの縦断面図である。
【図6】直立したワークを傾斜させたときのワークの側面図。
【図7】貫通孔内でワークが揺動する様子を示す縦断面図。
【図8】実施例1に係る研磨機において上定盤を持ち上げた状態を示す斜視図。
【図9】実施例1に係る研磨方法を説明する図であり、(a)はレーザ結晶基板の斜視図、(b)は切断されたレーザ結晶基板の斜視図、(c)は切り出されたワークの斜視図である。
【図10】貫通孔内でのワークの揺動を説明する図であり、(a)はワークが直立しているときの縦断面図、(b)はワークが揺動しているときの縦断面図、(c)は研磨後の縦断面図である。
【図11】実施例2に係る研磨方法を説明する図であり、(a)は貼り合わせ前のレーザ結晶基板の斜視図、(b)は切断されたレーザ結晶基板の斜視図、(c)は研磨前のワークの側面図、(d)は研磨後のワークの側面図、(e)はワークを分離して形成したレーザ素子の側面図である。
【図12】貫通孔内でのワークの揺動の変形例を説明する図であり、(a)はワークが揺動しているときの縦断面図、(b)は研磨後の縦断面図である。
【図13】オスカー式研磨機の主要部の概略構成を示す図。
【図14】オスカー式研磨機の主要部の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明に係る研磨機、研磨機用キャリア及び研磨方法の実施例について説明する。
【実施例1】
【0018】
図1に本発明の第1の実施例に係る研磨機用キャリア10の平面図(a)及び断面図(b)を示す。研磨機用キャリア10は外周にギア11を備えた円板であり、柱状のワークを挿入するための貫通孔12を有する。貫通孔12の個数は任意であるが、ここでは12個とする。貫通孔12の内部には、その開口部121よりも狭まっており、ワークの側面との間に所定の隙間が形成されるような内径の狭窄部122を設ける。本実施例では狭窄部122は貫通孔12の深さ方向の中央に形成する。
【0019】
図2に、狭窄部122を有する貫通孔12の形成方法の一例を示す。この例では1枚の円板を加工することにより、狭窄部122を有する貫通孔12を作製する。まず所定の厚さの円板10Aに機械加工等で狭窄部122と一致する内径の貫通孔12Aを空け(図2(a))、次にその貫通孔12Aの両側から開口部121と一致する内径の座ぐり12Bを加工する(図2(b))。これにより、2つの座ぐり12Bの底面間が狭窄部122となる。
【0020】
狭窄部122を有する貫通孔12は図3に示すように3枚の円板を用いて形成することもできる。この方法では、機械加工やエッチング等で狭窄部122と一致する内径の開口を空けた中間円板14と、開口部121と一致する内径の開口を空けた2枚の外側円板13を用意し、中間円板14と外側円板13の各開口の中心が一致するように中間円板14の両面に外側円板13を接着等で固定する。これにより、図4に示すような三層構造の研磨機用キャリア10が得られる。この方法は精密な機械加工を必要としないため、研磨機用キャリアが薄い場合に適している。
【0021】
外側円板13及び中間円板14の材料は機械的強度や耐摩耗性、加工の容易さ等を考慮して決めればよく、例えばステンレス等の金属や、エポキシ・塩ビ等のプラスチック等を用いることができる。
本実施例では外周のギアを外側円板13と中間円板14のいずれにも形成することで、ギア11側面の表面積をできる限り広くし、ギアの機械的強度や耐摩耗性を高めているが、ギアを一部の円板のみに形成することで加工コストを抑えてもよい。
【0022】
狭窄部122の高さや内径は次のように設定する。図5に、貫通孔12にワーク30を挿入したときの縦断面図を示す。ここでは、ワーク30は長さL、直径Dの円柱とし、狭窄部122は高さt、内径(D+2d)とする。dは図5(a)に示すように狭窄部122の開口の中央にワーク30を配置したときに狭窄部122とワーク30側面との間に形成される隙間の大きさである。
図6に、直立したワーク30をその下端面の縁の或る点を支点Pとして傾斜させたときのワーク30の側面図を示す。ワーク30は、支点Pを通る鉛直線上に重心Oがあるとき(図6(b))を分岐点として、それよりも傾きが小さければ直立した状態に戻ろうとし(図6(a))、それよりも傾きが大きければ横に倒れようとする(図6(c))。ワーク30にはこのような重力(の分力)よりも大きな摩擦力が上下定盤から与えられるが、端面全域をより満遍なく研磨するためには、ワーク30が図6(a)に示す状態であることが望ましい。ワーク30の最大傾斜は、ワーク30の上下端が開口部により規制される場合と、ワーク30の中央部が狭窄部122により規制される場合の2つの場合があり得る。いずれの場合にせよ、ワーク30の長さL、径Dに応じて開口部121の長さ及び内径、又は狭窄部122の高さ及び内径を適切に定めることにより、ワークの最大傾斜が図6(b)となるようにしておくことが望ましい。図6(b)の場合、その傾斜角θは次のように計算される。
θ=tan−1(D/L)
狭窄部122でワーク30の中央部を規制する場合、この最大傾斜角θと狭窄部122の高さt、隙間dの関係は次のように表すことができる。
t=2d/tanθ−(D/tanθ)・((1/cosθ)−1)
d=(t/2)・tanθ+(D/2)・((1/cosθ)−1)
例えば、ワーク30の長さLが2mm、直径Dが1mmであるとすると、ワーク30及び狭窄部122の加工精度等を考慮してまず隙間dを0.15mm(2d=0.3mm)と設定し、それから狭窄部122の高さtが0.36mmと決定される。同様に隙間dを0.15mmとする場合、狭窄部122の高さtはワーク30の長さLが3mm、直径Dが1mmであれば0.74mm、ワーク30の長さLが5mm、直径Dが2mmであれば0.36mmとなる。
【0023】
ワーク30の最大傾斜は、図7に示すように開口部121により規制するようにしてもよい。これにより、研磨時に狭窄部122の縁に加わる力が軽減され、狭窄部122の早期摩耗が防止される。
【0024】
図8に、上記研磨機用キャリア10が上定盤21と下定盤22の間に配置された研磨機20の斜視図を示す。この図は、上定盤21を持ち上げた状態を示す。上定盤21及び下定盤22は中央に円形の開口を有する円板であって互いに対向している。上定盤21の上面には各定盤の対向面(研磨面)に研磨剤を流し込むための周方向及び放射方向の流路211と、中央の開口の縁から中心方向に伸びる2本のフック212を設ける。
下定盤22の上には研磨機用キャリア10を載置する。図8では代表して3枚の研磨機用キャリア10を図示したが、実際はそれ以外の研磨機用キャリア10も下定盤22上に回転対称に配置し、上定盤21からの荷重が各研磨機用キャリア10内のワーク30に偏りなく加わるようにすることが望ましい。
【0025】
上下定盤の外周側には内側にギアを有するリング状のインターナルギア23を配置し、上下定盤の中心側には外側にギアを有するリング状のエクスターナルギア24を配置する。これらのギアは研磨機用キャリア10のギア11に噛み合う。
エクスターナルギア24の中心側には、上面の縁にフック212と係合させるための切込251が設けられた上定盤駆動部25を配置する。上定盤21はこの上定盤駆動部25により回転駆動される。また、下定盤22、インターナルギア23及びエクスターナルギア24もモータ等の駆動機構により回転駆動される。
【0026】
以下、上記研磨機用キャリア10及び研磨機20を用いたレーザ素子の研磨方法について説明する。まず結晶軸方向に直交する面で切り出されたレーザ結晶基板31(図9(a))をダイシングソー等で格子状に切断し(図9(b))、多数の柱状のレーザ素子(ワーク30)を切り出す。ワーク30は一般的には円柱状であることが望ましいが、狭窄部122が円状であれば、図9(c)に示すような角柱であってもかまわない。逆に、ワーク30が円柱状であれば、狭窄部122は多角形でもかまわない。
レーザ結晶基板31の代わりにレーザ結晶基板と非線形光学結晶基板の接合板を用い、その接合板からレーザ結晶と非線形光学結晶が接合したモノリシックレーザ素子を切り出してもよい。
【0027】
次に、切り出されたワーク30を図8に示した研磨機20上の研磨機用キャリア10の貫通孔12に挿入し、それらの上に上定盤21を載せる。そして、上定盤21の流路211から定盤間に研磨剤を供給しつつ、上定盤21と下定盤22をそれぞれの対向面を平行にした状態で互いに逆方向に回転駆動させる。また、インターナルギア23及びエクスターナルギア24を異なる回転速度で回転させて、研磨機用キャリア10を定盤間で自転させながら公転(遊星運動)させる。
【0028】
このときの貫通孔12内のワーク30の様子を図10に示す。貫通孔12に挿入されたワーク30(図10(a))は、上述した上下定盤及び研磨機用キャリア10の回転により、貫通孔12内で狭窄部122を支点として不規則に揺動する(図10(b))。この揺動によりワーク30の両端面は満遍なく上下定盤と擦れ合い、これにより端面が球面に研磨される(図10(c))。
このとき、研磨されたワーク端面の曲率半径は狭窄部122からその端面までの距離にほぼ一致する。本実施例では狭窄部122が貫通孔12の深さ方向の中央に設けられており、かつ、キャリア10が上下定盤間の中央に配置されているため、両端面の曲率半径は同じになる。
【実施例2】
【0029】
図11は本発明の第2の実施例に係る研磨方法を説明する図である。本実施例に係る研磨方法では次のようにして作製されたワーク40を、実施例1と同じ研磨機用キャリア10及び研磨機20を用いて研磨する。
【0030】
まず2枚のレーザ結晶基板41(図11(a))をワックス等で貼り合わせて一体化する。その一体となった接合板42を、ダイシングソー等を用いて接合面に交差する面で格子状に切断し(図11(b))、接合部44を有する柱状のワーク40を切り出す(図11(c))。そのワーク40を実施例1と同様に研磨機20にセットし、その両端面を球面研磨する(図11(d))。
【0031】
研磨終了後、ワーク40を研磨機用キャリア10から取り出し、ワーク40の接合部44にて分離する(図11(e))。これにより、一面のみが球面研磨された被研磨物であるレーザ素子43を得ることができる。
【0032】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更が許容される。例えば、ワークの両端面を異なる曲率で研磨するために、図12に示すように、狭窄部122を貫通孔12の深さ方向の中央からずれた位置に設けてもよい。ワーク30の端面の曲率半径は狭窄部122からその端面までの距離により定まるため、この例では一方の端面では曲率半径が大きく、他方の端面では小さくなる(図12(b))。またこの方法と実施例2に示した2枚の基板を貼り合わせる方法を組み合わせれば、一端面の曲率半径が異なる2種類の被研磨物を一度の研磨で作製することができる。
【0033】
被研磨物に所定の長さのダミー部材を固定し、被研磨物とダミー部材からなる柱状のワークの端面を球面研磨してもよい。これにより被研磨物の一面の曲率半径をダミー部材の長さによって調節することができる。また、被研磨物が貫通穴内で揺動しにくいような形状、例えば扁平である場合などに、被研磨物に所定の長さのダミー部材を固定し、被研磨物とダミー部材からなるワークを貫通穴内で揺動させれば、単体では球面研磨しにくい被研磨物の一面を容易に球面研磨することができる。
【0034】
上下定盤間での研磨機用キャリアの運動は、貫通穴内でワークを不規則に揺動させることができるものあればよく、上記した遊星運動の他にも、例えば自転させながら定盤に対して不規則に揺動させるようなものでもよい。
【0035】
ワークの大きさに応じて研磨機用キャリアの厚さや貫通孔の径等を適宜選択すれば、レーザ素子のような小型のワークに限らず、比較的大きなワークを研磨することもできる。
【符号の説明】
【0036】
10…研磨機用キャリア
11…ギア
12…貫通孔
121…開口部
122…狭窄部
13…外側円板
14…中間円板
15…外側円板
20…研磨機
21…上定盤
211…流路
212…フック
22…下定盤
23…インターナルギア
24…エクスターナルギア
25…上定盤駆動部
251…切込
30、40、51、58…ワーク
31、41…レーザ結晶基板
42…接合板
43…レーザ素子
44…接合部
50…オスカー式研磨機
52…固定皿
521…回転軸
53…研磨皿
54…研磨パッド
55…揺動アーム
56…カンザシ
57…固定皿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状のワークを挿入するための1又は複数の貫通孔を有し、対向して配置された、それぞれの対向面を平行にした状態で一方が他方に対して回転するように駆動される上下定盤の間で自転しながら該定盤に対して移動する研磨機用キャリアであって、
前記貫通孔の内部に、挿入されたワークの側面との間に所定の隙間が形成されるような内径の狭窄部を有し、前記運動の間に該貫通孔に挿入されたワークが該狭窄部を支点として揺動することにより該ワークの端面が球面研磨されるものであることを特徴とする研磨機用キャリア。
【請求項2】
前記研磨機用キャリアが、
a)前記狭窄部を有する中間円板と、
b)前記中間円板の両面に固定され、前記狭窄部に対応する位置に該狭窄部よりも大きい内径の開口を有する外側円板と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の研磨機用キャリア。
【請求項3】
柱状のワークの両端面を同じ曲率で研磨するために、前記狭窄部が前記貫通孔の深さ方向の中央に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨機用キャリア。
【請求項4】
柱状のワークの両端面を異なる曲率で研磨するために、前記狭窄部が前記貫通孔の深さ方向の中央からずれた位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨機用キャリア。
【請求項5】
a)対向して配置された、それぞれの対向面が平行である上下定盤と、
b)前記上下定盤を一方が他方に対して回転するように駆動させるための定盤駆動機構と、
c)柱状のワークを挿入するための1又は複数の貫通孔を有し、該貫通孔の内部に、挿入されたワークの側面との間に所定の隙間が形成されるような内径の狭窄部を有する研磨機用キャリアと、
d)前記研磨機用キャリアを前記上下定盤の間で自転させながら該定盤に対して移動させるためのキャリア駆動機構と、
を備え、前記研磨機用キャリアの運動の間に、前記貫通孔に挿入されたワークが前記狭窄部を支点として揺動することにより該ワークの端面が球面研磨されるものであることを特徴とする研磨機。
【請求項6】
1又は複数の貫通孔に柱状のワークが挿入された研磨機用キャリアであって、該貫通孔の内部に、ワークの側面との間に所定の隙間が形成されるような内径の狭窄部を有する研磨機用キャリアを、対向して配置された、それぞれの対向面を平行にした状態で一方が他方に対して回転するように駆動されている上下定盤の間で、自転させながら該定盤に対して移動させ、該狭窄部を支点としてワークを揺動させることにより、該ワークの端面を球面研磨することを特徴とする研磨方法。
【請求項7】
複数の基板を貼り合わせた接合板をその接合面に交差する面で切断することにより作製された、接合部を有する柱状のワークを前記貫通孔に挿入し、ワークに対して前記球面研磨を行った後、ワークをその接合部にて分離することにより、一面のみ球面研磨された被研磨物を形成することを特徴とする請求項6に記載の研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−173049(P2010−173049A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21372(P2009−21372)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】