説明

研磨用不織布の製造方法

本発明の研磨用不織布の製造方法は、不織ウェブの第1表面に近接して、熱可塑性繊維を少なくとも5重量%含有する第1層を有する、繊維製不織ウェブを形成するステップを有する。第1表面に、凸部と凹部のパターンを形成するために、ウェブがパターン化される。その後、前記熱可塑性繊維の少なくとも一部に物理的組成の変化を起こさせ小節を形成するように、前記ウェブに熱処理を施す。これにより、研磨特性を前記第1表面の凸部に付与する。本発明の不織布は、ウェブの第2表面近傍に少なくとも第2層を有するが、熱処理ステップしても小節を形成しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布製品に関し、特に、粗い表面を有する不織布を製造する方法、およびこの方法により製造した不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布(織物)は、市場が伸びている製品およびアプリケーションに用いられている。特に廃棄可能な製品を用いられる傾向が常にあり、これにより、不織材料の市場は大きく成長している。そして、多くの新製品用に低価格のベースとして不織布が適用される例が多くみられる。
【0003】
この種の不織布は、多くの方法、例えば繊維の太さ(ゲージ)と種類、ウェブを形成する積層技術、あるいは繊維を布に結合する結合(linking)技術によって、分類することができる。本発明が適用できると思われる布の製造技術の一例は、これに限定されるわけではないが、ホットメルト(hotmelt)、湿式積層水混紡((wet-laid wet entanglement)、乾式積層水混紡(dry-laid wet entanglement)、熱結合(thermo-bonding)、エアスルー熱結合(air-through thermo-bonding)、化学的結合(chemical bonding)を含む。
【0004】
ある種のアプリケーションにおいては、さまざまなレベルの粗さ/剥離性を不織布に加えるのが望ましい。これは、洗顔あるいは皮膚のトリートメント用に使用される非常にマイルドな粗さ特性から台所用品を洗浄するのに用いられる高研磨用の研磨パッドに至る。この必要とされる研磨特性は、所望の研磨性/剥離性を表す太いゲージの繊維を用いることにより達成できる。
【0005】
特許文献1は、熱可塑性繊維を10−50重量%の間含む布(クロス)を、その熱可塑性繊維の溶融点近傍まで加熱し、繊維が収縮して小節を形成させて、元は非研磨用のプレカーサ(前駆体)から研磨用の不織材料を生成する方法を開示している。これらの小節は、研磨特性をその材料の1つの平面上表面に与える。2つの表面の間の特性の差は、最初のクロス内の熱可塑性繊維の比率を徐々に変えることにより達成できる。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,786,065号明細書
【0007】
特許文献1によれば、研磨/剥離性は、小節のサイズの関数であり、小節そのものが、プレカーサ材料に使用される熱可塑性繊維のゲージ(太さ)の関数である。特許文献1の実施例によれば、実際に高い研磨特性は、10−55デニールの範囲内の繊維のサイズを用いることにより達成できる。この10−55デニールは、繊維の10,000mの長さあたり10−60gに対応する(以下、「デシテックス(decitex)」、「ディー・テックス(d-tex)」と称する)。この繊維の太さは必然的に顕著な粗さを与え、加熱処理後はあるレベルの剛性を生成されたクロス(布)に与える。あらゆる場合、材料の表面は、平面状態である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それ故に、本発明の目的は、低ゲージ(細い)繊維を用いた不織布の研磨特性を制御し、且つ高レベルの柔軟性を維持するような製品およびその製品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、研磨用不織布を生成する方法およびこの方法により生成したクロスに関する。
【0010】
本発明によれば、本発明の研磨用不織布の製造方法は、(a)不織ウェブの第1表面に近接して、熱可塑性繊維を少なくとも5重量%含有する第1層を有する、繊維製不織ウェブを形成するステップと、(b)前記第1表面に、凸部と凹部のパターンを形成するために、前記ウェブをパターン化するステップと、(c)前記熱可塑性繊維の少なくとも一部に物理的組成(pysical morphology)の変化を起こすように、前記ウェブに熱処理を施すステップとを有し、これにより、研磨特性を前記第1表面の少なくとも凸部に付与する。
【0011】
本発明の更なる特徴によれば、繊維製不織ウェブを形成するステップは、前記ウェブの第2表面近傍に少なくとも第2層を有するよう、実行され、前記第2層は、熱処理ステップで、物理的組成の変化を引き起こさない繊維を主に含む。
【0012】
本発明の更なる特徴によれば、前記パターン化するステップは、前記第1層内の繊維の少なくとも一部が、前記凹部から前記凸部に移動するように、行われる。
【0013】
本発明の更なる特徴によれば、前記パターン化するステップは、前記凹部内で第1層を形成する繊維の大部分が前記凸部に移動するよう行われる。
【0014】
本発明の更なる特徴によれば、前記パターン化するステップは、繊維をずらすウォータージェットを使用して行われる。
【0015】
本発明の更なる特徴によれば、ウォータージェットは、多孔表面を具備したシリンダ上を通過するウェブの一部の方向に向けられる。
【0016】
本発明の更なる特徴によれば、ウォータージェットは、網目状表面を有するシリンダ上を通過する前記ウェブの一部の方向に向けられる。
【0017】
本発明の更なる特徴によれば、ウォータージェットは、パターン化されたコンベアベルトに沿って通過する前記ウェブの一部の方向に向けられる。
【0018】
本発明の更なる特徴によれば、前記ウェブ内で繊維の絡み合い(entanglement)を引き起こすよう、ウォータージェットを採用するステップを含む。
【0019】
本発明の更なる特徴によれば、パターン化するステップ(b)は、凸部が、凹部により包囲された複数の孤立した突起特徴を有するように、行われる。
【0020】
本発明の更なる特徴によれば、前記パターン化するステップは、凸部が複数の細長い隆起部分を有するよう、行われる。
【0021】
本発明の更なる特徴によれば、熱可塑性繊維は、10,000mあたり最大4.5gの重量を有する。さらに好ましくは、熱可塑性繊維は、10,000mあたり最大2.2gの重量を有する。
【0022】
本発明の更なる特徴によれば、第1層は10重量%以上の熱可塑性繊維を含有する。
【0023】
本発明の更なる特徴によれば、第1層は、50重量%未満の熱可塑性繊維を有する。他の実施例によれば、第1層は、50重量%以上の熱可塑性繊維を有する。
【0024】
本発明の更なる特徴によれば、本発明の研磨用不織布は、第1表面近傍に、繊維製の第1層を少なくとも含み、第1層は、複数の小節(nodules)を有するよう熱処理された熱可塑性繊維を少なくとも5重量%含有し、第1層は、前記第1表面が凸部と凹部のパターンを示すようパターン化されている。
【0025】
本発明の更なる特徴によれば、不織布の第2表面に近接して、繊維製の第2層を少なくとも有し、前記複数の小節は、前記第1層にのみ存在する。
【0026】
本発明の更なる特徴によれば、前記第1層の材料の大部分は、前記凸部内に存在する。
【0027】
本発明の更なる特徴によれば、クロスは、水絡めプロセス(water entanglement process)で形成される。
【0028】
本発明の更なる特徴によれば、前記凸部は、前記凹部により包囲された複数の孤立した突起特徴を有する。
【0029】
前記凸部が複数の細長い隆起部分を有する。
【実施例】
【0030】
図面を参照すると、図1A−1Cと図2A−2Cは、それぞれ、単一層と複数層で実現される本発明の研磨用不織クロスを生成する方法の2つの実施例が行われる間のさまざまな段階を示す。まず、両方の実施例を参照すると、本発明の方法は、ウェブの第1表面14に近接して少なくとも第1層12を有する繊維の不織ウェブ10(図1A,2A)の形成するステップを必要とする。ここで第1層12は、熱可塑性繊維を5重量%から100重量%(好ましくは、少なくとも10重量%)含む。ウェブ10をその後パターン化して、第1表面14内に凸領域16と凹領域18のパターンを形成する(図1B、2B)。その後、熱処理をウェブ10に施して、熱可塑性繊維の少なくとも一部の物理的組織を変化させる、例えば小節(nudules)20を形成する(図1C、2C)。これにより、研磨(剥離)特性を、少なくとも第1表面14の凸領域16に与える。
【0031】
本発明の方法とこの方法により生成された製品は、特許文献1に開示された方法および製品に対して明白な利点を有する。クロスの所望の表面形状を確保するために、パターン化ステップを用いることにより、研磨特性のレベルを、小節の節サイズとは無関係に制御できる。具体的には、特許文献1においては、研磨特性は、クロスの平面上表面に近接した小節のサイズの関数として変動し、そしてこの小節のサイズは、最初の繊維のサイズに大きく依存する。これに対して、本発明の製品のテクスチャ(texture)は、製品の研磨特性を調節するために、更なる自由度を提供する。これは金属ヤスリの隆起に類似し、同様な材料の平滑表面の研磨特性よりも遙かに大きな研磨特性を与える。その結果、ディd−texが4.5未満、より好ましくは2.2未満の細い熱可塑性繊維を用いることができ、これにより、より大きなゲージ(太さ)のファイバを使用することから生ずる粗さと硬さを回避することができる。本発明のこれらの特徴及び他の特徴は、以下の説明により容易に理解できるであろう。
【0032】
本発明の実施例の特徴を詳細に説明する前に、本明細書および特許請求の範囲で使用される用語を定義する。先ず、用語「熱可塑性」とは、加熱した際に流動(変形)するポリマーを意味する。好ましくは、本発明は、その特性の溶融点以下の温度にある時には、結晶部分(crystalline fraction)を有する、すなわち、ポリマーの連鎖の一部は規則正しいパターンで折り曲げられている材料で実現される。本発明を実施するのに有用な結晶ポリマー(crystalline polymer)の一例は、これに限定される訳ではないが、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリエチレン(polyethylene)、ポリテレフタル酸エステル(polyester terephthalate)、ポリアミド(polyamides)である。最も好ましい実施例は、ポリプロピレン(polypropylene)である。ある場合には、アモルファス・ポリマー(amorphous polymers)(すなわち結晶部分を有さないポリマー)も用いることができる。
【0033】
熱可塑性材料の「ポリマー遷移温度(polymer transition temperature)」は、本発明で行われる熱処理を定義する際の基準温度である。結晶部分を有するポリマーの場合には、溶融点は基準温度として用いられる。アモルファス・ポリマーの場合には、ガラス遷移温度が基準温度として用いられる。両方の場合とも、基準温度は、ポリマーの「遷移温度(transition temperature)」と一般的に称される。
【0034】
用語「小節(nodule)」は、本発明の熱処理により引き起こされる熱可塑性材料の瘤/凝集として用いる。例えば、「小節」の最小寸法は、元の繊維の直径よりも遙かに大きい。「小節」は、特定の形状である必要はなく、実際に複数の繊維の部分的あるいは全体的な集まり(conglomeration)から形成される複合した相互接続質量体でもよい。
【0035】
織物の生成物の繊維のゲージ(太さ)は、さまざまなスケール、例えば「ディー・テックス(d-tex)」あるいは「デジテックス(decitex)」、「デニール(denier)」を基準とする。デジテックスとディー・テックスは、繊維の10,000mあたりのグラム重量で定義される。一方、デニールは繊維の1万ヤード(約9,000m)のグラム重量で定義される。それ故に、デニールとディー・テックスの値の比率は、9:10である。
【0036】
本発明の繊維のさまざまな層(layer)の組成に関しては、基準は、さまざまな繊維の重量%を用いる。第1層12内の熱可塑性繊維の重量%は、その個々の層に対し使用される最初の繊維混合物(initial fiber mix)に従って計算される。しかし、熱処理後は、繊維の一部は小節に変換されるかあるいは凝集されている。その結果、繊維は、もはや「繊維」ではなく、小節の重みが、最終製品内の対応する層の組成について述べるときには、小節の重量が考慮される。
【0037】
本発明の特徴をより詳細に参照すると、本発明は、さまざまなタイプ/種類の不織布の製造技術に適用できる。本発明は、これに限定されるわけではないが、乾式の水利用絡み生成技術(dry-laid water entanglement production technique)を一例に説明する。かくして図3は、本発明の方法を実行するために修正された不織布の乾式の水利用絡み生成技術の製造ラインを示す。
【0038】
具体的には、図3は、繊維の1個または複数の層を、水利用からませ接合装置32に供給する供給システム30を示す。この水利用絡み接合装置32は、回転シリンダ・スクリーン36に面するウォータージェットノズル装置34を具備し、この回転シリンダ・スクリーン36の下に1つあるいは複数の吸水ボックス(詳細は示さず)を有する。これらのシステムは、図1Aまたは2Aのウェブ10に対応する、接合されたクロス・ウェブを生成する。供給システム30と水利用絡み接合装置32の両方は、ここには詳細には示さないが、繊維解放し、混合し、供給し、毛羽立てる装置を有する。これらの装置は、当業者に公知であり、詳細な説明は割愛する。
【0039】
クロスの接合/結合後、あるいはその構成要素のステップとして、ウェブは、本発明によりパターン化され、凸領域と凹領域とを形成する。図3は、このパターン化を実行する2つのサブシステム、すなわちコンベア・サブシステム40とシリンダ・システム42を示す。その内の一方のみが実際にはいつでも駆動される。各サブシステムは、ウォーター・ジェット・ノズル装置とそれに対応した吸水ボックスを有する。本明細書ではこれらは当業者に公知のために詳述しない。これらのサブシステムのさまざまな実施例は、図4−6を参照して、以下説明する。パターン化ステップの後、ウェブは、脱水システム44を通過して、ウェブから過剰の水の一部を取り除き、その後乾燥システム46を通る。この乾燥システム46は、本発明による乾燥と熱処理の機能の両方を実行する。最後に、ウェブは巻き取りステーション48に行き、巻き取られ、切り取られて、必要なサイズのロールを形成する。
【0040】
パターン化システムの特に好ましい実施例を参照すると、図4A、4Bは、シリンダ・システム42内で使用されるシリンダ50の第1実施例を示す。このシリンダ50は、繊維の部分が入るのが可能なような十分な大きさ孔からなる多孔が形成される。これにより、凹領域18により包囲された、分離した突出した特徴のパターンである凸領域16を形成する(図4C)。孔のサイズ(その結果得られた突起物のサイズ)は、通常、1−3mmの直径の範囲内で、ピッチ(最も近い隣り合うスペースの中心間距離)は、直径よりも少なくとも1mm大きく、通常6mm未満である。その結果、6角形の閉じたパックのレイアウト(すなわち、全ての最も近い隣のスペースが等しい)においては、孔の開放領域そしてそれに対応して得られた突起部は、全表面積の数%から約60%になり、特に20%から50%の間が好ましい。一般的に、相対的に大きな開放領域は、製造速度が上がるため好ましいが、個々の孔の直径は、得られたクロスの品質を低下させるのを回避するために、制限される。得られた突起物の「深さ」即ち「高さ」は、孔のサイズと水利用絡み処理のパラメータの組み合わせで、決定される。これは従来公知である。
【0041】
次に図5A、5Bを参照すると、同図は、コンベア・サブシステム40で使用されるシリンダ52の他の実施例を示す。このシリンダ52は、開放網状表面で形成され、これにより、凹領域18により包囲された独立四角形あるいは長方形の突起特徴である凸領域16のパターンを形成する(図5C)。網目状表面は、多孔のシリンダを覆うネット状の層、あるいはネット状の材料から直接形成されたシリンダで実現できる。本明細書において、「ネット状」とは、実質上多角形、通常三角形、四角形の開口を具備した繰り返しパターンを意味する。この構造体は、より糸あるいはストリップ、例えば、金属製ストランドの織った配列から、あるいは、適宜の形状の多孔を具備した例えばポリマー材料製の平滑表面である。通常ステンレス・スチール製のメッシュが用いられる。開口のサイズと間隔は、シリンダ50のそれと同様に変化する。四角形のネット状パターンの特に好ましい実施例によれば、より糸とスペースは、等しい幅を有し、その結果、ネットの全開放領域(と製品のそれに対応する隆起領域)は、全表面積の約25%に相当する。
【0042】
図6A、6Bは、図3のコンベア・サブシステム40で使用されるコンベアベルト54の好ましい実施例を示す。この場合、コンベア・ベルトは、織られて(textured)、対応するパターンを不織ウェブの表面に加える。これは、シリンダ・システム42で記載したのと同等な物理的プロセスで行われる。ここに示した実施例においては、ベルトは、織ったファブリック・テクスチャ(woven fabric texture)を有し、これが、波状の織ったテクスチャを、不織ウェブの表面に形成する(図6C)。その結果得られたテクスチャは、前の実施例の独立分離した突起部よりも研磨力が弱い。このテクスチャは、研磨力の低いアプリケーションに適した製品となり、例えば個人用衛生品(personal hygiene)とスキンケア製品である。しかし、他のタイプのコンベアベルトを用いてさまざまなテクスチャのパターンを形成することもでき、その結果、異なる研磨レベルの最終製品が得られる。
【0043】
コンベアベルトあるいはシリンダ・サブシステムの各場合において、1つあるいは複数のウォーター・ジェット装置をコンベアベルトあるいはシリンダの表面方向に向け、ファイバを、その下の表面の対応する特徴と緊密に係合させることができる。
【0044】
図2A−2Cを参照すると、本発明の特に好ましい実施例は、2以上の層から形成されたウェブ10を有する。この実施例においては、少なくとも第2層60通常第1層12以外の全ての層は、小節を形成することのない繊維を主に含むか、あるいは採用された熱処理の状態では物理的構造が変化することのない繊維を含む。最も好ましくは、第2層60は、熱処理の状態によってもその物理的構造が変化することのない繊維のみからなる。この場合、第1層12は、コンベア・サブシステム40とシリンダ・システム42のローラあるいはコンベアベルトに面して配置され、一方、追加された層は、ウォータージェットノズル装置34に面して配置される。第2層60は、さまざまな天然繊維、合成繊維、人工繊維を含む、不織布の生成に公知な繊維あるいは混合繊維から形成される。さらに、第2層60は、熱可塑性繊維を含み、その遷移温度は、第1層12内に小節を生成するための熱処理の温度条件よりも高い。最も好ましくは、第2層60は、柔軟特性および/または吸水特性をウェブの隣接表面62に加えるような繊維から主に構成される。最適の微細品質および高い不透明さのために、ディー・テックス(d−tex)が4.5(4デニール)未満、最も好ましくは、2.2(2デニール)未満のゲージのファイバが使用される。
【0045】
本発明の多層構造の実現とパターン化技術(例えば、必要なパターンを形成するためにウェブ内に繊維の移動を引き起こす技術)との間には、深い共同作用がある。言い換えると、パターン化技術で使用されるウォーター・ジェットからの水が、ウェブと下にあるシリンダあるいはコンベアベルトを通して排出される。この際、水と共にファイバを搬送し、開口内に留まり突起を形成する。これは、隣接するウェブから「隆起領域」までの繊維の実質的な動きとなる。これは、他の製造技術で使用されるスタンピング(stamping)技術とは対照的である。このスタンピング技術は、繊維を移動させることなく繊維密度の変化を引き起こすよう、構造の一部を単に押しつぶすだけである。
【0046】
本発明の好ましい多層構造の実施例によれば、本発明は、パターン化プロセスを実行して、第1層12内の熱可塑性繊維の少なくとも一部好ましくは大部分を、凹領域18から凸領域16に移動させる。これにより、第1層12からの全材料の大部分が最終製品の凸領域16内に配置される。この移動により、図2Bに示すような構造体が生成される。この構造体においては、小節を形成する繊維は凸領域に集中して、クロスの研磨特性に最大限に寄与し、且つクロスの主下部構成要素は、第2層60の繊維により提供される。この第2層60は、熱処理後も柔らかくフレキシブルで、且つ吸収性を維持する。この結果は、二重機能を具備した製品となる。この製品は、一方の面が研磨特性を与え、反対面が柔軟で吸収性のある高品質の不織布の最終仕上げを与え、且つ全体製品が高度に柔軟な感触を維持している。
【0047】
因みに、主に水利用絡みプロセスとパターン化プロセスの両方により、複数の層の間で小規模の繊維の混合が引き起こされる。実際に、この混合は、各層の全体構成の最大数%に対応する部分で見られる。それ故に、さまざまな層の容積特性に大きな影響を与えるものではない。
【0048】
図3を参照すると、前述したように、乾燥システム46は、本発明により乾燥機能と加熱機能の両方を実行する。乾燥装置の動作温度は、第1層12の活性ポリマー成分の遷移温度近傍あるいはそれ以上に選択され、ウェブの乾燥を行うために必要な時間よりも若干長い時間その温度に維持する。乾燥終わった後、布(クロス)が到達する最大温度と、その温度に維持される時間は、物理的組成の変化を引き起こす熱可塑性繊維の比率および/または発生する変化量の両方に影響を及ぼす。これらのパラメータと、層の熱可塑性繊維の割合と、エンボッシング(凹凸状にすること)の深さとを調整することにより、最終製品の研磨レベルとテクスチャの「感触」の微細調整が可能である。
【0049】
限定するわけではないが、一実施例においては、乾燥ステップと加熱処理ステップは「エア・スルー」ドライヤーで行われる。このエア・スルー・ドライヤーでは、ホットエアー(温風)が、シリンダまたはコンベアシステムをクロスが通過する間、クロスにかけられる。この場合、乾燥装置の配置は、第1層12の凸状の表面が、このプロセスの間、シリンダまたはコンベアベルトとは反対方向に向いて、加熱処理プロセスの間、凸状パターンと機械的な接触を回避するようにする。
【0050】
本発明は、幅広いさまざまなアプリケーション用の製品を提供するのに用いられる。このアプリケーションは、非常にマイルドな個人用衛生製品/化粧品から台所製品のクリーニングパッドに至るまで幅広い。ソフトで吸収性の高いテクスチャが必要とされるようなアプリケーションにおいては、第1層12内の熱可塑性繊維の割合は50%以下が好ましい。より強い研磨機能が必要な他のアプリケーションにおいては、その比率は50%を超えるのが好ましい。両方の場合とも、追加的な吸収性とソフトな裏面は、必要によっては、追加の層である第2層60により提供される。クリーニングパッドの場合には、これは、表面でゴシゴシこすり裏面でふき取るタイプの製品を提供する。
【0051】
最後に、かくして得られた製品の機能は、さまざまな添加物、最終仕上げ剤、洗浄剤を使用の目的に従って含有させて、強化することもできる。かくして、メーキャップを取り除くパッドを、メーキャップ溶剤および/またはスキン・コンディショニング剤を充填させる。一方、ゴシゴシ洗うパッドは洗浄剤等を含有させる。
【0052】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1A】本発明による研磨用クロスの第1実施例の製造プロセスにおける第1段階のクロスの断面図。
【図1B】本発明による研磨用クロスの第1実施例の製造プロセスにおける第2段階のクロスの断面図。
【図1C】本発明による研磨用クロスの第1実施例の製造プロセスにおける第3段階のクロスの断面図。
【図2A】本発明による研磨用クロスの第2実施例の製造プロセスにおける第1段階のクロスの断面図。
【図2B】本発明による研磨用クロスの第2実施例の製造プロセスにおける第2段階のクロスの断面図。
【図2C】本発明による研磨用クロスの第2実施例の製造プロセスにおける第3段階のクロスの断面図。
【図3】本発明の方法を実現する生産ラインの側面図。
【図4A】図3の生産ラインで使用されるシリンダの斜視図。
【図4B】図4Aのシリンダの部分拡大図。
【図4C】図4Aのシリンダの使用により生成される不織研磨クロスの部分切り欠き斜視図。
【図5A】図3の生産ラインで使用されるシリンダの斜視図。
【図5B】図5Aのシリンダの部分拡大図。
【図5C】図5Aのシリンダの使用により生成される不織研磨クロスの部分切り欠き斜視図。
【図6A】図3の生産ラインで使用されるコンベアベルトの斜視図。
【図6B】図6Aのコンベアベルトの部分拡大図。
【図6C】図6Aのコンベアベルトにより生成される不織研磨用クロスの部分切り欠き斜視図。
【符号の説明】
【0054】
10 ウエブ
12 第1層
14 第1表面
16 凸領域
18 凹領域
20
30 供給システム
32 からませ接合装置
34 ウオータージェットノズル装置
36 回転シリンダ・スクリーン
40 コンベア・サブシステム
42 シリンダ・システム
44 脱水システム
46 乾燥システム
48 巻き取りステーション
50 シリンダ
52 シリンダ
54 コンベアベルト
60 第2層
62 隣接表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 不織ウェブの第1表面に近接して、熱可塑性繊維を少なくとも5重量%含有する第1層を有する、繊維製不織ウェブを形成するステップと、
(b) 前記第1表面に、凸部と凹部のパターンを形成するために、前記ウェブをパターン化するステップと、
(c) 前記熱可塑性繊維の少なくとも一部に物理的組成(pysical morphology)の変化を起こすように、前記ウェブに熱処理を施すステップと
を有し、
これにより、研磨特性を、少なくとも前記第1表面の凸部に付与する
ことを特徴とする研磨用不織布の製造方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)は、前記ウェブの第2表面近傍に少なくとも第2層を有するよう、実行され、
前記第2層は、前記熱処理ステップ(c)で、物理的組成の変化を引き起こさない繊維を主に含む
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)は、前記第1層内の繊維の少なくとも一部が、前記凹部から前記凸部に移動するように、行われる
ことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(b)は、前記凹部内で第1層を形成する繊維の大部分が前記凸部に移動するよう行われる
ことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(b)は、繊維を動かすウォータージェットを使用して行われる
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記ウォータージェットは、多孔表面を具備したシリンダ上を通過する前記ウェブの一部の方向に向けられる
ことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記ウォータージェットは、網目状表面を有するシリンダ上を通過する前記ウェブの一部の方向に向けられる
ことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記ウォータージェットは、パターン化されたコンベアベルトに沿って通過する前記ウェブの一部の方向に向けられる
ことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項9】
(d) 前記ウェブ内で繊維の絡み合い(entanglement)を引き起こすよう、ウォータージェットを採用するステップ
を含む
ことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ(b)は、前記凸部が、前記凹部により包囲された複数の孤立した突起特徴を有するに、行われる
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(b)は、前記凸部が複数の細長い隆起部分を有するよう、行われる
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記熱可塑性繊維は、10,000mあたり最大4.5gの重量を有する
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記熱可塑性繊維は、10,000mあたり最大2.2gの重量を有する
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記第1層は、10重量%以上の熱可塑性繊維を含有する
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記第1層は、50重量%未満の熱可塑性繊維を有する
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記第1層は、50重量%以上の熱可塑性繊維を有する
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項17】
第1表面近傍に、繊維製の第1層を少なくとも含む研磨用不織布において、
前記第1層は、複数の小節(nodules)を有するよう熱処理された熱可塑性繊維を少なくとも5重量%含有し、
前記第1層は、前記第1表面が凸部と凹部のパターンを示すようパターン化されている
ことを特徴とする研磨用不織布。
【請求項18】
前記不織布の第2表面に近接して、繊維製の第2層を少なくとも有し、
前記複数の小節は、前記第1層にのみ存在する
ことを特徴とする請求項17記載の不織布。
【請求項19】
前記第1層の材料の大部分は、前記凸部内に存在する
ことを特徴とする請求項18記載の不織布。
【請求項20】
前記クロスは、水絡めプロセス(water entanglement process)で形成される
ことを特徴とする請求項17記載の不織布。
【請求項21】
前記凸部が、前記凹部により包囲された複数の孤立した突起特徴を有する
ことを特徴とする請求項17記載の不織布。
【請求項22】
前記凸部が複数の細長い隆起部分を有する
ことを特徴とする請求項17記載の不織布。
【請求項23】
前記不織布は、10,000mあたり最大4.5gの重量を有する繊維から形成される
ことを特徴とする請求項17記載の不織布。
【請求項24】
前記不織布は、10,000mあたり最大2.2gの重量を有する繊維から形成される
ことを特徴とする請求項17記載の不織布。
【請求項25】
前記第1層は、10重量%以上の熱可塑性繊維を含有する
ことを特徴とする請求項17記載の不織布。
【請求項26】
前記第1層は、50重量%未満の熱可塑性繊維を有する
ことを特徴とする請求項17記載の不織布。
【請求項27】
前記第1層は、50重量%以上の熱可塑性繊維を有する
ことを特徴とする請求項17記載の不織布。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公表番号】特表2007−510816(P2007−510816A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537558(P2006−537558)
【出願日】平成16年10月31日(2004.10.31)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000997
【国際公開番号】WO2005/044177
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(506149715)エヌ.アール.スパンテック インダストリーズ リミティド. (2)
【Fターム(参考)】