説明

研磨装置

【課題】作業者の負担軽減を図る。
【解決手段】研磨装置Aは、ワークWに対して上から当接することでそのワークWを研磨するバフ11(回転工具)と、バフ11に対しワークWへの当接状態を保つための押圧力を付与する電動アクチュエータ20(押圧手段27)と、バフ11の上下方向の位置を検出して位置検出信号28Sを出力する電動アクチュエータ20(位置検出手段28)と、バフ11をその重量に応じた力で支持するための流体圧シリンダ30と、電動アクチュエータ20からの位置検出信号28Sに基づき、流体圧シリンダ30に付与される流体圧を調節する電空レギュレータ34とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転工具の外周をワークに接触させて研磨を行う装置が開示されている。この装置では、回転工具の重量を流体圧シリンダで支持しているとともに、この流体圧シリンダが、回転工具からワークに対して研磨に必要な押圧力を付与している。そして、流体圧シリンダに付与する流体圧は、レギュレータで調整されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2969166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の装置では、回転工具が摩耗して重量が軽くなると、流体圧シリンダによる支持力が回転工具の重量に比べて相対的に大きくなるため、回転工具の重量と流体圧シリンダの支持力との重量バランスが崩れてしまう。したがって、例えば、回転工具がワークに対して上から当接している場合には、ワークに対する回転工具の押圧力が不足して、研磨効率が低下する虞がある。また、最悪の場合は、回転工具がワークと接触しなくなって研磨不能となる。そのため、従来では、定期的に作業者が手作業によりレギュレータを操作し、流体圧シリンダに付与する流体圧を調整することにより、回転工具をその重量に応じた適正な力で支持する状態を保つ必要があった。しかし、このレギュレータを手作業で調整する作業は、感覚的な調節となるため、作業者によりばらつきが生じ、非熟練者にとっては作業負担が大きい。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、作業者の負担軽減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、ワークに対して上方又は下方から当接することで、そのワークを研磨する回転工具と、前記回転工具に対しワークへの当接状態を保つための押圧力を付与する押圧手段と、前記回転工具の上下方向の位置を検出して位置検出信号を出力する位置検出手段と、前記回転工具をその重量に応じた力で支持するための流体圧シリンダと、前記位置検出手段からの位置検出信号に基づき、前記流体圧シリンダに付与される流体圧を調節する電空レギュレータとを備えているところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記押圧手段としての機能と前記位置検出手段としての機能とを兼ね備えた電動アクチュエータが設けられているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
<請求項1の発明>
回転工具が摩耗してその重量が軽くなると、回転工具の外径も小さくなるので、回転工具の回転中心の位置がワークに接近することになる。この回転工具の位置ずれの情報は、位置検出手段から位置検出信号として電空レギュレータへ出力され、電空レギュレータは、位置検出信号に基づいて流体圧シリンダへの流体圧を調節する。これにより、流体圧シリンダは、回転工具をその重量に応じた適正な力で支持する。本発明によれば、手作業による調整作業を行わなくても、回転工具をその重量に応じた適正な力で支持する状態を維持することができるので、作業者の負担が軽くて済む。
【0008】
<請求項2の発明>
押圧手段と位置検出手段を電動アクチュエータが兼ねるようにしたので、押圧手段と位置検出手段を、互いに別々の専用機器とした場合に比べると、部品点数が少なくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態の研磨装置の正面図
【図2】電動アクチュエータの構成をあらわすブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1及び図2を参照して説明する。本実施形態の研磨装置Aは、バフ11(本発明の構成要件である回転工具)の外周をワークWに対し上方から当接させることで、ワークWを研磨するものであり、研磨ユニット10と、電動アクチュエータ20(本発明の構成要件である押圧手段27であり、位置検出手段28)と、流体圧シリンダ30と、シーケンサ33と、電空レギュレータ34とを備えている。
【0011】
研磨ユニット10は、バフ11と、スピンドルユニット12と、スピンドルユニット12に取り付けた研磨用モータ13とを備えて構成されている。研磨用モータ13の水平な駆動軸14には、バフ11が一体回転するように固着されている。スピンドルユニット12は、上下方向(ワークWに対するバフ11の接近・離間方向と略平行な方向)のガイドレール15に摺動可能に嵌合され、バフ11を含む研磨ユニット10の全体が、上下方向へスライド可能となっている。
【0012】
図2に示すように、電動アクチュエータ20は、機能的には、バフ11に対しワークWへの当接状態を保つための押圧力を付与する押圧手段27と、バフ11の上下方向の位置を検出して位置検出信号28Sを出力する位置検出手段28とを兼ね備えている。電動アクチュエータ20は、構造的には、ボディ21内に収容した周知形態のステッピングモータ22と、図1に示すように下端部をボディ21から下方へ突出させた進退ロッド23と、ボディ21内に収容され、ステッピングモータ22の回転運動を進退ロッド23の上下方向の直線進退運動に変換する周知形態のボールネジ機構24と、ボディ21内に収容され、ステッピングモータ22の回転角度を検出する周知形態のエンコーダ25とを備えている。エンコーダ25からは、バフ11の上下方向の位置情報としての位置検出信号28Sが出力される。図1に示すように、進退ロッド23の下端は、研磨ユニット10のスピンドルユニット12に一体的に結合されているので、進退ロッド23とバフ11の回転中心(駆動軸14)とが一体となって上下方向へ変位する。
【0013】
ボディ21内には、スピンドルユニット12側から進退ロッド23に付与される上向きの力(バフ11がワークWを上から押圧することによるワークW側からの反力)を検出して荷重検出信号29Sを出力する荷重検出手段29として、周知形態のロードセル26が設けられている。ロードセル26から出力された荷重検出信号29Sに基づいてステッピングモータ22の回転が制御されることにより、ワークWに対するバフ11の押圧力が、常に、一定の値に維持される。つまり、このロードセル26、上記ステッピングモータ22、進退ロッド23、及びボールネジ機構24は、押圧手段27としての機能を発揮する。また、このロードセル26から出力された荷重検出信号29Sは、シーケンサ33にも入力される。入力された荷重検出信号29Sが基準値の範囲を超えない場合は、シーケンサ33は荷重検出信号29Sに基づく制御は行わないが、入力された荷重検出信号29Sが基準値の範囲を超えると、シーケンサ33は、この荷重検出信号29Sに基づき、電空レギュレータ34に対して制御信号33Sを出力する。
【0014】
また、ステッピングモータ22と進退ロッド23とエンコーダ25は、上記位置検出手段28としての機能を発揮する。この位置検出手段28は、ワークWを基準とするバフ11の上下方向の位置(例えば、バフ11が固着されている駆動軸14の高さ)を検出する。押圧手段27により、研磨中のバフ11は、ワークWに対して所定の圧力で上から当接する状態に維持されるため、バフ11の摩耗が進んでバフ11の外径が小さくなっていくと、ワークWに当接している状態のバフ11の高さが次第に低くなる。位置検出手段28は、このバフ11の摩耗の伴う研磨位置の低下を検出する。
【0015】
図1に示すように、流体圧シリンダ30は、シリンダ本体31内に周知形態のピストン(図示省略)を収容し、このピストンに固着したピストンロッド32をシリンダ本体31から下方へ突出させたものである。シリンダ本体31内は、ピストンによって上部室(図示省略)と下部室(図示省略)とに区画され、上部室には、電空レギュレータ34を介してコンプレッサ35が接続され、下部室には、定圧用レギュレータ36を介してコンプレッサ35が接続されている。ピストンロッド32は、電空レギュレータ34を介して上部室に供給された加圧エアによって下向きの流体圧を付与されるとともに、定圧用レギュレータ36を介して下部室に供給された加圧エアによって上向きの流体圧を付与される。
【0016】
ピストンロッド32の下端は、研磨ユニット10のスピンドルユニット12に対して一体的に上下動するように結合され、流体圧シリンダ30は、バフ11を含む研磨ユニット10を吊り下げ状態で支持している。ピストンロッド32とバフ11の回転中心(駆動軸14)とは、一体となって上下方向へ変位するようになっている。流体圧シリンダ30のピストンロッド32は研磨ユニット10に対して上向きの力を付与するのであるが、このピストンロッド32の上向きの力は、研磨ユニット10の総重量と同じ力である。したがって、流体圧シリンダ30による支持力と研磨ユニット10の重量とは、重量バランスが保たれ、研磨ユニット10の重量が見かけ上、ゼロとなる。したがって、流体圧シリンダ30の支持力が研磨ユニット10(バフ11)の重量に対して適正な値であれば、研磨時のワークWに対するバフ11の押圧力は、流体圧シリンダ30の流体圧による影響は受けず、電動アクチュエータ20からの押圧作用のみに依存することになる。
【0017】
本実施形態では、下部室に供給される加圧エアの流体圧は、常に、一定とされるのに対し、上部室に供給される加圧エアの流体圧は、電空レギュレータ34によって加減調節されるようになっている。この電空レギュレータ34の調節は、電動アクチュエータ20から出力される位置検出信号28Sに基づいて行われる。電動アクチュエータ20から出力された位置検出信号28Sはシーケンサ33に入力される。シーケンサ33では、入力された位置検出信号28Sを基準値と比較し、電空レギュレータ34を制御するための制御信号33Sを出力する。この制御信号33Sに基づいて電空レギュレータ34が制御されると、流体圧シリンダ30の上部室内の圧力が、研磨ユニット10(バフ11)の重量に対して適正な値に保たれる。
【0018】
次に、ワークWの外周の被研磨面が真円形である場合の作用を説明する。バフ11の摩耗が進むのに伴い、バフ11の重量(即ち、研磨ユニット10の重量)が軽くなっていくとともに、バフ11の外径が小さくなっていく。バフ11の外径が小さくなると、バフ11の回転中心がワークWに接近して低い位置へ変位するので、この位置情報は、電動アクチュエータ20からシーケンサ33へ位置検出信号28Sとして入力される。すると、シーケンサ33からの制御信号33Sにより、電空レギュレータ34が作動し、流体圧シリンダ30の上部室への加圧エアの圧力を増加させる。このとき、下部室内の流体圧は一定のままである。したがって、研磨ユニット10に対する流体圧シリンダ30の上向きの支持力(引っ張り上げる力)が小さくなり、流体圧シリンダ30による支持力と研磨ユニット10の重量のバランスが、適正な状態に維持される。尚、ワークWの被研磨面が真円形である場合、ワークWからバフ11に対する反力は大きく変動せず、ロードセル26から出力される荷重検出信号29Sは基準値の範囲を超えない。したがって、シーケンサ33から電空レギュレータ34に対し荷重検出信号29Sに基づく制御信号33Sは出力されない。
【0019】
また、ワークWの外周の被研磨面が非円形である場合には、ワークWを偏心回転させながら研磨を行うことになる。この場合、バフ11が、ワークWに接触した状態を保ちながら上下移動を繰り返すのであるが、バフ11が下死点に到達したときには、研磨ユニット10の慣性によってワークWに対するバフ11の押圧力が一時的に強くなる。すると、ロードセル26によって検出される荷重値が基準範囲を超えるので、このロードセル26から出力される荷重検出信号29Sにより、シーケンサ33から電空レギュレータ34へ制御信号33Sが出力され、流体圧シリンダ30の上部室内の圧力が、一時的に低下する。これにより、ワークWに対するバフ11の押圧力を適正な値に保たれる。また、バフ11が上死点に到達したときには、ワークWに対するバフ11の押圧力が一時的に弱くなるので、荷重検出信号29Sに基づき、シーケンサ33から電空レギュレータ34に対し、上記とは逆に、上部室の圧力を一時的に増加させる制御信号33Sが出力される。尚、バフ11の摩耗が進むのに伴う研磨ユニット10の重量変化に対しては、バフ11の下死点の位置が検出され、その位置検出信号28Sがシーケンサ33に入力される。そして、研磨ユニット10の重量低下に対し、流体圧シリンダ30による支持力が適正となるように電空レギュレータ34が作動する。
【0020】
上述のように本実施形態の研磨装置Aは、ワークWに対して上から当接することでそのワークWを研磨するバフ11と、バフ11に対しワークWへの当接状態を保つための押圧力を付与する押圧手段27としての機能、及びバフ11の上下方向の位置を検出して位置検出信号28Sを出力する位置検出手段28としての機能を兼ね備えた電動アクチュエータ20と、バフ11をその重量に応じた力で支持するための流体圧シリンダ30と、電動アクチュエータ20からの位置検出信号28Sに基づき、流体圧シリンダ30に付与される流体圧を調節する電空レギュレータ34とを備えている。
【0021】
バフ11が摩耗してその重量が軽くなると、バフ11の外径も小さくなるので、バフ11の回転中心の位置がワークWに接近することになる。このバフ11の位置ずれの情報は、電動アクチュエータ20(位置検出手段28)から位置検出信号28Sとして電空レギュレータ34へ出力され、電空レギュレータ34は、位置検出信号28Sに基づいて流体圧シリンダ30への流体圧を調節する。これにより、流体圧シリンダ30は、バフ11をその重量に応じた適正な力で支持する。本実施形態によれば、手作業による調整作業を行わなくても、バフ11をその重量に応じた適正な力で支持する状態を維持することができるので、作業者の負担が軽くて済む。また、本実施形態の研磨装置Aは、押圧手段27と位置検出手段28を電動アクチュエータ20が兼ねるようにしたので、押圧手段27と位置検出手段28を、互いに別々の専用機器とした場合に比べると、部品点数が少なくて済んでいる。
【0022】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、回転工具がバフである場合について説明したが、本発明は、回転工具が砥石である場合にも適用できる。
(2)上記実施形態では、バフ(回転工具)が摩耗して軽くなった場合の調整形態として、バフを引き上げる側の流体圧を一定のままで、バフを押し下げる側の流体圧を増加させるようにしたが、これに限らず、バフを押し下げる側の流体圧を一定のままにして、バフを引き上げる側の流体圧を低下させるようにしてもよく、バフを引き上げる側の流体圧とバフを押し下げる側の流体圧の両方を増減させるようにしてもよい。
(3)上記実施形態では、流体圧シリンダがバフ(回転工具)を吊り下げて上から引き上げるように支持する形態としたが、流体圧シリンダは、バフを下から持ち上げるように支持するものであってもよい。
(4)上記実施形態では、電動アクチュエータをバフ(回転工具)の上方に配したが、電動アクチュエータはバフの下方に配置してもよい。
(5)上記実施形態では、電動アクチュエータが、バフ(回転工具)に対しワークへの当接状態を保つための押圧力を付与する押圧手段としての機能と、バフの上下方向の位置を検出して位置検出信号を出力する位置検出手段としての機能を兼ね備えるようにしたが、押圧手段と位置検出手段は、互いに別々の専用機器であってもよい。
(6)上記実施形態では、電動アクチュエータとして、ボールネジを用いてステッピングモータの回転駆動力を進退ロッドの直線進退運動に変換する形態のものを用いたが、電動アクチュエータは、ベルトとプーリを用いてステッピングモータの回転駆動力を進退ロッドの直線進退運動に変換する形態のものでもよく、ラック&ピニオンを用いてステッピングモータの回転駆動力を進退ロッドの直線進退運動に変換する形態のものでもよい。
(7)上記実施形態では、バフ(回転工具)がワークに対して上から当接するようにしたが、バフは、ワークに対して下から当接するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0023】
A…研磨装置
W…ワーク
11…バフ(回転工具)
20…電動アクチュエータ(押圧手段、位置検出手段)
27…押圧手段
28…位置検出手段
28S…位置検出信号
30…流体圧シリンダ
34…電空レギュレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対して上方又は下方から当接することで、そのワークを研磨する回転工具と、
前記回転工具に対しワークへの当接状態を保つための押圧力を付与する押圧手段と、
前記回転工具の上下方向の位置を検出して位置検出信号を出力する位置検出手段と、
前記回転工具をその重量に応じた力で支持するための流体圧シリンダと、
前記位置検出手段からの位置検出信号に基づき、前記流体圧シリンダに付与される流体圧を調節する電空レギュレータとを備えていることを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記押圧手段としての機能と前記位置検出手段としての機能とを兼ね備えた電動アクチュエータが設けられていることを特徴とする請求項1記載の研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−56394(P2013−56394A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196134(P2011−196134)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(396019631)株式会社チップトン (33)
【Fターム(参考)】