説明

破砕処理装置

【課題】破砕漏れを防止して、より確実に細径粉状の破砕片に破砕可能とする。
【解決手段】一次破砕を行う一次破砕室3と、二次破砕を行う二次破砕室4とを備え、これら破砕室3、4に回転駆動軸5を設ける。前記一次破砕室3には、多段状に複数の円板状ロータ20〜23を固設するとともに、所定の円板状ロータ21〜23の周縁部に鉛直軸回りに揺動自在かつ先端が内壁面に近接する一次破砕室用遊芯破砕刃24、24…を固設し、前記二次破砕室4には、円板状ロータ30の周縁部の円周方向に、鉛直軸回りに所定角度範囲で揺動自在かつ先端が内壁面に近接する二次破砕室用遊芯破砕刃29と、隣接する前記破砕刃29の間隙に破砕物が進入するのを妨害する障壁部材31とを交互に固設するとともに、前記破砕刃29及び障壁部材31の上面側に一次破砕片を内壁面側に誘導するとともに、落下位置を実質的に内壁面近傍に限定するための落下位置規制板28を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ、OA機器等に使用されるプリント基盤等、非鉄金属とプラスチック等が混在一体となった廃棄物を前記非鉄金属とプラスチックとに完全に分離するとともに、分級選別可能な所定粒径に破砕可能とした破砕処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子技術の発達と共に、コンピュータ、ワードプロセッサー、テレビ、プロセス制御装置等の各種電子機器には、プラスチック板上または内層に電気配線やIC、LSI、抵抗器等を搭載したプリント基盤が多く使用されている。これらプリント基盤は、非鉄金属である銅、ニッケル、クロム、鉛、錫、アルミニウム、マグネシウム、金、プラチナ等と各種プラスチックとからなり、これらがそのまま廃棄処分されると、前記非鉄金属類が溶解流出し生態系に悪影響を及ぼすため、近年はプリント基盤の非鉄金属類とプラスチック類とを完全に分離するとともに、非鉄金属類を回収して資源として再利用できるようにする試みが成されている。
【0003】
前記プリント基盤から非鉄金属類を分級選別するためには、先ず破砕工程においてプリント基盤を破砕することになるが、従来は周面に多数の破砕刃を備えた破砕用ロールを対向配置したシュレッダー装置に前記プリント基盤を通過させて破砕した後、風力選別、振動選別、液体サイクロン法などの比重分離法により選別を行っていた。
【0004】
ところが、前記シュレッダー装置による破砕ではプラスチックに非鉄金属類が付着したままであったり、破砕片の径が選別に適した径よりも大きくなるため選別工程で完全にかつ精度良く分級選別できないなどの問題があった。このため、出願人は、下記特許文献1において、プリント基盤等のプラスチックと非鉄金属類とが混在一体となった廃棄物等をプラスチックと非鉄金属類とに完全に分離しながら破砕可能であるとともに、選別のし易さ及び選別精度向上のために細径粉状の破砕片に、具体的には粒度0.3〜5mm程度の均一な破砕片に破砕可能とすることを目的として、内壁面形状が平面視で円形または多角形状を成すとともに、内壁面に対し円周方向に適宜の間隔で縦方向配置の固定刃が複数固設され、上部に被破砕材料の投入口を有するとともに、下部に一次破砕片排出口を有する一次破砕室と、この一次破砕室の前記一次破砕片排出口に連通して、内壁面形状が平面視で円形または多角形状を成すとともに、内壁面に対し円周方向に適宜の間隔で縦方向配置の固定刃が複数固設され、かつ下部に二次破砕片排出口を有する二次破砕室とを設けるとともに、前記一次破砕室および二次破砕室のそれぞれに、略中心位置に鉛直方向に沿って回転駆動軸を設け、
前記一次破砕室において;前記回転駆動軸に対し、被破砕材料を内壁面側に誘導するとともに、落下位置を実質的に内壁面近傍に限定するための円板状ロータを鉛直方向に多段状に配設するとともに、これら円板状ロータの内、所定の円板状ロータについてその周縁部に円周方向に適宜の間隔で鉛直軸回りに所定角度範囲で揺動自在かつ先端が内壁面に近接する遊芯破砕刃を固設し、
前記二次破砕室において;前記回転駆動軸と共に回転するように、一次破砕片を内壁面側に誘導するとともに、落下位置を実質的に内壁面近傍に限定するための落下位置規制板と、この落下位置規制板の下面側に隣接して落下位置規制板の周縁より外方に突出しかつ先端が内壁面に近接する複数の回転刃とを設けた破砕処理装置を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−346414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1記載の破砕処理装置においては、投入された被破砕材料は、回転刃の打撃による打撃破砕と、回転刃と固定刃との間の狭圧破砕及び回転刃の下面と破砕室の下面との間の狭圧破砕とが繰り返されることによって均一な粒径の破砕片に破砕されるようになる。
【0007】
ここで、二次破砕室53における破砕時の破砕片の挙動を詳しく観察すると、図10に示されるように、回転刃50による打撃破砕時には破砕片の跳ね上げが生じるが、これは前記落下位置規制板56によって効果的に防止され、繰り返しの破砕が確保されるようになっている。ところが、回転刃50と固定刃51との間の狭圧破砕時に破砕片が回転駆動軸52の軸芯方向に飛散する現象も同時に生じていることが判明した。破砕片の軸芯方向への飛散は、回転刃50と固定刃51との間で破砕片が狭圧されるとき、破砕片の挟入状態によっては回転刃50の衝突時のエネルギーが破砕片の破砕に費やされるのではなく、破砕片を回転軸の軸芯方向に跳ね飛ばすエネルギーに費やされることによって生じるものであると推測できる。従って、本来であれば遠心力によって壁面側に飛ばされるはずの未破砕の破砕材料が、図中に矢印で示すように、軸芯方向に飛散して、隣接する回転刃50、50の間に入り込むことにより、排出口54の開口形状に偶然一致したものがそのまま排出されたり、回転軸52と破砕室下面55との隙間から落下したりする破砕漏れが生じ、破砕片の粒径の均一化が損なわれるという問題が発生していた。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、上記二次破砕室での破砕漏れを防止して、より確実に細径粉状の破砕片に破砕可能とした破砕処理装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、後述されるように、打撃破砕と狭圧破砕とにより、プラスチックと非鉄金属とが完全に分離するようになるとともに、略粒度0.3〜5mm程度の均一な破砕片に破砕される。これら細粒粉状に破砕された破砕片は、次の選別工程でプラスチックと非鉄金属とに容易にかつ精度良く分級することが可能となる。
【0011】
特に本発明では、二次破砕室において、円板状ロータの周縁部に、鉛直軸回りに所定角度範囲で揺動自在かつ先端が内壁面に近接する二次破砕室用遊芯破砕刃と、隣接する前記二次破砕室用遊芯破砕刃の間隙に破砕物が進入するのを妨害する障壁部材とを円周方向に交互に固設してあるため、二次破砕室用遊芯破砕刃と固定刃との間の破砕片の狭圧破砕時に、破砕片の挟入状態が悪く破砕片の破砕が生じにくいような状態で狭圧された場合でも、二次破砕室用遊芯破砕刃が揺動して破砕片が回転軸の軸芯方向に跳ね飛ばされる事態が抑制されるとともに、例え狭圧破砕時に破砕物が回転軸芯方向に飛散しても、前記障壁部材が設けられているため、円板状ロータの中心側への進入が阻止され、未破砕の破砕片が排出口から排出されたり、回転軸と破砕室下面との隙間から落下したりする破砕漏れが防止できる。一方、前記二次破砕室用遊芯破砕刃及び障壁部材の上面側には落下位置規制板が配設してあるため、破砕刃の打撃破砕によって破砕片の跳ね上げが防止されるようになる。従って、二次破砕室内において破砕片の破砕が繰り返し行われるようになり、破砕効率が向上するとともに、破砕片の粒度の均一化を図ることができる。
【0012】
請求項2に係る本発明として、前記二次破砕室用遊芯破砕刃は、前記円板状ロータとの間にストッパー部材を介して固設されるとともに、前記円板状ロータの周縁より外方に突出する部分において前記ストッパー部材の外縁より所定の間隔をあけて下側に突出する段差が設けられ、前記段差が前記ストッパー部材の外縁に当接することにより、前記鉛直軸回りに所定角度範囲で揺動自在とされている請求項1記載の破砕処理装置が提供される。
【0013】
上記請求項2記載の発明は、前記二次破砕室用遊芯破砕刃を鉛直軸回りに所定角度範囲で揺動自在とするための具体的構成について規定したものである。詳細には、二次破砕室用遊芯破砕刃を円板状ロータとの間にストッパー部材を介して固設するとともに、円板状ロータの周縁より外方に突出する部分において前記ストッパー部材の外縁より所定の間隔を空けて下側に突出する段差を設ける構造とする。これにより、二次破砕室用遊芯破砕刃の鉛直軸回りの回動に伴い、前記段差が前記ストッパー部材の外縁に当接し、所定角度で回動を停止させることができるようになる。
【0014】
請求項3に係る発明として、前記ストッパー部材は、前記円板状ロータの外径とほぼ同径の位置に外縁を有するドーナツ形状の板材としてある請求項2記載の破砕処理装置が提供される。
【0015】
上記請求項3記載の発明は、ストッパー部材として、前記円板状ロータの外径とほぼ同径の位置に外縁を有するドーナツ形状の板材を用いるようにしたものである。その結果、前記円板状ロータの縁にストッパー部材の厚み分の障壁が形成され、二次破砕室の外周部に沿って凹状の溝部が連続的に形成されるようになり、この溝部内で破砕が繰り返されるため、破砕片が軸芯方向側に進入しづらくなる。
【0016】
請求項4に係る本発明として、前記一次破砕室と二次破砕室とを同軸上に上下配置とするとともに、前記一次破砕室及び二次破砕室に配設される円板状ロータの周縁部に円周方向に適宜の間隔で該円板状ロータを上下に貫く鉛直軸を配置し、前記一次破砕室用遊芯破砕刃及び二次破砕室用遊芯破砕刃が前記鉛直軸に対して固設してある請求項1〜3いずれかに記載の破砕処理装置が提供される。
【0017】
上記請求項4記載の発明は、一次破砕室と二次破砕室との配置構成及び破砕刃の固設手段について規定したものであり、一次破砕室と二次破砕室とを同軸上に上下配置するとともに、前記一次破砕室及び二次破砕室に配設される円板状ロータの周縁部に円周方向に適宜の間隔で該円板状ロータを上下に貫く鉛直軸を配置し、各室の遊芯破砕刃を前記鉛直軸に対して固設するようにしたものである。これにより、装置の構造が簡略化できるとともに、円板状ロータ等の破砕室内の構造強度を向上させることができるようになる。
【0018】
請求項5に係る本発明として、少なくとも前記一次破砕室の内壁面は、前記一次破砕室用遊芯破砕刃との間隙が下段側に行くに従って漸次狭くなるように傾斜角が設けてある請求項1〜4いずれかに記載の破砕処理装置が提供される。
【0019】
上記請求項5記載の発明では、一次破砕室の内壁面を、破砕刃先端との間隙が下段側に行くに従って漸次狭くなるように傾斜角を設けて配置することにより、下段側に行くに従って段階的に破砕片の粒径を小さくする破砕が可能となり、破砕効率を高めることができるとともに処理能力が向上するようになる。
【0020】
請求項6に係る本発明として、前記一次破砕室用遊芯破砕刃は、前記多段状に配置される円板状ロータ間において段毎に千鳥状に配置されている請求項1〜5いずれかに記載の破砕処理装置が提供される。
【0021】
上記請求項6記載の発明は、遊芯破砕刃と固定刃とによる狭圧破砕を効率的に行うため、前記一次破砕室用遊芯破砕刃を、前記多段状に配置される円板状ロータ間において段毎に千鳥状に配置したものである。
【0022】
請求項7に係る本発明として、前記一次破砕室において、一次破砕片排出口は最下段の一次破砕室用遊芯破砕刃の下面側に位置するとともに、前記一次破砕室用遊芯破砕刃の先端より回転軸の半径方向外側に長く形成され、かつ前記二次破砕室において、二次破砕片排出口は前記二次破砕室用遊芯破砕刃の下面側に位置するとともに、前記二次破砕室用遊芯破砕刃の下側に突出する段差部分の下面幅と回転軸の半径方向にほぼ同等の長さで形成されている請求項2〜6いずれかに記載の破砕処理装置が提供される。
【0023】
上記請求項7記載の発明では、一次破砕室の排出過程で、最下段の遊芯破砕刃の下面と一次破砕室底面との間隙にて破砕片がすり潰されるような狭圧破砕が行われるよう、一次破砕室において、一次破砕片排出口を最下段の遊芯破砕刃の下面側に位置させるとともに、同様の理由により二次破砕室においても、二次破砕片排出口を遊芯破砕刃の下面側に位置させるようにするのが望ましい。また、一次破砕室での処理量を増加させるため、一次破砕片排出口を一次破砕室遊芯破砕刃の先端より回転軸の半径方向外側に長く形成する一方で、二次破砕室では破砕片の均一化のため、二次破砕片排出口を二次破砕室遊芯破砕刃の下側に突出する段差部分の下面幅と回転軸の半径方向にほぼ同等の長さで形成することが望ましい。
【発明の効果】
【0024】
以上詳説のとおり本発明によれば、二次破砕室での破砕漏れを防止して、より確実に細径粉状の破砕片に破砕可能とした破砕処理装置が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る破砕処理装置1の正面図である。
【図2】その平面図である。
【図3】図1の破砕処理部分を拡大した縦断面図である。
【図4】図3のIV−IV線矢視図である。
【図5】図3のV−V線矢視図である。
【図6】図5の要部拡大図である。
【図7】落下位置規制板28を示す、(A)は平面図、(B)はそのB−B断面図である。
【図8】ストッパー部材32を示す、(A)は平面図、(B)はそのB−B断面図である。
【図9】スリーブ33を示す、(A)は平面図、(B)はその縦断面図である。
【図10】従来の破砕処理装置の二次破砕室53を示す、(A)は平面図、(B)は縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0027】
本破砕処理装置1は、図1〜図3に示されるように、プリント基盤等の被破砕材料が投入され一次破砕が行われる一次破砕室3と、この一次破砕室3で破砕された破砕片を二次的にさらに細かく破砕するとともに、一次破砕室3で所定の粒径に破砕されなかった破砕片を破砕する二次破砕室4とを備え、プリント基盤等をプラスチックと非鉄金属類とに完全に分離しながら破砕可能とするとともに、選別のし易さ及び選別精度向上のために細径粉状の破砕片に、具体的には粒度0.3〜5mm程度の均一な破砕片に破砕可能とした破砕処理装置である。
【0028】
以下、具体的に詳述すると、
前記一次破砕室3は、内壁面形状が平面視で円形、好ましくは多角形状、図示例では正十二角形状を成すドラム状函体より構成されるもので、内壁面には、図4に示されるように、円周方向に適宜の間隔で、具体的には正十二角形の各面に対して縦方向配置の固定刃10、10…が固設されている。上部には被破砕材料投入口11が形成されているとともに、下面側周囲に孔状の一次破砕片排出口12、12…が形成されている。この一次破砕室3の上部には、投入口11から被破砕材料を供給するためにホッパー2が設けられている。
【0029】
前記一次破砕室3の下部には、前記一次破砕片排出口12、12…より一次破砕材料が流入され、二次的に破砕が行われる二次破砕室4が設けられている。この二次破砕室4も前記一次破砕室3と同様に、内壁面形状が平面視で円形、好ましくは多角形状、図示例では正十二角形状を成すドラム状函体より構成されるもので、内壁面には、図5に示されるように、円周方向に適宜の間隔で、具体的には正十二角形の各面に対して縦方向配置の固定刃13、13…が固設され、かつ下面側周囲に孔状の二次破砕片排出口14、14…が設けられている。
【0030】
前記一次破砕室3および二次破砕室4の中心には、鉛直方向に沿って回転駆動軸5が貫通状態で配設されている。この回転駆動軸5は、下端側が装置ベース40の固設された下部軸受け15と、前記一次破砕室3の上部位置に固設された上部軸受け16とにより回転自在に支持されているとともに、前記下部軸受け15より下面側に突出する突出軸5aを有し、この突出軸5aに従動プーリ17が固設されている。また、装置ベース40の上面には駆動モータ18が配設されているとともに、この駆動モータ18の原動プーリ18aと前記従動プーリ17との間にベルト19が掛け渡され、前記駆動モータ18の回転が前記ベルト19によって伝達され、前記回転駆動軸5が軸芯回りに回転するようになっている。
【0031】
前記一次破砕室3においては、前記回転駆動軸5に対し、被破砕材料を内壁面側に誘導するとともに、被破砕材料の落下位置を実質的に内壁面近傍に限定するための円板状ロータ20〜23が鉛直方向に多段状に配設されている。これら円板状ロータ20〜23の内、最上段の円板状ロータ20は、一次破砕室3内に投入されたプリント基盤等の被破砕材料を内壁面側に誘導し、落下位置を実質的に内壁面近傍に限定するための機能を担い、次段〜最下段の円板状ロータ21〜23は、被破砕材料を内壁面側に誘導し、落下位置を実質的に内壁面近傍に限定するための機能と、周縁に後述の一次破砕室用遊芯破砕刃24、24…を備え、被破砕材料を破砕する機能とを担うようになっている。最下段の円板状ロータ23は実質的に一次破砕室3の底面板を兼ねるものとなっている。
【0032】
また、前記円板状ロータ20〜23の内、破砕機能を担う最上段の円板状ロータ20を除く円板状ロータ21〜23には、図4に示されるように、その周縁に円周方向に適宜の間隔で一次破砕室用遊芯破砕刃24、24…を備えている。この一次破砕室用遊芯破砕刃24は、鉛直配置の支軸25回りに所定角度範囲で揺動自在に支持されたチップホルダー26の回転方向側の面に超硬チップ27を固設した構造の揺動型の破砕刃であり、前記超硬チップ27の先端面が内壁面に近接するようになっている。前記一次破砕室用遊芯破砕刃24、24…は、該遊芯破砕刃24、24…と固定刃10、10…とによる狭圧破砕が効率的に行われるようにするため、多段状に配置されている円板状ロータ21〜23間において段毎に千鳥状に配設されている。また、排出過程で、最下段の遊芯破砕刃24、24…の下面と、一次破砕室底面との間隙にて、破砕片がすり潰されるようにしながら狭圧破砕されるように、一次破砕片排出口12、12…は最下段の遊芯破砕刃24の下面側に位置するようになっている。また、前記支軸25は、一次破砕室3に配設される円板状ロータ21〜23と後述する二次破砕室4に配設される円板状ロータ30とを上下に貫くように配設されることが好ましい。
【0033】
前記一次破砕室3の内壁面は、各段の円板状ロータ21〜23に配設される前記一次破砕室用遊芯破砕刃24、24…との間隙が下段側に行くに従って漸次狭くなるように傾斜角が設けてある。これにより、下段側に行くに従って段階的に破砕片の粒径を小さくする破砕が可能となり、破砕効率が高まるとともに処理能力が向上する。
【0034】
一方、前記二次破砕室4においては、図5にも示されるように、前記回転駆動軸5に対し、実質的に二次破砕室4の底面板を兼ねる円板状ロータ30を配設するとともに、この円板状ロータ30の上面側の周縁部に円周方向に、前記円板状ロータ30の周縁より外方に突出するとともに前記支軸25回りに所定角度範囲で揺動自在かつ先端が内壁面に近接する二次破砕室用遊芯破砕刃29、29…と、隣接する前記二次破砕室用遊芯破砕刃29、29の間隙に破砕物が進入するのを妨害する障壁部材31とが交互に固設されている。また、前記二次破砕室用遊芯破砕刃29、29…及び障壁部材31、31…の上面側に一次破砕片を内壁面側に誘導するとともに、落下位置を実質的に内壁面近傍に限定するための落下位置規制板28が配設されている。
【0035】
前記二次破砕室用遊芯破砕刃29は、図3及び図5に示されるように、円板状ロータ30との間に前記円板状ロータ30の外径とほぼ同径の位置に外縁を有するストッパー部材32を介して固設されるとともに、前記円板状ロータ30の周縁より外方に突出する部分29aにおいて前記ストッパー部材32の外縁より所定の間隔をあけて下側に突出する段差29bが設けられた構造とされている。この二次破砕室用遊芯破砕刃29は、図6に示されるように、前記支軸25を支点として前記段差29bの端部mが半径rで回動するのに対して、この半径rより大きな半径Rを有する円板状ロータ30の外径とほぼ同径の位置にストッパー部材32の外縁が形成されることにより、前記段差29bの端部mがストッパー部材32の外縁部nに当接し、所定角度範囲で揺動自在とされている。この二次破砕室用遊芯破砕刃29は、段差29bの端部mがストッパー部材32の外縁部nに当接した状態で、刃先端部と内壁面に固設される固定刃13との間に所定の隙間kが設けられるように設定されている。
【0036】
このように、二次破砕室用遊芯破砕刃29が所定角度範囲で揺動自在とされることにより、破砕刃29と固定刃13との間の破砕片の狭圧破砕時に、破砕片の挟入状態が悪く破砕片の破砕が生じにくいような状態で狭圧された場合でも、破砕刃29が揺動して破砕片が回転軸の軸芯方向に跳ね飛ばされるような事態が回避されるようになる。従って破砕片が円板状ロータ30より外側の破砕領域に滞留しやすくなり、破砕刃29による繰り返しの破砕が生じやすくなる。
【0037】
前記落下位置規制板28は、前記支軸25を挿入する開孔28a、28a…が円周方向に適宜の間隔で複数設けられたドーナツ形の板材とし、一枚で環状に形成することもできるが、図7に示されるように、円周方向に複数に、図示例では4つに分割した構造とすることが好ましい。
【0038】
前記ストッパー部材32も同様に、前記支軸25を挿入する開孔32a、32a…が円周方向に適宜の間隔で複数設けられたドーナツ形の部材とすることが望ましい。この部材は一枚で環状に形成することもできるが、図8に示されるように、円周方向に複数に、図示例では4つに分割した構造とすることが好ましい。前記ストッパー部材32として、前記円板状ロータ30の外径とほぼ同径の位置に外縁を有するドーナツ形状の板材を用いることにより、前記円板状ロータ30の縁にストッパー部材32の厚み分の障壁が形成され、二次破砕室4の外周部に沿って凹状の溝部が連続的に形成されるようになり、この溝部内で破砕が繰り返されるため、破砕片が軸芯方向側に進入しづらくなる。
【0039】
また、前記落下位置規制板28の上面には、図9に示されるスリーブ33が取り付けられている。このスリーブ33は、支軸25に対してそれぞれ遊嵌される前記落下位置規制板28、二次破砕室用遊芯破砕刃29及びストッパー部材32の鉛直方向の遊び量を調整するためのものである。図3に示されるように、前記スリーブ33を取り付けた状態で、前記スリーブ33と二次破砕室4上面との間には若干の、具体的には3〜5mm程度の隙間を設けるようにすることが好ましい。
【0040】
前記障壁部材31は、前記ストッパー部材32と落下位置規制板28との間の隙間に配設されるリング状の部材である。図6に示されるように、かかる障壁部材31を配設することにより、前記二次破砕室用遊芯破砕刃29が回転方向反対側に揺動した状態で円周方向に形成される間隙は、二次破砕室用遊芯破砕刃29の回転方向前側に形成される破砕刃29及び障壁部材31の胴体部分の隙間W1と、回転方向後側に形成される破砕刃29の先端部と障壁部材31の胴体部分との隙間W2となり、該障壁部材31を設けない場合より各段に狭くすることができるようになる。このため、例え破砕物が回転軸の軸芯方向に飛散しても円板状ロータ30への進入が抑制される。従って破砕片が円板状ロータ30より外側の破砕領域に滞留しやすくなり、破砕刃29による繰り返しの破砕が生じやすくなる。
【0041】
前記二次破砕室4の下面側には、回転駆動軸5に対して排出誘導板34が固設され、前記二次破砕室4の二次破砕片排出口14から落下した二次破砕片が内壁面側に誘導されるとともに、前記排出誘導板34と内壁面36との間隙からシュート35上に落下し排出されるようになっている。
【0042】
ところで、前記一次破砕室3の下面に位置する一次破砕片排出口12は、一次破砕室用遊芯破砕刃24の先端より回転軸の半径方向外側に長く形成され、前記二次破砕室4の下面に位置する二次破砕片排出口14は、二次破砕室用遊芯破砕刃29の下側に突出する段差部分29bの下面幅と回転軸の半径方向にほぼ同等の長さで形成されるようにすることが好ましい。これにより、一次破砕室3では破砕刃24の先端より外側に長く延在した排出口12により比較的大径の破砕片が排出され、一次破砕室3での処理量を増加させることができる一方で、二次破砕室4では、破砕刃29と破砕室下面との間ですり潰されることにより細かく破砕されたものだけが排出され、破砕片の粒径を均一化できるようになる。
【0043】
以上、詳述した破砕処理装置1において、一次破砕室3の投入口11よりプリント基盤が投入されると、プリント基盤は最上段の円板状ロータ20により内壁面側に誘導され、該円板状ロータ20と内壁面との間隙から落下する。プリント基盤は次段の円板状ロータ21に固設された一次破砕室用遊芯破砕刃24、24…と固定刃10、10…とにより打撃を受けながら狭圧的に破砕されるとともに、細かく破砕されたものから順に下段側に落下し再度破砕される破砕工程を最下段の円板状ロータ23まで繰り返す。この一次破砕過程において、前記遊芯破砕刃24は鉛直軸回りに所定の角度範囲で揺動自在となっているため、内壁面と遊芯破砕刃24との間にプリント基盤の破砕片が噛み込む事態となっても、前記遊芯破砕刃24の揺動により噛み込みが未然に防止されるようになっている。
【0044】
そして、一次破砕片排出口12から排出される過程では、最下段の遊芯破砕刃24、24の下面と、一次破砕片排出口12、12…が形成されたリング状底面との僅かの間隙部分ですり潰されるようにしながら狭圧破砕された後、前記一次破砕片排出口12、12…から二次破砕室4に誘導される。
【0045】
そして、二次破砕室4においては、落下した二次破砕片が落下位置規制板28により内壁面側に誘導されるとともに、落下位置規制板28と内壁面との間隙から落下する際に、二次破砕室用遊芯破砕刃29、29…と固定刃13、13…とにより打撃を受けながら破砕されるとともに、二次破砕室用遊芯破砕刃29、29…の下面と、二次破砕片排出口14が形成されたリング状底面との僅かの間隙部分ですり潰されるようにしながら狭圧破砕された後、前記二次破砕片排出口14、14…から排出される。
【0046】
以上の工程を経て破砕された破砕片は、前述の打撃破砕と狭圧破砕とにより、プラスチックと非鉄金属とが完全に分離するようになるとともに、概ね粒度0.3〜5mm程度の均一な破砕片に破砕されるようになる。これら細径粉状に破砕された破砕片は、次の選別工程でプラスチックと非鉄金属とに容易にかつ精度良く分級される。
【0047】
〔他の形態例〕
(1)ところで、上記例では一次破砕室3と二次破砕室4とを同軸上に上下配置とし、回転駆動軸5を兼用するようにしたが、一次破砕室3と二次破砕室4とは一次破砕室で破砕された一次破砕片がスムーズに二次破砕室4に導流される条件の下で隣接配置するようにしてもよい。この場合には、一次破砕室3と二次破砕室4とにはそれぞれ別々に回転駆動軸が設けられる。また、前記回転駆動軸5を若干横方向にスライド可能とすれば粒度調整も行えるようになる。
(2)上記形態例では、一次破砕室3及び二次破砕室4の円板状ロータ20〜23、30を上下に貫く支軸25を配置するようにしたが、各円板状ロータ20〜23,30に支軸を配置するようにしても良いし、一次破砕室3のみの円板状ロータ20〜23を上下に貫く支軸を配置し、二次破砕室4の円板状ロータ30には別途支軸を配置するようにしても良い。また、円板状ロータ20〜23,30に個別的に支軸を設ける場合、遊芯破砕刃24,29を固設する位置にのみ支軸を設けても良く、この場合、障壁部材31はブロック状のものを固設する構造とすることができる。
【符号の説明】
【0048】
1…破砕処理装置、2…ホッパー、3…一次破砕室、4…二次破砕室、5…回転駆動軸、10・13…固定刃、11…被破砕材料投入口、12…一次破砕片排出口、14…二次破砕片排出口、15・16…軸受け、18…駆動モータ、20〜23…円板状ロータ、24…一次破砕室用遊芯破砕刃、25…支軸、28…落下位置規制板、29…二次破砕室用遊芯破砕刃、30…円板状ロータ、31…障壁部材、32…ストッパー部材、33…スリーブ、36…内壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁面形状が平面視で円形または多角形状を成すとともに、内壁面に対し円周方向に適宜の間隔で縦方向配置の固定刃が複数固設され、上部に被破砕材料の投入口を有するとともに、下部に一次破砕片排出口を有する一次破砕室と、この一次破砕室の前記一次破砕片排出口に連通して、内壁面形状が平面視で円形または多角形状を成すとともに、内壁面に対し円周方向に適宜の間隔で縦方向配置の固定刃が複数固設され、かつ下部に二次破砕片排出口を有する二次破砕室とを設けるとともに、前記一次破砕室および二次破砕室のそれぞれに、略中心位置に鉛直方向に沿って回転駆動軸を設け、
前記一次破砕室において;前記回転駆動軸に対し、被破砕材料を内壁面側に誘導するとともに、落下位置を実質的に内壁面近傍に限定するための円板状ロータを鉛直方向に多段状に配設するとともに、これら円板状ロータの内、所定の円板状ロータについてその周縁部に円周方向に適宜の間隔で鉛直軸回りに所定角度範囲で揺動自在かつ先端が内壁面に近接する一次破砕室用遊芯破砕刃を固設し、
前記二次破砕室において;前記回転駆動軸に対し、前記二次破砕室の底面板を兼ねる円板状ロータを配設するとともに、この円板状ロータの上面側の周縁部に円周方向に沿って、前記円板状ロータの周縁より外方に突出するとともに鉛直軸回りに所定角度範囲で揺動自在かつ先端が内壁面に近接する二次破砕室用遊芯破砕刃と、隣接する前記二次破砕室用遊芯破砕刃の間隙に破砕物が進入するのを妨害する障壁部材とを交互に固設し、前記二次破砕室用遊芯破砕刃及び障壁部材の上面側に一次破砕片を内壁面側に誘導するとともに、落下位置を実質的に内壁面近傍に限定するための落下位置規制板が配設してあることを特徴とする破砕処理装置。
【請求項2】
前記二次破砕室用遊芯破砕刃は、前記円板状ロータとの間にストッパー部材を介して固設されるとともに、前記円板状ロータの周縁より外方に突出する部分において前記ストッパー部材の外縁より所定の間隔をあけて下側に突出する段差が設けられ、前記段差が前記ストッパー部材の外縁に当接することにより、前記鉛直軸回りに所定角度範囲で揺動自在とされている請求項1記載の破砕処理装置。
【請求項3】
前記ストッパー部材は、前記円板状ロータの外径とほぼ同径の位置に外縁を有するドーナツ形状の板材としてある請求項2記載の破砕処理装置。
【請求項4】
前記一次破砕室と二次破砕室とを同軸上に上下配置とするとともに、前記一次破砕室及び二次破砕室に配設される円板状ロータの周縁部に円周方向に適宜の間隔で該円板状ロータを上下に貫く鉛直軸を配置し、前記一次破砕室用遊芯破砕刃及び二次破砕室用遊芯破砕刃が前記鉛直軸に対して固設してある請求項1〜3いずれかに記載の破砕処理装置。
【請求項5】
少なくとも前記一次破砕室の内壁面は、前記一次破砕室用遊芯破砕刃との間隙が下段側に行くに従って漸次狭くなるように傾斜角が設けてある請求項1〜4いずれかに記載の破砕処理装置。
【請求項6】
前記一次破砕室用遊芯破砕刃は、前記多段状に配置される円板状ロータ間において段毎に千鳥状に配置されている請求項1〜5いずれかに記載の破砕処理装置。
【請求項7】
前記一次破砕室において、一次破砕片排出口は最下段の一次破砕室用遊芯破砕刃の下面側に位置するとともに、前記一次破砕室用遊芯破砕刃の先端より回転軸の半径方向外側に長く形成され、かつ前記二次破砕室において、二次破砕片排出口は前記二次破砕室用遊芯破砕刃の下面側に位置するとともに、前記二次破砕室用遊芯破砕刃の下側に突出する段差部分の下面幅と回転軸の半径方向にほぼ同等の長さで形成されている請求項2〜6いずれかに記載の破砕処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−5945(P2012−5945A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143368(P2010−143368)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(595125339)株式会社 伸和機械産業 (2)
【Fターム(参考)】