説明

破砕機構付きシールド掘進機

【課題】 泥土圧式シールド掘進機による掘削土砂に含まれる粘土塊を小さく破砕してから搬送させる破砕機構を、破砕能力を担保しつつコンパクトな形状とする。
【解決手段】 掘削土砂に含まれる固結粘土塊を破砕する機構を備えた破砕機構付きシールド掘進機であって、破砕機構12は、土砂投入口24a及び土砂排出口24bを備える破砕室24と、破砕室24の下部において平行に配置された複数の固定ロッド状部材27からなる簀子部28と、簀子部28の上方に平行に並べて配置され、軸方向に所定の間隔をおいて複数の破砕羽根29が取付けられた2本の回転軸部材30とからなる。破砕羽根29は、その回転軌跡31の下端部が簀子部28の隣接する固定ロッド状部材27間の間隔部分を通過し、且つ2本の回転軸部材30に取付けられた破砕羽根29の回転軌跡31が、軸方向から見てこれらの中間部分で重なり合うような位置関係で各回転軸部材30に取付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破砕機構付きシールド掘進機に関し、特に泥土圧式シールド掘進機において、掘削土砂に含まれる固結粘土の粘土塊を破砕する破砕機構を備えた破砕機構付きシールド掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネル工法は、発進立坑から到達立坑に向けて、後方に順次設置したセグメントから掘進反力を得ながらシールド掘進機による掘進を行うことにより、発進立坑と到達立坑との間に連設配置した多数のセグメントによるトンネルを形成する工法である。シールドトンネル工法を行うためのシールド掘進機は、泥土圧式シールド掘進機、泥水式シールド掘進機等の種々のシールド掘進機が公知であるが、これらのうち泥土圧式シールド掘進機は、先端のカッター板によって掘削した掘削土砂を後方の隔室に取り込んで充填し、充填した掘削土砂の土圧によって切羽面を安定させると共に、スクリューコンベアを介して隔室から掘削土砂を排出しながらトンネルの掘進を行ってゆくものである。また、隔室に取り込まれて充填される掘削土砂は、好ましくは加泥材等が添加混合されて流動化された状態となっており、この状態でトンネルの切羽面をバランス良く押え付けつつ、スクリューコンベアを介して隔室から容易に連続排出されるようになっている。
【0003】
一方、泥土圧式シールド掘進機によって掘削される地山の土質が、例えば一軸圧縮強度が5〜10N/mm2程度の固結粘土層(泥岩層、粘土塊層、土丹層等を含む)であると、掘削時に例えば200〜400mm程度の大きさの粘土塊が隔室内に取り込まれる場合がある。また隔室内に取り込まれた粘土塊は、流動化されることなく塊として残ったままスクリューコンベアの羽根の間の隙間を介して排出されると、例えば圧送ポンプを用いて隔室から排出された掘削土砂を立坑や地上の作業ヤードまで搬送する際に、圧送ポンプが粘土塊によって閉塞されて搬送作業が困難になる。また、隔室から排出された掘削土砂を例えばズリトロを用いて搬送する際にも、大きな粘土塊が残っていると、フケによる見掛けの土砂量が大きくなり、余分な搬送能力を必要とすることになると共に、掘削土砂の搬出量を管理するうえで好ましくない。さらに、立坑を介して掘削土砂を地上まで上昇させるために垂直コンベアを使用する場合には、粘土塊を事前に小さく破砕処理しておくことが必要である。
【0004】
これらのことから、固結粘土層を泥土圧式シールド掘進機によって掘削する際に、発生する粘土塊を細かく破砕してから圧送ポンプによって搬送することを可能にした、回転破砕装置及びシールド掘進機が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−233136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシールド掘進機は、カッター板の回転によって掘削されてチャンバー(隔室)内に取り込まれた土砂を、スクリューコンベアによって排出し、圧送ポンプによってトンネル外部に圧送するシールド掘削機において、スクリューコンベアの排出口に回転破砕機の土砂投入口を取り付け、圧送ポンプの土砂投入口に回転破砕機の土砂排出口を取り付けたものである。また回転破砕機は、土砂投入口を有する破砕室と、該破砕室に配設され、複数列に破砕羽根が設けられた1本の回転軸と、回転軸を回転駆動する駆動手段と、回転軸の下方において、破砕羽根の各列の間を通過して回転軸に直交する方向に延在して設けられた複数の固定棒(簀子部)と、固定棒の下方に設けられた土砂排出口とを備えたものである。
【0006】
特許文献1に記載のシールド掘進機によれば、スクリューコンベアによって排出されて土砂と共に破砕室に投入される粘土塊は、回転破砕機によって、例えば複数列に配列された破砕羽根の間を擦り抜けた粘土塊を固定棒で受け止めて固定し、次に回転してきた破砕羽根によって確実に破砕しつつ、固定棒間(簀子部)を通過できる程度の大きさに容易に破砕されることになる。これによって、土砂に含まれる粘土塊が圧送ポンプを閉塞するのを効果的に回避して、固結粘土層における泥土圧式シールド掘進機によるトンネル掘進の作業性を向上させることが可能になる。
【0007】
一方、特許文献1に記載のシールド掘進機によれば、シールド掘進機が大口径のものになると、単位時間当りの掘削土砂の土量が増加することになるため、スクリューコンベアの径を大きくする必要がある。またスクリューコンベアの排出口に取り付けられる回転破砕機も大掛かりなものとする必要がある。回転破砕機が大掛かりなものになると、狭いシールド掘進機の内部において、スクリューコンベアの排出口の下方に取り付けられる回転破砕機が邪魔になって、セグメントの搬入・組立て作業やその他の作業に影響を及ぼし易くなることから、粘土塊を破砕するための破砕機構をよりコンパクトな形状にするための、さらなる改良が望まれている。
【0008】
また、特許文献1に記載のシールド掘進機によれば、回転破砕機の破砕羽根が取り付けられた回転軸は、1本のみ設けられていて一方向にのみ回転するものであることから、例えば多量の粘土塊が一度に破砕室に送られてくると、破砕室において破砕羽根が粘土塊をスムーズに下方に巻き込めなくなる場合があり、例えば付着等を原因として回転軸の回転方向後方における破砕室の上部に粘土塊が残置されて、破砕室の上部を閉塞することも考えられる。
【0009】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたものであり、泥土圧式シールド掘進機によって掘削された掘削土砂に含まれる粘土塊を小さく破砕してから圧送ポンプの等の搬送装置に送り出すことができると共に、コンパクトな形状とすることのできる破砕機構を備える破砕機構付きシールド掘進機を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、多量の粘土塊が一度に破砕室に送られてくる場合でも、破砕羽根によって粘土塊を順次スムーズに下方に巻き込みながら確実に破砕してゆくことのできる破砕機構を備える破砕機構付きシールド掘進機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、先端のカッター板によって掘削した掘削土砂を後方の隔室に取り込んで充填し、充填した掘削土砂の土圧によって切羽面を安定させると共に、スクリューコンベアを介して前記隔室から掘削土砂を排出しながらトンネルの掘進を行う泥土圧式シールド掘進機において、掘削土砂に含まれる固結粘土の粘土塊を破砕する破砕機構を備えた破砕機構付きシールド掘進機であって、前記破砕機構は、上部にスクリューコンベアからの土砂投入口を備え、下部に土砂排出口を備える破砕室と、該破砕室の下部に設けられ、所定の間隔をおいて平行に配置された複数の固定ロッド状部材からなる簀子部と、該簀子部の上方に前記固定ロッド状部材と垂直な方向に平行に並べて配置され、軸方向に所定の間隔をおいて取り付けられた複数の破砕羽根を有する2本の回転軸部材とからなり、前記破砕羽根は、その回転軌跡の下端部が前記簀子部の隣接する固定ロッド状部材間の間隔部分を通過し、且つ2本の回転軸部材に取り付けられた破砕羽根の回転軌跡が、軸方向から見て当該2本の回転軸部材の中間部分で重なり合うような位置関係で各回転軸部材に取り付けられている破砕機構付きシールド掘進機を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0012】
そして、本発明の破砕機構付きシールド掘進機によれば、前記2本の回転軸部材は、当該2本の回転軸部材によって挟まれる部分において破砕羽根が上方から下方に移動する方向に回転するようになっていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の破砕機構付きシールド掘進機によれば、前記固定ロッド状部材間の各間隔部分に前記2本の回転軸部材に取り付けられた破砕羽根の回転軌跡の下端部が各々通過するように、前記2本の回転軸部材に取り付けられた破砕羽根は、前記回転軸部材と垂直な同じ面内に各々配置されるようになっていることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の破砕機構付きシールド掘進機によれば、前記2本の回転軸部材に取り付けられた破砕羽根は、前記回転軸部材の軸方向の各取付け位置において、前記回転軸部材の周方向に所定の角度間隔で複数設けられていることが好ましい。
【0015】
さらにまた、本発明の破砕機構付きシールド掘進機によれば、前記破砕室の土砂排出口に圧送ポンプの土砂投入口が接続されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の破砕機構付きシールド掘進機によれば、コンパクトな形状の破砕機構を用いて、泥土圧式シールド掘進機によって掘削された掘削土砂に含まれる粘土塊を小さく破砕してから圧送ポンプ等の搬送装置に送り出すことができる。また、2本の回転軸部材を、当該2本の回転軸部材によって挟まれる部分において破砕羽根が上方から下方に移動する方向に回転するようにすれば、多量の粘土塊が一度に破砕室に送られてくる場合でも、破砕羽根によって粘土塊を順次スムーズに下方に巻き込みながら確実に破砕してゆくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の好ましい一実施形態に係る破砕機構付きシールド掘進機10は、図1に示すような泥土圧式シールド掘進機において、スクリューコンベア11の後端部分の下方に、これの土砂排出口11aと連設して、後述する粘土塊の破砕機構12を、搬送装置としての圧送ポンプ23との間に介在して設置することによって構成される。
【0018】
本実施形態によれば、泥土圧式シールド掘進機は、例えば直径が5500mm程度の大きさのシールドトンネルを地中に構築してゆくためのトンネル掘進機であって、例えば7500mm程度の長さの外郭体(スキンプレート)13の内部に、セグメント組立て用のエレクタ14、シールドジャッキ15、中折ジャッキ16、スクリューコンベア11、カッター回転駆動モータ17等を備えた公知のものである。また外郭体13の先端部分には、隔壁18によってこれの後方部分との間を区画された隔室19が設けられ、隔室19の先端面を覆うように配置されてカッター板20が回転可能に取り付けられている。
【0019】
そして、泥土圧式シールド掘進機は、外郭体13の後部でセグメント21をリング状に組み立てて前方に連設してゆくと共に、最先端に設置されたセグメント21から掘進反力を得て、シールドジャッキ15や中折ジャッキ16によって外郭体13を前方に押し出すようにしつつ、カッター板20を回転駆動して地山の切羽面を切削(掘削)しながら外郭体13を前進させることにより、外郭体13の後方にセグメント21によるトンネル覆工体を順次連続して構築して行くトンネル掘進機である。またカッター板20によって掘削された掘削土砂は、カッター板20に開口形成された土砂取込み用のスリット(図示せず。)から隔室19の内部に取り込まれ、適宜加泥材等を添加混合して攪拌されることにより、流動化された状態で隔室19内に充填される。掘削土砂が隔室19内に流動化された状態で充填されることにより、掘削土砂によってトンネルの切羽面をバランス良く押え付けつつ、掘削土砂をスクリューコンベア11を介して隔室19から容易に連続排出することが可能になる。
【0020】
本実施形態によれば、泥土圧式シールド掘進機によって掘削される地山の土質は、例えば一軸圧縮強度が5〜10N/mm2程度の固結粘土層となっており、隔室19には、掘削作業に伴なって、例えば200〜400mm程度の大きさの固結粘土の粘土塊が掘削土砂と共に取り込まれる場合がある。隔室19内に取り込まれた粘土塊は、流動化されることなく塊のまま、所定のピッチで配設されたスクリューコンベア11の螺旋状の羽根22の間の隙間を介して送り出される場合があり、掘削土砂と共に排出された粘土塊を圧送ポンプ23によって搬送しようとすると、これらの粘土塊によって圧送ポンプ23が閉塞されて、搬送作業が困難になる。本実施形態の破砕機構付きシールド掘進機10では、上述のように、スクリューコンベア11の土砂排出口11aと連設して圧送ポンプ23との間に破砕機構12が設けられていることにより、掘削土砂に含まれる粘土塊を小さく破砕してから圧送ポンプ23に送り出すことが可能になり、圧送ポンプ23が閉塞するのを効果的に回避できるうようにするものである。
【0021】
そして、本実施形態の破砕機構付きシールド掘進機10は、先端のカッター板20によって掘削した掘削土砂を後方の隔室19に取り込んで充填し、充填した掘削土砂の土圧によって切羽面を安定させると共に、スクリューコンベア11を介して隔室19から掘削土砂を排出しながらトンネルの掘進を行う泥土圧式シールド掘進機において、掘削土砂に含まれる固結粘土の粘土塊を破砕する破砕機構12を備えており、この破砕機構12は、図2〜4に示すように、上部にスクリューコンベア11からの土砂投入口24aを備え、下部に土砂排出口24bを備える破砕室24と、この破砕室24の下部における土砂排出口24bの上方に設けられ、所定の間隔をおいて平行に配置された複数の固定ロッド状部材27からなる簀子部28と、この簀子部28の上方に固定ロッド状部材27と垂直な方向に平行に並べて配置され、軸方向に所定の間隔をおいて取り付けられた複数の破砕羽根29を有する2本の回転軸部材30とによって構成されている。また破砕羽根29は、その回転軌跡31(図4参照)の下端部が簀子部28の隣接する固定ロッド状部材27間の間隔部分を通過し、且つ2本の回転軸部材30に取り付けられた破砕羽根29の回転軌跡31が、軸方向から見て当該2本の回転軸部材30の中間部分で重なり合うような位置関係で各回転軸部材30に取り付けられている。
【0022】
また、本実施形態によれば、2本の回転軸部材30は、当該2本の回転軸部材30よって挟まれる部分において破砕羽根29が上方から下方に移動する方向X(図4参照)に回転するようになっている。
【0023】
さらに、本実施形態によれば、固定ロッド状部材27間の各間隔部分に2本の回転軸部材30に取り付けられた破砕羽根29の回転軌跡31の下端部が各々通過するように、2本の回転軸部材30に取り付けられた破砕羽根29は、回転軸部材30と垂直な同じ面内に各々配置されている。
【0024】
さらにまた、2本の回転軸部材30に取り付けられた破砕羽根29は、回転軸部材30の軸方向の各取付け位置において、回転軸部材30の周方向に所定の角度間隔(本実施形態では180度間隔)で複数(本実施形態では2本)設けられている。
【0025】
本実施形態の破砕機構12を構成する破砕室24は、図2(a)〜(c)に示すように、天面部25aと、底面部25bと、4方の側壁部25c,25d,25e,25f(図2〜図4参照)とからなる、平面矩形形状の中空箱体として形成される。平面矩形形状の破砕室24の短辺側の一方の側壁部25cには、中空六面体形状の駆動室32が連設一体化されて設けられている。駆動室32には、ギア機構等によって連結された2体の回転駆動装置33が並べて設置されている(図3参照)。これらの回転駆動装置33は、駆動室32の外側に連結された油圧モータ34と接続しており、この油圧モータ34の駆動力によって、回転駆動装置33に一端が係止固定されて破砕室24の内部に回転可能に配置された2本の回転軸部材30を、同期させつつ上述の所定の回転方向Xに回転駆動させることができるようになっている。
【0026】
すなわち、駆動室32に収容された2体の回転駆動装置33は、破砕室24の短辺側の一方の側壁部25cを貫通して、そのチャック部33aが破砕室24に各々突出して配置されており、これらのチャック部33aに一端を挿入して係止固定すると共に、破砕室24の短辺側の他方の側壁部25dに設けた回転支持台26に他端を回転可能に支持させることにより、一対の回転軸部材30は、破砕室24の内部において、所定の回転方向Xに所定の回転速度で同期しながら回転できるようになっている。
【0027】
本実施形態によれば、破砕室24の天面部25aは、当該破砕室24の天面を覆う投入口取合いフランジ板36と点検口取合いフランジ板37とを斜めに突き合わせるように配置して構成されている。投入口取合いフランジ板36は、図2(b)に示すように、内側が略正方形に開口する土砂投入口24aとなった矩形枠状のプレート部材であって、土砂投入口24aの外側の枠部分には、多数のボルト孔36aが穿孔形成されている。これらのボルト孔36aを介して固定ボルトを締着することにより、スクリューコンベア11の土砂排出口11aの周縁部分に投入口取合いフランジ板36を密着させつつ、粘土破砕機構12がスクリューコンベア11の後端部下方に固定される。また投入口取合いフランジ板36の内側の土砂投入口24aは、スクリューコンベア11の土砂排出口11aと連通する。
【0028】
点検口取合いフランジ板37は、投入口取合いフランジ板36よりも長さの短い、内側が横長長方形の点検用開口部37aとなった横長矩形枠状のプレート部材であって、点検用開口部37aを開閉可能に覆う蓋部材38が設けられている。必要に応じて蓋部材38を適宜開放して破砕室26の内部を点検用開口部37aから点検することができるようになっており、また例えば破砕が困難な礫等がスクリューコンベア11から破砕室26に投入された場合に、点検用開口部37aからこれらを除去することができるようになっている。
【0029】
本実施形態によれば、破砕室24の底面部25bは、当該破砕室24の底面を覆う排出口取合いフランジ板39を配置して構成されている。排出口取合いフランジ板39は、図2(c)に示すように、内側が略正方形に開口する土砂排出口24bとなった矩形枠状のプレート部材であって、土砂排出口24bの外側の枠部分には、多数のボルト孔39aが穿孔形成されている。これらのボルト孔39aを介して固定ボルトを締着することにより、排出口取合いフランジ板39に圧送ポンプ23の土砂投入口23aの周縁部分を密着させつつ、圧送ポンプ23が粘土破砕機構12の下方に固定される。また排出口取合いフランジ板39の内側の土砂排出口24bは、圧送ポンプ23の土砂投入口23aと連通する。
【0030】
そして、本実施形態によれば、破砕室24の下部における土砂排出口24bの上方には、平行に配置された複数の固定ロッド状部材27からなる簀子部28が設けられている(図2〜図4の斜線部参照)。本実施形態では、簀子部28を構成する固定ロッド状部材27は、下半部分が先細りの形状となった、幅30mm程度、高さ120mm程度の縦長矩形断面形状を備える棒状部材であって、両端が破砕室24の長辺側の一対の対向する側壁部25e,25fに支持固定されることにより、2本の回転軸部材30と垂直に延設して取付けられている。
【0031】
また、本実施形態では、例えば9本の固定ロッド状部材27が、例えば90mm程度のピッチで平行に配置されて簀子部28を形成していると共に、各隣接する固定ロッド状部材27の間には、例えば60mm程度の間隔部分が保持されることになる。各隣接する固定ロッド状部材27間の8箇所の間隔部分には、2本の回転軸部材30に取り付けられた各破砕羽根29の回転軌跡31の下端部が各々通過することになる。これらの間隔部分を介して、スクリューコンベア11から破砕室24に投入された掘削土砂が圧送ポンプ23に送り出されることから、これらの間隔部分の幅によって、破砕機構12によって破砕された後に通過する粘土塊の大きさが決められることになる。なお、各隣接する固定ロッド状部材27間の間隔部分の幅を調整することによって、破砕された後に圧送ポンプ23に送り出される粘土塊の大きさが所定の大きさとなるように適宜調整することが可能になる。
【0032】
簀子部28の上方に平行に並べて配置された2本の回転軸部材30に各々取付けられる破砕羽根29は、各回転軸部材30において、簀子部28の隣接する固定ロッド状部材27間の8箇所の間隔部分に対応させた軸方向の8箇所の所定の位置に、径方向外方に突出して設けられている。本実施形態によれば、破砕羽根29は、図5に示すように、装着固定部40を挟んだ両側に一対の破砕羽根29を一体として連接した破砕ピース41を、装着固定部40を介して回転軸部材30の軸方向の8箇所の所定の位置に各々挿通固定することにより、回転軸部材30に取り付けられる。これによって破砕羽根29は、各軸方向の位置において、回転軸部材30の周方向に180度の角度間隔をおいて背向した状態で各々一対設けられることになる。なお、各破砕羽根29の回転方向X側の先端側角部分には超硬チップ42が取り付られており、各破砕羽根29の磨耗や破損を効果的に抑制できるようになっている。
【0033】
また、本実施形態によれば、各破砕ピース41における装着固定部40の中心から破砕羽根29の先端までの長さは、例えば230mm程度となっており、例えば400mm程度の中心間距離で配置された2本の回転軸部材30の当該中心間距離の1/2の長さよりも長くなっている。また、例えば110mm程度に設定された、回転軸部材30の中心と簀子部28を構成する固定ロッド状部材27の天面との間の長さよりも長くなっている。これらによって、破砕羽根29の回転軌跡31は、軸方向から見て2本の回転軸部材30の中間部分で重なり合うと共に、回転軌跡31の下端部分が隣接する固定ロッド状部材27間の間隔部分を通過することになる。
【0034】
さらに、本実施形態によれば、2本の回転軸部材30における8箇所の軸方向の位置に各々取付けられる破砕ピース41(破砕羽根29)は、軸方向に隣接する破砕ピース41(破砕羽根29)の間で例えば周方向に60度づつ角度をずらせて取り付けられている。また軸方向の同じ位置で2本の回転軸部材30に各々取付けられて同じ面内を回転軌跡31が通過する各一対の破砕ピース41(破砕羽根29)は、例えば周方向に90度角度をずらせて取り付けられている。
【0035】
破砕ピース41(破砕羽根29)が軸方向に隣接する位置で周方向に角度をずらせて取り付けられていることにより、粘土塊を分散させながら各破砕羽根29によって効率良く破砕してゆくことが可能になる。また、破砕ピース41(破砕羽根29)が軸方向と垂直な同じ面内で2本の回転軸部材30の周方向に角度をずらせて取り付けられていることにより、これらの回転軌跡31が2本の回転軸部材30の中間部分で重なり合っていても、破砕ピース41(破砕羽根29)は互いに干渉することなく回転することが可能になる。また2本の回転軸部材30に取り付けた破砕羽根29が、各々の回転軌跡31が重なり合う箇所において同一の位置を通過するので、いわゆる2度切りの作用によって、さらに確実且つ効果的に粘土塊を破砕してゆくことが可能になる。
【0036】
上述のような構成を備える破砕機構12は、駆動室32や油圧モータ34等を含めた全体の形状が、例えば長さが2100mm、幅が920mm、高さが680mm程度の大きさの、コンパクトな形状を備えると共に、泥土圧式シールド掘進機のスクリューコンベア11の土砂排出口11aと圧送ポンプ23の土砂投入口23aとの間に介在して取り付けられて、本実施形態の破砕機構付きシールド掘進機10を構成することになる。
【0037】
そして、本実施形態の破砕機構付きシールド掘進機10によれば、コンパクトな形状の破砕機構12を用いて、泥土圧式シールド掘進機によって掘削された掘削土砂に含まれる粘土塊を小さく破砕してから圧送ポンプ23に送り出すことができ、これによって大きな粘土塊によって圧送ポンプ23が閉塞するのを効果的に回避することが可能になる。
【0038】
すなわち、本実施形態によれば、破砕機構12は、土砂投入口24a及び土砂排出口24bを備える破砕室24と、平行に配置された複数の固定ロッド状部材27による簀子部28と、簀子部28の上方に固定ロッド状部材27と垂直な方向に平行に並べて配置された複数の破砕羽根29を有する2本の回転軸部材30とからなり、破砕羽根29は、その回転軌跡31の下端部が簀子部28の隣接する固定ロッド状部材27間の間隔部分を通過し、且つ2本の回転軸部材30に取り付けられた破砕羽根29の回転軌跡31が、軸方向から見て中間部分で重なり合うような位置関係で取り付けられているので、破砕羽根を取り付けた回転軸が1本のみ設けられている従来の回転破砕機と比較して、同等の破砕能力を担保したまま破砕羽根29の回転半径を小さくすることによって、破砕機構12の高さを低く抑えることが可能になり、これによって破砕機構12を取り付けたスクリューコンベア11の下方に相当の作業空間を確保して、シールド掘進機の内部における、セグメントの搬入・組立て作業やその他の作業を効率良く行うことを可能にする。
【0039】
また、本実施形態の破砕機構付きシールド掘進機10によれば、破砕羽根29が取り付けられた2本の回転軸部材30は、当該2本の回転軸部材30よって挟まれる部分において破砕羽根29が上方から下方に移動する方向Xに回転するようになっているので、破砕される方向に粘土塊を順次送り出しつつ破砕して行くことが可能になり、これによって多量の粘土塊が一度に破砕室24に送られてくる場合でも、破砕羽根29によって粘土塊を順次スムーズに下方に巻き込みながら、例えば粘土塊を破砕室24の上部に付着させたままにすることなく、確実に破砕してゆくことが可能になる。
【0040】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、2本の回転軸部材は、これらに挟まれる部分において破砕羽根が上方から下方に移動する方向に回転させる必要は必ずしもなく、また2本の回転軸部材に取り付けられた破砕羽根を、回転軸部材と垂直な同じ面内に各々配置する必要は必ずしもない。さらに、回転軸部材の各軸方向の位置において、破砕羽根を周方向に180度の角度間隔をおいて一対設ける必要は必ずしもなく、各軸方向の位置おいて一枚のみ又は3枚以上径方向外方に突出させて設けることもできる。
【0041】
さらにまた、破砕室の土砂排出口に圧送ポンプの土砂投入口を接続して、破砕した粘土塊を含む掘削土砂を圧送ポンプによって搬送する必要は必ずしもなく、例えばズリトロを搬送装置として掘削土砂を搬送する場合にも適用することができる。ズリトロを搬送装置として用いる場合でも、粘土塊を小さく破砕して均一な状態にしてから搬送することにより、搬送土砂のフケ率を減少させて、余分な搬送能力を必要とすることがなくなり、また正確な掘削土砂の管理を行うことも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る破砕機構付きシールド掘進機の構成を説明する略示縦断面図である。
【図2】(a)は本発明の好ましい一実施形態に係る破砕機構付きシールド掘進機に取り付けられる破砕機構の縦断面図、(b)は(a)のA−Aに沿った上面図、(c)は(a)のB−Bに沿った底面図である。
【図3】本発明の好ましい一実施形態に係る破砕機構付きシールド掘進機に取り付けられる破砕機構の、図2(a)のC−Cに沿った平断面図である。
【図4】本発明の好ましい一実施形態に係る破砕機構付きシールド掘進機に取り付けられる破砕機構の、図3のD−Dに沿った横断面図である。
【図5】一対の破砕羽根を含む破砕ピースの正面図である。
【符号の説明】
【0043】
10 破砕機構付きシールド掘進機
11 スクリューコンベア
12 破砕機構
13 外郭体(スキンプレート)
18 隔壁
19 隔室
20 カッター板
21 セグメント
22 スクリューコンベアの螺旋状の羽根
23 圧送ポンプ
24 破砕室
24a 破砕室の土砂投入口
24b 破砕室の土砂排出口
25a 破砕室の天面部
25b 破砕室の底面部
25c,25d,25e,25f 破砕室の側壁部
27 固定ロッド状部材
28 簀子部
29 破砕羽根
30 回転軸部材
31 破砕羽根の回転軌跡
33 回転駆動装置
34 油圧モータ
36 投入口取合いフランジ板
37 点検口取合いフランジ板
39 排出口取合いフランジ板
40 破砕ピースの装着固定部
41 破砕ピース
42 超硬チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端のカッター板によって掘削した掘削土砂を後方の隔室に取り込んで充填し、充填した掘削土砂の土圧によって切羽面を安定させると共に、スクリューコンベアを介して前記隔室から掘削土砂を排出しながらトンネルの掘進を行う泥土圧式シールド掘進機において、掘削土砂に含まれる固結粘土の粘土塊を破砕する破砕機構を備えた破砕機構付きシールド掘進機であって、
前記破砕機構は、上部にスクリューコンベアからの土砂投入口を備え、下部に土砂排出口を備える破砕室と、該破砕室の下部に設けられ、所定の間隔をおいて平行に配置された複数の固定ロッド状部材からなる簀子部と、該簀子部の上方に前記固定ロッド状部材と垂直な方向に平行に並べて配置され、軸方向に所定の間隔をおいて取り付けられた複数の破砕羽根を有する2本の回転軸部材とからなり、
前記破砕羽根は、その回転軌跡の下端部が前記簀子部の隣接する固定ロッド状部材間の間隔部分を通過し、且つ2本の回転軸部材に取り付けられた破砕羽根の回転軌跡が、軸方向から見て当該2本の回転軸部材の中間部分で重なり合うような位置関係で各回転軸部材に取り付けられている破砕機構付きシールド掘進機。
【請求項2】
前記2本の回転軸部材は、当該2本の回転軸部材によって挟まれる部分において破砕羽根が上方から下方に移動する方向に回転する請求項1に記載の破砕機構付きシールド掘進機。
【請求項3】
前記固定ロッド状部材間の各間隔部分に前記2本の回転軸部材に取り付けられた破砕羽根の回転軌跡の下端部が各々通過するように、前記2本の回転軸部材に取り付けられた破砕羽根は、前記回転軸部材と垂直な同じ面内に各々配置される請求項1又は2に記載の破砕機構付きシールド掘進機。
【請求項4】
前記2本の回転軸部材に取り付けられた破砕羽根は、前記回転軸部材の軸方向の各取付け位置において、前記回転軸部材の周方向に所定の角度間隔で複数設けられている請求項1〜3のいずれかに記載の破砕機構付きシールド掘進機。
【請求項5】
前記破砕室の土砂排出口に圧送ポンプの土砂投入口が接続されている請求項1〜4のいずれかに記載の破砕機構付きシールド掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−299759(P2006−299759A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127144(P2005−127144)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】