説明

硬化可能なオルガノポリシロキサン材料

【課題】低い放散値及び下地への良好な付着性を有する臭いを有さないシリコーン材料を提供することである。
【解決手段】1013hPaの圧力で100℃より高い沸点を有する有機酸を含有する、Si結合水素を脂肪族多重結合に付加させることにより架橋可能なシリコーン材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Si結合水素を脂肪族多重結合に付加させることにより架橋可能な、有機酸含有シリコーン材料、その製造方法並びに特にテキスタイル平面状構造物の被覆のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
付加架橋性シリコーン材料は、典型的には白金化合物の触媒の存在で脂肪族不飽和基とSi結合水素との反応(ヒドロシリル化)により硬化する。付加架橋性材料を、数多くの基材、例えばプラスチック、金属、鉱物物質及び有機繊維の被覆に使用することは多方面で知られている。この場合、架橋可能な材料の個々の成分は、工業的使用のための要求を満たすことができるように調整しなければならない。このために、例えばEP915937B1を参照されたい。
【特許文献1】EP915937B1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、低い放散値及び下地への良好な付着性を有する臭いを有さないシリコーン材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の対象は、1013hPaの圧力で100℃より高い沸点を有する有機酸を含有する、Si結合水素を脂肪族多重結合に付加させることにより架橋可能なシリコーン材料である。
【0005】
好ましくは、この架橋可能な材料は、以下
(A)脂肪族多重結合を有するSiC結合基を有する有機ケイ素化合物、
(B)Si結合水素原子を有する有機ケイ素化合物、又は(A)及び(B)の代わりに、
(C)脂肪族多重結合を有するSiC結合基及びSi結合水素原子を有する有機ケイ素化合物、
(D)Si結合水素の脂肪族多重結合への付加を促進する触媒、及び
(E)1013hPaの圧力で100℃より高い沸点を有する有機酸
を含有する材料である。
【0006】
本発明の範囲内では、概念オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子の一部が酸素以外の基により、例えば−N−又は−C−を介して互いに結合していてよいポリマー、オリゴマーも、二量体シロキサンも含まれる。
【0007】
本発明にかかる組成物は、一成分オルガノポリシロキサン材料並びに二成分オルガノポリシロキサン材料であってよい。二成分オルガノポリシロキサン材料の場合、本発明にかかる材料の両成分が全種の成分を任意に組合せて含有してよく、但し、一般的に一方の成分は脂肪族多重結合を有するシロキサン、Si結合水素を有するシロキサン及び触媒を同時に含有しない。好ましくは、本発明にかかる組成物は二成分材料である。
【0008】
本発明にかかる材料中で使用される化合物(A)及び(B)若しくは(C)は、公知のようにして、架橋が可能なように選択される。好ましくは、例えば化合物(A)は少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有し、かつシロキサン(B)は少なくとも3個のSi結合水素原子を有するか、又は化合物(A)は少なくとも3個の脂肪族不飽和基を有し、かつシロキサン(B)は少なくとも2個のSi結合水素原子を有するか、又は化合物(A)及び(B)の代わりに前記の割合で脂肪族不飽和基及びSi結合水素原子を有するシロキサン(C)を使用する。
【0009】
有機ケイ素化合物(A)としては、今までにも付加架橋可能な材料中で使用されていた、脂肪族多重結合を有する全ての有機ケイ素化合物を使用することができる。
【0010】
有機ケイ素化合物(A)は、好ましくは、式
a1bSiO(4-a-b)/2 (I)
[式中、Rは、同じか又は異なっていてよく、かつ脂肪族炭素−炭素−多重結合を有さない基であり、
1は、同じか又は異なっていてよく、かつ脂肪族炭素−炭素−多重結合を有する置換又は非置換の1価のSiC結合炭化水素基であり、
aは、0、1、2又は3であり、かつ
bは、0、1又は2であり、
但し、a+bの合計は3以下であり、かつ1分子当たり少なくとも2個の基R1が存在する]の単位からなるシロキサンである。
【0011】
基Rは、1価又は多価の基であってよく、その際、多価の基、例えば2価、3価及び4価の基は、その際、複数の、例えば2個、3個又は4個の式(I)のシロキシ単位と相互に結合する。
【0012】
Rは1価の基−F、−Cl、−Br、−OR6、−CN、−SCN、−NCO及び置換又は非置換のSiC結合炭化水素基(この基は酸素原子又は基−C(O)−で中断されていてもよい)、並びに2価の両側で式(I)によりSi結合基を包含する。基RがSiC結合した置換炭化水素基である場合には、置換基としてはハロゲン原子、リン含有基、シアノ基、−OR6、−NR6−、−NR62、−NR6−C(O)−NR62、−C(O)−NR62、−C(O)−R6、−C(O)OR6、−SO2−Ph及び−C65で示され、その式中、R6は、同じか又は異なっていてよく、かつ水素原子又は1〜20個の炭素原子を有する1価の炭化水素基であり、かつPhはフェニル基である基が好ましい。
【0013】
基Rの例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基、ドデシル基、例えばn−ドデシル基、及びオクタデシル基、例えばn−オクタデシル基、シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基、アリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基及びフェナントリル基、アルカリール基、例えばo−、m−、p−トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基、及びアラルキル基、例えばベンジル基、α−及びβ−フェニルエチル基である。
【0014】
置換された基Rの例は、ハロゲンアルキル基、例えば3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロイソプロピル基及びヘプタフルオロイソプロピル基並びにハロゲンアリール基、例えばo−、m−及びp−クロロフェニル基である。
【0015】
基Rは好ましくは脂肪族炭素−炭素−多重結合を有していない、置換又は非置換の1〜18個の炭素原子を有する1価のSiC結合炭化水素基、特に好ましくは脂肪族炭素−炭素−多重結合を有していない、1〜6個の炭素原子を有する1価のSiC結合炭化水素基、特にメチル基又はフェニル基である。
【0016】
基R1は、SiH官能性化合物と付加反応(ヒドロシリル化)することができる任意の基であってよい。
【0017】
基R1が、置換されたSiC結合炭化水素基である場合には、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基及び−OR6で示され、その式中、R6は上記の意味を有する基が好ましい。
【0018】
基R1は、好ましくは2〜16個の炭素原子を有するアルケニル基及びアルキニル基、例えばビニル基、アリル基、1−プロペニル基、メタリル基、5−ヘキセニル基、エチニル基、ブタジエニル基、ヘキサジエニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、ビニルシクロヘキシルエチル基、ジビニルシクロヘキシルエチル基、ノルボルネニル基、ビニルフェニル基及びスチリル基であり、その際、ビニル基、アリル基及び5−ヘキセニル基を使用することが特に好ましい。
【0019】
成分(A)の分子量は広範囲で、例えば10〜106g/molで変動してよく、その際、50〜500000g/molの分子量が好ましい。従って成分(A)は例えば比較的低分子のアルケニル官能性オリゴシロキサン、例えば1,2−ジビニルテトラメチルジシロキサンであってよいが、鎖中及び/又は末端のSi結合ビニル基を有する高ポリマーポリジメチルシロキサンであってもよい。成分(A)を形成する分子の構造は限定されない;特に高分子量、すなわちオリゴマー又はポリマーのシロキサンの構造は直鎖状、環状、又は分枝鎖状であってよい。
【0020】
特に好ましくは、成分(A)として、20〜1000000mm2/sの粘度(25℃)を有する主として直鎖状のポリジオルガノシロキサンを使用することであり、その際、成分(A)として、50〜500000mm2/sの粘度(25℃)を有するビニル末端の主として直鎖状のポリジオルガノシロキサンの使用が殊に好ましい。
【0021】
有機ケイ素化合物(B)として、今までにも付加架橋可能な材料中で使用されていた全ての水素官能性の有機ケイ素化合物を使用してよい。
【0022】
Si結合水素原子を有する有機ケイ素化合物(B)としては、好ましくは、一般式
2cdSiO(4-c-d)/2 (II)
[式中、
2は、同じか又は異なっていてよく、かつ基Rについての前記の意味を有し、
cは、0、1、2又は3であり、かつ
dは、0、1又は2であるが、
但し、c+dの合計は3以下であり、かつ1分子当たり少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個のSi結合水素原子が存在する]の単位からなるオルガノポリシロキサンを使用する。
【0023】
好ましくは、本発明により使用されるオルガノポリシロキサン(B)は、Si結合水素を、この有機ケイ素化合物(B)の全質量に対して0.04〜1.7質量%の範囲内で含有する。
【0024】
成分(B)の分子量も同様に広範囲、例えば10〜106g/molで変動してよい。従って、成分(B)は、例えば比較的低分子のSiH官能性のオリゴシロキサン、例えばテトラメチルジシロキサンであってよいが、鎖中又は末端のSiH基を有する高ポリマーの直鎖状ポリシロキサン又はSiH基を有するシリコーン樹脂であってもよい。また、成分(B)を形成する分子の構造は限定されない;特に高分子量、すなわちオリゴマー又はポリマーのSiH含有シロキサンの構造は、直鎖状、環状又は分枝鎖状であってよい。直鎖状及び環状ポリシロキサンは、好ましくは、式R23SiO1/2、HR22SiO1/2、HR2SiO2/2及びR22SiO2/2で示され、その式中、R2は上述の意味を有する単位から構成される。
【0025】
特に好ましくは、成分(B)として、低分子量のSiH官能性化合物、例えばテトラキス(ジメチルシロキシ)シラン及びテトラメチルシクロテトラシロキサン、並びに高分子量のSiH含有シロキサン、例えば、25℃で粘度10〜10000mm2/sを有するポリ(水素メチル)シロキサン及びポリ(ジメチル/水素メチル)シロキサン又はメチル基の一部が3,3,3−トリフルオロプロピル基又はフェニル基で置き換えられている同様のSiH含有化合物を使用する。
【0026】
成分(B)は、好ましくは、本発明にかかる架橋可能な材料中で、SiH基と脂肪族不飽和基とのモル比が0.1〜20、特に好ましくは1.0〜5.0であるような量で含まれている。
【0027】
本発明により使用される成分(A)及び(B)は市販製品であるか若しくは当該化学分野において慣用の方法により製造可能である。
【0028】
本発明にかかる材料は、成分(A)及び(B)の代わりに、脂肪族多重結合及びSi結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(C)を含有してよいが、これは好ましくない。
【0029】
シロキサン(C)を使用する場合には、好ましくは、式
3fSiO(4-f)/2、R3g1SiO(3-g)/2及びR3hHSiO(3-g)/2
[式中、R3は、同じか又は異なっていてよく、かつRについて挙げた意味を有し、かつR1は上述した意味を有し、
fは、0、1、2又は3であり、
gは、0、1又は2であり、かつ
hは、0、1又は2であり、
但し、1分子当たり少なくとも2個の基R1及び少なくとも2個のSi結合水素原子が存在する]の単位からなるシロキサンが好ましい。
【0030】
オルガノポリシロキサン(C)の例は、主としてR3及びR1が上述の意味を有するR321SiO1/2単位、R32SiO単位及びR3HSiO単位からなる直鎖状のオルガノポリシロキサンである。
【0031】
オルガノポリシロキサン(C)は、好ましくは25℃でそれぞれ、20〜1000000mm2/s、特に好ましくは50〜500000mm2/sの平均粘度を有する。
【0032】
オルガノポリシロキサン(C)は、当該化学分野において通常使用される方法により製造できる。
【0033】
本発明により使用される成分(D)としては、今までにもSi結合水素を脂肪族多重結合に付加することによって架橋可能な材料中で使用されていた全ての触媒を使用することができる。
【0034】
成分(D)は、好ましくは、周期律表の第8族、第9族又は第10族からのヒドロシリル化触媒である。この場合に、白金、ロジウム、パラジウム、鉄、ルテニウム及びイリジウム、好ましくは白金のような金属及びそれらの化合物を使用することができる。これらの金属は、場合により微細な担体材料、例えば活性炭、金属酸化物、酸化アルミニウム又は二酸化ケイ素上に固定化されていてよい。
【0035】
好ましくは、ヒドロシリル化触媒(D)として白金及び白金化合物を使用し、その際、ポリオルガノシロキサン中に可溶性の白金化合物が特に好ましい。可溶性の白金化合物としては、例えば式(PtCl2・オレフィン)2及び式H(PtCl3・オレフィン)で示される白金−オレフィン錯体を使用することができ、その際、好ましくは、2〜8個の炭素原子を有するアルケン、例えばエチレン、プロピレン、ブテン及びオクテンの異性体又は5〜7個の炭素原子を有するシクロアルカン、例えばシクロペンテン、シクロヘキセン及びシクロヘプテンを使用する。他の可溶性の白金触媒は、式(PtCl2362の白金−シクロプロパン錯体、ヘキサクロロ白金酸とアルコール、エーテル及びアルデヒドとの反応生成物若しくはその混合物又はヘキサクロロ白金酸とメチルビニルシクロテトラシロキサンとをエタノール性溶液中の重炭酸ナトリウムの存在下で反応させた反応生成物である。また、リン配位子、硫黄配位子及びアミン配位子を有する白金触媒、例えば(Ph3P)2PtCl2を使用することができる。特に、成分(D)としては、白金とビニルシロキサン、例えばsym−ジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体が好ましい。
【0036】
本発明により使用されるヒドロシリル化触媒(D)の量は、所望の架橋速度とその都度の使用並びに経済的観点に応じて左右される。本発明にかかる材料は、白金触媒(D)を、好ましくは、それぞれ本発明にかかる材料の全質量に対して、0.01〜1000質量ppm(=百万質量部当たりの質量部)、特に好ましくは0.05〜500質量ppm、特に0.1〜100質量ppmの白金含有量が得られる量で含有する。
【0037】
本発明により使用される酸(E)は、好ましくは、ヒドロシリル化触媒(D)を阻害せず、かつ本発明にかかるシリコーンゴム配合物中で臭いを減らす酸である。
【0038】
好ましくは、本発明により使用される有機酸(E)は、(A)において記載された有機ケイ素化合物と混合可能であるか又は分散可能である酸、又は、易揮発性有機溶剤、例えばエタノール、ブタノール、イソプロパノール又はアセトン中の溶液として成分(A)中に導入することができる酸である。
【0039】
好ましくは、有機酸は、少なくとも2個、特に好ましくは2〜20個の炭素原子を含有する。有機酸(E)は、1個以上のカルボキシル基を有してよい。
【0040】
特に、2〜5個の炭素原子を有する有機酸は、少なくとも2個のカルボキシル基を有する。
【0041】
有機酸(E)は、1013hPaの圧力でそれぞれ特に好ましくは150℃より高い、特に180℃より高い沸点を有する。
【0042】
有機酸(E)は、好ましくは1.6〜5.0のpKa値を有する。
【0043】
有機酸(E)の例は、ウンデセン酸、エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ドデセン酸、リンゴ酸及びクエン酸であり、リンゴ酸が好ましく、クエン酸が特に好ましい。有機酸(E)は、本発明にかかる架橋可能な材料100質量部に対して好ましくは0.01〜10質量部、特に好ましくは0.05〜7質量部、特に0.1〜5質量部の量で使用する。
【0044】
本発明にかかる硬化可能な組成物は、成分(A)〜(E)の他に、今までにも付加架橋可能な材料の製造に使用されてきた全ての成分、例えば阻害剤(F)、充填剤(G)、定着剤(H)並びに、溶剤、顔料、可塑剤、有機ポリマー、熱安定剤及び香料から選択された他の物質(I)を含有してよい。
【0045】
本発明により場合により使用される阻害剤(F)は、本発明にかかる材料の加工性、ライトオフ温度及び架橋速度の調節の目的に利用する添加剤、例えばアセチレン性アルコール、例えば1−エチニル−1−シクロヘキサノール、2−メチル−3−ブチン−2−オール及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ドデシン−3−オール、トリアルキルシアヌレート、アルキルマレエート、例えばジアリルマレエート、ジメチルマレエート及びジエチルマレエート、アルキルフマレート、例えばジアリルフマレート及びジエチルフマレート、有機ヒドロペルオキシド、例えばクメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド及びピナンヒドロペルオキシド、有機ペルオキシド、有機スルホキシド、有機アミン、ジアミン及びアミド、ホスフィン及びホスファイト、ニトリル、トリアゾール、ジアジリジン及びオキシムである。
【0046】
好ましくは、本発明により場合により使用される阻害剤(F)は、エチニルシクロヘキサノール、2−メチル−3−ブチン−2−オール及びアルキルマレエートであり、エチニルシクロヘキサノール及び2−メチル−3−ブチン−2−オールが特に好ましい。
【0047】
本発明にかかる材料は、成分(F)を、成分(A)100質量部に対してそれぞれ、好ましくは0.01〜3質量部、特に好ましくは0.02〜1質量部、特に0.03〜0.5質量部の量で含有する。
【0048】
場合により使用される充填剤(G)としては、今までにも架橋可能な材料中に使用されてきた全ての充填剤を使用することができる。充填剤の例は、強化充填剤、すなわち少なくとも30m2/gのBET表面積を有する充填剤、例えばカーボンブラック、熱分解法により製造されたケイ酸、沈降ケイ酸及びケイ素−アルミニウム−混合酸化物であり、その際、挙げられた充填剤は疎水化されていてもよく、並びに非強化充填剤、すなわち30m2/g未満のBET表面積を有する充填剤、例えば石英、クリストバライト、ケイ藻土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、モンモリロナイト、例えばベントナイト、ゼオライト(ケイ酸ナトリウムアルミニウムのような分子ふるいを含む)、金属酸化物、例えば酸化アルミニウムもしくは酸化亜鉛若しくはこれらの混合酸化物、金属水酸化物、例えば水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素からなる粉末、ガラス粉末、炭粉末及びプラスチック粉末並びに中空のガラスビーズおよびプラスチックビーズである。
【0049】
充填剤(G)は、好ましくは熱分解法により製造されたケイ酸又は沈降ケイ酸であり、特に好ましくは30〜300m2/gのBET表面積を有する熱分解法により製造されたケイ酸である。
【0050】
本発明にかかる材料が充填剤(G)を含有する場合には、架橋可能な材料100質量部に対してそれぞれ好ましくは1〜50質量部、特に好ましくは2〜30質量部であることが好ましい。
【0051】
本発明にかかる材料中に場合により使用される定着剤(H)としては、今までにもSi結合水素を脂肪族多重結合に付加することによって架橋可能な材料中で使用されていた全ての定着剤を使用することができる。好ましくは、シラン定着剤、例えばビニルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、エポキシプロピルトリアルコキシシラン、アセトキシ基を有するシラン並びにこれらの混合物である。
【0052】
本発明により使用される定着剤(H)は、特に好ましくは、エポキシプロピルトリエトキシシラン、エポキシプロピルトリメトキシシラン及びビニルトリアセトキシシランである。
【0053】
本発明にかかる材料中に定着剤(H)を使用する場合には、成分(A)100質量部に対してそれぞれ好ましくは0.01〜20質量部、特に好ましくは0.05〜10質量部、特に0.1〜5質量部の量が好ましい。
【0054】
本発明にかかる材料中に場合により使用される他の物質(I)としては、今までにもSi結合水素を脂肪族多重結合に付加することにより架橋可能な材料中に使用されてきた、かつ成分(A)〜(H)とは異なる、このために公知の全ての溶剤、顔料、着色剤、可塑剤、有機ポリマー、熱安定剤又は香料を使用する。
【0055】
溶剤の例は、7〜20個の炭素原子を有する脂肪族化合物、トルエン、キシレン、酸エステル、例えば酢酸エチルエステル又はケトン、例えばメチルエチルケトンである。
【0056】
可塑剤の例は、非官能性トリメチル末端ポリジメチルシロキサン、15〜30個の炭素原子を有する脂肪族化合物及び非官能性メチルフェニルポリシロキサンである。
【0057】
有機ポリマーの例は、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル及びポリカーボネート並びにポリエステルである。
【0058】
熱安定剤の例は、例えば酸化セリウム、有機セリウム化合物、例えばセリウムオクトエート、酸化鉄及び酸化チタンである。
【0059】
本発明にかかる材料中に他の物質(I)を使用する場合には、好ましくは溶剤、例えば脂肪族ベンジン、トルエン、キシレン又は酸エステル、例えばエチルアセテートである。
【0060】
本発明にかかる材料中に他の物質(I)を使用する場合には、好ましくはないが、成分(A)100質量部に対してそれぞれ好ましくは0.01〜60質量部、特に好ましくは0.05〜50質量部、特に0.1〜30質量部の量が好ましい。
【0061】
本発明にかかる材料は、好ましくは室温及び周囲圧力で液状若しくは注型可能である。この材料は、それぞれ25℃で好ましくは20〜1000000mm2/s、特に好ましくは50〜500000mm2/sの粘度を有する。
【0062】
特に好ましくは、本発明にかかる材料は、
(A)式(I)の単位からなる有機ケイ素化合物、
(B)Si結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、
(D)Si結合水素の脂肪族多重結合への付加を促進する触媒、
(E)1013hPaの圧力で100℃より高い沸点を有する有機酸、
場合により
(F)阻害剤、
場合により
(G)充填剤、
場合により
(H)定着剤、及び
場合により
(I)成分(A)〜(H)とは異なる、溶剤、顔料、着色剤、可塑剤、有機ポリマー、熱安定剤及び香料から選択された他の物質
からなる材料である。
【0063】
特に、本発明にかかる材料は、
(A)ビニル末端ジオルガノポリシロキサン、
(B)Si結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、
(D)Si結合水素の脂肪族多重結合への付加を促進する触媒、
(E)1013hPaの圧力で100℃より高い沸点を有する有機酸、
(F)阻害剤、
(G)充填剤、
(H)シラン定着剤、
並びに
場合により
(I)成分(A)〜(H)とは異なる、溶剤、顔料、着色剤、可塑剤、有機ポリマー、熱安定剤、非強化充填剤又は香料から選択された他の物質
からなる材料である。
【0064】
本発明により使用される成分(A)〜(I)は、それぞれのかかる成分の個々の種類、例えばかかる成分の種々異なる種類の少なくとも2種からなる混合物であってよい。
【0065】
本発明にかかるオルガノポリシロキサン材料の製造は、公知の方法に従って、例えば個々の成分を任意の順序で均一に混合することによって実施することができる。
【0066】
この場合、個々の成分のコンシステンシー及び粘度に応じて、混合工程を簡単な撹拌装置、例えば羽根型攪拌機、遊星混合機、ターボ撹拌機又は溶解機を用いて、練りロール機、ニーダー、Z型混合機又はボールミル上で実施してよい。撹拌容器は、開放されてよいか又は閉じられていてよい。この混合過程は、好ましくは室温で実施するが、−40℃〜150℃の範囲内の温度でも可能である。この場合、本発明により使用される酸(E)を、全ての他の成分を既に含有するシリコーンゴム配合物中に混合導入するか、又は1つ以上の相応の予備混合物中に混合導入することができる。このシリコーンゴム配合物の製造の間に、有機酸を混和してもよい。所望により、酸(E)を溶剤と混合させて使用することもできる。
【0067】
好ましくは、本発明にかかる材料の製造のための混合過程は、周囲大気、すなわち900〜1100hPaの圧力で実施し、その際、所望により、高められた又は低められた圧力並びに保護ガスを適用してもよい。本発明により使用される有機酸(E)を溶剤と混合させて添加する場合には、所望により、真空の設定及び/又は混合温度の増大により溶剤を再び除去してよい。
【0068】
本発明にかかる材料の製造のための混合工程は、不連続的に又は連続的に、このために好適な装置中で実施してよい。かかる装置の例は、ブスニーダー(Busskneter)、スタティック又はダイナミックフローミキサである。
【0069】
Si結合水素を脂肪族多重結合に付加させることによって架橋可能な本発明にかかる材料は、今までに知られているヒドロシリル化反応によって架橋可能な材料と同じ条件下で架橋させることができる。この場合、100〜220℃、特に好ましくは130〜190℃の温度が好ましく、かつ900〜1100hPaの圧力が好ましい。しかしながら、より高い又はより低い温度及び圧力を適用することもできる。
【0070】
本発明の更なる対象は、本発明にかかる材料の架橋により製造された成形体である。
【0071】
この場合、本発明にかかる成形体は、任意の自体公知のように製造することができる。この例は、カレンダリング、圧縮成形、射出成形、押出、注型である。本発明にかかる材料は、表面の被覆に使用することもできる。
【0072】
本発明にかかる材料並びに本発明により該材料から製造される架橋生成物は、今までにもエラストマーへと架橋可能なオルガノポリシロキサン材料若しくはエラストマーが使用されていた全ての目的のために使用することができる。本発明にかかる材料は、テキスタイル平面状構造物、例えば織物、フリース、メリヤス、スクリム(Gelege)、ニット、フェルト又は経編生地の被覆に特に好適である。この場合、テキスタイル平面状構造物は、天然繊維、例えば綿、羊毛、絹等から、又は、合成繊維、例えばポリエステル、ポリアミド、アラミド等から製造されていてよい。更にテキスタイルは、鉱物繊維、例えばガラス又はシリケート、又は金属繊維から製造されていてもよい。更に、本発明にかかる材料は、鉱物物質、プラスチック、天然物質又は金属からのシート又は表面の被覆に使用することができる。
【0073】
本発明の更なる対象は、テキスタイル平面状構造物を被覆する方法において、本発明にかかる材料をテキスタイル平面状構造物上に施与し、そして架橋させることを特徴とする方法である。
【0074】
本発明にかかる被覆は、自体公知のように、例えばドクターブレード法、浸漬法、押出法、射出法又は噴霧法において施与することができる。更に、全種のロール被覆、例えばグラビアロール塗、パジング又は多ロール系を介する塗布並びにスクリーン印刷が可能である。
【0075】
本発明にかかる被覆は、好ましくは、10〜50℃の温度で、かつ周囲大気の圧力、すなわち約900〜1100hPaで実施する。
【0076】
本発明にかかる材料は、積層又はトランスファー法における加工に好適である。
【0077】
本発明にかかる材料で被覆されたテキスタイル平面状構造物は、既に被覆された織物を使用する至るところで使用することができる。本発明にかかる被覆された織物は、好ましくは、特に、低い放散値及び下地への良好な付着性を有する臭いを有さない被覆を必要とするところで使用することができる。この例は、公共交通機関又は公共建築物のための補償器、カーテン、光保護テキスタイル、日よけ又は自動車内の安全支援系である。
【0078】
本発明による架橋可能な配合素材は、容易に入手できる出発材料を使用して簡単な方法で、ひいては経済的に製造できるという利点を有する。
【0079】
本発明にかかる架橋可能な材料は、良好な貯蔵安定性を有するという利点を有する。
【0080】
本発明にかかる材料は、慣用の装置上で簡単に加工することができるという利点を有する。
【0081】
本発明にかかる成形体は、放散値が減少するという利点を有する。
【0082】
本発明にかかる成形体は、臭い特性が減るという利点を有する。
【0083】
本発明にかかる方法は、高められた加工速度が可能であるという利点を有する。以下に記載される実施例では、部と百分率の全ての表記は、特段の記載がない限りは、質量に対するものである。特に記載がない限り、以下の実施例は、周囲大気の圧力で、すなわち約1000hPaで、かつ室温で、従って約20℃で、若しくは反応物を室温で追加の加熱又は冷却をせずに合する場合に生ずる温度で実施される。
【0084】
以下、全ての粘度表示は25℃の温度に対するものである。
【実施例】
【0085】
実施例1
付加架橋可能な基礎材料(以下、「基礎材料」と称する)の製造
20000mPa・sの粘度を有する120gのα,ω−ビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンと、1000mPa・sの粘度を有する156gのα,ω−ビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン及び300g/m2のBET表面積を有する55gの高分散ケイ酸とを混合する。
【0086】
この混合物中に、0.06gの白金ジビニルテトラメチルシロキサン錯体をジメチルポリシロキサン中で溶解させてこの材料中の白金含有量を18ppmにして、トリメチル末端基を有し、かつ45mPa・sの粘度を有する10gのメチルハイドロジェンポリシロキサン及び1.5gのエチニルシクロヘキサノールを混和する。
【0087】
このように得られた基礎材料100gに、3gのクエン酸の33%エタノール溶液を添加し、そして混合する。
【0088】
実施例2
このように得られた実施例1からの基礎材料100gに、4gのクエン酸の20%ブタノール溶液を添加し、そして混合する。
【0089】
実施例3
実施例1からの基礎材料100gに、2gのウンデセン酸を添加し、そして混合する。
【0090】
実施例4
実施例1からの基礎材料100gに、3gのオレイン酸を添加し、そして混合する。
【0091】
実施例5
180℃の加硫温度での必要な加硫時間の測定
実施例1〜4による混合物並びに比較用としての基礎材料(比較例1(V1))を、それぞれドクターブレードを用いてポリアミド6.6製の織物上に塗布し、そして180℃で加硫する。
【0092】
このように被覆された織物を抽出試験に付し、そして以下に記載するように、抽出可能分が<10%になるまでに必要な滞留時間を測定する。
【0093】
加硫の状態についての指標として、架橋されたシリコーンゴムの抽出可能分を測定した。このために、被覆された織物を24時間にわたってメチルイソブチルケトン中に貯蔵し、そしてこの溶剤中のシリコーン含有率を測定する。
【0094】
10%の抽出可能分に達するのに必要な加硫時間を測定した。この結果は第1表中に見出される。
【0095】
第1表
【表1】

【0096】
実施例6
被覆後の臭い発生の測定
実施例1〜4による混合物並びに比較用としての基礎材料(比較例1)を、それぞれドクターブレードを用いて未整理状態の洗浄されていないナイロン織物上に塗布し、そして60秒にわたって180℃で加硫する。
【0097】
このように被覆された織物は、以下に記載する臭い試験において、臭いが顕著に減少したことを示す。
【0098】
この被覆された織物100cm2をそれぞれガラス器具中に入れ、そして閉じて24時間にわたって貯蔵した。次いでこれらのガラス器具を開け、そして臭いを評価した。この結果は第2表に見出される。
【0099】
第2表
【表2】

【0100】
実施例7
被覆の下地への付着性の測定
実施例1〜4による混合物並びに比較用としての基礎材料(比較例1)を、それぞれドクターブレードを用いて洗浄されたナイロン織物上に塗布し、そして30秒にわたって180℃で加硫する。
【0101】
このように被覆された織物は、ISO5981による試験において顕著に良好な値を示す。
【0102】
被覆された織物型を、それぞれISO5981により、被覆された織物型をスクラブ試験器中で、金属フリクションシュー(Metallreibschuh)及び1kg質量カバー層のもとで斜めに逆方向に動かすことにより試験する。この結果は第3表に見出される。
【0103】
第3表
【表3】

【0104】
実施例8
実施例1〜4による混合物並びに比較用としての基礎材料(比較例1)を、それぞれドクターブレードを用いて洗浄されたナイロン織物上に塗布し、そして30秒にわたって種々の温度で加硫する。
【0105】
このように被覆された織物は、短い加硫時間を必要とする。
【0106】
架橋の質の指標として、抽出可能分を再び測定した。被覆された織物型上で、実施例5において記載された抽出試験をそれぞれ実施した。
【0107】
第4表は、30秒後に10%未満の抽出値を達するのに必要な温度を示している。
【0108】
第4表
【表4】

【0109】
実施例9
被覆された織物の放散(揮発分)の測定
実施例1〜4による混合物並びに比較用としての基礎材料(比較例1)を、それぞれドクターブレードを用いてナイロン織物上に塗布し、そして1分にわたって180℃で加硫する。
【0110】
このように被覆された織物は、顕著に減少した放散値を示す。
【0111】
この織物型の放散は、VDA277/278に従って、熱脱離法により揮発分を(全炭素として)GC−MS結合装置を用いて測定することにより測定した。この結果は第5表に見出される。
【0112】
第5表
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1013hPaの圧力で100℃より高い沸点を有する有機酸を含有する、Si結合水素を脂肪族多重結合に付加することにより架橋可能なシリコーン材料。
【請求項2】
(A)脂肪族多重結合を有するSiC結合基を有する有機ケイ素化合物、
(B)Si結合水素原子を有する有機ケイ素化合物、又は(A)及び(B)の代わりに、
(C)脂肪族多重結合を有するSiC結合基及びSi結合水素原子を有する有機ケイ素化合物、
(D)Si結合水素の脂肪族多重結合への付加を促進する触媒、及び
(E)1013hPaの圧力で100℃より高い沸点を有する有機酸
を含有する材料であることを特徴とする、請求項1に記載の架橋可能なシリコーン材料。
【請求項3】
有機ケイ素化合物(A)が、式
a1bSiO(4-a-b)/2 (I)
[式中、
Rは、同じか又は異なっていてよく、かつ脂肪族炭素−炭素−多重結合を有さない基を意味し、
1は、同じか又は異なっていてよく、かつ脂肪族炭素−炭素−多重結合を有する置換又は非置換の1価のSiC結合炭化水素基を意味し、
aは、0、1、2又は3であり、かつ
bは、0、1又は2であるが、
但し、a+bの合計は3以下であり、かつ1分子当たり少なくとも2個の基R1が存在する]の単位からなるシロキサンであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の架橋可能なシリコーン材料。
【請求項4】
有機酸(E)が2〜20個の炭素原子を有することを特徴とする、請求項1から3までの何れか1項に記載の架橋可能なシリコーン材料。
【請求項5】
(A)式(I)の単位からなる有機ケイ素化合物、
(B)Si結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、
(D)Si結合水素の脂肪族多重結合への付加を促進する触媒、
(E)1013hPaの圧力で100℃より高い沸点を有する有機酸、
場合により
(F)阻害剤、
場合により
(G)充填剤、
場合により
(H)定着剤、及び
場合により
(I)成分(A)〜(H)とは異なる、溶剤、顔料、着色剤、可塑剤、有機ポリマー、熱安定剤及び香料から選択された他の物質
からなる材料であることを特徴とする、請求項1から4までの何れか1項に記載の架橋可能なシリコーン材料。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか1項に記載の架橋可能なシリコーン材料の架橋により製造された成形体。
【請求項7】
テキスタイル平面状構造物を被覆する方法において、請求項1から5までの何れか1項に記載の架橋可能なシリコーン材料をテキスタイル平面状構造物上に施与し、そして架橋させることを特徴とする方法。

【公開番号】特開2008−13768(P2008−13768A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177639(P2007−177639)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】