説明

硬化性樹脂組成物

【課題】エポキシ樹脂を含む第1液の貯蔵安定性に優れ、組成物の硬化速度が速い硬化性樹脂組成物の提供。
【解決手段】分子内に1つのチイラン基を有しエポキシ基を有さないチイラン化合物と、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とを含む第1液と、活性水素を2個以上有するポリアミン系硬化剤と、第三級アミンとを含む第2液とを有する硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
低温硬化性に優れる組成物として、チイラン基を有する化合物を含有する硬化性樹脂組成物が提案されている。
このような硬化性樹脂組成物としては、例えば、特許文献1に記載されている組成物が挙げられる。
特許文献1には、「少なくとも下記化合物(A)、(B)、および(C)を含む低温硬化性樹脂組成物;
(A)エポキシ化合物が有するオキシラン環の全部または一部をチイラン環に置換してなるチイラン化合物
(B)アミン系硬化剤
(C)三級アミン。」が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−53668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者は、特許文献1において、チイラン化合物とエポキシ樹脂とを含む第1液の貯蔵安定性、および組成物の硬化速度について改善の余地があることを見出した。
そこで、本発明は、エポキシ樹脂を含む第1液の貯蔵安定性に優れ、硬化速度が速い硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定の構造を有するチイラン化合物と、エポキシ樹脂とを含む第1液と、ポリアミン系硬化剤と、第三級アミンとを含む第2液とを有する硬化性樹脂組成物が、第1液の貯蔵安定性に優れ、組成物の硬化速度が速いことを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(6)を提供する。
(1)分子内に1つのチイラン基を有しエポキシ基を有さないチイラン化合物と、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とを含む第1液と、
活性水素を2個以上有するポリアミン系硬化剤と、第三級アミンとを含む第2液とを有する硬化性樹脂組成物。
(2)前記チイラン化合物が、ベンゼン環を有する上記(1)に記載の硬化性樹脂組成物。
(3)前記チイラン化合物が、下記式(1)で表される上記(1)に記載の硬化性樹脂組成物。なお、式(1)中、Rは炭化水素基を表し、nは0〜5の整数である。
【0007】
【化2】

【0008】
(4)前記ポリアミン系硬化剤が、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン並びに脂肪族および/または脂環族ポリアミンのアミンアダクトからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
(5)前記エポキシ樹脂100質量部に対して、前記チイラン化合物が1〜50質量部であり、前記ポリアミン系硬化剤が1〜100質量部であり、前記第三級アミンが1〜20質量部である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
(6)前記第1液と前記第2液との混合物が、液状である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含む第1液の貯蔵安定性に優れ、組成物の硬化速度が速い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、
分子内に1つのチイラン基を有しエポキシ基を有さないチイラン化合物と、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とを含む第1液と、
活性水素を2個以上有するポリアミン系硬化剤と、第三級アミンとを含む第2液とを有する組成物である。
以下、これを「本発明の組成物」という。
【0011】
本発明の組成物において、第1液は、分子内に1つのチイラン基を有しエポキシ基を有さないチイラン化合物と、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とを含む。
【0012】
まず、エポキシ樹脂について以下に説明する。
第1液に含まれるエポキシ樹脂は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するものであれば特に制限されない。
例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型等のビスフェニル基を有するエポキシ化合物や、ポリアルキレングリコール型、アルキレングリコール型のエポキシ化合物や、ナフタレン環を有するエポキシ化合物や、フルオレン基を有するエポキシ化合物等の二官能型のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;
フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の多官能型のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;
ダイマー酸等の合成脂肪酸のグリシジルエステル系エポキシ樹脂;
下記式(2)で表されるN,N,N′,N′−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン(TGDDS)、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン(TGMXDA)、下記式(3)で表されるトリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N−ジグリシジルアニリン、テトラグリシジル1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(TG1,3−BAC)、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)等のグリシジルアミン系エポキシ樹脂;
【0013】
【化3】

【0014】
下記式(4)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環を有するエポキシ化合物、具体的には、例えば、ジシクロペンタジエンとメタクレゾール等のクレゾール類またはフェノール類を重合させた後、エピクロルヒドリンを反応させる公知の製造方法によって得ることができるエポキシ化合物;
【0015】
【化4】

【0016】
(式中、mは、0〜15の整数を示す。)
【0017】
脂環型エポキシ樹脂;東レチオコール社製のフレップ10に代表されるエポキシ樹脂主鎖に硫黄原子を有するエポキシ樹脂;ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂;ポリブタジエン、液状ポリアクリロニトリル−ブタジエンゴムまたはアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)を含有するゴム変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
チイラン化合物について以下に説明する。
チイラン化合物は、分子内に1つのチイラン基を有しエポキシ基を有さない化合物であれば特に制限されない。
チイラン基は、下記式(5)で表される基である。なお、本発明において、式(5)中の水素原子を炭化水素基に置換することができ、炭化水素基は特に限定されない。
【0019】
【化5】

【0020】
チイラン化合物は、第1液の貯蔵安定性により優れるという観点から、芳香環を有するのが好ましい。芳香環は特に制限されず、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環が挙げられる。ベンゼン環が好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0021】
チイラン化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0022】
【化6】

【0023】
式中、Rは炭化水素基であり、nは0〜5の整数である。
炭化水素基は、特に制限されず、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基が挙げられる。
nは、第1液の貯蔵安定性により優れるという観点から、1〜3の整数であるのが好ましい。
【0024】
チイラン化合物としては、例えば、下記の一群の化合物が挙げられる。
なお、式(6)で表される化合物において、メチル基はベンゼン環のm位および/またはp位で結合するのが好ましい態様として挙げられる。
【0025】
【化7】

【0026】
チイラン化合物の含有量は、第1液の貯蔵安定性により優れ、組成物の硬化速度がより速くなるという観点から、エポキシ樹脂100質量部に対して、1〜50質量部であるのが好ましく、10〜50質量部であるのがより好ましい。
【0027】
本発明の組成物において、第2液は、活性水素を2個以上有するポリアミン系硬化剤と、第三級アミンとを含む。
ポリアミン系硬化剤について以下に説明する。
第2液に含まれるポリアミン系硬化剤は、活性水素を2個以上有し、アミノ基および/またはイミノ基(以下、これらを「アミノ基等」という。)を2個以上有するものである。
【0028】
ポリアミン系硬化剤としては、アミノ基および/またはイミノ基を含有するものが挙げられる。
アミノ基を含有するものとしては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、メタキシリレンジアミン等の脂肪族ポリアミン(なお、脂肪族ポリアミンは、メタキシリレンジアミンのような芳香環に脂肪族炭化水素基が結合している脂肪族ポリアミンを含む。);
メンセンジアミン(MDA)、イソフォロンジアミン(IPDA)、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、N−アミノエチルピペラジン(N−AEP)、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等の脂環族ポリアミン;
【0029】
メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジエチルジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン;
3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン等の複素環式ポリアミンが挙げられる。
【0030】
イミノ基を含有するものとしては、例えば、ピペリジン等の脂環式アミン系硬化剤、N−メチルピペラジン、モルホリンが挙げられる。
【0031】
また、ポリアミン系硬化剤として、ポリアミンの変性物を使用することができる。
ポリアミンの変性物は特に制限されない。例えば、アミンアダクト;ポリアミン−エチレンオキシドアダクト、ポリアミン−プロピレンオキシドアダクト、マンニッヒ型硬化剤、シアノエチル化ポリアミン等の変性ポリアミン;ダイマー酸とジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミンとを反応させてなる液体ポリアミドアミンが挙げられる。
【0032】
アミンアダクトは、ポリアミンにエポキシ樹脂を付加させることによって得られる化合物であれば特に制限されない。例えば、脂肪族および/または脂環族ポリアミンのアミンアダクトが挙げられ、具体的には例えばメタキシリレンジアミンとフェニルグリシジルエーテルのアミンアダクトが挙げられる。
【0033】
なかでも、組成物の硬化速度がより速くなるという観点から、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン並びに脂肪族および/または脂環族ポリアミンのアミンアダクトからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましく、メタキシリレンジアミンとフェニルグリシジルエーテルのアミンアダクトであるのがより好ましい。
【0034】
また、ポリアミン系硬化剤1分子が有する活性水素の数は、2個以上である。組成物の硬化速度により優れるという観点から、活性水素の数は、2〜8個であるのが好ましく、4〜8個であるのがより好ましい。
ポリアミン系硬化剤1分子が有するアミノ基および/またはイミノ基の数は、2個以上である。組成物の硬化速度により優れるという観点から、アミノ基等の数は、2〜10個であるのが好ましく、2〜6個であるのがより好ましい。
ポリアミン系硬化剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
ポリアミン系硬化剤の含有量は、組成物の硬化速度がより速くなるという観点から、エポキシ樹脂100質量部に対して、1〜100質量部であるのが好ましく、30〜80質量部であるのがより好ましい。
【0036】
第三級アミンについて以下に説明する。
第2液に含まれる第三級アミンは、特に制限されない。
チイラン化合物を含有する組成物に第三級アミンを加えることによって、常温では高強度の硬化物が得られ、低温でも架橋反応を起こし、接着性に優れる組成物とすることができる。
【0037】
第三級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、アルキルtertモノアミン、ジアルキルアミノエタノール、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチルジエチレントリアミン、N−メチル−N,N−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)アミン等の鎖状脂肪族第三級アミン;
N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンのような脂環族第三級アミン;
トリエチレンジアミン(TEDA、1,4−ジアザジシクロ[2.2.2]オクタン)、N,N′−ジメチルピペラジンのような環状骨格の中に窒素原子を含有する第三級アミン;
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、ピリジン、ピコリン等の複素環第三級アミン;
ベンジルジメチルアミン等の芳香族第三級アミン;
2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP)等のフェノール性ヒドロキシ基を少なくともひとつ含む芳香族第三級アミン等が挙げられる。
【0038】
第三級アミンは、鎖状脂肪族第三級アミン、脂環族第三級アミン、環状骨格の中に窒素原子を含有する第三級アミン、複素環第三級アミンおよびフェノール性ヒドロキシ基を含む芳香族第三級アミンからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
特に、組成物の硬化速度がより速くなるという観点から、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)およびトリエチレンジアミン(TEDA)からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
第三級アミンは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
第三級アミンの含有量は、組成物の硬化速度がより速くなるという観点から、エポキシ樹脂100質量部に対して、1〜20質量部であるのが好ましく、1〜10質量部であるのがより好ましい。
【0040】
本発明の組成物において、ポリアミン系硬化剤の含有量は、チイラン化合物のチイラン基に対する、ポリアミン系硬化剤のアミノ基等の比(アミノ基等/チイラン基)が、当量比で、0.1〜3.0となるのが好ましく、0.2〜2.0であるのがより好ましい。このような範囲である場合、第1液の貯蔵安定性により優れ、組成物の硬化速度がより速くなる。なお、ポリアミン系硬化剤以外の硬化剤をさらに用いる場合は、それらの硬化剤の硬化反応に関与する官能基をアミノ基等に加えるものとする。
【0041】
本発明の組成物において、ポリアミン系硬化剤とチイラン化合物との含有量は、ポリアミン系硬化剤のアミノ基等とチイラン化合物のチイラン基との合計に対する、エポキシ樹脂のエポキシ基の比(エポキシ基/アミノ基等+チイラン基)が、当量比で、0.1〜5となるのが好ましく、0.1〜3であるのがより好ましい。このような範囲である場合、第1液の貯蔵安定性がより優れ、組成物の硬化速度がより速くなる。なお、ポリアミン系硬化剤以外の硬化剤をさらに用いる場合は、それらの硬化剤の硬化反応に関与する官能基をアミノ基等に加えるものとする。
【0042】
本発明の組成物は、エポキシ樹脂、チイラン化合物、ポリアミン系硬化剤および第三級アミン以外に、必要に応じて、さらに添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、ポリアミン系硬化剤以外の硬化剤、充填剤、反応性希釈剤、可塑剤、チクソトロピー性付与剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、分散剤、溶剤が挙げられる。
添加剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
ポリアミン系硬化剤以外の硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤として用いることができるものであれば特に制限されず、例えば、酸または酸無水物系硬化剤、塩基性活性水素化合物、イミダゾール類、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)(TMTP)等のポリチオール系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩等の紫外線硬化剤が挙げられる。
【0044】
充填剤としては、各種形状のものを使用することができ、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;けいそう土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグレシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラックなどの有機または無機充填剤、これらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル処理物等が挙げられる。
【0045】
反応性希釈剤としては、例えば、1官能性エポキシ化合物、2官能性エポキシ化合物が挙げられる。
1官能性エポキシ化合物としては、例えば、n−ブチルグリシジルエーテル(BGE)、アリルグリシジルエーテル(AGE)、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド(SO)、フェニルグリシジルエーテル(PGE)、クレジルグリシジルエーテル(CGE)、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート(GMA)、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド、α−ピネンオキサイド、3級カルボン酸グリシジルエステル(カージュラE)が挙げられる。
【0046】
反応性希釈剤としての2官能性エポキシ化合物は、例えば、ジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリンが挙げられる。
【0047】
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート;アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル;ベンジルアルコール、トルエン樹脂、ナフタレン樹脂、石油樹脂等が挙げられる。
【0048】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系等の化合物、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0049】
顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料などが挙げられる。
【0050】
チクソトロピー性付与剤としては、例えば、エアロジル(日本エアロジル(株)製)、ディスパロン(楠本化成(株)製)、炭酸カルシウム、テフロン(登録商標)等が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩、ポリグリコールやエチレンオキサイド誘導体などの親水性化合物が挙げられる。
【0051】
接着性付与剤としては、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
【0052】
難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
【0053】
本発明の組成物は、その製造について特に制限されない。例えば、第1液、第2液を、それぞれ別々に、減圧下または窒素雰囲気下において、混合ミキサー等の撹拌装置を用いて充分混練し、均一に分散させる方法が挙げられる。
このようにして得られた第1液と第2液とを、それぞれ別々の容器に入れて密閉し保存することができる。
そして、使用時に第1液と第2液とを混合して、硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0054】
第1液は、調製直後の25℃における粘度が、取扱いのしやすさ(特に冬場での混合のしやすさ)という観点から、10,000mPa・s以下が好ましく、100〜7,000mPa・sであるのがより好ましい。
第1液は、調製から56日後の25℃における粘度が、貯蔵安定性の観点から、20,000mPa・s以下が好ましく、100〜15,000mPa・sであるのがより好ましい。
【0055】
第2液は、調製直後の25℃における粘度が、取扱いのしやすさ(特に冬場での混合のしやすさ)という観点から、10,000mPa・s以下が好ましく、100〜7,000mPa・sであるのがより好ましい。
第2液は、調製から56日後の25℃における粘度が、取扱いのしやすさ(特に冬場での混合のしやすさ)という観点から、20,000mPa・s以下が好ましく、100〜15,000mPa・sであるのがより好ましい。
【0056】
第1液と第2液とを混合する方法は、特に制限されない。
第1液と第2液とを混合することによって得られる混合物は、取扱いのしやすさ(特に冬場での混合のしやすさ)という観点から、液状であるのが好ましい。
【0057】
第1液と第2液との混合物の混合直後の25℃における粘度は、取扱いのしやすさ(特に冬場での混合のしやすさ)という観点から、20,000mPa・s以下が好ましく、100〜15,000mPa・sであるのがより好ましい。
【0058】
本発明の組成物は、室温(通常10〜30℃)で硬化することができる。
また、本発明の組成物は、低温での硬化性に優れ、室温以下の温度、例えば、5℃以下で硬化することができ、0℃以下でも硬化することができる。
【0059】
本発明の組成物は、例えば、接着剤用、塗料用、土木建築用、電気用、輸送機用、医療用、包装用、繊維用、スポーツ・レジャー用として使用することができる。
本発明の組成物を適用することができる被着体としては、例えば、金属、ガラス、プラスチック、モルタル、コンクリート、ゴム、木材、皮、布、紙が挙げられる。
【0060】
本発明の組成物は、室温における硬化性に優れる。また、低温[例えば5℃以下、特に氷点下(0℃以下)]において、優れた硬化性を有する。
【0061】
本願発明者は、チイラン基を2個以上有するチイラン化合物またはエポキシ基およびチイラン基を有するチイラン化合物を反応性希釈剤として含有する組成物は、その貯蔵安定性について改善の余地があることを見出した。これは、貯蔵中に、このようなチイラン化合物同士が付加して3次元高分子を生成したり、チイラン化合物とエポキシ樹脂とが反応して鎖状高分子を生成することによって、組成物の粘度が大幅に上昇してしまうためと本願発明者は推察した。
これに対して、本発明の組成物は、第1液が反応性希釈剤として、分子内に1つのチイラン基を有しエポキシ基を有さないチイラン化合物を含有する。これによって、本発明の組成物は、第1液の貯蔵安定性および組成物の硬化速度に優れるものとなる。
すなわち、本発明の組成物において、第1液中のチイラン化合物は、エポキシ樹脂と反応しにくく、たとえ反応したとしてもチイラン基が1つしかないので、それ以上硬化が進むことはない。
したがって、本発明の組成物において第1液の粘度は低く保たれ、第1液は貯蔵安定性に優れる。
【0062】
次に、本発明の組成物は硬化速度が、反応性希釈剤としてエポキシ基を有する化合物を含有する組成物よりも速いことについて、以下に説明する。ここでは、本発明の組成物において、ポリアミン系硬化剤がm−キシリレンジアミンであり、チイラン化合物がp−クレジルチオグリシジルエーテル(オキシラン環がチイラン環に変換されたm,p−クレジルグリシジルエーテル)である場合を例として用いる。
まず、本発明の組成物の第1液と第2液とを混合すると、第1液中の下記式(7)で表されるp−クレジルチオグリシジルエーテルと第2液中のm−キシリレンジアミンが反応して下記式(8)で表されるチオールとなる。
チイラン化合物のチイラン基は、エポキシ基よりアミンとの反応が速い。チイラン基はアミンとの反応によって開環しメルカプト基となる。
【0063】
【化8】

【0064】
次に、式(8)で表されるチオールのメルカプト基は第三級アミンによって活性化され、エポキシ樹脂と反応し、組成物が硬化する。
メルカプト基は、エポキシ樹脂から生成するヒドロキシ基よりも反応性が高い。
したがって、チイラン化合物のチイラン基はエポキシ基よりアミンとの反応が速く、チイラン化合物とポリアミン系硬化剤との反応によって生成したチオールがヒドロキシ基よりも反応性が高いので、本発明の組成物は、反応性希釈剤としてエポキシ基を有する化合物を含有する組成物よりも硬化速度が速いのである。
このように、本発明の組成物においては、ポリアミン系硬化剤とチイラン化合物との反応生成物が真の硬化剤として作用し、組成物をすばやく硬化させていると本願発明者は推察する。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
1.硬化剤1の調製
m−キシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)136gとフェニルグリシジルエーテル(坂本薬品社製)150gとを80℃で3時間撹拌して反応させ、m−キシリレンジアミンとフェニルグリシジルエーテルとのアミノアダクトを280g得た。得られたアミノアダクトを硬化剤1とする。
【0066】
2.チイラン化合物1の調製
チオシアン酸カリウム850g(8.75モル)を溶かしたエタノール485ミリリットルと水728ミリリットルの混合溶液に、m,p−クレジルグリシジルエーテル(東都化成株式会社製、PG202)1312g(6.78モル)を加え、室温で7日間激しく撹拌した後、上層を分離後、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧乾燥することによって目的とする、オキシラン環からチイラン環に変換されたm,p−クレジルグリシジルエーテルを得た。1H−NMR分析によってチイラン化率は100%であることを確認した。
チイラン環に変換されたm,p−クレジルグリシジルエーテルをチイラン化合物1とする。
チイラン化合物1は、下記式(6)で表される。なお、式中、メチル基はm位またはp位に結合する。
【0067】
【化9】

【0068】
3.評価
下記のように調製した組成物を用いて、第1液の粘度変化率、塗膜硬化時間、硬化物の曲げ強度を下記のとおり評価した。結果を第1表に示す。
【0069】
(1)第1液の粘度変化率
第1表に示す第1液の各成分を第1表に示す量で第1液を調製し、初期粘度と、混合直後から40℃の条件下で56日経過させた後の粘度とをB型粘度計を用いて測定した。初期粘度および56日後の粘度の測定結果をもとに、粘度変化率(56日後粘度/初期粘度)を求めた。
【0070】
(2)塗膜硬化時間
得られた組成物を長さ30cm×巾2.5cmの寸法のガラス板に膜厚0.1mmとなるように塗布し、室温(25℃)または5℃の環境下で硬化させ、指触でタックがなくなるまでの時間を測定した。
【0071】
(3)硬化物の曲げ強度
得られた組成物を、23℃の条件下で7日間硬化させて、得られた硬化物を用いてJIS K6911:1995に準じて曲げ強度を測定した。
【0072】
【表1】

【0073】
第1表に示されている各成分の詳細は、以下のとおりである。
・エポキシ樹脂:ビスF型エポキシ樹脂、エピコート807、ジャパンエポキシレジン社製
・チイラン化合物1:上記のとおり調製したもの
【0074】
・エポキシ化合物:m,p−クレジルグリシジルエーテル(坂本薬品工業社製、m.pCGE)
・チイラン化合物2:すべてのエポキシ基がチイラン基で置換されたビスF型エポキシ樹脂。特開2002−53668号公報に記載されている方法にしたがって調製したもの。
・チイラン化合物3:50%のエポキシ基がチイラン基で置換されたビスF型エポキシ樹脂。特開2002−53668号公報に記載されている方法にしたがって調製したもの。
・硬化剤1:上記のとおり調製したもの
・第三級アミン:2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、商品名HD−ACC43、大都産業社製
・チオール化合物1:上記のとおり調製したもの
【0075】
第1表に示す結果から明らかなように、比較例1(チイラン基を有さないエポキシ化合物を含有する。)では、組成物の硬化速度が遅かった。これは、比較例1の組成物ではエポキシ化合物がチイラン基を有さないので反応性の高いメルカプト基を生成することができないためと考えられる。
また、比較例2(チイラン化合物2を含有する。チイラン化合物2はチイラン基を2つ有する。)では、第1液の貯蔵安定性が劣った。これは、チイラン化合物2同士が付加して3次元高分子を生成したり、チイラン化合物2とエポキシ樹脂とが反応して鎖状高分子を生成するためと考えられる。
比較例3(チイラン化合物3を含有する。チイラン化合物3はエポキシ基とチイラン基とを有する化合物である。)では、第1液の貯蔵安定性が劣った。これは、チイラン化合物3同士の付加や、チイラン化合物3とエポキシ樹脂との付加によって鎖状高分子を生成するためと考えられる。
これらに対して、本発明の硬化性樹脂組成物は、第1液の貯蔵安定性に優れ、組成物の硬化速度が速く、得られる硬化物の機械的特性が高かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に1つのチイラン基を有しエポキシ基を有さないチイラン化合物と、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とを含む第1液と、
活性水素を2個以上有するポリアミン系硬化剤と、第三級アミンとを含む第2液とを有する硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記チイラン化合物が、ベンゼン環を有する請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記チイラン化合物が、下記式(1)で表される請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【化1】


(式中、Rは炭化水素基を表し、nは0〜5の整数である。)
【請求項4】
前記ポリアミン系硬化剤が、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン並びに脂肪族および/または脂環族ポリアミンのアミンアダクトからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂100質量部に対して、前記チイラン化合物が1〜50質量部であり、前記ポリアミン系硬化剤が1〜100質量部であり、前記第三級アミンが1〜20質量部である請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記第1液と前記第2液との混合物が、液状である請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−326906(P2007−326906A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157316(P2006−157316)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(000207090)大都産業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】