説明

硬化性組成物、カラーフィルタおよびその製造方法

【課題】本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好な輝度・色相を示し、耐熱性および耐薬品性に優れた色画素を形成することができ、熱硬化プロセスに対応可能な、青色またはマゼンタ用の硬化性組成物を提供することにある。
【解決手段】ジピロメテン系染料と、重合性モノマーと、有機溶剤と、所定の官能基を少なくとも2つ有し、25℃、1気圧下において固体である水素供与性化合物とを含有する硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、カラーフィルタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、特に大画面液晶テレビの発達に伴い、液晶ディスプレイ(LCD)、とりわけカラー液晶ディスプレイの需要が増加する傾向にある。一般的に、カラー液晶ディスプレイにおいては、赤(R)、緑(G)、および青(B)の3原色の着色パターンを備えるカラーフィルタが使用されている。このカラーフィルタを備える液晶ディスプレイにおいては、R、G、およびBのそれぞれの画素に対応する電極をON、OFFさせることで液晶がシャッタとして作動し、R、G、およびBのそれぞれの画素を光が通過してカラー表示が行われる。
【0003】
カラーフィルタに関しては様々な研究がなされており、例えば、特許文献1では、ジピロメテン系金属錯体化合物を含む着色硬化性組成物を用いて、カラーレジスト法によりカラーフィルタを製造することが開示されている。
特許文献1に記載されるような青色のインクに関しては、他の色のインクと比べて実用上求められる要求が高く、得られる色画素が良好な色相、輝度、ならびに、優れた耐熱性および耐薬品性などを示すことが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−292970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、カラーフィルタの耐熱性に関しては、より高温条件で実施される製造プロセスへの応用などの点から、その要求レベルが非常に高くなっている。
一方、特許文献1で具体的に開示されている硬化性組成物を使用した場合、得られる色画素の色相は、昨今耐熱性が要求される高温レベルにおいては劣化しやすく、実用上必ずしも満足いくものではないことを本発明者らは見出した。
また、近年、ディスプレイの色合いなど光学特性に関する要求レベルの高まりも著しく、これに対応するためにはカラーフィルタ中の色画素の輝度・色相のさらなる改良が必要とされていた。一方、特許文献1で具体的に開示されている硬化性組成物を用いて熱硬化処理による硬化検討を行ったところ、色画素の吸収スペクトルがブロード化してしまい、所望の色相や輝度を示す色画素を得ることができなった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好な輝度・色相を示し、耐熱性および耐薬品性に優れた色画素を形成することができ、熱硬化プロセスに対応可能な、青色またはマゼンタ用の硬化性組成物を提供することにある。
さらに、このような硬化性組成物により得られる光学特性、耐熱性、耐薬品性などの特性に優れたカラーフィルタ、およびこのような特性を持つカラーフィルタの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定の官能基を有する水素供与性化合物を使用することにより、輝度、色相、耐熱性、耐薬品性などに優れた色画素を製造することができることを見出した。
つまり、本発明者らは、上記課題が下記の<1>〜<11>の構成により解決されることを見出した。
【0008】
<1> 後述する一般式(1−1)で表される染料、一般式(1−2)で表される染料、および一般式(1−3)で表される染料からなる群から選ばれる少なくとも1種の染料と、重合性モノマーと、有機溶剤と、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミド基、スルホン酸基、および、ホスホン酸基からなる群から選ばれる官能基を少なくとも2つ有し、25℃、1気圧下において固体である水素供与性化合物(なお、2つカルボキシル基が結合して、酸無水物基を形成していてもよい。また、カルボキシル基とアミド基とが結合して、イミド基を形成してもよい。)とを含有し、
前記水素供与性化合物の含有量が0.1〜12質量%である硬化性組成物。
<2> 前記水素供与性化合物の質量(W1)と前記染料の質量(W2)との質量比(W2/W1)が、0.05〜10である<1>に記載の硬化性組成物。
【0009】
<3> 前記水素供与性化合物の分子量と、前記官能基数との比(分子量/官能基数)が、36以上である<1>または<2>に記載の硬化性組成物。
<4> 25℃における粘度が30mPa・s以下である、<1>〜<3>のいずれかに記載の硬化性組成物。
<5> 25℃における表面張力が20〜40mN/mである、<1>〜<4>のいずれかに記載の硬化性組成物。
<6> さらに、後述する一般式(3)で表される染料を含有する、<1>〜<5>のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0010】
<7> 基板上に形成された隔壁により区画された凹部に、<1>〜<6>のいずれかに記載の硬化性組成物をインクジェット法により付与する描画工程と、
凹部に吐出された前記硬化性組成物を加熱する硬化工程とを備えるカラーフィルタの製造方法。
<8> 基板上に形成された隔壁により区画された凹部に、<1>〜<6>のいずれかに記載の硬化性組成物を塗布し、マスクを介してパターン露光し、現像してパターン像を形成する工程を有するカラーフィルタの製造方法。
<9> <7>または<8>に記載のカラーフィルタの製造方法により製造されるカラーフィルタ。
<10> <9>に記載のカラーフィルタを備える液晶ディスプレイ。
<11> <9>に記載のカラーフィルタを備える画像表示デバイス。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好な輝度・色相を示し、耐熱性および耐薬品性に優れた色画素を形成することができ、熱硬化プロセスに対応可能な、青色またはマゼンタ用の硬化性組成物を提供することができる。
さらに、このような硬化性組成物により得られる光学特性、耐熱性、耐薬品性などの特性に優れたカラーフィルタ、およびこのような特性を持つカラーフィルタの製造方法を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のカラーフィルタの製造方法の一実施形態における製造工程を示すフローチャートである。
【図2】(a)〜(f)は、それぞれ本発明のカラーフィルタの製造方法における基板からカラーフィルタに至る製造工程順に示す基板およびカラーフィルタの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る硬化性組成物、この硬化性組成物を用いて得られるカラーフィルタおよびその製造方法について詳細に説明する。
【0014】
<硬化性組成物>
まず、本発明の硬化性組成物について詳細に説明する。
本発明の硬化性組成物は、後述する一般式(1−1)で表される染料、一般式(1−2)で表される染料、および一般式(1−3)で表される染料からなる群から選ばれる少なくとも1種の染料と、重合性モノマーと、有機溶剤と、所定の官能基を少なくとも2つ有し、25℃、1気圧下において固体である水素供与性化合物とを含有する。
【0015】
本発明者らは、所望の色相や輝度を示す色画素が得られない原因が、色画素中での染料同士の凝集に関連していることを見出し、その解決方法として所定の官能基を有する水素供与性化合物を使用することに想到した。
つまり、本発明においては、所定の水素供与性の官能基を有する水素供与性化合物が一般式(1−1)〜一般式(1−3)で表されるジピロメテン系染料と相互作用して、染料同士の凝集を抑える役割を果たしている。その結果、硬化性組成物を硬化させて得られる色画素中において、染料同士の凝集が抑えられる。さらには、所望の色相・輝度などの光学特性を示し、さらには耐熱性、耐薬品性も向上した色画素を得ることができる。
以下に、硬化性組成物の各構成成分(染料、重合性モノマー、有機溶剤、水素供与性化合物など)について詳述する。
【0016】
<一般式(1−1)〜一般式(1−3)で表される染料>
本発明の硬化性組成物は、一般式(1−1)で表される染料、一般式(1−2)で表される染料、および一般式(1−3)で表される染料からなる群から選択されるジピロメテン系染料を少なくとも1種を含有する。
該ジピロメテン系染料を使用することにより、優れた色相・輝度を有する青色またはマゼンタの色画素を形成することができる。なかでも、後述する一般式(1−2)で表される染料を使用すると、色相・輝度・耐熱性・耐薬品性により優れた色画素が形成される。なお、これらの染料は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
以下に各式で表される染料について詳述する。
【0017】
<一般式(1−1)で表される染料>
以下に、一般式(1−1)で表される染料の各置換基について詳述する。
【0018】
【化1】

【0019】
一般式(1−1)中、R11〜R16は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。R11〜R16における置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24の、直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル基で、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−ノルボルニル、1−アダマンチル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜18のアルケニル基で、例えば、ビニル、アリル、3−ブテン−1−イル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリール基で、例えば、フェニル、ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環基で、例えば、チオフェン環、ピリジン環、フラン環、ピリミジン環、ベンゾトリアゾール環、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、より具体的には、2−チエニル、4−ピリジル、2−フリル、2−ピリミジニル、1−ピリジル、2−ベンゾチアゾリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル、ベンゾトリアゾール−1−イル)、シリル基(好ましくは炭素数3〜38、より好ましくは炭素数3〜18のシリル基で、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリブチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ヘキシルジメチルシリル)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルコキシ基で、例えば、メトキシ、エトキシ、1−ブトキシ、2−ブトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、ドデシルオキシ、シクロアルキルオキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ))、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環オキシ基で、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ、ジフェニルメチルシリルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアシルオキシ基で、例えば、アセトキシ、ピバロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、ドデカノイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルオキシ基で、例えば、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基で、例えば、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、フェノキシカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のカルバモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N−ブチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ、N−エチル−N−フェニルカルバモイルオキシ)、スルファモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジエチルスルファモイルオキシ、N−プロピルスルファモイルオキシ)、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数1〜38、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニルオキシ基で、例えば、メチルスルホニルオキシ、ヘキサデシルスルホニルオキシ、シクロヘキシルスルホニルオキシ)、
【0020】
アリールスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニルオキシ基で、例えば、フェニルスルホニルオキシ)、アシル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアシル基で、例えば、ホルミル、アセチル、ピバロイル、ベンゾイル、テトラデカノイル、シクロヘキサノイル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、オクタデシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルシクロヘキシルオキシカルボニル)、
【0021】
アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のカルバモイル基で、例えば、カルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、N−エチル−N−オクチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−メチル−N−フェニルカルバモイル、N,N−ジシクロへキシルカルバモイル)、アミノ基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のアミノ基で、例えば、アミノ、メチルアミノ、N,N−ジブチルアミノ、テトラデシルアミノ、2−エチルへキシルアミノ、シクロヘキシルアミノ)、アニリノ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアニリノ基で、例えば、アニリノ、N−メチルアニリノ)、ヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環アミノ基で、例えば、4−ピリジルアミノ)、カルボンアミド基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のカルボンアミド基で、例えば、アセトアミド、ベンズアミド、テトラデカンアミド、ピバロイルアミド、シクロヘキサンアミド)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のウレイド基で、例えば、ウレイド、N,N−ジメチルウレイド、N−フェニルウレイド)、イミド基(好ましくは炭素数36以下、より好ましくは炭素数24以下のイミド基で、例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、オクタデシルオキシカルボニルアミノ、シクロヘキシルオキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルホンアミド基で、例えば、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、ヘキサデカンスルホンアミド、シクロヘキサンスルホンアミド)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルアミノ基で、例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ、N−エチル−N−ドデシルスルファモイルアミノ)、アゾ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアゾ基で、例えば、フェニルアゾ、3−ピラゾリルアゾ)、
【0022】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルチオ基で、例えば、メチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ、シクロヘキシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールチオ基で、例えば、フェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環チオ基で、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2−ピリジルチオ、1−フェニルテトラゾリルチオ)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルフィニル基で、例えば、ドデカンスルフィニル)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルフィニル基で、例えば、フェニルスルフィニル)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソプロピルスルホニル、2−エチルヘキシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、オクチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル、1−ナフチルスルホニル)、スルファモイル基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のスルファモイル基で、例えば、スルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル、N−エチル−N−フェニルスルファモイル、N−シクロヘキシルスルファモイル)、スルホ基、ホスホニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスホニル基で、例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、ホスフィノイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスフィノイルアミノ基で、例えば、ジエトキシホスフィノイルアミノ、ジオクチルオキシホスフィノイルアミノ)、またはこれらを組み合わせた基が挙げられる。
【0023】
一般式(1−1)中のR11とR12、R12とR13、R14とR15、および/またはR15とR16とは、各々独立に互いに結合して5員、6員、もしくは7員の飽和環、または不飽和環を形成していてもよい。形成される5員、6員、および7員の環が、更に置換可能な基である場合には、上記R11〜R16で説明した置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0024】
一般式(1−1)中のR17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、R17のハロゲン原子、アルキル基、アリール基、およびヘテロ環基は、上記R11〜R16で説明したハロゲン原子、アルキル基、アリール基、およびヘテロ環基とそれぞれ同義である。R17のアルキル基、アリール基、およびヘテロ環基が、更に置換可能な基である場合には、上記R11〜R16で説明した置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
一般式(1−1)において好ましくは、R11およびR16は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シリル基、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、アニリノ基、ヘテロ環アミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ホスフィノイルアミノ基、またはこれらを組み合わせた基を表し、R12およびR15は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、またはこれらを組み合わせた基を表し、R13およびR14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シリル基、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アニリノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、ホスフィノイルアミノ基、またはこれらを組み合わせた基を表し、R17は、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。
【0026】
より好ましくは、上記一般式(1−1)において、R11およびR16は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ヘテロ環アミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ホスフィノイルアミノ基、またはこれらを組み合わせた基を表し、R12およびR15は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、またはこれらを組み合わせた基を表し、R13およびR14は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、またはこれらを組み合わせた基を表し、R17は、水素原子、またはアルキル基を表す。
【0027】
特に好ましくは、一般式(1−1)において、R11およびR16は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、ヘテロ環アミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ホスフィノイルアミノ基、またはこれらを組み合わせた基を表し、R12およびR15は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはこれらを組み合わせた基を表し、R13およびR14は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、またはこれらを組み合わせた基を表し、R17は水素原子を表す。
【0028】
一般式(1−1)中のMaは、金属原子または金属化合物を表す。金属原子または金属化合物としては、錯体を形成可能な金属原子または金属化合物であればいずれであってもよく、2価の金属原子、2価の金属酸化物、2価の金属水酸化物、または2価の金属塩化物が含まれる。例えば、Zn、Mg、Si、Sn、Rh、Pt、Pd、Mo、Mn、Pb、Cu、Ni、Co、Fe等の他に、AlCl、InCl、FeCl、TiCl2、SnCl2、SiCl2、GeCl2などの金属塩化物、TiO、VO等の金属酸化物、Si(OH)2等の金属水酸化物も含まれる。
これらの中でも、錯体の安定性、分光特性、耐熱性、耐光性、および製造適性等の観点から、Fe、Zn、Co、V=O、またはCuが好ましく、Znが最も好ましい。
【0029】
一般式(1−1)中のX1は、金属原子Maに結合可能な基(例えば、水酸基、カルボン酸基、燐酸基、スルホン酸基等など)であればいずれであってもよく、具体的には、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール)、カルボン酸類(例えば、酢酸)等、更に「金属キレート」[1]坂口武一・上野景平著(1995年 南江堂)、同[2](1996年)、同[3](1997年)等、に記載の化合物が挙げられる。
【0030】
一般式(1−1)におけるX2は、Maの電荷を中和する為に必要な基を表し、例えば、ハロゲン原子、水酸基、カルボン酸基、燐酸基、スルホン酸基等が挙げられる。または、該基を有する化合物(例えば、水、アルコール類、カルボン酸類(酢酸))がMaに結合していてもよい。
【0031】
一般式(1−1)におけるX1とX2とが互いに結合して、Maとともに5員、6員または7員の環を形成してもよい。形成される5員、6員および7員の環は、飽和環であっても不飽和環であってもよい。また、5員、6員および7員の環は、炭素原子のみで構成されていてもよく、窒素原子、酸素原子、および/または硫黄原子から選ばれる原子を少なくとも1個有するヘテロ環を形成していてもよい。
【0032】
<一般式(1−2)で表される染料>
以下に、一般式(1−2)で表される染料の各置換基について詳述する。
【0033】
【化2】

【0034】
一般式(1−2)中、R12〜R15は、それぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。R17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Maは、金属原子または金属化合物を表す。X3は、NR(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を表し、X4は、NRa(Raは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。)、酸素原子、または硫黄原子を表し、Y1は、NRc(Rcは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、または炭素原子を表し、Y2は、窒素原子、または炭素原子を表す。R18およびR19は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。R18とY1は、互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよく、R19とY2は、互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよい。X5はMaと結合可能な基を表し、aは0、1または2を表す。
【0035】
一般式(1−2)中のR12〜R15、およびR17は、それぞれ一般式(1−1)中のR12〜R15、およびR17とそれぞれ同義である。
一般式(1−2)中のMaは、金属原子または金属化合物を表し、一般式(1−1)において説明した、金属原子または金属化合物と同義であり、その好ましい範囲も同様である。
【0036】
一般式(1−2)中、R18およびR19は、それぞれ独立に、アルキル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル基で、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ドデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−アダマンチル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜24、より好ましくは炭素数2〜12のアルケニル基で、例えば、ビニル、アリル、3−ブテン−1−イル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜18のアリール基で、例えば、フェニル、ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル、4−ピリジル、2−フリル、2−ピリミジニル、1−ピリジル、2−ベンゾチアゾリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル、ベンゾトリアゾール−1−イル)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜18のアルコキシ基で、例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ドデシルオキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは炭素数1〜18のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ、ナフチルオキシ)、アルキルアミノ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜18のアルキルアミノ基で、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、ヘキシルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、イソプロピルアミノ、t−ブチルアミノ、t−オクチルアミノ、シクロヘキシルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N,N−ジプロピルアミノ、N,N−ジブチルアミノ、N−メチル−N−エチルアミノ)、アリールアミノ基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜18のアリールアミノ基で、例えば、フェニルアミノ、ナフチルアミノ、N,N−ジフェニルアミノ、N−エチル−N−フェニルアミノ)、ヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環アミノ基で、例えば、2−アミノピロール、3−アミノピラゾール、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン)、またはこれらを組み合わせた基を表す。
【0037】
一般式(1−2)中、R18およびR19で表されるアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、およびヘテロ環アミノ基が、更に置換可能な基である場合には、上記一般式(1−1)のR11〜R16で表される置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0038】
一般式(1−2)中、X3は、NR、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を表し、X4は、NRa、酸素原子、または硫黄原子を表す。RとRaは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル基で、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ドデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−アダマンチル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜24、より好ましくは炭素数2〜12のアルケニル基で、例えば、ビニル、アリル、3−ブテン−1−イル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜18のアリール基で、例えば、フェニル、ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル、4−ピリジル、2−フリル、2−ピリミジニル、1−ピリジル、2−ベンゾチアゾリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル、ベンゾトリアゾール−1−イル)、アシル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数2〜18のアシル基で、例えば、アセチル、ピバロイル、2−エチルヘキシル、ベンゾイル、シクロヘキサノイル)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜18のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、イソプロピルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは炭素数6〜18のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル、ナフチルスルホニル)を表す。
RとRaで表されるアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基は、更に、上記一般式(1−1)のR11〜R16で表される置換基で置換されていてもよく、複数の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0039】
一般式(1−2)中、Y1は、NRc、窒素原子、または炭素原子を表し、Y2は、窒素原子、または炭素原子を表す。Rcは、上記X3のRと同義である。
【0040】
一般式(1−2)中、R18とY1とが互いに結合して、R18、Y1、および炭素原子と共に5員環(例えば、シクロペンタン、ピロリジン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、テトラヒドロチオフェン、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン)、6員環(例えば、シクロヘキサン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ペンタメチレンスルフィド、ジチアン、ベンゼン、ピペリジン、ピペラジン、ピリダジン、キノリン、キナゾリン)、または7員環(例えば、シクロヘプタン、ヘキサメチレンイミン)を形成してもよい。
【0041】
一般式(1−2)中、R19とY2とが互いに結合して、R19、Y2、および炭素原子と共に5員、6員、または7員の環を形成していてもよい。形成される5員、6員、および7員の環は、上記のR18とY1および炭素原子で形成される環から、1個の結合が二重結合に変化した環が挙げられる。
【0042】
一般式(1−2)中、R18とY1、およびR19とY2が結合して形成される5員、6員、および7員の環が、更に置換可能な環である場合には、上記一般式(1−1)のR11〜R16で表される置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0043】
一般式(1−2)中、X5はMaと結合可能な基を表し、上記一般式(1−1)におけるX1と同様な基が挙げられる。aは0、1、または2を表す。
【0044】
一般式(1−2)で表される化合物の好ましい態様としては、R12〜R15、R17、およびMaはそれぞれ、一般式(1−1)で表される染料の説明で記載した好ましい態様であり、X3はNR(Rは水素原子、アルキル基)、窒素原子、または酸素原子であり、X4はNRa(Raは水素原子、アルキル基、ヘテロ環基)、または酸素原子であり、Y1はNRc(Rcは水素原子、またはアルキル基)、窒素原子、または炭素原子であり、Y2は窒素原子、または炭素原子であり、X5は酸素原子を介して結合する基であり、R18およびR19は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、若しくはアルキルアミノ基であり、またはR18とY1とが互いに結合して5員若しくは6員環を形成し、またはR19とY2とが互いに結合して5員若しくは6員環を形成し、aは0または1を表す。
【0045】
一般式(1−2)で表される化合物の更に好ましい態様としては、R12〜R15、R17、Maはそれぞれ、一般式(1−1)で表される染料の説明で記載した特に好ましい態様であり、X3およびX4は、酸素原子であり、Y1はNHであり、Y2は窒素原子であり、X5は酸素原子を介して結合する基であり、R18およびR19は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、若しくはアルキルアミノ基であり、またはR18とY1とが互いに結合して5員若しくは6員環を形成し、またはR19とZ2とが互いに結合して5員若しくは6員環を形成し、aは0または1を表す。
【0046】
<一般式(1−3)で表される染料>
以下に、一般式(1−3)で表される染料の各置換基について詳述する。
【0047】
【化3】

【0048】
一般式(1−3)中、R11〜R16はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。R17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Maは、金属原子または金属化合物を表す。
【0049】
一般式(1−3)中のR11〜R17は、それぞれ一般式(1−1)中のR11〜R17と同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(1−3)中のMaは、金属原子または金属化合物を表し、一般式(1−1)において説明した、金属原子または金属化合物と同義であり、その好ましい範囲も同様である。
【0050】
次に、一般式(1−1)〜一般式(1−3)で表される染料の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるわけではない。なお、他の具体例として、特願2008−149467号明細書の段落番号[0058]〜[0074]に記載の染料などが挙げられる。
【0051】
【化4】

【0052】
【化5】

【0053】
【化6】

【0054】
【化7】

【0055】
【化8】

【0056】
一般式(1−1)〜一般式(1−3)で表される染料は、米国特許第4,774,339号、同−5,433,896号、特開2001−240761号、同2002−155052号、特許第3614586号、Aust. J. Chem, 1965, 11, 1835-1845、J.H.Boger et al,Heteroatom Chemistry,Vol.1,No.5 (1990)等に記載の方法で合成することができる。
【0057】
<一般式(3)で表される染料>
さらに、本発明の硬化性組成物は、一般式(3)で表される染料(シアン系染料)を含有していてもよい。該染料と、上述したジピロメテン系染料とを併用することにより、色相、輝度、耐熱性、耐薬品性に優れた青色の色画素を作製することができる。
【0058】
【化9】

【0059】
一般式(3)中、R1は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
1で表される「置換基」としては、置換可能な基であればよく、例えば、脂肪族基(総炭素数1〜15のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、イソプロペニル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、アリール基(総炭素数6〜16が好ましく、総炭素数6〜12がより好ましい。例えば、フェニル基、4−ニトロフェニル基、2−ニトロフェニル基、2−クロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、2−メトキシカルボニル−4−ニトロフェニル基等が挙げられる。)、ヘテロ環基(総炭素数3〜15が好ましく、総炭素数3〜10がより好ましい。例えば、3−ピリジル基、2−ピリジル基、2−ピリミジニル基、2−ピラジニル基、1−ピペリジル基等が挙げられる。)、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基(総炭素数1〜16が好ましく、総炭素数1〜12がより好ましい。例えば、カルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、N−メチル−N−プロピルカルバモイル基、N−エチル−N−メトキシエチルカルバモイル基、ビス(2−メチルブチル)カルバモイル基、ビス(2−エチルヘキシル)カルバモイル基、ビス(メトキシエチル)カルバモイル基、ビス(エトキシエチル)カルバモイル基、ビス(プロポキシエチル)カルバモイル基、N−カルボキシメチル−N−メチルカルバモイル基等が挙げられる。)、
【0060】
脂肪族オキシカルボニル基(総炭素数2〜16が好ましく、総炭素数2〜10がより好ましい。例えば、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(総炭素数7〜17が好ましく、総炭素数7〜15がより好ましい。例えば、フェノキシカルボニル基等が挙げられる。)、アシル基(総炭素数2〜15が好ましく、総炭素数2〜10がより好ましい。例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。)、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基(総炭素数1〜12が好ましく、総炭素数1〜10がより好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシジエトキシ基、フェノキシエトキシ基、チオフェノキシエトキシ基等が挙げられる。)、アリールオキシ基(総炭素数6〜18が好ましく、総炭素数6〜14がより好ましい。例えば、フェノキシ基、4-メチルフェノキシ基等が挙げられる。)、アシルオキシ基(総炭素数2〜14が好ましく、総炭素数2〜10がより好ましい。例えば、アセトキシ基、メトキシアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。)、カルバモイルオキシ基(総炭素数1〜16が好ましく、総炭素数1〜10がより好ましい。例えば、ジメチルカルバモイルオキシ基、ジイソプルピルカルバモイル基、N,N-ビス(メトキシエチル)-カルバモイル基、N,N-ビス(エトキシエチル)-カルバモイル基等が挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(総炭素数1〜15が好ましく、総炭素数3〜10がより好ましい。例えば、3-フリルオキシ基、3-ピリジルオキシ基、N-メチル2-ピペリジルオキシ基等が挙げられる。)、
【0061】
アシルアミノ基(総炭素数2〜15が好ましく、総炭素数3〜12がより好ましい。例えば、N-メチルアセチルアミノ基、N-エトキシエチルベンゾイルアミノ基、N-メチルメトキシアセチルアミノ基等が挙げられる。)、カルバモイルアミノ基(総炭素数1〜16が好ましく、総炭素数1〜12がより好ましい。例えば、N,N-ジメチルカルバモイルアミノ基、N-メチル-N-メトキシエチルカルバモイルアミノ基等が挙げられる。)、スルファモイルアミノ基(総炭素数0〜16が好ましく、総炭素数0〜12がより好ましい。例えば、N,N-ジメチルスルファモイルアミノ基が挙げられる。)、脂肪族オキシカルボニルアミノ基(総炭素数2〜15が好ましく、総炭素数2〜10がより好ましい。例えば、メトキシカルボニルアミノ基、メトキシエトキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(総炭素数7〜17が好ましく、総炭素数7〜15がより好ましい。例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、4-メトキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。)、脂肪族スルホニルアミノ基(総炭素数1〜12が好ましく、総炭素数1〜8がより好ましい。例えば、メタンスルホニルアミノ基、ブタンスルホニルアミノ基等が挙げられる。)、アリールスルホニルアミノ基(総炭素数6〜17が好ましく、総炭素数6〜15がより好ましい。例えば、フェニルスルホニルアミノ基、4−メチルフェニルスルホニルアミノ基等が挙げられる。)、脂肪族チオ基(総炭素数1〜16が好ましく、総炭素数1〜12がより好ましい。例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、エトキシエチルチオ基等が挙げられる。)、アリールチオ基(総炭素数6〜22が好ましく、総炭素数6〜14がより好ましい。例えば、フェニルチオ基、2-t-ブチルチオ基等が挙げられる。)、脂肪族スルホニル基(総炭素数1〜15が好ましく、総炭素数1〜8がより好ましい。例えば、メタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、メトキシエタンスルホニル基等が挙げられる。)、
【0062】
アリールスルホニル基(総炭素数6〜16が好ましく、総炭素数6〜12がより好ましい。例えば、ベンゼンスルホニル基、4−t−ブチルベンゼンスルホニル基、4−トルエンスルホニル基、2−トルエンスルホニル基等が挙げられる。)、スルファモイル基(総炭素数0〜16が好ましく、総炭素数0〜12がより好ましい。例えば、スルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、N,N−ジエチルスルファモイル基等が挙げられる。)、脂肪族スルホニルカルバモイル基(総炭素数2〜17が好ましく、総炭素数2〜13がより好ましい。例えば、メチルスルホニルカルバモイル基、ブチルスルホニルカルバモイル基、2−メチルブチルスルホニルカルバモイル基等が挙げられる。)、アリールスルホニルカルバモイル基(総炭素数7〜21が好ましく、総炭素数7〜17がより好ましい。例えば、フェニルスルホニルカルバモイル基等が挙げられる。)、脂肪族カルボニルスルファモイル基(総炭素数2〜17が好ましく、総炭素数2〜13がより好ましい。例えば、メチルカルボニルスルファモイル基、ブチルカルボニルスルファモイル基、2−エチルヘキシルカルボニルスルファモイル基等が挙げられる。)、アリールカルボニルスルファモイル基(総炭素数7〜21が好ましく、総炭素数7〜17がより好ましい。例えば、フェニルカルボニルスルファモイル基等が挙げられる。)、脂肪族スルホニルスルファモイル基(総炭素数1〜16が好ましく、総炭素数1〜12がより好ましい。例えば、メチルカルボニルスルファモイル基、ブチルカルボニルスルファモイル基、2−エチルヘキシルカルボニルスルファモイル基等が挙げられる。)、アリールスルホニルスルファモイル基(総炭素数6〜16が好ましく、総炭素数6〜12がより好ましい。例えば、フェニルスルホニルスルファモイル基等が挙げられる。)、スルホ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、またはこれらを組み合わせた基が挙げられる。
【0063】
上記の「脂肪族基」としては、その脂肪族部位が直鎖、分岐鎖、または環状であって飽和および不飽和のいずれであってもよく、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基を含み、無置換であっても置換基で置換されていてもよい。また、「アリール基」は、単環および縮合環のいずれでもよく、無置換であっても置換基で置換されていてもよい。「ヘテロ環基」は、そのヘテロ環部位が環内にヘテロ原子(例えば、窒素原子、イオウ原子、酸素原子)を持つものであり、飽和環および不飽和環のいずれであってもよく、単環および縮合環であってもよく、無置換であっても置換基で置換されていてもよい。
【0064】
1の置換基が更に置換可能な基である場合には、さらに該置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有している場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0065】
本発明の効果の点で、R1は、ハロゲン原子、脂肪族基(アルキル基など)、シアノ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、脂肪族チオ基、アリールチオ基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、脂肪族スルホニルカルバモイル基、アリールスルホニルカルバモイル基、脂肪族カルボニルスルファモイル基、アリールカルボニルスルファモイル基、脂肪族スルホニルスルファモイル基、アリールスルホニルスルファモイル基、イミド基、またはこれらを組み合わせた基である場合が好ましく、脂肪族基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族オキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、脂肪族スルホニルカルバモイル基、脂肪族カルボニルスルファモイル基、脂肪族スルホニルスルファモイル基、イミド基、またはこれらを組み合わせた基である場合が更に好ましく、カルバモイル基、ヒドロキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族オキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基、カルバモイルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールスルホニル基、脂肪族スルホニルカルバモイル基、脂肪族カルボニルスルファモイル基、脂肪族スルホニルスルファモイル基、イミド基、脂肪族スルホニル基、またはこれらを組み合わせた基である場合が最も好ましい。
【0066】
一般式(3)中、Lはそれぞれ独立に、脂肪族または芳香族の連結基を表す。これらの連結基を使用すると、得られる色画素の色相・輝度がより優れる。なお、それぞれのLは同一でも異なってもよい。
Lで表される脂肪族の連結基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数1〜20の脂肪族基が好ましく、総炭素数1〜15の脂肪族基がより好ましい。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
Lで表される芳香族の連結基としては無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数6〜20の芳香族基が好ましく、総炭素数6〜16の芳香族基がより好ましい。例えば、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、最も好ましいのはフェニレン基である。
なお、n=0の場合は、R1とS(硫黄原子)とが直接結合する。
【0067】
一般式(3)中、Z1は2つの炭素原子と共に6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、4つのZ1は同一でも異なっていてもよい。形成される6員環は、アリール環またはヘテロ環のいずれであってもよく、縮環していてもよく、縮環した環が更に置換基を有していてもよい。6員環としては、例えば、ベンゼン環、ピリジン環、シクロヘキセン環、ナフタレン環等が挙げられ、ベンゼン環である態様が好適である。
【0068】
一般式(3)において、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、2価の金属酸化物、2価の金属水酸化物、または2価の金属塩化物を表す。該Mとしては、例えば、VO、TiO、Zn、Mg、Si、Sn、Rh、Pt、Pd、Mo、Mn、Pb、Cu、Ni、Co、Fe、AlCl、InCl、FeCl、TiCl2、SnCl2、SiCl2、GeCl2、Si(OH)2、H2等が挙げられ、VO、Zn、Mn、Cu、Ni、Coである態様が好適である。本発明の効果の点でMはVO、Mn、Co、Ni、Cu、ZnまたはMgである場合が好ましく、VO、Co、CuまたはZnである場合が更に好ましく、Cuである場合が最も好ましい。
【0069】
一般式(3)において、mはそれぞれ独立に1または2を表し、mは2である場合が好ましい。
nはそれぞれ独立に0または1を表し、nは1である場合が好ましい。
pはそれぞれ独立に1〜5の整数を表し、1〜3である場合が好ましく、1である場合がより好ましい。
【0070】
本発明においては、分子中の複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。なかでも、R1は、−OY、−COOY、−SO3Y、−CON(Y)CO−、−CON(Y)SO2−、−SO2N(Y)CO−、または−SO2NH−を有することが好ましい。これにより、得られる色画素の外観特性や耐薬品性がより向上する。
上記−OY、−COOY、−SO3Y、−CON(Y)CO−、−CON(Y)SO2−(スルホニルカルバモイル基)、−SO2N(Y)CO−(アシルスルファモイル基)、または−SO2NH−は、一般式(3)において、連結基Lに結合していてもよく、連結基Lを介さずに−S(=O)−と直接結合していてもよい。連結基Lを介さずに−S(=O)−と直接結合している場合、R1は−OYであることが好ましく、−S(=O)−と共にテトラアザポルフィリン環に直接結合する−SO3Yを構成する(m=2)ことが好ましい。
【0071】
Yは水素原子、金属原子または共役酸を表す。Yで表される金属原子はLi、Na、K、Mg、Caが挙げられ、好ましいのはLi、Na、Kである。Yで表される共役酸を形成する塩基としては、3級アミン類(例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、4−メチルモルホリン)、グアニジン類(例えば、グアニジン、N,N−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン)、ピリジン類(例えば、ピリジン、2-メチルピリジン)等が挙げられる。中でも、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジンが好ましい。
【0072】
1、r2、r3およびr4はそれぞれ独立に0または1を表し、r1+r2+r3+r4は1以上であり、r1+r2+r3+r4が2〜4であることが好ましい。また、r1、r2、r3およびr4は、各々1であることもまた好ましい。
【0073】
以下、上記「−S(O)m−(L)n−(R1)p」で表される基の例を示す。但し、本発明においては、これらに限定されるものではない。なお、以下の例の中では、好ましくはT−95、T−97、T−114、T−115、T−117、T−127、T−130が挙げられる。
【0074】
【化10】

【0075】
【化11】

【0076】
以下に一般式(3)で表される染料の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0077】
【化12】

【0078】
【化13】

【0079】
【化14】

【0080】
なお、上記一般式(3)で表される染料(テトラアザポルフィリン系染料)は、例えば、特開2006−58787号公報、特開2006−124379号公報、特開2006−124679号公報等に記載の方法で合成することができる。
【0081】
インクジェット用インク中、一般式(1−1)〜一般式(1−3)で表される染料と一般式(3)で表される染料との総含有量は、インク全量に対して、1〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましい。含有量が少なすぎる場合、カラーフィルタとして必要な光学濃度を達成するために、膜厚が厚くなる。そのためブラックマトリクスも厚くする必要があり、ブラックマトリクス形成が困難になるので好ましくない。含有量が多すぎる場合、インク粘度が高くなり吐出が困難になる、また溶媒へ溶解しにくくなるので好ましくない。
【0082】
なお、硬化性組成物中、一般式(1−1)〜一般式(1−3)で表される染料(ジピロメテン系染料)と一般式(3)で表される染料(シアン染料)との質量比(シアン染料/ジピロメテン系染料)は、特に限定されないが、得られる色画素がより優れた外観、優れた耐薬品性を示す点より、その質量比は0.3〜4が好ましく、1〜3がより好ましい。
【0083】
<有機溶剤>
硬化性組成物は、有機溶剤を含有する。有機溶剤としては、各成分の溶解性を満足すれば特に限定されない。
有機溶剤の具体例としては、水や、エステル類(例えば、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチルなど)、エーテル類(例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなど)、ケトン類(例えば、シクロヘキサノンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、キシレンなど)、アルコール類(例えば、ベンジルアルコールなど)、ジシクロヘキシルメチルアミンなどが好適に挙げられる。これらは1種または2種以上を併用しても構わない。
【0084】
硬化性組成物中の有機溶剤の含有量は、硬化性組成物全量に対して、30〜90質量%が好ましく、50〜90質量%がさらに好ましい。30質量%以上であると、インクジェット法にて1画素内に打滴される組成物量が保たれ、画素内での組成物の濡れ広がりが良好である。また、90質量%以下であると、組成物中の機能膜(例えば画素など)を形成するための溶媒以外の成分量を所定量以上に保つことができる。これより、カラーフィルタを形成する場合には、1画素当たりの組成物必要量が多くなり過ぎることがなく、例えば隔壁で区画された凹部にインクジェット法で組成物を付与する場合に、凹部からのインク溢れや隣の画素との混色の発生を抑制することができる。
【0085】
本発明で用いられる有機溶剤の沸点は、130〜280℃が好ましい。なかでも、沸点が160〜250℃の有機溶剤が好ましく、180〜240℃がより好ましい。沸点が低すぎると、面内の画素の形状の均一性の点で好ましくない。沸点が高すぎると、プリベークによる溶媒除去の点で好ましくない。なお、有機溶剤の沸点は、圧力1atmのもとでの沸点を意味し、化合物辞典(Chapman & Hall 社)などの物性値表により知ることができる。
【0086】
<重合性モノマー>
本発明の硬化性組成物は、重合性モノマーを含有する。重合性モノマーの添加により、液滴と基板との密着性が向上する。併せて、上述した染料の画素中での分散均一性の向上や、耐候性・耐熱性などの堅牢性の向上が期待できる。この重合性モノマーとしては、特に制限は無く、例えば、カチオン重合性モノマーやラジカル重合性モノマーなどが挙げられる。なかでも、各種置換基のバリエーションが多く、入手が容易な点で、(メタ)アクリル系モノマーなどのラジカル重合性モノマーを含有することが好ましい。
【0087】
重合性モノマーとしては、重合性基を2つ以上有するモノマーが好ましい。重合性モノマーとしては、活性エネルギー線および/または熱により重合反応可能であれば特に限定されるものではないが、膜の強度や耐薬品性などの点から、重合性基を3つ以上有するモノマーがより好ましい。
なかでも、得られる色画素の堅牢性および耐熱性がより優れる点で、重合性基を3〜6つ有する多官能モノマーが好ましい。なかでも、重合性基の数は、4〜6つが好ましい。上記範囲内であれば、色画素の耐久性、モノマーの入手性、合成時の難度の点で好ましい。
【0088】
上述した重合性基の種類としては、特に制限はないが、上記の通り、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が特に好ましい。重合性モノマーの具体例としては、特開2002−371216号公報の段落番号[0016]に記載のアクリレートモノマーおよびメタクリレートモノマー、並びに、シーエムシー出版「反応性モノマーの市場展望」に記載のモノマーなどが挙げられる。
【0089】
また、(メタ)アクリル系モノマーであるアクリレートモノマーおよびメタクリレートモノマーとしては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの単官能のアクリレートまたはメタアクリレートや、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのアクリレートまたはメタクリレートなどが挙げられる。
【0090】
上述した重合性モノマーの含有量は、硬化性組成物の固形分中の30〜80量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましい。重合性モノマーの使用量が上記範囲内であれば、画素部の重合が十分となるため、画素部の膜強度の不足に起因する傷の発生が起こりにくくなる。ここで、配合割合を特定するための硬化性組成物の固形分とは、溶剤を除く全ての成分を含み、液状の重合性モノマーなども固形分に含まれる。
【0091】
<水素供与性化合物>
本発明の硬化性組成物は、所定の官能基を2つ以上有する水素供与性化合物を含有する。該水素供与性化合物を使用することにより、上述したジピロメテン系染料の色画素中での分散性が向上し、色相、輝度、耐熱性、耐薬品性に優れた色画素を作製することができる。
【0092】
水素供与性化合物中の官能基間の距離は特に制限されないが、MOPACによる計算において、最も距離が離れている官能基間の距離が1.5〜1000Åであることが好ましく、3〜300Åであることがより好ましい。上記範囲内であれば、色相良化、耐熱性良化の効果と、耐薬性などの他性能との両立の点で好ましい。
【0093】
水素供与性化合物は、ヒドロキシル基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、アミド基(−NHCOR、−CONHR(Rは有機基))、スルホン酸基(−SO3H)、ホスホン酸基(−PO32)からなる群から選ばれる官能基を少なくとも2つ有する。なお、官能基の種類は同じでも、異なっていてもよい。なお、2つの官能基がカルボキシル基の場合、これらが結合してカルボン酸無水物基(−CO−O−CO−)を形成していてもよい。また、カルボキシル基とアミド基とが結合して、イミド基(−CO−NH−CO−)を形成してもよい。
上記官能基の中でも、得られる色画素の色相・輝度・耐熱性・耐薬品性がより優れる点から、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、イミド基が好ましく、ヒドロキシ基、カルボキシル基、イミド基がより好ましく、ヒドロキシ基、カルボキシル基が特に好ましい。
また、水素供与性化合物は上記官能基を少なくとも2つ有する。該官能基が1つの場合、ジピロメテン系染料との相互作用が十分ではなく、所望の色相・輝度・耐熱性を示す色画素を得ることができない。なお、より効果が優れる点で、該官能基の数としては3つ以上が好ましく、3〜8つがより好ましく、3〜6つが特に好ましい。なお、官能基の数が8つを超える場合は、染料または、染料と水素供与性化合物の溶剤への溶解性が悪く、色画素の特性の十分な改良が得られない場合がある。
なお、カルボン酸無水物基、イミド基に関しては、それぞれ官能基数を2として数える。
【0094】
水素供与性化合物は、25℃、1気圧下において固体である。該条件下において該化合物が固体であることにより、熱硬化プロセスなどにおいても十分な耐熱性を示し、さらに色画素中での染料の耐熱性向上に寄与する。
より具体的には、水素供与性化合物の融点(T)としては、40℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。上限に関しては特に制限はないが、通常、230℃以下である。なお、融点の測定方法は特に限定されず、示差走査型熱量計(DSC)などの公知の方法により測定される。
【0095】
水素供与性化合物の分子量は、3000以下である。好ましくは、80以上であり、より好ましくは100〜1000であり、さらに好ましくは120〜500である。該分子量が上記範囲内であれば、色相・輝度・耐熱性・耐薬品性に優れた色画素を得ることができる。
一方、分子量が3000を超えると、組成物の塗布性や、インクジェット法における吐出安定性が損なわれ、さらに上記ジピロメテン系染料との相互作用が十分でなくなり、結果として得られる色画素の色相・輝度・耐熱性・耐薬品性が損なわれる。分子量が低すぎると、該水素供与性化合物がカラーフィルタの製造時に揮発したり、上記ジピロメテン系染料との相互作用が十分でなくなり、結果として得られる色画素の色相・輝度・耐熱性・耐薬品性が損なわれる場合がある。
【0096】
水素供与性化合物の好適態様として、上記官能基数との関係上、分子量と官能基数との比率(分子量/官能基数)が、36以上が好ましく、40〜200がより好ましく、42〜133が特に好ましい。上記範囲内であれば、得られる色画素の色相・輝度・耐熱性を効率良く向上させる事が可能である。
【0097】
水素供与性化合物の他の好適態様として、一般式(2)で表され、分子量と官能基数との比率(分子量/官能基数)が36以上であり、25℃、1気圧下において固体である化合物が挙げられる。
【0098】
【化13】

【0099】
一般式(2)中、Aは、n価の有機基を表す。なかでも、色画素の色相・輝度・耐熱性・耐薬品性がより優れる点から、脂肪族基または芳香族基が好ましい。なお、A中のn個の水素原子が、n個の官能基Bと置き換わる。
Aが脂肪族基の場合、直鎖状または分岐鎖状であってもよく、なかでも脂肪族炭化水素基(特に、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基)が好ましい。
芳香族基としては、具体的には、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基が挙げられる。なかでも、色画素の色相・輝度・耐熱性・耐薬品性がより優れる点から、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基(好ましくは、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環)が好ましい。
該芳香族基の例としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、フルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピロール環、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環、イソキノリン環、またはキノキサリン環などが挙げられる。
【0100】
一般式(2)中、Bは、それぞれ独立に、−OH基、−COOH基、−NHCOR基、−CONHR基、−SO3H基、−PO32基を表す。なかでも、色画素の色相・輝度・耐熱性・耐薬品性がより優れる点から、−OH基、−COOH基、−CONHR基が好ましく、−OH基、−COOH基がより好ましい。Bは同一であってよいし、異なっていてもよい。なお、Rは有機基を表し、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基が好ましい。
なお、隣接する2つのBが結合して、酸無水物基(−CO−O−OC−)またはカルボンイミド基(−CO−NH−CO−)を形成してもよい。
【0101】
一般式(2)中、nは、2以上の整数を表す。なかでも、色画素の色相・輝度・耐熱性・耐薬品性がより優れる点から、nは3以上が好ましく、3〜8がより好ましく、3〜6が特に好ましい。
nが1の場合、上述のように十分な効果が得られない。また、nが8を超える場合は、染料または、染料と水素供与性化合物の溶剤への溶解性が悪く、色画素の特性の十分な改良が得られない場合がある。
【0102】
また、硬化性組成物中において、水素供与性化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0103】
本発明で使用される水素供与性化合物としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリオール、テレフタル酸、クエン酸、リンゴ酸、ジグリコール酸、ピロメリト酸、ピロメリト酸無水物、ピロメリト酸ジイミド、(+)−N,N’−ジアリル−L−酒石酸ジアミドなどが挙げられる。
【0104】
水素供与性化合物の含有量は、硬化性組成物全量に対して、0.1〜12質量%であり、0.3〜8質量%がより好ましく、1〜8質量%が特に好ましい。該含有量を上記範囲内にすることにより、得られる優れた色相・輝度・耐熱性・耐薬品性を示す色画素を得ることができる。
含有量が0.1質量%未満の場合は、得られる色画素の色相、輝度、耐熱性に劣り、含有量が12質量%を超える場合は、得られる色画素の色相、輝度、耐熱性、および耐薬性が劣る。
【0105】
硬化性組成物中における水素供与性化合物の質量(W1)と、一般式(1−1)〜一般式(1−3)で表される染料の総質量(W2)との質量比(W2/W1)は、0.05〜10であることが好ましく、0.5〜5であることがより好ましい。上記範囲内であれば、得られる色画素の色相・輝度・耐熱性がより優れる。
【0106】
硬化性組成物中における水素供与性化合物の質量(W1)と、重合性モノマーの質量(W3)との質量比(W3/W1)は、1〜50であることが好ましく、3〜20であることがより好ましい。上記範囲内であれば、得られる色画素の色相・輝度・耐熱性がより優れる。
【0107】
<界面活性剤>
本発明の硬化性組成物には、さらに界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤の例として、特開平7−216276号公報の段落番号[0021]や、特開2003−337424号公報、特開平11−133600号公報に開示されている界面活性剤が、好適なものとして挙げられる。
界面活性剤の含有量は、硬化性組成物全量に対して5質量%以下が好ましく、0.01〜2質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の他の物性を損ねること無く、好ましい表面張力を得られる点で好ましい。
【0108】
<重合開始剤>
本発明の硬化性組成物は、重合性モノマーの重合反応を促進する目的で、重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、硬化性組成物に用いられるラジカル重合性モノマーの種類、重合経路にあわせて選択することができ、例えば、熱重合開始剤・光重合開始剤などが挙げられる。重合開始剤としては、例えば、特許出願2007−303656号明細書の段落番号[0086]〜[0117]に記載される熱重合開始剤を用いてもよい。
【0109】
重合開始剤の含有量は、硬化性組成物中の全固形分に対して、0.01〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜30質量%である。含有量が上述の範囲内であると、より良好な感度と強固な硬化部を形成することができる。
【0110】
その他の添加剤としては、特開2000−310706号公報の段落番号[0058]〜[0071]に記載のその他の添加剤が挙げられる。
【0111】
硬化性組成物の各成分の含有量としては、得られる色画素の各特性がより優れる点で、組成物全量に対して、一般式(1−1)で表される染料〜一般式(1−3)で表される染料(ジピロメテン系染料)と一般式(3)で表される染料(シアン系染料)との総含有量は1〜30質量%が好ましく、より好ましくは2〜20質量%であり、有機溶剤の含有量は30〜90質量%が好ましく、より好ましくは50〜90質量%であり、重合性モノマーの含有量は5〜50質量%が好ましく、より好ましくは7〜30質量%であり、水素供与性化合物の含有量は0.1〜12質量%が好ましく、より好ましくは0.3〜8質量%がより好ましい。
【0112】
本発明の硬化性組成物の製造は特に限定されず、公知の方法によりなされる。例えば、有機溶剤中に染料を溶解させた後、必要な各成分を溶解させて硬化性組成物を調製することができる。
【0113】
<硬化性組成物の物性値>
本発明の硬化性組成物の物性値としては、塗布可能、または、インクジェットヘッドで吐出可能な範囲であれば特に限定されない。なかでも、塗布性およびインクジェットによる吐出安定性の観点から、組成物粘度は25℃において30mPa・s以下であることが好ましく、2〜30mPa・sであることがより好ましく、2〜20mPa・sがさらに好ましい。また、装置で吐出する際には、硬化性組成物の温度を20〜80℃の範囲でほぼ一定温度に保持することが好ましい。装置の温度を高温に設定すると、硬化性組成物の粘度が低下し、より高粘度の組成物を吐出可能となる。
なお、粘度は、25℃に硬化性組成物を保持した状態で、一般に用いられるE型粘度計(例えば、東機産業(株)製E型粘度計(RE−80L)を用いることにより測定される値である。
【0114】
また、硬化性組成物の25℃の表面張力(静的表面張力)としては、非浸透性の基板に対する濡れ性の向上、ならびに塗布性およびインクジェットによる吐出安定性の点で、20〜40mN/mが好ましく、20〜35mN/mがより好ましい。また、装置で吐出する際には、硬化性組成物の温度を20〜80℃の範囲で略一定温度に保持することが好ましく、そのときの表面張力を20〜40mN/mとすることが好ましい。
上述の表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計FACE SURFACE TENSIOMETER CBVB−A3など)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃、60%RHにて測定される値である。
【0115】
本発明の硬化性組成物は、液晶表示素子(LCD)や固体撮像素子(例えば、CCD、CMOS等)に用いられるカラーフィルタなどの着色画素形成用として好適に用いることができる。また、印刷インキ、インクジェット用インキ、及び塗料などの作製用途としても好適に用いることができる。特に、インクジェット用インクとして好適に使用することができる。
【0116】
<色画素(色画像)>
本発明の硬化性組成物を用いて、後述する方法にて得られる色画素(色画像、記録材)の色度は、C光源を使用して測定したCIE−XYZ表色系で表した場合、xy色度図上での値が7≦Y(刺激値Yが7以上)とした時、0.125<x<0.145及び0.075<y<0.140で囲まれた範囲内にあることが好ましい。より好ましくは0.130<x<0.140及び0.090<y<0.120で囲まれた範囲内にあることである。
【0117】
色はXYZ表色系において、(x,y,Y)の3つの変数で次式のように表すことができる。このとき、下記x,yは、色相と彩度を表す変数であり、X、Y、Zは色刺激値である。
(式W) x=X/(X+Y+Z)、y=Y/(X+Y+Z)
【0118】
また、得られる色画素の色相がxy色度図上での上記好適範囲にある場合の輝度Y値は、カラーフィルタへの応用の観点からは、7以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、12以上であることが特に好ましい。
【0119】
<カラーフィルタおよびその製造方法>
本発明の硬化性組成物を使用したカラーフィルタの製造方法は特に制限されないが、主に、インクジェット法とカラーレジスト法が挙げられる。
以下にそれぞれの方式について詳述する。
【0120】
(インクジェット法)
図面に示す好適実施形態を参照して、インクジェット法を用いたカラーフィルタの製造方法について詳細に説明する。
カラーフィルタの製造方法は、基板上に形成された隔壁により囲まれた凹部に、本発明の硬化性組成物(以後、本発明のインクジェット用インクとも称する)をインクジェット法により付与して画素を形成する工程(以下、「画素形成工程」という)を有することを特徴とする。好ましくは、画素形成工程は、基板上の隔壁により区画された凹部にインクジェット法により液滴として硬化性組成物を付与する描画工程と、さらに、描画された少なくとも1色の画素(凹部内の硬化性組成物)を形成した後に活性エネルギー線の照射または熱により硬化して色画素を形成する硬化工程を有し、必要に応じてさらにベーク処理などの他の工程を設けて構成することができる。
【0121】
図1は、本発明のカラーフィルタの製造方法の一実施形態における製造工程を示すフローチャートであり、図2(a)〜(f)は、本発明のカラーフィルタの製造方法における基板からカラーフィルタに至る製造工程順に示す基板およびカラーフィルタの模式的断面図である。
図1および図2(a)〜(f)に示すように、本発明のカラーフィルタ10の製造方法は、基板12にブラックマトリックス(BM)となる隔壁(バンク)14を形成する隔壁形成工程S102(図2(b)参照)と、隔壁14に撥液性(撥インク性)を付与する撥液処理工程S104と、隣接する隔壁14間の凹部16に、本発明のインクジェット用インク18をインクジェット法により付与して色画素20を形成する画素形成工程S106(図2(c)〜(e)参照)と、形成された色画素20を保護する保護膜22を形成してカラーフィルタ10を製造する保護膜形成工程S108(図2(f)参照)とを有する。
【0122】
また、画素形成工程S106は、上述したように、隔壁14間の凹部16にインク18をインクジェット法により液滴として吐出して付与する描画工程S110(図2(c)参照)と、凹部16に付与されたインク18を乾燥させてインク18内の溶剤を除去してインク残部18aとする予備処理工程S112(図2(d)参照)と、基板12上の凹部16内のインク残部18aに活性エネルギー線を照射する照射工程および/またはインク残部18aを加熱する加熱工程によりインク残部18aを重合して硬化させ、色画素20を形成する硬化工程S114(図2(e)参照)とを有する。
なお、隔壁14は、画素形成工程S106の前の隔壁形成工程S102において、予め基板12上に形成されたものであり、隔壁14の隔壁形成工程S102およびその形成方法の詳細については後述し、まず始めに、画素形成工程S106について説明する。
【0123】
<画素形成工程>
図2(c)〜(e)に示すように、画素形成工程S106では、描画工程S110において、隔壁(色離隔壁)14間の凹部16に、本発明のインクジェット用インク18の液滴をインクジェット法で付与して、硬化工程S114で付与されたインク18を硬化して画素20を形成する。この画素20は、カラーフィルタ10を構成する赤色(R)、緑色(G)、青色(B)などの色画素となるものである。本発明のインクジェット用インクを用いることにより、青色(B)の色画素を有するカラーフィルタ10を製造することができる。なお、カラーフィルタの基板12としては、特に限定されず、ガラス板や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂板を用いることができる。
【0124】
描画工程S110において用いられるインクジェット方式としては、特に限定されず、帯電したインクジェット用インクを連続的に噴射し電場によって制御する方法、圧電素子を用いて間欠的にインクジェット用インクを噴射する方法、インクジェット用インクを加熱してその発泡を利用して間欠的に噴射する方法等の、各種の方法を採用できる。
使用されるインクジェットヘッドとしては、コンティニュアス型やオンデマンド型のピエゾ方式、サーマル方式、ソリッド方式、静電吸引方式等の種々の方式のインクジェットヘッド(吐出ヘッド)を用いることができる。また、インクジェットヘッドの吐出部(ノズル)は、単列配置に限定されず、複数列配置としても千鳥格子状配置としてもよい。
【0125】
本発明のインクジェット用インクを用いて製造するカラーフィルタとしては、単色のカラーフィルタのみならず、イエロー(Y)とマゼンタ(M)とでなる赤色(R)の色画素、イエロー(Y)とシアン(C)とでなる緑色(G)の色画素、本発明の硬化性組成物から得られる青色(B)の色画素を有する3色のカラーフィルタや、さらに、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の色画素を有する4〜6色の色画素を有するカラーフィルタなどが挙げられる。
本発明のインクジェット用インク以外に、カラーフィルタを形成するためのそれぞれの着色用インクとしては、公知のものを使用することができる。
【0126】
カラーフィルタパターンの形状について特に限定はなく、ブラックマトリックス形状として一般的なストライプ状であっても、格子状であっても、さらにはデルタ配列状であってもよい。
【0127】
本発明においては、図2(c)に示すように、描画工程S110において基板12上の凹部16にインク18の液滴を付与してインク18の層を形成した後、図2(d)に示すように、予備処理工程S112でインク18内に含まれる有機溶剤を乾燥して除去してインク残部18aとした後に、図2(e)に示すように、インク残部18aに活性エネルギー線を照射するおよび/またはインク残部18aを加熱する硬化工程S114によりインク残部18aを重合して画素20を形成してもよい。
【0128】
<硬化工程>
本発明のカラーフィルタの製造方法においては、赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)など所望の色相の未硬化画素インク18aを、活性エネルギー線の照射、または熱により硬化する工程を設けることができる。なお、活性エネルギー線の照射を実施するためには、UV照射装置など高額な装置を使用する必要があり、装置の大型化や製造コストの増加などを招くことになるため、熱による硬化が好ましい。
本発明のインクジェット用インクは、熱硬化により優れた色相・輝度・耐熱性・耐薬品性を示す色画素を形成することができ、光照射などのプロセスを設けなくてもよい。
以下においては、熱硬化の場合について詳述する。
【0129】
本硬化工程では、隔壁および所望の色相からなる未硬化画素インクを形成し、加熱処理(いわゆるベーク処理)を行って、熱による硬化を施すことができる。すなわち、隔壁および未硬化画素インクが形成されている基板を、電気炉、乾燥器などに入れて加熱する、あるいは赤外線ランプを照射して加熱することができる。
加熱温度および加熱時間は、インクジェット用インクの組成や画素の厚みに依存するが、約120℃〜約250℃で約10分〜約120分間加熱することが好ましい。
【0130】
また、本発明のインクジェット用インクを用いたカラーフィルタの製造方法では、熱処理による画素形成用凹部(未硬化画素)内のインクの重合を行う前に、予備処理工程S112として、予備加熱工程を設けてもよい。予備加熱工程における加熱温度は特に制限は無いが、未硬化画素インクの熱重合が開始する温度をT℃とした場合に、T℃未満であり、未硬化画素インクの重合が起きない温度が好ましく、50〜100℃がより好ましく、60〜90℃がさらに好ましい。本予備加熱工程を入れることで、インクジェット法により付与されたインク中の有機溶剤の蒸発が促進され、カラーフィルタを効率的に作製することができる上に、インク残部の粘度が熱により低下するため、より高い流動性が得られ、高い平坦性の画素を有するカラーフィルタを得ることが可能になる。
【0131】
温度Tは、以下のようにして求めることができる。インクを加熱し、加熱によりインクの重合が開始し、インクのゲル化などが観察される温度をTとする。より具体的には、加熱前のインク粘度に対して、加熱後のインク粘度の上昇が5mPa・s以上の場合の加熱温度をTとする。
【0132】
<隔壁形成工程>
本発明のカラーフィルタの製造方法では、上述した画素形成工程S106において、図2(c)〜(e)に示すように、基板12上に形成された隔壁14により囲まれた凹部16に、インクジェット法により本発明のインクジェット用インク18の液滴を付与して画素20が形成される。
この隔壁14は、特に制限的ではなく、公知の隔壁を用いることができる。カラーフィルタを作製する場合は、ブラックマトリクスの機能を持った遮光性を有する隔壁であることが好ましい。
なお、隔壁形成工程S102においては、図2(b)に示すように、図2(a)に示す基板12上に、ブラックマトリクスの機能を持つ遮光性のある隔壁14を形成する。
【0133】
また、このような隔壁14は、インクジェット用インクの混色を防ぐために、撥インク処理を施してもよい。
このため、図1に示す例では、隔壁形成工程S102の後、撥液処理工程S104において、図2(b)に示す基板12上の隔壁14に、撥液処理、すなわち撥インク処理を施す。なお、このような撥インク処理としては、例えば、特開2007−187884号公報の段落番号[0086]〜[0087]に記載された撥インク処理方法が挙げられ、特に基板上に形成された隔壁にプラズマによる撥インク化処理を施す方法が好ましい。
【0134】
図2(e)に示すように、基板12上に隔壁14および画素20を形成して、カラーフィルタ10を作製した後には、耐久性向上の目的で、図2(f)に示すように、画素20および隔壁14の全面を覆うように保護層としてオーバーコート層22を形成することができる。オーバーコート層22は、R,G,Bなどの画素20および隔壁14を保護すると共に表面を平坦にすることができる。
【0135】
(カラーレジスト法)
本発明のカラーフィルタは、上述した硬化性組成物を用いて、カラーレジスト法により製造することもできる。以下にカラーレジスト法に関して詳述する。
本発明のカラーフィルタは、基板上に形成された隔壁により区画された凹部に硬化性組成物を塗布(例えば、回転塗布、流延塗布、ロール塗布)し、マスクを介してパターン露光し、現像液を用いて現像してパターン像を形成する工程を有する方法により製造することもできる。
【0136】
適用し得る露光光源は特に限定されないが、400nm以下の波長を有する光源が好ましい。例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯などが利用でき、特定の波長のみを使用する場合には光学フィルターを利用することもできる。
さらにはArFエキシマレーザ(波長193nm)、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、i線(波長365nm)などの紫外線が利用できる。コストと露光エネルギーの観点で特に好ましい露光光源は、紫外線であり、i線が挙げられる。
更に、形成されたパターンは、必要に応じて加熱および/または露光により、より硬化させる硬化工程を設けることができる。この際に使用される光または放射線としては、特にi線等の放射線が好ましく用いられる。
【0137】
隔壁により区画された凹部を有する基板は、上述の方法により作製することができる。
【0138】
本発明のカラーフィルタの製造方法に用いる現像液としては、本発明の硬化性組成物の現像除去しようとする領域(未硬化部)を溶解する一方、それ以外の領域(硬化部)を溶解しない組成よりなるものであればいかなるものも用いることができる。具体的には種々の有機溶剤の組み合わせやアルカリ性の水溶液を用いることができる。該有機溶剤としては、本発明の組成物を調製する際に使用される前述の溶剤が挙げられる。
【0139】
本発明のカラーフィルタは、さらに透明導電膜として、酸化インジウムスズ(ITO)層を有していてもよい。ITO層の形成方法としては、例えば、インライン低温スパッタ法や、インライン高温スパッタ法、バッチ式低温スパッタ法、バッチ式高温スパッタ法、真空蒸着法、およびプラズマCVD法などが挙げられ、特にカラーフィルタに対するダメージを少なくするため、低温スパッタ法が好ましく用いられる。
【0140】
染料として上述したジピロメテン系染料を含み、シアン系染料を含まない硬化性組成物を熱硬化させて得られる色画素(マゼンタ色画素)を備えるカラーフィルタとしては、該ジピロメテン染料系単色の画素の光吸収スペクトルの最大吸収ピークの半値幅が60nm以下(好ましくは45nm以下であり、より好ましくは25〜40nm)であるカラーフィルタが好ましい。上記範囲内であれば、より輝度が高く、色相が良好となる点で好ましい。
また、光吸収スペクトルのピーク(λmax)は、535〜580nmの範囲にあることが好ましく、545〜565nmの範囲にあることが好ましい。
【0141】
本発明のカラーフィルタは、例えば、液晶ディスプレイ、テレビ、パーソナルコンピュータ、液晶プロジェクタ、ゲーム機、携帯電話などの携帯端末、デジタルカメラ、カーナビなどの画像表示、特にカラー画像表示の用途に特に制限なく好適に適用できる。
また、本発明のカラーフィルタは、電子ペーパや有機EL素子デバイスなどの画像表示デバイス、特にカラー画像表示デバイスにも適用可能である。
【実施例】
【0142】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、機器、操作等は本発明の範囲から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りのない限り「%」および「部」は、「質量%」および「質量部」を表し、分子量とは重量平均分子量のことを示す。
【0143】
(隔壁形成用の濃色組成物の調製)
まず、表1に記載の量のK顔料分散物1、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpmで10分間攪拌した。さらに攪拌しながら、表1に記載の量のメチルエチルケトン、バインダー2、ハイドロキノンモノメチルエーテル、DPHA液、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビスジエトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン、界面活性剤1をはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150rpmにて30分間攪拌することによって濃色組成物K1を得た。なお、表1に記載の量は質量部であり、詳しくは以下の組成となっている。
【0144】
<K顔料分散物1>
・カーボンブラック(デグッサ社製 Nipex35) 13.1%
・分散剤(下記化合物1) 0.65%
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3.7万) 6.72%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.53%
【0145】
【化15】

【0146】
<バインダー2>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=78/22モル比
のランダム共重合物、分子量3.8万) 27%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73%
【0147】
<DPHA液>
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(重合禁止剤MEHQ 500ppm含有、日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD
DPHA) 76%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 24%
【0148】
<界面活性剤1>
・下記構造物1 30%
・メチルエチルケトン 70%
【0149】
【化16】

【0150】
【表1】

【0151】
(隔壁の形成)
無アルカリガラス基板を、UV洗浄装置で洗浄後、洗浄剤を用いてブラシ洗浄し、更に超純水で超音波洗浄した。基板を120℃で3分熱処理して表面状態を安定化させた。
基板を冷却し23℃に温調後、スリット状ノズルを有すガラス基板用コーター(エフ・エー・エス・アジア社製、商品名:MH−1600)にて、上述のように調製した濃色組成物K1を塗布した。引き続きVCD(真空乾燥装置、東京応化工業社製)で30秒間、溶媒の一部を乾燥して塗布層の流動性を無くした後、120℃で3分間プリベークして膜厚2.3μmの濃色組成物層K1を得た。
超高圧水銀灯を有すプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング株式会社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と濃色組成物層K1の間の距離を200μmに設定し、窒素雰囲気下、露光量300mJ/cm2で隔壁幅20μm、スペース幅100μmにパターン露光した。
【0152】
次に、純水をシャワーノズルにて噴霧して、濃色組成物層K1の表面を均一に湿らせた後、KOH系現像液(ノニオン界面活性剤含有、商品名:CDK−1、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製を100倍希釈したもの)を23℃で80秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像し、パターニング画像を得た。引き続き、超純水を、超高圧洗浄ノズルにて9.8MPaの圧力で噴射して残渣除去を行い、大気下にて露光量2500mJ/cm2にて基板の濃色組成物層K1が形成された面側からポスト露光を行って、オーブンにて240℃で50分加熱し、膜厚2.0μm、光学濃度4.0、100μm幅の開口部を有するストライプ状の隔壁を得た。
【0153】
(撥インク化プラズマ処理)
隔壁を形成した基板に、カソードカップリング方式平行平板型プラズマ処理装置を用いて、以下の条件にて撥インク化プラズマ処理を行った。
使用ガス :CF4
ガス流量 :80sccm
圧力 :40Pa
RFパワー:50W
処理時間 :30sec
【0154】
<青色(B)用インクおよびマゼンタインク>
下記の成分を表2および表3に記載の配合割合で混合し、1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過して青色用インク液およびマゼンタインクを調製した。
【0155】
青色(B)用インクおよびマゼンタインクの調製に用いた各材料の詳細を以下に示す。
(有機溶剤)
・シクロヘキサノン(和光純薬製)
・N−メチルピロリドン(和光純薬製)
・1,3−BGDA(ダイセル化学工業製:1,3−ブチレングリコールジアセテート)
(モノマー)
・DPHA(日本化薬社製(KAYARAD DPHA))
:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
・DPCA−60(日本化薬社製(KAYARAD DPCA−60))
:カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
【0156】
(界面活性剤)
・KF−353(信越シリコーン社製:ポリエーテル変性シリコーンオイル)
・F781−F(大日本インキ化学工業製:メガファックF781F)
(重合開始剤)
・IRGACURE 819(チバスペシャルティケミカルズ社製)
・IRGACURE OXE 02(チバスペシャルティケミカルズ社製)
(水素供与性化合物)
・1,2,4−ベンゼントリオール(−OH基、官能基数:3)
・テレフタル酸(−COOH基、官能基数:2)
・クエン酸(−COOH基、−OH基、官能基数:4)
・ピロメリト酸(−COOH基、官能基数:4)
・ピロメリト酸無水物(酸無水物基、官能基数:4)
・ピロメリト酸ジイミド(イミド基、官能基数:4)
・dATdAm:(+)−N,N‘−ジアリル−L−酒石酸ジアミド(−OH基、アミド基、官能基数:4)
(その他添加剤:比較例用)
・ピロメリト酸テトラメチル(4価カルボン酸エステル)
・安息香酸(1価カルボン酸)
・1,2,4−ブタントリオール(3価アルコール、室温液体)
【0157】
(染料)
・特定染料C−1 (上記一般式(3)で表される染料の例示化合物CA−19)
・特定染料C−2 (上記一般式(3)で表される染料の例示化合物CC−05)
・特定染料C−3 (上記一般式(3)で表される染料の例示化合物CB−34。なお、T−97およびT−141は上記で例示された官能基を表す。)
・特定染料M−1 (上記一般式(1−2)で表される染料の例示化合物I−21)
・特定染料M−2 (上記一般式(1−2)で表される染料の例示化合物III−58)
・特定染料M−3 (上記一般式(1−1)で表される染料の例示化合物I−2)
・特定染料M−4 (上記一般式(1−3)で表される染料の例示化合物Ia−35)
・特定染料M−5 (上記一般式(1−2)で表される染料の例示化合物III−1)
【0158】
【化17】

【0159】
【化18】

【0160】
【表2】

【0161】
【表3】

【0162】
<インクジェット法によるカラーフィルタの製造>
上記で調製されたB−1の硬化性組成物を用いて、上記で得られた基板上の隔壁で区分された領域内(凸部で囲まれた凹部)に、富士フイルムDimatix社製インクジェットプリンターDMP−2831を用い、吐出を行い、その後、100℃オーブン中で2分間加熱を行った。
次に、220℃のオーブン中で30分間静置することにより、単色のカラーフィルタを作製した。得られた色画素の膜厚は2.0μmであった。
なお、他のB−2〜B−12、B比較−1〜B比較−8、およびM−1〜M−12のそれぞれの硬化性組成物についても、同様の方法によりカラーフィルタを作製した。
【0163】
<カラーレジスト法によるカラーフィルタの製造>
上記で得られた凹部を有する基板上に、上記で調製されたB−1の硬化性組成物を塗布膜の乾燥膜厚が2.2μmになるように塗布し、硬化性の塗布膜を形成した。そして、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行った。次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を使用して365nmの波長でパターンが180μm×450μm四方のアイランドパターンマスクを通して2000mJ/cm2照射した。その後、照射された塗布膜が形成されている基板をスピン・シャワー現像機(DW−30型;(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置し、メチルエチルケトンを用いて23℃で60秒間パドル現像を行ない、単色のカラーフィルタを作製した。
なお、他のB−2〜B−12、B比較−1〜B比較−8、およびM−1〜M−12のそれぞれの硬化性組成物についても、同様の方法によりカラーフィルタを作製した。
【0164】
<粘度、表面張力の測定>
上記で調製された硬化性組成物の粘度、および表面張力を測定した。
硬化性組成物の粘度は、硬化性組成物を25℃に調温したまま、東機産業(株)製E型粘度計(RE−80L)を用いて以下の条件で測定した。結果を表2および表3に示す。
(測定条件)
使用ロータ:1° 34’×R24
測定時間 :2分間
測定温度 :25℃
【0165】
表面張力は、硬化性組成物を25℃に調温したまま、協和界面科学(株)製表面張力計(FACE SURFACE TENSIOMETER CBVB−A3)を用いて測定した。結果を表2および表3に示す。
【0166】
<色相>
上記インクジェット法で作製した単色のカラーフィルタの色相が、光源にC光源を用いた際、0.130<x<0.140及び0.090<y<0.120の範囲(範囲A)であれば◎、該範囲Aには含まれないが、0.125<x<0.145及び0.075<y<0.140の範囲であれば○、それ以外の範囲であれば×とした。色相の測定は、UV−560(日本分光社製)を用いた。結果を以下の表4に示す。
【0167】
<輝度>
上記インクジェット法で作製した単色のカラーフィルタの色相が、光源にC光源を用いた際、0.125<x<0.145及び0.075<y<0.140の範囲であった場合、その時の輝度Yの値が12以上を◎、12未満10以上を○、10未満7以上を△、7未満を×とした。輝度の測定は、UV−560(日本分光社製)を用いた。結果を以下の表4に示す。
【0168】
<耐熱性評価>
上記インクジェット法で作製した単色のカラーフィルタを、220℃または235℃に加熱したオーブン内に入れ、1時間放置した後、色相を測定した。色相の測定は、UV−560(日本分光社製)を用い、評価前後のΔEabが3未満を◎とした。ΔEabが3以上7未満を○と、ΔEabが7以上15未満を△と、ΔEabが15以上を×とした。結果を以下の表4に示す。
なお、ΔEabは、CIE1976(L*,a*,b*)空間表色系による以下の色差公式から求められる値である(日本色彩学会編 新編色彩科学ハンドブック(昭和60年)p.266)。
ΔEab={(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)21/2
【0169】
<耐薬品性評価>
上記インクジェット法で作製した単色のカラーフィルタを、評価を行う薬品(N―メチルピロリドン、エタノール)中に20分間浸し、その前後の色相を測定した。色相の測定は、UV−560(日本分光社製)を用い、ΔEabが3未満を◎とした。ΔEabが3以上7未満を○と、ΔEabが7以上15未満を△と、ΔEabが15以上を×とした。結果を以下の表4に示す。
【0170】
<半値幅>
上記インクジェット法で作製したマゼンタインクを用いたカラーフィルタの吸収スペクトルは、紫外可視分光光度計(日本分光(株)製、商品名「V−560」)を用いて測定した。測定された吸収スペクトルより、最大吸収ピークの半値幅を求めた。半値幅が45nm以下の場合を◎、45nm超50nm以下の場合を○、50nm超60nm以下の場合を△、60nmを超える場合を×とした。結果を表5に示す。
【0171】
以下の表4および表5中の評価結果において、実用上の使用の観点から、×が含まれていないことが必要である。
【0172】
【表4】

【0173】
【表5】

【0174】
表4および5から分かるように、本発明の硬化性組成物を用いて、熱硬化プロセスにより得られた色画素は、色相および輝度などの光学特性に優れ、かつ、耐熱性および耐薬品性にも優れていた。なお、カラーレジスト法で作製した単色のカラーフィルタにおいても、インクジェット法で作製された単色のカラーフィルタと同様の「色相」「輝度」「耐熱性」「耐薬品性」の評価が得られた。
なかでも、B−5、B−8およびB−9との比較より、一般式(1−2)で表される染料を使用することにより、より優れた特性を示す色画素が得られることが確認された。
また、官能基数が2であるテレフタル酸を用いたB−2と、官能基数が3である1,2,4−ベンゼントリオールを用いたB−1とを比較すると、官能数が多い水素供与性化合物を使用したB−1においてより優れた効果が得られることが分かった。
【0175】
一方、水素供与性化合物を含まないB比較−1〜B比較−6においては、上記のいずれかの項目において「×」が含まれており、所望の特性を有する色画素を得ることはできなかった。
より具体的には、B比較−3に示すように、ピロメリト酸と構造は類似するが、所定の官能基を有していないピロメリト酸テトラメチルを使用しても、得られた色画素は色相・耐熱性に劣る結果となった。また、B比較−4に示すように、1つのカルボキシル基を有する安息香酸を使用しても、得られた色画素は輝度・耐熱性に劣る結果となった。さらに、B比較−5に示すように、25℃、1気圧条件下において液体である1,2,4−ブタントリオールを使用しても、得られた色画素は色相・輝度に劣る結果となった。
【0176】
B比較−6に示す態様は、先願である特開2008−292970号に具体的に例示されている実施例31に該当する。このB比較−6においては、色相・輝度に劣る結果が得られた。また、より厳しい耐熱条件(235℃)においては、十分な耐熱性を示すことができなかった。
一方、B比較−6に上述した水素供与性化合物を加えた本願発明の組成物においては、色相・輝度・耐熱性の各項目が改良された結果が得られた。
【0177】
B比較−7に示すように、水素供与性化合物の含有量が所定範囲より少ない場合は、輝度および耐熱性に劣る結果となった。また、B比較−8に示すように、水素供与性化合物の含有量が所定範囲より多い場合は、色相、輝度、耐熱性および耐薬品性に劣る結果となった。
【符号の説明】
【0178】
10 カラーフィルタ
12 基板
14 隔壁
16 凹部
18 インク
18a 未硬化画素インク
20 画素
22 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1−1)で表される染料、一般式(1−2)で表される染料、および一般式(1−3)で表される染料からなる群から選ばれる少なくとも1種の染料と、重合性モノマーと、有機溶剤と、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミド基、スルホン酸基、および、ホスホン酸基からなる群から選ばれる官能基を少なくとも2つ有し、25℃、1気圧下において固体であり、分子量が3000以下である水素供与性化合物(なお、2つカルボキシル基が結合して、酸無水物基を形成していてもよい。また、カルボキシル基とアミド基とが結合して、イミド基を形成してもよい。)とを含有し、
前記水素供与性化合物の含有量が0.1〜12質量%である硬化性組成物。
【化1】

(一般式(1−1)中、R11〜R16はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。R17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Maは、金属原子または金属化合物を表す。X1は、Maに結合可能な基を表し、X2は、Maの電荷を中和する為に必要な基を表す。X1とX2は、互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよい。)
【化2】

(一般式(1−2)中、R12〜R15は、それぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。R17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Maは、金属原子または金属化合物を表す。X3は、NR(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を表し、X4は、NRa(Raは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。)、酸素原子、または硫黄原子を表し、Y1は、NRc(Rcは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、または炭素原子を表し、Y2は、窒素原子、または炭素原子を表す。R18およびR19は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。R18とY1は、互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよく、R19とY2は、互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよい。X5はMaと結合可能な基を表し、aは0、1または2を表す。)
【化3】

(一般式(1−3)中、R11〜R16はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。R17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Maは、金属原子または金属化合物を表す。)
【請求項2】
前記水素供与性化合物の質量(W1)と前記染料の質量(W2)との質量比(W2/W1)が、0.05〜10である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記水素供与性化合物の分子量と、前記官能基数との比(分子量/官能基数)が、36以上である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
25℃における粘度が30mPa・s以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
25℃における表面張力が20〜40mN/mである、請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項6】
さらに、一般式(3)で表される染料を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性組成物。
【化4】

(一般式(3)中、R1は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。Lは、それぞれ独立に、脂肪族または芳香族の連結基を表す。Z1は2つの炭素原子と共に6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、4つのZ1は同一であっても異なっていてもよい。Mは2個の水素原子、2価の金属原子、2価の金属酸化物、2価の金属水酸化物または2価の金属塩化物を表す。mはそれぞれ独立に1または2を表し、nはそれぞれ独立に0または1を表す。pはそれぞれ独立に1〜5の整数を表す。r1、r2、r3及びr4はそれぞれ独立に0または1を表し、r1+r2+r3+r4≧1を満たす。)
【請求項7】
基板上に形成された隔壁により区画された凹部に、請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性組成物をインクジェット法により付与する描画工程と、
凹部に吐出された前記硬化性組成物を加熱する硬化工程とを備えるカラーフィルタの製造方法。
【請求項8】
基板上に形成された隔壁により区画された凹部に、請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性組成物を塗布し、マスクを介してパターン露光し、現像してパターン像を形成する工程を有するカラーフィルタの製造方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載のカラーフィルタの製造方法により製造されるカラーフィルタ。
【請求項10】
請求項9に記載のカラーフィルタを備える液晶ディスプレイ。
【請求項11】
請求項9に記載のカラーフィルタを備える画像表示デバイス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−148950(P2011−148950A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13289(P2010−13289)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】