説明

硬化性組成物

本発明は、(i) 約25℃以下のTgを有する少なくとも1種のヒドロキシ官能性アクリルポリマー;(ii) 0℃以下のTgを有する少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエステル;(iii) ≧4の平均官能価を有する少なくとも1種のポリイソシアネート;(iv) イソシアネート/ヒドロキシル反応を促進するための、スズ化合物のような金属触媒;および、(v) 任意構成成分としてのポットライフ延長量のプロピオン酸を含む混合物の溶媒溶液を含む硬化性組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、2008年4月1日に出願された同時係属中の米国仮出願第61/041,335号の権利を主張する;該仮出願は、その全体を参考として本明細書に合体させる。
【発明の概要】
【0002】
本発明は、以下、
(i) 約25℃以下のTgを有する少なくとも1種のヒドロキシ官能性アクリルポリマー、
(ii) 0℃以下のTgを有する少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエステル、
(iii) ≧4の平均官能価を有する少なくとも1種のポリイソシアネート、
(iv) イソシアネート/ヒドロキシル反応を促進するための、スズ化合物のような金属触媒、および
(v) 任意構成成分としての、ポットライフ延長量のプロピオン酸、
を含む混合物の溶媒溶液を含む硬化性組成物に関する。
【0003】
本発明の硬化性組成物は、コーティングとして特に有用であり、典型的には、プライマー、トップコートとして或いはクリアコート/ベースコート組成物中のクリアコートおよび/またはベースコートとして使用し得、特に、スプレー塗布において有用である。また、本発明の組成物は、接着剤、エラストマーおよびプラスチックとしても有用であり得る。
【0004】
コーティングまたは接着剤として使用する場合、本発明の硬化性組成物は、約5〜約80質量%、好ましくは10〜約40質量%の不活性溶媒と一緒に使用する。1つの有用な実施態様においては、上記硬化性組成物は、#2ザーンカップ(Zahn cup)により室温にて測定し且つ0.42g/cm3 (3.5#/ガロン)のVOCレベルで配合したときに、約25秒未満、例えば、約20秒未満のスプレー可能な粘度を有する。各成分を混合するときに反応性である上記硬化性組成物を多成分系として提供することは、好都合なことである。一般に、上記活性水素含有成分(例えば、上記アクリルポリオールおよびポリエステル)と上記ポリイソシアネート成分は、別々のパッケージ内で保存し、使用直前に混合する。 1つの有用な実施態様においては、1つのパッケージ内で一緒に混合するときは、上記活性水素含有成分は、約50質量%〜約80質量%、例えば、約60質量%〜約70質量%のヒドロキシ官能性アクリル樹脂を含む。さらに、活性水素成分は、少なくとも約20質量%、例えば、約30質量%〜約50質量%、さらに例えば、約30質量%〜約40質量%のヒドロキシ官能性ポリエステルを含み得る。ある種の実施態様においては、上記混合物のポットライフは、プロピオン酸を添加することによって、最終硬化製品の硬化または他の特性に悪影響を及ぼすことなく延長し得る。金属触媒は、いずれかの成分中または希釈溶媒中に前以って混入し得る。1つの実施態様においては、プロピオン酸は、上記ポリイソシアネート成分よりはむしろ上記活性水素含有成分または希釈溶媒に添加し得る。
以下、本発明の各成分をより詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
1.ヒドロキシ官能性アクリルポリマー
多くの用途、特に、最少量の溶媒を必要とする用途においては、本発明において有用なヒドロキシ官能性アクリルポリマーは、分子当り平均で少なくとも2個の活性水素基および約5,000未満、例えば、約3,000未満の数平均分子量を有する。
【0006】
上記ヒドロキシ官能性アクリルポリマーは、当該技術において周知であるようなフリーラジカル重合法により好都合に調製し得る。上記アクリルポリマーは、典型的には、1種以上のモノマーの付加重合によって調製し得る。モノマーの少なくとも1種は、反応性ヒドロキシル基を含有するか、或いは、反応性ヒドロキシル基を生成するように反応させ得る。典型的なヒドロキシ官能性モノマーとしては、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート、2‐ヒドロキシプロピルアクリレート、4‐ヒドロキシブチルメタクリレート、2‐ヒドロキシプロピルメタクリレート、3‐ヒドロキシブチルアクリレート、4‐ヒドロキシペンチルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルエタクリレート、3‐ヒドロキシブチルメタクリレート、2‐ヒドロキシエチルクロロアクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、テトラエチレングリコールアクリレート、パラ‐ビニルベンジルアルコール等がある。
【0007】
典型的には、上記ヒドロキシ官能性モノマーは、下記のようなエチレン系不飽和を有する1種以上のモノマーと共重合させる:
(i) アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、チグリン酸または他の不飽和酸のエステル類:例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸アミル、アクリル酸3,5,5‐トリメチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸イソボルニル、チグリン酸エチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等;
(ii) ビニル化合物、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、安息香酸ビニル、m‐クロロ安息香酸ビニル、p‐メトキシ安息香酸ビニル、アルファ‐クロロ酢酸ビニル、ビニルトルエン、塩化ビニル等;
(iii) スチレン系物質、例えば、スチレン、アルファ‐メチルスチレン、アルファ‐エチルスチレン、アルファ‐ブロモスチレン、2,6‐ジクロロスチレン等;
(iv) アリル化合物、例えば、塩化アリル、酢酸アリル、安息香酸アリル、メタクリル酸アリル等;
(v) 他の共重合性不飽和モノマー類、例えば、エチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイン酸ジメチル、酢酸イソプロペニル、イソ酪酸イソプロペニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、1,3‐ブタジエンのようなジエン類、および2‐(N‐エチルパーフルオロオクテンスルホンアミド)エチル(メタ)アクリレートのようなハロゲン化物質。
【0008】
上記ポリマーは、通常のフリーラジカル付加重合法によって都合良く調製する。多くの場合、重合は、アゾビス(イソブチロニトリル)、クメンヒドロペルオキシド、過安息香酸t‐ブチル等のような、フリーラジカルを発生させる当該技術において既知の通常の開始剤によって開始させる。典型的には、モノマーを、開始剤の存在下に、約35℃〜約200℃、特に75℃〜150℃範囲の温度に加熱して重合を実施する。ポリマーの分子量は、必要に応じて、モノマーの選定、反応温度および時間、および/または当該技術において周知である連鎖移動剤の使用によって調整し得る。
1つの有用な実施態様においては、モノマーを、得られるヒドロキシ官能性アクリルポリマーが室温以下のTgを有するように選定する。例えば、上記ヒドロキシ官能性アクリルポリマーは、約25℃以下のTgを有し得る。
【0009】
2.ヒドロキシ官能性ポリエステル
有用なヒドロキシ官能性ポリエステルとしては、約3,000未満、例えば、約200〜約2000の数平均分子量を有するポリエステルがあり得る。
【0010】
ポリエステル樹脂の製造方法は周知である。典型的には、ポリオール成分と酸および/または無水物成分とを必要に応じての触媒と共に一緒に加熱し、通常は、副生成物の水を除去して反応を完了に導く。一般に、ポリオール成分は、少なくとも約2の平均官能価を有する。ポリオール成分は、単官能性、二官能性、三官能性およびより高い官能性のアルコールを含有し得る。1つの実施態様においては、ジオールを使用し得る。もう1つの実施態様においては、上記ポリエステルのある種の枝分れを望む場合、より高い官能価のアルコールを使用し得る。そのようなアルコールの具体的な例としては、限定なしで、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびネオペンチルグリコールのようなアルキレングリコールおよびポリアルキレングリコール類;1,4‐ブタンジオール、1,6‐ヘキサンジオール、1,4‐シクロヘキサン ジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、2,2,4‐トリメチル‐1,3‐ペンタンジオール、水素化ビスフェノールAおよびヒドロキシアルキル化ビスフェノール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、および飽和または不飽和ポリオール類がある。典型的なポリオール希釈剤としては、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4‐トリメチル 1,3‐ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2‐プロパンジオール、1,4‐ブタンジオール、1,3‐ブタンジオール、2,3‐ブタンジオール、1,5‐ペンタンジオール、1,6‐ヘキサンジオール、2,2‐ジメチル‐1,3‐プロパンジオール、1,4‐シクロヘキサンジメタノール、1,2‐シクロヘキサンジメタノール、1,3‐シクロヘキサンジメタノール、1,4‐ビス(2‐ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ノルボルニレングリコール、1,4‐ベンゼンジメタノール、1,4‐ベンゼンジエタノール、2,4‐ジメチル‐2‐エチレンヘキサン‐1,3‐ジオール、2‐ブタン‐1,4‐ジオールのようなジオール類;および、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールヘキサン、トリエチロールプロパン、1,2,4‐ブタントリオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールのようなポリオール類等がある。
【0011】
酸および/または無水物成分は、平均で少なくとも2個のカルボン酸基および/またはこれらカルボン酸の無水物を有する化合物を含み得る。ある実施態様においては、ジカルボン酸またはジカルボン酸の無水物を使用し得る。しかしながら、より高い官能性の酸および無水物も、ポリエステルのある種の枝分れを望む場合には使用し得る。適切なポリカルボン酸または無水物化合物としては、限定なしで、約3〜約20個の炭素原子を有するポリカルボン酸または無水物がある。適切な化合物の具体的な例としては、限定なしで、フタル酸イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ピロメリット酸、コハク酸、アゼライン酸、アジピン酸、1,4‐シクロヘキサンジカルボン酸、ドデカン‐1,12‐ジカルボン酸、クエン酸、トリメリット酸およびこれらの無水物がある。
【0012】
1つの有用な実施態様においては、上記ヒドロキシ官能性ポリエステルは、多官能性アルコールによって開始させるラクトンまたはポリカプロラクトンの開環重合によって調製したポリカプロラクトンポリエステルポリオールを含み得る。
例えば、トリメチロールプロパン(TMP)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)またはネオペンチルグリコール (NPG)のような多官能性アルコールによって開始させるカプロラクトンの開環重合。TMPによって開始させるカプロラクトンの開環重合は、三官能性カプロラクトンポリエステルポリオールを形成する。EG、DEGまたはNPGによって開始させるカプロラクトンの開環重合は、二官能性カプロラクトンポリエステルポリオールを形成する。
商業的に入手可能なポリカプロラクトンポリエステルポリオールの例としては、Dow社から入手し得るTONE 310およびTONE 305、Arch Chemical社から入手し得るPoly‐T 309およびPoly‐T 305、並びにPerstop社 (前のSolvay社)から入手し得るCAPA 3091がある。
【0013】
3.ポリイソシアネート化合物
本発明の組成物において有用なポリイソシアネートは、分子当り平均で少なくとも約4個のイソシアネート基を有する。これらのポリイソシアネート架橋剤は、少なくとも2個のジイソシアネートから構成され、且つウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造を有する単純な脂肪族、脂環式、アルアリファティック(araliphatic)および/または芳香族ジイソシアネートを変性することによって調製し得る。
【0014】
そのようなポリイソシアネートを調製するための適切なジイソシアネートは、ホスゲン化法によって或いは例えば熱ウレタン開裂のような無ホスゲン法によって得ることができ、脂肪族、脂環式、アルアリファティックおよび/または芳香族結合イソシアネート基を有する140〜400g/モルの分子量範囲の任意の所望ジイソシアネート、例えば、1,4‐ジイソシアナトブタン、1,6‐ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2‐メチル‐1,5‐ジイソシアナトペンタン、1,5‐ジイソシアナト‐2,2‐ジメチルペンタン、2,2,4‐および2,4,4‐トリメチル‐1,6‐ジイソシアナトヘキサン、1,10‐ジイソシアナトデカン、1,3‐および1,4‐ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3‐および1,4‐ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1‐イソシアナト‐3,3,5‐トリメチル‐5‐イソシアナト‐メチルシクロヘキサン(イソフォロンジイソシアネート、IPDI)、4,4'‐ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、1‐イソシアナト‐1‐メチル‐4(3)‐イソシアナトメチルシクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン、1,3‐および1,4‐ビス(2‐イソシアナトプロピ‐2‐イル)ベンゼン(TMXDI)、2,4‐および2,6‐ジイソシアナトトルエン(TDI)、2,4'‐および4,4'‐ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、1,5‐ジイソシアナトナフタレン、またはそのようなジイソシアネート類の任意の所望する混合物である。
【0015】
有用なポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物は、脂肪族および/または脂環式結合イソシアネート基を専ら含有し得る。本発明の1つの実施態様においては、約4.0または約4.0よりも高い平均官能価を有するポリイソシアネート混合物を含有するが、3、4、5、6および7の官能価を有するイソシアネートを含むポリイソシアネート混合物を使用し得る。
1つの有用な実施態様においては、上記架橋性成分は、HDIをベースとするポリイソシアネートから選定するが、IPDIおよび/または4,4’‐ジイソシアナト‐ジシクロヘキサメタンをベースとするポリイソシアネートも含み得る。
【0016】
イソシアネート対活性水素の当量比は、本発明の実施においては広く変動し得る。上記ポリイソシアネートは、典型的には、上記アクリル樹脂とポリエステルからの活性水素の各当量に対して約0.3〜約2.0、例えば、約0.9〜約1.3、さらに例えば、約1〜約1.1当量のイソシアネートを与える量で存在する。
【0017】
本発明の硬化性組成物は、およそ室温から約176.67℃(350°F)までの範囲の温度で硬化させ得る。1つの有用な実施態様においては、本発明の硬化性組成物から得られるコーティング組成物の最終架橋フィルムは、約15〜約40℃のTgを有する。コーティングとして使用する場合、上記硬化性組成物は、クリアコーティングとして使用することができ、或いは、上記硬化性組成物は、当該技術において周知であるような顔料を含有し得る。典型的な不透明顔料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン等のような白色顔;および、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー等のような有機または無機有彩顔料がある。また、コーティングは、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、タルク等のような体質顔料も含有し得る。
【0018】
また、コーティングは、流動剤、触媒、溶媒、紫外線吸収剤等のような他の添加剤も含有し得る。上記のポリイソシアネートと活性水素含有物質間の反応のための典型的な金属触媒としては、ジブチルスズジラウレート、オクチル酸亜鉛およびナフテン酸銅のようなスズ、亜鉛および銅物質がある。ジブチルスズジラウレートのような有機金属スズ化合物は、本発明の実施において有用である。
また、本発明のコーティング組成物は、必要に応じて、シクロヘキサンジメタノールを上記硬化性組成物の総固形分の約10質量%までの量で含み得る。
本発明のコーティングは、典型的には、金属、プラスチック、木材、ガラス、合成繊維等のような任意の物質に、はけ塗り、ディッピング、ロールコーティーング、フローコーティーング、スプレー塗装またはコーティング工業において一般的に使用される他の方法によって適用し得る。必要に応じて、基体は、本発明のコーティングを適用する前にプライマー処理し得る。
【0019】
本明細書において説明するような上記硬化性組成物へのプロピオン酸の添加の利点は、本出願の譲受人に譲渡されており、また、本明細書に参考として合体させる米国特許第7,279,525号においてより詳細に記載されている。
【0020】
本発明の硬化性組成物の1つの好ましい用途は、クリアコート/ベースコート配合物におけるクリアコートおよび/またはベースコートとしてのその使用に関連する。低VOCクリアコートは、本発明の特に有用な用途である。
クリアコート/ベースコート系は、特に自動車産業において周知であり、金属顔料を含有し得る着色ベースコートを基体に適用して後でクリアコートを適用するフィルムの形成を可能にするのに特に有用である。ベースコート組成物は、本発明の反応性組成物のようなコーティーング組成物において有用であることが知られている任意のポリマーを含み得る。
【0021】
1つの有用なポリマーベースコートは、アクリル付加ポリマー、特に、アクリル酸またはメタクリル酸の1種以上のアルキルエステルの、必要に応じて1種以上の他のエチレン系不飽和モノマーと一緒のポリマーまたはコポリマーを含む。これらのポリマーは、熱可塑性タイプか或いは架橋させ得るヒドロキシルまたはアミンまたは他の反応性官能基を含有する熱硬化性の架橋性タイプのいずれかであり得る。いずれかのタイプのポリマーにおいても適切なアクリルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン、塩化ビニル等がある。ポリマーが架橋タイプであることを求められる場合は、既に述べたモノマー以外に使用し得る適切な官能性モノマーとしては、アクリル酸またはメタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレート、ターシャリーブチルアミノエチルメタクリレート等がある。また、ベースコート組成物は、そのような場合、架橋剤、例えば、ポリイソシアネート;ポリエポキシド;または、ホルムアルデヒドのようなアルデヒドの尿素、メラミンまたはベンゾグアナミンのような窒素化合物との縮合物またはそのような縮合物の低級アルキルエステルのような窒素樹脂も含有し得る。ベースコート組成物において有用な他のポリマーとしては、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のような無機または有機酸のビニルエステルのコポリマーのようなビニルコポリマーがあり、これらのコポリマーは、必要に応じて、部分的に加水分解してビニルアルコール単位を導入することができる。
【0022】
ベースコートの製造において有用な他のポリマーとしては、多価アルコールとポリカルボン酸の、本明細書の他の箇所で説明しているような天然乾性油脂肪酸を含ませてのまたは含ませないでの縮合によって既知の方法で調製することのできるアルキッド樹脂またはポリエステルがある。これらのポリエステルまたはアルキッドは、必要に応じての上述したような適切な架橋剤との反応において利用し得る一定割合の遊離のヒドロキシルおよび/または基を含有し得る。
必要に応じて、ベースコート組成物は、ベースコートの乾燥または粘度特性を改変するための少量のセルロースエステルを含有し得る。
【0023】
典型的には、ベースコートは、コーティング組成物において通常使用する顔料を含み、基体(前以ってプライマー処理をしていてもまたはしていなくてもよい)に適用した後に、ベースコートに十分な時間を割当てて、クリアコートの塗付中に持ち上がらないポリマーフィルムを形成させる。ベースコートは、加熱するか或いは単純に風乾させてフィルムを形成させ得る。一般に、ベースコートは、クリアコートの適用前に約1〜20分間乾燥させる。その後、クリアコートをベースコート表面に適用し、その系は、室温で乾燥させることも或いは、必要に応じて、コーティーングした基体を約176.7℃(350°F)までの典型的な範囲の温度でベーキングするによって強制乾燥させることもできる。
【0024】
典型的には、クリアコートは、ヒンダードフェノールまたはヒンダードアミンのような紫外線吸収剤を、当該技術において既知であるように、ビヒクル固形分の約6質量%までの範囲の量で含有し得る。クリアコートは、当該技術において既知の任意の適用方法によって適用し得るが、好ましくは、スプレー塗装する。必要に応じて、ベースコートおよび/またはクリアコートの複数層を適用し得る。典型的には、ベースコートとクリアコートは、双方とも、各々、約5.08μm (0.2ミル)〜約152.4μm (6ミル)、特に、約12.7μm (0.5ミル)〜約76.2μm (3.0ミル)の乾燥フィルム厚を得るように適用する。
【0025】
必要に応じて、本明細書において教示する新規な反応性組成物は、ベースコートとして使用することができ、その場合、クリアコートも本明細書において教示する新規な反応性コーティングを含み、或いは、ベースコート配合物として有用であると本明細書において教示するポリマーはクリアコートとしても使用することができる。
クリアコートとして使用する場合、本発明の反応性組成物は、少なくとも約25N/mm2、例えば、少なくとも約30N/mm2 (Helmut Fischer GmbH & Co社製のFischerscope H100装置を使用して測定した普遍的硬度単位)の微小硬度を有するように乾燥させることが望ましい。
【0026】
以下の実施例は、本発明のより完全な理解のために、特定の実施態様および有利な実施を具体的に説明するために選定している。特に断らない限り、“部”は質量部を意味し、“パーセント”は質量パーセントである。
【実施例1】
【0027】
典型的なアクリルポリマーを、芳香族ナフサおよびN‐ブチルアセテートの存在下での下記の原材料のフリーラジカル重合反応によって調製して、70%のNVMで約8.75の質量/ガロンを有するポリマーを製造した:

【実施例2】
【0028】
3通りのクリアコートを下記の原材料を混合することによって調製した:


【0029】
EコーティングCRSパネルを、黒色ベースコート(Sherwin‐Williams ULTRAベースコート)でコーティングし、30分間室温でフラッシングし、その後、コート間で2分間のフラッシング時間による2回のコーティング法を使用しクリアコーティングした。室温で2時間のフラッシング時間後に、各コーティングを60.0℃(140°F)で15.5時間硬化させた。コーティングの微小硬度をFischerscope H100装置を使用し測定した。クリアコートAは19.5N/mm2の微小硬度を有し、クリアコートBは21.4N/mm2の微小硬度を有し、クリアコートCは30.5N/mm2の微小硬度を有していた。
【0030】
さらに、各クリアコートの引掻き抵抗性を、3M218Q湿式または乾式研磨シート (グレード 9MIC)を有する10サイクルのクロックメーターを使用して、各コーティング表面を引掻き、その後、BYK‐Gardner社のTri‐Glossメーターを20°で使用して光沢を測定することによって判定した(結果は光沢単位である):

表1

【0031】
一般に、何ら特定の理論に限定するものではないが、高い微小硬度を有するコーティングほど、低い引掻き抵抗性を示すと信じられている。上記表が示しているように、本発明は、より軟質のコーティングに対する引掻き後の光沢保持の匹敵し得るレベルを保持している。
【0032】
本発明をその特定の実施態様に関連して明示し説明してきたが、それらの実施態様は、限定よりはむしろ説明目的であり、本明細書において説明した特定の実施態様の他の変形および修正は、当業者にとっては、本発明の意図する精神および範囲内おいて全て明白であろう。従って、本発明は、範囲および趣旨において、本明細書において説明した特定の実施態様に限定されるものではなく、また、当該技術における進展が本発明によって向上した範囲と矛盾する如何なる形においても限定されない。
本明細書において引用した全ての出願、特許および刊行物の開示全体を、参考として本明細書に合体させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物であって、以下、
(i) 約25℃以下のTgを有する少なくとも1種のヒドロキシ官能性アクリルポリマー、
(ii) 0℃以下のTgを有する少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエステル、
(iii) ≧4の平均イソシアネート官能価を有する少なくとも1種のポリイソシアネート、
(iv) イソシアネート/ヒドロキシル反応を促進するための金属触媒、および
(v) プロピオン酸、
を含む混合物の溶媒溶液を含むことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
前記組成物が、#2ザーンカップにより測定し且つ0.42g/cm3 (3.5ポンド/ガロン)のVOCレベルで配合したときに、約25秒未満の粘度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ヒドロキシ官能性ポリエステルが、ポリカプロラクトンポリエステルポリオールである、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種のポリイソシアネートが、ポリイソシアネートの混合物を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリイソシアネートの混合物が、3、4、5、6および7のイソシアネート官能価を有するポリイソシアネートを含む、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリイソシアネート混合物が、4.1の平均官能価を有する、請求項4記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリイソシアネートが、前記ヒドロキシ官能性アクリルポリマーおよび前記ヒドロキシ官能性ポリエステルからの各当量の活性水素に対して約0.3〜約2.0当量のイソシアネートを与える量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリイソシアネートが、前記ヒドロキシ官能性アクリルポリマーおよび前記ヒドロキシ官能性ポリエステルからの各当量の活性水素に対して約0.7〜約1.3当量のイソシアネートを与える量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記金属触媒が、スズ化合物である、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
硬化性組成物であって、(ビヒクル固形分の質量固形分基準で)以下、
(i) 30%〜70%の、約5,000未満、好ましくは3,000未満の数平均分子量を有するヒドロキシ官能性アクリルポリマー、
(ii) 20%〜50%質量部のヒドロキシ官能性ポリエステルポリオール、
(iii) 10〜55%のポリイソシアネート、
(iv) 少なくとも0.01%のスズ触媒化合物、および
(v) 0.1〜約3.0%のプロピオン酸、
を含むことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項12】
前記組成物が、#2ザーンカップにより測定し且つ0.42g/cm3 (3.5ポンド/ガロン)のVOCレベルで配合したときに、約25秒未満の粘度を有する、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
多層自動車用コーティング組成物であって、以下、
(i)着色ベースコート、および
(ii)前記ベースコート上に適用されるクリアコートであって、
(a) 約25℃以下のTgを有する少なくとも1種のヒドロキシ官能性アクリルポリマー、
(b) 0℃以下のTgを有する少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエステル、
(c) ≧4の平均イソシアネート官能価を有する少なくとも1種のポリイソシアネート、
(d) イソシアネート/ヒドロキシル反応を促進するための金属触媒、および、
(e) プロピオン酸、
を含む混合物の溶媒溶液を含む硬化性組成物を含むクリアコート、
を含むことを特徴とする多層自動車用コーティング組成物。
【請求項14】
前記ヒドロキシ官能性ポリエステルが、ポリカプロラクトンポリエステルポリオールである、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1種のポリイソシアネートが、ポリイソシアネートの混合物を含む、請求項13記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリイソシアネートの混合物が、3、4、5、6および7価のイソシアネート官能価を有するポリイソシアネートを含む、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリイソシアネート混合物が、4.1の平均官能価を有する、請求項15記載の組成物。
【請求項18】
前記ポリイソシアネートが、前記ヒドロキシ官能性アクリルポリマーおよび前記ヒドロキシ官能性ポリエステルからの各当量の活性水素に対して約0.3〜約2.0当量のイソシアネートを与える量で存在する、請求項13記載の組成物。
【請求項19】
前記ポリイソシアネートが、前記ヒドロキシ官能性アクリルポリマーおよび前記ヒドロキシ官能性ポリエステルからの各当量の活性水素に対し約0.7〜約1.3当量のイソシアネートを与える量で存在する、請求項13記載の組成物。

【公表番号】特表2011−516660(P2011−516660A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502937(P2011−502937)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/001832
【国際公開番号】WO2009/123684
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(591003150)ザ シャーウィン−ウィリアムズ カンパニー (7)
【Fターム(参考)】