説明

硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物、及び硬質ポリウレタンフォーム

【課題】リン酸エステル系難燃剤の含有量を低減した硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物、及び該ポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合、発泡させて得られる、難燃性に優れた硬質ポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】リン酸エステル系難燃剤の含有量が2重量部未満である硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物において、ポリオール化合物として、ポリオール化合物の全量を100重量部とした場合に、芳香族系ポリエステルポリオールを50〜80重量部含有するものであり、水溶性有機溶剤として、分子量が100〜400のエチレングリコール誘導体、プロピレンカーボネート、ε―カプロラクトン、及びγ―ブチロラクトンからなる群より選択される少なくとも1種を3〜15重量部含有するものであり、触媒として三量化触媒を含有するものであり、発泡剤としてペンタン類及び水を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール化合物、水溶性有機溶剤、触媒及び発泡剤を含有し、かつ難燃性に優れた硬質ポリウレタンフォームの原料となる硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物(以下、「ポリオール組成物」という)、及び該ポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合、発泡させて得られる硬質ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームは、断熱材、軽量構造材等として周知である。かかる硬質ポリウレタンフォームは、ポリオール化合物、発泡剤を必須成分として含有するポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合し、発泡、硬化させることにより形成される。発泡剤としては、古くはCFC−11等のフロン化合物が使用されていたが、CFC化合物はオゾン層の破壊を引き起こすことから禁止され、HCFC−141bに切り換えられ、さらに2004年からはオゾン層破壊係数がゼロであるHFC化合物への切り換えが行われている。
【0003】
HFC化合物等のハロゲン化炭化水素化合物に代えて、発泡剤として水を使用した硬質ポリウレタンフォームも公知であるが、かかる硬質ポリウレタンフォームは断熱性能が十分ではない。
【0004】
HFC化合物や水に代わる硬質ポリウレタンフォーム用発泡剤としてペンタン類が公知である。例えば、下記特許文献1〜3では、芳香族系ポリエステルポリオールを含有するポリオール化合物、及びペンタン類と水とを併用した発泡剤を含有するポリオール組成物と、ポリイソシアネート成分とを混合、発泡させることにより、硬質ポリウレタンフォームの難燃性を向上することが記載されている。特に、下記特許文献1では、リン酸エステル系難燃剤を含有するポリオール組成物を使用することにより、難燃性に優れた硬質ポリウレタンフォームを製造することが記載されている。
【0005】
一方、近年盛んに議論される環境問題を考慮した場合、硬質ポリウレタンフォームを製造する際、ハロゲン及び/又はリン含有難燃剤の使用は好ましくなく、リン酸エステル系難燃剤のようなハロゲン及び/又はリン含有難燃剤の使用量の低減が市場において要求されている。
【特許文献1】特開2006−321882号公報
【特許文献2】特開平6−41268号公報
【特許文献3】特開2004−27074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、難燃性に優れた硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物であって、リン酸エステル系難燃剤の含有量を低減した硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物、及び該ポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合、発泡させて得られる、リン酸エステル系難燃剤の含有量を低減した硬質ポリウレタンフォームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係る硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物は、ポリオール化合物、水溶性有機溶剤、触媒及び発泡剤を含有し、ポリイソシアネート成分と混合、発泡させて硬質ポリウレタンフォームを形成するための硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物において、前記ポリオール化合物は、前記ポリオール化合物の全量を100重量部とした場合に、芳香族系ポリエステルポリオールを50〜80重量部含有するものであり、前記水溶性有機溶剤は、分子量が100〜400のエチレングリコール誘導体、プロピレンカーボネート、ε―カプロラクトン、及びγ―ブチロラクトンからなる群より選択される少なくとも1種であって、前記ポリオール化合物の全量を100重量部とした場合に、3〜15重量部含有されてなり、前記触媒は、三量化触媒を含有するものであり、前記発泡剤は、ペンタン類及び水を含有するものであり、かつリン酸エステル系難燃剤の含有量が2重量部未満であることを特徴とする。
【0008】
発泡剤としてペンタン類及び水を含有する硬質ポリウレタンフォームは、発泡剤としてHFC化合物等を含有する硬質ポリウレタンフォームに比べて難燃性が劣る傾向にある。しかし、ポリオール組成物が、芳香族系ポリエステルポリオールと、分子量が100〜400のエチレングリコール誘導体、プロピレンカーボネート、ε―カプロラクトン、及びγ―ブチロラクトンからなる群より選択される少なくとも1種からなる特定の水溶性有機溶剤とを含有することにより、リン酸エステル系難燃剤の含有量を低減した場合であっても、かかるポリオール組成物を使用した硬質ポリウレタンフォームにて難燃性を向上することができる。より具体的には、本発明に係るポリオール組成物を使用することにより、JIS−A9511に準拠した難燃基準を合格可能な硬質ポリウレタンフォームが得られる。
【0009】
本発明に係るポリオール組成物を原料とした硬質ポリウレタンフォームにて、リン酸エステル系難燃剤の含有量を低減した場合であっても、その難燃性を向上することができる理由としては、以下のように推測される。つまり、ポリオール組成物中に上記特定の水溶性有機溶剤が含有されると、ポリイソシアネート成分と芳香族系ポリエステルポリオールとの相溶性が向上する。加えて芳香族系ポリエステルポリオールとペンタン類との相溶性が向上することにより、ポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合する際、その混合液の撹拌効率が向上する。これらの結果、ポリイソシアネート成分と、ポリオール組成物とを混合、発泡する際、三量化触媒存在下、硬質ポリウレタンフォーム中のイソシアヌレート化率が上昇する。これにより、本発明に係るポリオール組成物を使用した硬質ポリウレタンフォームにて、リン酸エステル系難燃剤の含有量を低減した場合であっても、その難燃性を向上することができるものと推測される。
【0010】
本発明に係るポリオール組成物は、ポリオール化合物の全量を100重量部とした場合に、芳香族系ポリエステルポリオールを50〜80重量部含有する。芳香族系ポリエステルポリオールの含有量が50重量部未満であると、得られる硬質ポリウレタンフォームの難燃性が悪化する傾向にあり、80重量部を超えると、ペンタン類と芳香族系ポリエステルポリオールとの相溶性が良くないことに起因して、ポリオール組成物の貯蔵安定性、並びに硬質ポリウレタンフォームの成型性及び外観性が悪化する傾向にある。得られる硬質ポリウレタンフォームの難燃性と、ポリオール組成物の貯蔵安定性、並びに硬質ポリウレタンフォームの成型性及び外観性とを考慮した場合、芳香族系ポリエステルポリオールの含有量は、50〜75重量部が好ましく、50〜70重量部がより好ましい。
【0011】
また、本発明に係るポリオール組成物は、分子量が100〜400のエチレングリコール誘導体、プロピレンカーボネート、ε―カプロラクトン、及びγ―ブチロラクトンからなる群より選択される少なくとも1種からなる水溶性有機溶剤を、ポリオール化合物の全量を100重量部とした場合に、3〜15重量部含有する。かかる水溶性有機溶剤の含有量が3重量部未満であると、得られる硬質ポリウレタンフォームの難燃性が悪化する傾向にあり、加えて、ポリオール組成物中にてペンタン類と芳香族系ポリエステルポリオールとの分離が進行し易くなり、ポリオール組成物の貯蔵安定性、さらには硬質ポリウレタンフォームの成型性及び外観性が悪化する傾向にある。一方、かかる水溶性有機溶剤の含有量が15重量部を超えると、得られる硬質ポリウレタンフォームの強度及び熱伝導率が悪化する傾向にある。ポリオール組成物の貯蔵安定性、さらには硬質ポリウレタンフォームの成型性及び外観性、並びに強度及び熱伝導率を考慮した場合、かかる水溶性有機溶剤の含有量は、4〜10重量部が好ましく、4〜8重量部がより好ましい。
【0012】
本発明に係るポリオール組成物では、リン酸エステル系難燃剤の含有量を2重量部未満に低減した場合であっても、かかるポリオール組成物を使用した硬質ポリウレタンフォームの難燃性を向上することができる。環境面を考慮した場合、ポリオール組成物中のリン酸エステル系難燃剤の含有量は1重量部未満であることが好ましく、さらにはポリオール組成物がリン酸エステル系難燃剤を含有しないことが特に好ましい。
【0013】
上記ポリオール組成物において、前記ポリオール化合物は、前記ポリオール化合物の全量を100重量部とした場合に、さらに芳香族アミン系ポリエーテルポリオールを10〜35重量部、脂肪族アミン系ポリエーテルポリオールを5〜15重量部、及び脂肪族系ポリエーテルポリオールを5〜35重量部含有するものであることが好ましい。ポリオール組成物にて、ポリオール化合物としてさらに、芳香族アミン系ポリエーテルポリオール、脂肪族アミン系ポリエーテルポリオール、及び脂肪族系ポリエーテルポリオールをそれぞれ所定の量含有することにより、ポリオール化合物とペンタン類との相溶性がより向上する。その結果、ポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合する際、撹拌効率が向上し、硬質ポリウレタンフォーム中のイソシアヌレート化率が上昇することにより、さらに難燃性に優れた硬質ポリウレタンフォームが得られる。加えて、ポリイソシアネート成分とポリオール組成物とを混合した発泡原液組成物の液伸び性が向上し、硬質ポリウレタンフォームの成型性が向上するとともに、硬質ポリウレタンフォームの接着性が向上する。
【0014】
硬質ポリウレタンフォームの難燃性と、成型性及び接着性を考慮した場合、芳香族アミン系ポリエーテルポリオールは15〜30重量部含有されることがより好ましく、脂肪族アミン系ポリエーテルポリオールは10〜15重量部含有されることがより好ましく、また、脂肪族系ポリエーテルポリオールは10〜30重量部含有されることがより好ましい。
【0015】
本発明に係る硬質ポリウレタンフォームは、ポリイソシアネート成分と、ポリオール化合物、水溶性有機溶剤、触媒及び発泡剤を含有するポリオール組成物とを混合、発泡させて得られる硬質ポリウレタンフォームにおいて、前記ポリイソシアネート成分は、芳香族ポリイソシアネート化合物を含有するものであり、前記ポリオール化合物は、前記ポリオール化合物の全量を100重量部とした場合に、芳香族系ポリエステルポリオールを50〜80重量部含有するものであり、前記水溶性有機溶剤は、分子量が100〜400のエチレングリコール誘導体、プロピレンカーボネート、ε―カプロラクトン、及びγ―ブチロラクトンからなる群より選択される少なくとも1種であって、前記ポリオール化合物の全量を100重量部とした場合に、3〜15重量部含有されてなり、前記触媒は、三量化触媒を含有するものであり、前記発泡剤は、ペンタン類及び水を含有するものであり、前記ポリイソシアネート成分とポリオール組成物とにおけるイソシアネート基/活性水素基当量比(NCOインデックス)が200〜400となるように、ポリイソシアネート成分と、ポリオール組成物とを混合、発泡させて得られたものであり、かつリン酸エステル系難燃剤の含有量が2重量部未満であること特徴とする。ここで、かかるNCOインデックスの算出に使用するポリオール組成物の「活性水素基」とは、水の活性水素基量も含み、(イソシアネート基/水の活性水素基当量比)が100となるようにNCOインデックスを設定する。
【0016】
上記構成によれば、特定のポリオール化合物及び特定の水溶性有機溶剤を含有するポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを、NCOインデックスが200〜400となるように混合、発泡することにより、三量化触媒存在下、硬質ポリウレタンフォーム中のイソシアヌレート化率が上昇する。その結果、リン酸エステル系難燃剤の含有量を低減した場合であっても、硬質ポリウレタンフォームの難燃性が向上し、より具体的には、JIS−A9511に準拠した難燃基準の合格が可能となる。
【0017】
上記NCOインデックスが200未満であると、硬質ポリウレタンフォームの難燃性が低下する傾向にある。一方、NCOインデックスが400を越えると、硬質ポリウレタンフォームが脆くなる傾向にある。硬質ポリウレタンフォームの難燃性及び脆性を考慮した場合、NCOインデックスは200〜300がより好ましく、200〜250がさらに好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係るポリオール組成物は、ポリオール化合物として芳香族系ポリエステルポリオールを含有する。かかる芳香族エステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、平均分子量が150〜500のポリオキシエチレングリコール等のグリコールから選択される1種以上と芳香族ポリカルボン酸とのエステルポリオールが挙げられる。芳香族系ポリエステルポリオールを構成する芳香族ポリカルボン酸としては、テレフタル酸、o−フタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、トリメリット酸等の3官能以上の芳香族ポリカルボン酸を使用することができる。これらの芳香族ポリカルボン酸の中でも、得られる硬質ポリウレタンフォームの難燃性を考慮した場合、テレフタル酸が好ましい。
【0019】
芳香族系ポリエステルポリオールの水酸基価は、200〜400mgKOH/gであることが好ましく、240〜300mgKOH/gであることがより好ましい。水酸基価が200mgKOH/g未満の場合には、フォーム強度が不十分になるため収縮変形し易くなる。一方、水酸基価が400mgKOH/gを超える場合には、ポリオール組成物の粘度が高くなりすぎるため、均一な発泡原液組成物を調製することが困難になり、フォームの品質が低下し、加えて芳香族系ポリエステルポリオールの芳香環濃度が低下し、充分な難燃性能が得られない場合がある。
【0020】
芳香族系エステルポリオールの官能基数は、2〜2.5であることがより好ましく、実質的に2官能であることがさらに好ましい。また、芳香族系ポリエステルポリオールの芳香族濃度は、硬質ポリウレタンフォームの難燃性を考慮した場合、28%以上であることが好ましい。さらに、芳香族系ポリエステルポリオールのペンタン溶解度は、6g以上(/ポリオール100g)であることが好ましい。ここで、上記「ペンタン溶解度」とは、液温20℃の芳香族系ポリエステルポリオール100gに溶解するペンタンのg数をいう。ペンタン溶解度が6未満の場合には、芳香族系ポリエステルポリオールとペンタン類との相溶性が低いため、ポリオール組成物が白濁したり、ポリオール組成物中で発泡剤の相分離が発生し易くなる。その結果、硬質ポリウレタンフォームの気泡が大きく、しかも気泡の均一性に乏しく、かつ断熱特性が劣る傾向にある。
【0021】
本発明に係るポリオール組成物は、好ましくはポリオール化合物として、さらに芳香族アミン系ポリエーテルポリオール、脂肪族アミン系ポリエーテルポリオール、及び脂肪族系ポリエーテルポリオールを含有する。
【0022】
芳香族アミン系ポリオールは、芳香族ジアミンを開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の環状エーテル化合物、好ましくはプロピレンオキサイドのみ、もしくはプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとを開環付加させた実質的に4官能の第3級アミノ基を有するポリオール化合物である。開始剤である芳香族ジアミンとしては、公知の芳香族ジアミンを限定なく使用することができる。具体的には2,4−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン等が例示される。これらの中でも得られる硬質ポリウレタンフォームの断熱性と強度等の特性が優れている点で、トルエンジアミン(2,4−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン又はこれらの混合物)を開始剤として、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加させたポリオールが特に好ましい。なお、芳香族アミン系ポリオールの水酸基価は、350〜500mgKOH/gであることが好ましく、380〜480mgKOH/gであることがより好ましい。
【0023】
脂肪族アミン系ポリエーテルポリオールとしては、アルキレンジアミン系ポリオールや、アルカノールアミン系ポリオールが例示される。これらのポリオール化合物は、アルキレンジアミンやアルカノールアミンを開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加させた末端水酸基の多官能ポリオール化合物である。アルキレンジアミンとしては、公知の化合物が限定なく使用できる。具体的にはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンチルジアミン等の炭素数が2〜8のアルキレンジアミンの使用が好適である。アルキレンジアミン系ポリオールにおいては、開始剤であるアルキレンジアミンは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が例示される。これらの中でも、特にエチレンジアミン又はトリエタノールアミンを開始剤として、末端基としてプロピレンオキサイドを付加させたポリオールの使用が好ましい。なお、脂肪族アミン系ポリエーテルポリオールの水酸基価は、400〜800mgKOH/gであることが好ましく、450〜770mgKOH/gであることがより好ましい。
【0024】
脂肪族系ポリエーテルポリオールとしては、多官能性活性水素化合物、即ちポリオール開始剤として脂肪族ないし脂環族多官能性活性水素化合物にプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加重合させて得られる多官能性のオリゴマーである。ポリオール開始剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等のグリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリン等のトリオール類、ペンタエリスリトール等の4官能アルコール類、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコール類、並びに水等が例示される。これらの中でも、特にグリセリン又はソルビトールを開始剤としてエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加させたポリオールが特に好ましい。なお、脂肪族系ポリエーテルポリオールの水酸基価は、300〜600mgKOH/gであることが好ましく、350〜550mgKOH/gであることがより好ましい。
【0025】
本発明においては、上記のポリオール化合物に加えて、本発明の特徴を損なわない範囲で他のポリオール化合物、例えばヒドロキノン、ビスフェノールA、キシリレングリコール等の芳香族化合物を開始剤とした芳香族系ポリエーテルポリオールを含有してもよい。また、ポリオール組成物を構成する成分として架橋剤を含有してもよい。架橋剤としてはポリウレタンの技術分野において使用される低分子量多価アルコールが使用可能である。具体的には、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリエタノールアミン等が例示される。
【0026】
本発明に係るポリオール組成物においては、水溶性有機溶剤として、分子量が100〜400のエチレングリコール誘導体、プロピレンカーボネート、ε―カプロラクトン、及びγ―ブチロラクトンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する。
【0027】
分子量が100〜400のエチレングリコール誘導体としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等の平均分子量400以下のポリエチレングリコールの両末端に、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基、アセチル基、プロピオニル基及びブチリル基等のアシル基等、活性水素基ではない置換基を有するものである。上記エチレングリコール誘導体の両末端に結合する置換基は、互いに同一であっても異なっていても良い。ポリオール組成物に対する低粘度化効果と硬質ポリウレタンフォームに対する難燃化効果とを考慮した場合、上記エチレングリコール誘導体の中でも、ジエチレングリコール誘導体が好ましく、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが特に好ましい。
【0028】
本発明に係るポリオール組成物においては、触媒として三量化触媒(イソシアヌレート結合形成を促進する触媒)を含有する。かかる三量化触媒としては、例えば2−エチルヘキサン酸(オクチル酸)カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム等の炭素数1〜20の有機カルボン酸アルカリ金属塩、第4級アンモニウム塩触媒、具体的にはN−(2−ヒドロキシプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチルアンモニウム・オクチル酸塩、N−ヒドロキシアルキル−N,N,N−トリアルキルアンモニウム塩等が使用可能である。硬質ポリウレタンフォームの難燃性を考慮した場合、かかる三量化触媒の含有量は、1〜10重量部が好ましく、1.5〜5重量部がより好ましく、1.5〜2.5重量部がさらに好ましい。
【0029】
なお、本発明に係るポリオール組成物においては、触媒として三量化触媒に加えて、ウレタン化を促進するアミン触媒を併用することが好ましい。かかるアミン触媒としては、具体的にはN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンやN,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン等のN−アルキルポリアルキレンポリアミン類、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等を例示することができる。触媒として三量化触媒とアミン触媒とを併用する場合、(三量化触媒)/(アミン触媒)は、重量比にて5/1〜1/5とすることが好ましく、2/1〜1/2とすることがより好ましい。
【0030】
本発明に係るポリオール組成物においては、発泡剤としてペンタン類及び水を含有する。ペンタン類としては、n−ペンタン、イソペンタン、シクロペンタンの中から、1種以上を適宜選択して使用する。ペンタン類の含有量は、得られる硬質ポリウレタンフォームの密度を考慮して適宜決定されるが、ポリオール化合物の全量を100重量部とした場合に、5〜25重量部であることが好ましく、10〜20重量部であることがより好ましい。また、水の含有量は、ポリオール化合物の全量を100重量部とした場合に、0.5〜3.0重量部が好ましく、0.5〜2.0重量部がより好ましく、1.0〜2.0重量部がより好ましい。なお、水部数が0.5重量部未満であると、フォーム強度が低下し、一方、3.0重量部を越えると、熱伝導率の低減の効果が認められない。
【0031】
本発明に係るポリオール組成物においては、さらに整泡剤を含有することが好ましい。かかる整泡剤としては、公知の硬質ポリウレタンフォーム用の整泡剤が使用でき、ポリオキシアルキレングリコールとポリジメチルシロキサンとのグラフト共重合体等が例示される。ポリオキシアルキレングリコールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの単独又は共重合体が好ましく、エチレンオキサイド含有率が70〜100モルのシリコン整泡剤を使用することが好ましい。整泡剤としては、市販品も好適に使用することができ、SH−193、SF−2937F、SZ−1718(東レダウコーニングシリコン社製)等が挙げられる。
【0032】
本発明に係るポリオール組成物においては、難燃剤として一般に使用されるリン酸エステル系難燃剤の含有量を低減した場合であっても、硬質ポリウレタンフォームの難燃性を向上することができる。上記リン酸エステル系難燃剤としては、例えばリン酸のハロゲン化アルキルエステル、アルキルリン酸エステルやアリールリン酸エステル、ホスホン酸エステル等が挙げられ、より具体的にはトリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート、トリエチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェートトリブチルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート等が挙げられる。
【0033】
本発明において、ポリオール組成物と混合、発泡させて硬質ポリウレタンフォームを形成するためのポリイソシアネート成分としては、取扱の容易性、反応の速さ、得られる硬質ポリウレタンフォームの物理特性が優れていること、低コストであること等から、芳香族ポリイソシアネート化合物、特に液状ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を使用することが好ましい。かかる液状MDIとしては、市販品を好適に使用することができ、クルードMDI(c−MDI)(スミジュール44V−10,スミジュール44V−20等(住化バイエルウレタン社製)、ミリオネートMR−200(日本ポリウレタン工業社製))、ウレトンイミン含有MDI(ミリオネートMTL;日本ポリウレタン工業社製)等が例示される。なお、液状MDIに加えて、他のポリイソシアネート化合物を併用してもよい。併用するポリイソシアネート化合物としては、ポリウレタンの技術分野において周知のものは限定なく使用することができる。
【0034】
本発明に係る硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、ポリイソシアネート成分とポリオール組成物とを、イソシアネート基/活性水素基当量比(NCOインデックス)が200〜400となるように混合して発泡原液組成物とし、前記発泡原液組成物を発泡、硬化させることを特徴とする。本発明に係る硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、一般にスラブフォームや硬質ポリウレタンフォームサンドイッチパネル(以下、「SWP」という)を製造する際に使用される、面材供給装置、コンベア装置、ポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合して下面材上に供給する発泡機(ミキサー)、加熱オーブン、及び連続状に形成された硬質ポリウレタンフォームを適宜の長さに裁断する裁断機を備えた公知の連続発泡装置を使用することができる。
【0035】
本発明においては、表面にアルミ箔(厚み7μm以上)を、ポリエチレン層を介してラミネートしたライナー紙(目付:180g/m)を面材として使用することが好ましい。かかるアルミ面材にて本発明に係る硬質ポリウレタンフォームの両面を挟むことにより、特に難燃性に優れたSWPが得られる。なお、上記アルミ面材において、アルミ箔とライナー紙との間に介在するポリエチレン層としては、後述する成型温度(コンベア温度)を高めるために、融点が105℃以上のポリエチレンを原料として構成されたものが好ましい。
【0036】
以下に、SWPの製造工程を例として本発明に係る硬質ポリウレタンフォームの製造方法を説明する。SWPの製造工程は、一般的には以下の工程から構成される。
1)下アルミ面材を原反ロールから巻き戻して、所望の温度に設定したコンベアに供給する。
2)下アルミ面材上に、発泡機にてポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合して形成された発泡原液組成物を、アルミ面材の幅方向に均一に供給する。
3)上アルミ面材を供給する。上アルミ材供給後にニップロール等のニップ装置を通過させて発泡原液組成物液の幅方向への拡散、液の厚さの均一化、上下アルミ面材と発泡原液組成物の親和等を行う。
4)加熱オーブンに送り込んで加熱し、発泡・硬化反応を行わせて両面に紙面材が積層された硬質ポリウレタンフォームとする。所定の厚さにするために、フォームの上下面を押さえるダブルコンベアを使用してもよい。
5)加熱オーブンから連続的に出てくる硬質ポリウレタンフォームを、裁断機にて所定長さに裁断する。
【0037】
本発明に係る硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、成型温度(上記製造工程1)でいうコンベアの設定温度)を85℃以上とすることが好ましい。かかる温度設定により、硬質ポリウレタンフォーム中のイソシアヌレート化率が上昇する。その結果、本発明に係る硬質ポリウレタンフォームにて、難燃性を著しく向上することができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の構成と効果とを具体的に示す実施例等について説明する。本発明において使用した原料の内容、特性等は以下のとおりである。
【0039】
<ポリオール組成物>
a)芳香族系ポリエステルポリオール
ジエチレングリコールとテレフタル酸とのエステルポリオール(水酸基価245mgKOH/g、粘度3300mPa・s)
b)芳香族アミン系ポリエーテルポリオール
(A)トルエンジアミンにプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとを開環付加したポリオール(水酸基価400mgKOH/g、粘度6500mPa・s)
c)脂肪族アミン系ポリエーテルポリオール
(A)エチレンジアミンを開始剤として、末端基としてプロピレンオキサイドを付加したポリオール(水酸基価500mgKOH/g、粘度6500mPa・s)
(B)エチレンジアミンを開始剤として、末端基としてプロピレンオキサイドを付加したポリオール(水酸基価760mgKOH/g、粘度50000mPa・s)
d)脂肪族系ポリエーテルポリオール
(A)グリセリンにプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとを開環付加したポリオール(水酸基価400mgKOH/g、粘度350mPa・s)
(B)ソルビトールにプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとを開環付加したポリオール(水酸基価550mgKOH/g、粘度3500mPa・s)
(C)ソルビトールにプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとを開環付加したポリオール(水酸基価410mgKOH/g、粘度4300mPa・s)
【0040】
e)水溶性有機溶剤
(A)ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(ダイセル化学工業社製)
(B)プロピレンカーボネート(丸善石油化学社製)
(C)ε−カプロラクトン(ナカライテスク社製)
f)整泡剤
(A)シリコン系界面活性剤(商品名;SH−193(東レ・ダウコーニングシリコン社製))
(B)シリコン系界面活性剤(商品名;SZ−1718(東レ・ダウコーニングシリコン社製))
g)触媒
(A)オクチル酸カリウム:三量化触媒(商品名;ペルロン9540(ペルロン社製))
(B)N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン:アミン触媒(商品名;Kao.No.1(花王社製))
h)ペンタン類
シクロペンタン
【0041】
<ポリイソシアネート成分>
c−MDI(商品名;MR−200、(日本ポリウレタン社製))
【0042】
<評価方法>
(1)難燃性(JIS−A9511)
硬質ポリウレタンフォーム試料から、厚さ13mm、長さ150mm、幅50mmの試験片を5つ切り出してサンプルを作製した。次に、ブンゼンバーナーに魚尾灯を取り付け、炎の高さを38±2mm(外炎)、6.5mm(内炎)とし、作製したサンプルを炎に60秒間当てた後、サンプルを炎から遠ざけて、サンプルの燃焼時間と最大の燃焼距離(サンプルの燃えた部分のうち、燃焼長さが最も長い部分の長さ(mm))を測定した。サンプルの燃焼時間が120秒以下で、かつ最大の燃焼距離が60mm以下であれば、JIS−A9511に準拠した難燃基準の合格が可能となる。
【0043】
(2)ポリオール組成物の貯蔵安定性
ポリオール化合物とペンタン類との混合撹拌時における状態を目視にて観察し、下記基準で判断した。
○:相溶性は良好であり、混合液に白濁は全く見られない。
×:混合液がかなり白濁している。
【0044】
(3)熱伝導率
熱伝導率測定装置AUTO−Λ HC−074(英弘精機社製)を使用し、測定条件は、JIS−A9511に準拠して熱伝導率(w/mk)を測定した。
【0045】
(4)ピーリング接着
作製した硬質ポリウレタンフォームサンドイッチパネルについて図1に示した方法にて剥離試験を行い、接着強度を求めた。測定は上面材に幅5cmの切欠きを入れ、W方向に引っ張り、剥離荷重(N)を求めることにより行った。
【0046】
(5)フォーム収縮
厚さ180mmの硬質ポリウレタンフォーム試料のコア部から厚さ100m,縦横100mmのフォームサンプルを切り出して−30℃で48時間曝露試験を行い、厚さの変化率を測定して寸法変化率とした。評価結果は、寸法変化率が3%未満の場合を○、寸法変化率が3〜5%の場合を△、寸法変化率が5%以上の場合を×として表示した。
【0047】
(実施例及び比較例)
表1に記載した配合によりポリオール組成物を調製し、かかるポリオール組成物とポリイソシアネートとを使用して上記のSWPの製造工程に基づいて、硬質ポリウレタンフォーム(SWP)を連続生産した。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1の結果から、実施例1〜8の硬質ポリウレタンフォーム(SWP)は、何れもJIS−A9511に準拠した難燃基準の合格が可能なレベルの難燃性を示すことがわかる。一方、比較例1の硬質ポリウレタンフォーム(SWP)は、ポリオール組成物中の芳香族系ポリエステルポリオールの含有量が50重量部未満であり、難燃性が悪化することがわかる。また、比較例2の硬質ポリウレタンフォーム(SWP)は、ポリオール組成物中に水溶性有機溶剤を含まないことから、難燃性が悪化することがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】面材と硬質ポリウレタンフォームとの接着強度を測定する方法を示した図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物、水溶性有機溶剤、触媒及び発泡剤を含有し、ポリイソシアネート成分と混合、発泡させて硬質ポリウレタンフォームを形成するための硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物において、
前記ポリオール化合物は、前記ポリオール化合物の全量を100重量部とした場合に、芳香族系ポリエステルポリオールを50〜80重量部含有するものであり、
前記水溶性有機溶剤は、分子量が100〜400のエチレングリコール誘導体、プロピレンカーボネート、ε―カプロラクトン、及びγ―ブチロラクトンからなる群より選択される少なくとも1種であって、前記ポリオール化合物の全量を100重量部とした場合に、3〜15重量部含有されてなり、
前記触媒は、三量化触媒を含有するものであり、
前記発泡剤は、ペンタン類及び水を含有するものであり、かつ
リン酸エステル系難燃剤の含有量が2重量部未満であることを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項2】
前記ポリオール化合物は、前記ポリオール化合物の全量を100重量部とした場合に、さらに芳香族アミン系ポリエーテルポリオールを10〜35重量部、脂肪族アミン系ポリエーテルポリオールを5〜15重量部、及び脂肪族系ポリエーテルポリオールを5〜35重量部含有するものである請求項1記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項3】
ポリイソシアネート成分と、ポリオール化合物、水溶性有機溶剤、触媒及び発泡剤を含有するポリオール組成物とを混合、発泡させて得られる硬質ポリウレタンフォームにおいて、
前記ポリイソシアネート成分は、芳香族ポリイソシアネート化合物を含有するものであり、
前記ポリオール化合物は、前記ポリオール化合物の全量を100重量部とした場合に、芳香族系ポリエステルポリオールを50〜80重量部含有するものであり、
前記水溶性有機溶剤は、分子量が100〜400のエチレングリコール誘導体、プロピレンカーボネート、ε―カプロラクトン、及びγ―ブチロラクトンからなる群より選択される少なくとも1種であって、前記ポリオール化合物の全量を100重量部とした場合に、3〜15重量部含有されてなり、
前記触媒は、三量化触媒を含有するものであり、
前記発泡剤は、ペンタン類及び水を含有するものであり、
前記ポリイソシアネート成分とポリオール組成物とにおけるイソシアネート基/活性水素基当量比(NCOインデックス)が200〜400となるように、ポリイソシアネート成分と、ポリオール組成物とを混合、発泡させて得られたものであり、かつ
リン酸エステル系難燃剤の含有量が2重量部未満であること特徴とする硬質ポリウレタンフォーム。

【図1】
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【公開番号】特開2010−53268(P2010−53268A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220922(P2008−220922)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】