説明

碍子洗浄装置

【課題】
本発明は、寒冷地に適する碍子の洗浄を可能とする碍子洗浄装置を提供することにある。
【解決手段】
本発明は、複数段に分けて設置された碍子列10,11を所定間隔毎に複数列設置してなる碍子群10,11を洗浄する碍子洗浄装置において、上記各碍子列10,11毎に対して洗浄水を噴射して上記各碍子列10,11の碍子を洗浄できる位置に配設した複数のスプレーノズル20,21と、洗浄水タンク3内の洗浄水を揚水してスプレーノズル20,21側へ供給するためのポンプ装置40,41と、このポンプ装置40,41と各スプレーノズル20,21との間に配設している配管5に設けている複数の電磁弁60,61,62,63とよりなり、上記スプレーノズル20,21からの洗浄水を強風低温時に、洗浄間隔を短時間に連続的に運転を行い洗浄し、碍子の汚染を防止させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所、開閉所、変電所などの電力施設に於いて、屋外で使用する碍子を、スプレーノズルで効率的に洗浄して塩害汚損を防止する碍子の洗浄装置に係り、特に寒冷地の使用に適する碍子洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電所に冷却水等の設備の関係から、一般に海岸に近い場所に設置される場合が多く、屋外設置碍子 (とくに、77KV以上)を有する事業所の塩害汚損地区での変電設備においては、季節風や台風によって、海からの塩水が強風で巻き上げられることにより、碍子等に付着して、絶縁不良事故を生じることがある。
このような絶縁不良事故などの塩害事故防止をはかるため、通常、発電所や変電所などの電力施設では、一般的には固定式スプレー装置、水幕スプレー装置或いはジェット洗浄装置の洗浄装置を使用している。
【0003】
固定式スプレー装置は、洗浄対象となる碍子の周囲に複数のスプレーノズルを固定して設置し、これら複数のスプレーノズルからの洗浄水の噴射により、各碍子を洗浄する構成となっている。
また、水幕スプレー装置は、洗浄すべき碍子の風上側に複数のスプレーノズルをノズル先端が真上を向くようにして設置し、このスプレーノズルから噴射した洗浄水によって垂直方向に水幕を形成し、この水幕が強風に流されることによって、碍子に雨水の如く降り注ぐことによって、碍子を洗浄する構成となっている。
さらに、ジェット洗浄装置は、洗浄水をジェット噴射させるためのジェット噴射ノズルを人手によって操作することにより、各碍子を洗浄する構成である。
【0004】
碍子洗浄装置として、強風下に優れた洗浄効果を得るものとして、例えば、特許文献1の特開平11−232945号公報に記載された技術がある。この技術は、前記固定式スプレー装置と水幕スプレー装置を併せて設けた構成で、少ない洗浄水で効率的に洗浄を行うものである。
また、特許文献2の特開2001−266683号公報に記載された技術では、碍子を取り巻くように昇降装置付きの碍子洗浄装置が設けられている。そしてこの洗浄装置には、乾燥用エアーノズルが設けてあり、洗浄後碍子を乾燥させることができる構成となっている。
以上のように、従来は、上記の洗浄装置のいずか単独か、もしくはこれらの洗浄装置の組み合わせにより、塩害汚損度をパイロット碍子により、汚染状況を監視し、定期的もしくは臨時に碍子の洗浄をおこない、碍子に付着する塩分を洗浄することで、塩害による碍子の地絡・短絡事故の防止をはかっている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−232945号公報
【特許文献2】特開平2001−266683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景技術で述べたように、従来の碍子洗浄装置は、台風等の強風時等について塩害汚染の防止をすることができるが、日本海側、或いは北海道等の寒冷地において、冬期間に碍子の洗浄をそのまま使用した場合には、下記の等の課題がある。
即ち、碍子洗浄装置により洗浄に用いた洗浄水が、低温下で使用した場合には、碍子の洗浄を行う碍子洗浄用ノズルが凍結してしまう場合があり、洗浄水の放出不能となり、碍子を洗浄することが出来なくなる場合があった。
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の目的は、寒冷地に適する碍子の洗浄を可能とする碍子洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数段に分けて設置された碍子列を所定間隔毎に複数列設置してなる碍子群を洗浄する碍子洗浄装置において、上記各碍子列毎に対して洗浄水を噴射して上記各碍子列の碍子を洗浄できる位置に配設した複数のスプレーノズルと、洗浄水タンク内の洗浄水を揚水してスプレーノズル側へ供給するためのポンプ装置と、このポンプ装置と各スプレーノズルとの間に配設している配管に設けている複数の電磁弁とよりなり、上記スプレーノズルからの洗浄水を強風低温時に、洗浄間隔を短時間に連続的に運転を行い洗浄し、碍子の汚染を防止させることを特徴とする。
また、請求項2記載の発明は、洗浄間隔休止期間を1〜5分に設定して、洗浄を継続的に運転を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、複数段に分けて設置された碍子列を所定間隔毎に複数列設置してなる碍子群を洗浄する碍子洗浄装置において、上記各碍子列毎に対して洗浄水を噴射して上記各碍子列の碍子を洗浄できる位置に配設した複数のスプレーノズルと、洗浄水タンク内の洗浄水を揚水してスプレーノズル側へ供給するためのポンプ装置と、このポンプ装置と各スプレーノズルとの間に配設している配管に設けている複数の電磁弁と、洗浄水タンクとポンプ装置との間に、電磁弁を介し接続する温水配管とよりなり、上記スプレーノズルからの洗浄水を強風低温時に、洗浄水の洗浄に加えて、全洗浄時間、或いは洗浄時間の一部の時間に温水配管の電磁弁を開き、温水を加えた洗浄運転を行い、碍子の汚染を防止させることを特徴とし、請求項4の発明では、請求項3記載の発明について、ポンプ装置に接続する温水導入配管内に、温水流量を調整する流量調整弁を設けることを特徴とする。
【0009】
更に、請求項5記載の発明では、複数段に分けて設置された碍子列を所定間隔毎に複数列設置してなる碍子群を洗浄する碍子洗浄装置において、上記各碍子列毎に対して洗浄水を噴射して上記各碍子列の碍子を洗浄できる位置に配設した複数のスプレーノズルと、洗浄水タンク内の洗浄水を揚水してスプレーノズル側へ供給するためのポンプ装置と、このポンプ装置と各スプレーノズルとの間に配設している配管に設けている複数の電磁弁と、ポンプ装置より各スプレーノズル側の配管の適宜位置に、電磁弁を介し接続する圧縮空気導入配管とよりなり、上記スプレーノズルからの洗浄水を強風低温時に、碍子の洗浄工程終了時に圧縮空気導入配管から圧縮空気を管内に導入し、各スプレーノズルより圧縮空気を排出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の碍子洗浄装置では、上記各碍子列毎に対して洗浄水を、スプレーノズルからの洗浄水を強風低温時に、洗浄間隔を短時間に連続的に運転を行い洗浄することで、碍子の汚染の防止と凍結防止を図ることが出来る。また碍子列毎に対して洗浄水を、スプレーノズルからの洗浄水を強風低温時に、洗浄水の洗浄に加えて、全洗浄時間、或いは洗浄時間の一部の時間に温水を加えた洗浄運転を行い洗浄することができ、碍子及びスプレーノズルの温度上昇を図ることが出来凍結防止を図ることが出来る。更に、ポンプ装置に接続する温水導入配管内に、温水流量を調整する流量調整弁を設けることで、外気温に適した温度の洗浄水をスプレーノズルに供給することが出来る。
また、ポンプ装置と各スプレーノズルとの間に、圧縮空気導入配管を設け、洗浄工程終了時に圧縮空気導入配管から圧縮空気を管内に導入し、配管内及び各スプレーノズルに残留している洗浄水を吹き飛ばすことが出来ることより各スプレーノズルの凍結を未然に防止することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る碍子洗浄装置の第1の実施の形態の系統図の概略の説明図である。
本実施の形態では、複数段に分けて設置された碍子列10,11と、上記各碍子列10,11毎の洗浄を行う複数のスプレーノズル20,21と、洗浄水タンク3内の洗浄水を揚水してスプレーノズル20,21側へ供給するためのポンプ装置40、41と、このポンプ装置40,41と各スプレーノズル20,21との間に配管5を介して配設した複数の電磁弁60,61、62,63と、これらを制御する制御部7が設けられている。
なお、ポンプ装置40、41は、原則として交互に使用するか、一方をバックアップとして設けるものであるが、負荷に応じて同時に作動させても良い。
【0012】
<碍子列及びスプレーノズル>
碍子列10,11は、実施の形態では2組設けてあり、塩害汚損地区での変電設備に対しての碍子で、この碍子列10,11に対し洗浄水が均一に洗浄を行える位置にスプレーノズル20,21を配置する。このスプレーノズル20,21は、通常塩害汚染地域に使用しているものを用いることが出来る。
なお、上述実施の形態では、2列の碍子列の例を示したが、3以上の碍子列の場合であっても良いことは言うまでもない。
【0013】
<洗浄水タンク、ポンプ装置、配管及び電磁弁>
洗浄タンク3に満たされている洗浄水は、ポンプ装置40,41及び電磁弁60,61を介し、揚水されて各スプレーノズル20,21に配管5を介し供給されれる。この配管5の途中に、複数の碍子列10,11に洗浄水を振り分ける複数の電磁弁62,63が設けられている。
【0014】
<制御部7>
制御部7で、前記ポンプ装置40,41及び電磁弁60,61,62,63の制御を行う。そして制御の判断資料として、碍子の塩害汚染状況を計測するパイロット碍子70、気温の測定を行う温度計71、及び風速及び風向を計測する風速風向計72の各データに基づきポンプ装置40,41及び電磁弁60,61,62,63の制御を行う。
なお、図中64は配管5内の洗浄水を排出する為の電磁弁である。
【0015】
具体的には、翌日から季節風が吹き始める直前に碍子列10,11を洗浄し、塩分付着を最小限にする。次いで、季節風が吹き始め碍子に塩分の付着が始まった後は、例えば、パイロット碍子70に付着した塩分の付着量が0.580mg/cm,或いは時間あたりの塩分増加量が0.046mg/cm、となった場合に、ポンプ装置40、電磁弁60,62を開きスプレーノズル20から碍子列10の洗浄を開始する。洗浄時間は平常時は1分程度であるが、強風時等は2分程度の洗浄を行う等適宜洗浄時間を汚染状況に合わせて変更して、洗浄運転を行う。一方、碍子列11側は、原則的には、碍子列10側が休止時に、電磁弁63を開き、スプレーノズル21から碍子列11の洗浄を開始する。
【0016】
また、洗浄間隔休止期間は、温度計により測定した気温が、0℃以下となった場合には、及び風速が平均10m/s以上となっている場合には、洗浄間隔休止期間を1〜5分に設定して、運転する。
ここで、上記休止時間を1〜5分としたのは、厳冬期の実験(風速10m/s、気温0℃)で、10分以上の休止時間を取ると、スプレーノズル等が凍結してしまうことが判った為、安全を見て最大休止時間を5分としている。ただ、気温が下がると、凍結時間は早くなるが、洗浄水の水温が一般的には5℃程度であり、低温時でも1分程度洗浄を停止しても凍結することがなかったことより、洗浄停止時間を1分以上とした。
【0017】
次に、図2は、本発明に係る碍子洗浄装置の第2の実施の形態の系統図の概略の説明図である。
この第2の実施の形態では、第1の実施の形態の構成に加え、電磁弁60,61と電磁弁62,63との間に、通常ポンプ出口配管にて接続する設備とするためポンプ装置42と電磁弁65を介し接続する温水配管80によって、余剰蒸気等を利用した温水装置81の温水を配管5内に供給する構成である。この構成とすることにより、上記スプレーノズルに供給する洗浄水を強風低温時に、洗浄水の洗浄に加えて、温水配管80の温水により洗浄水の温度を上昇させることで、スプレーノズル20,21の温度を上昇させ凍結防止を図ることが出来る。
なお、温水導入配管内に、温水流量を調整する流量調整弁66を設け、制御部7から開度を調整することで、配管5内に供給される洗浄水の温度の調整を行い、外気温の変動に併せて洗浄水の温度を適性に保ち、スプレーノズルの凍結を効果的に防止することが出来る。
また、温水の供給は、全洗浄時間のみならず、洗浄開始時等一部の時間であっても良い。これはスプレーノズル20、21及び配管の温度上昇を図ることが出来るからである。
【0018】
また、図3は、本発明に係る碍子洗浄装置の第3の実施の形態の系統図の概略の説明図である。
この第3の実施の形態では、第1の実施の形態の構成に加え、ポンプ装置より各スプレーノズル20,21側の配管5の適宜位置に、電磁弁67を介し接続する圧縮空気導入配管90とを設ける構成としている。このような構成とすることで、洗浄工程終了時に配管内に残る洗浄水を圧縮空気導入配管90から供給する圧縮空気で吹き飛ばし、各スプレーノズル20,21のノズル付近の水分を飛散させ、各スプレーノズル20,21の凍結を防止することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の碍子洗浄装置は、主に寒冷地の発電所、開閉所、変電所などの電力施設に於いて、屋外で使用する碍子に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施の形態の系統図の概略の説明図である。
【図2】第2の実施の形態の系統図の概略の説明図である。
【図3】第3の実施の形態の系統図の概略の説明図である。
【符号の説明】
【0021】
10,11 碍子列
20,21 スプレーノズル
3 洗浄タンク
4 ポンプ装置
5 配管
60,61,62,63,64,65,67 電磁弁
66 流量調整弁
7 制御部
70 パイロット碍子
71 温度計
72 風速風向計
80 温水配管
81 余剰蒸気等を利用した温水装置
90 圧縮空気導入配管
91 圧縮空気貯槽


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数段に分けて設置された碍子列を所定間隔毎に複数列設置してなる碍子群を洗浄する碍子洗浄装置において、
上記各碍子列毎に対して洗浄水を噴射して上記各碍子列の碍子を洗浄できる位置に配設した複数のスプレーノズルと、洗浄水タンク内の洗浄水を揚水してスプレーノズル側へ供給するためのポンプ装置と、このポンプ装置と各スプレーノズルとの間に配設している配管に設けている複数の電磁弁とよりなり、
上記スプレーノズルからの洗浄水を強風低温時に、洗浄間隔を短時間に連続的に運転を行い洗浄し、碍子の汚染を防止させることを特徴とする碍子洗浄装置。
【請求項2】
洗浄間隔休止期間を1〜5分に設定して、洗浄を継続的に運転を行うことを特徴とする請求項1記載の碍子洗浄装置。
【請求項3】
複数段に分けて設置された碍子列を所定間隔毎に複数列設置してなる碍子群を洗浄する碍子洗浄装置において、
上記各碍子列毎に対して洗浄水を噴射して上記各碍子列の碍子を洗浄できる位置に配設した複数のスプレーノズルと、洗浄水タンク内の洗浄水を揚水してスプレーノズル側へ供給するためのポンプ装置と、このポンプ装置と各スプレーノズルとの間に配設している配管に設けている複数の電磁弁と、洗浄水タンクとポンプ装置との間に、電磁弁を介し接続する温水配管とよりなり、
上記スプレーノズルからの洗浄水を強風低温時に、洗浄水の洗浄に加えて、全洗浄時間、或いは洗浄時間の一部の時間に温水配管の電磁弁を開き、温水を加えた洗浄運転を行い、碍子の汚染を防止させることを特徴とする碍子洗浄装置。
【請求項4】
請求項3記載の碍子洗浄装置において、ポンプ装置に接続する温水導入配管内に、温水流量を調整する流量調整弁を設けることを特徴とする碍子洗浄装置。
【請求項5】
複数段に分けて設置された碍子列を所定間隔毎に複数列設置してなる碍子群を洗浄する碍子洗浄装置において、
上記各碍子列毎に対して洗浄水を噴射して上記各碍子列の碍子を洗浄できる位置に配設した複数のスプレーノズルと、ポンプ装置より各スプレーノズル側の配管の適宜位置に、このポンプ装置と各スプレーノズルとの間に配設している配管に設けている複数の電磁弁と、ポンプ装置と各スプレーノズルとの間に配設している配管に設けている複数の電磁弁との間に、電磁弁を介し接続する圧縮空気導入配管よりなり、
上記スプレーノズルからの洗浄水を強風低温時に、碍子の洗浄工程終了時に圧縮空気導入配管から圧縮空気を管内に導入し、各スプレーノズルより圧縮空気を排出させることを特徴とする碍子洗浄装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−42523(P2007−42523A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227411(P2005−227411)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】