説明

磁場検出装置及び方法

【課題】磁性体試料のサイズや移動による表面高さの変動に対して影響を受けることなく、高精度、高分解能で磁場の絶対値を測定可能とする。
【解決手段】磁性体試料5の磁場を検出するためにホルダベース37に取り付けられた測定子と、試料5と平行にホルダベース37を二方向に移動可能な微動ユニット35と、試料5対して垂直方向に測定子40を移動可能なZm駆動系21と、既知磁場を発生させる外部磁場発生器50と、測定子を外部磁場発生器50の既知磁場中に移動可能な一軸駆動機構30と、試料5に磁場を印加するライト素子とを備えている。測定子は、試料5の対向面に凸部を有し、ここにリード素子が設けられ、前記凸部表面にはDLC膜が形成されている。測定子は、可撓性支持構造を介してホルダベース37に取り付けられ、ホルダベース37はホルダアーム36を介して微動ユニット35に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面部分を有する磁性体試料、例えば電子基板、板状磁性体などの平面部分に発生する絶対磁場強度、さらに必要ならば前記試料の保磁力を測定するための磁場検出装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子基板の漏れ磁場や板状磁性体の磁場分布などの測定にはホール素子やプローブ、磁気センサといった測定子を用いた磁気測定装置が用いられている。
【0003】
磁場は磁性表面からの距離の2乗に反比例して弱くなり、同じく磁束は磁性表面から距離が離れる程拡散傾向にあるため、高精度高分解能で磁場を測定するには、測定子と被測定物を至近距離(望ましくはナノメータレベル)の距離で維持するのが望ましい。
【0004】
また、評価用の磁場測定結果は、精度や分解能が良いだけでなく、絶対値で出力されることが望ましい。磁気センサに用いられる磁気抵抗素子は磁場−抵抗曲線が非線形であり、さらに個別の誤差がある。従って測定された値は物理量ではあるものの絶対値とは言えず、相応の誤差を有することを前提としなければならない問題がある。
【0005】
さらに、磁場測定子だけではなく、磁場発生素子を併せ持つことで、試料の保磁力を測定可能とすることも要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−17557号公報
【特許文献2】特開2008−517289号公報
【特許文献2】特開2010−92532号公報
【0007】
特許文献1は、「垂直磁気記録媒体におけるナノスケールの保磁力分布を映像化可能な磁気力顕微鏡を利用した垂直磁気記録媒体中の保磁力分布解析法並びにその解析装置を提供する」ことを目的とし、カンチレバー式の探針とカンチレバーの変位を測定するためのレーザ照射装置と大型のコイル及びポールピースにより磁界を発生させる構成である。この特許文献1に係るカンチレバー式の磁気測定は、試料とカンチレバーを一定間隔に維持するための形状測定モードが必要になるなど、装置が複雑化、大型化する傾向がある。
【0008】
特許文献2は磁気抵抗センサーを用いた磁場測定方法及び磁場測定装置であり、その段落[0100]には「電流発生器40は、その後、磁場の傾斜をもたらすための、電流の傾斜を発生させるために用いられる。そして、各電流値について、磁気抵抗センサーの抵抗が測定装置50により測定され、表が作成される。これにより、磁場の関数としての磁気抵抗の応答曲線が得られる。」とあり、即ち電流値(磁気)−抵抗値曲線は磁場の関数として成り立つことを示唆している。これらを利用して補正を行なうことが可能であると開示しているが、具体的アプリケーションについては開示されていない。
【0009】
特許文献3は磁気特性検査方法及び装置であり、ここには薄膜ヘッド素子測定におけるローバー)上面の凸面加工(クラウン加工)に対して磁気センサの対向間隔を安定させるという手法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、被測定物としての平面部分を有する磁性体試料のサイズや移動による表面高さの変動に対して影響を受けることなく、前記試料の平面部分表面から測定子まで安定した微小距離(例えばナノメータレベル)を維持可能な、高精度、高分解能で、且つ測定子を校正することで絶対磁場を測定可能な磁場測定装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、平面部分を有する磁性体試料の前記平面部分の磁場を検出する磁場検出装置であって、
磁場を検出する測定子と、
前記試料に対して前記試料の前記平面部分と略平行に前記測定子を二方向に相対移動可能な第一の駆動手段と、
前記試料の前記平面部分に対して略垂直に前記測定子を一方向に相対移動可能な第二の駆動手段と、
既知磁場を発生させる少なくとも一つの磁場発生装置と、
前記測定子を前記磁場発生装置の既知磁場中に相対移動可能な第三の駆動手段とを備え、
前記測定子は、前記試料の前記平面部分の対向面に凸部を有し、前記凸部に少なくとも磁気検知素子が設けられ、前記凸部表面には保護膜が形成され、
前記測定子は、可撓性支持構造を介してホルダベースに取り付けられ、前記ホルダベースはホルダアームを介して第一、第二又は第三の駆動手段に連結されている。
【0012】
前記第1の態様において、前記試料を載置して前記平面部分と略平行に二方向に前記測定子に対して相対移動可能な第四の駆動手段をさらに備え、前記試料の検出範囲は前記第四の駆動手段の移動範囲に含まれるとよい。
【0013】
本発明の第2の態様も、平面部分を有する磁性体試料の前記平面部分の磁場を検出する磁場検出装置であって、
磁場を検出する測定子と、
前記試料を載置して前記平面部分と略平行に二方向に前記測定子に対して相対移動可能な第四の駆動手段と、
前記試料の前記平面部分に対して略垂直に前記測定子を一方向に相対移動可能な第二の駆動手段と、
既知磁場を発生させる少なくとも一つの磁場発生装置と、
前記測定子を前記磁場発生装置の既知磁場中に相対移動可能な第三の駆動手段とを備え、
前記測定子は、前記試料の前記平面部分の対向面に凸部を有し、前記凸部に少なくとも磁気検知素子が設けられ、前記凸部表面には保護膜が形成され、
前記測定子は、可撓性支持構造を介してホルダベースに取り付けられ、前記ホルダベースはホルダアームを介して第二又は第三の駆動手段に連結されている。
【0014】
前記第2の態様において、前記試料に対して前記試料の前記平面部分と略平行に前記測定子を二方向に相対移動可能な第一の駆動手段をさらに備えてもよい。
【0015】
前記第1又は第2の態様において、前記磁場発生装置のうち、第一の磁場発生装置である外部磁場発生器が前記磁性体試料の前記平面部分に磁場を印加してもよい。
【0016】
前記第1又は第2の態様において、前記磁場発生装置のうち、第二の磁場発生装置である磁場発生素子が前記磁性体試料の前記平面部分に磁場を印加してもよい。
【0017】
前記第1又は第2の態様において、前記磁場発生素子は前記測定子の前記凸部に在ってもよい。
【0018】
前記第1又は第2の態様において、前記可撓性支持構造は、ホルダベースに重ねて配置された可撓性サスペンション及びフレキシブル基板とを有し、前記測定子は、前記フレキシブル基板に機械的に固定され、かつ電気的に接続されていてもよい。
【0019】
前記第1の態様において、前記第一の駆動手段は、前記試料の前記平面部分における測定領域で前記測定子を相対移動させるものであってもよい。
【0020】
前記第1の態様において、前記測定子を前記試料の前記測定領域に接触させた状態で、前記第一の駆動手段で相対移動させることで前記測定領域の磁場を測定してもよい。この場合、前記測定子の前記凸部表面の前記保護膜が前記試料に接触してもよい。
【0021】
前記第2の態様において、前記第四の駆動手段は、前記試料の前記平面部分における測定領域で前記測定子を相対移動させるものであってもよい。
【0022】
前記第2の態様において、前記測定子を前記試料の前記測定領域に接触させた状態で、前記第四の駆動手段で相対移動させることで前記測定領域の磁場を測定してもよい。この場合、前記測定子の前記凸部表面の前記保護膜が前記試料に接触してもよい。
【0023】
前記第1又は第2の態様において、前記磁気検知素子は磁気抵抗素子であって、前記磁気抵抗素子の磁場−抵抗曲線を前記磁場発生装置による既知磁場を基準として校正してもよい。
【0024】
前記第1又は第2の態様において、前記試料の前記平面部分の磁場に対して、前記磁場発生装置で発生させた磁場をさらに供与し、前記試料の磁場分布のS/N反転状態を前記磁気検出素子で測定することで、前記試料の保磁力を判定してもよい。
【0025】
前記第1又は第2の態様において、前記磁性体試料の前記平面部分を撮像可能な撮像装置をさらに有し、前記撮像装置及び前記磁気検知素子双方で認識可能な磁性材料で形成された基準マークを有するアライメント治具を用いて、前記撮像装置と前記磁気検知素子のアライメントを校正してもよい。
【0026】
本発明の第3の態様は、測定領域を含んだ平面部分を有する磁性体試料の前記測定領域の磁場を検出する磁場検出方法であって、
磁気検知素子を含む測定子を磁場発生装置の既知磁場中に相対移動して、前記磁場発生装置による既知磁場を基準に校正して校正情報を記憶する校正工程と、
前記試料の所定の測定領域に前記測定子を前記平面部分と略平行方向に相対移動させる移動工程と、
前記移動工程の後、前記所定の測定領域にて、前記測定子の前記試料の前記平面部分に延在した方向に位置決めする位置決め工程と、
前記測定子を前記試料に接触させ、前記磁気検知素子と前記試料との間隙を、前記試料の前記平面部分に対して略垂直方向に10nm以内に保持する接触工程と、
前記間隙を維持した状態で、前記測定子を前記測定領域内で前記平面部分と略平行方向に相対移動させ、所定のピッチで前記試料の持つ磁場を測定する測定工程とを備える。
【0027】
前記第3の態様において、前記測定領域は複数存在し、一つの測定領域の測定が終了した後、次の測定領域へ前記測定子を移動させる移動工程と、前記位置決め工程と、前記接触工程とを経た後、前記測定工程を実行してもよい。
【0028】
本発明の第4の態様は、測定領域を含む平面部分を有する磁性体試料に一定の着磁を行った後、外部からさらに反対の磁場を付与し、前記測定領域の保磁力を検出する磁場検出方法であって、
前記一定の着磁を行ってある前記試料の前記測定領域に、磁場発生装置で前記反対の磁場を発生して前記試料を着磁する着磁工程と、
磁気検知素子を含む測定子を前記試料に接触させ、前記磁気検知素子と前記試料との間隙を、前記試料の前記平面部分に対して略垂直方向に10nm以内に保持する接触工程と、
前記間隙を維持した状態で、前記測定子を前記測定領域内で前記平面部分と略平行方向に相対移動させ、所定のピッチで前記試料の持つ磁場を測定する測定工程とを備え、
前記磁場発生装置による着磁前の前記試料と着磁後の前記試料の磁区分布の比較を以って、前記試料の保磁力を導き出すものである。
【0029】
前記第4の態様において、前記磁場発生装置としての磁場発生素子が前記測定子に設けられており、前記磁場発生素子と前記試料との間隙を、前記試料の前記平面部分に対して略垂直方向に10nm以内に保持してもよい。
【0030】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、磁気検出素子を有する測定子と、被測定物としての平面部分を有する磁性体試料との距離が微小値(例えばナノメータレベル)で安定維持できるので、面分解能が高い(例えばナノレベル)磁場測定が可能となる。さらに磁場発生装置を用いて、既知量の外部磁場に対する磁気検出素子の出力を測定し、校正情報として利用することで、磁場の絶対強度測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る磁場検出装置及び方法の実施の形態を示す概略斜視図である。
【図2】被測定物としての平面部分を有する磁性体試料の斜視図である。
【図3A】前記磁場検出装置における測定子の底面図である。
【図3B】前記測定子の一部を拡大して示す側面図である。
【図4】前記測定子のホルダベース及びホルダアームへの取付構造を示す分解斜視図である。
【図5】試料表面の状態に関わらず、測定子が有する磁気検出素子(リード素子)及び磁場発生素子(ライト素子)が一定至近距離を保つことを示す説明図である。
【図6A】磁気検出素子として磁気抵抗素子(MR素子)を用いた場合の校正方法を示す説明図である。
【図6B】磁気検出素子として磁気抵抗素子を用いた場合の素子個体差の例を示す特性図である。
【図7A】アライメント治具を用いて撮像装置(顕微鏡)と測定子との位置合わせを行う工程であって、撮像装置でアライメント治具の基準マークを撮像する工程の説明図である。
【図7B】アライメント治具を用いて撮像装置(顕微鏡)と測定子との位置合わせを行う工程であって、測定子でアライメント治具の基準マークを認識する工程の説明図である。
【図8】磁性体試料の着磁状態例を示す拡大写真図である。
【図9】磁性体試料の磁場測定フローを示すフローチャートである。
【図10】磁性体試料の着磁及び反転着磁状態例を示す拡大写真図である。
【図11】磁性体試料の保磁力測定フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0034】
図1は本発明に係る磁場検出装置の全体構成を示す。この図において、Xt軸方向(図示のXYZ直交3軸のうちのX軸に平行)に摺動自在なXテーブル11と、Xテーブル11上に配されてYt軸(XYZ直交3軸のうちのY軸に平行)方向に摺動自在なYテーブル12とを有するXYテーブル10が第四の駆動手段として基台1上に設置されており、Yテーブル12上に平面部分を有する磁性体試料5が位置決め固定されている。この結果、磁性体試料5はXY平面内で移動自在である。XYテーブル10の駆動方式は例えばサーボモータでボールネジを回転駆動するものでもよく、リニアモータであればなお良い。実効ストロークは例えば100×100mmである。位置決め分解能は例えば10nm程度である。XYテーブル10の移動ストロークは試料の測定領域をカバーするよう設定すれば良い。これにより、試料中の複数の測定領域が多い場合、或いは測定領域そのものが広大であっても対処が可能である。
【0035】
基台1には固定フレーム2が立設固定されており、固定フレーム2の前面にZm軸方向(XYZ直交3軸のうちのZ軸に平行)に摺動自在にZブロック20が取り付けられている。Zブロック20は固定フレーム2の背後に設けられた第二の駆動手段としてのZm軸駆動系21にて昇降駆動される。Zブロック20には第三の駆動手段として横長の一軸駆動機構30が取り付けられており、一軸駆動機構30が有する移動ヘッド31はXm軸方向(XYZ直交3軸のうちのX軸に平行)に摺動自在である。この結果、移動ヘッド31はXm軸及びZm軸方向に移動自在となる。Zm軸駆動系21及び一軸駆動機構30の駆動方式は例えばサーボモータでボールネジを回転駆動するものである。
【0036】
移動ヘッド31の下方には第一の駆動手段としての微動ユニット35が固定され、微動ユニット35によりXp軸及びYp軸方向(それぞれXYZ直交3軸のうちのX軸及びY軸に平行)に微小駆動されるホルダアーム36の先端に、ホルダベース37が固着されている(あるいはホルダアーム36とホルダベース37とが一体品として形成されている)。ホルダベース37の底面側には図3A、図3B、図4及び図5に示す測定子40が取り付けられている。測定子40及びその取付構造については後述する。
【0037】
前記磁性体試料5の平面部分は、例えば図2のように1乃至複数の測定領域6となっている。前記微動ユニット35は、例えばピエゾ素子(圧電素子)を用いたピエゾアクチュエータであり、高分解能のピエゾX駆動(Xp軸方向)及びピエゾY駆動(Yp軸方向)が可能で、試料5の測定領域6内で測定子40を移動させるものである。移動ストローク(実効ストローク)は例えば0.3×0.3mm(300×300μm)だが、これに制限されない。位置決め分解能は1nmである。
【0038】
第一の磁場発生装置である外部磁場発生器50は磁気ヨーク51に所定の巻線(図示せず)を施したものであり、所定の外部磁場を発生可能で、基台1上に固定配置されている。一軸駆動機構30が有する移動ヘッド31は、少なくとも測定子40が外部磁場発生器50の既知磁場中に入る位置(図1の仮想線位置)から、磁性体試料5の平面部分上方に至るまでXm軸方向に移動できるものである。
【0039】
撮像装置(顕微鏡)55は、基台1側に固定されていて、磁性体試料5を上方より撮像するものであり、その光軸はZ軸に平行である。この撮像装置55は磁性体試料5と測定子40の位置決めのため、磁性体試料5に形成された光学的基準マーク(不図示)を撮像し、その画像データを制御装置(不図示)に伝送するものである。撮像装置55は、例えば視野が1×0.75mm、解像度は640×480ピクセルである。
【0040】
前記光学的基準マークは例えば図2に示す磁性体試料5の各測定領域6に設けられていてもよい。
【0041】
図3A、図3Bに示すように、測定子40は方形チップの底面部(試料5に対面する側)に三箇所の凸部41,42,43を形成し、さらに凸部41,42,43の表面(少なくとも底面)に耐摩耗性の非磁性保護膜としてDLC(Diamond-Like Carbon)膜45を設けたものである。例えば、凸部41,42,43は二等辺三角形又は正三角形の頂点にそれぞれ位置する配置であり、二等辺が交わる頂点に位置する凸部41に、図3Bの拡大部分に示すように磁気検知素子としてのリード素子60と第二の磁場発生装置としてのライト素子70とが配設されている。ここでは磁性体試料5の表面の磁場を測定するリード素子60として磁気抵抗素子(MR素子)を用いている。また、ライト素子70はギャップを有する磁気コアに巻線を施した書込用磁気ヘッドと同様の構造であり、所定(既知)の磁場を発生させることで、磁性体試料5を着磁することが可能である。電流値を変え、発生磁場強度を変更することにより試料5の保磁力(保磁場)の測定などを行うことが可能である。
【0042】
なお、凸部41,42,43の形成は、例えば方形チップの底面部をドライエッチングして凸部41,42,43となる部分のみを残すことにより行うことができる。測定子40の底面側には当初から形成されていたDLC膜45が所定厚みで残される。但し、エッチング後にDLC膜45を所定厚みで形成してもよい。各々の凸部41,42,43にDLC膜45を積層した部分が磁性体試料5に接触するガードパッドとして機能する。測定子40は磁性体試料5の平面部分に接触させた状態で、内蔵するリード素子60による磁場検出及び内蔵する第二の磁場発生装置であるライト素子70による着磁を行うことを想定しており、DLC膜45の膜厚がリード素子60及びライト素子70と磁性体試料5との距離を規定することになる。ここでは、高分解能の磁場検出を目的とするため、DLC膜45の膜厚は10nm以下に設定することが好ましい。そうすれば、磁性体試料5の表面に対して略垂直方向に10nm以内にリード素子60及びライト素子70を近接保持できることになる。
【0043】
前記測定子40は、可撓性支持構造を介してホルダベース37に取り付けられる。図4は可撓性支持構造を利用した測定子40のホルダベース37への取付構造の一例あり、微動ユニット35で駆動されるホルダアーム36(剛性を有する)の先端側に、剛性を有するホルダベース37が固着され、可撓性サスペンション38及びフレキシブル基板39を介して測定子40が取り付けられている(図4では試料5に対向する面が上向きとして図示されている)。すなわち、可撓性サスペンション38とフレキシブル基板39は一方の縁部がホルダベース37上に順次重ねられて固定され、フレキシブル基板39上に測定子40が機械的に固着され、かつフレキシブル基板39の導体パターンに電気的に接続されている。
【0044】
可撓性ホルダ部材38は、所要の切欠を形成することで、周縁部に部分的(放射状)に繋がった円形リング部38a、及び円形リング部38aに部分的(放射状)に繋がったその内側の円板部38bを有している。円板部38bにはフレキシブル基板39側に向いた突起(ディンプル)38cが形成されている。突起38cは可撓性ホルダ部材38の可撓性によってZ方向にのみ移動自在である。ホルダベース37は可撓性ホルダ部材38の動きを妨げないように凹部37aを有する。
【0045】
フレキシブル基板39にも同様の切欠が形成されることで、突起38cに当接する測定子配置領域39aが区画され、ここに測定子40が突起38cの真上位置となるように固着されている。つまり、測定子40はZ方向、及びピッチPx、ロールRy方向にフロート自在に支持される。
【0046】
上述したように、測定子40が、三箇所のガードパッド(各々の凸部41,42,43にDLC膜45を積層した部分)と、図4の可撓性サスペンション構造とを具備することによって、図5に示すように、磁性体試料5の表面形状に関わらず、磁性体試料5の表面形状に追従し、かつ接触状態を維持して任意の姿勢を取り得る。また、測定子40内のリード素子60及びライト素子70はDLC膜45の微小厚みを介して磁性体試料5の表面に対向することになり、つまり一定至近距離を保つため、磁場測定の安定性及び測定精度の向上を図ることができる。
【0047】
図6Aはリード素子60が磁気抵抗素子であるときの、外部磁場発生器50による磁気抵抗素子の校正方法の一例を示す。図1の外部磁場発生器50に所定(既知)の磁場hを発生させ、図1仮想線に示すように磁場h内に測定子40を置くことで、測定子40の出力値rを読み取り、所定の磁気抵抗素子の特性として記憶する。図6Aでは、例えば既知の磁場h,h,h,h,h,hに対応する出力値r,r,r,r,r,rをそれぞれプロットして磁気抵抗素子の特性曲線(磁場−抵抗曲線)を得ている。但し、校正ポイントは6個に限らない。
【0048】
図6Bに示すように、従来は、磁気検知素子に磁気抵抗素子を使用した場合、個体によって出力値に差が現れる。図示の場合、第1素子では磁場hxのときの抵抗がrx1であるのに対し、第2素子では磁場hxのときの抵抗が異なる抵抗値rx2となっている。この個体差のために、測定時の出力の値を磁場に展開しても絶対的な磁場の値はわからなかった。これを図6Aのように事前に所定磁場hにおける磁気抵抗素子の出力rをプロットし、磁場−抵抗曲線を外部磁場発生器による既知磁場を基準として校正しておけば、測定時には、得られた出力値rxに対応する磁場強度hxを読み出すことで絶対磁場強度を得ることが出来る。外部磁場発生器50の発生磁場強度は例えば5kOe程度以下である。
【0049】
図7A及び図7Bは、測定子40による測定位置を校正するために、アライメント治具80を用いて撮像装置(顕微鏡)55と測定子40の位置合わせを行なう工程を示す。アライメント治具80は、ガラス等の基板にパーマロイやニッケルなどの磁性材料で磁性基準マーク81(図では十字)を成膜して形成したものである。磁性基準マーク81は光学的、磁気的両方で認識可能なものであれば良い。
【0050】
具体的には、図7Aのように撮像装置55でアライメント治具80(例えば図1のXYテーブル10上に載置)を撮像し、撮像装置55の座標(1)における磁性基準マーク81の位置を任意の画像処理方法にて記録する。図7Aでは説明を容易とするために、撮像装置55の視野中心に磁性基準マーク81を合致させている。続いて図7Bのようにリード素子60を有する測定子40でアライメント治具80の磁性基準マーク81を走査し、基準マーク81の位置を認識して、測定子40の持つ座標(2)に記録する。上記2つの基準マークの位置を一致させた時の座標(1)と座標(2)の位置関係を算出し、何れかの座標を基準として位置校正を行なう。一般には撮像装置の座標(1)を基準として、測定子40によって測定された磁場の位置をオフセットすることで、磁場測定位置のXYデータとする。
【0051】
次に、上記磁場検出装置を用いて、平面部分を有する磁性体試料5の測定領域6の磁場を検出する磁場測定動作フローを説明する。
【0052】
図8は測定対象となる磁性体試料5の測定領域の磁区状態の例示であり、右側は1×1mmの範囲、左側はその一部を拡大した5×5μmの範囲を示す。
【0053】
図9において、ステップ(step)1では測定子40(つまり測定子が内蔵するリード素子60)の校正が終了しているかどうか判断する。校正が必要であれば、図1のZm軸駆動系21により磁性体試料5に対して上昇位置とされた移動ヘッド31が、一軸駆動機構30によりXm軸方向に駆動され、仮想線で示される外部磁場発生器50のヨーク間にホルダベース37及び測定子40を位置させる(ステップ10)。この位置にて、既知量である所定磁場を測定子40が内蔵するリード素子60に印加し、図6にて説明した方法により既知磁場を基準に校正してリード素子60の校正情報を図示しない制御部に記憶する(ステップ11)。
【0054】
測定子40の校正が終了したら、ステップ2の「XYテーブル移動」を行う。つまり、XYテーブル10のXt軸、Yt軸を駆動して、今回の測定対象となる磁性体試料5の測定領域6上に撮像装置55が位置するように試料5を移動させる。次いで、ステップ3において、Xt軸、Yt軸位置を微調整して図7Aのように撮像装置55の真下に基準マーク81が来るように位置決めするとともに、撮像装置55にて測定対象となる測定領域6に対応した基準マーク81を撮像する。その後、測定子40を一軸駆動機構30により磁性体試料5上の測定領域6を測定するための所定位置に戻す(ステップ4)。
【0055】
ステップ5では、Zm軸駆動系21によってZブロック20を下降させることで、測定子40を下降させて磁性体試料5の測定領域6に接触させ、この状態でZm軸駆動系21は停止する。
【0056】
撮像した画像データを用いて測定領域6にて、測定子40をXYテーブル10でXt軸、Yt軸方向に微小移動(試料5の平面部分に延在した方向に移動)して位置決めする(ステップ6)。なお、ステップ6で始めに位置決めされた測定子40のXY軸方向の位置が後工程のXt、Yt軸移動の基準となる。
【0057】
ステップ6でXYテーブル10によるXt軸及びYt軸方向の動作で測定子40のとの相対的移動を行った後、ステップ7の「磁場測定」、すなわちリード素子60による磁場測定を行う。ステップ6及びステップ7は測定領域6内において所定のピッチで測定位置を変更して複数回行う。
【0058】
ステップ8で「測定領域の測定終了」と判断されたら、Zm軸駆動系21によって測定子40を上昇させて磁性体試料5に対して非接触状態に戻す。
【0059】
一度に広域の測定領域6を測定する場合等は、図9のフローチャートの動作でよいが、測定領域6が複数ある場合には、図9の動作フローに加えて全測定領域の測定終了かどうかの判断を行い、全測定領域の測定終了でなければ、全測定領域の測定終了となるまで、図9のステップ2〜ステップ9を、各測定領域に対して実行すればよい。また、図9ではXYテーブル10によるXt軸及びYt軸方向の動作により、測定領域6内において所定のピッチで測定位置を変更して複数回測定を行うものとしたが、XYテーブル10の代わりに第一の駆動手段としての微動ユニット35で測定子40をXp軸及びYp軸方向に微小駆動することで、ステップ6を実行してもよい。
【0060】
なお、リード素子60による磁場測定結果は、測定位置情報とともに制御装置に出力されて記憶され、制御装置では記憶されたリード素子60の校正情報を基に磁場測定結果を補正して、絶対磁場強度を得る。
【0061】
次に、上記磁場検出装置を用いて、測定領域を含む平面部分を有する磁性体試料に一定の着磁を行った後、外部からさらに反対の磁場を付与し、前記測定領域の保磁力を検出する測定動作フローを説明する。
【0062】
図10は測定対象となる磁性体試料5の測定領域(10×10μm)の磁区状態の例示であり、左側は着磁前、中央は着磁後、右側はSN反転着磁後の状態である。中央の着磁後の磁区状態に対して、右側のSN反転着磁後に磁区変化が確認できた時の磁場強度が磁性体試料5の保磁力となる。
【0063】
図11の保磁力測定動作フローでは、磁性体試料5は予め試料に垂直な一方向に着磁処理が施されている(図10の中央の着磁状態にある)ものとし、測定子40が内蔵するライト素子70は、その着磁処理後の磁性体試料5に対してSN反転着磁を行うものとする。まず、ステップ21「XYテーブル測定領域間移動」では、XYテーブル10のXt軸、Yt軸を駆動して今回の測定対象となる磁性体試料5の測定領域6上に撮像装置55が位置するように試料5を移動させる。次いで、ステップ22において、Xt軸、Yt軸位置を微調整して図7Aのように撮像装置55の真下に基準マーク81が来るように位置決めするとともに、撮像装置55にて測定対象となる測定領域6に対応した基準マーク81を撮像する。その後、測定子40を一軸駆動機構30により磁性体試料5上の測定領域6を測定するための所定位置に戻す(ステップ23)。
【0064】
ステップ24では、Zm軸駆動系21によってZブロック20を下降させることで、測定子40を下降させて磁性体試料5の測定領域6に接触させ、この状態でZm軸駆動系21は停止する。
【0065】
撮像した画像データを用いて測定領域6にて、測定子40をXYテーブル10でXt軸、Yt軸方向に微小移動(試料5の平面部分に延在した方向に移動)して位置決めする(ステップ25)。なお、ステップ25で始めに位置決めされた測定子40のXY軸方向の位置が後工程のXt、Yt軸移動の基準となる。
【0066】
ステップ25でXYテーブル10によるXt軸及びYt軸方向の動作で測定子40のとの相対的移動を行った後、ステップ26の「着磁」、すなわち磁場発生装置としてのライト素子70による着磁を行う。ステップ25及びステップ26は測定領域6内において所定のピッチで着磁位置を変更して複数回行う。
【0067】
ステップ27で「着磁領域の着磁終了」と判断されたら、ライト素子70によって着磁された領域に対して図9のステップ1からステップ11の磁場測定動作フローを実行し、ステップ28にて「磁区変化」の有無を判断する。
【0068】
磁区変化が確認できなかった場合には、ステップ29の「測定子上昇・停止」を経て、ステップ30の「着磁(磁場発生装置)電流増加」を実行し、ステップ21からステップ28を実行して着磁領域の着磁を終了させ、ステップ1からステップ11の磁場測定動作フローを実行する。この動作はステップ28で磁区変化が確認されるまで繰り返し行う。SN反転着磁前の磁区状態とSN反転着磁後の磁区状態との比較によって磁区変化が確認できたときの磁場強度が磁性体試料5の保磁力となる。前記SN反転着磁前の磁区状態とSN反転着磁後の磁区状態との比較は、制御装置において、SN反転着磁前のリード素子60による磁場測定結果と、SN反転着磁後のリード素子60による磁場測定結果とを対比することで実行できる。
【0069】
なお、測定領域6が複数ある場合、図11の動作を各測定領域毎に繰り返して行ってもよい。あるいは全測定領域についてライト素子70による着磁を行った後、全測定領域の測定終了となるまで、図9のステップ2〜ステップ9を、各測定領域に対して実行してもよい。
【0070】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0071】
(1) リード素子60を有する測定子40と、被測定物としての平面部分を有する磁性体試料5との距離が微小値(例えばナノメータレベル)で安定維持できるので、面分解能が高く(例えばナノレベル)で、広い測定範囲(例えば100平方ミリメートル)を測定可能となる。
【0072】
(2) 外部磁場発生器50を用いて、既知量の外部磁場に対するリード素子60の出力を測定し、校正情報として利用することで、磁場の絶対強度測定が可能となる。
【0073】
(3) 磁性体試料5に対する着磁機能を有するライト素子70を具備しているので、磁性体試料5のSN反転着磁前の磁区状態とライト素子70によるSN反転着磁後の磁区状態との比較によって磁区変化が確認できたときの磁場強度から磁性体試料5の保磁力を測定できる。
【0074】
(4) 磁性体試料5を高分解能のXYデーブル10上に載置しており、大面積の磁性体試料5の測定にも利用できる。
【0075】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0076】
磁性体試料をSN反転着磁するための磁場発生素子は、実施の形態では測定子に設けたが、測定子とは別にホルダアームに大型の磁場発生素子を取り付けても良い。SN反転着磁自体は広い面積で行っても差し支えない。
【0077】
さらに、第一の磁場発生装置である外部磁場発生器の形状を工夫することで第二の磁場発生装置である磁場発生素子として兼用して使用することも可能である。この場合、磁性体試料を載置したXYテーブルを移動させることで、必要な範囲のSN反転着磁が可能である。また、外部磁場発生器が基台に対して移動自在な構成であってもよい。
【0078】
測定子を磁性体試料に対してXYZ軸方向に駆動する構成は、図1の機構に限定されず、磁性体試料に対して測定子がXYZ軸方向に相対移動可能な構成であればよい。
【符号の説明】
【0079】
1 基台
2 固定フレーム
5 磁性体試料
10 XYテーブル
20 Zブロック
21 Zm軸駆動系
30 一軸駆動機構
31 移動ヘッド
35 微動ユニット
36 ホルダアーム
37 ホルダベース
38 サスペンション
39 フレキシブル基板
40 測定子
41,42,43 凸部
45 DLC膜
50 外部磁場発生器(第一の磁場発生装置)
55 撮像装置
60 リード素子
70 ライト素子(第二の磁場発生装置)
80 アライメント治具
81 磁性基準マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面部分を有する磁性体試料の前記平面部分の磁場を検出する磁場検出装置であって、
磁場を検出する測定子と、
前記試料に対して前記試料の前記平面部分と略平行に前記測定子を二方向に相対移動可能な第一の駆動手段と、
前記試料の前記平面部分に対して略垂直に前記測定子を一方向に相対移動可能な第二の駆動手段と、
既知磁場を発生させる少なくとも一つの磁場発生装置と、
前記測定子を前記磁場発生装置の既知磁場中に相対移動可能な第三の駆動手段とを備え、
前記測定子は、前記試料の前記平面部分の対向面に凸部を有し、前記凸部に少なくとも磁気検知素子が設けられ、前記凸部表面には保護膜が形成され、
前記測定子は、可撓性支持構造を介してホルダベースに取り付けられ、前記ホルダベースはホルダアームを介して第一、第二又は第三の駆動手段に連結されていることを特徴とする磁場検出装置。
【請求項2】
前記試料を載置して前記平面部分と略平行に二方向に前記測定子に対して相対移動可能な第四の駆動手段をさらに備え、前記試料の検出範囲は前記第四の駆動手段の移動範囲に含まれる、請求項1に記載の磁場検出装置。
【請求項3】
平面部分を有する磁性体試料の前記平面部分の磁場を検出する磁場検出装置であって、
磁場を検出する測定子と、
前記試料を載置して前記平面部分と略平行に二方向に前記測定子に対して相対移動可能な第四の駆動手段と、
前記試料の前記平面部分に対して略垂直に前記測定子を一方向に相対移動可能な第二の駆動手段と、
既知磁場を発生させる少なくとも一つの磁場発生装置と、
前記測定子を前記磁場発生装置の既知磁場中に相対移動可能な第三の駆動手段とを備え、
前記測定子は、前記試料の前記平面部分の対向面に凸部を有し、前記凸部に少なくとも磁気検知素子が設けられ、前記凸部表面には保護膜が形成され、
前記測定子は、可撓性支持構造を介してホルダベースに取り付けられ、前記ホルダベースはホルダアームを介して第二又は第三の駆動手段に連結されていることを特徴とする磁場検出装置。
【請求項4】
前記試料に対して前記試料の前記平面部分と略平行に前記測定子を二方向に相対移動可能な第一の駆動手段をさらに備える、請求項3に記載の磁場検出装置。
【請求項5】
前記磁場発生装置のうち、第一の磁場発生装置である外部磁場発生器が前記磁性体試料の前記平面部分に磁場を印加する、請求項1又は3に記載の磁場検出装置。
【請求項6】
前記磁場発生装置のうち、第二の磁場発生装置である磁場発生素子が前記磁性体試料の前記平面部分に磁場を印加する、請求項1又は3に記載の磁場検出装置。
【請求項7】
前記磁場発生素子は前記測定子の前記凸部に在る、請求項6に記載の磁場検出装置。
【請求項8】
前記可撓性支持構造は、ホルダベースに重ねて配置された可撓性サスペンション及びフレキシブル基板とを有し、前記測定子は、前記フレキシブル基板に機械的に固定され、かつ電気的に接続されている、請求項1乃至7のいずれか一つに記載の磁場検出装置。
【請求項9】
前記第一の駆動手段は、前記試料の前記平面部分における測定領域で前記測定子を相対移動させる、請求項1又は2に記載の磁場検出装置。
【請求項10】
前記測定子を前記試料の前記測定領域に接触させた状態で、前記第一の駆動手段で相対移動させることで前記測定領域の磁場を測定する、請求項9に記載の磁場検出装置。
【請求項11】
前記第四の駆動手段は、前記試料の前記平面部分における測定領域で前記測定子を相対移動させる、請求項3又は4に記載の磁場検出装置。
【請求項12】
前記測定子を前記試料の前記測定領域に接触させた状態で、前記第四の駆動手段で相対移動させることで前記測定領域の磁場を測定する、請求項11に記載の磁場検出装置。
【請求項13】
前記測定子の前記凸部表面の前記保護膜が前記試料に接触する、請求項10又は12に記載の磁場検出装置。
【請求項14】
前記磁気検知素子は磁気抵抗素子であって、前記磁気抵抗素子の磁場−抵抗曲線を前記磁場発生装置による既知磁場を基準として校正する、請求項1乃至13のいずれか一つに記載の磁場検出装置。
【請求項15】
前記試料の前記平面部分の磁場に対して、前記磁場発生装置で発生させた磁場をさらに供与し、前記試料の磁場分布のS/N反転状態を前記磁気検出素子で測定することで、前記試料の保磁力を判定する請求項1乃至14のいずれか一つに記載の磁場検出装置。
【請求項16】
前記磁性体試料の前記平面部分を撮像可能な撮像装置をさらに有し、前記撮像装置及び前記磁気検知素子双方で認識可能な磁性材料で形成された基準マークを有するアライメント治具を用いて、前記撮像装置と前記磁気検知素子のアライメントを校正する、請求項1乃至15のいずれか一つに記載の磁場検出装置。
【請求項17】
測定領域を含んだ平面部分を有する磁性体試料の前記測定領域の磁場を検出する磁場検出方法であって、
磁気検知素子を含む測定子を磁場発生装置の既知磁場中に相対移動して、前記磁場発生装置による既知磁場を基準に校正して校正情報を記憶する校正工程と、
前記試料の所定の測定領域に前記測定子を前記平面部分と略平行方向に相対移動させる移動工程と、
前記移動工程の後、前記所定の測定領域にて、前記測定子の前記試料の前記平面部分に延在した方向に位置決めする位置決め工程と、
前記測定子を前記試料に接触させ、前記磁気検知素子と前記試料との間隙を、前記試料の前記平面部分に対して略垂直方向に10nm以内に保持する接触工程と、
前記間隙を維持した状態で、前記測定子を前記測定領域内で前記平面部分と略平行方向に相対移動させ、所定のピッチで前記試料の持つ磁場を測定する測定工程とを備えることを特徴とする磁場検出方法。
【請求項18】
前記測定領域は複数存在し、
一つの測定領域の測定が終了した後、次の測定領域へ前記測定子を移動させる移動工程と、前記位置決め工程と、前記接触工程とを経た後、前記測定工程を実行する請求項17に記載の磁場検出方法。
【請求項19】
測定領域を含む平面部分を有する磁性体試料に一定の着磁を行った後、外部からさらに反対の磁場を付与し、前記測定領域の保磁力を検出する磁場検出方法であって、
前記一定の着磁を行ってある前記試料の前記測定領域に、磁場発生装置で前記反対の磁場を発生して前記試料を着磁する着磁工程と、
磁気検知素子を含む測定子を前記試料に接触させ、前記磁気検知素子と前記試料との間隙を、前記試料の前記平面部分に対して略垂直方向に10nm以内に保持する接触工程と、
前記間隙を維持した状態で、前記測定子を前記測定領域内で前記平面部分と略平行方向に相対移動させ、所定のピッチで前記試料の持つ磁場を測定する測定工程とを備え、
前記磁場発生装置による着磁前の前記試料と着磁後の前記試料の磁区分布の比較を以って、前記試料の保磁力を導き出すことを特徴とする磁場検出方法。
【請求項20】
前記磁場発生装置としての磁場発生素子が前記測定子に設けられており、前記磁場発生素子と前記試料との間隙を、前記試料の前記平面部分に対して略垂直方向に10nm以内に保持する、請求項19に記載の磁場検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図9】
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【図11】
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【図8】
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【図10】
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