説明

磁性体ペーストおよびそれを用いた電子部品

【課題】高い透磁率を有する基材を得ることができる磁性体ペーストを提供するとともに、このような磁性体ペーストを用いることにより、高性能な電子部品を提供する。
【解決手段】磁性体ペーストは、平均粒径が0.5〜10μmの磁性体焼結粉末、ガラス粉末および有機成分を含む。ここで、磁性体焼結粉末/ガラス粉末の質量比を80/20〜90/10の範囲とする。さらに、ガラス粉末におけるSiO2の割合を70〜90質量%とする。この磁性体ペーストを硬化させて基材12、16、22、26を作製し、基材上に電極パターン14、18、24、28を形成して、基材の積層体10を焼成することにより、高透磁率を利用したインダクタンスを有する電子部品を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁性体ペーストおよびそれを用いた電子部品に関し、特にたとえば、硬化、焼結させることによって磁性体基材を得ることができる磁性体ペーストと、それを用いた電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の磁性体ペーストとして、例えば、無機粉末と感光性有機成分とからなるペーストであって、無機粉末が0.1〜5μmの中心粒子径を有する軟磁性体粉末とガラス粉末とを含み、軟磁性体粉末とガラス粉末との質量比が20/80〜70/30の範囲にある感光性軟磁性体ペーストが知られている。また、この感光性軟磁性体ペーストでは、ガラス粉末として、例えば、酸化ビスマス(75質量%)、酸化珪素(5質量%)、酸化硼素(10質量%)、酸化ジルコニウム(3質量%)、酸化亜鉛(3質量%)および酸化アルミニウム(4質量%)からなるガラス粉末が用いられている。この感光性軟磁性体ペーストは、例えば、ディスプレイパネルに視認性と電磁波シールド性を付与するために用いられる。
【0003】
この場合、ディスプレイ用のガラス基板の表面に感光性金属ペーストと感光性軟磁性体ペーストとを塗布することにより、積層塗布膜が形成される。この積層塗布膜にフォトマスクを介して活性光線を照射して露光し、現像することによって、メッシュ状の金属層と黒色層の積層体が形成される。抵抗値の小さい金属層により電磁波シールド性が付与され、感光性軟磁性体ペーストから形成される黒色層により視認性と電磁波シールド性が付与される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/009051号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の感光性軟磁性体ペーストでは、軟磁性体粉末とガラス粉末の質量比が20/80〜70/30の範囲であるので、無機成分中に占める磁性体粉末の量が少なく、高い透磁率を有する基材が得られにくいという問題がある。
また、この感光性軟磁性体ペーストでは、ガラス粉末として、酸化ビスマス(75質量%)、酸化珪素(5質量%)、酸化硼素(10質量%)、酸化ジルコニウム(3質量%)、酸化亜鉛(3質量%)および酸化アルミニウム(4質量%)からなるガラス粉末が用いられているが、ガラス粉末と軟磁性体粉末が焼成中に反応してしまうと、焼結体に含まれる磁性体部分の割合が減少するので、同じく高い透磁率を有する基材が得られにくいという問題がある。
【0006】
このように、従来の感光性軟磁性体ペーストを硬化させて得られる基材では、高透磁率を得ることが困難であり、コモンモードチョークコイルや積層型LC部品などの磁性体基材として使用することが困難である。そのため、この感光性軟磁性体ペーストを用いて電子部品を作製すると、高性能な電子部品を得ることが困難である。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、高い透磁率を有する基材を得ることができる磁性体ペーストを提供することである。
また、この発明の目的は、このような磁性体ペーストを用いることにより、高性能な電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる磁性体ペーストは、平均粒径が0.5〜10μmの磁性体焼結粉末、ガラス粉末および有機成分を含み、磁性体焼結粉末とガラス粉末との質量比について、磁性体焼結粉末/ガラス粉末の比率が80/20〜90/10の範囲にあり、ガラス粉末におけるSiO2の割合が70〜90質量%であることを特徴とする、磁性体ペーストである。
この発明にかかる磁性体ペーストでは、磁性体焼結粉末の平均粒径が0.5〜10μmの範囲であることを特徴としている。これは、平均粒径が0.5〜10μmの微粒の磁性体焼結粉末を用いることで、焼成時に焼結によって磁性体粉末同士が粒成長を起こし、高い透磁率および高い抗折強度を有する焼結体を得ることができるからである。一方、磁性体焼結粉末の平均粒径が0.5μm未満となると、磁性体焼結粉末を製造することが困難になるとともに、磁性体焼結粉末を製造することができたとしても粒径が小さくなることにより高い透磁率が得られなくなるので、好ましくない。また、磁性体焼結粉末の平均粒径が10μmを超えると、焼結体内に空隙が多くなり、抗折強度が小さくなるので、好ましくない。
さらに、この発明にかかる磁性体ペーストでは、磁性体焼結粉末とガラス粉末との質量比(磁性体焼結粉末/ガラス粉末)が80/20〜90/10の範囲にあることも特徴としている。これは、磁性体焼結粉末とガラス粉末との質量比(磁性体焼結粉末/ガラス粉末)をそのような範囲にすることで、無機成分中の磁性体粉末の割合が大きくなり、高い透磁率および高い抗折強度を有する焼結体を得ることができるからである。一方、磁性体焼結粉末とガラス粉末との質量比(磁性体焼結粉末/ガラス粉末)が80/20未満になると、焼結体中の磁性体の割合が低下して、透磁率が低下するので、好ましくない。また、磁性体焼結粉末とガラス粉末との質量比(磁性体焼結粉末/ガラス粉末)が90/10を超えると、焼結体の抗折強度が低下するので、好ましくない。
さらに、この発明にかかる磁性体ペーストでは、ガラス粉末におけるSiO2の割合が70〜90質量%であることも特徴としている。これは、ガラス粉末中に含まれるSiO2の割合を70〜90質量%とすることで、焼成時の磁性体粉末とガラス粉末との反応が抑制され、高い透磁率および高い抗折強度を有する焼結体を得ることができるからである。一方、SiO2の割合が90質量%を超えると、焼結性が低下し、十分な抗折強度が得られなくなるとともに、透磁率も低下するので、好ましくない。また、SiO2の割合が70質量%を下回ると、磁性体粉末とガラス粉末との反応が進み、焼結体に含まれる磁性体部分の割合が低下し、高い透磁率を有する焼結体を得ることができないので、好ましくない。
【0009】
この発明にかかる磁性体ペーストでは、磁性体焼結粉末の平均粒径が0.7〜3μmであることを特徴とすることが好ましい。これは、このように磁性体焼結粉末の平均粒径を0.7〜3μmとすると、焼結体の透磁率および抗折強度がさらに高くなるからである。
【0010】
また、この発明にかかる電子部品は、この発明にかかる磁性体ペーストを硬化して基材を形成し、基材上に電極パターンを形成し、電極パターンを形成した基材を焼成することにより形成される、電子部品である。
この発明にかかる磁性体ペーストを用いることにより、高い透磁率および高い抗折強度を有する基材を得ることができる。したがって、この基材に電極パターンを形成し、焼成することによって、高透磁率を利用した電子部品を得ることができる。
【0011】
この発明にかかる電子部品は、例えば、電極パターンを形成した複数の基材を積層して積層体を形成し、積層体を焼成することにより形成することができる。
電極パターンを形成した複数の基材を積層し、得られた積層体を焼成することにより、積層型の電子部品を得ることができる。したがって、インダクタンスを利用した高性能の積層型コモンモードチョークコイルや積層型LC部品などを作製することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、高い透磁率を有する基材を作製することができる磁性体ペーストを得ることができる。このように作製された基板は、付随的に高い抗折強度も有する。
また、この発明にかかる磁性体ペーストを用いて形成した基材を用いることにより、高透磁率を利用したインダクタンスを有する高性能な電子部品を得ることができる。このように得られた電子部品は、付随的に破損しにくい。
【0013】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明にかかる磁性体ペーストを用いた積層型コモンモードチョークコイルの製造工程を示す斜視図である。
【図2】この発明にかかる電子部品としての積層型コモンモードチョークコイルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明にかかる磁性体ペーストは、磁性体焼結粉末と、ガラス粉末と、有機成分と、溶剤とを含む。
【0016】
磁性体焼結粉末としては、たとえば、Fe23−NiO−CuO−ZnO系フェライトなどの軟磁性体の焼結粉末が用いられる。このような磁性体焼結粉末としては、0.5〜10μmの平均粒径を有するものが用いられる。この場合、このような磁性体焼結粉末としては、好ましくは、0.7〜3μmの平均粒径を有するものが用いられる。なお、磁性体焼結粉末は、900℃以上の温度で焼結させた焼結粉末であることが好ましい。これは、900℃以上の温度で焼結することで、スピネル相の生成率が高くなり、仮焼粉末を用いた場合などに比べて、粉末自体の透磁率を高くすることができるとともに、ガラスとの反応が抑制されるので、高い透磁率を有する焼結体を得ることができるからである。
【0017】
また、ガラス粉末としては、たとえば、SiO2−B23−K2O系ガラスやSiO2−B23−CaO−Li2O−ZnO系ガラスなどのSiO2含むガラスが用いられる。このようなガラス粉末としては、ガラス粉末におけるSiO2の割合が70〜90質量%となるように調整される。また、磁性体焼結粉末とガラス粉末との混合比率としては、磁性体焼結粉末/ガラス粉末の質量比が80/20〜90/10の比率となるように調整される。
【0018】
さらに、有機成分としては、たとえば、アクリルポリマーと光反応性モノマーと光重合開始剤などが用いられる。ここで、たとえば、光反応性モノマーとして、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、光重合開始剤として、2,4−ジエチルチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドの混合物が用いられる。
【0019】
さらに、溶剤としては、たとえば、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが用いられる。
【0020】
この発明にかかる磁性体ペーストには、消泡剤などのその他の添加剤が添加されてもよい。
【0021】
なお、ここでは、有機成分として光硬化性の有機成分を例示したが、必ずしも光硬化性の材料を用いる必要はない。この発明にかかる磁性体ペーストは、硬化して基材を形成したのち、最終的に焼成されて電子部品の磁性体素材を得ることができるが、光硬化以外の方法で磁性体ペーストを硬化させてもよい。この場合、磁性体ペーストの硬化方法に応じて、有機成分を選択することができる。
【0022】
磁性体ペーストは、これらの材料を含むものであり、たとえば、積層型電子部品を作製するために用いられる。たとえば、積層型コモンモードチョークコイルを作製する場合、図1に示すように、積層体10が形成される。積層体10を形成するために、平面状のベース上に磁性体ペーストが塗布され、光硬化させることにより、積層体10に用いられる板状の基材が形成される。
【0023】
積層体10は、第1の基材12を含み、第1の基材12上に電極ペーストなどを用いて第1の引出し電極パターン14が形成される。第1の引出し電極パターン14は、第1の基材12の一端から中央部に延びるように形成される。第1の基材14の一端において、第1の引出し電極パターン14は、端縁の中央部から一方側にずれた位置に引き出される。
【0024】
第1の基材12の下面には、第2の基材16が配置される。第2の基材16上には、第1の巻線電極パターン18が形成される。第1の巻線電極パターン18は、第2の基材16の中央部から外側に向かって渦巻き状に形成され、第1の引出し電極パターン14が引き出された端部に対向する端部に引き出される。第1の引出し電極パターン14と第1の巻線電極パターン18とは、互いに対向する位置に引き出される。第1の引出し電極パターン14と第1の巻線電極パターン18とは、第1の基材12の中央部に形成されたビアホール20において接続される。
【0025】
第2の基材16の下面には、第3の基材22が配置される。第3の基材22上には、第2の巻線電極パターン24が形成される。第2の巻線電極パターン24は、第3の基材22の中央部から外側に向かって渦巻き状に形成され、第1の巻線電極パターン18が引き出された端部に引き出される。ここで、第1の巻線電極パターン18の引出し位置から間隔を隔てた位置に、第2の巻線電極パターン24が引き出される。第1の巻線電極パターン18と第2の巻線電極パターン24とは、同じ向きに巻回するように形成される。
【0026】
第3の基材22の下面には、第4の基材26が配置される。第4の基材26上には、第2の引出し電極パターン28が形成される。第2の引出し電極パターン28は、第1の引出し電極パターン14の引き出された側の端部から第4の基材26の中央部に延びるように形成される。第2の引出し電極パターン28は、第1の引出し電極パターン14と同じ側の端部において、第1の引出し電極パターン14と間隔を隔てた位置に引き出される。第2の巻線電極パターン24と第2の引出し電極パターン28とは、第3の基材22の中央部に形成されたビアホール30において接続される。
【0027】
第1の基材12の上面および第4の基材26の下面には、電極パターンの形成されていない基材32が配置される。これらの基材12、16、22、26、32が積層されて、積層体10が形成される。積層体10の端部において、第1の引出し電極パターン14、第1の巻線電極パターン18、第2の巻線電極パターン24、第2の引出し電極パターン28に接続されるようにして、4つの外部電極パターンが形成される。そして、外部電極パターンが形成された積層体10を焼成することにより、図2に示すように、基体34の対向する端部に外部電極36a、36b、36c、36dを有する積層型コモンモードチョークコイル40が形成される。
【0028】
なお、この磁性体ペーストを用いることにより、積層型コモンモードチョークコイル以外にも、積層型LC部品などの電子部品を作製することができる。この場合、コンデンサを形成するためのコンデンサ用電極の間には、誘電体材料で形成された基材が用いられ、インダクタンス形成部における基材として磁性体ペーストで形成された基材が用いられる。
【0029】
この磁性体ペーストでは、磁性体焼結粉末が用いられているので、磁性体仮焼結粉末を用いた場合に比べて、高い透磁率および高い強度を有する磁性体粉末を得ることができる。たとえば、1000℃以上で焼結した磁性体粉末を用いることにより、基材を磁性体粉末の焼結温度より低い800〜900℃で焼成しても、高い透磁率を得ることができる。
【0030】
また、この磁性体ペーストでは、平均粒径が0.5〜10μmの微粒の磁性体焼結粉末が用いられているので、焼成時に焼結によって磁性体粉末同士が粒成長を起こし、高い透磁率および高い抗折強度を有する焼結体を得ることができる。この磁性体ペーストでは、特に、平均粒径が0.7〜3μmの微粒の磁性体焼結粉末が用いられると、さらに高い透磁率およびさらに高い抗折強度を有する焼結体を得ることができる。
【0031】
さらに、この磁性体ペーストでは、磁性体焼結粉末とガラス粉末との質量比(磁性体焼結粉末/ガラス粉末)が80/20〜90/10の範囲にしているので、無機成分中の磁性体粉末の割合が大きくなり、高い透磁率および高い抗折強度を有する焼結体を得ることができる。
【0032】
さらに、この磁性体ペーストでは、ガラス粉末におけるSiO2の割合が70〜90質量%としているので、焼成時の磁性体粉末とガラス粉末との反応が抑制され、高い透磁率および高い抗折強度を有する焼結体を得ることができる。
【0033】
このように、この発明にかかる磁性体ペーストを用いることにより、高い透磁率および高い抗折強度を有する基材を得ることができる。そのため、このような基材を用いて電子部品を形成することにより、良好な特性を有するインダクタンス成分を含む高強度の電子部品を得ることができる。
【0034】
(実験例)
実験例では、本発明にかかる磁性体ペーストなどを用いて形成された基材(焼結体)の透磁率および抗折強度を調べるために、実験を行った。
【0035】
まず、磁性体焼結粉末として、Fe23−NiO−CuO−ZnO系フェライトを準備した。この場合、磁性体焼結粉末の素原料として、Fe23、NiO、CuO、ZnOを用意し、所定の組成となるように、これらの素原料を秤量した。これらの秤量物を純水及びPSZボールとともに、塩化ビニル製のポットミルに入れ、湿式で混合粉砕し、蒸発乾燥した後、800℃の温度で仮焼して、仮焼物を得た。
次に、これらの仮焼物を再び純水及びPSZボールとともに、塩化ビニル製のポットミルに入れ、湿式で粉砕して、粉砕物を得た。粉砕物を蒸発乾燥した後、900〜1100℃の温度で、2時間焼成して、焼成物を得た。
これらの焼成物を再び純水及びPSZボールとともに、塩化ビニル製のポットミルに入れ、湿式で粉砕し、これを蒸発乾燥して、本発明にかかる磁性体ペーストに用いられる磁性体焼結粉末を作製した。さらに、粉砕時間を変えることで、平均粒径D50が異なる磁性体焼結粉末を複数作製した。ここで、平均粒径は、堀場製作所製のレーザ回折散乱粒度分布測定装置LA−920で粒度分布を測定して求めた。
【0036】
さらに、ガラス粉末として、次の2種類の組成を有した平均粒子径D50が1μmのガラスフリット1およびガラスフリット2を準備した。
ガラスフリット1:90質量%SiO2−9.1質量%B23−0.9質量%K2O:ガラス軟化点810℃
ガラスフリット2:47質量%SiO2−17質量%B23−19質量%CaO−13質量%Li2O−4質量%ZnO:ガラス軟化点718℃
【0037】
また、樹脂成分および溶剤を含む感光性ワニスを作製した。この場合、感光性ワニスを作製するために、アクリルポリマー、光反応性モノマーとしてエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、光重合開始剤として、2,4−ジエチルチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、および溶剤としてジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどを準備した。
次に、アクリルポリマーを26.0質量%、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートを27.6質量%、2,4−ジエチルチオキサントンを2.8質量%、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンを0.9質量%、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドを1.4質量%、消泡剤などのその他の添加剤を1.0質量%、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルを40.3質量%混合して、感光性ワニスを作製した。
【0038】
そして、感光性磁性体ペーストを作製した。この場合、実験例で作製・準備した上述の磁性体焼結粉末、ガラスフリット1、ガラスフリット2、および感光性ワニスを、表1に示した質量比で混合し、この混合物を3本ロールミルで混練することで、感光性磁性体ペーストを作製した。なお、表1には、感光性磁性体ペーストに用いられる磁性体焼結粉末の平均粒径、磁性体焼結粉末とガラス粉末との質量比(磁性体焼結粉末/ガラス粉末)、およびガラス粉末に含まれるSiO2の割合も示した。
【0039】
【表1】

【0040】
作製した感光性磁性体ペーストをポリエチレンテレフタラート(PET)フイルム上にドクターブレード法で膜形成、乾燥、膜形成を繰り返して厚み1mmの塗膜を作製した。作製した塗膜をリング状および矩形状にそれぞれ打ち抜いて、870℃で30分焼成して、リング状の試料(焼結体)および矩形状の試料(焼結体)を得た。
【0041】
得られたリング状の試料について、アジレント社製のインピーダンスアナライザE4991Aを用いて、100MHzにおける透磁率を測定した。また、得られた矩形状の試料について、JISR1601に基づいて抗折強度を測定した。それらの測定結果を表1に示した。
【0042】
さらに、測定した透磁率および抗折強度を評価した評価結果を表1に示した。
ここで、透磁率については、14以上18未満のものが好ましいものとして「△」印で示し、18以上のものがさらに好ましいものとして「○」印で示し、14未満のものが好ましくないもとして「×」印で示した。
また、抗折強度については、20MPa以上30MPa未満のものが好ましいものとして「△」印で示し、30MPa以上のものがさらに好ましいものとして「○」印で示し、20MPa未満のものが好ましくないものとして「×」印で示した。
なお、表1において、試料番号に*印を付したものは、本発明の範囲外のものであることを示す。
【0043】
表1の試料番号1〜5、9〜13、16、17から明らかなように、本発明の範囲内に調整した感光性磁性体ペーストを用いると、高い透磁率および高い抗折強度を有する磁性体を得ることができる。
また、試料番号1〜5、10、11、16、17に示すように、本発明の範囲内に調整した感光性磁性体ペーストにおいて磁性体焼結粉末の平均粒径を0.7〜3μmの範囲にすると、さらに高い透磁率およびさらに高い抗折強度を有する磁性体を得ることができる。
【0044】
それに対して、試料番号で示さないが、平均粒径が0.5μm未満となると、磁性体焼結粉末を製造することが困難になるとともに、磁性体焼結粉末を製造することができたとしても粒径が小さくなることにより高い透磁率が得られなくなる。
また、試料番号14に示すように、磁性体焼結粉末の平均粒径が10μmを超えると、焼結体内に空隙が多くなり、抗折強度が小さくなる。
【0045】
さらに、試料番号15に示すように、磁性体焼結粉末とガラス粉末との質量比(磁性体焼結粉末/ガラス粉末)が80/20未満になると、焼結体中の磁性体の割合が低下して、透磁率が低下する。
また、試料番号18に示すように、磁性体焼結粉末とガラス粉末との質量比(磁性体焼結粉末/ガラス粉末)が90/10を超えると、焼結体の抗折強度が低下する。
【0046】
さらに、試料番号で示さないが、SiO2の割合が90質量%を超えると、焼結性が低下し、十分な抗折強度が得られなくなるとともに、透磁率も低下する。
また、試料番号6〜8に示すように、SiO2の割合が70質量%を下回ると、磁性体粉末とガラス粉末との反応が進み、焼結体に含まれる磁性体部分の割合が低下し、高い透磁率を有する焼結体を得ることができない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
この発明にかかる磁性体ペーストは、特に、インダクタンスを利用した積層型コモンモードチョークコイルや積層型LC部品などの積層電子部品に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0048】
10 積層体
12 第1の基材
14 第1の引出し電極パターン
16 第2の基材
18 第1の巻線電極パターン
20 ビアホール
22 第3の基材
24 第2の巻線電極パターン
26 第4の基材
28 第2の引出し電極パターン
30 ビアホール
32 基材
34 基体
36a、36b、36c、36d 外部電極
40 積層型コモンモードチョークコイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が0.5〜10μmの磁性体焼結粉末、ガラス粉末および有機成分を含み、
前記磁性体焼結粉末と前記ガラス粉末との質量比について、磁性体焼結粉末/ガラス粉末の比率が80/20〜90/10の範囲にあり、
前記ガラス粉末におけるSiO2の割合が70〜90質量%であることを特徴とする、磁性体ペースト。
【請求項2】
前記磁性体焼結粉末の平均粒径が0.7〜3μmであることを特徴とする、請求項1に記載の磁性体ペースト。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の磁性体ペーストを硬化して基材を形成し、前記基材上に電極パターンを形成し、前記電極パターンを形成した前記基材を焼成することにより形成される、電子部品。
【請求項4】
前記電極パターンを形成した複数の前記基材を積層して積層体を形成し、前記積層体を焼成することにより形成される、請求項3に記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−253210(P2012−253210A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124989(P2011−124989)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】