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磁性粉末用表面改質剤およびそれを含む磁性塗料
説明

磁性粉末用表面改質剤およびそれを含む磁性塗料

【課題】磁性塗料中の磁性粉末の分散性を高めるために磁性粉末表面を改質するための手段を提供すること。
【解決手段】カルボキシル基を有する環式化合物を含む磁性粉末用表面改質剤。前記磁性粉末用表面改質剤と、磁性粉末と、結合剤とを含む磁性塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粉末用表面改質剤に関し、詳しくは、磁性塗料における磁性粉末の分散性を改善し得る磁性粉末用表面改質剤に関する。
更に本発明は、前記磁性粉末用表面改質剤を含む磁性塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報を高速に伝達するための手段が著しく発達し、莫大な情報をもつ画像およびデータ転送が可能となった。このデータ転送技術の向上とともに、情報を記録、再生および保存するための記録再生装置および記録媒体には更なる高密度記録化が要求されている。
【0003】
高密度記録領域において良好な電磁変換特性を得るためには、微粒子磁性体を使用するとともに、微粒子磁性体を高度に分散させ、磁性層表面の平滑性を高めることが有効であることが知られている。また、磁性体の分散性を高めることにより、高い光沢度を有する磁気記録媒体を得ることもできる。
【0004】
磁性粉末の分散性を高める手段としては、例えば特許文献1に記載されているように、SO3Na基のような極性基を結合剤に含有させる方法が広く用いられている。また、分散効果を付与するための添加剤として、ホスホン酸、リン酸類、多価カルボン酸類が知られている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−132531号公報
【特許文献2】特開平8−279142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
結合剤への極性基導入は、分散性改良のための有効な手段であるが、結合剤への極性基量が過剰になると、逆に分散性が低下するおそれがある。そこで、分散剤を使用することが考えられるが、ホスホン酸、リン酸類は強酸であるため金属ヘッドを腐食するおそがある。また、特許文献2に記載されている多価カルボン酸類は、親水性が強いために強磁性体粉末表面の改質が十分でなく結合剤吸着量が低い点が課題であった。
【0006】
そこで本発明の目的は、磁性塗料中の磁性粉末の分散性を高めるために磁性粉末表面を改質するための手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記手段により達成された。
[1]カルボキシル基を有する環式化合物を含む磁性粉末用表面改質剤。
[2]前記環式化合物は、脂環式化合物、芳香族化合物および複素環化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である[1]に記載の磁性粉末用表面改質剤。
[3]前記環式化合物に含まれる環状構造は、シクロヘキサン環および/またはナフタレン環である[1]または[2]に記載の磁性粉末用表面改質剤。
[4]前記環式化合物は、1分子中に1つのカルボキシル基を含有する[1]〜[3]のいずれかに記載の磁性粉末用表面改質剤。
[5]前記環式化合物は、1−ナフタレンカルボン酸、2−ナフタレンカルボン酸およびシクロヘキサンカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の環式化合物を含む[1]〜[4]のいずれかに記載の磁性粉末用表面改質剤。
[6]磁性塗料用分散剤として使用される[1]〜[5]のいずれかに記載の磁性粉末用表面改質剤。
[7][1]〜[5]のいずれかに記載の磁性粉末用表面改質剤と、磁性粉末と、結合剤とを含む磁性塗料。
[8]前記磁性粉末は、強磁性六方晶フェライト粉末である[7]に記載の磁性塗料。
[9]磁気記録媒体の磁性層形成用塗布液として使用される[7]または[8]に記載の磁性塗料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、磁性粉末の表面を改質することができ、これにより磁性塗料中の磁性粉末の分散性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[磁性粉末用表面改質剤]
本発明の磁性粉末用表面改質剤は、カルボキシル基を有する環式化合物を含む。本発明の磁性粉末用表面改質剤(以下、単に「表面改質剤」ともいう)は、前記環式化合物とともに他の表面改質効果を有する化合物を含むこともできるが、1種または2種以上の前記環式化合物からなることが好ましい。
【0010】
前記環式化合物は、磁性粉末表面に付着することにより磁性粉末に疎水性を付与できるものと推察される。一般に磁性粉末表面は親水性が比較的高いため、疎水性の結合剤成分が吸着しにくい。これに対し、前記環式化合物が磁性粉末表面に付着し、磁性粉末表面の疎水性が高まることにより磁性粉末への結合剤吸着量が増加し、磁性塗料中の磁性粉末の分散性が高まると考えられる。例えば、後述する実施例で示すように本発明の表面改質剤の有無により磁性塗料中の磁性粉末への結合剤吸着量が変化することによって、本発明の表面改質剤が磁性粉末表面を改質していることが確認できる。なお、前記環式化合物が磁性粉末表面に付着していることは、磁性粉末と前記環式化合物を混合した際に、上澄み液中から観測される前記環式化合物の濃度が添加濃度より小さくなることにより確認できる。
以下、前記環式化合物について更に詳細に説明する。
【0011】
環式化合物
前記環式化合物は、カルボキシル基を含有する。前記環式化合物1分子あたりのカルボキシル基の数は、少なくとも1つであり、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3、最も好ましくは1である。
【0012】
磁性塗料中での磁性粉末の分散性を良くするためには、磁性粉末と吸着した環式化合物に更に結合剤を吸着させる必要がある。環式化合物が吸着した磁性体を結合剤で被覆することで立体障害となり、磁性体同士の凝集を防ぐことができる。この機能を発揮し得る化合物(いわゆる表面改質剤)の構造として環式、鎖式のものがあり得るが、本発明者らが検討した結果、結合剤との相互作用が大きく、磁性粉末と結合剤との吸着が良好なものは鎖式より環式のものであった。これは結合剤の環構造部と環式化合物の環構造部との相互作用が大きいためと考えられる。
【0013】
前記環式化合物が有する環状構造は、脂肪族環、芳香族環、複素環のいずれであってもよい。また、環状構造は単環であっても縮合環であってもよい。また、1分子中に含まれる環状構造は1種でも2種以上であってもよく、異なる種類の環状構造が連結基によって連結した構造であってもよい。
【0014】
前記環式化合物が脂環式化合物である場合、含まれる環状構造としては、例えば炭素数5〜30の縮環してもよい脂肪族環であり、好ましくは炭素数5〜10の縮環してもよい脂肪族環であり、より好ましくはシクロヘキサン環である。
【0015】
前記環式化合物が芳香族化合物である場合、含まれる芳香族環は、5員環、6員環または7員環もしくはそれらが縮環を形成していることが好ましく、5員環または6員環であることがより好ましく、6員環であることがさらに好ましい。具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環を挙げることができ、中でもナフタレン環が好ましい。
【0016】
前記環式化合物が複素環式化合物である場合、複素環に含まれるヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子を挙げることができ、窒素原子が好ましい。前記複素環は、例えば炭素数1〜30であり、好ましくは炭素数1〜20であり、特に好ましくは炭素数1〜12である。前記複素環の具体例としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、チアゾール環やこれらのベンゾ縮環体やヘテロ環縮環体などが挙げられる。前記複素環としては、ピリジン環が好ましい。
【0017】
前記環式化合物は、カルボキシル基以外の置換基を有することもできる。前記置換基としては、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基及び炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。該置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲン原子で置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲン原子で置換されたアルキル基がより好ましく、特に、ハロゲン原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基を挙げることができる。
【0018】
前記環式化合物の好ましい具体例としては、1−ナフタレンカルボン酸、2−ナフタレンカルボン酸およびシクロヘキサンカルボン酸を挙げることができる。
【0019】
前記環式化合物は、公知の方法により容易に合成可能であり、市販品として入手可能なものもある。
【0020】
磁性粉末に対する前記環式化合物の使用量は適宜設定することができるが、磁気記録媒体の磁性層形成用塗布液中に環式化合物を過剰量添加すると、膜が可塑化し、膜剥がれが生じる場合があるため過剰量の導入は好ましくない。この観点から、前記環式化合物の使用量は、好ましくは磁性粉末100質量部に対して0.1〜10質量部、より好ましくは2〜8質量部である。本発明の表面改質剤と磁性粉末との混合方法については後述する。
【0021】
本発明の表面改質剤は、磁性粉末表面を改質することにより磁性塗料中の磁性粉末の分散性を高めることができる。従って、本発明の表面改質剤は、磁性塗料用分散剤として使用することが好ましい。
【0022】
[磁性塗料]
本発明の磁性塗料は、本発明の磁性粉末用表面改質剤と、磁性粉末と、結合剤とを含む。本発明の磁性塗料は、前記改質剤の作用により磁性粉末と結合剤との吸着性が良好となり、これにより磁性粉末を高度に分散させることができる。前記表面改質剤の詳細は、先に説明した通りである。
以下に、本発明の磁性塗料に含まれる各成分について説明する。
【0023】
磁性粉末
磁性粉末としては、一般に磁気記録媒体の磁性層形成用塗布液に含まれ得る強磁性粉末を用いることができる。そのような強磁性粉末としては、強磁性六方晶フェライト粉末および強磁性金属粉末が好ましい。
【0024】
(i)六方晶フェライト粉末
六方晶フェライト粉末には、例えば、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライト、それらのCo等の置換体等がある。より具体的には、マグネトプランバイト型のバリウムフェライトおよびストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、さらに一部にスピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライトおよびストロンチウムフェライト等が挙げられる。その他、所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。一般には、Co−Zn、Co−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、Sb−Zn−Co、Nb−Zn等の元素を添加したものを使用できる。また原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもある。
【0025】
六方晶フェライト粉末として、平均板径10〜50nmのものを使用することが好ましく、より好ましくは15〜40nm、更に好ましくは15〜30nmである。本発明によれば、上記平均板径を有する微粒子状の六方晶フェライト粉末の分散性を高めることができる。
【0026】
六方晶フェライトの平均板状比[(板径/板厚)の算術平均]は1〜15であることが好ましく、1〜7であることが更に好ましい。平均板状比が1〜15であれば、磁性層で高充填性を保持しながら充分な配向性が得られ、かつ、粒子間のスタッキングによるノイズ増大を抑えることができる。また、上記粒子サイズの範囲内におけるBET法による比表面積(SBET)は、40m2/g以上が好ましく、40〜200m2/gであることがさらに好ましく、60〜100m2/gであることが最も好ましい。
【0027】
六方晶フェライト粉末の粒子板径・板厚の分布は、通常狭いほど好ましい。粒子板径・板厚は、粒子TEM写真より、例えば500粒子を無作為に測定することで測定できる。粒子板径・板厚の分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すと、σ/平均サイズ=0.1〜1.0である。粒子サイズ分布をシャープにするには、一般に、粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。例えば、酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。また、六方晶フェライト粉末のpHは、通常4〜12程度で分散媒、ポリマーにより最適値があるが、一般に、媒体適用時の化学的安定性、保存性から6〜11程度が選択される。六方晶フェライト粉末に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが通常0.01〜2.0%が選ばれる。
【0028】
六方晶フェライト粉末の製法としては、(1)酸化バリウム・酸化鉄・鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得るガラス結晶化法、(2)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後100℃以上で液相加熱した後洗浄・乾燥・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る水熱反応法、(3)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後乾燥し1100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る共沈法等があるが、本発明は製法を選ばない。六方晶フェライト粉末は、必要に応じ、Al、Si、Pまたはこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は強磁性粉末に対し、例えば0.1〜10質量%であり表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m2以下になり好ましい。六方晶フェライト粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合がある。これらは、本質的に無い方が好ましいが、200ppm以下であれば特に特性に影響を与えることは少ない。
【0029】
強磁性金属粉末としては、特に制限されるべきものではないが、α−Feを主成分とする強磁性金属粉末を用いることが好ましい。これらの強磁性金属粉末には、所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。特に、Al、Si、Ca、Y、Ba、La、Nd、Co、Ni、Bの少なくとも1つをα−Fe以外に含むことが好ましく、Co、Y、Alの少なくとも一つを含むことがさらに好ましい。Coの含有量はFeに対して0原子%以上40原子%以下であることが好ましく、さらに好ましくは15原子%以上35原子%以下、より好ましくは20原子%以上35原子%以下である。Yの含有量は1.5原子%以上12原子%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3原子%以上10原子%以下、特に好ましくは4原子%以上9原子%以下である。Alは1.5原子%以上12原子%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3原子%以上10原子%以下、より好ましくは4原子%以上9原子%以下である。
【0030】
強磁性金属粉末には少量の水酸化物、または酸化物が含まれてもよい。強磁性金属粉末は公知の製造方法により得られたものを用いることができ、下記の方法を挙げることができる。複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)と水素などの還元性気体で還元する方法、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元してFeまたはFe−Co粒子などを得る方法、金属カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩あるいはヒドラジンなどの還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不活性気体中で蒸発させて微粉末を得る方法などである。このようにして得られた強磁性金属粉末には、公知の徐酸化処理、すなわち有機溶剤に浸漬したのち乾燥させる方法、有機溶剤に浸漬したのち酸素含有ガスを送り込んで表面に酸化膜を形成したのち乾燥させる方法、有機溶剤を用いず酸素ガスと不活性ガスの分圧を調整して表面に酸化皮膜を形成する方法のいずれを施すこともできる。
【0031】
強磁性金属粉末のBET法による比表面積は、45〜100m2/gであることが好ましく、より好ましくは50〜80m2/gである。45m2/g以上であれば低ノイズであり、100m2/g以下であれば良好な表面性を得ることができる。強磁性金属粉末の結晶子サイズは40〜180Åであることが好ましく、より好ましくは40〜150Å、更に好ましくは40〜110Åである。強磁性金属粉末の平均長軸長(平均粒子サイズ)は、好ましくは10〜50nmであり、より好ましくは10〜40nmであり、さらに好ましくは15〜30nmである。本発明によれば、上記平均長軸長を有する微粒子状の強磁性金属粉末の分散性を高めることができる。強磁性金属粉末の針状比は3以上15以下であることが好ましく、さらには3以上12以下であることが好ましい
【0032】
強磁性金属粉末の含水率は0.01〜2%とすることが好ましい。結合剤の種類によって強磁性金属粉末の含水率は最適化することが好ましい。強磁性金属粉末のpHは、用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。その範囲は4〜12とすることができ、好ましくは6〜10である。強磁性金属粉末は必要に応じ、Al、Si、Pまたはこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は強磁性金属粉末に対し0.1〜10%とすることができ、表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着量が100mg/m2以下になり好ましい。強磁性金属粉末は可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合がある。これらは、本質的に無い方が好ましいが、200ppm以下であれば特性に影響を与えることは少ない。また、本発明に用いられる強磁性金属粉末は空孔が少ないほうが好ましく、その値は20容量%以下、さらに好ましくは5容量%以下である。また形状については先に示した粒子サイズについての特性を満足すれば針状、米粒状、紡錘状のいずれでもかまわない。
【0033】
結合剤
結合剤としては従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物を使用することができる。熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1,000〜200,000、好ましくは10,000〜100,000、重合度が約50〜1000程度のものを使用することができる。
【0034】
このような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクルリ酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタ−ル、ビニルエーテル、等を構成単位として含む重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等が挙げられる。これらの樹脂については朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、公知の電子線硬化型樹脂を各層に使用することも可能である。これらの例とその製造方法については特開昭62−256219号公報に詳細に記載されている。以上の樹脂は単独または組合せて使用できるが、好ましいものとして塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニルビニルアルコール共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体、から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂の組合せ、またはこれらにポリイソシアネートを組み合わせたものが挙げられる。結合剤として使用する樹脂は、公知の方法で合成することができ、また市販品として入手することもできる。
【0035】
ポリウレタン樹脂の構造はポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用できる。ここに示したすべての結合剤について、より優れた分散性と耐久性を得るためには必要に応じ、−COOM、−SO3 M、−OSO3 M、−P=O(OM)2 、−O−P=O(OM)2(以上につきMは水素原子、またはアルカリ金属塩基)、−OH、−NR2 、−N+3(Rは炭化水素基)、エポキシ基、−SH、−CN、などから選ばれる少なくともひとつ以上の極性基を共重合または付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基の量は、例えば10-1〜10-8モル/gであり、好ましくは10-2〜10-6モル/gである。特に、本発明の表面改質剤は、スルホン酸基含有結合剤と併用することが好ましい。
【0036】
本発明の磁性塗料には、磁性粉末に対し、例えば5〜50質量%の範囲、好ましくは10〜30質量%の範囲で結合剤を用いることができる。塩化ビニル系樹脂を用いる場合は5〜30質量%、ポリウレタン樹脂を用いる場合は2〜20質量%、ポリイソシアネ−トは2〜20質量%の範囲でこれらを組み合わせて用いることが好ましい。但し、例えば、微量の脱塩素によりヘッド腐食が起こる場合は、ポリウレタンのみまたはポリウレタンとイソシアネートのみを使用することも可能である。
【0037】
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等を使用することができる。これらは公知の方法で合成することができ、また市販品としても入手可能である。
【0038】
本発明の磁性塗料には、前記表面改質剤、磁性粉末、結合剤に加えて必要に応じて添加剤を加えることができる。添加剤としては、一般に磁気記録媒体の磁性層形成用塗布液に使用される研磨剤、潤滑剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤、溶剤、カーボンブラックなどを挙げることができる。
【0039】
本発明の磁性塗料は、前記表面改質剤、磁性粉末、結合剤、および任意に使用される添加剤を混合することにより得ることができ、具体的には、一般的な磁性層塗布液の調製方法によって得ることができる。製造工程は、例えば、混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性塗料を分散させるには、ガラスビーズを用いることができる。このようなガラスビーズは、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
【0040】
本発明の表面改質剤の添加効果を効果的に得るためには、磁性粉末と結合剤とが接触する段階で、前記表面改質剤が存在することが好ましい。これは、本発明の表面改質材が磁性粉末表面に付着する前に、結合剤が磁性粉末表面と接触することを回避するためである。従って、本発明の磁性塗料は磁性粉末、結合剤、および本発明の表面改質剤を同時に混合することにより、または磁性粉末と表面改質剤とを混合して得られた混合物に、結合剤を混合することによって調製することが好ましい。具体的には、以下の方法により前記成分を混合することが好ましい。
(1)予め磁性粉末と表面改質剤とを乾式で15〜30分間程度分散した後、有機溶媒へ添加する。結合剤は、前記分散物と同時に添加してもよく、前記分散物添加後に添加してもよい。
(2)磁性粉末と表面改質剤を有機溶剤中で15〜30分間程度分散した後、乾固する。乾固した混合物を適宜粉砕して有機溶媒中に添加する。結合剤は、前記混合物と同時に添加してもよく、前記混合物添加後に添加してもよい。
(3)磁性粉末と表面改質剤とを有機溶剤中で15〜30分間程度分散した後。結合剤を添加する。
(4)磁性粉末、表面改質剤および結合剤を有機溶媒中に同時に添加し、分散する。
【0041】
有機溶剤としては、公知のものが使用できる。有機溶媒としては、具体的には、任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等を使用することができる。これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30質量%以下が好ましく、さらに好ましくは10質量%以下である。分散性を向上させるためにはある程度極性が強い方が好ましく、溶剤組成の内、誘電率が15以上の溶剤が50質量%以上含まれることが好ましい。また、溶解パラメータは8〜11であることが好ましい。
【0042】
本発明の磁性塗料は、磁性粉末が高度に分散されているため、高い分散性が求められる磁気記録媒体の磁性層形成用塗布液として好適である。
【実施例】
【0043】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、ここに示す成分、割合、操作、順序等は本発明の精神から逸脱しない範囲で変更し得るものであり、下記の実施例に制限されるべきものではない。
【0044】
[実施例1]
下記強磁性六方晶フェライト粉末2.2質量部、スルホン酸基含有ポリウレタン(スルホン酸基含有量:3.3×10-4モル/g)1質量部、1−ナフタレンカルボン酸0.13質量部を、シクロヘキサノン3.3質量部、2−ブタノン4.9質量部からなる溶液に懸濁させた。懸濁液にジルコニアビーズ(ニッカトー製)27質量部を添加し、6時間分散させた。分散させた液のポリウレタンの強磁性六方晶フェライト粉末/溶液中の存在比率を以下の方法で測定したところ9.2/1であった。
強磁性六方晶バリウムフェライト粉末
酸素を除く組成(モル比):Ba/Fe/Co/Zn = 1/9/0.2/1
Hc:176kA/m(2200Oe)、平均板径:25nm、平均板状比:3
BET比表面積:65m2/g
σs:49A・m2/kg(49emu/g)
pH:7
【0045】
[実施例2]
実施例1と同様の強磁性六方晶フェライト粉末2.2質量部、実施例1と同様のポリウレタン1質量部、シクロヘキサンカルボン酸0.09質量部をシクロヘキサノン3.3質量部、2−ブタノン4.9質量部からなる溶液に懸濁させた。懸濁液にジルコニアビーズ(ニッカトー製)27質量部を添加し、6時間分散させた。分散させた液のポリウレタンの強磁性六方晶フェライト粉末表面/溶液中の存在比率を以下の方法で測定したところ9.5/1であった。
【0046】
[実施例3]
実施例1と同様の強磁性六方晶フェライト粉末8.0質量部、1−ナフタレンカルボン酸0.13質量部を、シクロヘキサノン3.3質量部、2−ブタノン4.9質量部からなる溶液に懸濁させた。懸濁液にジルコニアビーズ(ニッカトー製)27質量部を添加し、6時間分散させた。分散させた液中の1−ナフタレンカルボン酸を中和滴定で測定したところ、検出限界以下であった。この結果から、1−ナフタレンカルボン酸が強磁性六方晶フェライト粉末表面に吸着していることが確認できる。
【0047】
[実施例4]
実施例1と同様の強磁性六方晶フェライト粉末5.0質量部、シクロヘキサンカルボン酸0.09質量部をシクロヘキサノン3.3質量部、2−ブタノン4.9質量部からなる溶液に懸濁させた。懸濁液にジルコニアビーズ(ニッカトー製)27質量部を添加し、6時間分散させた。分散させた液中のシクロヘキサンカルボン酸を中和滴定で測定したところ検出限界以下であった。この結果から、シクロヘキサンカルボン酸が強磁性六方晶フェライト粉末表面に吸着していることが確認できる。
【0048】
[比較例1]
実施例1と同様の強磁性六方晶フェライト粉末2.2質量部、実施例1と同様のポリウレタン1質量部、クエン酸0.15質量部をシクロヘキサノン3.3質量部、2−ブタノン4.9質量部からなる溶液に懸濁させた。懸濁液にジルコニアビーズ(ニッカトー製)27質量部を添加し、6時間分散させた。分散させた液のポリウレタンの強磁性六方晶フェライト粉末表面/溶液中の存在比率を以下の方法で測定したところ4.6/1であった。
【0049】
[比較例2]
実施例1と同様の強磁性六方晶フェライト粉末2.2質量部、実施例1と同様のポリウレタン1質量部、フタル酸0.13質量部をシクロヘキサノン3.3質量部、2−ブタノン4.9質量部からなる溶液に懸濁させた。懸濁液にジルコニアビーズ(ニッカトー製)27質量部を添加し、6時間分散させた。分散させた液のポリウレタンの強磁性六方晶フェライト粉末表面/溶液中の存在比率を以下の方法で測定したところ2.6/1であった。
【0050】
[比較例3]
実施例1と同様の強磁性六方晶フェライト粉末2.2質量部、実施例1と同様のポリウレタン1質量部をシクロヘキサノン3.3質量部、2−ブタノン4.9質量部からなる溶液に懸濁させた。懸濁液にジルコニアビーズ(ニッカトー製)27質量部を添加し、6時間分散させた。分散させた液のポリウレタンの強磁性六方晶フェライト粉末表面/溶液中の存在比率を以下の方法で測定したところ4.0/1であった。
【0051】
ポリウレタン存在比率の測定方法
日立製分離用小型超遠心機CS150GXLにて100,000rpm、80分の条件で強磁性六方晶フェライト粉末と溶液を遠心分離した。上澄み液3mlをはかりとり質量を測定した。40℃、18時間の条件で乾燥させた後、140℃、3時間真空条件下で乾燥した。乾燥したものの質量を結合剤非吸着固形分とし、強磁性体粉末表面/溶液中の結合剤の存在比を計算した。
【0052】
実施例1および2では、比較例1〜3と比べてポリウレタンの強磁性六方晶フェライト粉末表面率が高かった。この結果から、本発明の表面改質剤により磁性粉末表面が改質され、ポリウレタンとの吸着性が向上したことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の表面改質剤は、磁性塗料用分散剤として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を有する環式化合物を含む磁性粉末用表面改質剤。
【請求項2】
前記環式化合物は、脂環式化合物、芳香族化合物および複素環化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の磁性粉末用表面改質剤。
【請求項3】
前記環式化合物に含まれる環状構造は、シクロヘキサン環および/またはナフタレン環である請求項1または2に記載の磁性粉末用表面改質剤。
【請求項4】
前記環式化合物は、1分子中に1つのカルボキシル基を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁性粉末用表面改質剤。
【請求項5】
前記環式化合物は、1−ナフタレンカルボン酸、2−ナフタレンカルボン酸およびシクロヘキサンカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の環式化合物を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁性粉末用表面改質剤。
【請求項6】
磁性塗料用分散剤として使用される請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁性粉末用表面改質剤。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁性粉末用表面改質剤と、磁性粉末と、結合剤とを含む磁性塗料。
【請求項8】
前記磁性粉末は、強磁性六方晶フェライト粉末である請求項7に記載の磁性塗料。
【請求項9】
磁気記録媒体の磁性層形成用塗布液として使用される請求項7または8に記載の磁性塗料。

【公開番号】特開2009−88293(P2009−88293A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256866(P2007−256866)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】