説明

磁気センサ

【課題】磁気抵抗素子に対するバイアス磁界の強さを確保しつつバイアス磁界の強さのばらつきを抑制して、センサの検出精度を向上させる。
【解決手段】磁気抵抗素子を備えるセンサチップ3を基板2にベアチップ実装することにより、モールドICを用いる従来の磁気センサにおけるモールド成形工程を廃止し、モールド成形に基づくセンサチップ3と磁石5との相対位置のばらつき要因を排除する。また、磁気抵抗素子にバイアス磁界を与える磁石5を基板2に接合することにより、センサチップ3を磁石5に実装する従来の磁気センサと比較して、高導電率の磁石5を用いることが可能になり、磁気抵抗素子に対して強いバイアス磁界を与えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗素子を備えるセンサチップと磁気抵抗素子にバイアス磁界を与える磁石とを備える磁気センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の磁気センサとして、リードフレームにセンサチップを実装しモールド成形してモールドICとし、そのモールドICを中空の磁石に挿入したものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
また、センサチップを磁石に実装した磁気センサも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−116815号公報
【特許文献2】特開2006−113027号公報
【特許文献3】特開2006−58126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、磁気センサにおいては、センサチップと磁石との相対位置のばらつきに応じて、磁気抵抗素子に対するバイアス磁界の強さがばらついてしまい、センサの検出精度に影響を及ぼす。
【0006】
そして、前者の磁気センサの場合、センサチップと磁石との相対位置のばらつき要因として、リードフレームに対するセンサチップの搭載位置精度、モールド成形型の精度、さらには二次成形型の精度等、多くの要因があるため、センサの検出精度を高めることが困難であった。
【0007】
一方、後者の磁気センサの場合、センサチップを磁石に実装するためモールド成形工程が廃止される。したがって、モールド成形に基づくセンサチップと磁石との相対位置のばらつき要因が排除される。しかしながら、センサチップを磁石に実装する場合、導電性の磁石を用いることができない。このため、磁力が強い磁石を得ることができず、磁気抵抗素子に対して強いバイアス磁界を与えることができないという問題があった。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、磁気抵抗素子に対するバイアス磁界の強さを確保しつつバイアス磁界の強さのばらつきを抑制して、センサの検出精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、磁気抵抗素子を備えるセンサチップ(3)が基板(2)にベアチップ実装されるとともに、磁気抵抗素子にバイアス磁界を与える磁石(5)が基板(2)に接合されていることを特徴とする。
【0010】
これによると、センサチップ(3)が基板(2)にベアチップ実装されるためモールド成形工程が廃止され、モールド成形に基づくセンサチップ(3)と磁石(5)との相対位置のばらつき要因が排除される。また、センサチップ(3)を磁石(5)に実装する構成ではないため、高導電率の磁石(5)を用いて磁気抵抗素子に対して強いバイアス磁界を与えることができる。したがって、磁気抵抗素子に対するバイアス磁界の強さを確保しつつバイアス磁界の強さのばらつきを抑制して、センサの検出精度を向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の磁気センサにおいて、磁石(5)は、非導電性の樹脂に導電性の磁性体粉を添加した材料にて形成されていることを特徴とする。これによると、成形によって磁石(5)を容易に形成することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の磁気センサにおいて、基板(2)は非導電性の樹脂にて形成されていることを特徴とする。これによると、成形によって基板(2)を容易に形成することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の磁気センサにおいて、磁石(5)は溝部(53)が形成された断面U字状であり、溝部(53)にセンサチップ(3)が配置されていることを特徴とする。
【0014】
これによると、従来の磁気センサにおける中空の磁石(5)と比較して、材料使用量が少なくなるとともに、成形型がシンプルになりメンテナンス性が向上する。また、中空の磁石(5)は射出成形にて形成するのに対し、断面U字状の磁石(5)は圧縮成型にて形成することができ、加工費を低減することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の磁気センサにおいて、基板(2)はセンサチップ(3)が配置される凹部(26)が形成され、平板状に形成された磁石(5)により凹部(26)の開口部が塞がれていることを特徴とする。
【0016】
これによると、従来の磁気センサにおける中空の磁石(5)と比較して、材料使用量が少なくなるとともに、成形型がシンプルになりメンテナンス性が向上する。また、中空の磁石(5)は射出成形にて形成するのに対し、平板状の磁石(5)は圧縮成型にて形成することができ、加工費を低減することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明のように、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の磁気センサにおいて、基板(2)にターミナル(1)を一体化し、センサチップ(3)とターミナル(1)をワイヤ(4)で接続することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明では、請求項2に記載の磁気センサにおいて、磁石(5)は、ネオジウム磁石、サマリウムコバルト磁石、およびアルニコ磁石のいずれかであることを特徴とする。
【0019】
これによると、磁力が強い磁石(5)を得て、磁気抵抗素子に対して強いバイアス磁界を与えることができる。
【0020】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る磁気センサにおける基板とターミナルを一体化した状態を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る磁気センサにおけるセンサチップを実装した状態を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る磁気センサにおける磁石の構成を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る磁気センサにおける磁石を組み付けた状態を示す図である。
【図5】第1実施形態に係る磁気センサにおけるコネクタターミナルを組み付けた状態を示す図である。
【図6】第1実施形態に係る磁気センサの完成状態を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る磁気センサにおけるセンサチップを実装した状態を示す図である。
【図8】第2実施形態に係る磁気センサにおける磁石を組み付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0023】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1(a)は本発明の第1実施形態に係る磁気センサにおける基板とターミナルを一体化した状態を示す正面断面図、図1(b)は図1(a)の平面図である。図2(a)はセンサチップを実装した状態を示す正面断面図、図2(b)は図2(a)の平面図である。
【0024】
図1に示すように、まず、導電性金属よりなる3つのターミナル1をインサートして、非導電性樹脂よりなる基板2を成形する。
【0025】
基板2は、断面U字状であり、基板ベース部21の長手方向両端に第1基板壁部22と第2基板壁部23が形成され、第1基板壁部22と第2基板壁部23との間に基板溝部24が形成されている。なお、本実施形態の磁気センサは、第1基板壁部22における外側端面221が検出対象(例えば磁性体ロータ)に対向して検出対象の近傍に配置される。
【0026】
そして、各ターミナル1は、第2基板壁部23に近い位置に配置され、一端側が基板溝部24に露出し、他端側が基板2の外部に突出している。なお、3つのターミナル1は、具体的には、電源用ターミナル、出力用ターミナル、および接地用ターミナルである。
【0027】
続いて、図2に示すように、磁気抵抗素子(図示せず)を備えるセンサチップ3を、基板溝部24に配置して基板ベース部21にベアチップ実装する。続いて、センサチップ3とターミナル1をワイヤ4で接続する。
【0028】
ここで、第1基板壁部22における内側端面222を基準位置としてセンサチップ3の位置決めをしている。換言すると、内側端面222とセンサチップ3の端面との距離Lが所定範囲になるようにして、センサチップ3を基板2に実装する。
【0029】
続いて、図4に示すように、センサチップ3の磁気抵抗素子にバイアス磁界を与える磁石5を基板2に接合する。
【0030】
ここで、図3(a)は磁石5の正面図、図3(b)は図3(a)の平面図、図3(c)は図3(a)の側面図である。また、図4(a)は磁石を組み付けた状態を示す正面図、図4(b)は図4(a)の平面図、図4(c)は図4(a)の側面図である。
【0031】
図3に示すように、磁石5は、断面U字状であり、磁石ベース部51の長手方向に対して直交する方向の両端に磁石壁部52が形成され、磁石壁部52間に磁石溝部53が形成されている。
【0032】
磁石5は、非導電性の樹脂に導電性の磁性体粉を添加した材料にて形成されている。具体的には、磁石5は、ネオジウム磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石等の、高導電率のプラスティック磁石である。
【0033】
そして、図4に示すように、磁石壁部52が基板壁部22、23間に挟持され、且つセンサチップ3を収容するチップ収容空間が形成されるようにして、磁石5を基板2に接合する。
【0034】
この際、磁石壁部52における第1基板壁部22に対向する一端面521を、第1基板壁部22における内側端面222に当接させた状態で、磁石5を基板2に接合する。そして、本実施形態のように、内側端面222を共通の基準位置として磁石2およびセンサチップ3の位置決めをすることにより、磁石2とセンサチップ3の相対位置のばらつきを抑制することができる。
【0035】
なお、磁石5を基板2に接合した状態では、基板溝部24と磁石溝部53は共通の空間であり且つチップ収容空間である。また、磁石5と基板2は、レーザ溶接、超音波溶着、熱溶着等にて接合することができる。
【0036】
続いて、図5に示すように、図示しない外部ハーネスと接続するための導電性金属よりなるコネクタターミナル6をターミナル1に接合した後、図6に示すように、二次成形によりハウジング7が形成されて磁気センサが完成する。なお、ハウジング7は、磁石5や基板2を覆うハウジング本体部71、およびコネクタターミナル6を覆うコネクタハウジング72を備えている。
【0037】
上記構成になる本実施形態の磁気センサは、検出対象が例えば磁性体ロータである場合、ロータの回転に伴ってバイアス磁界と協働して生じる磁気ベクトルの変化を、センサチップ3内の磁気抵抗素子の抵抗値変化として感知して、ロータの回転を検出する。
【0038】
そして、本実施形態では、センサチップ3が基板2にベアチップ実装されるためモールド成形工程が廃止され、モールド成形に基づくセンサチップ3と磁石5との相対位置のばらつき要因が排除される。また、センサチップ3を磁石5に実装する構成ではないため、高導電率の磁石を用いて磁気抵抗素子に対して強いバイアス磁界を与えることができる。したがって、磁気抵抗素子に対するバイアス磁界の強さを確保しつつバイアス磁界の強さのばらつきを抑制して、センサの検出精度を向上させることができる。
【0039】
また、磁石5は断面U字状であるため、従来の磁気センサにおける中空の磁石と比較して、材料使用量が少なくなるとともに、成形型がシンプルになりメンテナンス性が向上する。
【0040】
さらに、中空の磁石は射出成形にて形成するのに対し、断面U字状の磁石5は圧縮成型にて形成することができ、加工費を低減することができる。
【0041】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。図7(a)は本発明の第2実施形態に係る磁気センサにおけるセンサチップを実装した状態を示す正面断面図、図7(b)は図7(a)の平面図、図8(a)は磁石を組み付けた状態を示す正面図、図8(b)は図8(a)の平面図である。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0042】
図7に示すように、基板2には、基板ベース部21の長手方向に対して直交する方向の両端に基板側壁部25が形成されている。より詳細には、第1基板壁部22と第2基板壁部23と基板側壁部25とによって、チップ収容空間としての凹部26が形成されている。また、この凹部26にセンサチップ3が配置され、基板ベース部21にセンサチップ3がベアチップ実装されている。
【0043】
図8に示すように、磁石5は、平板状であり、凹部26の開口部を塞ぐようにして基板2に接合されている。
【0044】
ここで、第1基板壁部22における外側端面221を共通の基準位置として磁石2およびセンサチップ3の位置決めをすることにより、磁石2とセンサチップ3の相対位置のばらつきを抑制することができる。
【0045】
本実施形態によると、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、磁石5は平板状であるため、第1実施形態よりも、材料使用量がさらに少なくなるとともに、成形型がよりシンプルになりメンテナンス性がさらに向上する。
【符号の説明】
【0046】
2 基板
3 センサチップ
5 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗素子を備えるセンサチップ(3)が基板(2)にベアチップ実装されるとともに、前記磁気抵抗素子にバイアス磁界を与える磁石(5)が前記基板(2)に接合されていることを特徴とする磁気センサ。
【請求項2】
前記磁石(5)は、非導電性の樹脂に導電性の磁性体粉を添加した材料にて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記基板(2)は非導電性の樹脂にて形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記磁石(5)は溝部(53)が形成された断面U字状であり、前記溝部(53)に前記センサチップ(3)が配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記基板(2)は前記センサチップ(3)が配置される凹部(26)が形成され、平板状に形成された前記磁石(5)により前記凹部(26)の開口部が塞がれていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の磁気センサ。
【請求項6】
前記基板(2)にターミナル(1)が一体化され、前記センサチップ(3)と前記ターミナル(1)はワイヤ(4)で接続されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の磁気センサ。
【請求項7】
前記磁石(5)は、ネオジウム磁石、サマリウムコバルト磁石、およびアルニコ磁石のいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の磁気センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−24674(P2013−24674A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158699(P2011−158699)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】