説明

磁気位置決め装置の測定値補正

本発明は磁気位置決め装置の手段によって測定された磁場センサ(4)の位置(x)の補正装置及び方法に関する。たとえばコンピュータトモグラフ(1)の回転する構成部品(1a,1b)によって生じるような外部磁場の歪みは、既知の位置に設置されている参照センサ(3)を利用して決定される。参照センサ(3)の測定信号からコンピュータトモグラフ(1)の現在の回転角(Φ)を推定することが可能である。経験的に決定された補正(δ(x,Φ))に基づいて、磁場センサ(4)の補正前の位置(x)は場の歪みとの関係から補正された位置(x’)へ変換される。台の傾きによる場の歪みの影響を排除するため、磁場発生装置(2)及び参照センサ(3)は台に固定されている事が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁場発生装置及び磁場センサを有する磁気位置決め装置、そのような位置決め装置を有する検査装置及びそのような位置決め装置による位置測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気位置決め装置は特にたとえば患者体内のカテーテルのような器具の位置を決定する医療検査の分野で使用されている。この装置は持続的なX線照射を必要としない。しかしここでの問題はそのような位置決め装置の位置測定は容易に外部磁場又は測定場の歪みによる影響を受けてしまうことである。特許文献1ではこの観点に立って、既知の歪める物体については、場の歪みを抑制し、歪みの源の変動を把握できるように、金属素子のようなシールドに隣接させて磁場発生装置を設置することを提案している。しかしここでの欠点は画像化装置の設計に介入する必要があり、その結果高い支出を含むことになり、余計なコストがかかり、既存システムの調節が難しくなる。
【特許文献1】米国特許公開第6636757号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような背景に対して、本発明の目的は磁気位置決め装置における外部磁場歪みの補正を行う手段の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に記載の特徴を有する磁気位置決め装置の手段、請求項5に記載の特徴を有する検査装置の使用及び請求項6に記載の特徴を有する方法によって実現される。有利な実施例は従属請求項にて与えられる。
【0005】
本発明の磁気位置決め装置は以下の構成要素を有する。
a)磁場を発生させる磁場発生装置。磁場発生装置に対するある空間上の点の位置を磁場の状態(値、ベクトル又はベクトル成分)から推定することができるように、ここでの磁場は典型的には既知の関数による補正に従って空間的及び/又は時間的に不均一である。
b)磁場発生装置によって発生した磁場を測定する少なくとも1つの磁場センサ。磁場発生装置が空間内で既知であって一般的には定常点にある一方で、典型的には磁場センサは位置決め装置として、カテーテルのような観測される対象物の上に設置される。この一群の中では、よって磁場センサの位置は探索位置に対応する。それにもかかわらず、磁場センサと磁場発生装置との役割を交換し、磁場センサの(既知の)位置との関係から磁場発生装置の位置を決定することも可能である。
c)既知の参照位置で磁場を測定する参照センサ。“参照位置”は磁場発生装置及び磁場センサの2つの構成要素のうちの1つに対して既知でなくてはならず、これらの位置もまた既知でなくてはならない。よって固着された磁場発生装置の典型的な状態では、参照センサの位置は磁場発生装置との関係から既知である。
d)制御ユニット。これはたとえば適切なソフトウエアを有するマイクロコンピュータの使用により実現可能であり、磁場発生装置に対する磁場センサの位置を決定する(これは磁場センサに対する磁場発生装置の位置決定と同義である)ようになっていて、参照センサを考慮することで外部磁場の歪みを補正する。そのような補正を行う適切な方法は好適実施例のところで詳細に説明する。
【0006】
上述の磁気位置決め装置の長所は簡単な方法で外部磁場歪みの補正が可能なことである。これは参照センサ信号の測定によって可能である。そのことによって磁場の歪みは参照センサの位置を比較することで推定され、その既知である本当の位置によって決定することが可能である。この情報は磁場センサの測定相対位置の所望の補正を行うのに順に使用される。
【0007】
回転要素(管、検出器)によって磁場の大きな動的歪みが発生するため、位置決め装置はX線コンピュータトモグラフィ(CT)と組み合わせて使用するのに適している。任意でこの場合、磁場発生装置及び/又は参照センサはコンピュータトモグラフの台に固定される。両構成要素が台に固定されることで、起こりうる台の変動による傾きに対して両構成要素が同期して傾くことで磁場に対する変化が生じないのが好ましい。
【0008】
制御ユニットは校正関数が保存されているメモリを有するのが好ましい。この関数は参照センサ及び磁場センサの測定信号に依存して、外部磁場歪みの補正をせずに(直接的又は間接的に)決定された磁場センサ位置の補正シフトを提供する。この補正シフトを従来法で決定された補正されていない磁場センサ位置に行うことで磁場センサの本当の位置を正確に推定することができる。ここでは特に外部磁場歪みは補正されている。
【0009】
さらに本発明は以下の構成要素を有する検査装置に関する。
【0010】
たとえばX線装置、MR装置、超音波装置等の画像化装置。これは典型的には画像化装置であって、それ自身又はそれに付随するものによって大きな磁場歪みを発生させる。特に、これはコンピュータトモグラフであって良く、この構成要素の回転による動的な磁場歪みを起こす。
【0011】
上述の種類の磁気位置決め装置、つまり少なくとも磁場発生装置、少なくとも磁場センサ、参照センサ及び制御ユニットを有し、磁場発生装置に対する磁場センサの位置を補正し、参照センサの信号測定を考慮する。
【0012】
さらに本発明は磁気位置決め装置による位置測定方法に関する。当該方法は以下の段階を有する。
a)磁場センサ及び/又は磁場発生装置からの信号を受信する段階。磁場発生装置からの信号はこの発生装置が発生させる現在の磁場を、たとえば磁場発生装置の励起コイル中の電流の形式で表す。一方で磁場センサからの信号は磁場センサが設けられているある空間点における磁場の状態(値、ベクトル又はベクトル成分)を測定する。
b)磁気参照センサからの信号を受信する段階。磁気参照センサは磁場発生装置又は磁場センサに対して既知の空間的位置に設置されている。“磁気参照センサ(magnetic reference sensor)”という表現は磁場センサ一般的な名前として見なすべきである。磁場センサの信号は磁場の状態を反映し、参照状態として使用される。
c)磁場発生装置に対する磁場センサの位置(換言すれば磁場センサと磁場発生装置との間の相対位置)を決定する段階。ここで磁場の外部磁場歪みは参照センサからの信号を考慮することで補償される。この方法では特に、磁場発生装置の絶対空間位置が既知だとすると磁場センサの絶対空間位置も決定可能である。
【0013】
当該方法は一般に上述の種類の位置決め装置で実行可能な段階に関する。詳細、利点及び他の特徴については、上記説明を参照してほしい。
【0014】
当該方法の好適実施例に従うと、参照センサ及び磁場センサの補正前に決定された位置の信号に基づいて当該の磁場センサの補正前の位置の補正シフトを示す補正関数が決定される。磁場センサの補正前の信号は従来方法で決定される。磁場センサの位置は特に磁場発生装置の(既知の)磁場分布(field configuration)から結論づけられて良い。ここでの暗黙の前提は磁場発生装置によって発生する磁場分布は歪まないということである。これは一般に現実の状況と合致しないので、補正前の磁場センサ位置に付加される補正シフトを付加的に決定することで、磁場の真の位置をより良く推定できるようになる。
【0015】
上述方法の別な態様に従うと、補正関数は最初に関心体積中の支持点について経験的に決定され、つまりプローブセンサの助けを借りてそこに存在する磁場を測定することによって、その実際の空間位置は他の手段及びそれと平行して行われる参照センサ信号の測定によって厳密に測定毎に再測定される。この方法でおおまかな有効補正関数を得るため、支持点に関する有効な情報(プローブセンサの測定された真の位置、参照センサ信号)は関心体積全体での外挿又は内挿によって拡張される。
【0016】
さらに、外部磁場歪みを特徴づける(1次元又は多次元の)パラメータが参照センサの測定信号から決定可能である。このパラメータは上述の補正関数の変数として使用可能である。
【0017】
上述のパラメータは特に位置決め装置の近くに設けられているコンピュータトモグラフの回転角を表すことが可能である。そのようなコンピュータトモグラフの影響による磁場歪みは基本的には回転角に依存するということがわかる。なぜなら検出領域のような重要な磁場発生要素又は磁場歪み要素はコンピュータトモグラフと一緒に回転するからである。必要な場合、参照センサからの信号と回転角との間の関数的相関もまた、経験的に又はフィッティングによって(adaptively)決定して良い。
【実施例】
【0018】
本発明は以下の添付の図による例示によって説明される。
【0019】
図1で図示された状況は磁気位置決め装置がコンピュータトモグラフ1と共に使用されている場合に関する。たとえ本発明の有用性が本発明を限定する物ではないとしても、これは典型的でかつ重要な応用である。
【0020】
コンピュータトモグラフ1は大抵円盤台を有し、円盤台内では、X線源1a及びX線源1aの反対側にあるX線検出器1bが装置の中心軸に対して回転角Φで回転可能なように取り付けられている。コンピュータトモグラフ1によって、リング内部の関心体積VOIから2次元面積像データ又は3次元体積像データの生成が可能である。
【0021】
さらに暫定的でかつ空間的に不均一な磁場を関心体積VOI内及び磁場センサ4内に発生させる磁場発生装置2を有する磁気位置決め装置が利用可能である。磁場センサ4は磁場発生装置2によって発生する磁場の大きさを測定し、この方法で磁場センサの位置x(磁場発生装置2の既知の位置と共に)を推定することが可能となる。磁場センサ4はたとえば、患者の血管系で操縦されるカテーテル(図示していない)のチップに固定して良い。位置決め装置によって決定される磁場センサ4の位置はたとえば血管図(vessel map)中のカテーテルの現在位置を表すのに使用して良い。
【0022】
さらに磁場発生装置2及び磁場センサ4は制御ユニット5(たとえばマイクロコンピュータ)に接続される。(補正前の)磁場センサ4位置xを決定するのに必要な計算を制御ユニット5で行う。
【0023】
ここまで説明してきた方法では、彼/彼女は問題に出会う。その問題とは、磁場センサ4の決定された位置が磁場歪みによるエラーを有するものとなってしまうことである。そのような歪みは特に、コンピュータトモグラフ1のX線源1a及び検出器1bの影響で起こってしまう。ここで歪みはコンピュータトモグラフ1の現在の回転角Φに対して動的に変化する。
【0024】
この観点から、磁場センサ4の位置決め精度を改善するために、磁場発生装置2に対して既知の位置に設けられる参照センサ3の使用をここで提案する。コンピュータトモグラフ1の回転による磁場の動的歪みのため、参照センサ3の測定位置は明らかに参照センサ3の真の位置r0と共に図2に図示されている閉じられた軌跡r(Φ)上を移動する。参照センサ3(つまり明示的位置r)の測定信号からコンピュータトモグラフ1の有意(relevant)な回転角を決定するため、回転角とrの明示的位置との相関はたとえば経験的に決定され、反転させて良い。この方法で回転角Φを決定するのにコンピュータトモグラフの内部ルーチンに介入する必要は全くない。
【0025】
現在の回転角Φは、参照センサ3と制御ユニット5とを接続することで参照センサ3の測定信号から計算可能である。この情報もまた、(補正前の)磁場センサ4位置の測定値xをコンピュータトモグラフの回転と関連づけて補正するのにも使用可能である。それにより、補正関数δ(x,Φ)は補正に使用されるのが好ましい。ここで磁場センサ4の補正された位置x’はその補正前の位置xから式x’=x+δ(x,Φ)によって計算される。磁場センサ4の明示的な軌跡におけるこの補正は図3に図示されている。
【0026】
補正関数δ(x,Φ)はたとえば、経験的に決定可能である。図2で図示された参照センサ3の明示的な軌跡がプローブ磁場センサの測定値と共にプロットされている場合、これは関心体積VOI中の既知のグリッド点で連続的に設けられる。プローブ磁場センサが使用可能なので、たとえば磁場センサ4、ここでそれは同時に磁場を測定するのが好ましい3つの空間方向で。グリッドの位置は磁場歪みを基底と見なせるくらい十分に近い状態で選択されるべきである。グリッド点(支持点)での値の内挿又は外挿によって、探索される補正関数δ(x,Φ)は体積VOI全体で決定可能となる。
【0027】
図1からさらに明らかなように、磁場発生装置2及び参照センサ3は台1に固定されているのが好ましい。この利点は、傾きに関係して、CT1によって生じる磁場歪みの変化が位置決め系に影響を与えないように、考えられる台の傾きに対して両構成要素が同時に追随することである。従ってCT1の傾き角に関係する付加的な校正は必要なく、位置決め系の測定は台1の座標系で実行される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の検査装置の構成要素を概略的に図示している。
【図2】磁場の歪みよる参照センサの明示的変動の軌跡を図示している。
【図3】測定位置xの決定された補正シフトδを加えた磁場センサの対応する軌跡を図示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場を発生させる磁場発生装置;
前記磁場を測定する磁場センサ;
既知の参照位置で前記磁場を測定する参照センサ;
前記磁場発生装置に対する前記磁場センサの位置を決定し、それによって前記参照センサを考慮することで外部磁場歪みを補正するようになっている制御ユニット;
を有する磁気位置決め装置。
【請求項2】
前記磁場発生装置の空間的位置は既知であることを特徴とする、請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記磁場発生装置及び/又は前記参照センサはコンピュータトモグラフの台に固定されていることを特徴とする、請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記制御ユニットは校正関数を有するメモリを有し、
前記校正関数は前記参照センサ及び前記磁場センサの測定信号に依存して、補正前に決定された磁場センサ位置の補正シフトを提供する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項5】
画像化装置、特にコンピュータトモグラフ;及び、
請求項1から4のうちのいずれか1つに記載の磁気位置決め装置;
を有する検査装置。
【請求項6】
磁気位置決め装置による位置測定方法であって:
磁場センサ及び/又は磁場発生装置からの信号を受信する段階;
磁場発生装置又は磁場センサに対して既知の空間的位置に設置される磁気参照センサからの信号を受信する段階;
前記磁場発生装置に対する前記磁場センサの位置を決定する段階;
を有し、
外部磁場歪みは前記参照センサからの信号を考慮することで補償されること、
を特徴とする方法。
【請求項7】
前記参照センサの信号及び前記磁場センサの補正前に決定された位置の信号に依存して前記の磁場センサの補正前に決定された位置の補正シフトを示す補正関数が決定されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
関心体積(VOI)中の支持点での前記補正関数は経験的に決定され、前記体積(VOI)全体で外挿又は内挿を行うことによって拡張されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記外部磁場歪みを特徴づける前記参照センサの信号からパラメータが決定されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記パラメータは前記位置決め装置近くに設置されているコンピュータトモグラフの回転角を表すことを特徴とする、請求項9に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−523340(P2007−523340A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553736(P2006−553736)
【出願日】平成17年2月11日(2005.2.11)
【国際出願番号】PCT/IB2005/050530
【国際公開番号】WO2005/082247
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】