説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】MRIにおいて実際の傾斜磁場波形を高精度で計算し、この傾斜磁場波形に基づいてリグリッディング処理を高精度に実行する。
【解決手段】一実施形態では、MRI装置は、傾斜磁場算出部と、リグリッディング処理部とを備える。傾斜磁場算出部は、傾斜磁場コイルに供給される傾斜磁場電流の波形を撮像シーケンスの条件に基づいて算出し、傾斜磁場コイルが相互誘導を生じる相互インダクタンスと、傾斜磁場電流の波形とに基づいて、読み出し方向の傾斜磁場波形を算出する。リグリッディング処理部は、核磁気共鳴信号において、読み出し方向の傾斜磁場の強度の時間積分値が非線形な時間帯で収集された部分がサンプリングされるように、且つ、k空間データにおける各マトリクス要素に対応するサンプリング期間までの前記時間積分値が等間隔になるように、k空間データを生成又は再配列する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージングに関する。
【背景技術】
【0002】
MRIは、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数のRFパルスで磁気的に励起し、この励起に伴って発生するMR信号から画像を再構成する撮像法である。なお、上記MRIは磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging)の意味であり、RFパルスは高周波パルス(Radio Frequency Pulse)の意味であり、MR信号は核磁気共鳴信号(Nuclear Magnetic Resonance Signal)の意味である。
【0003】
MRIでは、空間的位置情報を得るために、互いに直交する傾斜磁場を静磁場に重畳して印加する。従って、MRI装置の傾斜磁場発生システムは、被検体が置かれる撮像空間内で傾斜磁場を印加することで、MR信号に空間的な位置情報を付加する傾斜磁場コイルを備える。
【0004】
例えば2次元画像を再構成する場合、スライス選択方向傾斜磁場、位相エンコード方向傾斜磁場、及び、読み出し方向傾斜磁場の3つの傾斜磁場が用いられる。傾斜磁場は、通常、パルス状の波形をなしており、傾斜磁場パルスとも呼ばれる。傾斜磁場パルスの波形や振幅は、撮像条件等によって定まる撮像シーケンスのパラメータの一部として規定される。
【0005】
傾斜磁場パルスの内、読み出し方向傾斜磁場パルスは、傾斜磁場パルスの振幅によって定まる傾斜を持った磁場を読み出し方向に印加するものである。読み出し方向傾斜磁場パルスの印加中、即ち、パルスのオン期間中において、被験体から発せられるMR信号(エコー信号)がサンプリングされる。オン期間中の傾斜磁場パルスの振幅が一定であれば、読み出し方向における磁場の傾きは一定であり、読み出し方向の位置と、MR信号の周波数との線形関係が確保される。
【0006】
高速撮像法では、短い期間に読み出し方向のサンプリングが行われる。例えば、EPI(Echo Planer Imaging:エコープラナーイメージング)と呼ばれる高速撮像法では、1回の磁気励起に対して読み出し方向傾斜磁場の向きを反転させながら、高速且つ連続的にスキャン(MR信号の収集)が行われる。
【0007】
EPIの読み出し方向傾斜磁場のパルス波形は、他の撮像法に比べると、パルス幅が短く、パルス周期が短い。つまり、EPIの読み出し方向傾斜磁場のパルス波形の周波数成分は、他の撮像法に比べて高い。
【0008】
他方、傾斜磁場パルスは、傾斜磁場コイルにパルス状の電流を印加することで生成される。傾斜磁場コイルに印加される電流パルスの形状は、理想的には矩形波であるが、実際には、立ち上がり領域と立ち下り領域とを有する台形波となる。この結果、傾斜磁場のパルス波形も、理想的な矩形波とはならず、立ち上がり領域と立下り領域を有する台形波となる。
【0009】
一般に、EPI等の高速撮像法では、傾斜磁場パルスのパルス幅は短く、パルス両端における立ち上り及び立ち下り領域のパルス幅全体に対する比率は高くなる。このため、パルスの平坦な領域だけでなく、立ち上り及び立ち下り領域においてもデータをサンプリングし、画像再構成用のデータとして使用する手法が提案されている。
【0010】
立ち上り及び立ち下り領域においてデータをサンプリングする手法は、Ramp Samplingと呼ばれる。傾斜磁場強度が平坦な領域のみをサンプリングする手法に比べると、Ramp Samplingではデータの収集期間が短縮される。
【0011】
しかし、立ち上り領域及び立ち下り領域において時間的に等間隔でサンプリングされるMR信号の生データは、傾斜磁場が変化しているときにサンプリングされるため、k空間上では等間隔にならない。そこで、サンプリングした生データを、再構成前にk空間上で等間隔となるように再配置することが望ましい。この再配列の処理は、通常、リグリッディング(regridding)と呼ばれる。
【0012】
特許文献1に記載のリグリッディング処理では、傾斜磁場パルスの波形が単純な台形波形ではなく非線形な波形であると仮定され、非線形な傾斜磁場パルスの波形が傾斜磁場電流の波形に基づいて計算される。特許文献1の手法では、この傾斜磁場パルスの波形に基づいてリグリッディング処理が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2010−172383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1の従来技術は、傾斜磁場パルスの波形が、傾斜磁場コイルに供給される電流(以下、傾斜磁場電流という)の波形に相似するという前提に基づく。つまり、傾斜磁場電流の波形が非線形な場合、傾斜磁場パルスの波形も、その非線形な電流波形に相似な形状になるものとしている。
【0015】
そして、傾斜磁場電流を電流計で実際に測定し、測定した電流波形に相似な形状の傾斜磁場パルスに基づいて、リグリッディング処理等が実行されている。また、傾斜磁場電源に対する入力信号(制御信号)に基づいて出力電流波形をシミュレーション等で算出し、算出した出力電流波形に相似な形状の傾斜磁場パルスに基づいてリグリッディング処理等を行う技術も開示されている。
【0016】
しかし、傾斜磁場電流の波形と、この傾斜磁場電流から実際に生成される傾斜磁場の波形とは、必ずしも一致しない。
【0017】
このため、MRIにおいて、実際の傾斜磁場の波形を高精度で計算し、計算された傾斜磁場の波形に基づいてリグリッディング処理又はパラメータ補正処理を高精度に実行する技術が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(1)一実施形態では、MRI装置は、撮像領域に傾斜磁場を印加し、撮像領域から収集されるMR信号をサンプリングすることで、複数のマトリクス要素で構成されるk空間データを生成し、k空間データに基づいて画像データを再構成するものである。このMRI装置は、傾斜磁場電源と、傾斜磁場算出部と、リグリッディング処理部とを備える。
傾斜磁場電源は、撮像シーケンスに従って傾斜磁場電流を傾斜磁場コイルに流すことで、撮像領域に傾斜磁場を印加する。
傾斜磁場算出部は、傾斜磁場電流の波形を撮像シーケンスの条件に基づいて算出し、傾斜磁場コイルが相互誘導を生じる相互インダクタンスと、上記傾斜磁場電流の波形とに基づいて、読み出し方向の傾斜磁場波形を算出する。
リグリッディング処理部は、MR信号において、読み出し方向の傾斜磁場の強度の時間積分値が非線形な時間帯で収集された部分がサンプリングされるように、且つ、各々のマトリクス要素に対応するサンプリング期間までの上記時間積分値が等間隔になるように、k空間データを生成又は再配列する。
【0019】
(2)別の一実施形態では、MRI装置は、撮像領域に傾斜磁場を印加し、撮像領域から収集されるMR信号に基づいて画像データを再構成するものである。このMRI装置は、上記(1)と同様の傾斜磁場電源と、上記(1)と同様の傾斜磁場算出部と、波形補正部とを備える。
波形補正部は、傾斜磁場算出部により算出された傾斜磁場波形が、傾斜磁場波形の目標波形とは異なる場合に、傾斜磁場波形が目標波形に近づくように、撮像シーケンスの条件の一部を撮像シーケンスの実行前に補正する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態におけるMRI装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】図1のコンピュータ58の機能ブロック図。
【図3】傾斜磁場発生システムの等価回路モデルの一例を示す回路図。
【図4】傾斜磁場コイルのインピーダンスZの実部Re{Z}の周波数特性の測定値を模式的に表したグラフ。
【図5】傾斜磁場コイルのインピーダンスZの虚部Im{Z}を角周波数ωで割ったIm{Z}/ωの周波数特性の測定値を模式的に表したグラフ。
【図6】従来のリグリッディング処理の概念を示す模式図。
【図7】第1の実施形態における傾斜磁場の算出方法の概念を示す模式図。
【図8】スピンエコー系のEPIの撮像シーケンスの一例を示す模式図。
【図9】位相エンコード及び周波数エンコードのマトリクス数が256×256の場合に、k空間データに変換される前のMR信号のデータの一例を示す模式図。
【図10】読み出し方向傾斜磁場が非線形な領域において、時間的に等間隔でサンプリングされたMR信号が、k空間上では非等間隔になることを示す概念図。
【図11】第1の実施形態におけるリグリッディング処理の第1の方法の概念を示す模式図。
【図12】第1の実施形態におけるリグリッディング処理の第2の方法の概念を示す模式図。
【図13】第1の実施形態のMRI装置の動作の流れの一例を示すフローチャート。
【図14】第2の実施形態のMRI装置の動作の流れの一例を示すフローチャート。
【図15】EPIにおけるスライス選択方向傾斜磁場に関するパラメータの補正方法の一例を示す模式図。
【図16】EPIにおける位相エンコード方向傾斜磁場に関するパラメータの補正方法の一例を示す模式図。
【図17】第3の実施形態のMRI装置の動作の流れの一例を示すフローチャート。
【図18】第4の実施形態のMRI装置の動作の流れの一例を示すフローチャート。
【図19】傾斜磁場発生システムの等価回路モデルの別の一例を示す回路図。
【図20】傾斜磁場発生システムの等価回路モデルのさらに別の一例を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、MRI装置及びMRI方法の実施形態について、添付図面に基づいて説明する。なお、各図において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態におけるMRI装置20の全体構成を示すブロック図である。なお、図1及び後述の図2に示すMRI装置20のハードウェア的な構成については、第1〜第4の実施形態で共通である。
【0023】
図1に示すように、MRI装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石22と、静磁場用磁石22の内側において軸を同じにして設けられた筒状のシムコイル24と、傾斜磁場コイル26と、RFコイル28と、制御装置30と、被検体QQが乗せられる寝台32とを備える。
【0024】
ここでは一例として、装置座標系の互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を以下のように定義する。まず、静磁場用磁石22及びシムコイル24は、それらの軸方向が鉛直方向に直交するように配置されているものとし、静磁場用磁石22及びシムコイル24の軸方向をZ軸方向とする。また、鉛直方向をY軸方向とし、寝台32は、その天板の載置用の面の法線方向がY軸方向となるように配置されているものとする。
【0025】
制御装置30は、例えば、静磁場電源40と、シムコイル電源42と、傾斜磁場電源44と、RF送信器46と、RF受信器48と、シーケンスコントローラ56と、コンピュータ58とを含む。
【0026】
傾斜磁場電源44は、X軸傾斜磁場電源44xと、Y軸傾斜磁場電源44yと、Z軸傾斜磁場電源44zとで構成されている。また、コンピュータ58は、演算装置60と、入力装置62と、表示装置64と、記憶装置66とで構成されている。
【0027】
静磁場用磁石22は、静磁場電源40に接続され、静磁場電源40から供給された電流により撮像空間に静磁場を形成させる。
【0028】
上記撮像空間とは、例えば、被検体QQが置かれて、静磁場が印加されるガントリ内の空間を意味する。ガントリとは、静磁場磁石22、シムコイル24、傾斜磁場コイル26、RFコイル28を含むように、例えば円筒状に形成された構造体である。なお、図1では煩雑となるので、ガントリ内の静磁場磁石22等の構成要素を図示し、ガントリ自体は図示していない。
【0029】
シムコイル24は、シムコイル電源42に接続され、シムコイル電源42から供給される電流により、この静磁場を均一化する。
【0030】
静磁場用磁石22は、超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源40に接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。なお、静磁場電源40を設けずに、静磁場用磁石22を永久磁石で構成してもよい。
【0031】
傾斜磁場コイル26は、X軸傾斜磁場コイル26xと、Y軸傾斜磁場コイル26yと、Z軸傾斜磁場コイル26zとを有し、静磁場用磁石22の内側で筒状に形成されている。X軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、Z軸傾斜磁場コイル26zはそれぞれ、X軸傾斜磁場電源44x、Y軸傾斜磁場電源44y、Z軸傾斜磁場電源44zに接続される。
【0032】
X軸傾斜磁場電源44x、Y軸傾斜磁場電源44y、Z軸傾斜磁場電源44zからX軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、Z軸傾斜磁場コイル26zにそれぞれ供給される電流により、装置座標系のX軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzが撮像領域にそれぞれ形成される。
【0033】
即ち、装置座標系の3軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzを合成して、論理軸としてのスライス選択方向傾斜磁場Gss、位相エンコード方向傾斜磁場Gpe、及び、読み出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Groの各方向を任意に設定できる。スライス選択方向、位相エンコード方向、及び、読み出し方向の各傾斜磁場Gss、Gpe、Groは、静磁場に重畳される。
【0034】
なお、上記「撮像領域」は、例えば、1画像又は1セットの画像の生成に用いるMR信号の収集範囲の少なくとも一部であって、画像となる領域を意味する。撮像領域は、例えば装置座標系により、撮像空間の一部として位置的且つ範囲的に規定される。MR信号の収集範囲の全てが画像となる場合、即ち、MR信号の収集範囲と撮像領域とが完全合致する場合もあるが、両者が完全合致しない場合もある。例えば、折り返しアーチファクトを防止するために、画像となる領域よりも広い範囲でMR信号を収集する場合、撮像領域は、MR信号の収集範囲の一部と言える。
【0035】
上記「1画像」及び「1セットの画像」は、2次元画像の場合もあれば3次元画像の場合もある。「1セットの画像」とは、例えばマルチスライス撮像などのように、1のパルスシーケンス内で複数画像のMR信号が一括的に収集される場合の「複数画像」である。
【0036】
RF送信器46は、シーケンスコントローラ56から入力される制御情報に基づいて、核磁気共鳴を起こすためのラーモア周波数のRFパルス(RF電流パルス)を生成し、これを送信用のRFコイル28に送信する。RFコイル28には、ガントリに内蔵されたRFパルスの送受信用の全身用コイルや、寝台32又は被検体QQの近傍に設けられるRFパルスの受信用の局所コイルなどがある。
【0037】
送信用のRFコイル28は、RF送信器46からRFパルスを受けて被検体QQに送信する。受信用のRFコイル28は、被検体QQの内部の原子核スピンがRFパルスによって励起されることで発生したMR信号(高周波信号)を受信し、このMR信号は、RF受信器48により検出される。
【0038】
RF受信器48は、検出したMR信号に前置増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅、フィルタリングなどの各種の信号処理を施した後、A/D(analog to digital)変換を施すことで、デジタル化された複素データである生データを生成する。RF受信器48は、生成したMR信号の生データをシーケンスコントローラ56に入力する。
【0039】
演算装置60は、MRI装置20全体のシステム制御を行うものであり、これについては後述の図2を用いて説明する。
【0040】
シーケンスコントローラ56は、演算装置60の指令に従って、傾斜磁場電源44、RF送信器46及びRF受信器48を駆動させるために必要な制御情報を記憶する。
【0041】
ここでの制御情報とは、例えば、傾斜磁場電源44に印加すべき傾斜磁場パルス電流の強度や印加時間、印加タイミング、及び、RF送信器46が出力するRFパルスの強度や印加時間、印加タイミング等のパルスシーケンスに関する動作制御情報を記述したシーケンス情報である。
【0042】
シーケンスコントローラ56は、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源44、RF送信器46及びRF受信器48を駆動させることにより、X軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy、Z軸傾斜磁場Gz及びRFパルスを発生させる。また、シーケンスコントローラ56は、RF受信器48から入力されるMR信号の生データを受けて、これを演算装置60に入力する。
【0043】
コンピュータ58の演算装置60は、上記のシーケンスコントローラ56の制御やMRI装置20全体のシステム制御の他、記憶装置66に保存されたプログラムに従って各種の機能を実現する。これら各種機能の実現は、プログラムによらず、特定の回路をMRI装置20に設けて実現してもよい。
【0044】
なお、制御装置30以外の構成(ガントリ)は、通常検査室に設置され、制御装置30の構成は、検査室とは異なる部屋(例えば機械室)に設置されることが多い。しかし、本発明の実施形態は、このような配置に限定されるものではない。例えば、RF受信器48をガントリ内に配置する構成でもよい。RF受信器48をガントリ内の受信用のRFコイル28の近傍に配置し、RF受信器48内でアナログ信号からデジタル信号に変換して(さらには光信号に変換して)、機械室のシーケンスコントローラ56まで伝送してもよい。この場合、不要なノイズの混入を低減できる。
【0045】
図2は、図1に示すコンピュータ58の機能ブロック図である。
図2に示すように、コンピュータ58の演算装置60は、プログラムにより、シーケンスコントローラ制御部300、撮像条件設定部302、傾斜磁場算出部306(回路定数記憶部308を含む)、定数補正部312、波形補正部316、画像再構成部90(k空間データベース92及びリグリッディング処理部320を含む)、画像データベース94、画像処理部96、表示制御部98等として機能する。
【0046】
撮像条件設定部302は、入力装置62からの指示情報や、算出された傾斜磁場波形に関する判定結果等に基づいて、パルス幅、パルス振幅等のパラメータの値を含む撮像シーケンスの条件を設定する。
【0047】
撮像条件設定部302は、入力装置62を介して入力された各種のシーケンス条件等に基づいて撮像シーケンスを設定し、シーケンスコントローラ制御部300に撮像シーケンスを入力する。
【0048】
シーケンスコントローラ制御部300は、撮像条件設定部302で設定された撮像シーケンス等をシーケンスコントローラ56に入力する。
【0049】
静磁場用磁石22、静磁場電源40、シムコイル24、シムコイル電源42、傾斜磁場コイル26、傾斜磁場電源44、RF送信器46、RF受信器48、シーケンスコントローラ56、シーケンスコントローラ制御部300、撮像条件設定部302等でデータ収集部が構成される。
【0050】
このデータ収集部により、後述のプレスキャンが実行される。また、このデータ収集部により、撮像条件設定部302で設定された撮像シーケンスに従って本スキャンが実行され、これにより被検体QQからのMR信号が生データとして収集される。
【0051】
画像再構成部90は、RF受信器48からシーケンスコントローラ56経由で入力されたMR信号の生データを、k空間データに変換し、k空間データベース92内のk空間(周波数空間)に保存する。
【0052】
また、画像再構成部90は、k空間データベース92からk空間データを取り込み、これにフーリエ変換を含む画像再構成処理を施すことで画像データを生成する。
画像再構成部90は、生成された画像データを画像データベース94に保存する。
【0053】
また、画像再構成部90は、リグリッディング処理を行うリグリッディング処理部320を有する。
【0054】
画像処理部96は、画像データベース94から必要な画像データを読み込み、これに差分処理等の画像処理やMIP処理(maximum intensity projection processing:最大値投影法)等の表示処理を施すことで、表示用画像データを生成する。画像処理部96は、生成した画像データを記憶装置66に保存する。
【0055】
表示制御部98は、記憶装置66に保存された表示用画像データや、各種ユーザインタフェース用の文字や画像等を表示装置64に表示するための制御を行う。
【0056】
傾斜磁場算出部306は、第1の実施形態と同様に、傾斜磁場コイル26とは別のコイル(傾斜磁場コイル26と電磁的に結合するコイル)が存在するとの仮定の下で、以下の計算処理を実行する。
【0057】
即ち、傾斜磁場算出部306は、傾斜磁場コイル26及び上記「別のコイル」が含まれる傾斜磁場発生システムの等価回路(例えば後述の図3参照)において、傾斜磁場コイル26に流れる電流に基づいて、上記「別のコイル」に流れる電流(図3のI(t)及びI(t))を算出する。なお、以下の説明では、傾斜磁場コイル26に流れる電流(Iout(t))を「傾斜磁場電流」と称するものとする。
【0058】
傾斜磁場算出部306は、傾斜磁場電流と、上記「別のコイル」に流れる電流とに基づいて、撮像領域に形成される傾斜磁場波形(例えば、上記X軸、Y軸、Z軸の各傾斜磁場Gx、Gy、Gzの時間変化)をさらに算出する。
傾斜磁場算出部306は、上記等価回路内の回路定数を記憶する回路定数記憶部308を有する。
【0059】
定数補正部312は、後述するプレスキャンによって評価用画像を取得する。評価用画像にアーチファクトがある場合、定数補正部312は、そのアーチファクトが低減されるよう等価回路の回路定数を補正する。
【0060】
なお、第1の実施形態ではリグリッディング処理に焦点をおいて説明するため、回路定数の補正については触れない。このため、定数補正部312の具体的な機能(回路定数の補正)については、次の第2の実施形態で述べる。
【0061】
波形補正部316は、傾斜磁場算出部306で算出された傾斜磁場波形が、傾斜磁場波形の設定値とは異なる場合に、撮像シーケンスのパラメータを補正することで、傾斜磁場波形を目標波形に近づける。
【0062】
なお、第1の実施形態ではリグリッディング処理に焦点をおいて説明するため、撮像シーケンスのパラメータの補正については触れない。このため、波形補正部316の具体的な機能(傾斜磁場波形を目標波形に近づける処理)については、後述の第3の実施形態で述べる。
【0063】
入力装置62は、例えばキーボードやマウス等の入力デバイスであり、撮像シーケンスの条件や画像処理条件を設定する機能をユーザに提供する。表示装置64は、例えば液晶パネル等から構成されるディスプレイ装置である。入力装置62と表示装置64とで、ユーザインタフェースを構成する。
【0064】
画像再構成部90は、内部にk空間データベース92を有する。画像再構成部90は、k空間データベース92に形成されたk空間において、シーケンスコントローラ56から入力されるMR信号の生データを、k空間データとして配列する。画像再構成部90は、k空間データに2次元フーリエ変換などを含む画像再構成処理を施して、被検体QQの各スライスの画像データを生成する。画像再構成部90は、生成した画像データを画像データベース94に保存する。
【0065】
画像処理部96は、画像データベース94から画像データを取り込み、これに所定の画像処理を施し、画像処理後の画像データを表示用画像データとして記憶装置66に記憶させる。
【0066】
記憶装置66は、上記の表示用画像データに対し、その表示用画像データの生成に用いた撮像シーケンスの条件や被検体QQの情報(患者情報)等を付帯情報として付属させて記憶する。
【0067】
表示制御部98は、MPU86の制御に従って、撮像シーケンスの条件の設定用画面や、撮像により生成された画像データが示す画像を表示装置64に表示させる。
【0068】
図3は、傾斜磁場波形の算出において用いられる傾斜磁場発生システムの等価回路モデルの一例を示す回路図である。ここでの傾斜磁場発生システムとは、図1の傾斜磁場電源44、傾斜磁場コイル26、シーケンスコントローラ56のように、傾斜磁場発生に関わる構成要素全体を指す。
【0069】
実際のMRI装置20の傾斜磁場発生システムは、図3に示す構成とは異なるが、傾斜磁場算出部306は、X軸傾斜磁場Gxの発生に係る傾斜磁場発生システムが図3の回路構成であるものと仮定して、傾斜磁場波形を計算する。
【0070】
図3に示すように、等価回路モデル140xは、1次側として、X軸傾斜磁場電源44xと、X軸傾斜磁場コイル26xの抵抗成分に相当する抵抗26xRと、X軸傾斜磁場コイル26xのインダクタンス成分に相当するコイル26xLとを直列に接続した構成である。
【0071】
また、等価回路モデル140xは、抵抗141R及びコイル141Lの直列回路を第1の2次側回路として有する。さらに、等価回路モデル140xは、抵抗142R及びコイル142Lの直列回路を第2の2次側回路として有する。コイル26xLと、コイル141Lとが互いに電磁的に結合している。また、コイル26xLと、コイル142Lとが互いに電磁的に結合している。
【0072】
以下、上記構成の等価回路モデル140xとした意味について説明する。周波数が高くなると、X、Y、Z軸傾斜磁場コイル26x、26y、26zの各インピーダンスは、1つの抵抗成分及び1つのインダクタンス成分の和で表される簡単なモデルのように単純増加するわけではない。
【0073】
例えば、実際には、高周波電流が導体を流れる時、電流密度が導体の表面で高く、表面から離れると低くなる。即ち、表皮効果により、周波数が高くなるほど電流が表面へ集中するので、導体の交流抵抗は高くなる。この表皮効果等を考慮すると、多項式で表される傾斜磁場発生システムのインピーダンスにおいて、X軸傾斜磁場コイル26xの抵抗26xRの抵抗値が含まれる項も、周波数に依存して変化することが望ましい。
【0074】
従って、例えば、抵抗26xRの抵抗値にも角周波数ωが乗じられるような等価回路モデル、即ち、インピーダンスの虚部のみならず実部にも周波数依存性が反映された等価回路モデルで考えることが望ましい。
【0075】
また、実際には、X、Y、Z軸傾斜磁場コイル26x、26y、26zにパルス電流を供給すると渦電流が発生し、渦電流による磁場が各傾斜磁場Gx、Gy、Gzに加わって傾斜磁場分布の歪みが生じる。渦電流で発生する磁場を考慮すると、相互インダクタンスも含まれた等価回路モデルで考えることが望ましい。
【0076】
また、図には示していないが、実際の傾斜磁場発生システムには、所定周波数以上の高周波電流を遮断するチョークコイルが含まれる場合がある。そうすると、1つのみならず、複数の相互インダクタンスが含まれた等価回路モデルで考えることが望ましい。
【0077】
図3に示す等価回路モデル140xは、以上を考慮した等価回路モデルの一例であり、等価回路モデルは、図3の構成に限定されるものではない。例えば、等価回路中における、傾斜磁場コイル26とは別のコイルの数は、2に限定されるものではなく、1でもよいし3以上でもよい。
【0078】
また、上記の通り、抵抗141R及びコイル141Lの直列回路、及び、抵抗142R及びコイル142Lの直列回路は、渦電流で発生する磁場や表皮効果などに含まれた相互インダクタンス成分や抵抗などに相当し、実際に存在する成分である。
【0079】
本明細書では便宜上、抵抗141R及びコイル141Lの直列回路を、傾斜磁場コイル26とは別のコイルである「仮想コイル」として捉える。このため、本明細書では便宜上、抵抗141Rの抵抗値を仮想コイルの抵抗成分として捉え、コイル141Lの自己インダクタンス値を仮想コイルの自己インダクタンス値として捉える。
【0080】
しかし、抵抗141R及びコイル141Lの直列回路は実在しない成分ではなく、実際に存在する相互インダクタンス成分等を等価回路において表したものである。上記解釈は、図3における抵抗142R及びコイル142Lの直列回路についても同様である。
【0081】
以下、傾斜磁場算出部306による傾斜磁場波形の計算方法について説明する。
図3において、抵抗26xR、141R、142Rの各抵抗値をそれぞれ、Rload、R、Rとする。また、コイル26xL、141L、142Lの自己インダクタンス値をそれぞれLload、L、Lとする。さらに、コイル26xLと、コイル141Lとの相互インダクタンス値をMとする。また、コイル26xLと、コイル142Lとの相互インダクタンス値をMとする。
【0082】
また、1次側回路において図3の矢印方向に流れる電流値をIout(t)とする。また、第1の2次側回路において図3の矢印方向に流れる電流値をI(t)とする。また、第2の2次側回路において図3の矢印方向に流れる電流値をI(t)とする。また、コイル26xLの両端の電圧値を図3の矢印方向を正方向としてVout(t)とする。
【0083】
これらの符号に含まれる(t)は、時間tの関数という意味であり、以下の説明で用いる他の符号についても同様である。このとき、1次側、2次側についてそれぞれ、以下の(1)式、(2)式、(3)式が成り立つ。
【0084】
【数1】

【0085】
(1)〜(3)式において、Mは以下の(4)式で表され、Mは以下の(5)式で表される。
【0086】
【数2】

【0087】
(4)式におけるKはコイル26xLとコイル141Lとの結合係数であり、(5)式におけるKはコイル26xLとコイル142Lとの結合係数である。ここで、虚数の単位をjで表す。即ち、jの二乗は−1である。
【0088】
交流の場合、時間微分d/dtをj×ωに置き換えることで(2)式を変形すれば以下の(6)式が得られ、(3)式を変形すれば以下の(7)式が得られる。
【0089】
【数3】

【0090】
等価回路モデル140xにおいて、X軸傾斜磁場電源44xから見たX軸傾斜磁場コイル26xのインピーダンスをZとする。(1)式の両辺をIout(t)で割って、さらに時間微分d/dtをj×ωに置き換え、(6)式及び(7)式を(1)式に代入することで、インピーダンスZは以下の(8)式で表される。
【0091】
【数4】

【0092】
(8)式により、X軸傾斜磁場電源44xから見たインピーダンスZの実部Re{Z}及び虚部Im{Z}はそれぞれ、以下の(9)式及び(10)式で表される。
【0093】
【数5】

【0094】
なお、(9)式及び(10)式における回路定数A、B、C、Dはそれぞれ、以下の(11)式、(12)式、(13)式、(14)式で表される。
【0095】
【数6】

【0096】
図4は、X軸傾斜磁場コイル26xのインピーダンスZの実部Re{Z}の周波数特性の測定値を模式的に表したグラフである。図4において、横軸は周波数を示し、縦軸はインピーダンスZの実部Re{Z}を示す。
【0097】
図5は、X軸傾斜磁場コイル26xのインピーダンスZの虚部Im{Z}をωで除したIm{Z}/ωの周波数特性の測定値を模式的に表したグラフである。図5において、横軸は周波数を示し、縦軸はIm{Z}/ωを示す。
【0098】
(9)式等における抵抗値Rloadは、例えば、X軸傾斜磁場コイル26xに直流電流を流した場合のX軸傾斜磁場コイル26xの両端の電圧を測定することで、予め決定され、回路定数記憶部308に予め記憶される。ここで、測定には、例えばLCRメータを用いればよい(LCRのLはInductance、CはCapacitance、RはResistanceを指す)。
【0099】
また、(10)式等における自己インダクタンス値Lloadは、例えば直流電流をX軸傾斜磁場コイル26xに流した場合にX軸傾斜磁場コイル26xが発生する磁束を測定することで、計算により算出できる。
【0100】
或いは、自己インダクタンス値Lloadは、等価回路モデル140xにおいて2次側の影響を受けない低周波数(例えば1〜10ヘルツ)において、LCRメータで測定することで決定してもよい。
【0101】
或いは、自己インダクタンス値Lloadは、X軸傾斜磁場コイル26xの形状(コイルの巻き方)、材質等に基づいて理論値を計算し、これを用いてもよい。
このように予め決定した自己インダクタンス値Lloadは、回路定数記憶部308に予め記憶される。
【0102】
抵抗値Rload、自己インダクタンス値Lloadが上記のように定まれば、(4)式の結合係数Kと、(5)式の結合係数Kと、時定数τ=L/Rと、時定数τ=L/Rとは、例えば以下のようなフィッティングにより決定できる。
【0103】
具体的には、(9)式で表されるインピーダンスZの実部Re{Z}の周波数特性と、X軸傾斜磁場コイル26xのインピーダンスの実部の周波数特性の測定値とをフィッティングさせる。
また、(10)式で表されるインピーダンスZの虚部Im{Z}を角周波数ωで除したIm{Z}/ωの周波数特性と、X軸傾斜磁場コイル26xのインピーダンスの虚部を角周波数ωで割った値の周波数特性の測定値とをフィッティングさせる。
【0104】
なお、上記のフィッティングにおいて、実部Re{Z}と、虚部を角周波数ωで割ったIm{Z}/ωとを用いたが、(9)式及び(10)式の和であるインピーダンスZ(の振幅と位相)の計算値及び測定値をフィッティングに用いてもよい。
【0105】
或いは、インピーダンスZの実部Re{Z}と虚部Im{Z}の位相差の計算値及び測定値をフィッティングに用いてもよい。
結合係数K及び結合係数Kと、時定数τ及び時定数τが定まれば、(4)式及び(5)式によって相互インダクタンスM、Mが定まり、(11)〜(14)式によって回路定数A、B、C、Dが定まる。
【0106】
以上のように求めた各回路定数Rload、Lload、A、B、C、Dは、回路定数記憶部308内に予め記憶されている。これにより、任意の周波数におけるインピーダンスZの実部Re{Z}及び虚部Im{Z}を(9)式及び(10)式によって算出できる。
【0107】
ここで、図3において、メインコイルであるコイル26xLの電流感度をα、コイル141Lの電流感度をβ、コイル142Lの電流感度をγとする。上記の電流感度は、コイルに電流を流すことで発生する傾斜磁場強度(テスラ/メートル)を、当該コイルに流す電流値(アンペア)で割った定数である。この場合、渦電流などの磁場を足し合わせたX軸傾斜磁場波形Gx(t)は、次式のような合算磁場波形として算出できる。
【0108】
Gx(t)=α×Iout(t)+β×I(t)+γ×I(t) …(15)
【0109】
(15)式の右辺の第2項及び第3項は、コイル141L、142Lが発生する磁場波形(仮想磁場波形)の一例である。
【0110】
前述のように、X軸傾斜磁場コイル26xに流れる出力電流Iout(t)は、撮像シーケンスの条件で決まる。従って、(2)式及び(3)式において電流I(t)の初期値と、電流I(t)の初期値とを決めれば、(15)式において2次側のコイル141Lに流れる電流I(t)、及び、コイル142Lに流れる電流I(t)を、(6)式、(7)式及び各回路定数に基づいて決定できる。電流I(t)の初期値と、電流I(t)の初期値は、例えば、前の撮像シーケンスの実行から十分な時間が経過していると仮定すれば、双方ともゼロとすることができる。
【0111】
そうすると、(15)式において未知数はなくなり、X軸傾斜磁場波形Gx(t)を算出できる。また、Y軸傾斜磁場波形Gy(t)、Z軸傾斜磁場波形Gz(t)についても、上記図3と同様の回路モデル及び上記(1)〜(15)式に基づいて算出可能である。
前述のように、スライス選択方向、位相エンコード方向、及び、読み出し方向の各傾斜磁場Gss、Gpe、Groは、X軸、Y軸、Z軸傾斜磁場Gx、Gy、Gz(の合成)により形成される。従って、上記のようにしてX軸傾斜磁場波形Gx(t)、Y軸傾斜磁場波形Gy(t)、Z軸傾斜磁場波形Gz(t)が算出できれば、スライス選択方向、位相エンコード方向、及び、読み出し方向の各傾斜磁場Gss、Gpe、Groの波形も算出できる。
【0112】
第1の実施形態では一例として、(15)式で示されるX軸傾斜磁場波形Gx(t)に基づいて、受信サンプリングの間隔を変更することで、再構成のリグリッディング処理の精度を向上する。以下、より具体的に説明する。
前述したように、傾斜磁場は、傾斜磁場コイル26にパルス状の電流を印加することで生成される。傾斜磁場コイル26に印加される電流パルスの形状は、理想的には矩形波であるが、実際には、立ち上がり領域と立ち下り領域とを有する台形波となる。この結果、傾斜磁場自体のパルス波形も、理想的な矩形波とはならず、立ち上がり領域と立下り領域とを有する台形波となる。
【0113】
一方、EPI等の高速撮像法では、パルスの平坦な領域だけではなく、立ち上り及び立ち下り領域においてもデータがサンプリング(Ramp Sampling)、画像再構成用のデータとして使用される。これにより、データの収集期間のさらなる短縮が図られる。
【0114】
立ち上り及び立ち下り領域において時間的に等間隔でサンプリングされるMR信号は、傾斜磁場が変化しているときにサンプリングされるため、k空間上では等間隔とはならない。そこで、サンプリングされたMR信号が、k空間上で等間隔となるように画像再構成前に再配列することが望まれる。この再配列処理がリグリッディング(regridding)処理である。
【0115】
図6は、従来のリグリッディング処理の概念を示す模式図である。図6において、各横軸は、経過時間tを示す。ここでは一例として、装置座標系のX軸が読出し方向に合致するものとし、傾斜磁場コイル26xに供給される傾斜磁場電流をIout(t)とする(次の図7の説明も同様)。
【0116】
図6の左上、左下はそれぞれ、傾斜磁場電流Iout(t)の波形の一例を示し、その縦軸は傾斜磁場電流Iout(t)の大きさを示す。図6の右上、右下はそれぞれ、読み出し方向傾斜磁場Groの波形の一例を示し、その縦軸は磁場強度を示す。
【0117】
従来技術では、読み出し方向傾斜磁場Groの波形が傾斜磁場電流Iout(t)の波形に相似するとの前提の下で、傾斜磁場波形が推定されていた。即ち、従来技術では、図6の左上の傾斜磁場電流Iout(t)からは図6の右上に示す読み出し方向傾斜磁場Groの波形が得られると推定されていた。同様に、従来技術では、図6の左下の傾斜磁場電流Iout(t)からは図6の右下に示す読み出し方向傾斜磁場Groの波形が得られると推定されていた。
【0118】
このように従来技術では、不正確に推定された傾斜磁場波形に基づいてリグリッディング処理が行われていた。
【0119】
傾斜磁場電流の波形は、図6の右上のように台形状のものもあれば、図6の右下段のように非線形成分が含まれるものもある。いずれの場合でも、従来技術では、傾斜磁場波形が傾斜磁場電流の波形に相似であるとの前提で、リグリッディング処理が実行されていた。
【0120】
しかし、傾斜磁場電流の波形と、この傾斜磁場電流から実際に生成される傾斜磁場波形とは、必ずしも一致しない。特に、EPI等の高速撮像法で用いられる傾斜磁場のように、周波数成分が高い波形では、傾斜磁場電流の波形と傾斜磁場の波形との乖離が大きくなり、傾斜磁場の立ち上がりや立ち下がりの波形の不一致が顕著になる。
【0121】
第1の実施形態のMRI装置20では、この問題に対処するため、実際に発生する傾斜磁場波形を、傾斜磁場コイル26とは「別のコイル」が複数存在するとの前提の下で、正確に算出する。
【0122】
図7は、第1の実施形態における傾斜磁場波形の算出方法の概念を示す模式図である。図7の左上、左下、右下、右上、の順に処理が進められる。図7の左上は、傾斜磁場電流Iout(t)の波形の一例を図6と同様に示す。図7の右下は、「別のコイル」である図3のコイル141L、142Lをそれぞれ流れる電流I(t),I(t)の波形の一例を示す模式図である。図7の右上は、算出される読み出し方向傾斜磁場Groの波形の一例を示す模式図である。
【0123】
第1の実施形態では、傾斜磁場コイル26及び「別のコイル141L、142L」が含まれる等価回路に傾斜磁場電流Iout(t)が入力された場合に、「別のコイル141L、142L」それぞれに流れる電流I(t),I(t)が算出される(図7の右下)。
【0124】
そして、傾斜磁場電流Iout(t)と、算出された電流I(t),I(t)とに基づいて、実際に発生する読み出し方向傾斜磁場Groの波形が高精度で算出される(図7の右上)。さらに、このように高精度で算出された傾斜磁場波形に基づいてリグリッディング処理が実行される。
【0125】
第1の実施形態で説明した(9)式等における抵抗値Rloadは、前述のように測定可能であり、測定された抵抗値Rloadは、回路定数記憶部308に予め記憶される。また、第1の実施形態と同様にして予め決定された自己インダクタンス値Lloadは、回路定数記憶部308に予め記憶される。
【0126】
抵抗値Rload、自己インダクタンス値Lloadが定まれば、(4)式の結合係数Kと、(5)式の結合係数Kと、時定数τ=L/Rと、時定数τ=L/Rとは、第1の実施形態と同様に決定できる。これにより、第1の実施形態と同様にして相互インダクタンスM、Mが定まり、(11)〜(14)式によって回路定数A、B、C、Dが定まる。
【0127】
第1の実施形態では一例として、スピンエコー系のEPIにおいて傾斜磁場の波形が計算され、傾斜磁場波形に基づいてリグリッディング処理が実行される例について説明する。
【0128】
図8は、スピンエコー系のEPIの撮像シーケンスの一例を示す模式図である。
図8では、上から順に、RFパルス、スライス選択方向傾斜磁場Gss、位相エンコード方向傾斜磁場Gpe、読み出し方向傾斜磁場Gro、及び、被検体QQからのMR信号(エコー信号)の波形の一例を示す。なお、各横軸は、経過時間tを示す。
【0129】
EPIは、1回の核磁気励起に対して傾斜磁場を高速で連続的に反転させ、連続的にMR信号を生じさせ、これらMR信号を収集するものである。より詳細には、EPIでは、例えば90°励起パルスの印加後、xy平面内の磁化が横緩和(T2緩和)により減衰して消滅する前に、位相エンコードのステップに合わせて読み出し方向傾斜磁場Groが高速で反転される。これにより、連続的なグラジエントエコーを発生させ、画像再構成に用いられるMR信号が収集される。
【0130】
EPIには、SE(spin echo) EPIや、FE(field echo) EPIや、FFE(Fast FE) EPI等がある。
【0131】
SE EPIは、図8に示すようにスピンエコー法を用いる手法であり、90°励起パルス及び180°励起パルスの後に発生するMR信号を収集する手法である。
FE EPIは、90°励起パルスの印加後に発生するMR信号を収集する手法である。FFE EPIは、高速FE法(Fast FE)法を用いる手法である
【0132】
また、複数回に亘る励起パルスを印加して得られるエコートレインのデータを合わせて1枚分の画像データを作成するEPIは、マルチショットEPIと呼ばれる。反対に、1回の励起パルスの印加で得られるエコートレインのデータのみで画像を再構成するEPIは、シングルショット(SS: single shot) EPIと呼ばれる。
【0133】
次に、リグリッディング処理の対象となるk空間データの構成例について説明する。
図9は、位相エンコード及び周波数エンコードのマトリクス要素数が256×256の場合に、k空間データに変換される直前のMR信号のデータの一例を示す模式図である。図9において、TRは繰り返し時間であり、横方向のTsはサンプリング時間(Sampling Time)であり、縦方向は位相エンコードステップ(Phase Encode Step)である。
【0134】
この場合、原則的には、位相エンコードを256回変えて収集された256ラインのMR信号は、搬送周波数の余弦関数又は正弦関数がそれぞれ差し引かれた後、図9のように位相エンコードステップ毎に並べられる。
ここで、図9の横方向である各MR信号のサンプリング時間Tsを256で等間隔に割ったΔTs毎に、MR信号の強度を各マトリクス要素のマトリクス値にする。
【0135】
これにより、実数部分(上記余弦関数が差し引かれた方)と、虚数部分(上記正弦関数が差し引かれた方)のそれぞれについて、256行256列のマトリクスデータが求まる。これら2つのマトリクスデータをそれぞれk空間データとする。
【0136】
但し、例えばシングルショットのEPI(エコープラナーイメージング:echo planar imaging)では、実効エコー時間まで5ライン分しか収集できなければ、収集数は(256/2)+5=133ラインとなる。この場合、収集されなかった123ラインは、k空間上では例えばデータとしてゼロが入る。
【0137】
ここで、読み出し方向傾斜磁場Groの印加の下で等間隔又は非等間隔にサンプリングされたMR信号は、k空間上では、読み出し方向傾斜磁場Groを時間軸方向に積分した量、即ち、読み出し方向傾斜磁場Groの0次モーメントに対応する。
【0138】
傾斜磁場が平坦な領域では、0次モーメントは直線状に変化する。しかし、傾斜磁場が平坦ではない領域(立ち上り及び立ち下り領域等)の0次モーメントは、非線形となる。EPI等の高速撮像法では、撮像時間のさらなる短縮を図るため、傾斜磁場が平坦ではない領域(立ち上り及び立ち下り領域等)においてサンプリング(Ramp Sampling)されたMR信号のデータも、画像再構成に用いられる。
【0139】
画像再構成は、サンプリングされたデータがk空間上で線形な領域にあることを前提としている。このため、非線形なサンプリングデータを、k空間上で線形となるように変換或いは補正することが望まれる。
【0140】
図10は、読み出し方向傾斜磁場Groが非線形な領域において等時間間隔でサンプリングされたMR信号が、k空間上では非等間隔になることを示す概念図である。
図10の上段は、図7の右上と同じであり、第1の実施形態の手法により正確に算出された読み出し方向傾斜磁場Groの波形の一例を示す。即ち、図10の上段において、横軸は、読み出し方向傾斜磁場Groのパルスの印加開始時刻からの経過時間tを示し、縦軸は読み出し方向傾斜磁場Groの磁場強度を示す。
【0141】
図10の中段は、図10の上段の読み出し方向傾斜磁場Groの磁場強度の絶対値を時間積分したものである。積分期間の始期は、共通して、読み出し方向傾斜磁場Groのパルスの印加開始時刻である。従って、図10の中段において、横軸は積分期間の終期時刻を示し、縦軸は、読み出し方向傾斜磁場Groの磁場強度の絶対値の時間積分値、即ち、0次モーメントを示す。
【0142】
図10の下段は、等間隔でサンプリングされる場合における、1つの位相エンコードステップ分のMR信号(即ち、1ラインのMR信号)に対する各サンプリング期間の模式図である。図10の下段において、横軸は、上段と同様に、読み出し方向傾斜磁場Groのパルスの印加開始時刻からの経過時間tを示し、縦軸は、MR信号の強度を示す。この例では、周波数エンコードステップ数が256の例を示し、256のサンプリング期間SP1、SP2、SP3、SP4、・・・SP256が設定される。即ち、1ラインのMR信号は、図10の縦方向の一点鎖線で示すように、256のサンプリング期間SP1〜SP256に等間隔に分割される。
【0143】
ここで、「傾斜磁場が平坦ではない領域」は、傾斜磁場の0次モーメントが非線形な領域を意味し、「傾斜磁場が平坦な領域」は、傾斜磁場の0次モーメントが線形な領域を意味する。
【0144】
従って、図10の上段、中段、下段から分かるように、読み出し方向傾斜磁場Groが平坦な領域及び平坦ではない領域を含めて、MR信号が時間的に等間隔でサンプリングされる場合、生成されるk空間データは、k空間上では非等間隔になる。
【0145】
読み出し方向傾斜磁場Groの印加の下でサンプリングされたMR信号は、k空間上では、読み出し方向傾斜磁場Groの0次モーメントに対応するところ、この0次モーメントは、図10の中段の横方向の一点鎖線で示すように、非等間隔となるからである。
【0146】
なお、以下の説明では、単に「0次モーメント」と言った場合、読み出し方向傾斜磁場Groの0次モーメントを指すものとする。
【0147】
図11は、第1の実施形態におけるリグリッディング処理の第1の方法の概念を示す模式図である。図11の上段は図10の上段と同じである。図11の下段は、非等間隔でサンプリングされる場合における、1つの位相エンコードステップ分のMR信号に対する各サンプリング期間の模式図である。
【0148】
第1の方法では、1ラインのMR信号は、図11の縦方向の一点鎖線で示すように、256のサンプリング期間SP1’、SP2’、SP3’〜SP256’に非等間隔で分割される。
【0149】
上記の非等間隔なサンプリング期間SP1’〜SP256’の定め方を示すのが、図11の中段である。図11の中段は、図10と同様の0次モーメントを示すが、図中の横方向の一点鎖線のみ異なる。即ち、0次モーメントが等間隔で上昇していくように、横方向の一点鎖線が引かれている。各々の横方向の一点鎖線と、0次モーメントを示す太線との各交点を通るように、縦方向の一点鎖線が引かれている。
【0150】
第1の方法では、各サンプリング期間SP1’〜SP256’の各代表時刻を積分期間の終期とする読み出し方向傾斜磁場Groのパルス強度の各時間積分値が互いに等間隔となるように、各サンプリング期間SP1’〜SP256’は定められる。上記の「時間積分値」における積分期間の始期は例えば、共通に、読み出し方向傾斜磁場Groのパルスの印加開始時刻である。また、上記「代表時刻」とは、例えば、各サンプリング期間SP1’〜SP256’の終了時刻でもよいし、中心時刻でもよい。
【0151】
第1の方法では、上記のように定められたサンプリング期間に従って、MR信号が時間的に非等間隔でサンプリングされることで、k空間データが生成される。このようにして生成されるk空間データの各マトリクス要素は、k空間で等間隔に配置される。上記「k空間で等間隔に配置される」とは、各々のサンプリング期間に対応する各々の0次モーメントの値が、図11の中段の横方向の一点鎖線で示すように、等間隔に並ぶことを意味する。
【0152】
換言すれば、第1の方法では、MR信号における、各サンプリング期間に対応する部分の収集時刻(受信時刻)での各0次モーメントが等間隔になるように、MR信号が非等時間間隔でサンプリングされる。
【0153】
第1の実施形態では前述のように等価回路に基づいて傾斜磁場波形を高精度で算出できるため、図11の第1の方法の非等間隔なサンプリングタイミングも、高精度で決定可能である。
【0154】
図12は、第1の実施形態におけるリグリッディング処理の第2の方法の概念を示す模式図である。
図12の上段は、図10の下段のように時間的に等間隔でサンプリングされることで生成されるk空間データの1ライン(1行)分の各マトリクス要素のマトリクス値ME1、ME2、ME3、ME4、・・・ME256を示す。
【0155】
ここでは一例として、周波数エンコードステップ数を256で考えるので、1ライン(1行)分のマトリクス要素数も256である。各マトリクス値ME1、ME2、ME3、・・・ME256は、その上に示すMR信号における各サンプリング期間SP1、SP2、SP3、・・・SP256にそれぞれ対応する。
【0156】
第2の方法では、図12の上段のように、時間的に等間隔でMR信号をサンプリングすることで、一旦k空間データが生成される。この後、k空間データは、以下のように再配列(変換)され、新たなk空間データとなる。
【0157】
即ち、k空間データの各マトリクス要素に対応するサンプリング期間の各代表時刻までの読み出し方向傾斜磁場Groのパルス強度の各時間積分値が等間隔となるように、再配列される。再配列に際しては補間等の処理を用いればよく、上記「代表時刻」は、第1の方法と同様である。
【0158】
図12の中段は、再配列後のk空間データの各マトリクス値ME1’、ME2’、ME3’、・・・ME256’を上側に示し、下側に元のMR信号(図12の上段と同じ)を示す。これらマトリクス値ME1’〜ME256’は、元のMR信号における各サンプリング期間SP1’〜SP256’(図11と同じ)の各信号強度からそれぞれ生成されたはずの値である。
【0159】
図12の下段は、図11の中段と同じ0次モーメントを示す。図12の下段の縦軸である0次モーメントを等間隔で分割する横方向の一点鎖線に示すように、再配列後のk空間データの各マトリクス要素に対応する0次モーメントは、等間隔となる。
【0160】
即ち、第2の方法では、MR信号における、各マトリクス要素に対応する部分の各収集時刻(受信時刻)での各0次モーメントが等間隔になるように、k空間データは再配列される。第1の実施形態では前述のように等価回路に基づいて傾斜磁場波形を高精度で算出できるため、図12の第2の方法では、高精度で均一な間隔となるようにk空間データを再配列可能である。
【0161】
図13は、第1の実施形態のMRI装置20の動作の流れの一例を示すフローチャートである。以下、前述の各図を適宜参照しながら、図13に示すフローチャートのステップ番号に従って、MRI装置20の動作を説明する。
【0162】
[ステップS21]前述の方法により、等価回路(例えば図3参照)における回路定数が決定される。即ち、傾斜磁場電源44から見た傾斜磁場コイル26のインピーダンスが測定され、測定値や(9)式、(10)式等に基づいて、回路定数が算出される。この後、ステップS22に進む。
【0163】
[ステップS22]ステップS21で決定された回路定数が、回路定数記憶部308に保存される。なお、ステップS21、S22の処理の実行の時期については、本スキャンの実行前であればよく、特に限定されるものではない。
【0164】
例えば、MRI装置20の製品出荷前に工場等で実施してもよい。また、製品を病院等に据え付けたときに、その場(オンサイト)で実施してもよい。工場等の周囲環境と設置場所の周囲環境が大きく異なる場合、オンサイトでの実施が有効である。また、設置場所の周囲環境が何らかの原因で変わった場合、運用開始後においても適宜のタイミングで、或いは、定期的にステップS21、S22の処理が実行されるようにしてもよい。
【0165】
この後、ステップS23に進む。ステップS23〜ステップS29は、本スキャンが実行される場合の処理である。
【0166】
[ステップS23]傾斜磁場算出部306は、回路定数記憶部308に保存してある等価回路の各回路定数を読み出す。この後、ステップS24に進む。
【0167】
[ステップS24]撮像条件設定部302は、ユーザが入力装置62に対して入力した撮像シーケンスの条件に関わる各種情報に基づいて、本スキャンの撮像シーケンスを設定する。シーケンスコントローラ制御部300は、撮像条件設定部302で設定された撮像シーケンスをシーケンスコントローラ56に入力する。この後、ステップS25に進む。
【0168】
[ステップS25]傾斜磁場算出部306は、ステップS24で設定された撮像シーケンス、及び、ステップS23で読み出された等価回路の回路定数に基づいて、傾斜磁場波形を算出する。撮像シーケンスが設定されると、その中の傾斜磁場(パルス列)の諸元も定まり、傾斜磁場コイル26に流すべき傾斜磁場電流Iout(t)の波形も定まる。傾斜磁場算出部306は、この傾斜磁場電流の波形と、等価回路の回路定数とに基づいて、傾斜磁場波形を算出する。
【0169】
傾斜磁場波形の算出は、スライス選択方向傾斜磁場Gss、位相エンコード方向傾斜磁場Gpe、及び、読み出し方向傾斜磁場Groの3つに対して全て行ってもよい。第1の実施形態では、少なくとも読み出し方向傾斜磁場Groの波形が算出される。
【0170】
より詳細には、例えば図3の等価回路で考える場合、渦電流などの磁場を足し合わせたX軸傾斜磁場波形Gx(t)は、(15)式による合算磁場波形として算出できる。
【0171】
ここでは一例として、装置座標系のX軸と、読み出し方向とが合致すると仮定すれば、(15)式の左辺Gx(t)が読み出し方向傾斜磁場Gro(t)となる。即ち、(15)式で読み出し方向傾斜磁場Gro(t)を算出できる。
【0172】
前述のように、X軸傾斜磁場コイル26xに流れる傾斜磁場電流Iout(t)は撮像シーケンスの条件で決まる。一方、前述の(2)式、(3)式の回路定数R、L、M、R、L、Mは、既に回路定数記憶部308に保存されている。従って、(2)式及び(3)式の微分方程式において電流I(t)の初期値と、電流I(t)の初期値とを決めれば、電流I(t)、及び電流I(t)の時間変化(波形)を決定できる。
【0173】
電流I(t)及び電流I(t)の初期値は、例えば、前の撮像シーケンスの実行から十分な時間が経過していると仮定すれば、双方ともゼロとすることができる。そうすると、(15)式において未知数はなくなり、読み出し方向傾斜磁場Gro(t)を算出できる。前述の図7の右上に示す傾斜磁場波形は、上記のようにして算出された読み出し方向傾斜磁場波形Gro(t)の一例である。このようにして、少なくとも読み出し方向傾斜磁場Groを含む傾斜磁場波形が算出された後、ステップS26に進む。
【0174】
[ステップS26]ステップS24で設定された本スキャンの撮像シーケンスに従って本スキャンが実行され、これによりMR信号が収集される。
【0175】
より具体的には、寝台32の天板上に被検体Pが載置され、静磁場電源40により励磁された静磁場磁石22によって撮像空間に静磁場が形成される。また、シムコイル電源42からシムコイル24に電流が供給されて、撮像空間に形成された静磁場が均一化される。
【0176】
そして、入力装置62に撮像開始指示が入力されると、撮像シーケンスが演算装置60からシーケンスコントローラ56に入力される。シーケンスコントローラ56は、入力された撮像シーケンスに従って傾斜磁場電源44、RF送信器46及びRF受信器48を駆動させることで、被検体QQの撮像部位が含まれる撮像領域に傾斜磁場を形成させると共に、送信用のRFコイル28からRFパルスを発生させる。
【0177】
このため、被検体QQの内部の核磁気共鳴により生じたMR信号が受信用のRFコイル28により受信されて、RF受信器48により検出される。RF受信器48は、検出したMR信号に所定の信号処理を施した後、これをA/D変換することで、デジタル化したMR信号である生データを生成する。RF受信器48は、MR信号の生データをシーケンスコントローラ56に入力する。シーケンスコントローラ56は、MR信号の生データを画像再構成部90に入力する。この後、ステップS27に進む。
【0178】
[ステップS27]リグリッディング処理部320は、ステップS25で算出された読み出し方向傾斜磁場Gro(t)と、ステップS26で収集されたMR信号とに基づいて、リッディング処理を実行する。ここでのリグリッディング処理の手法については、説明済みである。即ち、図11の第1の方法に基づいてk空間データが生成されるか、又は、時間的に等間隔なサンプリングで一旦生成されたk空間データが図12の第2の方法に従って再配列される。
【0179】
リグリッディング処理が施されたk空間データは、k空間データベース92に保存される。この後、ステップS28に進む。
【0180】
[ステップS28]画像再構成部90は、リグリッディング処理後のk空間データに画像再構成処理を施すことで、画像データを生成し、生成した画像データを画像データベース94に保存する。この後、ステップS29に進む。
【0181】
[ステップS29]撮像が継続されない場合、画像処理部96は、画像データベース94から画像データを取り込み、これに所定の画像処理を施すことで2次元の表示用画像データを生成し、この表示用画像データを記憶装置66に保存する。この後、表示装置64に本スキャンの撮像画像が表示される。
一方、撮像が継続される場合、演算装置60は、ステップS23に処理を戻す。
以上が第1の実施形態の動作説明である。
【0182】
このように第1の実施形態のMRI装置20では、表皮効果や渦電流などが考慮された実際の傾斜磁場発生システムに近い等価回路モデル140xに基づいて、傾斜磁場波形を正確に算出できる。さらに、第1の実施形態では、所望の撮像シーケンスに対して、大きな計算負荷を費やすことなく、同じ手法で傾斜磁場波形を算出できる。このように正確に算出された傾斜磁場波形に基づいてリグリッディング処理が実行されるので、リグリッディング処理の精度を向上できる。
【0183】
EPIのパルスシーケンスでは、傾斜磁場の立ち上り及び立ち下り領域の微妙な波形変動がリグリッディング処理の上で非常に重要となる。第1の実施形態では、EPIの撮像シーケンスが僅かに変更された場合でも、その変更が反映された傾斜磁場波形を直ちに算出できるため、撮像シーケンスの変更に伴う調整処理時間を削減できる。
【0184】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、第1の実施形態の変形例である。
図14は、第2の実施形態のMRI装置20の動作を示すフローチャートである。第1の実施形態との相違点は、等価回路の回路定数を検証するプレスキャン(ステップS44〜S49に対応)が追加されている点である。以下、図14に示すステップ番号に従って、第2の実施形態のMRI装置20の動作を説明する。
【0185】
[ステップS41〜S43]第1の実施形態のステップS21〜S23の処理と同様である。この後、ステップS44に進む。
【0186】
[ステップS44〜S48]ステップS44〜S48では、プレスキャンの一環として評価用画像の画像データが生成される。ステップS44〜S48の各処理内容は、第1の実施形態の本スキャンのステップS24〜S28とそれぞれ同じであり、違いは、生成された画像データが評価用画像として用いられる点である。この後、ステップS49に進む。
【0187】
[ステップS49]定数補正部312は、例えばアーチファクトの有無やアーチファクトの大きさなどにより、評価用画像の画質を評価する。
【0188】
特に、EPIでは、位相エンコード間の変動に起因する「N/2アーチファクト」が発生し易い。等価回路の各回路定数が適正範囲内ではない場合、位相エンコード間にまたがる比較的長周期の傾斜磁場変動が反映された傾斜磁場波形の算出結果は、不正確となる。
【0189】
この場合、リグリッディング処理による補正も不正確となるため、「N/2アーチファクト」の発生要因となりうる。また、温度変化等の周囲環境の変化があった場合にも、等価回路の回路定数が決定されたときの傾斜磁場コイル26のインピーダンスが変化しうる。
【0190】
そこで、ステップS49において定数補正部312は、ステップS48で自動生成された評価用画像の画像データに対して、アーチファクトの程度などを反映した画質を、例えば数値的な評価指標で自動算出する。ここでの評価指標は、例えば、「N/2アーチファクト」の大きさの程度を示すものでもよい。
【0191】
定数補正部312は、評価指標が所定の閾値に満たない場合、ステップS50に処理を移行させる。それ以外の場合、ステップS51に進む。なお、評価指標が所定の閾値に満たない場合とは、アーチファクトが所定レベル以上であり、評価用画像の画質が十分に良好ではないことを意味する。なお、評価用画像の画質の良否の判定は、人が目視で行い、判定結果が入力装置62に対して入力される構成としてもよい。
【0192】
[ステップS50]定数補正部312は、等価回路の回路定数を更新する処理を行ってから、ステップS44に処理を戻す。
【0193】
具体的には例えば、定数補正部312は、回路定数記憶部308に保存されている図3の回路定数Rの値を大きく更新し、再度ステップS44に処理を戻す。これにより、評価用画像が再度生成され、その画質の評価指標がステップS49で再算出される。
【0194】
評価指標が前回算出値よりも悪くなった場合、定数補正部312は、回路定数記憶部308に保存されている回路定数Rの値を小さく再更新し、再度ステップS44に処理を戻す。反対に、評価指標が向上した場合、定数補正部312は、回路定数Rの値をそのままにして、回路定数記憶部308に保存されているLなどの他の回路定数の値を大きく再更新し、再度ステップS44に処理を戻す。
【0195】
このように、回路定数のパラメータ毎に、画質を向上するためには値を大きくした方がよいのか、小さくした方がよいのかが、実際に回路定数の値が変更されて評価用画像が再生成されて、判定される。評価用画像の画質の評価指標が所定の閾値に達するまで、このようなプレスキャンが繰り返される。
【0196】
上記の画質の向上は、アーチファクトの低減を含む。換言すれば、定数補正部312による回路定数の更新によって、アーチファクトが所定レベル以下に低減されるまで、プレスキャンが繰り返される。なお、以上の処理は回路定数の更新方法の一例にすぎず、他の計算方法により回路定数を更新してもよい。
【0197】
[ステップS51]最新の回路定数、即ち、プレスキャンによってアーチファクトが所定レベル以下と判定された回路定数に基づいて、本スキャンのMR信号の収集及びリグリッディング処理が実行される。処理内容は、第1の実施形態のステップS23〜S28と同様である。以上が第2の実施形態の動作説明である。
【0198】
このように、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、第2の実施形態では、プレスキャンによってアーチファクトが所定レベル以下と判定された回路定数に基づいて、本スキャンが実行される。従って、画質が良好な画像を確実に取得できる。
【0199】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、第1の実施形態とは、算出された傾斜磁場波形の利用形態が異なる。第1の実施形態では、算出した傾斜磁場波形に基づいて、リグリッディング処理が行われる。一方、第3の実施形態では、算出した傾斜磁場波形に基づいて、パルスシーケンス中の傾斜磁場に関するパラメータ補正処理が行われる。以下、図15及び図16を用いて、パラメータ補正処理について説明する。
【0200】
図15は、EPIにおけるスライス選択方向傾斜磁場Gssに関するパラメータの補正方法の一例を示す模式図である。図15において、各横軸は経過時間tを示し、各縦軸は、スライス選択方向傾斜磁場Gssの強度を示す。図15の左上、右上、左下、右下の各波形図の順に、スライス選択方向傾斜磁場Gssの波形が設定、計算、再設定される。
【0201】
図15の左上に示すように、通常のスライス選択方向傾斜磁場Gssでは、正側のパルスの直後に、リフェージングローブ(rephrasing lobe)と呼ばれる負側のパルスが印加される。
【0202】
このリフェージングローブのパラメータ(例えば印加開始タイミングや、印加終了タイミングや、磁場強度など)の当初の値は、(後述の図17のステップS64での処理として)以下のように設定される。
【0203】
即ち、正側のパルス及びリフェージングローブがそれぞれ完全な台形波と仮定された上で、正側のパルスの半分の面積(S)と、その直後に印加されるリフェージングローブの面積(S)とが等しくなるように設定される。ここでの「面積」とは、例えば、磁場強度の絶対値の時間積分値を意味する。
【0204】
波形補正部316は、上記のように設定されたスライス選択方向傾斜磁場Gssの各パラメータの値と、前述した等価回路や(1)式〜(15)式に基づいて、スライス選択方向傾斜磁場Gssの実際の波形を算出する。
【0205】
算出されたスライス選択方向傾斜磁場Gssの実際の波形は、例えば図15の右上のようになる。算出された傾斜磁場波形において、正側のパルスの半分の面積(S’)と、リフェージングローブの面積(S’)とが異なる場合(例えばS’>S’の場合)、波形補正部316は、リフェージングローブのパラメータの値を補正する。
【0206】
波形補正部316は、例えば図15の左下に示すように、S’=S’となるように、リフェージングローブの幅を拡張する。そして、波形補正部316は、この補正されたパラメータと、前述した等価回路や(1)式〜(15)式に基づいて、スライス選択方向傾斜磁場Gssの波形を再度算出する。
【0207】
波形補正部316は、S’=S’(図15の右下)となるまで、リフェージングローブの幅などのパラメータの補正と、スライス選択方向傾斜磁場Gssの波形の算出とを繰り返す。
【0208】
図16は、EPIにおける位相エンコード方向傾斜磁場Gpeに関するパラメータの補正方法の一例を示す模式図である。図16において、各横軸は経過時間tを示す。図16の左上、右上、左下、右下の各波形図セットにおいて、上側の波形図の縦軸は読み出し方向傾斜磁場Groの磁場強度を示し、下側の波形図の縦軸は位相エンコード方向傾斜磁場Gpeの磁場強度を示す。
図16の左上、右上、左下、右下の各波形図の順に、位相エンコード方向傾斜磁場Gpeの波形が設定、計算、再設定される。
【0209】
まず、読み出し方向傾斜磁場Groの波形が台形であるとの仮定の下、位相エンコード方向傾斜磁場Gpeの後端側(後端部)と、読み出し方向傾斜磁場Groの前端側(前端部)とが時間的に重ならないように、EPIのパルスシーケンスのパラメータの当初の値が設定される(図16の左上参照)。これは、後述の図17のステップS64での処理である。
【0210】
ここでの時間的に重なるとは、例えば、位相エンコード方向の傾斜磁場パルスと、読み出し方向の傾斜磁場パルスとの双方が印加されているタイミングが存在する、という意味である。
【0211】
波形補正部316は、このようなパラメータの設定値と、前述した等価回路や(1)式〜(15)式に基づいて、位相エンコード方向傾斜磁場Gpeと、読み出し方向傾斜磁場Groとを算出する。算出された傾斜磁場波形は、例えば、図16の右上のようになる。
【0212】
算出された位相エンコード方向傾斜磁場Gpeのパルスの後端側と、読み出し方向傾斜磁場Groのパルスの前端側とが時間的に重なる場合、波形補正部316は、位相エンコード方向傾斜磁場Gpeの設定値を補正する。
【0213】
具体的には例えば、波形補正部316は、位相エンコード方向傾斜磁場Gpeのパルス幅の値を短くすると共に、位相エンコードのステップ幅が変わらないように位相エンコード方向傾斜磁場Gpeの振幅(磁場強度)の値を大きくする(図16の左下参照)。
【0214】
波形補正部316は、上記のように補正されたEPIのパルスシーケンスのパラメータと、前述した等価回路や(1)式〜(15)式に基づいて、位相エンコード方向傾斜磁場Gpeと、読み出し方向傾斜磁場Groとを再度算出する。
【0215】
波形補正部316は、位相エンコード方向傾斜磁場Gpeのパルスの後端側と、読み出し方向傾斜磁場Groのパルスの前端側とが時間的に重ならなくなるまで、上記のようなパラメータの値の補正と、等価回路に基づく実際の傾斜磁場波形の計算とを繰り返す。
【0216】
図17は、第3の実施形態に係るMRI装置20の動作の一例を示すフローチャートである。以下、前述の図15、図16を適宜参照しながら、図17に示すステップ番号に従って、第3の実施形態のMRI装置20の動作を説明する。
【0217】
[ステップS61〜S64]第1の実施形態のステップS21〜ステップS24の処理と同様である。この後、ステップS65に進む。
【0218】
[ステップS65]ステップS65〜S67において、波形補正部316は、パラメータ補正処理を実行する。このステップS65では、波形補正部316は、EPIのパラメータの値と、前述した等価回路や(1)式〜(15)式に基づいて、前述のように傾斜磁場波形を算出する(図15の右上又は右下、図16の右上又は右下参照)。この後、ステップS66に進む。
【0219】
[ステップS66]ステップS65で算出された傾斜磁場波形が目標波形に十分合致するか否かを、波形補正部316は判定する。
【0220】
上記「目標波形に十分合致する」とは、例えば図15で説明したように、スライス選択方向傾斜磁場Gssにおける、正側のパルスの半分の面積と、リフェージングローブの面積とがほぼ等しいことである。また、上記「目標波形に十分合致する」とは、例えば図16で説明したように、位相エンコード方向傾斜磁場Gpeのパルスの後端側と、読み出し方向傾斜磁場Groのパルスの前端側とが時間的に重ならないことである。
【0221】
「目標波形に十分合致する」と判定された場合、ステップS68に進み、そうではない場合、ステップS67に進む。
【0222】
[ステップS67]波形補正部316は、パラメータの設定値を補正する。具体的には例えば、スライス選択方向傾斜磁場Gssにおける、正側のパルスの半分の面積と、リフェージングローブの面積とが十分合致しない場合、波形補正部316は、両者が合致するようにリフェージングローブの幅を拡張する。この詳細は、図15を用いて前述した通りである。
【0223】
位相エンコード方向傾斜磁場Gpeのパルスの後端側と、読み出し方向傾斜磁場Groのパルスの前端側とが時間的に重なる場合、波形補正部316は、両者が重ならないように、位相エンコード方向傾斜磁場Gpeのパルス幅や、振幅(磁場強度)を補正する。この詳細は、図16を用いて前述した通りである。
【0224】
このようなパラメータ補正処理により、傾斜磁場波形は、目標波形に近づけられる。以上のパラメータ補正処理の後、ステップS65に戻る。
【0225】
[ステップS68]このステップS68に到達する場合、パルスシーケンスの各パラメータの値は、目標波形に十分合致するように当初設定されているか、補正されている。MRI装置20は、第1の実施形態のステップS11と同様にして、本スキャンの撮像シーケンスを実行し、収集されたMR信号のデータをk空間データに変換して保存する。この後、ステップS69に進む。
【0226】
[ステップS69]第1の実施形態のステップS11と同様にして、k空間データに対して画像再構成処理が施されて、表示用画像データが生成されて記憶装置66に保存される。この後、表示用画像データを記憶装置66から表示制御部98に転送され、表示装置64に本スキャンの撮像画像が表示される。
以上が第3の実施形態のMRI装置20の動作説明である。
【0227】
このように第3の実施形態では、本スキャンの実行前に、第1の実施形態と同様の等価回路に基づいて、現在設定されているパラメータにより実際に発生する傾斜磁場波形が高精度で算出される。そして、位相エンコード方向傾斜磁場Gpeの後端側と、読み出し方向傾斜磁場Groの前端側とが時間的に重なるなど、算出された傾斜磁場波形が目標波形に十分合致しない場合、本スキャンの実行前にパラメータの値が補正される。従って、実際に発生する傾斜磁場波形を目標波形に十分合致させることができるため、画質を向上できる。
【0228】
(第4の実施形態)
第4の実施形態のMRI装置20は、第1の実施形態のリグリッディング処理と、第3の実施形態のパラメータ補正処理とを実行するものである。
【0229】
図18は、第4の実施形態に係るMRI装置20の動作を示すフローチャートである。以下、図18に示すステップ番号に従って、第4の実施形態のMRI装置20の動作を説明する。
【0230】
[ステップS81〜S88]第3の実施形態のステップS61〜ステップS68の処理と同様である。この後、ステップS89に進む。
【0231】
[ステップS89、S90]第1の実施形態のステップS27、S28の処理とそれぞれ同様である。
【0232】
このように第4の実施形態では、第1の実施形態と同様の等価回路に基づいて傾斜磁場波形が正確に算出される。そして、この傾斜磁場波形に基づいて第3の実施形態のパラメータ補正処理が実行され(ステップS87)、本スキャンの実行後に第1の実施形態のリグリッディング処理が実行される(ステップS89)。この結果、第1の実施形態の効果と、第3の実施形態の効果の双方が得られる。
【0233】
以上説明したように、第1〜第4の実施形態のMRI装置20によれば、実際の傾斜磁場波形を高精度で算出できるので、算出された傾斜磁場波形に基づいてリグリッディング処理やパラメータ補正処理を高精度で実行できる。
【0234】
(実施形態の補足事項)
[1]上記の各実施形態では、図3に示す傾斜磁場発生システムの等価回路モデルに基づいて傾斜磁場波形を算出する例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。
【0235】
図19は、傾斜磁場発生システムの等価回路モデルの別の一例を示す回路図である。図19に示す等価回路モデル140x’は、第3の2次側回路を図3の等価回路モデル140xに追加した構成である。第3の2次側回路は、コンデンサ143Cと、コイル143Lと、抵抗143Rとを直列に接続した構成である。コイル143Lは、コイル26xLと電磁的に結合している。
【0236】
コンデンサ143Cの容量値をC、コイル143Lの自己インダクタンス値をL、抵抗143Rの抵抗値をR、第3の2次側回路内で図の矢印方向に流れる電流値をI(t)、コイル143L−コイル26xL間の相互インダクタンス値をMとする。このとき、以下の(16)式、(17)式、(18)式、(19)式が成り立つので、これら(16)式〜(19)式に基づいて上記実施形態と同様に傾斜磁場波形を算出してもよい。
【0237】
【数7】

【0238】
図20は、傾斜磁場発生システムの等価回路モデルのさらに別の一例を示す回路図である。図20の等価回路モデル140x”は、第3の2次側回路のコンデンサ143C、コイル143L、抵抗143Rの接続を並列接続に変更した点を除き、上記等価回路モデル140x’と同様である。
【0239】
この場合、第3の2次側回路においてコイル143Lを図の矢印方向に流れる電流値をI(t)とし、同方向にコンデンサ143Cを流れる電流値をI31(t)とし、同方向に抵抗143Rを流れる電流値をI32(t)とする。これにより、I(t)は、I31(t)と、I32(t)との和になる。そうすると、以下の(20)式、(21)式、(22)式、(23)式、(24)式、(25)式が成り立つので、これら(20)式〜(25)式に基づいて上記実施形態と同様に傾斜磁場波形を算出してもよい。
【0240】
【数8】

【0241】
[2]本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0242】
20 MRI装置
26 傾斜磁場コイル
30 制御装置
56 シーケンスコントローラ
58 コンピュータ
60 演算装置
90 画像再構成部
306 傾斜磁場算出部
312 定数補正部
316 波形補正部
320 リグリッディング処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像領域に傾斜磁場を印加し、前記撮像領域から収集される核磁気共鳴信号をサンプリングすることで、複数のマトリクス要素で構成されるk空間データを生成し、前記k空間データに基づいて画像データを再構成する磁気共鳴イメージング装置であって、
前記撮像シーケンスに従って傾斜磁場電流を前記傾斜磁場コイルに流すことで、前記撮像領域に前記傾斜磁場を印加する傾斜磁場電源と、
前記傾斜磁場電流の波形を前記撮像シーケンスの条件に基づいて算出し、前記傾斜磁場コイルが相互誘導を生じる相互インダクタンスと、前記傾斜磁場電流の波形とに基づいて、読み出し方向の傾斜磁場波形を算出する傾斜磁場算出部と、
前記核磁気共鳴信号において、前記読み出し方向の傾斜磁場の強度の時間積分値が非線形な時間帯で収集された部分がサンプリングされるように、且つ、各々の前記マトリクス要素に対応するサンプリング期間までの前記時間積分値が等間隔になるように、前記k空間データを生成又は再配列するリグリッディング処理部と
を備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記リグリッディング処理部は、前記核磁気共鳴信号に対する各々のサンプリング期間の各代表時刻を積分期間の終期とする前記時間積分値が互いに等間隔になるように、非等間隔なサンプリング期間を定めてサンプリングすることで、前記k空間データを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記リグリッディング処理部は、前記核磁気共鳴信号を時間的に等間隔でサンプリングすることで前記k空間データを生成後、生成した前記k空間データの各マトリクス要素に対応するサンプリング期間の各代表時刻を積分期間の終期とする前記時間積分値が互いに等間隔となるように、前記k空間データを再配列する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記傾斜磁場算出部は、前記傾斜磁場コイルとは別のコイル、前記傾斜磁場コイル及び前記傾斜磁場電源が含まれる傾斜磁場発生システムの等価回路における、前記別のコイル−前記傾斜磁場コイル間の相互インダクタンス、前記傾斜磁場コイルの自己インダクタンス値及び抵抗値、前記別のコイルの自己インダクタンス値及び抵抗値を回路定数として予め記憶し、前記傾斜磁場電流の波形、前記等価回路及び前記回路定数に基づいて前記傾斜磁場波形を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記傾斜磁場算出部は、複数の前記別のコイルが含まれる前記等価回路に基づいて前記傾斜磁場波形を算出する
ことを特徴とする請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記回路定数は、前記傾斜磁場コイルのインピーダンスの周波数特性の実測値に基づいて予め決定された定数である
ことを特徴とする請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
本スキャンの実行前のプレスキャンにおいて、前記回路定数を補正する定数補正部をさらに備え、
前記リグリッディング処理部は、前記プレスキャンで収集された前記核磁気共鳴信号に対して、前記時間積分値が等間隔になるように、前記プレスキャンのk空間データを生成又は再配列し、
前記定数補正部は、前記プレスキャンのk空間データに基づいて再構成される評価用画像に対して、アーチファクトの程度が反映された評価指標を算出し、前記評価指標に基づいて前記回路定数を補正する
ことを特徴とする請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記撮像シーケンスは、エコープラナーイメージングの撮像シーケンスであり、
前記アーチファクトは、N/2アーチファクトである
ことを特徴とする請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記傾斜磁場算出部により算出された前記傾斜磁場波形が、前記傾斜磁場波形の目標波形とは異なる場合、前記撮像シーケンスの実行前に、前記撮像シーケンスの条件を補正する波形補正部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記撮像シーケンスは、エコープラナーイメージングの撮像シーケンスであり、
前記傾斜磁場算出部は、前記相互インダクタンスと、前記傾斜磁場電流の波形とに基づいて、位相エンコード方向の傾斜磁場波形をさらに算出し、
前記傾斜磁場算出部により算出された前記位相エンコード方向の傾斜磁場波形の後端側と、前記読み出し方向の傾斜磁場波形の前端側とが時間的に重なる場合、前記波形補正部は、前記後端側と前記前端側とが重ならないように、前記位相エンコード方向の傾斜磁場のパルス幅を短くすると共に強度を大きくする
ことを特徴とする請求項9に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記撮像シーケンスは、エコープラナーイメージングの撮像シーケンスである
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
撮像領域に傾斜磁場を印加し、前記撮像領域から収集される核磁気共鳴信号に基づいて画像データを再構成する磁気共鳴イメージング装置であって、
撮像シーケンスに従って傾斜磁場電流を傾斜磁場コイルに流すことで、前記撮像領域に前記傾斜磁場を印加する傾斜磁場電源と、
前記傾斜磁場電流の波形を前記撮像シーケンスの条件に基づいて算出し、前記傾斜磁場コイルが相互誘導を生じる相互インダクタンスと、前記傾斜磁場電流の波形とに基づいて、読み出し方向の傾斜磁場波形を算出する傾斜磁場算出部と、
前記傾斜磁場算出部により算出された前記傾斜磁場波形が、前記傾斜磁場波形の目標波形とは異なる場合に、前記傾斜磁場波形が前記目標波形に近づくように、前記撮像シーケンスの条件の一部を前記撮像シーケンスの実行前に補正する波形補正部と
を備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−17811(P2013−17811A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−133158(P2012−133158)
【出願日】平成24年6月12日(2012.6.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】