説明

磁気共鳴プローブ

磁気共鳴プローブは、複数の中心導線であって、そのうちの少なくとも幾つかが、伝導性の心線、及びこの心線の少なくとも一部分に沿って少なくとも部分的にこの心線の周りに配置した絶縁体を含む、複数の中心導線と、このプローブの近位部において少なくとも部分的にこれら複数の中心導線の周りに配置した第1誘電体層と、この第1誘電体層の周りに少なくとも部分的に配置した外部伝導層と、複数の電極であって、そのうちの少なくとも1個を、これらの中心導線のうちの1本に結合すると共に少なくとも部分的にプローブ表面に配置した、複数の電極とを含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
典型的には、定位誘導法(原語:stereotactic guidance)、透視検査法、或いは他の方法の下で、脳深部刺激療法(DBS)及び心臓インターベンション(原語:cardiac interventions)といった種々様々な医療処置のためのリード(カテーテル)を被検者の体内に入れる。定位誘導法は、処置前に撮られた高解像画像に基づいた静的な(原語:static)方法であり、そして、手術道具による脳脊髄液(CSF)、血液或いは単純性(原語:simple)脳組織変位の損失に起因した脳の変位を考慮しない。従って、DBSの電極による刺激に対する患者の反応を観察することによって、若しくは、微小電極を用いてターゲット・ゾーンへの伝導路(原語:path
way)に沿って個々のニューロンの活動電位を(視覚的に又は聴覚的に)記録し表示することによって、以前に得た定位データを増やし確認するために、リアルタイムなターゲットエリアの生理学的定位(原語:localization)を行うことがしばしば必要である。これらの更なるステップは、時間を費やすものであって、処置に6乃至8時間かかり、失敗率は未だ20乃至30%の間に留まっている。
【0002】
心臓の処置は主としてX線透視検査法を用いて行われる。X線陰影が多くの構造からの寄与(原語:contribution)の重複(原語:superposition)であるために、また、様々な軟組織の識別が十分ではないために、カテーテルが心臓内のどこにあるかを正確に特定することは多くの場合非常に難しい。加えて、一般に心臓の境界が正確に定まらないため、カテーテルが心臓の壁を貫通したかどうかを知ることは一般に不可能である。更に、傷(原語:lesions)はX線透視検査法によっては目に見えない。従って、組織を十分にアブレーションしたかどうかを識別することは非常に困難である。
発明の概要
【0003】
本明細書に開示したシステム及び方法は、磁気共鳴プローブの製造工程を単純化すると共に、患者の安全性を高め、組織の加熱を無くせないにしても減らし、そして、脳深部刺激療法、電気生理学的写像、及び/又はRFアブレーションといったMRIインターベンション処置中において多数の機能を容易に実行できるようにする。
【0004】
一実施形態において、磁気共鳴プローブは、複数の中心導線を含んで、そのうちの少なくとも幾つかの中心導線が、伝導性の心線と、その心線の少なくとも一部分に沿って少なくとも部分的にその心線の周りに配置した絶縁体とを含んでもよい。第1誘電体層を、このプローブの近位部において少なくとも部分的にこれら複数の中心導線の周りに配置してもよい。外部伝導層をこの第1誘電体層の周りに少なくとも部分的に配置してもよい。複数の電極を含んでもよく、そのうちの少なくとも1個の電極は、これらの中心導線のうちの1本に結合すると共に少なくとも部分的にプローブ表面に配置している。
【0005】
一実施形態において、プローブは、この外部導線の周りに少なくとも部分的に配置した第2誘電体層を含んでもよい。一実施形態において、これら複数の中心導線は、磁気共鳴環境での使用に適したものとしてもよい。一実施形態において、少なくとも1つの絶縁体の厚さが約100ミクロン以下であってもよい。一実施形態において、少なくとも幾つかの中心導線が、ダイポールアンテナの第1極を形成してもよく、また、この外部伝導層が、このダイポールアンテナの第2極を形成してもよい。一実施形態において、プローブは、複数の放射状に拡張可能なアームを含むことができる。一実施形態において、1本のアームに少なくとも1個の電極を少なくとも部分的に配置してもよい。
【0006】
一実施形態において、インターフェース回路は、プローブに電気的に結合してもよく、このインターフェース回路は、このプローブから受信した信号を磁気共鳴伝導路及び電気生理学伝導路へ導く信号分配器と、この磁気共鳴伝導路に配置したハイパスフィルターと、この電気生理学伝導路に配置したローパスフィルターと、磁気共鳴断層影装置に接続するためにこの磁気共鳴伝導路に配置したコネクターと、組織刺激装置、生体電位(原語:biopotential)記録システム、アブレーションエネルギー源のうちの少なくとも1つに接続するためにこの電気生理学伝導路に配置したコネクターとを含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本開示のシステム及び方法は、磁気共鳴映像法(MRI)の下で行われる診断と治療処置の誘導及び視覚化に関する。一般に、MRIで入手可能な優れた軟組織のコントラストが、こうした処置に役立つ。こうした応用例としては、心房細動と心室頻拍とを含むがこれらに限定されない、不整脈の診断及び治療だけでなく、脳部位の電気刺激が役立つ、運動障害(パーキンソン病、本態性振戦など)と他の神経系障害とを治療するための脳深部刺激療法(DBS)もある。
【0008】
リアルタイム磁気共鳴映像法は、定位の位置決め(原語:planning)の不正確さと、X線透視検査法に見られるような軟組織のコントラスト不足との両方を克服できる。従って、磁気共鳴映像法で誘導したインターベンションを使用することで、処置時間を短縮すると共に成功率を上げることができる。
【0009】
MRI誘導下DBSが役立つ可能性のある幾つかの症状には、パーキンソン病、本態性振戦、及び多発性硬化症が含まれる。パーキンソン病は、「黒質」として知られるニューロンのクラスタを含んでいる中脳部位での進行性の神経系障害である。これらのニューロンは、化学物質のドーパミンを生成する。ドーパミンとは、脳幹神経節を含むと共に正常な運動に極めて重大である、ニューロンの幾つかのクラスタと黒質との間の信号の伝達の役割を果たす神経伝達物質(伝達子)である。ドーパミン・レベルが80%未満に低下すると、パーキンソン病の症状が出現し始め、脳幹神経節の神経細胞を制御不能な状態で活動させて、この結果、振戦、筋肉の硬直或いは強直、運動の緩慢(運動緩慢)及びバランスの障害を来たす。薬物療法は、幾つかの症状を殆どの患者において限定期間、一般に4乃至8年間隠蔽するものの、これらの薬物療法は、用量規制の副作用を引き起こし始める。結局、これらの薬物療法はその有効性を失って、患者を運動、会話、或いは嚥下できない状態にしてしまう。例えば神経細胞移植、神経成長因子、遺伝子治療技術及び(DBSを含む)手術治療といった幾つかの予防及び回復の方策は、動物研究及び人間の臨床試験で見込みを示している。(遺伝感受性と毒物の役割とを含む)原因への重要な関連は、確立されてきている。主要な科学者達は、パーキンソン病を、ここ十年以内に突破口となる治療が開発されると共に/若しくは治る神経系障害と評している。パーキンソン病は、約100万人のアメリカ人を苦しめており、そのほぼ40パーセントは60歳未満である。約60,000件のPDが毎年診断されている。パーキンソン病が毎年社会に250億ドル以上を費やすと推測されている。
【0010】
本態性振戦(ET)は、米国において1,000万人近くに影響する最も一般的な神経系運動障害と見なされる。ETは、身体部分の不随意で律動性の振戦を特徴とする慢性症状である。この身体部分は、最も典型的には手及び腕、しばしば頭及び音声であるが、脚はめったにない。多くの個人が生涯にわたって治療を必要としない軽度のETにかかっているかもしれないが、一般にETは、ゆっくり進行する病気と見なされる。ETの最も一般的な形態は、腕及び手の通常両側に影響し、また、重力に逆らって腕を保持する(姿勢時振戦)場合や、若しくは書いたりカップから飲んだりする場合などの動作に対して(運動時振戦)最も顕著となる。パーキンソン病の患者達と異なって、ETの患者達は、腕を安静にしている場合はめったに振戦を示さない。ETに対する薬理学的治療は、ベータ・アドレナリン作動性遮断薬(例えば、プロプラノロール)と呼ばれる種類の薬を含んでおり、患者の約50乃至60パーセントに役立っている。一般に、プリミドン(マイソリン)が最も有効な薬と見なされる。これらの薬の副作用は以下のものを含んでいる。それらは、徐脈(遅い心拍数)、低血圧症(低血圧)、めまい、疲労、鬱病、下痢、吐き気及び/又は性機能障害である。何年もの間、ETの手術治療は、視床と呼ばれる細胞の一定のクラスタに傷を施すものであった。定位視床破壊術(原語:stereotaxic
thalamotomy)と呼ばれるこの処置は、脳卒中(原語:stroke)或いは他の手術による合併症の限られた危険があり、しかも両側性の視床破壊術が言語障害(構語障害)の危険を増加させるが、振戦強度をかなりの程度下げるのに非常に有効である。視床の高周波刺激(脳深部刺激療法)が最近開発されたことによって、ETを治療するためのより安全でより有効な手術的方策が実現されている。この処置は、視床の領域(腹側中間核(原語:Ventral
Intermediate Nucleus)或いはVIM核)に電極を留置することが必要となる。
【0011】
多発性硬化症(MS)は、若い成年期に始まる傾向があり、米国で約500,000人に影響している。世界的には発病率は、北欧では約0.01%であり、また米国北部では100,000人当たり30件を超える最も高い有病率となっている。MSは、脳及び脊髄の中の神経線維に影響する慢性進行性で変性の障害である。脂肪質(ミエリンと呼ばれる)は、神経線維を囲んで絶縁し、神経刺激伝達の伝導を促進する。MSは、その脂肪質を形成する特殊細胞(希突起神経膠細胞)の破壊によって起こる、ミエリンの間欠性の損傷(脱髄と呼ばれる)がその特徴である。脱髄は、通常、脊髄、脳幹及び視神経における、神経線維の瘢痕化及び硬化(硬化症、疫病)を引き起こし、その結果、神経刺激が遅れて、衰弱、麻痺、苦痛及び視力低下をきたす。MSは、中枢神経系のいかなる部分も冒す可能性がある。それが小脳或いは小脳の脳の他の部分との連結を冒す場合は、激しい振戦が起こり得る。皮質下の灰白質も有髄神経線維を含んでいるので、線条体、淡蒼球及び視床において硬化巣(原語:plaques)も見つかる可能性がある。これは、少数のMS患者達に見られる他の運動障害に対する病理学的根拠となるかもしれない。様々な神経が様々な時間に冒されるので、MSの症状は、身体の様々な部位で多くの場合増悪したり(悪化したり)、改善したり、現れたりする。この障害の初期症状に、視覚変化(例えば、霧視、盲点)及び筋肉の衰弱が含まれることがある。MSは絶え間なく進行するか、若しくは、症状が部分的に又は完全に減少(緩和)した後に急性の発作(悪化)を引き起こす可能性がある。この疾病患者の殆どの寿命は、標準的な長さである。
【0012】
典型的なDBS処置において、定位フレーム、例えばレクセルフレームを、インターベンション手術のどの部分にも先立って患者に取り付ける(ボルトで締める)。これは、しばしば別の小さな手術室において鎮静(ミダゾラム、フェンタニル、プロポフォール)状態で且つ/若しくは局所麻酔(リドカイン)状態で行われる。フレームを取り付けた後で、画像処理システム(CT又はMR)の手術台に患者を移し、患者の頭を固定する。基準マーカーを含んでいる箱を、このフレーム上に装着させる。これらのマーカーは、その後の画像に完全に既知の位置に映し出され、これによりフレーム座標と脳構造体との間で正確な写像を行うことができる。これらの詳細な画像及び座標の写像に基づいて、手術用の軌道に、位置決めソフトウェア・プログラムが使用されている。
【0013】
この処置の典型的なターゲットは、視床、淡蒼球内節(Gpi)及び視床下核(SNT)内の領域を含む。ターゲットの選択は、治療する疾病及び症状に大きく依存する。GPiにDBSを施すと、薬剤性ジスキネジーに対して非常に有効に見えて、振戦と運動緩慢との抑制の補助となる。SNTにDBSを施すと、患者達による薬物療法減少という観点から測定した場合は最も有効に見えるが、ジスキネジーを増加させる可能性がある。視床は、パーキンソン病患者にとって必ずしもよいターゲットではないが、多発性硬化症により引き起こされる、本態性振戦及び運動障害を被った患者に対して症状を改善することが分かっている。
【0014】
一旦ターゲットが効果的に定位され、安全な位置にあると認められると、安全な入口及び軌道にターゲットを配置するよう努めなければならない。DBS位置決め断層撮影に大脳皮質のMRI表面画像を組み合わせると、大量出血を招く、初期のドリル穴及びDBSの電極の通過による、大脳の動脈又は静脈の損傷を回避するのに有用となり得る。定位ソフトウェアシステムを用いれば、軌道スライスが可能となり、ターゲットの方へ電極を動かす際に、その可能性のある危害に関して軌道の全段階を視覚化できるようになる。これらの重大な構造体を回避するか、若しくは大きな脳室を持った患者の脳室系の通過を回避するように、入口ポイントに対して微調整を行うことができる。
【0015】
入口ポイント座標は、手術の位置決め中に直接は利用されないが、軌道自体を作成する時にコンピューターシステムによって使用される。その後、精度推定を得ることができ、通常は数百ミクロン以内で正確であり、しかも必ず0.5cm未満の精度となる。このため、手術処置中にイメージング及び位置決めからの結果を有効利用できる。
【0016】
一旦位置決め工程が完了すると、手術室へ患者を移す。また、患者の頭蓋骨に穴(0.5インチ乃至1.0インチ)がドリルで空けられる。この時点で、殆どの手術センターは、DBS電極による刺激に対する患者の反応を観察することによって、若しくは、微小電極を用いてターゲット・ゾーンへの伝導路に沿って個々のニューロンの活動電位を(視覚的に又は聴覚的に)記録し表示することによって、以前に得た定位データを増やし確認するために、ターゲットエリアのリアルタイムな生理学的定位を行う。脳の形状及び解剖学的構造体の位置が神経外科的処置中に変化し得るので、付加的ステップが必要であると考えられる。こうした変化は、獲得時の患者の位置と手術中の患者の位置との差、組織切除又は嚢胞排液による容量の減少、使用した道具による組織変位、血量及び細胞外液量の変化、或いは頭蓋骨を開頭した時の脳脊髄液の損失のために起こり得る。脳の移動量は、極端なケースでは1センチメートル以上であり、殆どのケースでは1乃至2mmである。
【0017】
脳の移動現象に加えて、まだ特定の細胞核の、ある小部(原語:subsection)を解剖手段では同定できず、この場合もターゲットエリアの生理学的特定が必要となる。これらの「不確実性」があれば、所望の結果を達成する前に何回かターゲットに対する操作(原語:runs)が必要になるかもしれない。ターゲットエリアが到達したかどうか、また望まない副作用があるかどうかを特定するために、処置の間中、患者からの反応が必要である。一旦ターゲットエリアを正確に確認したら、微小電極を取り外して、DBSの電極に取り替える。患者と生理学的反応とを観察することで刺激電圧レベルを特定する。一旦全てのパラメーターを正確に調節したら、DBSの電極を頭蓋骨内に固定して、皮下で鎖骨下の部位にペースメーカーを挿入し、そして、首の後部から上って頭頂部へ頭皮の下にリードを入れる(原語:tunneled)。
【0018】
定位のDBSの主な欠点の1つは、脳深部のターゲットエリアを電気刺激するための電極配置においてミリメートル未満の精度が必要なことである。指摘されているように、1乃至2mmの脳の移動は、定位脳手術のための画像の獲得時から手術中自体までの間にごく普通に起こり得て、また患者搬送(誤登録、画像ひずみ)、体液(血液、CSF)の損失或いは使用した道具による単純性組織変位の何れかによって引き起こされる。これらの問題に対して長い間認められてきた解決策は、リアルタイムMRI誘導下手術を行うことである。この目的のために、様々なMRIシステムが開発されている。典型的に0.12T(オーディン)乃至1.0T(フィリップス)の範囲の磁場強度で操作される「オープンMRI」システムは、磁場強度が1.0T乃至3.0Tの範囲の閉じたボアシステムに比べて、患者へのアクセスに関して明らかな長所がある。しかしながら、これらの高磁場の短いボアシステムは、その信号対雑音比(SNR)が磁場強度に線形に依存するので、SNRにおける性能が低磁場システムより優れている。より高いSNRは、解像度及び/又はイメージング速度に直接繋がる。これらのオープンシステム(フィリップス1.0T)の磁場強度を上げるための努力がなされてきた。しかしながら、これらの磁石の分離された極面を安定させることが機械的に非常に困難であるために、またこれらの磁石が、容易に遮蔽されず、しかも同等の「閉じたボア」システムより大きな周辺磁場を備えるという事実のために、現在よりはるかに高い磁界が望ましいか或いは達成されることは明らかでない。更に、高磁場システムでの患者へのアクセスを向上するためにかなりの進歩が遂げられてもいる。従来から、全身用3T・MRIシステムは、2mの長さのアクセス部を備えている。ここ数年で、頭部専用断層撮影装置(アレグラ、シーメンス)が開発されており、システム長さを1.25mに減らし、これによって比較的容易に患者の頭部へアクセスできるようになった。1.5Tの全身用断層撮影装置においても同様の進歩が遂げられている。実際の磁石がシステム全体よりも著しく短い(68乃至80cm)ので、患者へのアクセスに関して更なる進歩を期待できる。画像品質、速度及び患者へのアクセスについては、今や精密なインターベンションMRIが実現可能なところにある。全ての主なOEMは、完全一体型MRI手術室の必要性を認めており、この目標に向かってかなりの進歩を遂げている。シーメンスは、「脳スウィートルーム(原語:BrainSuite)」、つまり神経外科用の完全一体型MRIスウィートルームを導入している。フィリップス、シーメンス及びGEはまた、XMRIシステムを導入しており、これは1.5T又は3Tの全身システムをX線透視検査法に、両方のシステムを連結する患者の手術台/搬送台(原語:carrier)を用いて組合せたものである。
【0019】
構造的に異常な心臓を持った患者に起こる心房細動及び心室不整脈は、現代の心臓病学において大きな関心事である。それらは、最も頻繁に遭遇する頻拍であり、最多の罹患率及び死亡率を占めており、大きな進歩がなされてきたにもかかわらず、治療が困難なままである。
【0020】
心房細動は、心室不整脈よりも多数の人口を冒し、その有病率は、50乃至59歳の患者において約0.5%であり、80代の患者においては8.8%まで増加する。フラミンガム・データは、過去30年にわたって、年齢調整した有病率が概ね増加し、米国において2百万人を超える人々がこれに冒されたことを示している。心房細動は、冠状動脈性心疾患、心筋症及び術後状態といった障害を通常伴うが、事例の10%では何ら異常が認められない場合にも発生する。心房細動は心室不整脈の致死率ほどではないかもしれないが、その死亡率は、対照被験者(原語:control
subjects)の2倍である。心房細動中に生じる症状は、高頻度の急速で不規則な心拍数と房室(AV)同期性の消失とに起因する。これらの症状、薬の副作用、そして最も重要であるが、脳血栓塞栓の併発症(1年当たり約75,000件の脳卒中をもたらす)のため、心房細動は深刻な難題である。
【0021】
2つの方策を用いて、心房細動患者を医学的に管理している。1つ目は、心拍数管理及び抗凝固に関し、また、2つ目は、洞調律を復帰させ維持する試みに関する。最適なアプローチは明確には知られていない。大多数の患者には、電気的か薬理学的な心臓除細動で洞調律を復帰する試みが行われる。現在のデータが示唆するところによると、心臓除細動に関連した塞栓症を防ぐためには、抗凝固が、心臓除細動の前に3乃至4週間、また心臓除細動の後に2乃至4週間必要である。一旦洞調律が復帰すれば、慢性の抗不整脈治療が実行可能となる場合もある。全体として、薬理学的な治療によって、1乃至2年間にわたって継続管理した患者の30乃至50%は、洞調律の維持に成功する。抗不整脈治療の主な欠点は、患者の10%以内で、持続した、そして時には致死性の、不整脈(催不整脈性)が誘発されることである。
【0022】
洞調律を維持できない場合は、幾つかのアプローチを使用して、心房細動に対する心室の反応を管理する。AV結節を介して伝導を遅くする薬理学的な薬剤を最初に試す。心拍数を管理する薬理学的なアプローチが失敗した場合、若しくは著しい副作用が起きた場合は、AV結節のアブレーション、及び永久ペースメーカーの取り付けを考慮してもよい。血栓塞栓症の脳卒中がかなり発生するので慢性の抗凝固が重要になるが、出血の併発症はまれではなく、また、全ての患者に抗凝固を使用できるわけではない。
【0023】
医学管理アプローチに加えて、心房細動の手術治療もまた行われている。コックスによって開発されたメイズ手術の処置は、心房の機能を維持しながら心房細動を抑制するためのアプローチである。この処置は、左右の心房に線形に多数切開することを伴う。これらの手術による切開は、伝導を閉鎖すると共に、洞結節との伝達を残す別個の分節に心房を仕切る、線を作る。各分節において心房組織の塊を減少させることで、心房組織の塊は、心房細動の根本原理である多数の旋回の繰り返し(原語:reentrant
rotors)を保持できなくなる。心房細動の治療に対する手術アプローチは、結果的に95%を超える効果があり、また併発症の発病率が低い。しかしながら、これらの有望な結果にもかかわらず、この処置は、回復に長時間を要することと心臓手術に付随する危険性とのために、広く受け入れられてはいない。
【0024】
不整脈の診断及び治療において、心臓の電気活動に関する侵襲性の研究(電気生理学的研究)もまた用いられている。高周波(RF)カテーテル・アブレーションを用いて重大な電気伝導路を選択的に破壊することによって、局所心房頻拍、AV結節の旋回する頻拍、副伝導路、心房粗動及び特発性心室頻拍を治すことができる。電気生理学者達は、RFカテーテル・アブレーションを用いて、メイズ処置を再現することを試みた。その処置は困難であり、全身麻酔を必要とすると共に、2時間を超える電離X線照射への曝露を伴い、多くの場合12時間を超える処置時間を要する。これまでに脳血管障害を被った患者もいる。この処置の主要な制限の1つは、心房の連続的な線形の傷を形成しその存在を確認することに関連した困難である。線形の傷に間隙がある場合には、電気的興奮がこの間隙を通って旋回回路を完成できるため、心房細動又は心房粗動は持続されてしまう。こうした困難は、上述したように長い処置時間の著しい一因となる。
【0025】
心房に形成した傷をイメージングするための、侵襲性が最小限となる改良された技術によって、連続的な線形の傷及び病的状態を容易に形成し確認することができる。こうしたイメージング技術によって、この処置を純粋に解剖学的所見に基づくものとすることが可能かもしれない。
【0026】
カテーテルの配置を誘導するための主な技術は、X線透視検査法である。電気生理学的研究及びアブレーションでは、一般に毎秒7乃至15のフレームレートを用いることで、術者が体内のカテーテルのレントゲン写真による陰影を見ることができる。X線が身体を一方から他方へ横断するので、X線ビームが横断した全ての構造体が画像に寄与する。このため、この画像は、身体の全体的な厚さにおいて陰影が重ね合わせたものとなる。従って、1つの投射を使用する場合は、このビーム方向に垂直なカテーテルの位置しか知ることができない。このビームと平行なカテーテルの位置に関する情報を得るためには、この元のビームから角度をずらした第2のビームを使用するか、若しくはこの元のビームを別の角度の位置に移動させることが必要となる。心臓内の電位図を用いて、適切な心臓組織にカテーテルを誘導してもよい。
【0027】
これまでは心臓超音波を用いることで、軟組織構造を確認する際の欠陥を克服している。超音波を用いれば、心臓の壁がカテーテル及び超音波プローブに対してどこに位置しているかを正確に特定できるが、この超音波プローブが移動可能であるために、心臓に対してプローブの絶対位置がどこであるかは疑わしいこともある。
【0028】
X線透視検査法と心臓超音波との何れも、アブレーションした心臓の部位を正確かつ再現可能に確認する能力がない。
【0029】
「非X線透視検査法の電気解剖学的(原語:electro-anatomic)写像」(ベン・ヘイムの米国特許第5,391,199号)として知られるシステムは、心臓内のカテーテルをより正確に位置決めできるように開発された。そのシステムは、弱い磁界と較正した磁界検知器とを用いて、3次元空間でカテーテルの位置を追跡する。このシステムは、カテーテルの位置をマークできるが、このシステムは、身体のマーカーに対して心臓が移動していないことに依存している。このシステムは、X線透視検査法を用いて最初に配置する必要性を無くすことはなく、また、アブレーションした組織を直接イメージングできない。
【0030】
固定され、操作可能な、冷却され、そして多電極アレイ(原語:Multi Electrode Array)プローブの実施形態であって、例えばMRIのイメージング信号の記録、生体電位(電気生理学的、神経学的)、及び冷却などの多数の機能を組み込んだ実施形態を記載する。これらのプローブは、それらを囲む物質における加熱による損傷を著しく減少でき、またMRI又はX線の下で容易に視覚化できる。開示された実施形態は、実例であって、これに制限されるものではない。図面は、代表的な実施形態及び設計原理を示すものであって、これら図面から、特定の実施形態に必ず一致する絶対的又は相対的な寸法を推測できるわけではない。
【0031】
図1は、磁気共鳴プローブ100の代表的な実施形態を概略的に示す。このプローブ100は、遠位部7及び近位部8を備えてもよい。この遠位部は、電極3、4、5、6といった複数の電極を含んでもよい。図示したように、これらの電極を少なくとも部分的にプローブ100の表面に配置してもよい。電極を(電極4、5及び6に関して図示したように)プローブ100の周囲部の周りの表面に配置すると共に(電極3に関して図示したように)プローブ100の先端で配置するようにするか、或いはこの周囲部の一部分又は複数部分の周りの表面にこの電極を配置するようにして、電極を配置できる。図1に示したプローブ100は、4個の電極を備えるが、例えば電極1個のように少なくてもよく、これ以外の個数の電極を備えてもよい。プローブ100は、中心導線101、102、103、104といった複数の中心導線を含んでもよい。中心導線をこれ以外の本数備えてもよい。この代表的な実施形態に示すように、中心導線101、102、103、104をそれらに対応する電極3、4、5、6に結合してもよい。中心導線は、プローブ100を通って延伸してプローブ100の近位端においてコネクター9で終端をなしていてもよい。後に詳述する1つ又はそれ以上の追加層を、プローブ100の近位部8において少なくとも部分的にこれらの中心導線の周りに配置してもよい。
【0032】
図2A乃至Cは、プローブ100の代表的な実施形態の更なる特徴を示す。図2Aに示すように、接合部Jによってプローブ100の遠位部7と近位部8との移行部を定めてもよい。プローブ100が後に詳述する好適な電気特性を備えるように、接合部Jの位置を選択してもよい。一実施形態において、プローブ100の遠位部7の長さがそれを囲む媒質中のMR信号の波長の4分の1と概ね等しくなるように、接合部Jを位置決めしてもよい。例えば血液又は組織といった媒質に関しては、遠位部7の好適な長さは、約3cm乃至約15cmの範囲にすることができる。この中心導線2(総称する)を巻くことにより、「4分の1の波」の電気的な長さを維持しながら遠位部7の物理的な長さを減少させてもよい。断面図2Bに示すように、プローブ100の遠位部7は、複数の中心導線2と、これら複数の中心導線に配置した1つの滑らかなコーティング1とを含んでもよい。代表的な滑らかなコーティングには、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、親水性物質、シリコーン及びこれらの化合物などが含まれる。
【0033】
引き続き図2A及び2Cを参照すると、このプローブ100の近位部8は、少なくとも部分的に複数の中心導線2の周りに配置した1つ又はそれ以上の追加層を含んでもよい。例えば、第1誘電体層31を少なくとも部分的に複数の中心導線2の周りに配置してもよい。この第1誘電体層31は、その中に複数の中心導線2を配置させた内腔13の境界を定めてもよい。外部伝導層12をこの第1誘電体層の周りに少なくとも部分的に配置してもよい。この外部伝導層12は、網組線を含んでもよい。この外部伝導層12は、プローブ100を通って延伸して、コネクター9で終端をなしてもよい。第2誘電体層10をこの外部伝導層12の周りに少なくとも部分的に配置してもよい。この外部伝導層12及び/又はプローブ100の近位部8におけるこの第2誘電体層10の周りに、滑らかなコーティング1を少なくとも部分的に配置してもよい。
【0034】
上述のように、複数の中心導線を備えてもよい。中心導線は、伝導性の心線を含んでもよい。中心導線は、この心線の少なくとも一部分に沿って少なくとも部分的にその心線の周りに配置した絶縁体を含んでもよい。この絶縁体をこの心線の周りに配置して、様々な心線間の接触を防いでもよい。この絶縁体をこの心線の全長に沿って、或いはその一部分又は複数部分に沿って配置してもよい。一実施形態において、電極に結合するための遠位部を除いた心線の全長に概ね沿って、任意の絶縁体を配置してもよい。絶縁体を心線の周りに選択的に配置してもよく、例えば、不連続的に配置してもよく、若しくは、別の心線に面した一面などの、心線の選択した唯一の面に配置してもよい。従って、絶縁体を1本又は複数の心線の周りに配置して、1本又は複数の中心導線は接触するものの心線は接しないようにしてもよい。
【0035】
この絶縁体によって、任意の中心導線を別の中心導線のすぐ近傍に容易に配置できる。例えば、2本の中心導線は互いに接触させるが、それぞれの心線は接しないようにできる。こうした中心導線を接近させた配置によって、これらの中心導線間における低周波エネルギーの結合を防ぎながらも、磁気共鳴エネルギーといった高周波エネルギーの中心導線間における電気的結合を可能にすることができる。高周波エネルギーに関する中心導線同士の結合により、これら中心導線を用いて磁気共鳴信号を受信することが容易になる。これは、そのように結合されたこれらの中心導線が、高周波エネルギーに対して電気的な単体として作用できるからである。従って、プローブ100の遠位部7の電気的な長さを維持できる。なぜなら、磁気共鳴アンテナのバランスを失わせる、干渉の発生又は高周波エネルギーのより長い通路の通過を引き起こす、磁気共鳴エネルギーの様々な導線内の別々の通過を防ぎながら、磁気共鳴エネルギーをこれら複数の中心導線内を通じて直接伝導することができるからである。これとは対照的に、薄い絶縁層を使っても、選択した中心導線に沿って伝導しうる低周波信号の導線間での結合を防ぐことができる。例えば、プローブ100を操作して、様々な組織部分と接触している2個の電極間の電位を測定する場合には、低周波結合は望ましくないこともあろう。もしこれらの中心導線にこの低周波エネルギーを結合させてしまえば、電位測定値がひずむか、過度の雑音で失われるか、若しくは完全に減衰する可能性がある。同様に、もしこれらの中心導線に低周波エネルギーを結合させてしまえば、プローブ100に沿って伝達したアブレーションエネルギーがこれらの中心導線間でショートする可能性がある。
【0036】
従って、これらの中心導線が、高周波数(例えば10MHzを超える)で絶縁体によって電気的に結合されるものの、0.5MHz未満の周波数では絶縁されるように、このワイヤー絶縁体は十分に薄いことが好ましい。
【0037】
それゆえ、低周波エネルギーの結合を減少させるか若しくは防止する一方で、中心導線間で高周波エネルギーの結合を容易にするように、絶縁体特性を選択できる。これらの特性には、絶縁体の単独又は複数の材料、この絶縁体の厚さ、絶縁体の層の数、プローブ100が浸る磁界の強度などが含まれる。
【0038】
この絶縁体がこれらの中心導線間における低周波エネルギーの結合を防止できるので、これらの中心導線を互いに非常に近接させることができる。これはまた、互いに「しっかりと結合される」と呼ぶこともある。例えば互いに巻き付けることによって、中心導線をしっかりと結合してもよい。これらの中心導線を近接させておくための例えば第1誘電体層などがない可能性がある場合には、これらの中心導線をねじるかそれ以外の方法でしっかりと結合することによって、プローブ100の遠位部7でこれらの中心導線を近接させた状態に容易に維持できる。加えて、低周波エネルギーを減結合するための、これらの中心導線の間にリアクタンス性要素(原語:reactive
element)を挿入する必要がないので、プローブの製造が単純になる。更に、リアクタンス性要素が無いために、プローブの直径の減少を達成できる。例えば、心臓カテーテル法、観察及び/又はアブレーションなどの使用に適切な、約15フレンチ以下の外径を備えたプローブを、本明細書に記載されたシステム及び方法を用いて容易に作製することができる。その上、プローブの直径を、例えば4フレンチ以下、3フレンチ以下、2フレンチ以下、1.3フレンチ以下、1フレンチ以下、0.5フレンチ以下、或いは0.1フレンチ以下にさえ減らすことができるので、磁気共鳴プローブを用いた脳深部刺激療法が容易になる。これら中心導線の心線の太さ、絶縁体の厚さ、及び含むことができる他の層の厚さが、プローブの外径に影響を及ぼし得る。一実施形態において、56AWG乃至16AWGの太さを備えたワイヤーも、それより細い及び/又は太いワイヤーも使用してもよい。
【0039】
好適な絶縁体の厚さを以下のように特定してもよい。単位長さにおける一対のねじりワイヤー間のインダクタンスL及びキャパシタンスCは、次式で求められる。
【0040】
【数1】

【0041】
【数2】

【0042】
【数3】

【0043】
【数4】

【0044】
【数5】

【0045】
上記の数式において、ε=8.854pF/m、dはメートル単位の裸ワイヤーの直径であり、Dはメートル単位の絶縁ワイヤーの直径であり、そしてεは絶縁体材料の比誘電率である。1つの例示的な実施形態において、33AWG磁石ワイヤーを使用した。そのワイヤーは、0.0071インチ(0.00018034m)の公称裸ワイヤー直径及び0.0078インチ(0.00019812m)の絶縁直径を備え、そしてε=2の近似誘電率を備えている。従って、絶縁体の厚さは、約17.78ミクロン、即ち片側で約8.89ミクロンである。この代表的な例では、単位長さにおける推定キャパシタンスは、89pF/mである。これは、63.86MHzにおいて約28Ω/mである容量性インピーダンスZ=l/(2*π*f)に相当し、高周波範囲で良好な結合をもたらす。インピーダンスが周波数に反比例して増減するので、100kHzでの低周波インピーダンスは14kΩ/mであると推定される。10kΩ/m以上のインピーダンスは、十分な減結合をもたらす殆どの応用例において十分である。高周波インピーダンスは100Ω/m未満に維持することが好ましい。
【0046】
誘電体材料の選択によってもインピーダンスを制御できる。典型的な材料は、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド(ナイロン)をオーバーコートしたポリウレタン樹脂、THEIC変性ポリエステル、ポリアミドイミド(AI)をオーバーコートしたTHEIC変性ポリエステル、酸化物を主材料とした保護膜とポリアミドイミド(AI)オーバーコートとを備えたTHEIC変性ポリエステル、芳香族ポリイミド樹脂、接合可能な熱可塑性フェノキシオーバーコート、グラスファイバー、全木製絶縁クレープペーパー(原語:All
Wood Insulating Crepe Paper)、熱的に改良された電気グレード・クレープクラフト紙(原語:Thermally Upgraded
Electrical Grade Crepe Kraft Paper)、高温アラミド絶縁紙(原語:High Temperature Aramid
Insulating Paper)、及びこれらの組み合わせを含んでいる。第1誘電体層及び/又は第2誘電体層の誘電体材料を選ぶことにより、近位部の長さを修正できる。例えば、高誘電率を備えた材料を1つ又は複数の誘電体層に組み入れることができ、それによって、近位部の電気的な長さが減少して、比較的浅い解剖組織位置でプローブを容易に使用できる。適切な誘電率を備えた材料の例には、セラミックスが含まれる。
【0047】
少なくとも部分的に中心導線の心線の周りに配置した絶縁体の厚さは、約2,000ミクロン以内でよく、好適には約500ミクロン以内、更に好適には200ミクロン以内、また更に好適には約100ミクロン以内、その上更に好適には約1ミクロン乃至約100ミクロンの範囲でよい。絶縁体の厚さは、約5ミクロン乃至約80ミクロンの範囲であってもよい。絶縁体の厚さは、約8ミクロン乃至約25ミクロンの範囲であってもよい。絶縁体の厚さは、約10ミクロン乃至約20ミクロンの範囲であってもよい。
【0048】
心線は、その心線を絶縁体に浸すことによって、その周りに配置した絶縁体を備えてもよい。心線は、その心線の周囲に絶縁体を押し出すことによってその周りに配置した絶縁体を備えてもよい。心線は、その心線を絶縁体の中に滑り込ませるか若しくは心線上に絶縁体を滑らせつつ被せてその周りに配置した絶縁体を備えてもよい。心線は、噴霧によって、その周りに配置した絶縁体を備えてもよい。
【0049】
心線は、ワイヤーから作製してもよい。このワイヤーは、プローブの大きさを小さくするために細くすることが好ましく、一実施形態においては、細い絶縁銅線(33AWG)で、時には銀でコーティングされたものであってもよい。好適な実施形態においては、中心導線は、磁気共鳴環境での使用に適した材料で作られる。これらの材料は、例えば銀被覆した銅などのように高い伝導性を備えることが好ましい。この外部伝導層はまた、例えば網組線といったワイヤーで作製してもよい。他の好適な材料には、超弾性材料、銅、金、銀、白金、イリジウム、MP35N、タンタル、チタン、ニチノール、L605、金・白金イリジウム合金、金・銅・イリジウム合金及び金・白金合金が含まれる。
【0050】
前述のように、プローブ100の遠位部7における複数の中心導線2が、ダイポール(ループのない)磁気共鳴アンテナの第1極を形成してもよく、その一方で、プローブ100の近位部8における外部伝導層12が、第2極を形成することができる。上述のように、遠位部(即ち第1極)の長さは、好適には概ね「波長の4分の1」の長さであり、典型的には約3cm乃至約15cmである。近位部即ち第2極は、同じ長さとしてもよいので、ダイポールアンテナの平衡が保たれる。平衡を保ったダイポールアンテナは、平衡状態でないダイポールアンテナと比較して信号品質が僅かに向上する。しかしながら、ユーザーが15cmより深い身体構造内への磁気共鳴プローブの差し込みを望むかもしれないので、約15cmの近位部でさえ実用的で場合もあろう。実際上、近位部即ち第2極を延ばすことによって、アンテナが不平衡になると共に画像品質が僅かに落ちるが、アンテナのかなりの長さを視覚化でき、この結果アンテナを追跡し定位できることが偶然分かった。以下に記載したように、例えばPINダイオードによってアンテナを減結合することによって、アンテナの不平衡という著しい複雑さを、即ち送信モード中の加熱の影響を回避できる。図7A乃至Bは、不平衡アンテナを減結合する効果を示す。図7Aは、周囲の組織への最小限の加熱(典型的には摂氏0.5度未満)しか引き起こさない、減結合されたアンテナの加熱特性を示す。一方、図7Bは、数秒で摂氏20度を超える、非常に有害で致命的となり得る組織加熱を引き起こす可能性のある、減結合されていないアンテナの加熱特性を示す。典型的には、回路を整合し、同調すると共に/若しくは減結合するように、回路の調節を行うことができ、その例を図3A乃至Eに示す。
【0051】
図3A乃至Eに示す回路は、多数の機能を備えてもよく、MRIシステムの送信段階と、MRIシステムの受信段階と、電気生理学的信号の記録と、関連する器官か組織の刺激、或いは関連する器官か組織のエネルギー又は器官か組織へのエネルギーの伝達といった、4つの特別な状況の検討により最適に説明できる。
【0052】
MRIシステムは、典型的には画像の獲得中に送信状態と受信状態とを交替する。送信段階では、例えば約63.86MHzといったシステムの操作周波数で比較的大量のRFエネルギーを体内へ送信する。このエネルギーは潜在的に、敏感な受信機電子装置を損傷することがあり、更に重要なことには、このRFエネルギーをイメージングアンテナが、この場合はプローブが捕らえれば、患者を傷つけてしまう可能性がある。従って、プローブがMRIシステムの操作周波数でRFエネルギーを受け取ることができなくなるように、プローブのアンテナ機能を切っておくことが好ましい。これとは対照的に、受信段階では、身体は、送信段階において吸収したRFエネルギーを同じ周波数で、つまり63.86MHzで放射する。典型的には、送信されたエネルギーのかなりの部分は、送信機の能率が悪いために、失われるか、或いは身体によって熱に変換される。従って、画像情報を含んでいる身体によって放射されたRF信号は、典型的には、送信機によって送信された元の信号より何桁も小さい。この小さな信号を受信するために、プローブがMRIシステムの操作周波数におけるRF信号に対して高効率な受信機となるように、プローブのアンテナ機能をオンにしておくことが好ましい。送信段階において低機能のRFアンテナ(受信機)である状態から、受信段階において高機能なRFアンテナ(受信機)である状態へとプローブが交替する状態は、T/R(送信/受信)切替と呼ばれ、MRIシステムによって図3Aのコネクター15の中心導線に送られる制御信号によって容易に実現できる。一実施形態において、この信号は、送信段階では小さな正の電圧(5乃至15ボルト)としてもよく、また受信段階では小さな負の電圧(−5乃至−20ボルト)としてもよい。典型的には、このシステムは、画像獲得中において送信段階と受信段階とを数ミリ秒以内で、つまり約1kHzの周波数で交替する。
【0053】
送信段階では、システムのアース14に対するコネクター15の中心導線の正の電圧によって、PINダイオード21を伝導性にさせることができ、従って、アースへコンデンサー23の上端をショートできる。コンデンサー23は、プローブの近位部長さ部分と組み合わせることで伝送線路を形成する。こうして、この伝送線路によって、コンデンサー23の上部におけるインピーダンスを、図2Aの電気的なダイポールアンテナの極同士を接続する接合部JにおけるインピーダンスZに変換することができる。RFエネルギーを受け取ることができないように、この接合部におけるインピーダンスは、高いことが好ましい。ショートさせたコンデンサー23によって接合部Jにおいて高いインピーダンスを達成するためには、伝送線路は、伝送線路内のRF伝播の波長の4分の1に相当する電気的な長さを備える必要がある。コンデンサー23のキャパシタンスの値を適宜選択することにより、通常の実験を用いて伝送線路の有効な電気的な長さを微調整できる。コンデンサーの典型的な値は、1乃至10,000pFの範囲内とすればよい。各中心導線の長さが僅かに異なるので、(プローブに沿って様々な位置に配置した電極に中心導線を結合してもよいので、)個々のコンデンサー23の正確な値は僅かに変化するかもしれない。一実施形態において、例えばATC100A又はBといった高いQのコンデンサーが好ましい。中心導線の束の直径、誘電体材料の誘電率、及び外部伝導層の内径によって、波長を決定できる。典型的で代表的な実施形態において、伝送線路を形成するプローブの近位区間の物理的な長さを90cmとしてもよい。接合部Jにおけるインピーダンスを高くすることによってプローブのアンテナ機能を不能にすることを、「減結合」と呼ぶ。
【0054】
引き続き図3A乃至Eを参照すると、受信段階において、システムアース14に対するコネクター15の中心導線の負の電圧は、ダイオード21に「逆バイアス」をかけることができ、これによって非伝導性にする。このMRIシステムにおけるアンテナ・インピーダンスは、最適な性能を得るには50Ω近くであることが好ましい。典型的には、システムに対して適切なインピーダンスを実現するために、この電気的ダイポールアンテナ及びコンデンサー23のインピーダンスを変換する。適切なインダクター19及びコンデンサー17の選択によって、この変換を達成してもよい。好適には、切替DC信号などの低周波電流をダイオード21へ流すように、要素19及び17の値を選んでもよい。
【0055】
約1kHzの周波数を備えることができる切替電圧によって、検査中の器官又は組織の不要な刺激が起きるかもしれないので、T/R切替電圧をプローブへ通さないことが望ましい。これを抑制するために、ハイパスフィルター機能を提供するコンデンサー23は、プローブ内へのT/R切替電圧の伝播を遮断することができる。
【0056】
更に図3A乃至Eを参照して、プローブのアンテナ機能が受信段階において使用可能状態になっているので、このアンテナは、身体から放射されたRF(63.86MHz)信号を受信できる。図3Aに示すように、RF信号は、コンデンサー23を介してMRIシステムのコネクター15へ転送してもよく、MRIシステムによって処理される。上述のように、コンデンサー23は、MRIシステムへ高周波のMRI信号を通すものの、例えば、切替信号、電気生理学的刺激信号、生体電位の測定信号、及び/又はアブレーション・エネルギー信号といった低周波の信号を遮断する、ハイパスフィルターとして機能できる。これに代えて、図3Bに示すように、低周波の信号を別の回路を介して転送してもよい。接点24での信号を2組のリードへ分配してもよく、この一方の1組は、コンデンサー23(図3A及びC)を含むことができる磁気共鳴信号伝導路へ高周波の磁気共鳴信号を伝達し、また他方の1組は、インダクター22(図3B及び3D)を含むことができる電気生理学的伝導路へ低周波の信号を伝達する。これらのインダクター22を適宜選択することで、高周波のMRI信号(典型的には1.5テスラの磁場強度に対して約64MHz)を遮断しつつ、例えば脳、心臓などからの電気生理学的信号といった低周波の信号を通すことができる。インダクター22を介して「漏電する」MRI信号をアースへ分路するコンデンサー20を設けることができる。従って、インダクター22及びコンデンサー20がローパスフィルターを形成できる。約63.86MHzの高周波のMR信号をフィルターする代表値は、コンデンサー20で約10,000pF、またインダクター22で5.6μHでよい。
【0057】
電気生理学的(EP)信号は、典型的にMRI信号の周波数よりはるかに低い周波数範囲内にあり、しかも、例えば図3Bに示され且つインダクター22及びコンデンサー20が実現する信号分配ローパスフィルターといったフィルターによって、MRI信号から分かれているので、MRIシステムの送信/受信状態と無関係にこれらのEP信号を測定してもよい。これらのEP信号は、このローパスフィルターを通ってコネクター16へ通過してもよく、EP記録システム、組織刺激装置、又はアブレーションエネルギー源などへ転送することができる。同様に、MRIシステムの送信/受信状態と無関係に組織刺激及び/又は組織アブレーションを行うことができるが、その理由は、アブレーションエネルギー源、心臓刺激装置、神経刺激装置などの何れかからコネクター16を通って送られたエネルギーは、図3Bに示したローパスフィルターネットワークを通過して1個又は複数の電極3、4、5、6からプローブ内へ伝達されるものの、図3Aのコンデンサー23により形成したハイパスフィルターによってMRIシステムへの進入を遮断されうる程には低い周波数(典型的には500kHz未満)だからである。低電圧信号の例は、脳深部刺激療法の一環としてのパーキンソン病の治療用のものと、心臓組織のアブレーションなどの作用がある数百キロヘルツでのRFエネルギーとを含む。後者の場合では、1個の電極、例えば電極3、のみ刺激を供給してもよい。この電極3をプローブの先端に位置させることによって、正確な熱治療を容易に提供し、幾つかの実施形態において大きな接触面積を提供できる。
【0058】
図3C乃至Eに示すように、磁気共鳴伝導路を1つの基板26に配置することができ、また電気生理学伝導路を別の基板28に配置することができる。グランドプレーン29にこれらの基板を結合してもよい。電気生理学伝導路用の接点27へ接続できるように、接点24で分配した信号が基板26の穴を通るようにしてもよい。
【0059】
図2A乃至C及び3A乃至Eを更に参照すると、接点24は、コネクター9の適切なピンと接続できる。コネクター9(アース)の外部伝導層コネクターは、アースピン25と接続できる。上述のように、MRシステムの送信段階において、ピンダイオード21を作動させることができ、それによって、複数の中心導線2と外部伝導層12との間でショートさせることができる。上述のように、外部伝導層12の電気的な長さ及びコンデンサー23を随意選択して、ダイオード21でのショートを、外部伝導層が終端となる接合部Jにおける開口部の中へ伝送線路に沿って移動させてもよい。
【0060】
図4A乃至Cは、(双方向に)操作可能に作製したプローブの実施形態を示す。このプローブの特徴の多くは、図1及び2A乃至Cに示した実施形態に関して説明したものと同一である。プローブ100は、このプローブ100の遠位部7に配置したリボン36を含んでもよい。一実施形態において、このリボン36をプローブ100の先端まで延伸させることができる。この先端にリボン36を接合することができる。プローブ100は、更に引張ワイヤー46を含むことができる。この引張ワイヤー46を操作する際にリボン36が屈曲するように、引張ワイヤー46をリボン36に結合することができる。この引張ワイヤー46をプローブ30の内腔30内に配置してもよい。例えば、ユーザーの便宜を図るためにハンドル34に配置されることがある操作円盤33に引張ワイヤー46を結合してもよい。複数の中心導線2は、放射状で中心に配置してもよく、それらがずれていてもよく、多重内腔ポリマー管にそれらを配置してもよく、それらがプローブの全長に沿って延びてもよい。第2及び/又は追加の内腔30を提供できる。第2及び/又は追加の引張ワイヤー46を提供できる。遠位部7では、薄く囲んだ柔軟なポリマー管にこの操作組立体を収容して、中心導線2及び/又は電極3、4、5、6と直接電気的に接触することを防いでもよい。遠位区間において、これらの導線は、中心に配置されていてもそうでなくてもよく、直線状であっても(操作機構組立体の周りに)コイル状に巻きつけられていてもよく、且つ/若しくは電極に電気的に接続してもよい。この操作機構は、もしループコイルに変更すれば、様々な整合・同調及び減結合回路を備えることができる。ループのないアンテナの役割をする操作機構のためのこの整合同調及び減結合回路構成は、電極に接続する導線の回路構成と組み合わせることができる。引張ワイヤー46用に使用される材料は、引張ワイヤーが中心導線2と相互作用しないように、例えば炭素線維、複合材料、ナイロンなどといった非金属材料を含んでもよい。引張ワイヤー46を誘電体材料で作って、別記したループコイル又はループのないコイルの何れかとして作製できる。
【0061】
図5A乃至Cは、図4A乃至Cに示した実施形態に類似した実施形態を示し、冷却液を流すことのできる冷却液内腔38を備える。代表的な冷却液には、食塩水、例えば窒素といった冷却された気体、及び水などが含まれる。
【0062】
本明細書に記載したプローブは、容易に3次元的な電気解剖学的イメージングを行うことができる。図6A乃至Dに示したように、プローブを多電極アレイプローブに変更できる。多電極アレイ(MEA)を拡張可能なバスケットタイプのプローブに配列できる。このMEAプローブは、例えば非接触又は接触心内膜写像に関して用いることができる。このプローブ100は、複数の拡張可能なアームを含んでもよい。このプローブ100は、第1誘電体層43を含んでもよい。このプローブ100は、外部伝導層42を含んでもよい。このプローブ100は、第2誘電体層41を含んでもよい。このプローブ100は、このバスケットを押して拡張させるためのシャフト44を含んでもよい。このプローブ100は、絶縁されしっかりと結合された8本の導線の束45を含んでもよく、上述の中心導線に類似しているものの、この実施形態ではこの束の中に導線がより多く備えられ、また多数の束が備えられる。
【0063】
アームに電極を配置することができる。アームに電極を貼り付けてもよい。アームに電極を接着或いは接合してもよい。アームは、2個以上の電極を含んでもよい。例えば8個の電極をそれぞれ保持した、例えば8本の拡張可能なリブを備えたバスケットプローブを図示した。図6Bは、1本の拡張可能アーム39の長手方向の図を示しており、このアームに配置した8個の電極を示している。体内へ挿入中に、バスケット配列プローブは、プローブの外形を細くするために折りたたんでもよく、一旦心臓の空洞部(原語:cardiac
chamber)といった写像対象の、所望の解剖組織スペースの内部に入ったら、バスケットを拡張してもよい。例えば、1本又は複数のアームに引張ワイヤーを結合することによって、或いは水力で拡張させることによって、バスケットを拡張してもよい。このバスケットは、例えば、解剖部位の壁と接触することによってスペースが制限された場合は、様々なサイズに拡張することができ、或いは固定直径、寸法及び/又は形状へと拡張できるので、バスケットのアームは、例えば円筒といった抑制された形で拡張する。その後、非接触写像によって写像を行ってもよい。電極で測定した電位を心内膜の電位に変換してもよい。上述のように、中心導線に使用される材料に類似の材料からアームを形成することができる。内部スライド管を進退させることでバスケットを開閉することができる。近位シャフトは、導線、誘電体/絶縁体、遮蔽体及び外部管を収容する、外部組立体において中心に配置したスライド管を含んでもよい。この組立体はループのないアンテナのように作用することができ、近位シャフトにあるこの遮蔽体/網組線はアースの役割を果たし、そして、個々の電極に接続する導線はアンテナのホイップの役割をする。上述のシステム及び方法を用いて、この組立体を整合・同調及び/又は減結合できる。例えば操作用に、曲がった先端をプローブに備えることができる。上述したようにアブレーション電極を、例えば遠位先端で組み込むことができる。上述した操作システムを実現できる。操作可能なアブレーション多電極アレイにより、組織を同時に写像し治療することが容易となる。一実施形態において、例えば米国特許第5,662,108号に記載された技術を用いることで、非接触EP写像を心内膜の3次元MR画像に重ねることができる。又、この米国特許はこれによって参照して本明細書に援用する。一実施形態において、小型ループコイルを1個又は複数の電極に隣接させることによって、この1個又は複数の電極の位置と、電極から組織壁までの距離とを追跡してもよい。
【0064】
図8A乃至Cは、双方向に操作可能なプローブの代表的な実施形態の概略図を示す。一実施形態において、操作可能プローブは、2つの区間、つまり硬い近位区間と、操作可能な遠位区間とを備えてもよい。一実施形態において、操作可能な遠位区間の長さを約1cm乃至約15cmの範囲にすることができる。プローブの遠位区間に固定リボンワイヤーを含めることによって、その操作を達成することができる。このフラットリボンワイヤーの近位区間を、硬い区間と柔軟な区間との移行部に固定することができる。この移行部は、例えば溶接点又はスポット溶接点といった継ぎ目を含んでもよい。プローブの遠位先端にフラットワイヤーの遠位端を接合することができる。引張ワイヤー/操作機構ワイヤーをプローブの全長に沿って延ばしてもよい。操作機構に引張ワイヤーの近位端を取り付けることができる。引張ワイヤー/操作機構の遠位端をフラットリボンの遠位端に取り付けた後で、プローブの遠位先端に接合してもよい。操作時には、引張ワイヤーを引くか緩めることによって、引張方向に遠位先端を曲げるか向けることができる。典型的には、屈曲範囲は、外部管(遠位区間)の内径(ID)、管/組立体の全体的な硬さ、及びその組立体の他の特性のうちの少なくとも1つに依存する。RFループアンテナコイルのように動作するように操作可能プローブを変更することによって、これらプローブをMRにおいて積極的に追跡できるようにしてもよい。これは、手術中の臨床医が、解剖組織におけるプローブの正確な位置を把握することに役立つ。
【0065】
非磁性材料を用いて、操作可能プローブをMR環境での使用に適するように変更してもよい。感受性の人工産物を全く生じないか殆ど生じない材料を用いて、操作可能プローブをMR環境での使用に適するように変更してもよい。適切な材料には、例えば、ポリマー/プラスチック、また、ニチノール、銅、銀又は金、金・白金合金、MP35N合金などの金属が含まれる。図8A乃至Cは、プローブの代表的な設計を示す。プローブの近位シャフトは、互いに平行な少なくとも2本の内腔を備えた多重内腔管を含んでもよい。これらの内腔は、例えば2本の引張ワイヤーといった複数の引張ワイヤーを収容できる。これらの引張ワイヤーをそれらの近位端において操作ハンドルに接続してもよく、また、それらの引張ワイヤーをそれらの遠位端においてフラットリボンワイヤー組立体の遠位端に接続してもよく、その組立体の近位端をその移行部で固定してもよい。遠位端においてフラット操作リボンに接続された2本の平行引張ワイヤーは、後に近位ハンドルの回路構成によって整合・同調及び/又は減結合(原語:decouple)可能な、ループアンテナを形成することができる。こうして、MR環境での使用に適した、MRで使用しても安全な双方向操作プローブを作製し、その位置をMRIにおいて追跡することができる。
【0066】
これに代えて、図8A乃至Cに示すように、双方向操作可能プローブは、ループのないアンテナを含んでもよい。この代表的な実施形態では、外部の近位管が、その下に或いはこの外部管の壁の中に網組線を備えている。この組立体は、ループのないアンテナのように作用するものであって、これらの引張ワイヤー及びフラットリボン組立体がホイップとなり、外部管の中に或いはその管の下にある網組線がアースとなって、ループのないアンテナを形成する。これらの整合・同調及び減結合回路をプローブの近くに、例えば操作ハンドルに作ってもよい。この設計により、MRにおいてプローブを追跡することができ、また、プローブの近傍における高解像度画像を獲得することができる。
【0067】
図9A乃至C及び10A乃至Cは、単一方向に操作可能なプローブの代表的な実施形態を示す。これらの実施形態は、単一の引張ワイヤーがある点を除いて、ループのない双方向操作可能プローブの設計に類似してもよい。この設計を用いて、MRIにおいてイメージングし、更にMRにおいて追跡可能である。近位シャフト/区間は、壁の中に或いは外部管の下に網組線を備えることができる。この引張ワイヤーは、この管の中心において放射状で通すことによって同軸ケーブルに類似した構造を形成してもよく(図10A乃至C)、或いは中心から半径方向にずらして配置できる(図9A乃至C)。このプローブの近位区間に整合・同調及び減結合回路を作製することができ、これによって、それがループのないアンテナに類似して機能し、且つ/若しくはMRIにおいてそれを追跡できる。更に、それを用いて、プローブの周りの解剖組織の高解像度画像を獲得することができる。
【0068】
磁気共鳴プローブの作製、材料の選択、構成要素の所望寸法、及びプローブの電気特性に関する更なる教示は、例えば、米国特許第5,928,145号、第6,263,229号、第6,549,800号に、そして米国特許出願公報番号2002/0045816 A1、2002/0161421 A1、2003/0028095 A1、及び2003/0050557 A1に提供されており、これによってこれら全ての特許及び特許出願公報をその全体を参照して本明細書に援用する。
【0069】
本開示のシステム及び方法は、詳細に図示し記述した実施形態に関連して記載してきたが、これらに対する様々な変更及び改良は当業者に容易に明白となるはずである。従って、本開示の精神及び範囲は、次の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
本開示のシステム及び方法の実施形態は、添付した図面で例示されるような代表的な実施形態の以下の更に特定した記載から明白になり、これらの図面の幾つかの参照符号は、様々な図にわたって同一部分を参照する。これらの図面は、必ずしも大きさを示すものではなく、また、必ずしも個々の要素の他の要素との相対比率を示すものではなく、その代りに、本開示のシステム及び方法の原理を例示することに重点を置いている。
【図1】4本の中心導線及び4個の電極を備えた磁気共鳴プローブの代表的な実施形態を示す。
【図2】(A乃至C)4本の中心導線及び4個の電極を備えた磁気共鳴プローブの代表的な実施形態を示す。 (A)側面図を示す。 FIG. (B)プローブの遠位部の断面図を示す。 C)プローブの近位部の断面図を示す。
【図3】(A乃至E)インターフェース回路の代表的な実施形態を示す。 (A及びB)代表的な電気概略図を示す。 C乃至E)代表的な物理的な配置図を示す。
【図4】(A乃至C)操作可能な磁気共鳴プローブの代表的な実施形態を示す。
【図5】A乃至C)冷却内腔を備えた磁気共鳴プローブの代表的な実施形態を示す。
【図6】(A乃至D)拡張可能なアームを備えた磁気共鳴プローブの代表的な実施形態を示す。 (A)代表的なプローブの側面図を示す。 (B)アームの長手方向の図を示す。 (C)拡張したアームの断面図を示す。 (D)代表的なプローブの近位部の断面図を示す。
【図7】(A乃至B)減結合された(図7A)、或いは減結合されていない(図7B)、送信モードにおける代表的な磁気共鳴プローブを囲む組織の加熱特性を示す。
【図8】(A乃至C)引張ワイヤーと中心導線との両方であるワイヤーを備えた、双方向に操作可能な磁気共鳴プローブの代表的な実施形態を示す。
【図9】(A乃至C)引張ワイヤーと中心導線との両方である、位置をずらしたワイヤーを備えた、単一方向に操作可能な磁気共鳴プローブの代表的な実施形態を示す。
【図10】(A乃至C)引張ワイヤーと中心導線との両方であり中心に配置したワイヤーを備えた、単一方向に操作可能な磁気共鳴プローブの代表的な実施形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴プローブであって、
複数の中心導線であって、そのうちの少なくとも幾つかが、伝導性の心線、及び前記心線の少なくとも1つの部分に沿って少なくとも部分的に前記心線の周りに配置した絶縁体を含む、複数の中心導線と、
前記プローブの近位部において少なくとも部分的に前記複数の中心導線の周りに配置した第1誘電体層と、
前記第1誘電体層の周りに少なくとも部分的に配置した外部伝導層と、
複数の電極であって、そのうちの少なくとも1個を、前記中心導線のうちの1本に結合すると共に少なくとも部分的にプローブ表面に配置した、複数の電極とを含む、磁気共鳴プローブ。
【請求項2】
前記外部伝導層の周りに少なくとも部分的に配置した第2誘電体層を更に含む、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記外部伝導層の周りに少なくとも部分的に配置した滑らかなコーティングを更に含む、請求項1に記載のプローブ。
【請求項4】
前記複数の中心導線が、磁気共鳴環境での使用に適したものである、請求項1に記載のプローブ。
【請求項5】
少なくとも1つの絶縁体の厚さが約100ミクロン以下である、請求項1に記載のプローブ。
【請求項6】
少なくとも幾つかの中心導線が、磁気共鳴環境での使用に適した材料、超弾性材料、銅、銀・銅合金、金、銀、白金、イリジウム、MP35N、タンタル、チタン、ニチノール、L605、金・白金・イリジウム合金、金・銅・イリジウム合金、及び金・白金合金のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のプローブ。
【請求項7】
少なくとも幾つかの中心導線が、ダイポールアンテナの第1極を形成すると共に、前記外部伝導層が、前記ダイポールアンテナの第2極を形成する、請求項1に記載のプローブ。
【請求項8】
前記プローブを磁気共鳴断層撮影装置に結合可能にする、ハイパスフィルターへの接続を更に含む、請求項1に記載のプローブ。
【請求項9】
前記プローブを電気生理学的記録システム、組織刺激装置、及びアブレーションエネルギー源のうちの少なくとも1つに結合可能にする、ローパスフィルターへの接続を更に含む、請求項1に記載のプローブ。
【請求項10】
前記プローブの遠位部に配置したリボンと、
前記リボンに結合した引張ワイヤーとを更に含む、請求項1に記載のプローブ。
【請求項11】
前記引張ワイヤーが前記プローブの内腔に配置された、請求項10に記載のプローブ。
【請求項12】
冷却液内腔を更に含む、請求項1に記載のプローブ。
【請求項13】
複数の放射状に拡張可能なアームを更に含むと共に、少なくとも1個の電極が、1本のアームに少なくとも部分的に配置された、請求項1に記載のプローブ。
【請求項14】
前記プローブの遠位先端に配置したアブレーション電極を更に含む、請求項1に記載のプローブ。
【請求項15】
前記プローブに結合したインターフェース回路を更に含むと共に、前記インターフェース回路が、
前記プローブから受信した信号を磁気共鳴伝導路及び電気生理学伝導路へ導く信号分配器と、
前記磁気共鳴伝導路に配置したハイパスフィルターと、
前記電気生理学伝導路に配置したローパスフィルターと、
磁気共鳴断層撮影装置に接続するために前記磁気共鳴伝導路に配置したコネクターと、
組織刺激装置、生体電位記録システム、及びアブレーションエネルギー源のうちの少なくとも1つに接続するために前記電気生理学伝導路に配置したコネクターとを含む、請求項1に記載のプローブ。
【請求項16】
前記プローブの外径が約15フレンチ未満である、請求項1に記載のプローブ。
【請求項17】
前記プローブの外径が約4フレンチ未満である、請求項1に記載のプローブ。
【請求項18】
前記プローブの近位端に配置したコネクター部分を更に含むと共に、前記コネクター部分が、
前記外部伝導層に結合した外部導線接点と、
前記外部導線接点を越えて近位に延伸した少なくとも幾つかの中心導線の延長区間であって、そのうちの少なくとも1つが1本の中心導線に結合した中心導線接点を備える、延長区間と、
前記外部導線接点と前記少なくとも1つの中心導線接点との間に挿入した絶縁領域とを含む、請求項1に記載のプローブ。
【請求項19】
複数の中心導線であって、そのうちの少なくとも幾つかが、伝導性の心線、及び前記心線の少なくとも一部分に沿って少なくとも部分的に前記心線の周りに配置した、約100ミクロン以下の厚さの絶縁体を含む、複数の中心導線と、
前記プローブの近位部において少なくとも部分的に前記複数の中心導線の周りに配置した第1誘電体層と、
前記第1誘電体層の周りに少なくとも部分的に配置した外部伝導層と、
少なくとも部分的に前記外部伝導層の周りに配置した第2誘電体層と、
複数の電極であって、そのうちの少なくとも1個を、前記中心導線のうちの1本に結合すると共に少なくとも部分的に前記プローブ表面に配置した、複数の電極とを含む、磁気共鳴映像法と電気生理学法との複合型プローブ。
【請求項20】
磁気共鳴プローブと前記プローブに電気的に結合したインターフェースとを含む磁気共鳴映像法用システムであって、前記磁気共鳴プローブが、
複数の中心導線であって、そのうちの少なくとも幾つかが、伝導性の心線、及び前記心線の少なくとも一部分に沿って少なくとも部分的に前記心線の周りに配置した絶縁体を含む、複数の中心導線と、
前記プローブの近位部において少なくとも部分的に前記複数の中心導線の周りに配置した第1誘電体層と、
少なくとも部分的に前記第1誘電体層の周りに配置した外部伝導層と、
複数の電極であって、そのうちの少なくとも1個を、前記中心導線のうちの1本に結合すると共に少なくとも部分的に前記プローブ表面に配置した、複数の電極とを含むと共に、
前記インターフェースが、
前記プローブから受信した信号を磁気共鳴伝導路及び電気生理学伝導路へ導く信号分配器と、
前記磁気共鳴伝導路に配置したハイパスフィルターと、
前記電気生理学伝導路に配置したローパスフィルターと、
磁気共鳴断層撮影装置に接続するために前記磁気共鳴伝導路に配置したコネクターと、
組織刺激装置、電気生理学的記録システム、及びアブレーションエネルギー源置のうちの少なくとも1つに接続するために前記電気生理学伝導路に配置したコネクターとを含む、磁気共鳴映像法用システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−512104(P2006−512104A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−509443(P2004−509443)
【出願日】平成15年5月29日(2003.5.29)
【国際出願番号】PCT/US2003/017085
【国際公開番号】WO2003/102614
【国際公開日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【出願人】(502354993)サージ−ビジョン インク (1)
【氏名又は名称原語表記】SURGI−VISION, INC.
【住所又は居所原語表記】Suite 2000 20 Firstfield Road Gaithersburg, MD 20878 United States of America
【Fターム(参考)】