説明

磁気特性を測定するための測定装置および当該測定装置の製造方法

測定装置周辺の磁気特性を測定するための測定装置であって、当該測定装置はセンサ列と支援磁界装置とを有しており、前記センサ列は、列方向に延在している列に配置されている少なくとも2つの磁気抵抗式センサ部材から成り、前記支援磁界装置は磁界を形成し、当該磁界は、列方向を指している磁界成分を有しており、当該磁界成分の磁界強度は列方向において変化し、ここで当該磁界強度特性経過は列方向において、前記センサ列を構成するセンサ部材の、列方向で連続して配置されている少なくとも2つのセンサ縁部で、零通過および/または極大値または極小値を有していない、ことを特徴とする、測定装置周辺の磁気特性を測定するための測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置周辺の磁気特性を測定するための測定装置並びに当該測定装置の製造方法に関し、ドイツ連邦共和国特許出願第102008033579.7号の優先権を主張する。
【0002】
従来技術から、上部に磁気的なマークが印刷された紙幣を識別するための測定装置が知られている。このような測定装置は例えばEP1729142A1号に記載されている。この文献に記載されている測定装置の欠点は、測定精度であり、求められるべき磁気パターンが内部にセンサ列が設けられているギャップ上に案内された場合の測定精度である。この既知の測定装置は、センサ列の個別センサ部材間のギャップ領域において低い測定精度を有している。
【0003】
従って本発明の課題は、測定装置周辺の磁気特性をより正確に測定することができる、測定装置周辺の磁気特性を測定する測定装置を提供することである。さらに、本発明の課題は、このような測定装置のための製造方法を提案することである。
【0004】
本発明の基本となる考えは、測定装置に支援磁界装置を設けることである。この支援磁界装置は支援磁界を生成する。この支援磁界は列方向を指している磁界成分を有しており、この磁界成分の磁界強度はセンサ列において、列方向で変化する。製造技術的な理由からセンサ列が個別センサ部材間でギャップを有しているのは公知であり、これによって有利には、各センサ部材の感度がその縁部で高まる。これによって、2つのセンサ部材の縁部間のギャップにおいて磁気特性をより正確に測定することができる。
【0005】
このために次のような支援磁界装置が特に適していることが判明している。この支援磁界装置の、列方向を指す支援磁界の磁界成分は磁界強度特性経過を列方向において有しており、この磁界強度特性経過は、センサ列を構成しているセンサ部材の、列方向に連続して配置されている少なくとも2つのセンサ縁部で、零通過および/または極大値または極小値を有していない。
【0006】
列方向を指している、支援磁界の磁界成分の磁界強度特性経過が、センサ部材のセンサ縁部近傍で零通過を有している場合に、センサ部材の感度がセンサ縁部で上昇することが知られている。列方向を指している支援磁界の磁界成分の磁界強度特性経過がセンサ部材のセンサ縁部で極大値または極小値を有している場合には、これはセンサ部材の感度にとって欠点となる。本発明の利点を得るためには、支援磁界の、列方向を指している磁界成分の磁界強度特性経過が、センサ列を構成しているセンサ部材の、列方向に連続して配置されている少なくとも2つのセンサ縁部で零通過を有していないことで足りる。支援磁界の、列方向を指している磁界成分の磁界強度特性経過が、センサ列を構成するセンサ部材の、列方向において連続して配置された2つのセンサ縁部の間で零通過を有しているのは特に有利である。同じように、本発明の利点を得るためには、支援磁界の、列方向を指している磁界成分の磁界強度特性経過が、センサ列を構成しているセンサ部材の、列方向に連続して配置されている少なくとも2つのセンサ縁部で極大値または極小値を有していないことで足りる。有利な実施形態では、支援磁界の、列方向を指している磁界成分の磁界強度特性経過が、センサ列を構成しているセンサ部材の、列方向に連続して配置されている少なくとも2つのセンサ縁部で零通過を有しておらず、さらに、センサ列を構成しているセンサ部材の、列方向に連続して配置されているこの2つのセンサ縁部で極大値または極小値も有していない。
【0007】
有利な実施形態では、支援磁界の、列方向を指している磁界成分の磁界強度特性経過は、センサ部材の全ての領域において零通過を有していない。
【0008】
測定装置のセンサ列は、列に配置されている少なくとも2つの磁気抵抗式センサ部材を有している。このセンサ列の長さ、ひいては使用されている磁気抵抗式センサ部材の数は、実行されるべき測定に依存している。ユーロ紙幣を測定するために、センサ列は例えば10個より多い、殊に有利には20個より多いセンサ部材、例えば28個のセンサ部材を有している。センサ列を形成するためにこれらのセンサ部材は1つの列に配置される。殊に有利には、全てのセンサ部材の長手中央軸は、1つの線上に位置している。しかし、個々の列のセンサ部材が、列方向を指している軸に関して異なって配置され、個々のセンサ部材の長手中央軸の全てが1つ線の上に位置しなくてもよい。しかし殊に有利には、個々のセンサ部材が部分的に重なるようにセンサ部材が配置される。
【0009】
有利な実施形態では複数のセンサ部材が1つの構造グループにまとめられ、例えば共通の支持構造体上に配置される。このような構造グループを以降で、センサと称する。センサは例えば2、3、4個またはそれより多くのセンサ部材を有している。しかし、1つのセンサが1つのセンサ部材だけによって構成されることも可能である。
【0010】
有利な実施形態では、上部に1つないし複数のセンサ部材が配置されているセンサはチップとして構成されている。チップはこの場合、測定装置の支持プレート(ボード)上に配置される。殊に有利には複数の、殊に4つのセンサ部材が1つのチップ上に配置される。これらのセンサ部材はチップ上に有利には相互におよびチップの縁部と等距離に配置されている。チップを直接的に支持体と接続することが可能であり、これは例えばいわゆる「チップオンボード」または「フリップチップ」技術によって接続される。択一的にセンサがチップに対して1つのハウジング、殊に有利にはプラスチックハウジングを有することができる。このハウジングは表面実装技術によって、電気的および機械的に、支持プレートと接続される。
【0011】
有利な実施形態ではセンサ部材は列方向において等距離に配置される。特に有利な実施形態では、第1のセンサ部材と、隣接するセンサ部材との間の間隔は、2つのセンサ部材中央点の間の間隔を基準にして、1〜10mmの間、有利には2〜5mmの間、殊に有利には3.5mmである。特に有利な実施形態では、チップは列方向に順次連続して配置されている2つのセンサ部材を有しており、ハウジング無しに、1.5〜9mm、有利には2〜3mm、特に有利には2.5mmの長さを列方向において有している。有利な実施形態では、チップの縁から、隣接するチップの縁までの間隔は1.5mmを下回り、殊に有利には1.1mmを下回る。
【0012】
択一的な実施形態では、センサ部材は次のように配置されている。すなわち、1つのチップの上に配置されている2つの隣接するセンサ部材の2つの縁部の間の間隔が、1つのチップ上に配置されていない隣接するセンサ部材の2つの縁部の間の間隔よりも小さくなるように配置されている。2つのチップの間の間隔は通常は、支持プレート上にチップを接続する技術によって定められる。この技術は通常は、2つの磁気抵抗式センサ部材を1つのチップ上に配置するために必要な空間よりも大きな空間を必要とする。従って測定装置の感度は、センサ部材をチップ上に取り付けることによっても、チップをボード上に取り付けることによっても、使用されている各技術に応じて行われるように、良好に上がる。
【0013】
チップ上でのセンサ部材の製造は、有利にはプラナー技術の方法、半導体技術またはマイクロシステム技術によって行われる。
【0014】
センサ列内のセンサ部材は磁気抵抗式センサ部材である。殊にセンサ部材は「異方性」磁気抵抗効果(AMR効果)または「巨大」磁気抵抗効果(GMR効果)を有する。しかしセンサ部材が別の効果、例えば巨大磁気インピーダンス(GMI)、トンネル磁気抵抗効果(TMR)またはホール効果も有していてよい。
【0015】
本発明の測定装置は、測定装置周辺の磁気特性を測定するために使用される。測定装置周辺の磁気特性とは殊に、測定装置周辺での磁界の磁界強度、測定装置周辺での磁界の磁界方向または例えば、測定装置周辺での磁界の磁界強度ないしは磁界方向の変化である。磁界が、紙幣の磁気パターンによって形成された磁界の重畳によって変化する場合には、例えば、周辺の磁気特性としては、測定装置を取り囲んでいる磁界の磁界強度および磁界方向の変化である。有利な実施形態では、センサ列は次のように構成されている。すなわち、センサ列が、測定装置周辺の磁気特性の空間的および/または時間的な変化のみを検出するように構成されている。
【0016】
本発明で使用される支援磁界装置は、1つまたは複数の構成部分、例えば永久磁石から成る。しかし支援磁界装置が多数のコンポーネントから構成されていてもよい。これは例えば磁界を形成する際に、電磁コイルによって必要とされる。
【0017】
有利な実施形態では、支援磁界装置は支援磁界を形成する。この支援磁界の、列方向を指している磁界成分は磁界強度特性経過を列方向において有しており、これは、センサ列を構成するセンサ部材の少なくとも2つのセンサ部材の間で極小値を有している。少なくとも2つのチップに、これらのチップ上に配置されたそれぞれ2つのセンサ部材が設けられている特に有利な実施形態では、支援磁界装置は支援磁界を形成し、この支援磁界の、列方向を指している磁界成分は磁界強度特性経過を列方向において有しており、これは、チップの間で零通過を有しており、1つのチップのセンサ部材間で極大値ないし極小値を有している。
【0018】
有利な実施形態では支援磁界装置が設けられている。これは、実質的にセンサ部材において作用する磁界のみを形成する。このような実施形態は、硬磁性材料を検出するのに有利である。殊に有利には支援磁界装置が使用され、ここでは、センサ部材の面に対して垂直に向いている磁界成分は磁界強度特性経過を有しており、この磁界強度特性経過は支援磁界装置からセンサ部材の方へ向かう方向において、センサ部材に応じて迅速に減少する。例えば、この方向を指しているセンサ部材表面上方で、この方向においてセンサ表面から2mmの間隔で、自身の最大磁界強度の約50%の値を有している。硬磁性磁石を備えた測定対象物がこのような測定装置上に導かれることによって、この支援磁界に、測定対象物の硬磁性磁石の磁界が重畳される。センサ部材に加わっている磁界全体の、この重畳と結びついている変化が、センサ部材によって検出される。
【0019】
有利な実施形態では支援磁界装置が設けられる。これはセンサ部材をはるかに越えて作用する磁界を形成する。この磁界によって、硬磁性材料も軟磁性材料も検出される。殊に有利には支援磁界装置が使用され、ここではセンサ部材の面に対して垂直に向いている磁界成分が磁界強度特性経過を有しており、この磁界強度特性経過は、支援磁界装置からセンサ部材の方を向いている方向において、センサ部材に応じて、僅かにのみ減少する。例えば、この方向を向いているセンサ部材表面上方では、この方向においてセンサ表面から2mmの間隔で、自身の最大磁界強度の80%の値を有している。硬磁性材料も軟磁性材料も備えている測定対象物がこのような測定装置上に導かれることによって、この支援磁界は、このような材料が存在していることによって変形される。印加されている磁界のこのような変形は、センサ信号を形成するセンサ部材によって検出される。殊に有利には、支援磁界は、測定中にその中に測定対象物が配置される測定装置領域において、検出されるべき磁気的な構造の保磁磁界強度よりも格段に高く、有利には少なくとも3倍は高い磁界強度を有する。
【0020】
測定精度の改善は既に、列方向で連続して配置されている少なくとも2つのセンサ縁部で、磁界強度特性経過が列方向において零通過および/または極大値または極小値を有していないことによって実現される。ここで、この列方向において連続して配置されているこのセンサ縁部は、相互に直接的に連続する必要はない。磁界強度特性経過が列方向において、センサ列の任意の第1のセンサ部材の任意の縁部で、およびセンサ列の任意の第2のセンサ部材の任意の縁部で零通過および/または極大値または極小値を有していない場合にも、本発明の成果が得られる。これは、縁部が、センサ列の全体的な拡がりにわたって連続して配置されている縁部の場合である。
【0021】
本発明による測定装置の実施形態では、磁界強度特性経過は列方向において、センサ列を構成するセンサ部材のあるセンサ縁部で零通過および/または極大値または極小値を有している。この場合には本発明の利点は、別のセンサ部材縁部で得られる。
【0022】
本発明による測定装置の特に有利な実施形態では、支援磁界が形成される。ここでは磁界強度特性経過が列方向において、センサ列を形成するセンサ部材の、列方向において連続して配置されている全てのセンサ縁部で零通過および/または極大値または極小値を有していない。例えば、支援磁界は各磁石によってセンサ部材毎に形成される。この磁石は最も簡単な場合には、センサ部材の製造の間、直接的にセンサ上に載置される。
【0023】
この支援磁界は時間で変化してもよく、例えばパルス状にされる。しかし有利な実施形態ではこの支援磁界は時間で変化せず、常に同じである。これによって殊に測定装置の構造が容易になる。なぜなら、支援磁界を形成するために永久磁石が用いられるからである。
【0024】
有利な実施形態では、磁界強度特性経過は列方向において周期的であり、特に有利な実施形態では、センサ列のセンサ部材間の有利には変わらない間隔周期の整数倍または整数部分を有している。特に有利な実施形態では、支援磁界装置はセンサ列の初めと終わりで、磁石配置を有している。これによって列の終端でも、センサ列にわたって列方向において磁界強度の実質的に周期的な特性経過が得られる。これは、磁石配置が有利には少なくとも3つの、センサ列を超える幅の広い極を有することによって実現される。有利な実施形態では、全体的な構造長を短くするために、縁部効果が外側磁石の幾何学的形状または磁性または配置を修正することによって低減され、例えば、磁石の長さが磁石周期の約30%だけ短くされる。
【0025】
有利な実施形態では支援磁界装置は、隣接して、殊にセンサ部材の列方向において隣接して配置されている磁石の列を有している。この列の磁石の磁性は交互であるので、磁石の磁性は、自身の隣接する磁石の磁性と反対である。しかし、列において隣接して配置されている磁石が同じ磁性を有していてもよい。この場合には、磁石は特に有利には列方向において相互に間隔を空けて配置される。しかし、列において隣接して配置されている磁石が、変化する磁性を有していてもよい。これはセンサ部材側の磁界を強め、裏側の磁界を弱める。
【0026】
有利な実施形態では、殊に、磁石の磁性が1つの磁石から隣接する磁石へと交互になる、列方向で隣接して配置された磁石では、磁石は直接的に相互に接して配置される。これによって支援磁界の均一な特性経過が得られる。
【0027】
支援磁界装置は特に、プラスチックと結合された硬フェライトまたは希土類磁石から製造される。
【0028】
有利な実施形態では、磁性が交互である、隣接して配置されている磁石の列を有する支援磁界装置は、センサ列に対して次のような関係で配置されている。すなわち、1つの磁石から隣接する磁石への移行部が、列方向における拡がりに関して、少なくとも1つのセンサ部材の中央に配置されるように配置されている。これによって容易に、磁界強度特性経過が列方向において、センサ列を構成するセンサ部材の連続して配置されているセンサ縁部で、零通過および/または極大値または極小値を有さないことが実現される。
【0029】
有利な実施形態では支援磁界装置は永久磁石を有している。これによって支援磁界機能が容易に形成される。
【0030】
有利な実施形態では測定装置は、隣接して配置されている2つのセンサ列、例えば、測定されるべき測定対象物が場合によって動かされる測定方向において隣接して配置されている2つのセンサ列を有している。これによって、測定精度がさらに上昇する。付加的または択一的に、測定装置は2つの、隣接して配置されている支援磁界装置を有している。これによって支援磁界の磁界特性経過が均一にされる。支援磁界磁石の制限された空間的な拡がりは、殊に空間的に広げられた勾配センサの使用時に、不所望のセンサ特性、例えば感度変動を生じさせる。このような欠点を回避するために、有利な実施形態では、少なくとも1つのさらなる、幅広い間隔が空けられた支援磁石の配置を使用することによって、列方向に対して横向きの支援磁界の均一化が実現される。
【0031】
特に有利な実施形態では、列方向において連続して配置された2つのセンサ列が設けられる。これらのセンサ列は、異なる特性を求めるために使用される。紙幣がいわゆる硬磁性パターンと軟磁性パターンとを有していることが知られている。硬磁性パターンを識別するために、紙幣を事前磁化することが必要である。軟磁性パターンを識別するためには強い支援磁界が必要である。硬磁性パターンと軟磁性パターンとを同時に識別することは、はじめに紙幣がその上に案内される第1のセンサ列の支援磁界によって行われる。すなわちこの列の支援磁界は軟磁性パターンの識別を可能にするとともに、硬磁性構造体の事前磁化にも用いられる。次に紙幣が第2のセンサ列上に案内されると、この第2のセンサ列は別個に硬磁性パターンを識別する。有利な実施形態では、第1のセンサ列も第2のセンサ列も支援磁界装置を有している。軟磁性構造と硬磁性構造とを別個に識別することによって利点として、真偽検査が改善される。これと同時に、別個の事前磁化磁石を使用することも省かれる。
【0032】
有利な実施形態では、本発明の測定装置は事前磁化磁石を有している。この磁石はセンサ列の前に配置されている。このような事前磁化磁石によって、硬磁性パターンを備えている測定対象物の磁化が行われ、まずはこの上に測定対象物が案内される。次にこの測定対象物がセンサ列の上を通ると、このセンサ列は硬磁性パターンを識別する。有利な実施形態では、事前磁化磁石は次のように構成および配置される。すなわち、これが少なくとも1つのセンサ部材、有利には全てのセンサ部材において磁界が形成されるように構成および配置される。これは実質的にはセンサ部材の面に対して垂直に向いている方向のみを有している。これによって、事前磁化磁石の領域がセンサ部材の感度に影響を与えることが回避される。
【0033】
特に有利な実施形態では、測定装置は事前磁化磁石を有していない。このような測定装置では、測定対象物の磁化は例えば次のことによって行われる。すなわち、測定の間に測定対象物が配置される測定装置領域において支援磁界が、検出されるべき磁気的構造の保磁磁界強度よりも格段に高い磁界強度をすることによって行われる。
【0034】
本発明の装置を、事前増幅器とともにハウジング内に組み込むことができる。付加的または択一的にこのハウジングは摩耗等に対する予防対策を有することができる。
【0035】
本発明の測定装置のための本発明の製造方法では、隣接して配置されている磁石列を備えている支援磁界装置は、センサ列に対して相対的に配向されている。このために電気的導体がセンサ列の領域内に配置されている。電気的導体は次のように構成されている。すなわち、電流を流したときに電気的導体が、センサ列内で信号を形成する磁界を形成する。この信号は、支援磁界装置の位置に依存し、電気的導体に対して相対的なセンサ列の位置には近似的に依存しない。従ってこの信号に基づいて、支援磁界装置がセンサ列に対して所望の位置に配置されているか否かが識別される。このような装置によって、個々のセンサ部材の感度をコントロールすることも可能である。
【0036】
本発明の測定装置は、しばしば軟磁性パターンおよび/または硬磁性パターンが設けられている価値を有する書類上でのパターン識別で使用される。これは例えば、紙幣、小切手である。同じように本発明の装置はいわゆるタグの識別または磁気バーコードの識別の際に使用される。同じように本発明の測定装置は、材料検査、例えばエラー箇所、穴または破れの確認に使用される。同じように、本発明の測定装置はバイオチップまたはいわゆるラボオンチップ技術における磁気的なアレイで使用される。これは例えば、磁気ビーズの検出のため、またはアレイの感度分布の均一化のために使用される。
【0037】
以下で本発明を、単に1つの実施例をあらわしているだけの図面に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による測定装置の概略的な平面図
【図2】幅広く構成される支援磁界を形成する、本発明による測定装置の支援磁界装置の構造の概略的な側面図
【図3】センサ部材上で局所的に制限される支援磁界を形成する、本発明による測定装置の支援磁界装置の構造の概略的な側面図
【図4】センサ部材上で局所的に制限される支援磁界を形成する、本発明による測定装置の支援磁界装置の構造の概略的な側面図
【図5】2つのセンサ部材の領域における支援磁界磁石の一列配置の拡散的な磁界特性経過が示されている、支援磁界装置の断面図
【図6】2つのセンサ部材の領域における支援磁界磁石の二列配置の均一な、平行な磁界特性経過が示されている、2つの支援磁界装置を有する装置構成の断面図
【実施例】
【0039】
測定装置の周辺において磁気特性を測定する本発明の測定装置は、隣接して配置されている磁気抵抗式センサ部材1を有している。これらのセンサ部材は、相互に平行に配置されている2つの列4a、4bに配置されている。複数の磁気抵抗式センサ部材1がセンサチップ2上にまとめられる。センサチップ2はハウジングともにセンサ3を形成する。このセンサは詳細には示されていない、測定装置の支持プレート上に配置されている。
【0040】
本発明による測定装置は図1では、少なくとも2つの、隣接して配置されているチップ2を有している。これらのチップ2は次のように隣接して配置されている。すなわち、全てのセンサ部材1の間隔が相互にセンサ列4a、4bにおいて同じであるように配置されている。
【0041】
センサ列の長さ、ひいては磁気抵抗式センサ部材1の列は、実行されるべき測定に依存する。殊に、使用されるセンサチップ2の数は、測定タスクに依存する。すなわち、実質的に、測定されるべき対象物の幅およびセンサチップ2のサイズに依存する。ユーロ紙幣を測定するために、センサ列は例えば10個以上、殊に有利には20個以上、殊に28個のセンサ部材1を有する。
【0042】
図2〜4には、支援磁界装置の可能な構造形態が示されている。この支援磁界装置によって磁界が形成され、この磁界は列方向を指している磁界成分を有する。その磁界強度はセンサ列において列方向で変化する。図2〜図4において、線Eは紙面に対して垂直な面を表しており、この面にセンサ部材1が配置されている。面E内の詳細に示されていないセンサ部材1は、右から左へ延在するセンサ列を構成している。
【0043】
支援磁界装置は複数の磁石5によって形成される。これらの磁石は図2〜図4に示されている実施形態において面Eの下方に配置されている。すなわち、測定の間に測定対象物が存在する測定装置領域に関して下方に配置されている(図2〜4において、および図2〜4の実施例の場合にはこの領域は面Eの上方に位置している)。
【0044】
図2で示された実施形態では磁石5は等しく配向されている。磁石の各N極は、上方を指している。図2に示されている磁力線から分かるように、支援磁界は殊にこれらの極から上方へと拡がっている。ここでこれは、各極の中央において垂直に上方へ配向されている。装置が対称であるので、支援磁界は、2つの磁石5の間の中央線上で同じように垂直に上方へ配向されている。また支援磁界は極の中央と2つの磁石5の中央線との間で、垂直に上方へ向いている方向から逸れている方向、すなわち列方向に向いている磁界成分を有している。その磁界強度は、零とは異なっている。列方向において列方向を向いているこの磁界成分の特性経過は、図2内のグラフに示されている。このグラフではより良い方向付けのために、グラフ内に記号的に矩形として示されているセンサ部材の位置が表されている。
【0045】
図3に示された実施形態では磁石5が、交互に配向されている。図3に示されている磁力線から分かるように、支援磁界は各極の中央において、上方に向かって拡がっている。各極の中央と各隣接する極の中央との間で支援磁界は図3に示されているように拡がる。これによって支援磁界は、列方向へ向いている磁界成分を有する。その磁界強度は、零とは異なる。列方向において列方向を向いている磁界成分の特性経過は、図3に含まれているグラフ内に示されている。
【0046】
図4に示されている実施形態では磁石5は交互に配向されている。図4において示されている磁力線から分かるように、この支援磁界は各極の側面において垂直に上方へ拡がっている。各極のこの側面と各磁石5の別の側面との間で、支援磁界は図4に示されているように拡がっている。これによって支援磁界は、列方向に向いている磁界成分を有する。その磁界強度は零とは異なる。列方向において列方向を向いているこの磁界成分の特性経過は、図4内のグラフに示されている。
【0047】
図2〜図4内のグラフから分かるように、支援磁界装置はセンサ列4a、4bの領域において、列方向で変化する周期的な支援磁界を形成する。磁界強度特性経過が列方向において、センサ部材1の縁部領域において零通過も極大値または極小値も有していないことが分かる。図2〜4に示された実施形態では、磁界強度特性経過はセンサチップの中央において極大値ないしは極小値を有しており、2つのセンサチップの間で零通過を有している。
【0048】
図5および図6において、センサ列に支援磁界磁石5の2つの列を平行に配置することによってどのように均一な磁界が形成されるのかが示されている。図5に示された支援磁界装置は、個々の支援磁界磁石の列から成る。ここで図5では、磁石の列は紙面に対して垂直に拡がっている。図5および6に示された構造形態は、平行に隣接して配置されている2つのセンサ列を有している。これらのセンサ列は、紙面に対して垂直に拡がっている。図5に示された磁力線から、支援磁界がセンサ列の面において図示のセンサ部材内に、磁界成分を有していることが分かる。この磁界成分は図5および図6では、右ないしは左を向いている。図6に示された有利な実施形態では、2つの支援磁界装置が設けられている。これらは相互に平行に配向されている。図6に示された磁力線に基づいて、支援磁界がセンサ列の面において、図示のセンサ部材において、実質的に、センサ部材の面に対して垂直な磁界成分のみを有していることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置周辺の磁気特性を測定するための測定装置であって、
当該測定装置はセンサ列と支援磁界装置とを有しており、
前記センサ列は、列方向に延在している列に配置されている少なくとも2つの磁気抵抗式センサ部材(1)から成り、
前記支援磁界装置は磁界を形成し、当該磁界は、列方向を指している磁界成分を有しており、当該磁界成分の磁界強度は列方向において変化し、
ここで当該磁界強度の特性経過は列方向において、前記センサ列を構成するセンサ部材(1)の、列方向で連続して配置されている少なくとも2つのセンサ縁部で、零通過および/または極大値または極小値を有していない、
ことを特徴とする、測定装置周辺の磁気特性を測定するための測定装置。
【請求項2】
前記磁界強度特性経過は列方向において、センサ列を構成するセンサ部材(1)の各センサ縁部で、零通過および/または極大値または極小値を有していない、請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記支援磁界は時間で変化しない、請求項1または2記載の測定装置。
【請求項4】
前記磁界強度特性経過は列方向において、少なくとも2つの極大値および極小値を有している、請求項1〜3までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項5】
前記磁界強度特性経過は列方向において、列の領域において周期的である、請求項1〜4までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項6】
前記磁界強度特性経過は列方向において、列方向における自身の空間的な延在に関して少なくとも1つのセンサ部材(1)の中央において、極大値または極小値を有している、請求項1から5までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項7】
前記支援磁界装置は、隣接して配置されている磁石(5)の列を有しており、ここで当該磁石(5)の磁性は、自身の隣接する磁石(5)の極性と反対である、請求項1から6までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項8】
前記支援磁界装置は、隣接して配置されている磁石(5)の列を有しており、ここで当該磁石(5)の磁性は、自身の隣接する磁石(5)の極性に対して平行である、請求項1から6までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項9】
前記磁石(5)は直接的に相互に接している、請求項7または8記載の測定装置。
【請求項10】
ある磁石から隣の磁石への移行が、列方向における拡張に関して少なくともセンサ部材(1)の中央に配置されないように、前記隣接して配置されている磁石(5)の列は、センサ列に対して配置されている、請求項7から9までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項11】
殊に、局所的に変化する磁性分布を備えた個々の磁石が使用されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項12】
前記支援磁界装置は永久磁石を有している、請求項1から11までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項13】
隣接して配置されている少なくとも2つのセンサ列を有している、請求項1〜12までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項14】
隣接して配置されている少なくとも2つの支援磁界装置を有している、請求項1〜13までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項15】
連続して配置されている少なくとも2つのセンサ列を有している、請求項1〜14までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項16】
センサ信号が、センサ部材(1)の近傍領域において形成される局部的な磁界勾配によって定められ、均一な磁界によって定められないように、前記センサ部材(1)が配置されている、請求項1から15までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項17】
磁界強度特性経過が列方向において、少なくとも1つのセンサ部材で、磁石によって形成され、当該磁石は、その上にセンサ部材が配置されているチップ上に直接的に被着されている、請求項1から16までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか1項記載の測定装置を製造する方法であって、
隣接して配置されている磁石を備えた支援磁界装置を、センサ列に対して相対的に配向し、
電気導体を前記センサ列の近傍に配置し、
ここで前記電気導体を次のように構成する、すなわち、電流が流れた場合に前記電気導体が磁界を形成し、当該磁界は、センサ列のセンサ部材内で信号を形成し、当該信号は、前記支援磁界装置の位置に依存し、電気的導体に対して相対的なセンサ列の位置には近似的に依存しない、
ことを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項記載の測定装置を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−528112(P2011−528112A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517817(P2011−517817)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005196
【国際公開番号】WO2010/006801
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(511015478)メアス ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】MEAS Deutschland GmbH
【住所又は居所原語表記】Hauert 13, D−44227 Dortmund, Germany
【Fターム(参考)】