説明

磁気特性測定方法及びシステム

【課題】磁気特性測定システムの更なる精度向上と測定用途の拡大を目的としている。
【解決手段】本発明は、超伝導ピックアップコイルの近辺に位置する測定対象試料の磁化を電気信号として検出する超伝導量子干渉素子SQUID、及び超伝導ピックアップコイルを囲んで交流磁界を発生するために交流電源に接続されたacコイルを備えて、超伝導量子干渉素子SQUIDを用いて測定対象試料の磁気特性を測定する。超伝導量子干渉素子SQUIDからの交流信号形式の入力信号を、可聴域周波数でデジタル信号集録を行うA/D変換器を用いて採取し、このA/D変換器により変換されたデジタル信号を、参照電圧信号に対して時間的なずれを最適な状態に修正する位相調整を行う。この位相調整された信号に対してフーリエ変換処理を行って、磁気特性として、各高調波成分の検出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気特性測定方法及びシステムに関し、特に音響用A/D変換器を使用し、かつ、基本波抽出、高速フーリエ変換、統計処理(中央値算出)を経て、微弱磁気信号を抽出する信号処理技術を融合した高精度の磁気特性測定方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録材料を初めとする電子デバイス・機能性材料には、特異な磁気的性質を利用したものが多い。今日では、環境問題・エネルギー問題を考慮し、高速処理・省エネ駆動・小型化を目指した材料開発が盛んに行われている。実際に機能性材料開発を行う段階で、「合成→評価」という過程が何度となく繰り返されるわけであるが、その中で評価を行う装置の性能向上も同時に求められる。
【0003】
磁気的性質を評価する装置としては、超伝導量子干渉素子(Superconducting Quantum Interference Device; 略称 SQUID)を用いた高精度の磁気測定装置が知られている(非特許文献1参照)。超伝導量子干渉素子とは、超伝導リングを一つ又は二つのジョセフソン接合に結合したものであり、応用としては高感度磁力計、近磁界アンテナ、非常に小さな電流又は電圧の測定に適している。この磁気測定装置は、幅広い温度域(1.7〜400K)・高磁場領域(±7T)という環境下でシーケンス制御による自動測定が可能である。
【0004】
図7は、従来公知のSQUID回路構成を示す図である。図示の直流電源DCからdc SQUIDに流れる電流の最大値 I cは、外部磁束Φに対して周期的に変化する。交流電源ACから電流を帰還コイルに流すことにより、dc SQUID出力電圧Vは、周期Φ0で変化する。変調磁束は、AC電源と共に変調磁場を作り出し、最適な低ノイズ状態にチューンする役割を果たす。ピックアップコイル(信号コイル)で検出した磁束の変化は、トランスの役目をするSQUIDを使って電気信号として取り出される。ピックアップコイルによって検出された磁束の変化は外部磁束Φの変化として反映される。磁束計の原理は、この電圧変化の一部を用いて外部磁束の変化を電圧の変化で測定するものである。この電圧変化はプリアンプ、及び積分器を介して外部に出力される。フィードバック回路は、磁束の変化によるSQUID電圧の変化を、変化がゼロの状態に戻して(基準点の再構築)、磁束の変化と電圧の変化に線形性を付与する機能を有している。
【0005】
図8は、従来公知の磁気測定装置の3つの異なるシステムを説明する図である。図8(A)はDCモード、(B)はVCMモード、(C)はACモードの測定システムをそれぞれ示している。試料の磁束(直流磁化)を測定するDCモードは、試料を検出用の超伝導コイル中に置き、試料の磁束を測定して、SQUIDプローブを介して信号を出力する方法であり、ノイズに弱いという欠点を有している。検出用の超伝導コイルを振動させたときのSQUID電圧の振幅の検出から直流磁化率を測定するVCM(Vibrating coil magnetometer)モードは、アクチュエータ及び圧電素子を介して、検出用の超伝導コイルを振動させたときのSQUID電圧の交流信号振幅の検出から直流磁化率を測定する方法である。圧電素子の共振条件が温度で変化し、振動条件を一定に保つのが難しく、機械振動によるノイズが混入するなどの欠点を有している。ACモードは、試料をacコイルにより発生する交流磁場中に置き、SQUID電圧の交流信号振幅の検出から交流磁化率を測定する方法である。本発明は、詳細は後述するように、このACモードの測定システムの、特にSQUIDコントローラからの電気信号に対する信号処理技術を改良して、磁気シールドが不備な状況でもSQUIDを用いて磁気測定を実行することを可能にする。
【0006】
図9は、このような磁気測定装置を食品検査装置に応用した従来公知の例を示す図である(特許文献1参照)。図示の食品検査装置には、SQUID磁気センサを納めた低温断熱容器を囲んでコイルが設けられる。この低温断熱容器とコイルとは、外部からの磁気ノイズの遮蔽のためにパーマロイ製の磁気シールドにより覆われている。測定試料である食品は、ベルトコンベヤによって、磁気シールドの開口部を経て、コイルの内部であって、SQUID磁気センサの直下の領域にまで搬送される。
【0007】
コイルは、交流発振器に接続されており、交流磁界を発生することができる。SQUID磁気センサの出力は、センサコントローラを介して、ロックインアンプで位相検波および増幅され、記録計に出力されるように構成されている。センサコントローラからの信号自身も、フィルタを介して高周波成分が除去されたのち記録計に出力され、記録される。また、ロックインアンプの出力およびフィルタの出力は、ともにパソコンに取込まれ、食製品中の弱磁性異物の有無が判定される。交流発振器の出力信号は、ロックインアンプの参照電圧信号としても用いられている。
【0008】
ロックインアンプは、印加交流磁界に同期した信号のみを検出することができる機能を持ち、例えば、100Hzの交流磁界を印加した場合、SQUID磁気センサの出力のうち100Hzを中心とした極めて狭帯域の信号成分のみを取り出すことができる(後述の[実施例1]参照)。
【0009】
しかし、このようなロックインアンプを用いる装置は、世界的な普及が始まって10年以上経過するがその測定精度は向上を見せていない。従来装置では、測定試料が大きな信号を有している場合や磁気シールド内部で測定が行われる場合などでない限り、測定精度を向上させることは難しい。また、ロックインアンプを用いる従来装置では、電気信号をリアルタイムに目視する構造になっていないため、渦電流が原因で生じる検出信号が参照電圧信号に対し大幅な時間遅延を起こすなどの問題に対処しにくく、かつ、高調波解析が容易に行えない。
【0010】
従来のSQUID磁気測定装置のソフトウエアは、金属製の圧力発生装置を装置内に挿入することを想定して作られていない。実際には、装置内にやむを得ず配置せざるを得なかった金属性部品による渦電流の寄与を補正すべく、標準試料を用いて位相調整用の基礎データを予め採取し(PC内のハードデスクに保管される)、それを基に渦電流の寄与を補正している。しかし、圧力実験のように大容量の金属製圧力セルを装置内に挿入するとき、その基礎データが全く意味をなさなくなる。金属セルを使用することによる渦電流の寄与は顕著であり、1kHzにおいて、位相のずれは90度に達し、適切な位相調整措置を講じる必要性があることが分かった。
【0011】
交流磁化率は、交流磁場に追随する成分とそれと90度位相のずれたエネルギー損失を表す成分に分解される。通常、それらの分離が複素フーリエ変換によって行われるため、前者を実数成分、後者を虚数成分と呼ぶ。実際の磁気特性を評価する上では、多くの場合、実数成分を評価することで十分であるが、より詳しい物理情報が求められるときには、虚数成分に注目する必要がある。虚数成分は、エネルギー損失を反映し、磁気モーメントの大きさが時間と共に減衰していくような場合には、虚数成分のピーク位置の周波数依存性よりその現象を発現させているエネルギー障壁の大きさ(準安定電子状態の実現安定度を表す)を見積もることができる。また、この虚数成分には、不純物磁性イオンによる常磁性信号は混入されず、高純度でない磁性体の磁気転移温度を評価する際に効果的である。このように磁気緩和現象(ナノサイズ磁性体の研究では必須)を詳しく調べたり、対象物質の磁気転移温度を評価する際に、虚数成分は重要な物理量である。
【0012】
さらに、従来のSQUID磁気測定装置は、DC測定を重要視した設計になっており、SQUIDの利用を高周波数の交流磁場下で可能にしていない。SQUIDを用いた装置ではこれまで概ね交流磁化率測定域としては1.5 kHzが上限であった。交流磁化率を通じて、磁気挙動の緩和現象を研究する際、交流磁場の周波数領域が広ければ広いほど(一桁刻みでその重要性が高まる)、その磁気挙動発現のしくみが明らかになる。しかし、上記装置の周波数領域の上限が1kHzであったため、高周波数域での高精度磁気研究は未開拓であった。SQUIDを使用しない(たとえば単純な相互誘導を利用する)装置では、10kHzまでの測定はこれまでも可能であったが、精度不足である。このように、周波数域のわずか一桁の上昇といえども、そこには科学的に大きな潜在的価値が存在するのである。
【非特許文献1】A. D. Hibbs et al., Rev. Sci. Instrum. 65 (1994) pp.2644-2652.
【特許文献1】特開2004−28955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、係る問題を解決して、SQUIDプローブからの電圧信号の取り込み、そしてその信号解析の技術要素を確立し、磁気特性測定システム(交流磁化率測定)の更なる精度向上と測定用途の拡大を目的としている。
【0014】
測定対象試料を交流磁場中に配置することで、SQUIDからの電気信号は交流信号形式になる。その交流信号を耐ノイズ性の高い(音響用)A/D変換器を用い採取し、パソコン内に取り込む。そして、そこでのデジタル信号に多彩な信号処理技術(たとえば、オーバーサンプリング、基本波抽出、高速フーリエ変換、統計処理)を施し、目的の微弱信号を高精度に検出する。この技術要素は、これまで市販のロックインアンプを用いて行っていた作業に代替するものであり、渦電流の補正や高次高調波磁化率の検出にも柔軟に対応できる。
【0015】
また、本発明は、測定精度を維持しながら、周波数領域を拡大することを目的としている。磁気緩和現象を観測するために行われる交流磁化率の測定は、交流磁場の周波数域が広ければ広いほど、その実験的価値は高まる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の磁気特性測定方法及びシステムは、超伝導ピックアップコイルの近辺に位置する測定対象試料の磁化を電気信号として検出する超伝導量子干渉素子SQUID、及び超伝導ピックアップコイルを囲んで交流磁界を発生するために交流電源に接続された交流磁界発生用のコイルを備えて、超伝導量子干渉素子SQUIDを用いて測定対象試料の磁気特性を測定する。超伝導量子干渉素子SQUIDからの交流信号形式の入力信号を、可聴域周波数でデジタル信号集録を行うA/D変換器を用いて採取し、このA/D変換器により変換されたデジタル信号を、参照電圧信号に対して時間的なずれを最適な状態に修正する位相調整を行う。この位相調整された信号に対してフーリエ変換処理を行って、磁気特性として、各高調波成分の検出を行う。
【0017】
また、本発明の磁気特性測定方法及びシステムは、A/D変換器により変換されたデジタル信号を、多段階に基本波抽出処理をすることで、高調波成分を順次各基本波信号として抽出し、対象となる各基本波信号と同周波数をもつ各参照信号が同位相になるように各基本波信号の位相調整をする。この位相調整された各基本波信号を、各参照信号と乗算し、それぞれの積を表すDC成分を取り出し、この取り出したDC成分に対してフーリエ変換処理して、ノイズ成分と分けて各高調波成分を磁気特性として抽出する。
【0018】
音響用A/D変換器は、アナログルフィルタによるフィルタリングの後、オーバーサンプリングによるA/D変換を行い、その後、デジタルフィルタによるフィルタリングによって量子化ノイズを排除するデジタル信号集録器であり、20Hz〜20kHzの可聴域周波数に対して有効であり、少なくとも40kHzのサンプリングレートでサンプリングし、かつ少なくとも16ビットで量子化する高ビット・高サンプリングレートのものが効果的である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、超伝導量子干渉素子SQUIDを用いて、広い周波数領域で微弱な磁気信号をこれまでにない高精度で検出することが可能となる。特に、ブラックボックスになりがちな信号抽出および解析作業をパソコンのデイスプレイ上にてユーザーがチェックできるような視覚型(オープン形式)にし、そこで多彩な信号処理・統計処理を施すことで、これまでノイズに埋もれていた磁気信号を検出することができる。つまり、これまででもオシロスコープとロックインアンプを使うことで原理的には可能であった大変複雑な作業をすべてパソコンの画面上で短時間に、容易かつ高精度に行うことができる。
【0020】
また、本発明によれば、統計平均(中央値)を重要視することで、特にノイズに弱いSQUID使用装置の機能性を最大限に引き出すことができ、測定周波数領域の飛躍的拡大を可能にする。測定周波数領域は、20kHzを超える領域にまで拡大された(従来のSQUIDを用いた装置では1.5kHzが最高であり、また、SQUIDを用いない装置でも10kHzが最高であった)。
【0021】
測定精度は、これまでの実験結果を踏まえると、ピックアップコイルの中心部に試料が配置された状況で、1回の測定での信号波形の数を200程度とった状態で、基本波抽出・高速フーリエ変換をして実効値を見積もり、さらに同一条件の測定を250回程度行い、それらの実効値の中央値を算出し、かつ交流磁場振幅が5.4Oe、交流磁場周波数が40〜100Hz、超伝導磁石配置下(磁気シールド強化)の条件であれば、10-9〜10-11emuは十分達成可能である(従来装置はACモードで10-7emu、DCモードで10-8emu程度であった)。
【0022】
本発明によれば、高調波成分の検出が容易に行える(従来のSQUIDを用いていない交流磁化率測定装置では可能な装置もあるが、その精度は、本発明装置の4桁から5桁落ちである)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、例示に基づき本発明を説明する。図1は、超伝導量子干渉素子SQUIDを用いた本発明の磁気特性測定システムの全体図である。図1に示すSQUIDセンサと、センサコントローラと、交流電源を併せたものが、図7に示したような従来公知のSQUID回路構成に相当する。本発明の磁気特性測定システムは、さらに、オーバーサンプリング機能をもつA/D変換器を接続し、その出力をパソコンPCに接続して、信号処理するものである。
【0024】
超伝導ピックアップコイルにより検出された磁束の変化は、トランスの役割を果たすことになる超伝導量子干渉素子SQUIDを通じて検出される。この超伝導ピックアップコイルの外側に交流磁界発生用のacコイルが設けられ、さらにその外側に安定磁場の発生と磁気シールドの両面の役割を担う外部磁場発生用マグネットが備えられている。このマグネットは、磁気シールドの機能を強化し、非常に安定な定常磁場状態で、磁気ノイズの影響をハード面で軽減することを目的としている。超伝導ピックアップコイルの近辺には、磁化を測定すべき測定対象試料(サンプル)が位置している。超伝導ピックアップコイル、超伝導量子干渉素子SQUID及び外部磁場発生用マグネットは、冷凍機により超伝導状態に冷却されている。
【0025】
交流磁界発生用のacコイルは、銅線によるソレノイドコイルであり、交流電源(発振器)に接続されて、交流磁界を発生することができる。ピックアップコイルにおける磁束の変化は、SQUIDセンサとセンサコントローラを介して出力される。センサコントローラは、フィルタリングのためのバンドパスフィルタ及び信号増幅のための増幅器を備えている。以上の構成としては、図7〜図9を参照して説明したような従来技術と同じ構成を採用できる。本発明においては、センサコントローラからの出力及び交流電源からの参照電圧信号が、オーバーサンプリング機能をもつA/D変換器に入力され、そして、それぞれのデジタル信号はパソコンPC内に取り込まれて、信号処理され、各段階における解析結果ならびにその最終結果が表示される。
【0026】
測定対象試料を交流磁場中に配置することで、SQUIDセンサからの電気信号は交流信号形式になる。その交流信号を耐ノイズ性の高いA/D変換器(音響用A/D変換器)を用いて採取し、そこでのデジタル信号を多彩な信号処理技術(たとえば、基本波抽出、高速フーリエ変換、統計処理)によって高精度に検出する。A/D変換器には、センサコントローラからの電圧信号と共に、交流電源からの参照電圧信号が入力される。参照電圧信号は、acコイルを通じて試料空間にどのような磁場変調を実現しているのかを知らせるためのものである。
【0027】
以下、二つのシステムフロー(図2および図5)を説明する。図2は、図1に例示した磁気特性測定システムのPC内で行われる信号処理を説明する図であり、ピックアップコイルシステムで検出した電気信号の流れを示している。図示したように、ピックアップコイルシステムの出力は、センサコントローラを通じて、高ビット・高サンプリングレートのA/D変換器に入力され、そして、そこからのデジタル信号はパソコン内に取り込まれて、信号処理される。この信号処理には、市販のソフト(LabVIEW)を用いることで視覚化される。この信号処理では、パソコン内に取り込んだデジタル信号を一度波形フォームに変換し、位相調整、複素高速フーリエ変換、各高調波成分の実部及び虚部の個別検出、統計処理(中央値算出)が行われ、各段階での解析結果はパソコン画面上に表示される。また最終的な結果は、温度及び直流磁場の情報と共にパソコン画面上に表示される。温度に関する情報をPC上に表示することによって、交流磁化率の温度変化を評価でき、また、超伝導磁石によって外部直流磁場を発生させる場合は、その磁場の値を取り込むことにより、ある一定温度下での磁場応答も追跡できる。
【0028】
A/D変換器は、耐ノイズ性の高い音響用途に用いられているものが適している。このA/D変換器は、20Hz〜20kHzの可聴域周波数に対して、少なくとも40kHzのサンプリングレートでサンプリングし、かつ少なくとも16ビットで量子化する高ビット・高サンプリングレートのものが効果的である。なお、この段階で、A/D変換器のデジタル出力信号は、一度波形フォームに変換することにより、パソコン画面上での目視が可能となる。
【0029】
位相調整においては、A/D変換された参照電圧信号と検出信号の間の時間的なずれを最適な状態に修正する。次段の複素高速フーリエ変換におけるスペルトル解析の結果より、各高調波成分に対して交流磁場に追随する成分(in-phase: 実部)と90度位相がずれたエネルギー損失を表す成分(out-of-phase: 虚部)を個別に検出するが、参照電圧信号に対する検出信号の位相のずれの補正を間違えると、実部(in-phase)と虚部( out-of-phase)の分離を誤ることになる。そこで、標準試料(通常、虚部に信号を持たない試料が選ばれる)を用いて得られた位相シフトに関する校正データを基に、in-phase とout-of-phaseの成分の最適な分離が達成される。上記の校正データは装置によって変化するので、装置および実験環境ごとの校正データが必要となる。
【0030】
最近では、物理測定の可変パラメーターとして温度・磁場と共に圧力が注目されている。圧力発生装置を物性測定装置に挿入できるように設計することで、極低温・高磁場・高圧力という多重極限環境下の測定が可能になりつつある。しかし、圧力セルを装置に入れ、交流磁化率を測定する場合には、巨大な渦電流が発生し、スペクトル解析後の算出値の足し引きによる単純な補正ではなく、信号解析の段階(フーリエ変換の前段階)での補正が必要となる。このような、高圧力下での交流磁化率測定の需要は高まりつつあるが、圧力セルの仕様に応じた渦電流の寄与を補正できるようなシステムはこれまで無かった。本発明に基づく解析システムによって、このような渦電流の補正を頻繁に必要とする実験研究の展開が可能となる。
【0031】
複素高速フーリエ変換は、前段で位相調整された信号に対して複素高速フーリエ変換する。各高調波成分の検出と、その実数部分及び虚数部分の検出が同時に行われる。
【0032】
高調波解析では、前段の複素高速フーリエ変換によって算出された各高調波成分の実効値を個別に抽出し、emu単位系における絶対値化を図る。
【0033】
図3は、高調波解析を説明する図である。図3(A)は、f=10 Hzの検出信号の1サイクルを「1つの波」として矢印で示している。図3(B)は、f=10 Hzの基本波(第一高調波)1f、第二高調波2f、第三高調波3fを示している。図の横軸は、周波数(f)を、縦軸は、フーリエ変換によって算出された各周波数における(たとえば、実数部分の)交流電圧の実効値(V)を表している。高調波解析の過程では、これら高調波信号を、バンドパスフィルタを用いて個別に抽出する。
【0034】
高次の高調波信号は磁性不純物によっては出現しない、本質的な磁気情報であり、第一高調波だけでは特定しきれない磁気異常の性質を特定することができる。高次の高調波信号は磁性材料の特性を判定し、新しい機能性を評価するうえで非常に有力なプローブである。例えば、常磁性体の場合は、高次の高調波は出現せず、鉄のような強磁性体ではすべての高次の高調波が出現する。一方、グラス的な磁気異常を示す物質では第二高調波2fは現れず、第三高調波3fが現れることになる。このように、高次の高調波成分は不純物の寄与に左右されず、磁性体材料の特性の本質を観測できる有力なプローブである。
【0035】
図2における統計処理では、上記のようにして抽出された各高調波成分の実効値に対して、統計処理して、中央値を算出する。ノイズに埋もれるかどうかの微弱信号に統計処理を施すことで、磁気シールドが不備な状況でもSQUIDを用いた磁気測定を実行可能となる。非常に大きく標準値よりもずれた測定点が存在する場合、その効果は平均値に露骨に反映されるので、個体数を大きくしても、平均値の評価はいつも望ましい結果を導くとは限らない。これに対して、中央値算出において、突発的なずれを過大評価せず、個体数Nが多ければ多いほど最適値を検出する確率が高くなる。
【0036】
図4は、統計処理を説明する図である。統計処理は、複数波(周期)の測定(周期数n>20)を、複数回行い、その実効値に対して中央値を算出する(個体数N>200)。悪条件での測定には往々に突発的な巨大なノイズ混入が起こり得るので、同じ測定を複数回、中央値算出の効果を高めるには、通常200回程度行い、そのロックイン出力(厳密には参照信号の実効値と検出信号の実効値の積)を中央値算出することで、そのノイズ混入の効果を軽減することができる。図4(A)は、検出信号の1サイクルを「1つの波」として矢印で示している。図4(B)は、波の個数(サイクル数)nを上げると、精度(S/N)が向上することを示している。図4(C)は、複数回(2回を例示)の測定例を示し、図4(D)は、FFT後のロックイン出力値の統計処理した結果の中央値を、平均値と共に示している。この統計処理により中央値を求める処理は、突発的なノイズの混入に効果的であり、装置の性能を最大限に引き出すことができる。
【0037】
このように、図2に示した信号処理は、参照信号に対する検出信号の位相を調整したあとに、検出信号と参照信号を乗算させずに、検出信号のみをそのまま複素フーリエ変換する。この場合には、基本波抽出なしの複素フーリエ変換によって高次の高調波成分も一度に抽出でき、実部・虚部の同時検出が可能となる。位相調整は標準データをもとに行われる。検出精度は10-6〜10-7 emuであり、基本波抽出の効能はここでは発揮されていない。図2のシステムは、後述する図5のシステムに比べ測定感度は下回るものの、作業内容が簡単でそれによって解析が非常に短時間で修了し、通常のほとんどの測定はこのシステムで十分な成果が収められる。
【0038】
図5は、図2に例示した例とは異なる信号処理を説明する図であり、図2のシステムにおいて第一高調波の実数成分さえ、高精度に検出できない場合に採用される。図2と同様に、センサコントローラからの出力及び交流電源からの参照電圧信号が、オーバーサンプリング機能をもつA/D変換器に入力され、そして、A/D変換器のデジタル出力信号を、波形フォームに変換することにより、パソコン画面上での目視が可能となる。
【0039】
SQUIDセンサコントローラからの検出信号が大きなときには、図2に示すように、参照電圧信号に対する検出信号の時間的なずれを最適な状態に修正し、すぐに複素高速フーリエ変換を行うことができるが、検出信号が微弱なときには、図5に示すように、高速フーリエ変換FFTの前段に(多段階の)基本波抽出によって本質的に内在する周波数成分を個別に分離し抽出する必要がある。
【0040】
多段階基本波抽出とは、順次、主要な周波数の波を実際の信号波形の中から抜き出す作業のことである。通常、第一高調波成分は、入力信号から初めの基本波抽出作業で抽出できる。次に、元の入力信号から、先ほどの第一基本波成分を差し引いたものを計算し、その信号に対して第二基本波抽出を行う。このようなことを多段階に渡って繰り返すことにより各高調波を順次抽出する。電源ノイズが抽出高次基本波に勝った段階で、その後の基本波抽出は実質的に意味を失う。図5のシステムでは、実質的に高調波解析の作業は、高速フーリエ変換FFTの前過程の基本波抽出のところで、基本波(第一高調波、第二高調波等)を順次多段階に渡って解析して抽出するところから始まっている。
【0041】
このように、図2の方法が採用できるときのように大きな高調波信号が出ている場合には、位相調整後、単純にスペクトル解析をして高調波の評価を行うことができるが、図5の方法を採用せざるをえないようなノイズに埋もれるかどうかの信号を検出する際には、各高調波信号の存在をあらかじめ確認し、また、解析したい特定の信号をそれぞれノイズ信号と切り離して抽出しておく必要があり、それらのスペクトル解析することにより、解析精度を格段に高めることが可能となる。このように、超微小磁気信号検出の場合においても、(音響用)A/D変換器の使用に加えて、多段階基本波抽出によるノイズ信号の除去を行うことで、周波数領域を従来の1.5kHz(実際に信用できるのは1kHz)を上回る20kHz超の領域に拡大することができ、同時に高次の高調波解析にまで作業内容を拡大できる。
【0042】
たとえば、同じ周波数で90度位相のずれた二つの波が存在し、その実効値の比が100:1だったとする。基本波抽出作業はこのような大きさの大きく異なる同周波数の波形を分離抽出するのは非常に困難である。よって、微弱信号検出作業に基本波抽出を採用する場合には、実数成分の通常2桁落ちの強度しか持たない虚数成分を無視せざるを得ない。しかし、基本波抽出は周波数の異なるものについては実効値の比が隔絶していても非常に高確度の分離抽出を行うため、高次の高調波成分の実部の検出は可能である。この場合には、交流磁化率の虚数成分を無視するわけであるから、実部の信号を高精度に検出するための位相調整、つまり、対象となる基本波成分とそれと同周波数をもつ参照電圧信号(高次高調波の場合には、プログラム上で仮想参照信号を作る必要がある)が同位相になるようにと位相調整をする。
【0043】
位相調整された信号は、参照電圧信号と乗算され、フーリエ変換処理される。この手法は、対象波形の抽出周波数があらかじめ分かっているときに威力を発揮する。ここで参照電圧信号reference の周波数をfrefHzの正弦波、検出信号Signal の周波数をfsHzと仮定する。これら2つの信号が乗算された際の出力Vは、以下の式(3)で表される。
【0044】
【数1】

【0045】
つまり、二つの周波数の差と和の周波数に分かれることを示している。ここで二つのシグナルの周波数が同じである場合、周期0のDC成分とf (=fref =fs)の2倍の成分が残ることになる。
【0046】
【数2】

【0047】
この式(4)の内、DC成分は参照電圧信号の実効値と検出信号の実効値の積を表しており、この成分を取り出せば良い。通常のロックインアンプであれば、このDC成分はローパスフィルタを用いて、周波数にある幅を持たせて取り出されるが、本発明では乗算波形を高速フーリエ変換FFT処理し、厳密なDC成分を抽出している。このFFT処理の過程で、パワースペクトルを確認することによって、最適な位相調整が行われたかを明瞭に判断できる。つまり、DCと2fの周波数成分以外にノイズレベルより大きなスペクトル信号があれば、位相調整に検討の余地が残されていることになる(経験的に、位相調整に問題がある場合には1fの周波数成分が残る場合が多い)。
【0048】
このような作業を、すべての基本波に対して実行する。通常は4段目の基本波抽出まで実行することが多い。高速フーリエ変換FFTによって、そのDC成分をノイズ成分と精度よく分けて抽出された各高調波成分は、その後、図2において前述したのと同様に、高調波成分ごとに検出信号の実効値が整理され、emu単位系での絶対値化を行った後に、統計処理される。但し、図5のシステムでは多段階基本波抽出から高調波解析作業が実質的に始まっていることになる。
【0049】
図2及び図5に示すように、統計処理された結果は、温度・直流磁場の情報と共に、パソコン画面上に表示する。信号抽出作業は、ある交流周波数で磁場を揺らしたときに、どのような信号が発生したのかを確認し、ノイズと分けて抽出する作業である。このような信号抽出技術を駆使することによって、1Tの外部磁場下で、安定磁場をつくり、地磁気による磁場変動を解消することにより、精度を、従来のACモードでの10-7emu(DCモードで10-8emu)より2 〜 3桁増しの状態にまで向上させることに成功した。
【0050】
このような信号処理によって、装置任せにせず、あくまでも観測者が信号取り込み・高調波抽出・位相調整・スペクトル解析・統計処理の各段階でリアルタイムに生の実験結果を判断しながら、解析を進めることができ、装置の性能を最大限引き出すことができる。本発明では、結果として、測定精度を高めることができただけでなく、周波数領域を拡大して、多様な磁気測定を実現できた。このように、信号解析技術を確立したため、磁気シールドが脆弱な状態での高精度磁気測定が可能になり、ハード面でコイルシステム設計にも自由度が生じ、高圧力発生装置のような測定にも応用可能となった。また、最新のA/D変換器を使用でき、その製品の品質向上によって、今後の精度向上も期待できる。
【0051】
従来方法では信号抽出作業がブラックボックスになっており、渦電流による交流損失などが原因となって起こる位相シフトなどの不確定作業を検証できず、ノイズと同程度の磁気信号を検出することを安易にあきらめざるを得ないが、本発明の方法では実際の磁気信号の交流波形を自分の目で確認しながら、視覚的に解析作業を行うことができ、さらに中央値算出となる統計処理を施すことで大幅なノイズ軽減を図ることができる。
【0052】
従来の磁気特性測定装置は、位相検波の過程をブラックボックスにし、一見使い勝手をよくしているが、さらなる精度向上という意味ではこの閉鎖性が大きな障害となっていた。本発明によれば、A/D変換器を最新機種のものに随時更新でき、さらに位相検波作業をオープンにし、微小磁気信号の検出の可能性を大幅に高めることを可能にしている。これは、システムを固定化せず、予算に応じて、ユーザーの希望にそった形式を提供することを可能にする。たとえば、精度を要求しないユーザーには、標準的な位相検波システムを提供し、非常に高精度が要求される場合には、多段階処理による高精度位相検波システムを提供することができる。従来の普及装置に対応した形のSQUID信号処理技術のみの提供という形式もあれば、簡易冷凍機とセットにしたタイプの提供方式もある。
【実施例1】
【0053】
図6は、検出シグナルをパソコンに入力する際に用いた従来のロックインアンプと、本発明が使用するA/D変換器の性能比較図である。図6(A)はロックインアンプに参照電圧信号の大きさが0.05Vrmsを入力したときのグラフを、また(B)は2Vrmsを入力したときのグラフをそれぞれ示している。ここで、図6(A)(B)のグラフは実験結果を25倍に増幅したデータが示されている。また、図6(C)は理想図であり、読み込み回数250回毎に交流信号の振幅を0.0001Vrmsずつ上昇させた場合の理想的な変化を示している。図6(D)は、データ収録(DAQ:Data Acquisition)のためにA/D変換器を用い、大きさが0.05Vrmsの参照電圧信号を入力したときのA/D変換器の出力(ロックイン出力)のグラフを示している。図6(D)の解析では、参照電圧信号と検出信号を乗算させた(図5参照)後に、高速フーリエ変換を行ない、DC成分のみを抽出している。
【0054】
すべてのグラフで縦軸は位相検波後のロックイン出力(参照電圧信号の実効値と検出信号の実効値の積)を表しており、横軸が読み込み回数を表している。前述したように読み込み回数が250回毎に参照電圧信号は1×10−4Vrms上昇させている。ロックインアンプでは参照電圧信号が2Vrms、0.05Vrms共に、シグナルが微小過ぎて検出できないが、A/D変換器を使用することによって参照電圧信号が0.05Vrmsからでもシグナルを検出することができている。
【0055】
上述したA/D変換器としては、音響用A/D変換器を用いるのが望ましい。音響用A/D変換器とは、可聴域(20Hz〜20kHz)で効果的な変換器である。さらに、オーバーサンプリング形の音響用A/D変換器が望ましい。オーバーサンプリングとは、サンプリング周波数の、例えば128倍の周波数でサンプリングすることであり、後にダウンサンプリングを行う。これによって、耐ノイズ性が高まる。オーバーサンプリング形 A/D変換器は、アナログ入力を、アナログフィルタでフィルタした後に、オーバーサンプリングを施すAD 変換を行い、その出力を、さらにデジタルフィルタでフィルタして、その出力を利用する、ADコンバータである。A/D変換器の出力は、マイコンなどのコンピュータに取り込む場合は、AD変換後のデジタルフィルタは、コンピュータによって実行できるから、デジタルフィルタのハードウェアが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】SQUIDを用いた本発明の磁気特性測定システムの全体図である。
【図2】図1に例示した磁気特性測定システムのPC内で行われる信号処理を説明する図であり、ピックアップコイルで検出した電気信号の流れを示している。
【図3】高調波解析を説明する図である。
【図4】統計処理を説明する図である。
【図5】図2に例示した例とは異なる信号処理を説明する図である。
【図6】検出シグナルをパソコンに入力する際に用いた従来のロックインアンプと、本発明が使用するA/D変換器の性能比較図である。
【図7】従来公知のSQUID回路構成を示す図である。
【図8】従来公知の磁気測定装置の3つの異なるシステムを説明する図である。
【図9】磁気測定装置を食品検査装置に応用した従来公知の例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導ピックアップコイルの近辺に位置する測定対象試料の磁化を電気信号として検出する超伝導量子干渉素子SQUID、及び前記超伝導ピックアップコイルを囲んで交流磁界を発生するために交流電源に接続された交流磁界発生用のコイルを備えて、超伝導量子干渉素子SQUIDを用いて測定対象試料の磁気特性を測定する磁気特性測定方法において、
前記超伝導量子干渉素子SQUIDからの交流信号形式の入力信号を、可聴域周波数でデジタル信号集録を行うA/D変換器を用いて採取し、
前記A/D変換器により変換されたデジタル信号を、参照電圧信号に対して時間的なずれを最適な状態に修正する位相調整を行い、
この位相調整された信号に対してフーリエ変換処理を行って、磁気特性として、各高調波成分の検出を行う、
ことから成る磁気特性測定方法。
【請求項2】
超伝導ピックアップコイルの近辺に位置する測定対象試料の磁化を電気信号として検出する超伝導量子干渉素子SQUID、及び前記超伝導ピックアップコイルを囲んで交流磁界を発生するために交流電源に接続された交流磁界発生用のコイルを備えて、超伝導量子干渉素子SQUIDを用いて測定対象試料の磁気特性を測定する磁気特性測定方法において、
前記超伝導量子干渉素子SQUIDからの交流信号形式の入力信号を、可聴域周波数でデジタル信号集録を行うA/D変換器を用いて採取し、
前記A/D変換器により変換されたデジタル信号を、多段階に基本波抽出処理をすることで、高調波成分を順次各基本波信号として抽出し、
対象となる各基本波信号と同周波数をもつ各参照信号が同位相になるように各基本波信号の位相調整をし、
この位相調整された各基本波信号を、各参照信号と乗算し、それぞれの積を表すDC成分を取り出し、
この取り出したDC成分に対してフーリエ変換処理して、ノイズ成分と分けて各高調波成分を磁気特性として抽出する、
ことから成る磁気特性測定方法。
【請求項3】
前記フーリエ変換により算出された各高調波成分の実効値を個別に抽出して、絶対値化を図る高調波解析を行う請求項1又は2に記載の磁気特性測定方法。
【請求項4】
前記抽出された各高調波成分の実効値に対して、同一条件の測定を複数回行って、統計処理して、その中央値を算出する請求項3に記載の磁気特性測定方法。
【請求項5】
前記A/D変換器は、アナログフィルタによるフィルタリングの後、オーバーサンプリングによるA/D変換を行い、その後、デジタルフィルタによるフィルタリングによって量子化ノイズを排除するデジタル信号集録器であり、20Hz〜20kHzの可聴域周波数に対して、少なくとも40KHzのサンプリングレートでサンプリングし、かつ少なくとも16ビットで量子化するものである請求項1又は2に記載の磁気特性測定方法。
【請求項6】
超伝導ピックアップコイルの近辺に位置する測定対象試料の磁化を電気信号として検出する超伝導量子干渉素子SQUID、及び前記超伝導ピックアップコイルを囲んで交流磁界を発生するために交流電源に接続された交流磁界発生用のコイルを備えて、超伝導量子干渉素子SQUIDを用いて測定対象試料の磁気特性を測定する磁気特性測定システムにおいて、
前記超伝導量子干渉素子SQUIDからの交流信号形式の入力信号を、可聴域周波数でデジタル信号集録を行うA/D変換器を用いて採取し、
前記A/D変換器により変換されたデジタル信号を、参照電圧信号に対して時間的なずれを最適な状態に修正する位相調整を行い、
この位相調整された信号に対してフーリエ変換処理を行って、磁気特性として、各高調波成分の検出を行う、
ことから成る磁気特性測定システム。
【請求項7】
超伝導ピックアップコイルの近辺に位置する測定対象試料の磁化を電気信号として検出する超伝導量子干渉素子SQUID、及び前記超伝導ピックアップコイルを囲んで交流磁界を発生するために交流電源に接続された交流磁界発生用のコイルを備えて、超伝導量子干渉素子SQUIDを用いて測定対象試料の磁気特性を測定する磁気特性測定システムにおいて、
前記超伝導量子干渉素子SQUIDからの交流信号形式の入力信号を、可聴域周波数でデジタル信号集録を行うA/D変換器を用いて採取し、
前記A/D変換器により変換されたデジタル信号を、多段階に基本波抽出処理をすることで、高調波成分を順次各基本波信号として抽出し、
対象となる各基本波信号と同周波数をもつ各参照信号が同位相になるように各基本波信号の位相調整をし、
この位相調整された各基本波信号を、各参照信号と乗算し、それぞれの積を表すDC成分を取り出し、
この取り出したDC成分に対してフーリエ変換処理して、ノイズ成分と分けて各高調波成分を磁気特性として抽出する、
ことから成る磁気特性測定システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−82719(P2008−82719A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259977(P2006−259977)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年3月27日 日本物理学会の「日本物理学会講演概要集 第61巻 第1号 第3分冊 第61回年次大会」に発表
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【Fターム(参考)】