磁気記録再生ヘッド、磁気ディスク、およびそれらの製造方法
【課題】 耐摩耗性および耐腐食性に優れた二重保護層を備えた磁気ディスクまたは磁気記録再生ヘッドおよびそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】 磁気ディスクまたは磁気記録再生ヘッドの清浄化された表面に、アルミニウム酸化窒化物、チタンアルミニウム合金酸化窒化物、シリコンアルミニウム合金酸化窒化物またはクロムアルミニウム合金酸化窒化物等の酸化窒化物からなる密着性向上のための下地層を形成し、その上にDLC層を形成する。
【解決手段】 磁気ディスクまたは磁気記録再生ヘッドの清浄化された表面に、アルミニウム酸化窒化物、チタンアルミニウム合金酸化窒化物、シリコンアルミニウム合金酸化窒化物またはクロムアルミニウム合金酸化窒化物等の酸化窒化物からなる密着性向上のための下地層を形成し、その上にDLC層を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下地層とDLC(diamond-like carbon)層とからなる2重保護層を備えた磁気記録再生ヘッド、磁気ディスク、およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ(HDD)では、薄膜磁気リード/ライトヘッド(スライダ)が用いられ、これにより磁気ディスクからのデータの読み取りや磁気ディスクへのデータの記録を行う。このスライダは、予めパターニングされたエアベアリング面(ABS)を有しており、ヘッド・ジンバル・アセンブリ(HGA)に実装される。磁気ディスクはスピンドルモータによって高速で回転されるので、流体力学的な圧力がスライダのABSとディスク表面との間に空気の流れを生ずる。この空気の流れ(エアベアリング層)によって、スライダは、文字通りディスク表面の上方のエアベアリング層の上に浮上する。この浮上高さをフライハイトという。
【0003】
HDDストレージシステムにおける超高密度記録を実現させるために、フライハイトを減少させることが主要なアプローチの一つとなってきている。例えば、市販されている160ギガ・バイト容量のHDDでは、フライハイトは約10nmである。このような、高速に回転するディスクと、そのディスク上を浮上している記録再生ヘッドとの間に僅かな空間を常に維持することは困難であり、ディスク表面とヘッドとの一時的な接触は避けられない。このような接触が起きると、ヘッドおよびディスクの損傷を招き、ディスクに記録された情報を喪失する可能性がある。そこで、損傷を最小限に抑えるために、ヘッドおよびディスクの表面にダイヤモンドライクカーボン(DLC;diamond-like carbon)の薄膜コーティングを施すことが考えられる。このDLCは、様々な成分によってヘッド内の磁性物質の腐食を防ぐ作用をも有するものである。これらの作用を考慮すると、DLCの特質として、硬度が高く緻密で、膜厚が非常に薄いことが要求される。この膜厚は、割り当てられたスペースを使い切ることなく全フライハイト必要条件を満たすような薄さでなければならない。一般に、従来から2〜3nm程度のDLCコーティングが広く用いられている。
【0004】
従来からDLCコーティングの膜厚は5nm以上であったが、この膜厚では高い内部応力がかかるため、ヘッドの基板材料との密着不良が生じる共に、その他の基板との密着不良も生じてしまう。そこで、高い内部応力と熱応力の対策として、下地層が必要となる。例えば、刃物やドリルなどの工具に適用する場合、DLCの膜厚はミクロン単位の範囲内であるが、作業温度は数百°Cまで上がるため、下地層の熱膨張係数(CTE;coefficient of thermo expanson)も重要な要素となってくる。このような理由から、特許文献1、2、3には、下地層をSi、SiOx、SiC、SiNxによって構成することが提案されている。また、Itohらによる特許文献4には、DLC層の下側の酸化物基板上にSiNxからなる下地層を配置することが示されている。この他にも、様々な種類の密着下地層が従来技術において提案されている。Isiyamaによる特許文献5には、密着性向上のために水素化窒化炭素からなる炭素系保護層につて開示されている。Hwangらによる特許文献6には、Siからなる下地層について教示されてる。Hwangらによる特許文献7には、DLC層の下の下地層を、Si、Al2O3、SiO2、SiNxによって構成することが開示されている。Davidらによる特許文献8には、DLC層の下の下地層をSiCによって構成することが開示されている。
【0005】
これらの従来技術に加えて、Si以外の物質を含む密着層が他の技術分野においても用いられている。Natsumeらによる特許文献9には、キャパシタ誘電体層と電極との間に形成される地層として、チタンアルミニウム合金酸化窒化物TiAlONを用いることが開示されている。Fuらによる特許文献10には、Al(アルミニウム)電極のためのTiOxNyバリア層について示されている。Johnsonらによる特許文献11には、窒化シリコンと白金との間に配置さた金属酸化物からなる下地層について述べられている。Stevensによる特許文献12には、超規模集積(VLSI)回路における様々な材料領域の一つとして金属酸化窒化物について示されている。Gilleryによる特許文献13には、TiOxNyからなる誘電体膜について示されてる。
【0006】
【特許文献1】特許第2571957号
【特許文献2】特許第2215522号
【特許文献3】特許第3195301号
【特許文献4】米国特許第5227196号
【特許文献5】米国特許出願第2006/0063040号
【特許文献6】米国特許出願第2005/0045468号
【特許文献7】米国特許出願第2002/0134672号
【特許文献8】米国特許第5609948号
【特許文献9】米国特許第7091541号
【特許文献10】米国特許第6238803号
【特許文献11】米国特許第4952904号
【特許文献12】米国特許第5070036号
【特許文献13】米国特許第4861669号
【0007】
磁気ヘッドにおける下地層では、以下の特性が求められる。
【0008】
1.電気的絶縁性。磁気ヘッドでは、磁性金属合金層が電気的に絶縁されていることが不可欠である。磁性金属合金層とは、巨大磁気抵抗効果(GMR;giant magnetoresistance effet)を利用した磁気抵抗再生ヘッドを含む層や、トンネル磁気抵抗効果(TMR;tunneling mgnetoresistive effect)を利用した素子を含む層などを示す。これらの層とその周囲のHD構成部品との間が電気的にショートすると、ヘッド等の素子に損傷を与えてしまう。そのため、保護層、特に下地層は、絶縁性または半絶縁性を備えている必要がある。しかしながら、Siからなる半導体の特性に起因してSi下地層に表面シャント(surface shunting)が生ずると、GMRリーダやTMRリーダに、いわゆるポップコーンノイズと呼ばれるノイズが発生する可能性がある。
【0009】
2.耐腐食性。DLC膜、特に従来のFCVA(filtered cathodic vacuum arc)工程を経て作製されたDLC膜は、ミクロ粒子またはナノ粒子と共に埋め込まれることが多い。これらの粒子は、NiFe、NiCoFeなどの磁気活性層を形成する際に用いられる物質のピンホールや腐食を引き起こす可能性がある。したがって、下地層の耐腐食性は、センサの完全なる性能を維持する観点から非常に重要である。
【0010】
3.耐摩耗性。保護膜は、下地層およびDLC層の合計膜厚が3nm以下のレンジにまで薄膜化される必要があるため、文字通り全ての原子が保護機能を担うことになる。そのため、限られた膜厚の中に、より多くの原子を含めることができれば、耐摩耗性の向上が期待できる。したがって、下地層は、腐食防止の観点から化学的安定性を備えると共に、すぐれた低摩擦特性を得るために高硬度であることが望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記した従来の保護膜は、上記した3つの要求を必ずしも十分に満たすものではなかった。本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、下地層として上述した特性を備えた、従来技術におけるSiおよび関連材料に代わる、新しい種類の材料を提供することにある。
【0012】
より具体的には、本発明の第1の目的は、磁気記録再生ヘッドと磁気記録ディスクとの意図しない接触による悪影響からこれらのヘッドおよびディスクを保護すると共に、ヘッド−ディスク間の耐磨耗性を向上することが可能な磁気記録再生ヘッドおよび磁気記録ディスク、ならびにそれらの製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の第2の目的は、主として保護機能を発揮する被覆層と、主として密着性向上および腐食防止機能を発揮する下地層とからなる二重保護膜を備えた磁気記録再生ヘッドおよび磁気記録ディスクを提供することにある。
【0014】
本発明の第3の目的は、高い固有抵抗による表面シャンティング(surface shunting)の抑制により、磁気記録再生ヘッドのポップコーンノイズ等の信号ノイズを低減することを可能にする二重保護膜を備えた磁気記録再生ヘッドおよび磁気記録ディスクを提供することにある。
【0015】
本発明の第4の目的は、被覆層と、この被覆層との化学的結合が強固で安定している下地層とからなる二重保護膜を備えた磁気記録再生ヘッドおよび磁気記録ディスクを提供することにある。
【0016】
本発明の第5の目的は、上記の目的を達成し得る磁気記録再生ヘッドおよび磁気記録ディスクを製造するための製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の目的は、アルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)またはアルミニウム合金酸化窒化物MezAlOxNy(Me=Ti,Si,Crz)という他に例をみない材料を下地層として採用することにより達成される。下地層としてこれらの材料を形成するには、スパッタリング、プラズマ雰囲気イオンインプランテーション(PIII;plasma immersion ion implantatio)、プラズマ雰囲気イオンインプランテーション成膜(PIIID;plasma immersion ion iplantation deposition)、プラズマエンハンストCVD(PECDVD)、反応性パルスレザ成膜(PLD)等の方法が用いられる。
【0018】
上記したアルミニウム酸化窒化物やアルミニウム合金酸化窒化物は、DLCとの密着性が良好なカーバイド形成材料である。さらに、これらの材料は、磁気記録再生ヘッドで用いられる基板(AlTiC,Al2O3,NiFe,NiFeCo等)や、半導体分野で広く用いられる他の種々の材料(Ti,Cr,Taおよびこれらに匹敵する性質の他の材料)との密着性も良好である。
【0019】
アルミニウム酸化窒化物はまた、安定性や化学的不活性において優れ、しかも、酸素および窒素の含有率を変えることによって物理・化学的性質(応力、屈折率、比重等)を容易に調整可能な材料である。例えば、アルミニウム酸化窒化物の硬度は、AlNの12[GPa]からAl2O3の20[GPa]まで調整可能である。Al23O27N5の硬度は約18[GPa]でる。また、保護膜の最も重要な機能の一つとして、耐腐食性がある。そして、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムは、シリコンやアモルファスシリコンに比べて、安定性および耐腐食性が高い。
【0020】
チタン、シリコンおよびクロムをアルミニウム酸化窒化物に導入すると(TizAlOxNySizAlOxNy,CrzAlOxNy)、特に高い硬度が得られる。例えば、TiAlNの硬度は、AlNよりも50%も高い。さらに、アルミニウム酸化窒化物にチタンやクロムを導入すると、DLCとの間のTi−C結合やCr−C結合によってDLC層との結合強度が高まり、DLC膜厚との密着性が向上する。チタン、シリコンおよびクロムは、ダイヤモンド粒子の結合材料として広く用いられてきた(例えば、米国特許6,915,796号)。一方、チタン、シリコンおよびクロムを導入したアルミニウム酸化窒化物は、その良好な密着性により、磁気ヘッドの基板材料(AlTiC,Al2O3,NiFe,NiFeCo等)に対する優れた密着層として利用可能である。
【0021】
アルミニウム酸化窒化物にTiやCrを添加すると、強いTi−C結合やCr−C結合により、DLC被覆層へのアルミニウム酸化窒化物の密着性が高まる。一方、下地層中の金属元素は、ヘッドスライダやディスクにおける基板材料(AlTiC,Al2O3,NiFe,NiFeCo等)への付着性が高い。。
【0022】
AlOxNy,TizAlOxNy,SizAlOxNy,CrzAlOxNyからなる下地層は、アゴン/酸素/窒素ガス雰囲気中に置いた金属、金属酸化物または金属窒化物のターゲットを用いて反応性スパッタリングを行うか、あるいは、上記ターゲットのスパッタリングにより形成されたスパッタ膜をアルゴン/酸素プラズマおよびアルゴン/窒素プラズマで処理することによって得られる。これらのプラズマは、例えば、イオンビームによるプラズマ生成法、容量結合プラズマ(capacitively coupled plasma;CCP)によるプラズマ生成法、電子サイクロトン共鳴(electron cyclotron resonance;ECR)によるプラズマ生成法、誘導結合プラズマ(iductively coupled plasma;ICP)によるプラズマ生成法等の様々な方法によって生成可能ある。
【0023】
AlOxNy,TizAlOxNy,SizAlOxNy,CrzAlOxNyからなる下地層の構成例および形成方法の実施例を示すが、各実施例では、約133×10-6Pa(=10-6Torr)以下の真空度にまでポンプダウンが可能な真空成膜チャンバを用いる。例えば、自動調整RFパワー供給装置によってパワーが供給されるイオン源(例えば、アルゴンイオンを生成するイオン源)の照準をターゲットに合わせる。スパッタされたターゲット材料は、プルーム(plume)を通って成膜対象基板(磁気記録再生ヘッド基板または磁気ディスク基板上に堆積する。成膜の均一性をよくするために、これらの成膜対象基板を連続的に回転させる。アルゴン、酸素および窒素ガスをガスラインを介してチャンバ内、またはイオン源へと導入する。
【0024】
通常、酸素ガスは、窒素ガスよりも反応性が高く、かつ、酸素ガスは窒素ガスよりも原子に分解しやすい。これらの事実は、適切な組成を有する下地層(AlOxNy膜,TizAlOxN膜,SizAlOxNy膜,CrzAlOxNy膜)を得るために成膜システムのガスフローやガス雰囲気を制御する上で大変重要なことである。
【0025】
参考および比較のために、磁気記録再生ヘッドの製造において用いられる様々な材料に関するいくつかの関連する機械的・電気的性質を、一覧形式で図7に示しておく。
【0026】
本発明の目的は、以下に述べる各手段や各方法により達成される。すなわち、次の通りである。
【0027】
本発明の第1の磁気記録再生ヘッドは、記録再生ヘッド部と、記録再生ヘッド部上に設けられた2重保護層とを備え、2重保護層が、記録再生ヘッド部における清浄化された基体表面にアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)からなる層として形成された密着性向上のための下地層と、下地層の上に形成されたDLC(diamond-like carbon)からなる外側層とを含むようしたものである。
【0028】
本発明の第2の磁気記録再生ヘッドは、記録再生ヘッド部と、記録再生ヘッド部上に設けられた2重保護層とを備え、2重保護層が、記録再生ヘッド部における清浄化された基体表面にアルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)からなる層(Mezは、相対原子%がzである合金元素)として形成された密着性向上のための下地層と、下地層の上に形成されたDLCからなる外側層とを含むようにしたものである。
【0029】
本発明の第1の磁気ディスクは、磁気ディスク基板と、磁気ディスク基板上に設けられた表面保護用の2重保護層とを備え、2重保護層が、磁気ディスク基板上にアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)からなる層として形成された密着性向上のための下地層と、下地層の上に形成されたDLCからなる被覆層とを含むようにしたものである。
【0030】
本発明の第2の磁気ディスクは、磁気ディスク基板と、磁気ディスク基板上に設けられた表面保護用の2重保護層とを備え、2重保護層が、磁気ディスク基板上にアルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)からなる層(Mezは、相対原子%がzである合金元素)として形成された密着性向上のための下地層と、下地層の上に形成されたDLCからなる被覆層とを含むようにしたものである。
【0031】
本発明の磁気記録再生ヘッドおよび磁気ディスクでは、下地層を構成するアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)におけるxが0ないし1.5であり、yが0ないし1であるようにしてもよい。但し、xおよびyは、その下地層の膜厚によって変化するので、適宜設定可能である。下地層は、5nm未満、より好ましくは、2nm未満の膜厚に形成するのが好ましい。
【0032】
本発明の第2の磁気記録再生ヘッドおよび第2の磁気ディスクでは、アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2z、yが0ないし1+z、zがないし10であるようにするのが好ましい。合金元素Meとしては、例えば、チタン、シリコンまたは、クロムがあげられる。xおよびyは、その下地層の膜厚によって変化するので、適宜設定可能である。下地層は、5nm未満、より好ましくは、2nm未満の膜厚に形成するのが好ましい。
【0033】
本発明の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法は、磁気ディスク基板または一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドを用意するステップと、磁気ディスク基板または一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドのしかるべき表面を清浄化するステップと、上記の表面にアルミニウム(Al)、チタンアルミニウム(TiAl)、シリコンアルミニウム(SiAl)、またはクロムアルミニウム(CrAl)の各酸化窒化物からなる密着性向上のための下地層を形成するステップと、下地層の上にDLC層を形成するステップとを含むようにしたものである。
【0034】
本発明の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法では、上記下地層の形成ステップが、スパッタリングターゲットと、所定のエネルギーで反応性イオンビームを出射しイオンを前記スパッタリングターゲットに導く装置と、種々のガスを所定の流量レートで噴射し前記真空成膜チャンバ内で所望の相対濃度に保つ装置とを備えた真空成膜チャンバを用意するステップと、磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドを前記真空成膜チャンバ内の前記保持部に装着してこれを回転させるステップと、反応性イオンビームの照準を前記スパッタリングターゲットに合わせるステップと、反応性イオンビームを前記スパッタリングターゲットに照射しながら、酸素ガス(O2)および窒素ガス(N2)を前記真空成膜チャンバ内に所定の相対濃度比で注入することにより、前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドに前記下地層を形成するステップとを含むようにすることができる。
【0035】
本発明の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法では、上記下地層の形成ステップが、スパッタリングターゲットと、高エネルギーのパルス反応性イオンビームまたはフォーカス走査反応性イオンビームを前記真空成膜チャンバ内に出射しこれを前記スパッタリングターゲットに導く装置と、種々のガスを所定の流量レートで噴射し前記真空成膜チャンバ内で所望の相対濃度に保つ装置とを備えた真空成膜チャンバを用意するステップと、磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドを前記真空成膜チャンバ内の前記保持部に装着してこれを回転させるステップと、パルス反応性イオンビームまたはフォーカス走査反応性イオンビームの照準を前記スパッタリングターゲットに合わせるステップと、パルス反応性イオンビームまたはフォーカス走査反応性イオンビームを前記スパッタリングターゲットに照射しながら、酸素ガスおよび窒素ガスを前記真空成膜チャンバ内に所定の相対濃度比で注入することにより、前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドに前記下地層を形成するステップとを含むようにしてもよい。
【0036】
本発明の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法では、前記下地層の形成ステップが、スパッタリングターゲットと、高エネルギーの電磁放射ビームを前記真空成膜チャンバ内に出射しこれを前記スパッタリングターゲットに導く装置と、種々のガスを所定の流量レートで噴射し前記真空成膜チャンバ内で所望の相対濃度に保つ装置とを備えた真空成膜チャンバを用意するステップと、磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドを前記真空成膜チャンバ内の前記保持部に装着してこれを回転させるステップと、電磁放射ビームの照準を前記スパッタリングターゲットに合わせるステップと、電磁放射ビームを前記スパッタリングターゲットに照射しながら、酸素ガスおよび窒素ガスを前記真空成膜チャンバ内に所定の相対濃度比で注入することにより、前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドに前記下地層を形成するステップとを含むようにしてもよい。
【0037】
本発明の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法では、下地層の形成ステップが、スパッタリングターゲットと、高エネルギーのパルス反応性イオンビームを前記真空成膜チャンバ内に出射しこれを前記スパッタリングターゲットに導く装置と、所定の流量レートで導入した種々の混合ガスのプラズマを生成し前記真空成膜チャンバ内でプラズマを所望の相対濃度に保つ装置とを備えた真空成膜チャンバを用意するステップと、磁気ディスク、一の磁気記録再生ヘッド、または複数の磁気記録再生ヘッドを前記真空成膜チャンバ内の前記保持部に装着してこれを回転させるステップと、パルス反応性イオンビームの照準を前記スパッタリングターゲットに合わせるステップと、アルゴンをキャリアガスとして用いて、酸素ガスと窒素ガスのプラズマを所定の濃度比で生成するステップと、スパッタリングターゲットからスパッタされた材料を前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドに衝突させながら、または衝突させた後に、前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドを前記プラズマに触れさせることにより、前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドに前記下地層を形成するステップとを含むようにしてもよい。
【0038】
本発明の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法では、スパッタリングターゲットとして、アルミニウム、酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムを用い、酸化窒化物がアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy:xは0ないし1.5、yは0ないし1)となるようにすることができる。また、スパッタリングターゲットとして、アルミニウム合金MezAl(Mは合金元素)、またはその酸化物もしくは窒化物を用い、酸化窒化物が、アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)となるようにすることも可能である。
【0039】
本発明の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法では、成膜チャンバ内に導入する酸素ガスおよび窒素ガスを0ないし20sccmの流量レートとし、反応性イオンビームとして、300Vないし1200Vの電圧での加速により生成されるAr+イオンビームを用いようにしてもよい。電磁放射ビームとしては、例えば、高エネルギーの炭酸ガスパルスレーザまたはエキシマレーザにより生成されるレベルビームが利用可能である。
【0040】
本発明の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法では、プラズマとして、イオンビームプラズマ、ECR(electron cyclotron resonance)プラズマ、ICP(inductively couled plasma)、またはCCP(capacitively coupled plasma)等が利用可能である。また、アルゴン/酸素プラズマを適用したのちこれに続いてアルゴン/窒素プラズマを適用するか、あるいは、アルゴン/窒素プラズマを適用したのちこれに続いてアルゴン/酸素プラズマを適用するようにしてもよい。
【0041】
本発明の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態の説明から理解可能であり、好適な実施の形態の説明は、本明細書に添付の図面によって容易に理解可能である。
【発明の効果】
【0042】
本発明の磁気記録再生ヘッドもしくは磁気ディスク、またはそれらの製造方法によれば、二重保護層が、基体表面にアルミニウム酸化窒化物またはアルミニウム合金酸化窒化物からなる層として形成された下地層と、下地層の上に形成されたDLCからなる外側層(被覆層)とを含むようにしたので、耐摩耗性および耐腐食性に優れた磁気記録再生ヘッドや磁気ディスクを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明の各実施の形態は、磁気記録再生ヘッドや記録媒体に2層構造の保護薄膜を形成する方法を提供するものである。この保護薄膜は、密着性向上用の下地層と、その上を覆う保護用の固いDLC(diamond-like carbon)被覆層からなる。下地層は、アルミニウム酸化窒化物AlOxNy、TiAlOxNy、SiAlOxNy、CrAlOxNy(より一般的には、MezAOxNy))である。
【0044】
磁気記録分野においては、磁気記録再生ヘッド基板へのDLC層の密着性を向上するための下地層としてアモルファスシリコンが広く用いられている。従来は、ヘッド基板をアルゴンイオン(Ar+)ビームにより清浄化したのち、イオンビームスパッタリング(IBD)によっアモルファスシリコンからなる下地層を形成し、次にDLC被覆層を形成するようにしている。DLC被覆層の形成には、IBD、プラズマエンハンストCVD(PECVD;plasma enhnced chemical vapor deposition)、または電子サイクロトロン共鳴(electron cyclotron resnance;ECR)法が用いられるが、より好ましくは、フィルタード陰極真空放電(FCVA;iltered cathodic vacuum arc)法が用いられる。
【0045】
本発明の実施の形態は、密着性向上用の下地層として、アルミニウム酸化窒化物やアルミニウム合金酸化窒化物を形成することから、上記のIBDによるアモルファスシリコン成膜法とは異なるものである。本実施の形態では、下地層を、以下に述べるような方法、すなわち、反応性イオンスパッタリング、プラズマエンハンストCVD(PECVD)、反応性パルスレーザ成膜(PLD)、およびその他の方法によって形成する。
【0046】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。ここでは、本実施の形態の特徴が明らかになるように、比較例と比較しつつ実施の形態を説明することにする。
【0047】
まず、図8Aを参照して、従来の方法(比較例)について説明する。この図8Aは、従来の2重保護膜を形成するための連続した3つのステップを流れ図として表したものである。
【0048】
1.エッチング機構としてのアルゴンイオビームまたはアルゴン/酸素イオンビームを用いて基板を予め清浄化する(ステップS101)。
2.反応性イオンビームスパッタリングによってアモルファスシリコンからなる密着下地層を成膜する(ステップS102)。
3.IBD、PECVDまたはFCVAを用いて保護用のDLC被覆層を形成する(ステップS103)。
【0049】
次に、図8Bを参照して、本実施の形態について説明する。この図8Bは、本実施の形態における2重保護膜を形成するための連続した3つのステップを表すものである。
【0050】
1.エッチング機構としてのアルゴンイオビームまたはアルゴン/酸素イオンビームを用いて基板を予め清浄化する(ステップS201)。
2.以下にあげる所定の方法によってアルミニウム酸化窒化物からなる密着下地層を成膜する(ステップS202)。そのような成膜方法としては、アルミニウムの酸化物または窒化物からなるターゲットをアルゴン/酸素/窒素ガス雰囲気中でスパッタリングする反応性イオンスパッタリング、プラズマ雰囲気イオンインプランテーション(PIII;plasma immersion io implantation)、プラズマ雰囲気イオンインプランテーション成膜(PIIID;plasma immesion ion implantation deposition)、プラズマエンハンストCVD(PECVD)、または応性パルスレーザ成膜(PLD)等を用いる。
3.IBD、PECVDまたはFCVAを用いて保護用のDLC被覆層を形成する(ステップS203)。
【0051】
本実施の形態は、上記した本発明のすべての目的に適合するような磁気記録再生ヘッドや磁気記録媒体(例えばディスク)の上に保護膜を形成可能な方法を提供するものである。以下に述べるすべての方法において、保護膜は、アルゴンイオンビームやアルゴン/酸素イオンビームエッチング等の適切な方法によって清浄化されたディスクや記録再生ヘッドの基板表面(例えばエアベアリング面(以下、ABSという。))に2重層として形成される。好ましくは、複数の記録再生ヘッドをホルダに装着し、上記方法によって同時に処理する。
【0052】
図1は、磁気記録再生ヘッドと磁気記録媒体との連係状態を表すものである。但し、この図は、縮尺通りに描いたものではない。この図に示したように、磁気ヘッドスライダ100がサスペンション110に機械的に取り付けられている。磁気ヘッドスライダ(以下、単にスライダという。)100は、アルティック(AlTiC)基板120の上に、シールドされたGMRまたはTMRリーダおよびライタ150を含むヘッド部150と、酸化アルミニウムからなるオーバーコート170とを積層してなるものである。リーダシールド、リーダおよびライタは、主として、環境条件に晒されたときに腐食する可能性のある様々な合金やNi−Fe−Coの合成物を含む磁性材料によって形成されている。スライダ100はまた、下地層180およびDLC被覆層190によって覆われている。
【0053】
一方、磁気ディスク200は、ガラスまたはアルミニウムからなる基板210の上に、下地層220と磁性層230とを積層してなるものである。磁性層230の表面は、本実施の形態の方法によって形成された下地層280およびDLC被覆層290によって保護されている。磁気ディスク200の表面には、スライダ−ヘッド間の摩擦を最小限にするために、潤滑層260が設けられている。本実施の形態は、スライダ100における下地層180と、磁気ディスク200における下地層280の両方を提供するものである。
【0054】
以下、第1〜第7の実施の形態について詳細に説明する。但し、上記したステップS201の基板清浄化工程については説明を省略する。
【0055】
[第1の実施の形態]
図2は、磁気記録再生ヘッドまたは磁気記録ディスク上に本実施の形態の2重保護層を形成することが可能な装置を模式的に表した透視図である。本実施の形態では、反応性イオンスパッタリング法の具体例として、アルミニウム酸化窒化物AlOxNyによって密着性向上層(下地層)を形成する。本実施の形態では、ターボポンプによって約133×10-6Pa(=106Torr)以下の真空度が達成可能な成膜チャンバ10を用いる。この成膜チャンバ10は以下のすべての実施の形態を通じて実質的に共通の要素である。アルゴンイオンビーム等のイオンビーム20を成膜チャンバ10内に導入し、アルミニウムまたは酸化アルミニウムからなるターゲット50に照準を合わせる。このイオンビーム20は、高周波源30によって生成され、約300V〜1200Vの電圧で加速される。ガス導入ポート40から成膜チャンバ10内に、約0〜20sccmの流量レートで酸素および窒素ガスを導入する。このとき、酸素および窒素ガスの流量比は、形成しようとする下地層(AlOxNy)の組成に応じて異なる流量比に設定する。下地層(AlOxNy)の組成は、例えば、xが0ないし1.5、yが0ないし1となるようにする。上記したように、アルゴンイオンビームの照準をターゲット50に合わせると、スパッタされた原子60がホルダ80に装着された成膜対象のデバイス70上に堆積する。デバイス70は、複数の磁気記録再生ヘッドや磁気記録ディスクである。ホルダ80は、成膜の均一化のために回転可能に構成される。第1ないし第7の実施の形態のすべてにおいて、下地層の全厚が5nmを越えないようにすることが本発明の目的に適合する。より好ましくは、下地層の膜厚を2nm未満にするとよい。続いて、この下地層の上に、上記のような方法を用いて、DLC被覆層を形成する。これにより、本発明の目的に適した2重保護層が形成される。
【0056】
本実施の形態における変形例として、図2に示したターゲット50を、アルミニウムや酸化アルミニウムではなく窒化アルミニウム(AlN)としてもよい。高周波源30によって生成されて約300V〜1200Vの電圧で加速されたアルゴンイオンビーム等のイオンビーム20を成膜チャンバ10内に導入し、窒化アルミニウムからなるターゲット50に照準を合わせる。導入ポート40から成膜チャンバ10内に約0〜20sccmの流量レートで酸素および窒素ガスを導入する。このとき、酸素および窒素ガスの流量比は、形成しようとする下地層(AlOxNy)の組成に応じて異なる流量比に設定する。例えば、上記と同様に、xが0ないし1.5、yが0ないし1となるように流量比を設定する。アルゴンイオンビーム20がターゲット50に当たると、スパッタされたアルミニウムおよび窒素の原子60が、酸素および窒素ガスの雰囲気下で、磁気記録再生ヘッドや磁気記録ディスク等のデバイス70上に堆積する。これにより、所望の下地層(AlOxNy)が形成される。上記と同様に、複数の磁気記録再生ヘッドや磁気記録ディスクは、成膜の均一化のために回転可能に構成されたホルダ80に装着する。
【0057】
本変形例においても、x,yは、成膜プロセスの進行に伴って変化し、膜厚の関数である組成を持った下地層(AlOxNy)が形成される。下地層は、その全厚が5nmを越えないようにすることが好ましいが、より好ましくは、2nm未満にするとよい。続いて、この下地層の上に、上記のような方法を用いて、DLC被覆層を形成する。
【0058】
[第2の実施の形態]
図3は、第2の実施の形態に係る2重保護層を形成可能な装置を模式的に表した透視図である。この図で、上記第1の実施の形態(図2)と同一要素には同一符号を付し、適宜、説明を省略する。本実施の形態の第1の具体例では、反応性イオンビームとして、高エネルギーのフォーカス走査アルゴンイオンビーム(high energy scanning,focused Ar+ ion beam)22を用、これをアルミニウムまたはその酸化物もしくは窒化物からなるターゲット50に導く。導入ポート40から成膜チャンバ10内に、約0〜20sccmの流量レートで酸素および窒素ガスを導入する。このとき、酸素および窒素ガスの流量比は、形成しようとする下地層(AlONy)の組成に応じて異なる流量比に設定する。下地層(AlOxNy)の組成は、例えば、x0ないし1.5、yが0ないし1となるようにする。本実施の形態では、フォーカス走査アルゴンイオンビームを用いることにより、ターゲットの位置決めを省くことができると共に、成膜に関連して生ずるヒステリシス作用を取り除くことができる。なお、フォーカス走査アルゴンイオンビームは、T.Nybergらによる米国特許出願2004/0149566A1に詳しく記されている。その他の構成や成膜条件は、上記第1の実施の形態(図2)の場合と同様である。
【0059】
本実施の形態においても、AlOxNyにおけるx,yは、成膜プロセスの進行に伴って変化し、膜厚の関数である組成を持った下地層(AlOxNy)が形成される。下地層は、その全厚が5nmを越えないようにすることが好ましいが、より好ましくは、2nm未満にするとよい。続いて、この下地層の上に、上記のような方法を用いて、DLC被覆層を形成する。これにより、本発明の目的に適した2重保護層が形成される。
【0060】
本実施の形態の第2の具体例では、ターゲット50としてチタンアルミニウム合金TiZAを用いる。これをより一般的に表記すると、MeZAl(但し、Meは適切な合金金属元素)ある。本具体例では、下地層としてチタンアルミニウム合金の酸化窒化物TiZAlOxNyが成される。本具体例では、酸素ガスおよび窒素ガスの導入比率を、xが0ないし1.5+2z、yが0ないし1+z、zが0ないし10となるように設定する。但し、酸素ガスおよび窒素ガスの流量レートは、上記の場合と同様に設定する。x,yは、成膜プロセスの進行に伴い、膜厚と共に変化する。その他は上記第1の具体例と同様である。
【0061】
本実施の形態の第3の具体例では、ターゲット50としてシリコンアルミニウム合金SiZlを用いる。本具体例では、下地層としてシリコンアルミニウム合金の酸化窒化物SiZAlxNyが形成される。本具体例では、酸素ガスおよび窒素ガスの導入比率を、xが0ないし1.5+2z、yが0ないし1+1.3z、zが0ないし10となるように設定する。但し、酸素ガスおよび窒素ガスの流量レートは、上記の場合と同様に設定する。x,yは、成膜プロセスの進行に伴い、膜厚と共に変化する。その他は上記第1の具体例と同様である。
【0062】
本実施の形態の第4の具体例では、ターゲット50としてクロムアルミニウム合金CrZAを用いる。本具体例では、下地層としてクロムアルミニウム合金の酸化窒化物CrZAlOxNが形成される。本具体例では、酸素ガスおよび窒素ガスの導入比率を、xが0ないし1.5+2z、yが0ないし1+1.3z、zが0ないし10となるように設定する。但し、酸素ガスおよび窒素ガスの流量レートは、上記の場合と同様に設定する。x,yは、成膜プロセスの進行に伴い、膜厚と共に変化する。その他は上記第1の具体例と同様である。
【0063】
なお、本実施の形態では、ターゲット50として、アルミニウム合金MeZAlの酸化物まは窒化物を用いてもよい。
【0064】
[第3の実施の形態]
図4は、第3の実施の形態に係る2重保護層を形成可能な装置を模式的に表した透視図である。この図で、上記第1の実施の形態(図2)と同一要素には同一符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0065】
本実施の形態の第1の具体例では、反応性イオンビーム20として、高い瞬間パワーをもつパルスアルゴンイオン源(pulsed Ar+ ion source)から発せられるパルス反応性イオンビーム4を用い、アルミニウムからなるターゲット50に照準を合わせる。導入ポート40から成膜チャンバ10内に、約0〜20sccmの流量レートで酸素および窒素ガスを導入する。このとき、酸素および窒素ガスの流量比は、形成しようとする下地層(AlOxNy)の組成に応じて異なる流量比に設定する。下地層(AlOxNy)の組成は、例えば、xが0ないし1.5、yが0ないし1となるようにする。本実施の形態では、高い瞬間パワーをもつパルスアルゴンイオン源を用いることにより、ターゲットの位置決めを省くことができると共に、成膜に伴って生ずるヒステリシス作用を取り除くことができる。なお、高い瞬間パワーをもつパルスアルゴンイオン源は、V.Kousnetsovらによる米国特許第6,296,742号に詳しく記載されている。本実施の形態においても、x,yは、成膜プロセスの進行に伴って変化し、膜厚の関数である組成を持った下地層(AlOxNy)が形成される。下地層は、その全厚が5nmを越えないようにすることが好ましいが、より好ましくは、2nm未満にするとよい。続いて、この下地層の上に、上記のような方法を用いて、DLC被覆層を形成する。これにより、本発明の目的に適した2重保護層が形成される。その他の構成や成膜条件は、上記第1の実施の形態(図2)の場合と同様である。
【0066】
本実施の形態の第2の具体例では、ターゲット50としてチタンアルミニウム合金TiZAを用いる。本具体例では、下地層としてチタンアルミニウムの酸化窒化物TiZAlOxNyが成される。本具体例では、酸素ガスおよび窒素ガスの導入比率を、xが0ないし1.5+2z、yが0ないし1+z、zが0ないし10となるように設定する。但し、酸素ガスおよび窒素ガスの流量レートは、上記の場合と同様に設定する。x,yは、成膜プロセスの進行に伴い、膜厚と共に変化する。その他は上記第1の具体例と同様である。
【0067】
本実施の形態の第3の具体例では、ターゲット50としてシリコンアルミニウム合金SiZlを用いる。本具体例では、下地層としてシリコンアルミニウムの酸化窒化物SiZAlOxNが形成される。本具体例では、酸素ガスおよび窒素ガスの導入比率を、xが0ないし1.5+2z、yが0ないし1+z、zが0ないし10となるように設定する。但し、酸素ガスおよび窒素ガスの流量レートは、上記の場合と同様に設定する。x,yは、成膜プロセスの進行に伴い、膜厚と共に変化する。その他は上記第1の具体例と同様である。
【0068】
本実施の形態の第4の具体例では、ターゲット50としてクロムアルミニウム合金CrZAを用いる。本具体例では、下地層としてクロムアルミニウムの酸化窒化物CrZAlOxNyが成される。本具体例では、酸素ガスおよび窒素ガスの導入比率を、xが0ないし1.5+2z、yが0ないし1+z、zが0ないし10となるように設定する。但し、酸素ガスおよび窒素ガスの流量レートは、上記の場合と同様に設定する。x,yは、成膜プロセスの進行に伴い、膜厚と共に変化する。その他は上記第1の具体例と同様である。
【0069】
なお、本実施の形態においても、ターゲット50として、アルミニウム合金MeZAlの酸物または窒化物を用いてもよい。
【0070】
[第4の実施の形態]
図5は、第4の実施の形態に係る2重保護層を形成可能な装置を模式的に表した透視図である。この図で、上記第1の実施の形態(図2)と同一要素には同一符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0071】
本実施の形態の第1の具体例では、高エネルギーのパルス電磁放射ビーム(pulsed electromgnetic radiation)25を用い、アルミニウムからなるターゲット50に照準を合わせる。導ポート40から成膜チャンバ10内に、約0〜20sccmの流量レートで酸素および窒素ガスを導入する。このとき、酸素および窒素ガスの流量比は、形成しようとする下地層(AlONy)の組成に応じて異なる流量比に設定する。下地層(AlOxNy)の組成は、例えば、x0ないし1.5、yが0ないし1となるようにする。本実施の形態では、高エネルギーのパルス電磁放射ビームとして、炭酸ガスレーザまたはエキシマレーザを用いることができる。本実施の形態においても、AlOxNyにおけるx,yは、成膜プロセスの進行に伴って変化し、膜厚の関数である組成を持った下地層(AlOxNy)が形成される。下地層は、その全厚が5nmを越えないようにすることが好ましいが、より好ましくは、2nm未満にするとよい。続いて、この下地層の上に、上記のような方法を用いて、DLC被覆層を形成する。これにより、本発明の目的に適した2重保護層が形成される。その他の構成や成膜条件は、上記第1の実施の形態(図2)の場合と同様である。
【0072】
本実施の形態の第2の具体例では、ターゲット50としてチタンアルミニウム合金TiZAを用いる。本具体例では、下地層としてチタンアルミニウム合金の酸化窒化物TiZAlOxNが形成される。本具体例では、酸素ガスおよび窒素ガスの導入比率を、xが0ないし1.5+2z、yが0ないし1+z、zが0ないし10となるように設定する。但し、酸素ガスおよび窒素ガスの流量レートは、上記の場合と同様に設定する。x,yは、成膜プロセスの進行に伴い、膜厚と共に変化する。その他は上記第1の具体例と同様である。
【0073】
本実施の形態の第3の具体例では、ターゲット50としてシリコンアルミニウム合金SiZlを用いる。本具体例では、下地層としてシリコンアルミニウム合金の酸化窒化物SiZAlxNyが形成される。本具体例では、酸素ガスおよび窒素ガスの導入比率を、xが0ないし1.5+2z、yが0ないし1+z、zが0ないし10となるように設定する。但し、酸素ガスおよび窒素ガスの流量レートは、上記の場合と同様に設定する。x,yは、成膜プロセスの進行に伴い、膜厚と共に変化する。その他は上記第1の具体例と同様である。
【0074】
本実施の形態の第4の具体例では、ターゲット50としてクロムアルミニウム合金CrZAを用いる。本具体例では、下地層としてクロムアルミニウム合金の酸化窒化物CrZAlOxNが形成される。本具体例では、酸素ガスおよび窒素ガスの導入比率を、xが0ないし1.5+2z、yが0ないし1+z、zが0ないし10となるように設定する。但し、酸素ガスおよび窒素ガスの流量レートは、上記の場合と同様に設定する。x,yは、成膜プロセスの進行に伴い、膜厚と共に変化する。その他は上記第1の具体例と同様である。
【0075】
なお、本実施の形態においても、ターゲット50として、アルミニウム合金MeZAlの酸物または窒化物を用いてもよい。
【0076】
[第5の実施の形態]
図6は、第5の実施の形態に係る2重保護層を形成可能な装置を模式的に表した透視図である。この図で、上記第1の実施の形態(図2)と同一要素には同一符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0077】
本実施の形態では、アルゴンイオンビーム等のイオンビーム20を成膜チャンバ10内に導入する。このイオンビーム20は、高周波源30によって生成され、約300V〜1200Vの電圧で加速される。このイオンビーム20の照準を、アルミニウム、アルミニウム合金MeAl、またはそれらの酸化物もしくは窒化物からなるターゲット50に合わせる。アルミニウム合金としては、TiZAl、SiZAl、CrZAlが選ばれる。アルゴンイオンビームはタゲット50から原子60を叩き出し、これがホルダ80に装着された成膜対象のデバイス70(複数の磁気記録再生ヘッドや磁気記録ディスク)上に堆積する。なお、使用する反応性ビームは、反応性パルスレーザ(reactive pulsed laser deposition)、反応性パルスイオンビームpulsed reactive ion)、またはフォーカス走査反応性イオンビーム(scanning focused reactie ion beam)であってもよい。
【0078】
デバイス70上にスパッタ膜(AlまたはMezAl)を成膜したのち、これを、成膜チャバ10内に導入したアルゴン/酸素/窒素ガスを基にプラズマ源45が生成したプラズマ90に曝す。なお、アルゴンガスはキャリアガスである。このとき、酸素および窒素ガスの流量比は、形成しようとする下地層(AlOxNyまたはMezAlOxNy)の組成に応じて異なる流比に設定する。ターゲット50がアルミニウムの場合、下地層(AlOxNy)の組成は、例えば、xが0ないし1.5、yが0ないし1となるようにするのが好ましい。本実施の形態においても、x,yは、成膜プロセスの進行に伴って変化し、膜厚の関数である組成を持った下地層(AlOxNyまたはMezAlOxNy)が形成される。下地層は、その全厚が5nmを越えいようにすることが好ましいが、より好ましくは、2nm未満にするとよい。続いて、この下地層の上に、上記のような方法を用いて、DLC被覆層を形成する。これにより、本発明の目的に適した2重保護層が形成される。
【0079】
[第6の実施の形態]
上記第5の実施の形態では、デバイス70上にスパッタ膜を成膜したのち、これをアルゴン/酸素/窒素ガスのプラズマ90に曝すようにしたが、本実施の形態では、アルゴン/酸素/窒素ガスのプラズマ90に曝しながらデバイス70上にスパッタ膜を成膜する。この点を除き、成膜装置の構成や成膜条件(使用ビーム、加速電圧、ターゲット等)は上記第5の実施の形態(図6)と同様なので、適宜、説明を省略する。
【0080】
本実施の形態では、アルゴン/酸素/窒素ガスのプラズマ90の雰囲気中においてスパッタ膜(下地層)がデバイス70上に形成される。なお、アルゴンガスはキャリアガスである。下地層におけるx,yは、成膜プロセスの進行に伴って変化し、膜厚の関数である組成を持った下地層(AlOxNyまたはMezAlOxNy)が形成される。酸素および窒素ガスの流量比は形成しようとする下地層(AlOxNyまたはMezAlOxNy)の組成に応じて異なる流量比設定する。ターゲット50がアルミニウムの場合、下地層(AlOxNy)の組成は、例えば、xが0ないし1.5、yが0ないし1となるようにするのが好ましい。下地層は、その全厚が5nmを越えないようにすることが好ましいが、より好ましくは、2nm未満にするとよい。続いて、この下地層の上に、上記のような方法を用いて、DLC被覆層を形成する。
【0081】
[第7の実施の形態]
上記第5の実施の形態では、デバイス70上にスパッタ膜(下地層)を成膜したのち、これをアルゴン/酸素/窒素ガスのプラズマ90に曝すようにし、上記第6の実施の形態では、アルゴン/酸素/窒素ガスのプラズマ90に曝しながらデバイス70上にスパッタ膜を成膜するようにした。これに対して、本実施の形態では、デバイス70上に成膜したスパッタ膜(AlまたはMezAl)にアルゴン/酸素ガスのプラズマ90を適用したのち、これに続いてアルン/窒素ガスのプラズマ100を適用する。あるいは、デバイス70上に成膜したスパッタ膜(AlまたはMezAl)にアルゴン/窒素ガスのプラズマ100を適用したのち、これに続てアルゴン/酸素ガスのプラズマ90を適用する。すなわち、スパッタ膜(AlまたはMezAl)に対するプラズマ表面処理を、アルゴン/酸素ガスのプラズマによる表面処理の期間と、アルゴン/窒素ガスのプラズマによる表面処理の期間とに分けて、順番に行う。この点を除き、成膜装置の構成や成膜条件(使用ビーム、加速電圧、ターゲット等)は上記第6の実施の形態(図6)と同様なので、適宜、説明を省略する。プラズマは、従来から知られている多くの方法のいずれかを用いて生成可能である。例えば、イオンビームによるプラズマ生成法、容量結合プラズマ(capacitively coupled plasma;CCP)によるプラズマ生成法、電子サイクロロン共鳴(electron cyclotron resonance;ECR)によるプラズマ生成法、誘導結合プラズマinductively coupled plasma;ICP)によるプラズマ生成法等がある。
【0082】
本実施の形態においても、下地層におけるx,yは、成膜プロセスの進行に伴って変化し、膜厚の関数である組成を持った下地層(AlOxNyまたはMezAlOxNy)が形成される。素および窒素ガスの流量比は、形成しようとする下地層(AlOxNy)の組成に応じて異なる流量比に設定する。下地層は、その全厚が5nmを越えないようにすることが好ましいが、より好ましくは、2nm未満にするとよい。続いて、この下地層の上に、上記のような方法を用いて、DLC被覆層を形成する。
【0083】
以上の好適な実施の形態は、あくまで本発明を例示したものであって、本発明はこれらの例に限定されるものではない。以上に示したアルミニウム酸化窒化物またはアルミニウム合金酸化窒化物を含む2重保護層を磁気記録再生ヘッドや磁気記録媒体上に形成するに際しては、本願の特許請求の範囲に記載の範囲内において、その形成方法、プロセス、材料、構造および寸法への様々な修正や変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施の形態における磁気記録再生ヘッドを有するヘッドスライダが本発明の実施の形態における回転する磁気ディスクの上を滑空している状態を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における磁気記録再生ヘッドおよび磁気ディスクに保護膜を成膜するための成膜装置(反応性イオンビーム利用型)の構成を表す模式図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態における磁気記録再生ヘッドおよび磁気ディスクに保護膜を成膜するための成膜装置(フォーカス走査反応性イオンビーム利用型)の構成を表す模式図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態における磁気記録再生ヘッドおよび磁気ディスクに保護膜を成膜するための成膜装置(反応性パルスイオンビーム利用型)の構成を表す模式図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態における磁気記録再生ヘッドおよび磁気ディスクに保護膜を成膜するための成膜装置(反応性パルスレーザ利用型)の構成を表す模式図である。
【図6】本発明の第5ないし第7の実施の形態における磁気記録再生ヘッドおよび磁気ディスクに保護膜を成膜するための成膜装置(プラズマ雰囲気イオンビーム利用型)の構成を表す模式図である。
【図7】保護膜を有する磁気記録再生ヘッドに用いられる種々の材料に関する性質を一覧表形式で示した図である。
【図8A】従来の保護膜形成プロセスを示す流れ図である。
【図8B】本発明の保護膜形成プロセスを示す流れ図である。
【符号の説明】
【0085】
10…成膜チャンバ、20…反応性イオンビーム、22…フォーカス走査イオンビーム、24…パルスイオンビーム、25…パルス電磁放射ビーム、30…高周波源、40…ガス導入ポート、45…プラズマ源、50…ターゲット、60…原子、70…成膜対象デバイス、90…プラズマ、100…磁気ヘッドスライダ、120…基板、150…ヘッド部、180,280…下地層、190,290…DLC層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、下地層とDLC(diamond-like carbon)層とからなる2重保護層を備えた磁気記録再生ヘッド、磁気ディスク、およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ(HDD)では、薄膜磁気リード/ライトヘッド(スライダ)が用いられ、これにより磁気ディスクからのデータの読み取りや磁気ディスクへのデータの記録を行う。このスライダは、予めパターニングされたエアベアリング面(ABS)を有しており、ヘッド・ジンバル・アセンブリ(HGA)に実装される。磁気ディスクはスピンドルモータによって高速で回転されるので、流体力学的な圧力がスライダのABSとディスク表面との間に空気の流れを生ずる。この空気の流れ(エアベアリング層)によって、スライダは、文字通りディスク表面の上方のエアベアリング層の上に浮上する。この浮上高さをフライハイトという。
【0003】
HDDストレージシステムにおける超高密度記録を実現させるために、フライハイトを減少させることが主要なアプローチの一つとなってきている。例えば、市販されている160ギガ・バイト容量のHDDでは、フライハイトは約10nmである。このような、高速に回転するディスクと、そのディスク上を浮上している記録再生ヘッドとの間に僅かな空間を常に維持することは困難であり、ディスク表面とヘッドとの一時的な接触は避けられない。このような接触が起きると、ヘッドおよびディスクの損傷を招き、ディスクに記録された情報を喪失する可能性がある。そこで、損傷を最小限に抑えるために、ヘッドおよびディスクの表面にダイヤモンドライクカーボン(DLC;diamond-like carbon)の薄膜コーティングを施すことが考えられる。このDLCは、様々な成分によってヘッド内の磁性物質の腐食を防ぐ作用をも有するものである。これらの作用を考慮すると、DLCの特質として、硬度が高く緻密で、膜厚が非常に薄いことが要求される。この膜厚は、割り当てられたスペースを使い切ることなく全フライハイト必要条件を満たすような薄さでなければならない。一般に、従来から2〜3nm程度のDLCコーティングが広く用いられている。
【0004】
従来からDLCコーティングの膜厚は5nm以上であったが、この膜厚では高い内部応力がかかるため、ヘッドの基板材料との密着不良が生じる共に、その他の基板との密着不良も生じてしまう。そこで、高い内部応力と熱応力の対策として、下地層が必要となる。例えば、刃物やドリルなどの工具に適用する場合、DLCの膜厚はミクロン単位の範囲内であるが、作業温度は数百°Cまで上がるため、下地層の熱膨張係数(CTE;coefficient of thermo expanson)も重要な要素となってくる。このような理由から、特許文献1、2、3には、下地層をSi、SiOx、SiC、SiNxによって構成することが提案されている。また、Itohらによる特許文献4には、DLC層の下側の酸化物基板上にSiNxからなる下地層を配置することが示されている。この他にも、様々な種類の密着下地層が従来技術において提案されている。Isiyamaによる特許文献5には、密着性向上のために水素化窒化炭素からなる炭素系保護層につて開示されている。Hwangらによる特許文献6には、Siからなる下地層について教示されてる。Hwangらによる特許文献7には、DLC層の下の下地層を、Si、Al2O3、SiO2、SiNxによって構成することが開示されている。Davidらによる特許文献8には、DLC層の下の下地層をSiCによって構成することが開示されている。
【0005】
これらの従来技術に加えて、Si以外の物質を含む密着層が他の技術分野においても用いられている。Natsumeらによる特許文献9には、キャパシタ誘電体層と電極との間に形成される地層として、チタンアルミニウム合金酸化窒化物TiAlONを用いることが開示されている。Fuらによる特許文献10には、Al(アルミニウム)電極のためのTiOxNyバリア層について示されている。Johnsonらによる特許文献11には、窒化シリコンと白金との間に配置さた金属酸化物からなる下地層について述べられている。Stevensによる特許文献12には、超規模集積(VLSI)回路における様々な材料領域の一つとして金属酸化窒化物について示されている。Gilleryによる特許文献13には、TiOxNyからなる誘電体膜について示されてる。
【0006】
【特許文献1】特許第2571957号
【特許文献2】特許第2215522号
【特許文献3】特許第3195301号
【特許文献4】米国特許第5227196号
【特許文献5】米国特許出願第2006/0063040号
【特許文献6】米国特許出願第2005/0045468号
【特許文献7】米国特許出願第2002/0134672号
【特許文献8】米国特許第5609948号
【特許文献9】米国特許第7091541号
【特許文献10】米国特許第6238803号
【特許文献11】米国特許第4952904号
【特許文献12】米国特許第5070036号
【特許文献13】米国特許第4861669号
【0007】
磁気ヘッドにおける下地層では、以下の特性が求められる。
【0008】
1.電気的絶縁性。磁気ヘッドでは、磁性金属合金層が電気的に絶縁されていることが不可欠である。磁性金属合金層とは、巨大磁気抵抗効果(GMR;giant magnetoresistance effet)を利用した磁気抵抗再生ヘッドを含む層や、トンネル磁気抵抗効果(TMR;tunneling mgnetoresistive effect)を利用した素子を含む層などを示す。これらの層とその周囲のHD構成部品との間が電気的にショートすると、ヘッド等の素子に損傷を与えてしまう。そのため、保護層、特に下地層は、絶縁性または半絶縁性を備えている必要がある。しかしながら、Siからなる半導体の特性に起因してSi下地層に表面シャント(surface shunting)が生ずると、GMRリーダやTMRリーダに、いわゆるポップコーンノイズと呼ばれるノイズが発生する可能性がある。
【0009】
2.耐腐食性。DLC膜、特に従来のFCVA(filtered cathodic vacuum arc)工程を経て作製されたDLC膜は、ミクロ粒子またはナノ粒子と共に埋め込まれることが多い。これらの粒子は、NiFe、NiCoFeなどの磁気活性層を形成する際に用いられる物質のピンホールや腐食を引き起こす可能性がある。したがって、下地層の耐腐食性は、センサの完全なる性能を維持する観点から非常に重要である。
【0010】
3.耐摩耗性。保護膜は、下地層およびDLC層の合計膜厚が3nm以下のレンジにまで薄膜化される必要があるため、文字通り全ての原子が保護機能を担うことになる。そのため、限られた膜厚の中に、より多くの原子を含めることができれば、耐摩耗性の向上が期待できる。したがって、下地層は、腐食防止の観点から化学的安定性を備えると共に、すぐれた低摩擦特性を得るために高硬度であることが望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記した従来の保護膜は、上記した3つの要求を必ずしも十分に満たすものではなかった。本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、下地層として上述した特性を備えた、従来技術におけるSiおよび関連材料に代わる、新しい種類の材料を提供することにある。
【0012】
より具体的には、本発明の第1の目的は、磁気記録再生ヘッドと磁気記録ディスクとの意図しない接触による悪影響からこれらのヘッドおよびディスクを保護すると共に、ヘッド−ディスク間の耐磨耗性を向上することが可能な磁気記録再生ヘッドおよび磁気記録ディスク、ならびにそれらの製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の第2の目的は、主として保護機能を発揮する被覆層と、主として密着性向上および腐食防止機能を発揮する下地層とからなる二重保護膜を備えた磁気記録再生ヘッドおよび磁気記録ディスクを提供することにある。
【0014】
本発明の第3の目的は、高い固有抵抗による表面シャンティング(surface shunting)の抑制により、磁気記録再生ヘッドのポップコーンノイズ等の信号ノイズを低減することを可能にする二重保護膜を備えた磁気記録再生ヘッドおよび磁気記録ディスクを提供することにある。
【0015】
本発明の第4の目的は、被覆層と、この被覆層との化学的結合が強固で安定している下地層とからなる二重保護膜を備えた磁気記録再生ヘッドおよび磁気記録ディスクを提供することにある。
【0016】
本発明の第5の目的は、上記の目的を達成し得る磁気記録再生ヘッドおよび磁気記録ディスクを製造するための製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の目的は、アルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)またはアルミニウム合金酸化窒化物MezAlOxNy(Me=Ti,Si,Crz)という他に例をみない材料を下地層として採用することにより達成される。下地層としてこれらの材料を形成するには、スパッタリング、プラズマ雰囲気イオンインプランテーション(PIII;plasma immersion ion implantatio)、プラズマ雰囲気イオンインプランテーション成膜(PIIID;plasma immersion ion iplantation deposition)、プラズマエンハンストCVD(PECDVD)、反応性パルスレザ成膜(PLD)等の方法が用いられる。
【0018】
上記したアルミニウム酸化窒化物やアルミニウム合金酸化窒化物は、DLCとの密着性が良好なカーバイド形成材料である。さらに、これらの材料は、磁気記録再生ヘッドで用いられる基板(AlTiC,Al2O3,NiFe,NiFeCo等)や、半導体分野で広く用いられる他の種々の材料(Ti,Cr,Taおよびこれらに匹敵する性質の他の材料)との密着性も良好である。
【0019】
アルミニウム酸化窒化物はまた、安定性や化学的不活性において優れ、しかも、酸素および窒素の含有率を変えることによって物理・化学的性質(応力、屈折率、比重等)を容易に調整可能な材料である。例えば、アルミニウム酸化窒化物の硬度は、AlNの12[GPa]からAl2O3の20[GPa]まで調整可能である。Al23O27N5の硬度は約18[GPa]でる。また、保護膜の最も重要な機能の一つとして、耐腐食性がある。そして、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムは、シリコンやアモルファスシリコンに比べて、安定性および耐腐食性が高い。
【0020】
チタン、シリコンおよびクロムをアルミニウム酸化窒化物に導入すると(TizAlOxNySizAlOxNy,CrzAlOxNy)、特に高い硬度が得られる。例えば、TiAlNの硬度は、AlNよりも50%も高い。さらに、アルミニウム酸化窒化物にチタンやクロムを導入すると、DLCとの間のTi−C結合やCr−C結合によってDLC層との結合強度が高まり、DLC膜厚との密着性が向上する。チタン、シリコンおよびクロムは、ダイヤモンド粒子の結合材料として広く用いられてきた(例えば、米国特許6,915,796号)。一方、チタン、シリコンおよびクロムを導入したアルミニウム酸化窒化物は、その良好な密着性により、磁気ヘッドの基板材料(AlTiC,Al2O3,NiFe,NiFeCo等)に対する優れた密着層として利用可能である。
【0021】
アルミニウム酸化窒化物にTiやCrを添加すると、強いTi−C結合やCr−C結合により、DLC被覆層へのアルミニウム酸化窒化物の密着性が高まる。一方、下地層中の金属元素は、ヘッドスライダやディスクにおける基板材料(AlTiC,Al2O3,NiFe,NiFeCo等)への付着性が高い。。
【0022】
AlOxNy,TizAlOxNy,SizAlOxNy,CrzAlOxNyからなる下地層は、アゴン/酸素/窒素ガス雰囲気中に置いた金属、金属酸化物または金属窒化物のターゲットを用いて反応性スパッタリングを行うか、あるいは、上記ターゲットのスパッタリングにより形成されたスパッタ膜をアルゴン/酸素プラズマおよびアルゴン/窒素プラズマで処理することによって得られる。これらのプラズマは、例えば、イオンビームによるプラズマ生成法、容量結合プラズマ(capacitively coupled plasma;CCP)によるプラズマ生成法、電子サイクロトン共鳴(electron cyclotron resonance;ECR)によるプラズマ生成法、誘導結合プラズマ(iductively coupled plasma;ICP)によるプラズマ生成法等の様々な方法によって生成可能ある。
【0023】
AlOxNy,TizAlOxNy,SizAlOxNy,CrzAlOxNyからなる下地層の構成例および形成方法の実施例を示すが、各実施例では、約133×10-6Pa(=10-6Torr)以下の真空度にまでポンプダウンが可能な真空成膜チャンバを用いる。例えば、自動調整RFパワー供給装置によってパワーが供給されるイオン源(例えば、アルゴンイオンを生成するイオン源)の照準をターゲットに合わせる。スパッタされたターゲット材料は、プルーム(plume)を通って成膜対象基板(磁気記録再生ヘッド基板または磁気ディスク基板上に堆積する。成膜の均一性をよくするために、これらの成膜対象基板を連続的に回転させる。アルゴン、酸素および窒素ガスをガスラインを介してチャンバ内、またはイオン源へと導入する。
【0024】
通常、酸素ガスは、窒素ガスよりも反応性が高く、かつ、酸素ガスは窒素ガスよりも原子に分解しやすい。これらの事実は、適切な組成を有する下地層(AlOxNy膜,TizAlOxN膜,SizAlOxNy膜,CrzAlOxNy膜)を得るために成膜システムのガスフローやガス雰囲気を制御する上で大変重要なことである。
【0025】
参考および比較のために、磁気記録再生ヘッドの製造において用いられる様々な材料に関するいくつかの関連する機械的・電気的性質を、一覧形式で図7に示しておく。
【0026】
本発明の目的は、以下に述べる各手段や各方法により達成される。すなわち、次の通りである。
【0027】
本発明の第1の磁気記録再生ヘッドは、記録再生ヘッド部と、記録再生ヘッド部上に設けられた2重保護層とを備え、2重保護層が、記録再生ヘッド部における清浄化された基体表面にアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)からなる層として形成された密着性向上のための下地層と、下地層の上に形成されたDLC(diamond-like carbon)からなる外側層とを含むようしたものである。
【0028】
本発明の第2の磁気記録再生ヘッドは、記録再生ヘッド部と、記録再生ヘッド部上に設けられた2重保護層とを備え、2重保護層が、記録再生ヘッド部における清浄化された基体表面にアルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)からなる層(Mezは、相対原子%がzである合金元素)として形成された密着性向上のための下地層と、下地層の上に形成されたDLCからなる外側層とを含むようにしたものである。
【0029】
本発明の第1の磁気ディスクは、磁気ディスク基板と、磁気ディスク基板上に設けられた表面保護用の2重保護層とを備え、2重保護層が、磁気ディスク基板上にアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)からなる層として形成された密着性向上のための下地層と、下地層の上に形成されたDLCからなる被覆層とを含むようにしたものである。
【0030】
本発明の第2の磁気ディスクは、磁気ディスク基板と、磁気ディスク基板上に設けられた表面保護用の2重保護層とを備え、2重保護層が、磁気ディスク基板上にアルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)からなる層(Mezは、相対原子%がzである合金元素)として形成された密着性向上のための下地層と、下地層の上に形成されたDLCからなる被覆層とを含むようにしたものである。
【0031】
本発明の磁気記録再生ヘッドおよび磁気ディスクでは、下地層を構成するアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)におけるxが0ないし1.5であり、yが0ないし1であるようにしてもよい。但し、xおよびyは、その下地層の膜厚によって変化するので、適宜設定可能である。下地層は、5nm未満、より好ましくは、2nm未満の膜厚に形成するのが好ましい。
【0032】
本発明の第2の磁気記録再生ヘッドおよび第2の磁気ディスクでは、アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2z、yが0ないし1+z、zがないし10であるようにするのが好ましい。合金元素Meとしては、例えば、チタン、シリコンまたは、クロムがあげられる。xおよびyは、その下地層の膜厚によって変化するので、適宜設定可能である。下地層は、5nm未満、より好ましくは、2nm未満の膜厚に形成するのが好ましい。
【0033】
本発明の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法は、磁気ディスク基板または一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドを用意するステップと、磁気ディスク基板または一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドのしかるべき表面を清浄化するステップと、上記の表面にアルミニウム(Al)、チタンアルミニウム(TiAl)、シリコンアルミニウム(SiAl)、またはクロムアルミニウム(CrAl)の各酸化窒化物からなる密着性向上のための下地層を形成するステップと、下地層の上にDLC層を形成するステップとを含むようにしたものである。
【0034】
本発明の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法では、上記下地層の形成ステップが、スパッタリングターゲットと、所定のエネルギーで反応性イオンビームを出射しイオンを前記スパッタリングターゲットに導く装置と、種々のガスを所定の流量レートで噴射し前記真空成膜チャンバ内で所望の相対濃度に保つ装置とを備えた真空成膜チャンバを用意するステップと、磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドを前記真空成膜チャンバ内の前記保持部に装着してこれを回転させるステップと、反応性イオンビームの照準を前記スパッタリングターゲットに合わせるステップと、反応性イオンビームを前記スパッタリングターゲットに照射しながら、酸素ガス(O2)および窒素ガス(N2)を前記真空成膜チャンバ内に所定の相対濃度比で注入することにより、前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドに前記下地層を形成するステップとを含むようにすることができる。
【0035】
本発明の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法では、上記下地層の形成ステップが、スパッタリングターゲットと、高エネルギーのパルス反応性イオンビームまたはフォーカス走査反応性イオンビームを前記真空成膜チャンバ内に出射しこれを前記スパッタリングターゲットに導く装置と、種々のガスを所定の流量レートで噴射し前記真空成膜チャンバ内で所望の相対濃度に保つ装置とを備えた真空成膜チャンバを用意するステップと、磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドを前記真空成膜チャンバ内の前記保持部に装着してこれを回転させるステップと、パルス反応性イオンビームまたはフォーカス走査反応性イオンビームの照準を前記スパッタリングターゲットに合わせるステップと、パルス反応性イオンビームまたはフォーカス走査反応性イオンビームを前記スパッタリングターゲットに照射しながら、酸素ガスおよび窒素ガスを前記真空成膜チャンバ内に所定の相対濃度比で注入することにより、前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドに前記下地層を形成するステップとを含むようにしてもよい。
【0036】
本発明の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法では、前記下地層の形成ステップが、スパッタリングターゲットと、高エネルギーの電磁放射ビームを前記真空成膜チャンバ内に出射しこれを前記スパッタリングターゲットに導く装置と、種々のガスを所定の流量レートで噴射し前記真空成膜チャンバ内で所望の相対濃度に保つ装置とを備えた真空成膜チャンバを用意するステップと、磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドを前記真空成膜チャンバ内の前記保持部に装着してこれを回転させるステップと、電磁放射ビームの照準を前記スパッタリングターゲットに合わせるステップと、電磁放射ビームを前記スパッタリングターゲットに照射しながら、酸素ガスおよび窒素ガスを前記真空成膜チャンバ内に所定の相対濃度比で注入することにより、前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドに前記下地層を形成するステップとを含むようにしてもよい。
【0037】
本発明の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法では、下地層の形成ステップが、スパッタリングターゲットと、高エネルギーのパルス反応性イオンビームを前記真空成膜チャンバ内に出射しこれを前記スパッタリングターゲットに導く装置と、所定の流量レートで導入した種々の混合ガスのプラズマを生成し前記真空成膜チャンバ内でプラズマを所望の相対濃度に保つ装置とを備えた真空成膜チャンバを用意するステップと、磁気ディスク、一の磁気記録再生ヘッド、または複数の磁気記録再生ヘッドを前記真空成膜チャンバ内の前記保持部に装着してこれを回転させるステップと、パルス反応性イオンビームの照準を前記スパッタリングターゲットに合わせるステップと、アルゴンをキャリアガスとして用いて、酸素ガスと窒素ガスのプラズマを所定の濃度比で生成するステップと、スパッタリングターゲットからスパッタされた材料を前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドに衝突させながら、または衝突させた後に、前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドを前記プラズマに触れさせることにより、前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドに前記下地層を形成するステップとを含むようにしてもよい。
【0038】
本発明の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法では、スパッタリングターゲットとして、アルミニウム、酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムを用い、酸化窒化物がアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy:xは0ないし1.5、yは0ないし1)となるようにすることができる。また、スパッタリングターゲットとして、アルミニウム合金MezAl(Mは合金元素)、またはその酸化物もしくは窒化物を用い、酸化窒化物が、アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)となるようにすることも可能である。
【0039】
本発明の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法では、成膜チャンバ内に導入する酸素ガスおよび窒素ガスを0ないし20sccmの流量レートとし、反応性イオンビームとして、300Vないし1200Vの電圧での加速により生成されるAr+イオンビームを用いようにしてもよい。電磁放射ビームとしては、例えば、高エネルギーの炭酸ガスパルスレーザまたはエキシマレーザにより生成されるレベルビームが利用可能である。
【0040】
本発明の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法では、プラズマとして、イオンビームプラズマ、ECR(electron cyclotron resonance)プラズマ、ICP(inductively couled plasma)、またはCCP(capacitively coupled plasma)等が利用可能である。また、アルゴン/酸素プラズマを適用したのちこれに続いてアルゴン/窒素プラズマを適用するか、あるいは、アルゴン/窒素プラズマを適用したのちこれに続いてアルゴン/酸素プラズマを適用するようにしてもよい。
【0041】
本発明の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態の説明から理解可能であり、好適な実施の形態の説明は、本明細書に添付の図面によって容易に理解可能である。
【発明の効果】
【0042】
本発明の磁気記録再生ヘッドもしくは磁気ディスク、またはそれらの製造方法によれば、二重保護層が、基体表面にアルミニウム酸化窒化物またはアルミニウム合金酸化窒化物からなる層として形成された下地層と、下地層の上に形成されたDLCからなる外側層(被覆層)とを含むようにしたので、耐摩耗性および耐腐食性に優れた磁気記録再生ヘッドや磁気ディスクを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明の各実施の形態は、磁気記録再生ヘッドや記録媒体に2層構造の保護薄膜を形成する方法を提供するものである。この保護薄膜は、密着性向上用の下地層と、その上を覆う保護用の固いDLC(diamond-like carbon)被覆層からなる。下地層は、アルミニウム酸化窒化物AlOxNy、TiAlOxNy、SiAlOxNy、CrAlOxNy(より一般的には、MezAOxNy))である。
【0044】
磁気記録分野においては、磁気記録再生ヘッド基板へのDLC層の密着性を向上するための下地層としてアモルファスシリコンが広く用いられている。従来は、ヘッド基板をアルゴンイオン(Ar+)ビームにより清浄化したのち、イオンビームスパッタリング(IBD)によっアモルファスシリコンからなる下地層を形成し、次にDLC被覆層を形成するようにしている。DLC被覆層の形成には、IBD、プラズマエンハンストCVD(PECVD;plasma enhnced chemical vapor deposition)、または電子サイクロトロン共鳴(electron cyclotron resnance;ECR)法が用いられるが、より好ましくは、フィルタード陰極真空放電(FCVA;iltered cathodic vacuum arc)法が用いられる。
【0045】
本発明の実施の形態は、密着性向上用の下地層として、アルミニウム酸化窒化物やアルミニウム合金酸化窒化物を形成することから、上記のIBDによるアモルファスシリコン成膜法とは異なるものである。本実施の形態では、下地層を、以下に述べるような方法、すなわち、反応性イオンスパッタリング、プラズマエンハンストCVD(PECVD)、反応性パルスレーザ成膜(PLD)、およびその他の方法によって形成する。
【0046】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。ここでは、本実施の形態の特徴が明らかになるように、比較例と比較しつつ実施の形態を説明することにする。
【0047】
まず、図8Aを参照して、従来の方法(比較例)について説明する。この図8Aは、従来の2重保護膜を形成するための連続した3つのステップを流れ図として表したものである。
【0048】
1.エッチング機構としてのアルゴンイオビームまたはアルゴン/酸素イオンビームを用いて基板を予め清浄化する(ステップS101)。
2.反応性イオンビームスパッタリングによってアモルファスシリコンからなる密着下地層を成膜する(ステップS102)。
3.IBD、PECVDまたはFCVAを用いて保護用のDLC被覆層を形成する(ステップS103)。
【0049】
次に、図8Bを参照して、本実施の形態について説明する。この図8Bは、本実施の形態における2重保護膜を形成するための連続した3つのステップを表すものである。
【0050】
1.エッチング機構としてのアルゴンイオビームまたはアルゴン/酸素イオンビームを用いて基板を予め清浄化する(ステップS201)。
2.以下にあげる所定の方法によってアルミニウム酸化窒化物からなる密着下地層を成膜する(ステップS202)。そのような成膜方法としては、アルミニウムの酸化物または窒化物からなるターゲットをアルゴン/酸素/窒素ガス雰囲気中でスパッタリングする反応性イオンスパッタリング、プラズマ雰囲気イオンインプランテーション(PIII;plasma immersion io implantation)、プラズマ雰囲気イオンインプランテーション成膜(PIIID;plasma immesion ion implantation deposition)、プラズマエンハンストCVD(PECVD)、または応性パルスレーザ成膜(PLD)等を用いる。
3.IBD、PECVDまたはFCVAを用いて保護用のDLC被覆層を形成する(ステップS203)。
【0051】
本実施の形態は、上記した本発明のすべての目的に適合するような磁気記録再生ヘッドや磁気記録媒体(例えばディスク)の上に保護膜を形成可能な方法を提供するものである。以下に述べるすべての方法において、保護膜は、アルゴンイオンビームやアルゴン/酸素イオンビームエッチング等の適切な方法によって清浄化されたディスクや記録再生ヘッドの基板表面(例えばエアベアリング面(以下、ABSという。))に2重層として形成される。好ましくは、複数の記録再生ヘッドをホルダに装着し、上記方法によって同時に処理する。
【0052】
図1は、磁気記録再生ヘッドと磁気記録媒体との連係状態を表すものである。但し、この図は、縮尺通りに描いたものではない。この図に示したように、磁気ヘッドスライダ100がサスペンション110に機械的に取り付けられている。磁気ヘッドスライダ(以下、単にスライダという。)100は、アルティック(AlTiC)基板120の上に、シールドされたGMRまたはTMRリーダおよびライタ150を含むヘッド部150と、酸化アルミニウムからなるオーバーコート170とを積層してなるものである。リーダシールド、リーダおよびライタは、主として、環境条件に晒されたときに腐食する可能性のある様々な合金やNi−Fe−Coの合成物を含む磁性材料によって形成されている。スライダ100はまた、下地層180およびDLC被覆層190によって覆われている。
【0053】
一方、磁気ディスク200は、ガラスまたはアルミニウムからなる基板210の上に、下地層220と磁性層230とを積層してなるものである。磁性層230の表面は、本実施の形態の方法によって形成された下地層280およびDLC被覆層290によって保護されている。磁気ディスク200の表面には、スライダ−ヘッド間の摩擦を最小限にするために、潤滑層260が設けられている。本実施の形態は、スライダ100における下地層180と、磁気ディスク200における下地層280の両方を提供するものである。
【0054】
以下、第1〜第7の実施の形態について詳細に説明する。但し、上記したステップS201の基板清浄化工程については説明を省略する。
【0055】
[第1の実施の形態]
図2は、磁気記録再生ヘッドまたは磁気記録ディスク上に本実施の形態の2重保護層を形成することが可能な装置を模式的に表した透視図である。本実施の形態では、反応性イオンスパッタリング法の具体例として、アルミニウム酸化窒化物AlOxNyによって密着性向上層(下地層)を形成する。本実施の形態では、ターボポンプによって約133×10-6Pa(=106Torr)以下の真空度が達成可能な成膜チャンバ10を用いる。この成膜チャンバ10は以下のすべての実施の形態を通じて実質的に共通の要素である。アルゴンイオンビーム等のイオンビーム20を成膜チャンバ10内に導入し、アルミニウムまたは酸化アルミニウムからなるターゲット50に照準を合わせる。このイオンビーム20は、高周波源30によって生成され、約300V〜1200Vの電圧で加速される。ガス導入ポート40から成膜チャンバ10内に、約0〜20sccmの流量レートで酸素および窒素ガスを導入する。このとき、酸素および窒素ガスの流量比は、形成しようとする下地層(AlOxNy)の組成に応じて異なる流量比に設定する。下地層(AlOxNy)の組成は、例えば、xが0ないし1.5、yが0ないし1となるようにする。上記したように、アルゴンイオンビームの照準をターゲット50に合わせると、スパッタされた原子60がホルダ80に装着された成膜対象のデバイス70上に堆積する。デバイス70は、複数の磁気記録再生ヘッドや磁気記録ディスクである。ホルダ80は、成膜の均一化のために回転可能に構成される。第1ないし第7の実施の形態のすべてにおいて、下地層の全厚が5nmを越えないようにすることが本発明の目的に適合する。より好ましくは、下地層の膜厚を2nm未満にするとよい。続いて、この下地層の上に、上記のような方法を用いて、DLC被覆層を形成する。これにより、本発明の目的に適した2重保護層が形成される。
【0056】
本実施の形態における変形例として、図2に示したターゲット50を、アルミニウムや酸化アルミニウムではなく窒化アルミニウム(AlN)としてもよい。高周波源30によって生成されて約300V〜1200Vの電圧で加速されたアルゴンイオンビーム等のイオンビーム20を成膜チャンバ10内に導入し、窒化アルミニウムからなるターゲット50に照準を合わせる。導入ポート40から成膜チャンバ10内に約0〜20sccmの流量レートで酸素および窒素ガスを導入する。このとき、酸素および窒素ガスの流量比は、形成しようとする下地層(AlOxNy)の組成に応じて異なる流量比に設定する。例えば、上記と同様に、xが0ないし1.5、yが0ないし1となるように流量比を設定する。アルゴンイオンビーム20がターゲット50に当たると、スパッタされたアルミニウムおよび窒素の原子60が、酸素および窒素ガスの雰囲気下で、磁気記録再生ヘッドや磁気記録ディスク等のデバイス70上に堆積する。これにより、所望の下地層(AlOxNy)が形成される。上記と同様に、複数の磁気記録再生ヘッドや磁気記録ディスクは、成膜の均一化のために回転可能に構成されたホルダ80に装着する。
【0057】
本変形例においても、x,yは、成膜プロセスの進行に伴って変化し、膜厚の関数である組成を持った下地層(AlOxNy)が形成される。下地層は、その全厚が5nmを越えないようにすることが好ましいが、より好ましくは、2nm未満にするとよい。続いて、この下地層の上に、上記のような方法を用いて、DLC被覆層を形成する。
【0058】
[第2の実施の形態]
図3は、第2の実施の形態に係る2重保護層を形成可能な装置を模式的に表した透視図である。この図で、上記第1の実施の形態(図2)と同一要素には同一符号を付し、適宜、説明を省略する。本実施の形態の第1の具体例では、反応性イオンビームとして、高エネルギーのフォーカス走査アルゴンイオンビーム(high energy scanning,focused Ar+ ion beam)22を用、これをアルミニウムまたはその酸化物もしくは窒化物からなるターゲット50に導く。導入ポート40から成膜チャンバ10内に、約0〜20sccmの流量レートで酸素および窒素ガスを導入する。このとき、酸素および窒素ガスの流量比は、形成しようとする下地層(AlONy)の組成に応じて異なる流量比に設定する。下地層(AlOxNy)の組成は、例えば、x0ないし1.5、yが0ないし1となるようにする。本実施の形態では、フォーカス走査アルゴンイオンビームを用いることにより、ターゲットの位置決めを省くことができると共に、成膜に関連して生ずるヒステリシス作用を取り除くことができる。なお、フォーカス走査アルゴンイオンビームは、T.Nybergらによる米国特許出願2004/0149566A1に詳しく記されている。その他の構成や成膜条件は、上記第1の実施の形態(図2)の場合と同様である。
【0059】
本実施の形態においても、AlOxNyにおけるx,yは、成膜プロセスの進行に伴って変化し、膜厚の関数である組成を持った下地層(AlOxNy)が形成される。下地層は、その全厚が5nmを越えないようにすることが好ましいが、より好ましくは、2nm未満にするとよい。続いて、この下地層の上に、上記のような方法を用いて、DLC被覆層を形成する。これにより、本発明の目的に適した2重保護層が形成される。
【0060】
本実施の形態の第2の具体例では、ターゲット50としてチタンアルミニウム合金TiZAを用いる。これをより一般的に表記すると、MeZAl(但し、Meは適切な合金金属元素)ある。本具体例では、下地層としてチタンアルミニウム合金の酸化窒化物TiZAlOxNyが成される。本具体例では、酸素ガスおよび窒素ガスの導入比率を、xが0ないし1.5+2z、yが0ないし1+z、zが0ないし10となるように設定する。但し、酸素ガスおよび窒素ガスの流量レートは、上記の場合と同様に設定する。x,yは、成膜プロセスの進行に伴い、膜厚と共に変化する。その他は上記第1の具体例と同様である。
【0061】
本実施の形態の第3の具体例では、ターゲット50としてシリコンアルミニウム合金SiZlを用いる。本具体例では、下地層としてシリコンアルミニウム合金の酸化窒化物SiZAlxNyが形成される。本具体例では、酸素ガスおよび窒素ガスの導入比率を、xが0ないし1.5+2z、yが0ないし1+1.3z、zが0ないし10となるように設定する。但し、酸素ガスおよび窒素ガスの流量レートは、上記の場合と同様に設定する。x,yは、成膜プロセスの進行に伴い、膜厚と共に変化する。その他は上記第1の具体例と同様である。
【0062】
本実施の形態の第4の具体例では、ターゲット50としてクロムアルミニウム合金CrZAを用いる。本具体例では、下地層としてクロムアルミニウム合金の酸化窒化物CrZAlOxNが形成される。本具体例では、酸素ガスおよび窒素ガスの導入比率を、xが0ないし1.5+2z、yが0ないし1+1.3z、zが0ないし10となるように設定する。但し、酸素ガスおよび窒素ガスの流量レートは、上記の場合と同様に設定する。x,yは、成膜プロセスの進行に伴い、膜厚と共に変化する。その他は上記第1の具体例と同様である。
【0063】
なお、本実施の形態では、ターゲット50として、アルミニウム合金MeZAlの酸化物まは窒化物を用いてもよい。
【0064】
[第3の実施の形態]
図4は、第3の実施の形態に係る2重保護層を形成可能な装置を模式的に表した透視図である。この図で、上記第1の実施の形態(図2)と同一要素には同一符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0065】
本実施の形態の第1の具体例では、反応性イオンビーム20として、高い瞬間パワーをもつパルスアルゴンイオン源(pulsed Ar+ ion source)から発せられるパルス反応性イオンビーム4を用い、アルミニウムからなるターゲット50に照準を合わせる。導入ポート40から成膜チャンバ10内に、約0〜20sccmの流量レートで酸素および窒素ガスを導入する。このとき、酸素および窒素ガスの流量比は、形成しようとする下地層(AlOxNy)の組成に応じて異なる流量比に設定する。下地層(AlOxNy)の組成は、例えば、xが0ないし1.5、yが0ないし1となるようにする。本実施の形態では、高い瞬間パワーをもつパルスアルゴンイオン源を用いることにより、ターゲットの位置決めを省くことができると共に、成膜に伴って生ずるヒステリシス作用を取り除くことができる。なお、高い瞬間パワーをもつパルスアルゴンイオン源は、V.Kousnetsovらによる米国特許第6,296,742号に詳しく記載されている。本実施の形態においても、x,yは、成膜プロセスの進行に伴って変化し、膜厚の関数である組成を持った下地層(AlOxNy)が形成される。下地層は、その全厚が5nmを越えないようにすることが好ましいが、より好ましくは、2nm未満にするとよい。続いて、この下地層の上に、上記のような方法を用いて、DLC被覆層を形成する。これにより、本発明の目的に適した2重保護層が形成される。その他の構成や成膜条件は、上記第1の実施の形態(図2)の場合と同様である。
【0066】
本実施の形態の第2の具体例では、ターゲット50としてチタンアルミニウム合金TiZAを用いる。本具体例では、下地層としてチタンアルミニウムの酸化窒化物TiZAlOxNyが成される。本具体例では、酸素ガスおよび窒素ガスの導入比率を、xが0ないし1.5+2z、yが0ないし1+z、zが0ないし10となるように設定する。但し、酸素ガスおよび窒素ガスの流量レートは、上記の場合と同様に設定する。x,yは、成膜プロセスの進行に伴い、膜厚と共に変化する。その他は上記第1の具体例と同様である。
【0067】
本実施の形態の第3の具体例では、ターゲット50としてシリコンアルミニウム合金SiZlを用いる。本具体例では、下地層としてシリコンアルミニウムの酸化窒化物SiZAlOxNが形成される。本具体例では、酸素ガスおよび窒素ガスの導入比率を、xが0ないし1.5+2z、yが0ないし1+z、zが0ないし10となるように設定する。但し、酸素ガスおよび窒素ガスの流量レートは、上記の場合と同様に設定する。x,yは、成膜プロセスの進行に伴い、膜厚と共に変化する。その他は上記第1の具体例と同様である。
【0068】
本実施の形態の第4の具体例では、ターゲット50としてクロムアルミニウム合金CrZAを用いる。本具体例では、下地層としてクロムアルミニウムの酸化窒化物CrZAlOxNyが成される。本具体例では、酸素ガスおよび窒素ガスの導入比率を、xが0ないし1.5+2z、yが0ないし1+z、zが0ないし10となるように設定する。但し、酸素ガスおよび窒素ガスの流量レートは、上記の場合と同様に設定する。x,yは、成膜プロセスの進行に伴い、膜厚と共に変化する。その他は上記第1の具体例と同様である。
【0069】
なお、本実施の形態においても、ターゲット50として、アルミニウム合金MeZAlの酸物または窒化物を用いてもよい。
【0070】
[第4の実施の形態]
図5は、第4の実施の形態に係る2重保護層を形成可能な装置を模式的に表した透視図である。この図で、上記第1の実施の形態(図2)と同一要素には同一符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0071】
本実施の形態の第1の具体例では、高エネルギーのパルス電磁放射ビーム(pulsed electromgnetic radiation)25を用い、アルミニウムからなるターゲット50に照準を合わせる。導ポート40から成膜チャンバ10内に、約0〜20sccmの流量レートで酸素および窒素ガスを導入する。このとき、酸素および窒素ガスの流量比は、形成しようとする下地層(AlONy)の組成に応じて異なる流量比に設定する。下地層(AlOxNy)の組成は、例えば、x0ないし1.5、yが0ないし1となるようにする。本実施の形態では、高エネルギーのパルス電磁放射ビームとして、炭酸ガスレーザまたはエキシマレーザを用いることができる。本実施の形態においても、AlOxNyにおけるx,yは、成膜プロセスの進行に伴って変化し、膜厚の関数である組成を持った下地層(AlOxNy)が形成される。下地層は、その全厚が5nmを越えないようにすることが好ましいが、より好ましくは、2nm未満にするとよい。続いて、この下地層の上に、上記のような方法を用いて、DLC被覆層を形成する。これにより、本発明の目的に適した2重保護層が形成される。その他の構成や成膜条件は、上記第1の実施の形態(図2)の場合と同様である。
【0072】
本実施の形態の第2の具体例では、ターゲット50としてチタンアルミニウム合金TiZAを用いる。本具体例では、下地層としてチタンアルミニウム合金の酸化窒化物TiZAlOxNが形成される。本具体例では、酸素ガスおよび窒素ガスの導入比率を、xが0ないし1.5+2z、yが0ないし1+z、zが0ないし10となるように設定する。但し、酸素ガスおよび窒素ガスの流量レートは、上記の場合と同様に設定する。x,yは、成膜プロセスの進行に伴い、膜厚と共に変化する。その他は上記第1の具体例と同様である。
【0073】
本実施の形態の第3の具体例では、ターゲット50としてシリコンアルミニウム合金SiZlを用いる。本具体例では、下地層としてシリコンアルミニウム合金の酸化窒化物SiZAlxNyが形成される。本具体例では、酸素ガスおよび窒素ガスの導入比率を、xが0ないし1.5+2z、yが0ないし1+z、zが0ないし10となるように設定する。但し、酸素ガスおよび窒素ガスの流量レートは、上記の場合と同様に設定する。x,yは、成膜プロセスの進行に伴い、膜厚と共に変化する。その他は上記第1の具体例と同様である。
【0074】
本実施の形態の第4の具体例では、ターゲット50としてクロムアルミニウム合金CrZAを用いる。本具体例では、下地層としてクロムアルミニウム合金の酸化窒化物CrZAlOxNが形成される。本具体例では、酸素ガスおよび窒素ガスの導入比率を、xが0ないし1.5+2z、yが0ないし1+z、zが0ないし10となるように設定する。但し、酸素ガスおよび窒素ガスの流量レートは、上記の場合と同様に設定する。x,yは、成膜プロセスの進行に伴い、膜厚と共に変化する。その他は上記第1の具体例と同様である。
【0075】
なお、本実施の形態においても、ターゲット50として、アルミニウム合金MeZAlの酸物または窒化物を用いてもよい。
【0076】
[第5の実施の形態]
図6は、第5の実施の形態に係る2重保護層を形成可能な装置を模式的に表した透視図である。この図で、上記第1の実施の形態(図2)と同一要素には同一符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0077】
本実施の形態では、アルゴンイオンビーム等のイオンビーム20を成膜チャンバ10内に導入する。このイオンビーム20は、高周波源30によって生成され、約300V〜1200Vの電圧で加速される。このイオンビーム20の照準を、アルミニウム、アルミニウム合金MeAl、またはそれらの酸化物もしくは窒化物からなるターゲット50に合わせる。アルミニウム合金としては、TiZAl、SiZAl、CrZAlが選ばれる。アルゴンイオンビームはタゲット50から原子60を叩き出し、これがホルダ80に装着された成膜対象のデバイス70(複数の磁気記録再生ヘッドや磁気記録ディスク)上に堆積する。なお、使用する反応性ビームは、反応性パルスレーザ(reactive pulsed laser deposition)、反応性パルスイオンビームpulsed reactive ion)、またはフォーカス走査反応性イオンビーム(scanning focused reactie ion beam)であってもよい。
【0078】
デバイス70上にスパッタ膜(AlまたはMezAl)を成膜したのち、これを、成膜チャバ10内に導入したアルゴン/酸素/窒素ガスを基にプラズマ源45が生成したプラズマ90に曝す。なお、アルゴンガスはキャリアガスである。このとき、酸素および窒素ガスの流量比は、形成しようとする下地層(AlOxNyまたはMezAlOxNy)の組成に応じて異なる流比に設定する。ターゲット50がアルミニウムの場合、下地層(AlOxNy)の組成は、例えば、xが0ないし1.5、yが0ないし1となるようにするのが好ましい。本実施の形態においても、x,yは、成膜プロセスの進行に伴って変化し、膜厚の関数である組成を持った下地層(AlOxNyまたはMezAlOxNy)が形成される。下地層は、その全厚が5nmを越えいようにすることが好ましいが、より好ましくは、2nm未満にするとよい。続いて、この下地層の上に、上記のような方法を用いて、DLC被覆層を形成する。これにより、本発明の目的に適した2重保護層が形成される。
【0079】
[第6の実施の形態]
上記第5の実施の形態では、デバイス70上にスパッタ膜を成膜したのち、これをアルゴン/酸素/窒素ガスのプラズマ90に曝すようにしたが、本実施の形態では、アルゴン/酸素/窒素ガスのプラズマ90に曝しながらデバイス70上にスパッタ膜を成膜する。この点を除き、成膜装置の構成や成膜条件(使用ビーム、加速電圧、ターゲット等)は上記第5の実施の形態(図6)と同様なので、適宜、説明を省略する。
【0080】
本実施の形態では、アルゴン/酸素/窒素ガスのプラズマ90の雰囲気中においてスパッタ膜(下地層)がデバイス70上に形成される。なお、アルゴンガスはキャリアガスである。下地層におけるx,yは、成膜プロセスの進行に伴って変化し、膜厚の関数である組成を持った下地層(AlOxNyまたはMezAlOxNy)が形成される。酸素および窒素ガスの流量比は形成しようとする下地層(AlOxNyまたはMezAlOxNy)の組成に応じて異なる流量比設定する。ターゲット50がアルミニウムの場合、下地層(AlOxNy)の組成は、例えば、xが0ないし1.5、yが0ないし1となるようにするのが好ましい。下地層は、その全厚が5nmを越えないようにすることが好ましいが、より好ましくは、2nm未満にするとよい。続いて、この下地層の上に、上記のような方法を用いて、DLC被覆層を形成する。
【0081】
[第7の実施の形態]
上記第5の実施の形態では、デバイス70上にスパッタ膜(下地層)を成膜したのち、これをアルゴン/酸素/窒素ガスのプラズマ90に曝すようにし、上記第6の実施の形態では、アルゴン/酸素/窒素ガスのプラズマ90に曝しながらデバイス70上にスパッタ膜を成膜するようにした。これに対して、本実施の形態では、デバイス70上に成膜したスパッタ膜(AlまたはMezAl)にアルゴン/酸素ガスのプラズマ90を適用したのち、これに続いてアルン/窒素ガスのプラズマ100を適用する。あるいは、デバイス70上に成膜したスパッタ膜(AlまたはMezAl)にアルゴン/窒素ガスのプラズマ100を適用したのち、これに続てアルゴン/酸素ガスのプラズマ90を適用する。すなわち、スパッタ膜(AlまたはMezAl)に対するプラズマ表面処理を、アルゴン/酸素ガスのプラズマによる表面処理の期間と、アルゴン/窒素ガスのプラズマによる表面処理の期間とに分けて、順番に行う。この点を除き、成膜装置の構成や成膜条件(使用ビーム、加速電圧、ターゲット等)は上記第6の実施の形態(図6)と同様なので、適宜、説明を省略する。プラズマは、従来から知られている多くの方法のいずれかを用いて生成可能である。例えば、イオンビームによるプラズマ生成法、容量結合プラズマ(capacitively coupled plasma;CCP)によるプラズマ生成法、電子サイクロロン共鳴(electron cyclotron resonance;ECR)によるプラズマ生成法、誘導結合プラズマinductively coupled plasma;ICP)によるプラズマ生成法等がある。
【0082】
本実施の形態においても、下地層におけるx,yは、成膜プロセスの進行に伴って変化し、膜厚の関数である組成を持った下地層(AlOxNyまたはMezAlOxNy)が形成される。素および窒素ガスの流量比は、形成しようとする下地層(AlOxNy)の組成に応じて異なる流量比に設定する。下地層は、その全厚が5nmを越えないようにすることが好ましいが、より好ましくは、2nm未満にするとよい。続いて、この下地層の上に、上記のような方法を用いて、DLC被覆層を形成する。
【0083】
以上の好適な実施の形態は、あくまで本発明を例示したものであって、本発明はこれらの例に限定されるものではない。以上に示したアルミニウム酸化窒化物またはアルミニウム合金酸化窒化物を含む2重保護層を磁気記録再生ヘッドや磁気記録媒体上に形成するに際しては、本願の特許請求の範囲に記載の範囲内において、その形成方法、プロセス、材料、構造および寸法への様々な修正や変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施の形態における磁気記録再生ヘッドを有するヘッドスライダが本発明の実施の形態における回転する磁気ディスクの上を滑空している状態を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における磁気記録再生ヘッドおよび磁気ディスクに保護膜を成膜するための成膜装置(反応性イオンビーム利用型)の構成を表す模式図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態における磁気記録再生ヘッドおよび磁気ディスクに保護膜を成膜するための成膜装置(フォーカス走査反応性イオンビーム利用型)の構成を表す模式図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態における磁気記録再生ヘッドおよび磁気ディスクに保護膜を成膜するための成膜装置(反応性パルスイオンビーム利用型)の構成を表す模式図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態における磁気記録再生ヘッドおよび磁気ディスクに保護膜を成膜するための成膜装置(反応性パルスレーザ利用型)の構成を表す模式図である。
【図6】本発明の第5ないし第7の実施の形態における磁気記録再生ヘッドおよび磁気ディスクに保護膜を成膜するための成膜装置(プラズマ雰囲気イオンビーム利用型)の構成を表す模式図である。
【図7】保護膜を有する磁気記録再生ヘッドに用いられる種々の材料に関する性質を一覧表形式で示した図である。
【図8A】従来の保護膜形成プロセスを示す流れ図である。
【図8B】本発明の保護膜形成プロセスを示す流れ図である。
【符号の説明】
【0085】
10…成膜チャンバ、20…反応性イオンビーム、22…フォーカス走査イオンビーム、24…パルスイオンビーム、25…パルス電磁放射ビーム、30…高周波源、40…ガス導入ポート、45…プラズマ源、50…ターゲット、60…原子、70…成膜対象デバイス、90…プラズマ、100…磁気ヘッドスライダ、120…基板、150…ヘッド部、180,280…下地層、190,290…DLC層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録再生ヘッド部と、
前記記録再生ヘッド部上に設けられた2重保護層と
を備え、
前記2重保護層が、
前記記録再生ヘッド部における清浄化された基体表面にアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)からなる層として形成された密着性向上のための下地層と、
前記下地層の上に形成されたDLC(diamond-like carbon)からなる外側層と
を含むことを特徴とする磁気記録再生ヘッド。
【請求項2】
前記下地層を構成するアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)におけるxが0ないし1.5であり、yが0ないし1である
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項3】
前記下地層が、5nm未満の膜厚に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項4】
前記下地層が、2nm未満の膜厚に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項5】
前記下地層を構成するアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)におけるxおよびyが、その下地層の膜厚によって変化する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項6】
前記下地層が、酸素ガスおよび窒素ガス、または、酸素プラズマおよび窒素プラズマの存在の下で、反応性イオンビームスパッタリング、反応性パルスレーザ成膜(reactive pulsed lasr deposition)、反応性パルスイオンビームスパッタリング(pulsed reactive ion sputtering、またはフォーカス走査反応性イオンビームスパッタリング(scanning focused reactive ionbeam sputtering)により形成されたものである
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項7】
記録再生ヘッド部と、
前記記録再生ヘッド部上に設けられた2重保護層と
を備え、
前記2重保護層が、
前記記録再生ヘッド部における清浄化された基体表面にアルミニウム合金酸化窒化物(MeZAlOxNy)からなる層(Mezは、相対原子%がzである合金元素)として形成された密着向上のための下地層と、
前記下地層の上に形成されたDLCからなる外側層と
を含むことを特徴とする磁気記録再生ヘッド。
【請求項8】
前記合金元素Meがチタン(Ti)であり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項7に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項9】
前記合金元素Meがシリコン(Si)であり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項7に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項10】
前記合金元素Meがクロム(Cr)であり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項7に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項11】
前記下地層が、5nm未満の膜厚に形成されている
ことを特徴とする請求項7に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項12】
前記下地層を構成するアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)におけるx,yおよびzが、その下地層の膜厚によって変化する
ことを特徴とする請求項7に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項13】
前記下地層が、酸素ガスおよび窒素ガス、または、酸素プラズマおよび窒素プラズマの存在の下で、反応性イオンビームスパッタリング、反応性パルスレーザ成膜、反応性パルスイオンビームスパッタリング、またはフォーカス走査反応性イオンビームスパッタリングにより形成されたものである
ことを特徴とする請求項7に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項14】
磁気ディスク基板と、
前記磁気ディスク基板上に設けられた表面保護用の2重保護層と
を備え、
前記2重保護層が、
前記磁気ディスク基板上にアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)からなる層として形成された密着性向上のための下地層と、
前記下地層の上に形成されたDLCからなる被覆層と
を含むことを特徴とする磁気ディスク。
【請求項15】
前記下地層を構成するアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)におけるxが0ないし1.5であり、yが0ないし1である
ことを特徴とする請求項14に記載の磁気ディスク。
【請求項16】
前記下地層が、5nm未満の膜厚に形成されている
ことを特徴とする請求項14に記載の磁気ディスク。
【請求項17】
前記下地層が、2nm未満の膜厚に形成されている
ことを特徴とする請求項14に記載の磁気ディスク。
【請求項18】
前記下地層を構成するアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)におけるxおよびyが、その下地層の膜厚によって変化する
ことを特徴とする請求項14に記載の磁気ディスク。
【請求項19】
前記下地層が、酸素ガスおよび窒素ガス、または、酸素プラズマおよび窒素プラズマの存在の下で、反応性イオンビームスパッタリング、反応性パルスレーザ成膜、反応性パルスイオンビームスパッタリング、またはフォーカス走査反応性イオンビームスパッタリングにより形成されたものである
ことを特徴とする請求項14に記載の磁気ディスク。
【請求項20】
磁気ディスク基板と、
前記磁気ディスク基板上に設けられた表面保護用の2重保護層と
を備え、
前記2重保護層が、
前記磁気ディスク基板上にアルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)からなる層(Mezは、相対原子%がzである合金元素)として形成された密着性向上のための下地層と、
前記下地層の上に形成されたDLCからなる被覆層と
を含むことを特徴とする磁気ディスク。
【請求項21】
前記合金元素Meがチタンであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項20に記載の磁気ディスク。
【請求項22】
前記合金元素Meがシリコンであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項20に記載の磁気ディスク。
【請求項23】
前記合金元素Meがクロムであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項20に記載の磁気ディスク。
【請求項24】
前記下地層が、5nm未満の膜厚に形成されている
ことを特徴とする請求項20に記載の磁気ディスク。
【請求項25】
前記下地層を構成するアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)におけるx,yおよびzが、その下地層の膜厚によって変化する
ことを特徴とする請求項20に記載の磁気ディスク。
【請求項26】
前記下地層が、酸素ガスおよび窒素ガス、または、酸素プラズマおよび窒素プラズマの存在の下で、反応性イオンビームスパッタリング、反応性パルスレーザ成膜、反応性パルスイオンビームスパッタリング、またはフォーカス走査反応性イオンビームスパッタリングにより形成されたものである
ことを特徴とする請求項20に記載の磁気ディスク。
【請求項27】
磁気ディスク基板または一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドを用意するステップと、
前記磁気ディスク基板または一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドのしかるべき表面を清浄化するステップと、
前記表面にアルミニウム(Al)、チタンアルミニウム(TiAl)、シリコンアルミニウム(SiAl)、またはクロムアルミニウム(CrAl)の各酸化窒化物からなる密着性向上のための下地層を形成するステップと、
前記下地層の上にDLC層を形成するステップと
を含むことを特徴とする磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項28】
前記下地層の形成ステップは、
スパッタリングターゲットと、所定のエネルギーで反応性イオンビームを出射しイオンを前記スパッタリングターゲットに導く装置と、種々のガスを所定の流量レートで噴射し前記真空成膜チャンバ内で所望の相対濃度に保つ装置とを備えた真空成膜チャンバを用意するステップと、
前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドを前記真空成膜チャンバ内の前記保持部に装着してこれを回転させるステップと、
前記反応性イオンビームの照準を前記スパッタリングターゲットに合わせるステップと、
前記反応性イオンビームを前記スパッタリングターゲットに照射しながら、酸素ガス(O2)および窒素ガス(N2)を前記真空成膜チャンバ内に所定の相対濃度比で注入することにより前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドに前記下地層を形成するステップと
を含むことを特徴とする請求項27に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項29】
前記スパッタリングターゲットが、アルミニウム、酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムからなり、
前記酸化窒化物が、アルミニウム酸化窒化物(AlOxNy:xは0ないし1.5、yは0ないし1)である
ことを特徴とする請求項28に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項30】
前記スパッタリングターゲットが、アルミニウム合金MezAl(Meは合金元素)、またその酸化物もしくは窒化物からなり、
前記酸化窒化物が、アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)である
ことを特徴とする請求項28に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項31】
前記合金元素Meがチタンであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項30に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項32】
前記合金元素Meがシリコンであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項30に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項33】
前記合金元素Meがクロムであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項30に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項34】
前記酸素ガスおよび窒素ガスを0ないし20sccmの流量レートで注入する
ことを特徴とする請求項28に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項35】
前記反応性イオンビームが、300Vないし1200Vの電圧で加速することにより生成されるAr+イオンビームである
ことを特徴とする請求項28に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項36】
前記下地層を構成するアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)におけるxおよびyを、その下地層が形成されるのに従って変化させる
ことを特徴とする請求項29に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項37】
前記下地層の形成ステップは、
スパッタリングターゲットと、高エネルギーのパルス反応性イオンビームまたはフォーカス走査反応性イオンビームを前記真空成膜チャンバ内に出射しこれを前記スパッタリングターゲットに導く装置と、種々のガスを所定の流量レートで噴射し前記真空成膜チャンバ内で所望の相対濃度に保つ装置とを備えた真空成膜チャンバを用意するステップと、
前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドを前記真空成膜チャンバ内の前記保持部に装着してこれを回転させるステップと、
前記パルス反応性イオンビームまたはフォーカス走査反応性イオンビームの照準を前記スパッタリングターゲットに合わせるステップと、
前記パルス反応性イオンビームまたはフォーカス走査反応性イオンビームを前記スパッタリングターゲットに照射しながら、酸素ガスおよび窒素ガスを前記真空成膜チャンバ内に所定の相対濃度比で注入することにより、前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドに前記下地層を形成するステップと
を含むことを特徴とする請求項27に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項38】
前記スパッタリングターゲットが、アルミニウム、酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムからなり、
前記酸化窒化物が、アルミニウム酸化窒化物AlOxNy(xは0ないし1.5、yは0ないし1)である
ことを特徴とする請求項37に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項39】
前記スパッタリングターゲットが、アルミニウム合金MezAl(Meは合金元素)、またその酸化物もしくは窒化物からなり、
前記酸化窒化物が、アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)である
ことを特徴とする請求項37に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項40】
前記合金元素Meがチタンであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項39に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項41】
前記合金元素Meがシリコンであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項39に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項42】
前記合金元素Meがクロムであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項39に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項43】
前記酸素ガスおよび窒素ガスを0ないし20sccmの流量レートで注入する
ことを特徴とする請求項37に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項44】
前記下地層を構成するアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)におけるxおよびyを、その下地層が形成されるのに従って変化させる
ことを特徴とする請求項37に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項45】
前記下地層の形成ステップは、
スパッタリングターゲットと、高エネルギーの電磁放射ビームを前記真空成膜チャンバ内に出射しこれを前記スパッタリングターゲットに導く装置と、種々のガスを所定の流量レートで噴射し前記真空成膜チャンバ内で所望の相対濃度に保つ装置とを備えた真空成膜チャンバを用意するステップと、
前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドを前記真空成膜チャンバ内の前記保持部に装着してこれを回転させるステップと、
前記電磁放射ビームの照準を前記スパッタリングターゲットに合わせるステップと、
前記電磁放射ビームを前記スパッタリングターゲットに照射しながら、酸素ガスおよび窒素ガスを前記真空成膜チャンバ内に所定の相対濃度比で注入することにより、前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドに前記下地層を形成するステップと
を含むことを特徴とする請求項27に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項46】
前記スパッタリングターゲットが、アルミニウム、酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムからなり、
前記酸化窒化物が、アルミニウム酸化窒化物AlOxNy(xは0ないし1.5、yは0ないし1)である
ことを特徴とする請求項45に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項47】
前記スパッタリングターゲットが、アルミニウム合金MezAl(Meは合金元素)、またその酸化物もしくは窒化物からなり、
前記酸化窒化物が、アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)である
ことを特徴とする請求項45に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項48】
前記合金元素Meがチタンであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項47に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項49】
前記合金元素Meがシリコンであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項47に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項50】
前記合金元素Meがクロムであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項47に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項51】
前記電磁放射ビームを、高エネルギーの炭酸ガスパルスレーザまたはエキシマレーザにより生成する
ことを特徴とする請求項45に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項52】
前記酸素ガスおよび窒素ガスを0ないし20sccmの流量レートで注入する
ことを特徴とする請求項45に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項53】
前記下地層を構成するアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)におけるxおよびyを、その下地層が形成されるのに従って変化させる
ことを特徴とする請求項45に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項54】
前記下地層を5nm未満の膜厚に形成する
ことを特徴とする請求項45に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項55】
前記下地層の形成ステップは、
スパッタリングターゲットと、高エネルギーのパルス反応性イオンビームを前記真空成膜チャンバ内に出射しこれを前記スパッタリングターゲットに導く装置と、所定の流量レートで導入した種々の混合ガスのプラズマを生成し前記真空成膜チャンバ内でプラズマを所望の相対濃度に保つ装置とを備えた真空成膜チャンバを用意するステップと、
前記磁気ディスク、一の磁気記録再生ヘッド、または複数の磁気記録再生ヘッドを前記真空成膜チャンバ内の前記保持部に装着してこれを回転させるステップと、
前記パルス反応性イオンビームの照準を前記スパッタリングターゲットに合わせるステップと、
アルゴンをキャリアガスとして用いて、酸素ガスと窒素ガスのプラズマを所定の濃度比で生成するステップと、
前記スパッタリングターゲットからスパッタされた材料を前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドに衝突させながら、または衝突させた後に、前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドを前記プラズマに触れさせることにより、前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドに前記下地層を形成するステップと
を含むことを特徴とする請求項27に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項56】
前記スパッタリングターゲットが、アルミニウム、酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムからなり、
前記酸化窒化物が、アルミニウム酸化窒化物AlOxNy(xは0ないし1.5、yは0ないし1)である
ことを特徴とする請求項55に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項57】
前記スパッタリングターゲットが、アルミニウム合金MezAl(Meは合金元素)、またその酸化物もしくは窒化物からなり、
前記酸化窒化物が、アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)である
ことを特徴とする請求項55に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項58】
前記合金元素Meがチタンであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項57に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項59】
前記合金元素Meがシリコンであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項57に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項60】
前記合金元素Meがクロムであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項57に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項61】
前記下地層を構成するアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)におけるxおよびyを、その下地層が形成されるのに従って変化させる
ことを特徴とする請求項55に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項62】
前記下地層を5nm未満の膜厚に形成する
ことを特徴とする請求項55に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項63】
前記プラズマとして、アルゴン/酸素プラズマを適用したのちこれに続いてアルゴン/窒素プラズマを適用するか、あるいは、アルゴン/窒素プラズマを適用したのちこれに続いてアルゴン/酸素プラズマを適用する
ことを特徴とする請求項55に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項64】
前記プラズマが、イオンビームプラズマ、ECR(electron cyclotron resonance)プラズマ、ICP(inductively coupled plasma)、またはCCP(capacitively coupled plasma)である
ことを特徴とする請求項55に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項1】
記録再生ヘッド部と、
前記記録再生ヘッド部上に設けられた2重保護層と
を備え、
前記2重保護層が、
前記記録再生ヘッド部における清浄化された基体表面にアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)からなる層として形成された密着性向上のための下地層と、
前記下地層の上に形成されたDLC(diamond-like carbon)からなる外側層と
を含むことを特徴とする磁気記録再生ヘッド。
【請求項2】
前記下地層を構成するアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)におけるxが0ないし1.5であり、yが0ないし1である
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項3】
前記下地層が、5nm未満の膜厚に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項4】
前記下地層が、2nm未満の膜厚に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項5】
前記下地層を構成するアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)におけるxおよびyが、その下地層の膜厚によって変化する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項6】
前記下地層が、酸素ガスおよび窒素ガス、または、酸素プラズマおよび窒素プラズマの存在の下で、反応性イオンビームスパッタリング、反応性パルスレーザ成膜(reactive pulsed lasr deposition)、反応性パルスイオンビームスパッタリング(pulsed reactive ion sputtering、またはフォーカス走査反応性イオンビームスパッタリング(scanning focused reactive ionbeam sputtering)により形成されたものである
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項7】
記録再生ヘッド部と、
前記記録再生ヘッド部上に設けられた2重保護層と
を備え、
前記2重保護層が、
前記記録再生ヘッド部における清浄化された基体表面にアルミニウム合金酸化窒化物(MeZAlOxNy)からなる層(Mezは、相対原子%がzである合金元素)として形成された密着向上のための下地層と、
前記下地層の上に形成されたDLCからなる外側層と
を含むことを特徴とする磁気記録再生ヘッド。
【請求項8】
前記合金元素Meがチタン(Ti)であり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項7に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項9】
前記合金元素Meがシリコン(Si)であり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項7に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項10】
前記合金元素Meがクロム(Cr)であり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項7に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項11】
前記下地層が、5nm未満の膜厚に形成されている
ことを特徴とする請求項7に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項12】
前記下地層を構成するアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)におけるx,yおよびzが、その下地層の膜厚によって変化する
ことを特徴とする請求項7に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項13】
前記下地層が、酸素ガスおよび窒素ガス、または、酸素プラズマおよび窒素プラズマの存在の下で、反応性イオンビームスパッタリング、反応性パルスレーザ成膜、反応性パルスイオンビームスパッタリング、またはフォーカス走査反応性イオンビームスパッタリングにより形成されたものである
ことを特徴とする請求項7に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項14】
磁気ディスク基板と、
前記磁気ディスク基板上に設けられた表面保護用の2重保護層と
を備え、
前記2重保護層が、
前記磁気ディスク基板上にアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)からなる層として形成された密着性向上のための下地層と、
前記下地層の上に形成されたDLCからなる被覆層と
を含むことを特徴とする磁気ディスク。
【請求項15】
前記下地層を構成するアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)におけるxが0ないし1.5であり、yが0ないし1である
ことを特徴とする請求項14に記載の磁気ディスク。
【請求項16】
前記下地層が、5nm未満の膜厚に形成されている
ことを特徴とする請求項14に記載の磁気ディスク。
【請求項17】
前記下地層が、2nm未満の膜厚に形成されている
ことを特徴とする請求項14に記載の磁気ディスク。
【請求項18】
前記下地層を構成するアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)におけるxおよびyが、その下地層の膜厚によって変化する
ことを特徴とする請求項14に記載の磁気ディスク。
【請求項19】
前記下地層が、酸素ガスおよび窒素ガス、または、酸素プラズマおよび窒素プラズマの存在の下で、反応性イオンビームスパッタリング、反応性パルスレーザ成膜、反応性パルスイオンビームスパッタリング、またはフォーカス走査反応性イオンビームスパッタリングにより形成されたものである
ことを特徴とする請求項14に記載の磁気ディスク。
【請求項20】
磁気ディスク基板と、
前記磁気ディスク基板上に設けられた表面保護用の2重保護層と
を備え、
前記2重保護層が、
前記磁気ディスク基板上にアルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)からなる層(Mezは、相対原子%がzである合金元素)として形成された密着性向上のための下地層と、
前記下地層の上に形成されたDLCからなる被覆層と
を含むことを特徴とする磁気ディスク。
【請求項21】
前記合金元素Meがチタンであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項20に記載の磁気ディスク。
【請求項22】
前記合金元素Meがシリコンであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項20に記載の磁気ディスク。
【請求項23】
前記合金元素Meがクロムであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項20に記載の磁気ディスク。
【請求項24】
前記下地層が、5nm未満の膜厚に形成されている
ことを特徴とする請求項20に記載の磁気ディスク。
【請求項25】
前記下地層を構成するアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)におけるx,yおよびzが、その下地層の膜厚によって変化する
ことを特徴とする請求項20に記載の磁気ディスク。
【請求項26】
前記下地層が、酸素ガスおよび窒素ガス、または、酸素プラズマおよび窒素プラズマの存在の下で、反応性イオンビームスパッタリング、反応性パルスレーザ成膜、反応性パルスイオンビームスパッタリング、またはフォーカス走査反応性イオンビームスパッタリングにより形成されたものである
ことを特徴とする請求項20に記載の磁気ディスク。
【請求項27】
磁気ディスク基板または一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドを用意するステップと、
前記磁気ディスク基板または一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドのしかるべき表面を清浄化するステップと、
前記表面にアルミニウム(Al)、チタンアルミニウム(TiAl)、シリコンアルミニウム(SiAl)、またはクロムアルミニウム(CrAl)の各酸化窒化物からなる密着性向上のための下地層を形成するステップと、
前記下地層の上にDLC層を形成するステップと
を含むことを特徴とする磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項28】
前記下地層の形成ステップは、
スパッタリングターゲットと、所定のエネルギーで反応性イオンビームを出射しイオンを前記スパッタリングターゲットに導く装置と、種々のガスを所定の流量レートで噴射し前記真空成膜チャンバ内で所望の相対濃度に保つ装置とを備えた真空成膜チャンバを用意するステップと、
前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドを前記真空成膜チャンバ内の前記保持部に装着してこれを回転させるステップと、
前記反応性イオンビームの照準を前記スパッタリングターゲットに合わせるステップと、
前記反応性イオンビームを前記スパッタリングターゲットに照射しながら、酸素ガス(O2)および窒素ガス(N2)を前記真空成膜チャンバ内に所定の相対濃度比で注入することにより前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドに前記下地層を形成するステップと
を含むことを特徴とする請求項27に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項29】
前記スパッタリングターゲットが、アルミニウム、酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムからなり、
前記酸化窒化物が、アルミニウム酸化窒化物(AlOxNy:xは0ないし1.5、yは0ないし1)である
ことを特徴とする請求項28に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項30】
前記スパッタリングターゲットが、アルミニウム合金MezAl(Meは合金元素)、またその酸化物もしくは窒化物からなり、
前記酸化窒化物が、アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)である
ことを特徴とする請求項28に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項31】
前記合金元素Meがチタンであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項30に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項32】
前記合金元素Meがシリコンであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項30に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項33】
前記合金元素Meがクロムであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項30に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項34】
前記酸素ガスおよび窒素ガスを0ないし20sccmの流量レートで注入する
ことを特徴とする請求項28に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項35】
前記反応性イオンビームが、300Vないし1200Vの電圧で加速することにより生成されるAr+イオンビームである
ことを特徴とする請求項28に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項36】
前記下地層を構成するアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)におけるxおよびyを、その下地層が形成されるのに従って変化させる
ことを特徴とする請求項29に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項37】
前記下地層の形成ステップは、
スパッタリングターゲットと、高エネルギーのパルス反応性イオンビームまたはフォーカス走査反応性イオンビームを前記真空成膜チャンバ内に出射しこれを前記スパッタリングターゲットに導く装置と、種々のガスを所定の流量レートで噴射し前記真空成膜チャンバ内で所望の相対濃度に保つ装置とを備えた真空成膜チャンバを用意するステップと、
前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドを前記真空成膜チャンバ内の前記保持部に装着してこれを回転させるステップと、
前記パルス反応性イオンビームまたはフォーカス走査反応性イオンビームの照準を前記スパッタリングターゲットに合わせるステップと、
前記パルス反応性イオンビームまたはフォーカス走査反応性イオンビームを前記スパッタリングターゲットに照射しながら、酸素ガスおよび窒素ガスを前記真空成膜チャンバ内に所定の相対濃度比で注入することにより、前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドに前記下地層を形成するステップと
を含むことを特徴とする請求項27に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項38】
前記スパッタリングターゲットが、アルミニウム、酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムからなり、
前記酸化窒化物が、アルミニウム酸化窒化物AlOxNy(xは0ないし1.5、yは0ないし1)である
ことを特徴とする請求項37に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項39】
前記スパッタリングターゲットが、アルミニウム合金MezAl(Meは合金元素)、またその酸化物もしくは窒化物からなり、
前記酸化窒化物が、アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)である
ことを特徴とする請求項37に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項40】
前記合金元素Meがチタンであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項39に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項41】
前記合金元素Meがシリコンであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項39に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項42】
前記合金元素Meがクロムであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項39に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項43】
前記酸素ガスおよび窒素ガスを0ないし20sccmの流量レートで注入する
ことを特徴とする請求項37に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項44】
前記下地層を構成するアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)におけるxおよびyを、その下地層が形成されるのに従って変化させる
ことを特徴とする請求項37に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項45】
前記下地層の形成ステップは、
スパッタリングターゲットと、高エネルギーの電磁放射ビームを前記真空成膜チャンバ内に出射しこれを前記スパッタリングターゲットに導く装置と、種々のガスを所定の流量レートで噴射し前記真空成膜チャンバ内で所望の相対濃度に保つ装置とを備えた真空成膜チャンバを用意するステップと、
前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドを前記真空成膜チャンバ内の前記保持部に装着してこれを回転させるステップと、
前記電磁放射ビームの照準を前記スパッタリングターゲットに合わせるステップと、
前記電磁放射ビームを前記スパッタリングターゲットに照射しながら、酸素ガスおよび窒素ガスを前記真空成膜チャンバ内に所定の相対濃度比で注入することにより、前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドに前記下地層を形成するステップと
を含むことを特徴とする請求項27に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項46】
前記スパッタリングターゲットが、アルミニウム、酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムからなり、
前記酸化窒化物が、アルミニウム酸化窒化物AlOxNy(xは0ないし1.5、yは0ないし1)である
ことを特徴とする請求項45に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項47】
前記スパッタリングターゲットが、アルミニウム合金MezAl(Meは合金元素)、またその酸化物もしくは窒化物からなり、
前記酸化窒化物が、アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)である
ことを特徴とする請求項45に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項48】
前記合金元素Meがチタンであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項47に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項49】
前記合金元素Meがシリコンであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項47に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項50】
前記合金元素Meがクロムであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項47に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項51】
前記電磁放射ビームを、高エネルギーの炭酸ガスパルスレーザまたはエキシマレーザにより生成する
ことを特徴とする請求項45に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項52】
前記酸素ガスおよび窒素ガスを0ないし20sccmの流量レートで注入する
ことを特徴とする請求項45に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項53】
前記下地層を構成するアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)におけるxおよびyを、その下地層が形成されるのに従って変化させる
ことを特徴とする請求項45に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項54】
前記下地層を5nm未満の膜厚に形成する
ことを特徴とする請求項45に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項55】
前記下地層の形成ステップは、
スパッタリングターゲットと、高エネルギーのパルス反応性イオンビームを前記真空成膜チャンバ内に出射しこれを前記スパッタリングターゲットに導く装置と、所定の流量レートで導入した種々の混合ガスのプラズマを生成し前記真空成膜チャンバ内でプラズマを所望の相対濃度に保つ装置とを備えた真空成膜チャンバを用意するステップと、
前記磁気ディスク、一の磁気記録再生ヘッド、または複数の磁気記録再生ヘッドを前記真空成膜チャンバ内の前記保持部に装着してこれを回転させるステップと、
前記パルス反応性イオンビームの照準を前記スパッタリングターゲットに合わせるステップと、
アルゴンをキャリアガスとして用いて、酸素ガスと窒素ガスのプラズマを所定の濃度比で生成するステップと、
前記スパッタリングターゲットからスパッタされた材料を前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドに衝突させながら、または衝突させた後に、前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドを前記プラズマに触れさせることにより、前記磁気ディスクまたは一もしくは複数の磁気記録再生ヘッドに前記下地層を形成するステップと
を含むことを特徴とする請求項27に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項56】
前記スパッタリングターゲットが、アルミニウム、酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムからなり、
前記酸化窒化物が、アルミニウム酸化窒化物AlOxNy(xは0ないし1.5、yは0ないし1)である
ことを特徴とする請求項55に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項57】
前記スパッタリングターゲットが、アルミニウム合金MezAl(Meは合金元素)、またその酸化物もしくは窒化物からなり、
前記酸化窒化物が、アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)である
ことを特徴とする請求項55に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項58】
前記合金元素Meがチタンであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項57に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項59】
前記合金元素Meがシリコンであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項57に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項60】
前記合金元素Meがクロムであり、
前記アルミニウム合金酸化窒化物(MezAlOxNy)におけるxが0ないし1.5+2zあり、yが0ないし1+1.3zであり、zが0ないし10である
ことを特徴とする請求項57に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項61】
前記下地層を構成するアルミニウム酸化窒化物(AlOxNy)におけるxおよびyを、その下地層が形成されるのに従って変化させる
ことを特徴とする請求項55に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項62】
前記下地層を5nm未満の膜厚に形成する
ことを特徴とする請求項55に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項63】
前記プラズマとして、アルゴン/酸素プラズマを適用したのちこれに続いてアルゴン/窒素プラズマを適用するか、あるいは、アルゴン/窒素プラズマを適用したのちこれに続いてアルゴン/酸素プラズマを適用する
ことを特徴とする請求項55に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【請求項64】
前記プラズマが、イオンビームプラズマ、ECR(electron cyclotron resonance)プラズマ、ICP(inductively coupled plasma)、またはCCP(capacitively coupled plasma)である
ことを特徴とする請求項55に記載の磁気記録再生ヘッドまたは磁気ディスクの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【公開番号】特開2008−176915(P2008−176915A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8496(P2008−8496)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】
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