磁気記録媒体及びその製造方法並びに記憶装置
【課題】磁気記録媒体及びその製造方法並びに記憶装置において、磁気記録層の磁性粒子の微細化と保磁力の向上を両立させることを目的とする。
【解決手段】基板の上方に軟磁性層、非磁性シード層、中間層及び磁気記録層が積層された磁気記録媒体において、非磁性シード層は、少なくともW又はCrの一方を含むNi合金で形成されており、非磁性シード層の成膜時に使用し、且つ、非磁性シード層内に残留する反応ガスのイオンカウントは、成膜時に基板バイアス電圧を印加しないで形成された基準非磁性シード層のイオンカウントの10倍以上であるように構成する。
【解決手段】基板の上方に軟磁性層、非磁性シード層、中間層及び磁気記録層が積層された磁気記録媒体において、非磁性シード層は、少なくともW又はCrの一方を含むNi合金で形成されており、非磁性シード層の成膜時に使用し、且つ、非磁性シード層内に残留する反応ガスのイオンカウントは、成膜時に基板バイアス電圧を印加しないで形成された基準非磁性シード層のイオンカウントの10倍以上であるように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体及びその製造方法並びに記憶装置に係り、特に垂直磁気記録方式に適した磁気記録媒体及びその製造方法並びに磁気記録媒体を備えた記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスクに代表される磁気記録媒体の記録密度は、垂直磁気記録方式の採用により著しく増大している。しかし、磁気ディスク装置に代表される記憶装置の用途の多様化に伴い、記憶装置の更なる大容量化に向けて磁気記録媒体の記録密度の更なる向上が要求されている。垂直磁気記録媒体の記録密度の向上及び媒体ノイズの低減を図るためには、磁気記録層の活性化体積を小さくすることが必須である。一方、磁気記録層の活性化体積を小さくすると、垂直磁気記録媒体が熱揺らぎに対して弱くなるため、熱安定性を維持或いは向上することが難しくなる。そこで、磁気記録層のグラニュラ化等により磁気記録層の磁性粒子の孤立化を促進させ、磁気記録層の保磁力を増大させることで媒体ノイズの低減と熱安定性を図ることが提案されている。
【0003】
磁気記録層の磁性粒子を磁気的に分離及び孤立化させて、磁気記録層の保磁力を増大させる1つの方法としては、磁性粒子内の磁気異方性を高めるような材料で磁気記録層を形成する方法がある。しかし、単に高い磁気異方性を有する材料を磁気記録層に用いたのでは、磁気ヘッドによる書き込み性能が劣化し易くなり、記録再生特性に与える悪影響が大きくなってしまう。
【0004】
又、磁気記録層の保磁力を増大させる他の方法として、結晶粒子が物理的に分離している構造を有する中間層を形成して、このような中間層の上に磁気記録層をエピタキシャル成長させて磁気記録層の磁性粒子を磁気的に分離する方法がある。しかし、磁気記録層の磁性粒子を磁気的に分離する効果を引き出すためには、中間層の下に形成されて中間層の結晶配向性を制御するシード層の結晶性が大きく影響する。
【0005】
つまり、シード層の結晶粒子表面の形状は、磁気記録層の結晶配向の分散に影響を及ぼし、この結晶配向の分散は磁性粒子の垂直磁気異方性の方向分散を悪化させてしまうと考えられるため、シード層の結晶性を制御する必要がある。シード層の結晶粒子の数及びサイズは、磁気記録層の磁性粒子に反映される。例えば、シード層の粒子径を小さくした場合には、シード層の表面における粒子1個当たりの結晶質部分の面積が減少し、この結晶質部分の面積の減少を反映した上方の磁気記録層においては、磁性粒子のサイズが小さくなる。一方、磁気記録層を十分に結晶成長をさせるには、磁気記録層の膜厚を比較的厚くする必要とするが、厚い磁気記録層は保磁力の向上には有効であるものの、結晶粒径の増大を招くため磁性粒子の微細化が困難になってしまう。
【特許文献1】特開2008−146801号公報
【特許文献2】特開2008−176858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、従来は、磁気記録層におけ結晶配向の分散を抑制し、且つ、磁性粒子の微細化と保磁力の向上を両立させることは難しいという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、磁気記録層の磁性粒子の微細化と保磁力の向上を両立させることが可能な磁気記録媒体及びその製造方法並びに記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、基板の上方に軟磁性層、非磁性シード層、中間層及び磁気記録層が積層された磁気記録媒体であって、前記非磁性シード層は、少なくともW又はCrの一方を含むNi合金で形成されており、前記非磁性シード層の成膜時に使用し、且つ、前記非磁性シード層内に残留する反応ガスのイオンカウントは、成膜時に基板バイアス電圧を印加しないで形成された基準非磁性シード層のイオンカウントの10倍以上である磁気記録媒体が提供される。
【0009】
本発明の一観点によれば、基板の上方に軟磁性層、非磁性シード層、中間層及び磁気記録層が積層された磁気記録媒体の製造方法であって、少なくともW又はCrの一方を含むNi合金ターゲットと反応ガスを用いたスパッタリング時に、負の基板バイアス電圧を前記基板に印加して前記非磁性シード層を形成する磁気記録媒体の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の一観点によれば、磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体に対する情報の記録と前記磁気記録媒体からの情報の読み出しを行うヘッドを備え、前記磁気記録媒体は、基板の上方に軟磁性層、非磁性シード層、中間層及び磁気記録層が積層された構造を有し、前記非磁性シード層は、少なくともW又はCrの一方を含むNi合金で形成されており、前記非磁性シード層の成膜時に使用し、且つ、前記非磁性シード層内に残留する反応ガスのイオンカウントは、成膜時に基板バイアス電圧を印加しないで形成された基準非磁性シード層のイオンカウントの10倍以上である記憶装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
開示の磁気記録媒体及びその製造方法並びに記憶装置によれば、磁気記録層の磁性粒子の微細化と保磁力の向上を両立させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
開示の磁気記録媒体及びその製造方法では、軟磁性層と中間層の間に形成するシード層を、W又はCrの少なくとも一方を含む非磁性Ni合金で、且つ、成膜中に基板に負のバイアス電圧を印加することで形成する。磁気記録層は、中間層の上方に形成する。この場合、磁気記録層の磁性粒子の磁気的な分離及び孤立化を悪化させずに保磁力を向上することが可能である。これにより、媒体ノイズを増加させることなく、磁気記録層の保磁力を増大させることが可能になる。
【0013】
以下に、本発明の磁気記録媒体及びその製造方法並びに記憶装置の各実施例を、図面と共に説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の一実施例における磁気記録媒体の一部を示す断面図である。本実施例では、本発明が垂直磁気記録媒体に適用されている。
【0015】
図1に示す磁気記録媒体103は、例えば非磁性アルミ基板1上に、各々の膜厚が適切に選定されたCrTi50密着層2、軟磁性層3、非磁性シード層4、Ru中間層5、非磁性中間層6、第1の磁性層7、第2の磁性層8、DLC(Diamond-Like Carbon)保護層9及びフッ素系潤滑層10が順次積層された構造を有する。第1及び第2の磁性層7,8は、多層構造の磁気記録層を構成する。
【0016】
基板1に用いる材料は、非磁性アルミに限定されない。又、軟磁性層3、非磁性中間層6、第1の磁性層7及び第2の磁性層8の材料は、適切に選定すれば良く、特定の材料の組み合わせに限定されるものではない。軟磁性層3は、例えば非晶質、或いは、析出型微結晶材料で形成される。
【0017】
磁気記録媒体103は、次のように製造された。先ず、表面が平滑な非磁性アルミ基板1上にDCマグネトロンスパッタ装置を用いて、CrTi50密着層2、軟磁性層3、NiWCrシード層4、Ru中間層5、非磁性中間層6、第1の磁性層7及び第2の磁性層8を成膜した。次に、DCL保護層9を第2の磁性層8上に形成し、更にフッ素系潤滑剤を塗布することで潤滑層10を形成した。本実施例では、第1及び第2の磁性層7,8の各々は、非磁性母体の中に強磁性粒子を分散させたグラニュラ膜とした。
【0018】
NiWCrターゲットとArガス等の反応ガスを用いたスパッタリングによりNiWCrシード層4を成膜する際には、基板1に負の基板バイアス電圧を印加した。本実施例では、NiWCrシード層4の組成(at.%)は、一例としてNiW7Cr8、NiW6Cr6に選定した。又、NiWCrシード層4の成膜時に印加する基板バイアス電圧を0V〜−500Vの範囲で変化させた。
【0019】
図2は、磁気記録層の保磁力のNiWCrシード層4の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。図2中、横軸はNiWCrシード層4の成膜時の基板バイアス電圧(−V)を示し、縦軸は特定の基板バイアス電圧(−V)の場合に測定された磁気記録層の保磁力Hc(Oe)を示す。図2において、△印はNiW7Cr8シード層4を用いた場合の測定結果、●印はNiW6Cr6シード層4を用いた場合の保磁力Hcの測定結果を示す。
【0020】
図2からわかるように、基板バイアス電圧が0Vの場合と比べ、負の基板バイアス電圧を印加することで、磁気記録層の保磁力Hcが大きく増加することが確認された。又、NiW7Cr8シード層4を用いた場合も、NiW6Cr6シード層4を用いた場合も、基板バイアス電圧が−200V〜−500Vの範囲で磁気記録層の保磁力Hcがピークを示す傾向にあり、この範囲の基板バイアス電圧を印加することが好ましいことが確認できた。更に、基板バイアス電圧が−200V〜−500Vの範囲の場合、磁気記録層の保磁力HcはNiW7Cr8シード層4を用いた場合の方が高くなることも確認された。
【0021】
図3は、VMM値のNiW6Cr6シード層4の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。図3中、横軸はNiW6Cr6シード層4の成膜時の基板バイアス電圧(−V)を示し、縦軸は特定の基板バイアス電圧(−V)の場合に測定された磁気記録媒体103のVMM値を示す。図3において、△印はNiW7Cr8シード層4を用いた場合のVMM値を示す。
【0022】
VMM値は、磁気記録媒体103に対してテストライト及びリードを行ってビタビ(Viterbi)復調法によりエラー訂正された再生信号の誤り率(又は、エラーレート)を示す。VMM値は、ビタビ復号器内での最も確からしい系列とそれ以外の系列のメトリクスがある閾値以下となる、即ち、再生信号の明瞭さが低下しているビット数を計数した値である。VMM値は、エラーレートと相関があり、VMM値が小さい方が磁気記録媒体の性能(又は、特性)が良いことを示す。
【0023】
図3からもわかるように、基板バイアス電圧が0Vの場合と比べ、負の基板バイアス電圧を印加することでVMM値が小さくなることが確認された。又、図3に示す負のバイアス電圧の印加に伴うVMM値の低下は、図2に示す保磁力Hcの変化と同期する傾向を示すことが確認された。更に、図3からもわかるように、基板バイアス電圧が−200V〜−500Vの範囲でVMM値が低下を示す傾向にあり、この範囲の基板バイアス電圧を印加することが好ましいことが確認できた。
【0024】
従って、図2及び図3の測定結果から、NiWCrシード層4の成膜時の基板バイアス電圧は、−200V〜−500Vの範囲であることが好ましいことが確認された。
【0025】
図4は、成膜時の基板バイアス電圧を0Vと−500Vに設定した場合のNiW7Cr8シード層4のX線解析結果を示す図である。図4は、NiW7Cr8シード層4の(111)面及び(220)面の配向性(deg)、パラメータa(Å),d(Å)及びRu中間層5との格子不整合(Ruミスマッチ)を示す。又、図4は、Ru中間層5の(002)Ru、(100)Ru、(110)Ruの配向性(deg)、Ru(002)面のΔθ50(deg)値、及びパラメータa(Å),d(Å),c(Å)を示す。尚、NiW7Cr8シード層4のRu中間層5との格子不整合は、Ru中間層5のパラメータdが2.725Åであるものとして算出した。
【0026】
図5は、パラメータa(Å),d(Å)を含むNiW7Cr8シード層4のfcc構造を示す図である。図6は、パラメータa(Å),d(Å),c(Å)を含むRu中間層5のhcp構造を示す図である。
【0027】
Ru中間層5のRu(002)のΔθ50値が小さい程、Ru中間層5上に形成される第1及び第2の磁性層7,8(即ち、磁気記録層)の配向性が良いことを示す。図7からもわかるように、NiW7Cr8シード層4の成膜時に負の基板バイアス電圧を印加することで、Ru中間層5のRu(002)のΔθ50値が小さくなり、磁気記録層の配向性が向上することが確認された。更に、NiW7Cr8シード層4の成膜時に負の基板バイアス電圧を印加することで、NiW7Cr8シード層4の格子間隔が広がり、Ru中間層5とのRuミスマッチが0.5%〜1.0%程度縮まることも確認された。
【0028】
このように、本実施例によれば、磁気記録層におけ結晶配向の分散を抑制し、且つ、磁性粒子の微細化と保磁力の向上を両立させることができることが確認された。
【0029】
図7は、磁気記録層の保磁力のNiWシード層4の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。図7中、横軸はNiWシード層4の成膜時の基板バイアス電圧(−V)を示し、縦軸は特定の基板バイアス電圧(−V)の場合に測定された磁気記録層の保磁力Hc(Oe)を示す。図7において、●印はNiWシード層4を用いた場合の保磁力Hcの測定結果を示す。
【0030】
図7からわかるように、基板バイアス電圧が0Vの場合と比べ、負の基板バイアス電圧を印加することで、磁気記録層の保磁力Hcが大きく増加することが確認された。又、基板バイアス電圧が−100V〜−300Vの範囲で磁気記録層の保磁力Hcがピークを示す傾向にあり、この範囲の基板バイアス電圧を印加することが好ましいことが確認できた。
【0031】
図8は、VMM値のNiWシード層4の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。図8中、横軸はNiWシード層4の成膜時の基板バイアス電圧(−V)を示し、縦軸は特定の基板バイアス電圧(−V)の場合に測定された磁気記録媒体103のVMM値を示す。図8において、●印はNiWシード層4を用いた場合のVMM値を示す。
【0032】
図8からもわかるように、基板バイアス電圧が0Vの場合と比べ、負の基板バイアス電圧を印加することでVMM値が小さくなることが確認された。又、図8に示す負のバイアス電圧の印加に伴うVMM値の低下は、図7に示す保磁力Hcの変化と同期する傾向を示すことが確認された。更に、図8からもわかるように、基板バイアス電圧が−100V〜−300Vの範囲でVMM値が低下を示す傾向にあり、この範囲の基板バイアス電圧を印加することが好ましいことが確認できた。
【0033】
従って、図7及び図8の測定結果から、NiWシード層4の成膜時の基板バイアス電圧は、−100V〜−300Vの範囲であることが好ましいことが確認された。
【0034】
図9は、磁気記録層の保磁力のNiCrシード層4の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。図9中、横軸はNiCrシード層4の成膜時の基板バイアス電圧(−V)を示し、縦軸は特定の基板バイアス電圧(−V)の場合に測定された磁気記録層の保磁力Hc(Oe)を示す。図9において、●印はNiCrシード層4を用いた場合の保磁力Hcの測定結果を示す。
【0035】
図9からわかるように、基板バイアス電圧が0Vの場合と比べ、負の基板バイアス電圧を印加することで、磁気記録層の保磁力Hcが大きく増加することが確認された。又、NiCrシード層4を用いた場合、基板バイアス電圧が−200V〜−350Vの範囲で磁気記録層の保磁力Hcがピークを示す傾向にあり、この範囲の基板バイアス電圧を印加することが好ましいことが確認できた。
【0036】
図10は、VMM値のNiCrシード層4の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。図10中、横軸はNiCrシード層4の成膜時の基板バイアス電圧(−V)を示し、縦軸は特定の基板バイアス電圧(−V)の場合に測定された磁気記録媒体103のVMM値を示す。図10において、●印はNiCrシード層4を用いた場合のVMM値を示す。
【0037】
図10からもわかるように、基板バイアス電圧が0Vの場合と比べ、負の基板バイアス電圧を印加することでVMM値が小さくなることが確認された。又、図10に示す負のバイアス電圧の印加に伴うVMM値の低下は、図9に示す保磁力Hcの変化と同期する傾向を示すことが確認された。更に、図10からもわかるように、基板バイアス電圧が−200V〜−350Vの範囲でVMM値が低下を示す傾向にあり、この範囲の基板バイアス電圧を印加することが好ましいことが確認できた。
【0038】
従って、図9及び図10の測定結果から、NiCrシード層4の成膜時の基板バイアス電圧は、−200V〜−350Vの範囲であることが好ましいことが確認された。
【0039】
上記を含む本発明者らによる実験結果によると、NiWCr又はNiWシード層4のW含有量は、好ましくは5at.%〜10at.%であることが確認され、NiWCr又はNiCrシード層4のCr含有量は、好ましくは5at.%〜10at.%であることが確認された。つまり、W又はCrの少なくとも一方を含むNi合金で形成されたシード層4のW含有量は好ましくは5at.%〜10at.%であり、Cr含有量は好ましくは5at.%〜10at.%であることが確認された。又、上記の実験結果はシード層4の膜厚が7.5nmの場合について示すが、シード層4の膜厚が5.0nm〜9.0nmの範囲であっても同様の実験結果が得られることが確認された。
【0040】
このように、非磁性シード層4を形成する際のDCマグネトロンスパッタの成膜条件、具体的には印加する基板バイアス電圧の範囲を適切に選定し、少なくともW又はCrの一方を含むNi合金ターゲットを用いてスパッタリングにより非磁性シード層4を形成することにより、媒体ノイズを増加させることなく上方に積層するグラニュラ磁気記録層の保磁力を増大させることが可能となる。
【0041】
尚、上記実施例では、第1及び第2の磁性層7,8の各々は、非磁性母体の中に強磁性粒子を分散させたグラニュラ膜としたが、第1の磁性層7又は第2の磁性層8の一方のみをグラニュラ膜としても良い。又、第1及び第2の磁性層7,8をグラニュラ膜ではない構成としても良いが、磁気記録層の保磁力の増大及び媒体ノイズの低減効果は、グラニュラ膜を用いた場合の方が大きい。
【0042】
ところで、上記実施例のように製造された磁気記録媒体103の非磁性シード層4が成膜時に基板バイアス電圧を印加されているか否かは、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)により磁気記録媒体103の分析を行うことで判断可能である。スパッタリングチャンバ内で非磁性シード層を形成すると、成膜時に使用したArガス、Krガス、Xeガス、Neガス等の反応ガスが非磁性シード層内に残留するが、残留する反応ガスの量は成膜時に上記の如き基板バイアス電圧を印加することで増加する。そこで、SIMSによる分析の結果、分析した非磁性シード層に残留する反応ガスのイオンカウント(Ion Intensity (counts/second))が、成膜時に基板バイアス電圧を印加しないで形成された基準非磁性シード層のイオンカウント(即ち、ベースライン)の10倍以上であれば、分析した非磁性シード層の成膜時には基板バイアス電圧が印加されたと考えられる。
【0043】
図11は、本発明の一実施例における記憶装置を示す平面図である。図11において、磁気記憶装置100はハウジング101を有する。ハウジング101内には、スピンドルモータ(図示せず)により駆動されるハブ102、ハブ102に固定され回転される磁気記録媒体(磁気ディスク)103、アクチュエータユニット104、アクチュエータユニット104に支持され、磁気ディスク103の半径方向に駆動されるアーム105及びサスペンション106、サスペンション106に支持されたスライダ108が設けられている。アクチュエータユニット104は、ヘッドの磁気ディスク103上の位置を制御する駆動部(又は、駆動手段)を構成する。磁気ディスク103は、図1に示す磁気記録媒体103の構造を有する。
【0044】
磁気ディスク103にデータを記録する際に用いる垂直磁気記録方式は、熱揺らぎに強い高保磁力を有する磁気記録媒体に対して磁気記録を行う熱アシスト磁気記録方式であっても良い。熱アシスト磁気記録方式の場合、光スポットを磁気記録媒体に照射して温度を上げることで熱スポットが形成される媒体部分の保磁力を低下させた状態で磁気記録を行う。
【0045】
スライダ108には、磁気ディスク103に情報を記録するライト素子と磁気ディスク103から情報を読み出すリード素子を一体的に有するヘッドが設けられている。スライダ108は、浮上面が磁気ディスク103の表面から所定量浮上した状態で磁気ディスク103上のトラックを走査する。尚、熱アシスト磁気記録方式を用いる場合、スライダ108に設けられたヘッドは光導波路部に伝搬光を供給する光源を更に一体的に有する。
【0046】
尚、磁気記憶装置100の基本構成は、図11に示すものに限定されるものではない。磁気ディスク103の数及びスライダ108の数は、1以上であれば良い。例えば、磁気ディスク103の両面に対して磁気記録再生を行う場合には、1つの磁気ディスク103に対して2つのスライダ108が設けられる。
【0047】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
基板の上方に軟磁性層、非磁性シード層、中間層及び磁気記録層が積層された磁気記録媒体であって、
前記非磁性シード層は、少なくともW又はCrの一方を含むNi合金で形成されており、
前記非磁性シード層の成膜時に使用し、且つ、前記非磁性シード層内に残留する反応ガスのイオンカウントは、成膜時に基板バイアス電圧を印加しないで形成された基準非磁性シード層のイオンカウントの10倍以上である、磁気記録媒体。
(付記2)
前記中間層はRuで形成されており、
前記磁気記録層は、前記前記中間層の上方に形成された第1の磁性層と、前記第1の磁性層上に形成された第2の磁性層を有し、
前記第1及び第2の磁性層の各々は、非磁性母体の中に強磁性粒子を分散させたグラニュラ膜である、付記1記載の磁気記録媒体。
(付記3)
前記非磁性シード層のW含有量は5at.%〜10at.%である、付記1又は2記載の磁気記録媒体。
(付記4)
前記非磁性シード層のCr含有量は5at.%〜10at.%である、付記1〜3のいずれか1項記載の磁気記録媒体。
(付記5)
前記非磁性シード層は、NiW7Cr8で形成されている、付記1又は2記載の磁気記録媒体。
(付記6)
前記中間層と前記磁気記録層の間に設けられた非磁性中間層を更に備えた、付記1〜5のいずれか1項記載の磁気記録媒体。
(付記7)
基板の上方に軟磁性層、非磁性シード層、中間層及び磁気記録層が積層された磁気記録媒体の製造方法であって、
少なくともW又はCrの一方を含むNi合金ターゲットと反応ガスを用いたスパッタリング時に、負の基板バイアス電圧を前記基板に印加して前記非磁性シード層を形成する、磁気記録媒体の製造方法。
(付記8)
前記中間層はRuで形成し、
前記Ni合金ターゲットはNiWCr合金で形成され、基板バイアス電圧は−200V〜−500Vの範囲に選定される、付記7記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記9)
前記中間層はRuで形成し、
前記Ni合金ターゲットはNiW合金で形成され、基板バイアス電圧は−100V〜−300Vの範囲に選定される、付記7記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記10)
前記非磁性シード層のW含有量は5at.%〜10at.%である、付記8又は9記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記11)
前記中間層はRuで形成し、
前記Ni合金ターゲットはNiCr合金で形成され、基板バイアス電圧は−200V〜−350Vの範囲に選定される、付記7記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記12)
前記非磁性シード層のCr含有量は5at.%〜10at.%である、付記8,10,11のいずれか1項記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記13)
前記前記中間層の上方に第1の磁性層を形成し、前記第1の磁性層上に第2の磁性層を形成することで前記磁気記録層を形成し、
前記第1及び第2の磁性層の各々は、非磁性母体の中に強磁性粒子を分散させたグラニュラ膜として形成される、付記7〜12のいずれか1項記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記14)
前記非磁性シード層内に残留する前記反応ガスのイオンカウントが、成膜時に基板バイアス電圧を印加しないで形成された基準非磁性シード層のイオンカウントの10倍以上となるように前記スパッタリングを行う、付記7〜13のいずれか1項記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記15)
磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に対する情報の記録と前記磁気記録媒体からの情報の読み出しを行うヘッドを備え、
前記磁気記録媒体は、基板の上方に軟磁性層、非磁性シード層、中間層及び磁気記録層が積層された構造を有し、
前記非磁性シード層は、少なくともW又はCrの一方を含むNi合金で形成されており、
前記非磁性シード層の成膜時に使用し、且つ、前記非磁性シード層内に残留する反応ガスのイオンカウントは、成膜時に基板バイアス電圧を印加しないで形成された基準非磁性シード層のイオンカウントの10倍以上である、記憶装置。
【0048】
以上、本発明を実施例により説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施例における磁気記録媒体の一部を示す断面図である。
【図2】磁気記録層の保磁力のNiWCrシード層の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。
【図3】VMM値のNiW6Cr6シード層の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。
【図4】成膜時の基板バイアス電圧を0Vと−500Vに設定した場合のNiW7Cr8シード層のX線解析結果を示す図である。
【図5】パラメータa,dを含むNiW7Cr8シード層のfcc構造を示す図である。
【図6】パラメータa,d,cを含むRu中間層のhcp構造を示す図である。
【図7】磁気記録層の保磁力のNiWシード層の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。
【図8】VMM値のNiWシード層の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。
【図9】磁気記録層の保磁力のNiCrシード層の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。
【図10】VMM値のNiCrシード層の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。
【図11】本発明の一実施例における記憶装置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 基板
2 密着層
3 軟磁性層
4 シード層
5 中間層
6 非磁性中間層
7 第1の磁性層
8 第2の磁性層
9 保護層
10 潤滑層
103 磁気記録媒体
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体及びその製造方法並びに記憶装置に係り、特に垂直磁気記録方式に適した磁気記録媒体及びその製造方法並びに磁気記録媒体を備えた記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスクに代表される磁気記録媒体の記録密度は、垂直磁気記録方式の採用により著しく増大している。しかし、磁気ディスク装置に代表される記憶装置の用途の多様化に伴い、記憶装置の更なる大容量化に向けて磁気記録媒体の記録密度の更なる向上が要求されている。垂直磁気記録媒体の記録密度の向上及び媒体ノイズの低減を図るためには、磁気記録層の活性化体積を小さくすることが必須である。一方、磁気記録層の活性化体積を小さくすると、垂直磁気記録媒体が熱揺らぎに対して弱くなるため、熱安定性を維持或いは向上することが難しくなる。そこで、磁気記録層のグラニュラ化等により磁気記録層の磁性粒子の孤立化を促進させ、磁気記録層の保磁力を増大させることで媒体ノイズの低減と熱安定性を図ることが提案されている。
【0003】
磁気記録層の磁性粒子を磁気的に分離及び孤立化させて、磁気記録層の保磁力を増大させる1つの方法としては、磁性粒子内の磁気異方性を高めるような材料で磁気記録層を形成する方法がある。しかし、単に高い磁気異方性を有する材料を磁気記録層に用いたのでは、磁気ヘッドによる書き込み性能が劣化し易くなり、記録再生特性に与える悪影響が大きくなってしまう。
【0004】
又、磁気記録層の保磁力を増大させる他の方法として、結晶粒子が物理的に分離している構造を有する中間層を形成して、このような中間層の上に磁気記録層をエピタキシャル成長させて磁気記録層の磁性粒子を磁気的に分離する方法がある。しかし、磁気記録層の磁性粒子を磁気的に分離する効果を引き出すためには、中間層の下に形成されて中間層の結晶配向性を制御するシード層の結晶性が大きく影響する。
【0005】
つまり、シード層の結晶粒子表面の形状は、磁気記録層の結晶配向の分散に影響を及ぼし、この結晶配向の分散は磁性粒子の垂直磁気異方性の方向分散を悪化させてしまうと考えられるため、シード層の結晶性を制御する必要がある。シード層の結晶粒子の数及びサイズは、磁気記録層の磁性粒子に反映される。例えば、シード層の粒子径を小さくした場合には、シード層の表面における粒子1個当たりの結晶質部分の面積が減少し、この結晶質部分の面積の減少を反映した上方の磁気記録層においては、磁性粒子のサイズが小さくなる。一方、磁気記録層を十分に結晶成長をさせるには、磁気記録層の膜厚を比較的厚くする必要とするが、厚い磁気記録層は保磁力の向上には有効であるものの、結晶粒径の増大を招くため磁性粒子の微細化が困難になってしまう。
【特許文献1】特開2008−146801号公報
【特許文献2】特開2008−176858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、従来は、磁気記録層におけ結晶配向の分散を抑制し、且つ、磁性粒子の微細化と保磁力の向上を両立させることは難しいという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、磁気記録層の磁性粒子の微細化と保磁力の向上を両立させることが可能な磁気記録媒体及びその製造方法並びに記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、基板の上方に軟磁性層、非磁性シード層、中間層及び磁気記録層が積層された磁気記録媒体であって、前記非磁性シード層は、少なくともW又はCrの一方を含むNi合金で形成されており、前記非磁性シード層の成膜時に使用し、且つ、前記非磁性シード層内に残留する反応ガスのイオンカウントは、成膜時に基板バイアス電圧を印加しないで形成された基準非磁性シード層のイオンカウントの10倍以上である磁気記録媒体が提供される。
【0009】
本発明の一観点によれば、基板の上方に軟磁性層、非磁性シード層、中間層及び磁気記録層が積層された磁気記録媒体の製造方法であって、少なくともW又はCrの一方を含むNi合金ターゲットと反応ガスを用いたスパッタリング時に、負の基板バイアス電圧を前記基板に印加して前記非磁性シード層を形成する磁気記録媒体の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の一観点によれば、磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体に対する情報の記録と前記磁気記録媒体からの情報の読み出しを行うヘッドを備え、前記磁気記録媒体は、基板の上方に軟磁性層、非磁性シード層、中間層及び磁気記録層が積層された構造を有し、前記非磁性シード層は、少なくともW又はCrの一方を含むNi合金で形成されており、前記非磁性シード層の成膜時に使用し、且つ、前記非磁性シード層内に残留する反応ガスのイオンカウントは、成膜時に基板バイアス電圧を印加しないで形成された基準非磁性シード層のイオンカウントの10倍以上である記憶装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
開示の磁気記録媒体及びその製造方法並びに記憶装置によれば、磁気記録層の磁性粒子の微細化と保磁力の向上を両立させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
開示の磁気記録媒体及びその製造方法では、軟磁性層と中間層の間に形成するシード層を、W又はCrの少なくとも一方を含む非磁性Ni合金で、且つ、成膜中に基板に負のバイアス電圧を印加することで形成する。磁気記録層は、中間層の上方に形成する。この場合、磁気記録層の磁性粒子の磁気的な分離及び孤立化を悪化させずに保磁力を向上することが可能である。これにより、媒体ノイズを増加させることなく、磁気記録層の保磁力を増大させることが可能になる。
【0013】
以下に、本発明の磁気記録媒体及びその製造方法並びに記憶装置の各実施例を、図面と共に説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の一実施例における磁気記録媒体の一部を示す断面図である。本実施例では、本発明が垂直磁気記録媒体に適用されている。
【0015】
図1に示す磁気記録媒体103は、例えば非磁性アルミ基板1上に、各々の膜厚が適切に選定されたCrTi50密着層2、軟磁性層3、非磁性シード層4、Ru中間層5、非磁性中間層6、第1の磁性層7、第2の磁性層8、DLC(Diamond-Like Carbon)保護層9及びフッ素系潤滑層10が順次積層された構造を有する。第1及び第2の磁性層7,8は、多層構造の磁気記録層を構成する。
【0016】
基板1に用いる材料は、非磁性アルミに限定されない。又、軟磁性層3、非磁性中間層6、第1の磁性層7及び第2の磁性層8の材料は、適切に選定すれば良く、特定の材料の組み合わせに限定されるものではない。軟磁性層3は、例えば非晶質、或いは、析出型微結晶材料で形成される。
【0017】
磁気記録媒体103は、次のように製造された。先ず、表面が平滑な非磁性アルミ基板1上にDCマグネトロンスパッタ装置を用いて、CrTi50密着層2、軟磁性層3、NiWCrシード層4、Ru中間層5、非磁性中間層6、第1の磁性層7及び第2の磁性層8を成膜した。次に、DCL保護層9を第2の磁性層8上に形成し、更にフッ素系潤滑剤を塗布することで潤滑層10を形成した。本実施例では、第1及び第2の磁性層7,8の各々は、非磁性母体の中に強磁性粒子を分散させたグラニュラ膜とした。
【0018】
NiWCrターゲットとArガス等の反応ガスを用いたスパッタリングによりNiWCrシード層4を成膜する際には、基板1に負の基板バイアス電圧を印加した。本実施例では、NiWCrシード層4の組成(at.%)は、一例としてNiW7Cr8、NiW6Cr6に選定した。又、NiWCrシード層4の成膜時に印加する基板バイアス電圧を0V〜−500Vの範囲で変化させた。
【0019】
図2は、磁気記録層の保磁力のNiWCrシード層4の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。図2中、横軸はNiWCrシード層4の成膜時の基板バイアス電圧(−V)を示し、縦軸は特定の基板バイアス電圧(−V)の場合に測定された磁気記録層の保磁力Hc(Oe)を示す。図2において、△印はNiW7Cr8シード層4を用いた場合の測定結果、●印はNiW6Cr6シード層4を用いた場合の保磁力Hcの測定結果を示す。
【0020】
図2からわかるように、基板バイアス電圧が0Vの場合と比べ、負の基板バイアス電圧を印加することで、磁気記録層の保磁力Hcが大きく増加することが確認された。又、NiW7Cr8シード層4を用いた場合も、NiW6Cr6シード層4を用いた場合も、基板バイアス電圧が−200V〜−500Vの範囲で磁気記録層の保磁力Hcがピークを示す傾向にあり、この範囲の基板バイアス電圧を印加することが好ましいことが確認できた。更に、基板バイアス電圧が−200V〜−500Vの範囲の場合、磁気記録層の保磁力HcはNiW7Cr8シード層4を用いた場合の方が高くなることも確認された。
【0021】
図3は、VMM値のNiW6Cr6シード層4の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。図3中、横軸はNiW6Cr6シード層4の成膜時の基板バイアス電圧(−V)を示し、縦軸は特定の基板バイアス電圧(−V)の場合に測定された磁気記録媒体103のVMM値を示す。図3において、△印はNiW7Cr8シード層4を用いた場合のVMM値を示す。
【0022】
VMM値は、磁気記録媒体103に対してテストライト及びリードを行ってビタビ(Viterbi)復調法によりエラー訂正された再生信号の誤り率(又は、エラーレート)を示す。VMM値は、ビタビ復号器内での最も確からしい系列とそれ以外の系列のメトリクスがある閾値以下となる、即ち、再生信号の明瞭さが低下しているビット数を計数した値である。VMM値は、エラーレートと相関があり、VMM値が小さい方が磁気記録媒体の性能(又は、特性)が良いことを示す。
【0023】
図3からもわかるように、基板バイアス電圧が0Vの場合と比べ、負の基板バイアス電圧を印加することでVMM値が小さくなることが確認された。又、図3に示す負のバイアス電圧の印加に伴うVMM値の低下は、図2に示す保磁力Hcの変化と同期する傾向を示すことが確認された。更に、図3からもわかるように、基板バイアス電圧が−200V〜−500Vの範囲でVMM値が低下を示す傾向にあり、この範囲の基板バイアス電圧を印加することが好ましいことが確認できた。
【0024】
従って、図2及び図3の測定結果から、NiWCrシード層4の成膜時の基板バイアス電圧は、−200V〜−500Vの範囲であることが好ましいことが確認された。
【0025】
図4は、成膜時の基板バイアス電圧を0Vと−500Vに設定した場合のNiW7Cr8シード層4のX線解析結果を示す図である。図4は、NiW7Cr8シード層4の(111)面及び(220)面の配向性(deg)、パラメータa(Å),d(Å)及びRu中間層5との格子不整合(Ruミスマッチ)を示す。又、図4は、Ru中間層5の(002)Ru、(100)Ru、(110)Ruの配向性(deg)、Ru(002)面のΔθ50(deg)値、及びパラメータa(Å),d(Å),c(Å)を示す。尚、NiW7Cr8シード層4のRu中間層5との格子不整合は、Ru中間層5のパラメータdが2.725Åであるものとして算出した。
【0026】
図5は、パラメータa(Å),d(Å)を含むNiW7Cr8シード層4のfcc構造を示す図である。図6は、パラメータa(Å),d(Å),c(Å)を含むRu中間層5のhcp構造を示す図である。
【0027】
Ru中間層5のRu(002)のΔθ50値が小さい程、Ru中間層5上に形成される第1及び第2の磁性層7,8(即ち、磁気記録層)の配向性が良いことを示す。図7からもわかるように、NiW7Cr8シード層4の成膜時に負の基板バイアス電圧を印加することで、Ru中間層5のRu(002)のΔθ50値が小さくなり、磁気記録層の配向性が向上することが確認された。更に、NiW7Cr8シード層4の成膜時に負の基板バイアス電圧を印加することで、NiW7Cr8シード層4の格子間隔が広がり、Ru中間層5とのRuミスマッチが0.5%〜1.0%程度縮まることも確認された。
【0028】
このように、本実施例によれば、磁気記録層におけ結晶配向の分散を抑制し、且つ、磁性粒子の微細化と保磁力の向上を両立させることができることが確認された。
【0029】
図7は、磁気記録層の保磁力のNiWシード層4の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。図7中、横軸はNiWシード層4の成膜時の基板バイアス電圧(−V)を示し、縦軸は特定の基板バイアス電圧(−V)の場合に測定された磁気記録層の保磁力Hc(Oe)を示す。図7において、●印はNiWシード層4を用いた場合の保磁力Hcの測定結果を示す。
【0030】
図7からわかるように、基板バイアス電圧が0Vの場合と比べ、負の基板バイアス電圧を印加することで、磁気記録層の保磁力Hcが大きく増加することが確認された。又、基板バイアス電圧が−100V〜−300Vの範囲で磁気記録層の保磁力Hcがピークを示す傾向にあり、この範囲の基板バイアス電圧を印加することが好ましいことが確認できた。
【0031】
図8は、VMM値のNiWシード層4の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。図8中、横軸はNiWシード層4の成膜時の基板バイアス電圧(−V)を示し、縦軸は特定の基板バイアス電圧(−V)の場合に測定された磁気記録媒体103のVMM値を示す。図8において、●印はNiWシード層4を用いた場合のVMM値を示す。
【0032】
図8からもわかるように、基板バイアス電圧が0Vの場合と比べ、負の基板バイアス電圧を印加することでVMM値が小さくなることが確認された。又、図8に示す負のバイアス電圧の印加に伴うVMM値の低下は、図7に示す保磁力Hcの変化と同期する傾向を示すことが確認された。更に、図8からもわかるように、基板バイアス電圧が−100V〜−300Vの範囲でVMM値が低下を示す傾向にあり、この範囲の基板バイアス電圧を印加することが好ましいことが確認できた。
【0033】
従って、図7及び図8の測定結果から、NiWシード層4の成膜時の基板バイアス電圧は、−100V〜−300Vの範囲であることが好ましいことが確認された。
【0034】
図9は、磁気記録層の保磁力のNiCrシード層4の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。図9中、横軸はNiCrシード層4の成膜時の基板バイアス電圧(−V)を示し、縦軸は特定の基板バイアス電圧(−V)の場合に測定された磁気記録層の保磁力Hc(Oe)を示す。図9において、●印はNiCrシード層4を用いた場合の保磁力Hcの測定結果を示す。
【0035】
図9からわかるように、基板バイアス電圧が0Vの場合と比べ、負の基板バイアス電圧を印加することで、磁気記録層の保磁力Hcが大きく増加することが確認された。又、NiCrシード層4を用いた場合、基板バイアス電圧が−200V〜−350Vの範囲で磁気記録層の保磁力Hcがピークを示す傾向にあり、この範囲の基板バイアス電圧を印加することが好ましいことが確認できた。
【0036】
図10は、VMM値のNiCrシード層4の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。図10中、横軸はNiCrシード層4の成膜時の基板バイアス電圧(−V)を示し、縦軸は特定の基板バイアス電圧(−V)の場合に測定された磁気記録媒体103のVMM値を示す。図10において、●印はNiCrシード層4を用いた場合のVMM値を示す。
【0037】
図10からもわかるように、基板バイアス電圧が0Vの場合と比べ、負の基板バイアス電圧を印加することでVMM値が小さくなることが確認された。又、図10に示す負のバイアス電圧の印加に伴うVMM値の低下は、図9に示す保磁力Hcの変化と同期する傾向を示すことが確認された。更に、図10からもわかるように、基板バイアス電圧が−200V〜−350Vの範囲でVMM値が低下を示す傾向にあり、この範囲の基板バイアス電圧を印加することが好ましいことが確認できた。
【0038】
従って、図9及び図10の測定結果から、NiCrシード層4の成膜時の基板バイアス電圧は、−200V〜−350Vの範囲であることが好ましいことが確認された。
【0039】
上記を含む本発明者らによる実験結果によると、NiWCr又はNiWシード層4のW含有量は、好ましくは5at.%〜10at.%であることが確認され、NiWCr又はNiCrシード層4のCr含有量は、好ましくは5at.%〜10at.%であることが確認された。つまり、W又はCrの少なくとも一方を含むNi合金で形成されたシード層4のW含有量は好ましくは5at.%〜10at.%であり、Cr含有量は好ましくは5at.%〜10at.%であることが確認された。又、上記の実験結果はシード層4の膜厚が7.5nmの場合について示すが、シード層4の膜厚が5.0nm〜9.0nmの範囲であっても同様の実験結果が得られることが確認された。
【0040】
このように、非磁性シード層4を形成する際のDCマグネトロンスパッタの成膜条件、具体的には印加する基板バイアス電圧の範囲を適切に選定し、少なくともW又はCrの一方を含むNi合金ターゲットを用いてスパッタリングにより非磁性シード層4を形成することにより、媒体ノイズを増加させることなく上方に積層するグラニュラ磁気記録層の保磁力を増大させることが可能となる。
【0041】
尚、上記実施例では、第1及び第2の磁性層7,8の各々は、非磁性母体の中に強磁性粒子を分散させたグラニュラ膜としたが、第1の磁性層7又は第2の磁性層8の一方のみをグラニュラ膜としても良い。又、第1及び第2の磁性層7,8をグラニュラ膜ではない構成としても良いが、磁気記録層の保磁力の増大及び媒体ノイズの低減効果は、グラニュラ膜を用いた場合の方が大きい。
【0042】
ところで、上記実施例のように製造された磁気記録媒体103の非磁性シード層4が成膜時に基板バイアス電圧を印加されているか否かは、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)により磁気記録媒体103の分析を行うことで判断可能である。スパッタリングチャンバ内で非磁性シード層を形成すると、成膜時に使用したArガス、Krガス、Xeガス、Neガス等の反応ガスが非磁性シード層内に残留するが、残留する反応ガスの量は成膜時に上記の如き基板バイアス電圧を印加することで増加する。そこで、SIMSによる分析の結果、分析した非磁性シード層に残留する反応ガスのイオンカウント(Ion Intensity (counts/second))が、成膜時に基板バイアス電圧を印加しないで形成された基準非磁性シード層のイオンカウント(即ち、ベースライン)の10倍以上であれば、分析した非磁性シード層の成膜時には基板バイアス電圧が印加されたと考えられる。
【0043】
図11は、本発明の一実施例における記憶装置を示す平面図である。図11において、磁気記憶装置100はハウジング101を有する。ハウジング101内には、スピンドルモータ(図示せず)により駆動されるハブ102、ハブ102に固定され回転される磁気記録媒体(磁気ディスク)103、アクチュエータユニット104、アクチュエータユニット104に支持され、磁気ディスク103の半径方向に駆動されるアーム105及びサスペンション106、サスペンション106に支持されたスライダ108が設けられている。アクチュエータユニット104は、ヘッドの磁気ディスク103上の位置を制御する駆動部(又は、駆動手段)を構成する。磁気ディスク103は、図1に示す磁気記録媒体103の構造を有する。
【0044】
磁気ディスク103にデータを記録する際に用いる垂直磁気記録方式は、熱揺らぎに強い高保磁力を有する磁気記録媒体に対して磁気記録を行う熱アシスト磁気記録方式であっても良い。熱アシスト磁気記録方式の場合、光スポットを磁気記録媒体に照射して温度を上げることで熱スポットが形成される媒体部分の保磁力を低下させた状態で磁気記録を行う。
【0045】
スライダ108には、磁気ディスク103に情報を記録するライト素子と磁気ディスク103から情報を読み出すリード素子を一体的に有するヘッドが設けられている。スライダ108は、浮上面が磁気ディスク103の表面から所定量浮上した状態で磁気ディスク103上のトラックを走査する。尚、熱アシスト磁気記録方式を用いる場合、スライダ108に設けられたヘッドは光導波路部に伝搬光を供給する光源を更に一体的に有する。
【0046】
尚、磁気記憶装置100の基本構成は、図11に示すものに限定されるものではない。磁気ディスク103の数及びスライダ108の数は、1以上であれば良い。例えば、磁気ディスク103の両面に対して磁気記録再生を行う場合には、1つの磁気ディスク103に対して2つのスライダ108が設けられる。
【0047】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
基板の上方に軟磁性層、非磁性シード層、中間層及び磁気記録層が積層された磁気記録媒体であって、
前記非磁性シード層は、少なくともW又はCrの一方を含むNi合金で形成されており、
前記非磁性シード層の成膜時に使用し、且つ、前記非磁性シード層内に残留する反応ガスのイオンカウントは、成膜時に基板バイアス電圧を印加しないで形成された基準非磁性シード層のイオンカウントの10倍以上である、磁気記録媒体。
(付記2)
前記中間層はRuで形成されており、
前記磁気記録層は、前記前記中間層の上方に形成された第1の磁性層と、前記第1の磁性層上に形成された第2の磁性層を有し、
前記第1及び第2の磁性層の各々は、非磁性母体の中に強磁性粒子を分散させたグラニュラ膜である、付記1記載の磁気記録媒体。
(付記3)
前記非磁性シード層のW含有量は5at.%〜10at.%である、付記1又は2記載の磁気記録媒体。
(付記4)
前記非磁性シード層のCr含有量は5at.%〜10at.%である、付記1〜3のいずれか1項記載の磁気記録媒体。
(付記5)
前記非磁性シード層は、NiW7Cr8で形成されている、付記1又は2記載の磁気記録媒体。
(付記6)
前記中間層と前記磁気記録層の間に設けられた非磁性中間層を更に備えた、付記1〜5のいずれか1項記載の磁気記録媒体。
(付記7)
基板の上方に軟磁性層、非磁性シード層、中間層及び磁気記録層が積層された磁気記録媒体の製造方法であって、
少なくともW又はCrの一方を含むNi合金ターゲットと反応ガスを用いたスパッタリング時に、負の基板バイアス電圧を前記基板に印加して前記非磁性シード層を形成する、磁気記録媒体の製造方法。
(付記8)
前記中間層はRuで形成し、
前記Ni合金ターゲットはNiWCr合金で形成され、基板バイアス電圧は−200V〜−500Vの範囲に選定される、付記7記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記9)
前記中間層はRuで形成し、
前記Ni合金ターゲットはNiW合金で形成され、基板バイアス電圧は−100V〜−300Vの範囲に選定される、付記7記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記10)
前記非磁性シード層のW含有量は5at.%〜10at.%である、付記8又は9記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記11)
前記中間層はRuで形成し、
前記Ni合金ターゲットはNiCr合金で形成され、基板バイアス電圧は−200V〜−350Vの範囲に選定される、付記7記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記12)
前記非磁性シード層のCr含有量は5at.%〜10at.%である、付記8,10,11のいずれか1項記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記13)
前記前記中間層の上方に第1の磁性層を形成し、前記第1の磁性層上に第2の磁性層を形成することで前記磁気記録層を形成し、
前記第1及び第2の磁性層の各々は、非磁性母体の中に強磁性粒子を分散させたグラニュラ膜として形成される、付記7〜12のいずれか1項記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記14)
前記非磁性シード層内に残留する前記反応ガスのイオンカウントが、成膜時に基板バイアス電圧を印加しないで形成された基準非磁性シード層のイオンカウントの10倍以上となるように前記スパッタリングを行う、付記7〜13のいずれか1項記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記15)
磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に対する情報の記録と前記磁気記録媒体からの情報の読み出しを行うヘッドを備え、
前記磁気記録媒体は、基板の上方に軟磁性層、非磁性シード層、中間層及び磁気記録層が積層された構造を有し、
前記非磁性シード層は、少なくともW又はCrの一方を含むNi合金で形成されており、
前記非磁性シード層の成膜時に使用し、且つ、前記非磁性シード層内に残留する反応ガスのイオンカウントは、成膜時に基板バイアス電圧を印加しないで形成された基準非磁性シード層のイオンカウントの10倍以上である、記憶装置。
【0048】
以上、本発明を実施例により説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施例における磁気記録媒体の一部を示す断面図である。
【図2】磁気記録層の保磁力のNiWCrシード層の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。
【図3】VMM値のNiW6Cr6シード層の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。
【図4】成膜時の基板バイアス電圧を0Vと−500Vに設定した場合のNiW7Cr8シード層のX線解析結果を示す図である。
【図5】パラメータa,dを含むNiW7Cr8シード層のfcc構造を示す図である。
【図6】パラメータa,d,cを含むRu中間層のhcp構造を示す図である。
【図7】磁気記録層の保磁力のNiWシード層の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。
【図8】VMM値のNiWシード層の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。
【図9】磁気記録層の保磁力のNiCrシード層の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。
【図10】VMM値のNiCrシード層の成膜時の基板バイアス電圧に対する依存性を示す図である。
【図11】本発明の一実施例における記憶装置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 基板
2 密着層
3 軟磁性層
4 シード層
5 中間層
6 非磁性中間層
7 第1の磁性層
8 第2の磁性層
9 保護層
10 潤滑層
103 磁気記録媒体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上方に軟磁性層、非磁性シード層、中間層及び磁気記録層が積層された磁気記録媒体であって、
前記非磁性シード層は、少なくともW又はCrの一方を含むNi合金で形成されており、
前記非磁性シード層の成膜時に使用し、且つ、前記非磁性シード層内に残留する反応ガスのイオンカウントは、成膜時に基板バイアス電圧を印加しないで形成された基準非磁性シード層のイオンカウントの10倍以上である、磁気記録媒体。
【請求項2】
前記中間層はRuで形成されており、
前記磁気記録層は、前記前記中間層の上方に形成された第1の磁性層と、前記第1の磁性層上に形成された第2の磁性層を有し、
前記第1及び第2の磁性層の各々は、非磁性母体の中に強磁性粒子を分散させたグラニュラ膜である、請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
基板の上方に軟磁性層、非磁性シード層、中間層及び磁気記録層が積層された磁気記録媒体の製造方法であって、
少なくともW又はCrの一方を含むNi合金ターゲットと反応ガスを用いたスパッタリング時に、負の基板バイアス電圧を前記基板に印加して前記非磁性シード層を形成する、磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記非磁性シード層のCr含有量は5at.%〜10at.%である、請求項1又は2記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
基板の上方に軟磁性層、非磁性シード層、中間層及び磁気記録層が積層された磁気記録媒体の製造方法であって、
少なくともW又はCrの一方を含むNi合金ターゲットと反応ガスを用いたスパッタリング時に、負の基板バイアス電圧を前記基板に印加して前記非磁性シード層を形成する、磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】
前記中間層はRuで形成し、
前記Ni合金ターゲットはNiWCr合金で形成され、基板バイアス電圧は−200V〜−500Vの範囲に選定される、請求項5記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】
前記中間層はRuで形成し、
前記Ni合金ターゲットはNiW合金で形成され、基板バイアス電圧は−100V〜−300Vの範囲に選定される、請求項5記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】
前記非磁性シード層のW含有量は5at.%〜10at.%である、請求項6又は7記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項9】
前記中間層はRuで形成し、
前記Ni合金ターゲットはNiCr合金で形成され、基板バイアス電圧は−200V〜−350Vの範囲に選定される、請求項5記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項10】
前記非磁性シード層のCr含有量は5at.%〜10at.%である、請求項6,8,9のいずれか1項記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項11】
磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に対する情報の記録と前記磁気記録媒体からの情報の読み出しを行うヘッドを備え、
前記磁気記録媒体は、基板の上方に軟磁性層、非磁性シード層、中間層及び磁気記録層が積層された構造を有し、
前記非磁性シード層は、少なくともW又はCrの一方を含むNi合金で形成されており、
前記非磁性シード層の成膜時に使用し、且つ、前記非磁性シード層内に残留する反応ガスのイオンカウントは、成膜時に基板バイアス電圧を印加しないで形成された基準非磁性シード層のイオンカウントの10倍以上である、記憶装置。
【請求項1】
基板の上方に軟磁性層、非磁性シード層、中間層及び磁気記録層が積層された磁気記録媒体であって、
前記非磁性シード層は、少なくともW又はCrの一方を含むNi合金で形成されており、
前記非磁性シード層の成膜時に使用し、且つ、前記非磁性シード層内に残留する反応ガスのイオンカウントは、成膜時に基板バイアス電圧を印加しないで形成された基準非磁性シード層のイオンカウントの10倍以上である、磁気記録媒体。
【請求項2】
前記中間層はRuで形成されており、
前記磁気記録層は、前記前記中間層の上方に形成された第1の磁性層と、前記第1の磁性層上に形成された第2の磁性層を有し、
前記第1及び第2の磁性層の各々は、非磁性母体の中に強磁性粒子を分散させたグラニュラ膜である、請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
基板の上方に軟磁性層、非磁性シード層、中間層及び磁気記録層が積層された磁気記録媒体の製造方法であって、
少なくともW又はCrの一方を含むNi合金ターゲットと反応ガスを用いたスパッタリング時に、負の基板バイアス電圧を前記基板に印加して前記非磁性シード層を形成する、磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記非磁性シード層のCr含有量は5at.%〜10at.%である、請求項1又は2記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
基板の上方に軟磁性層、非磁性シード層、中間層及び磁気記録層が積層された磁気記録媒体の製造方法であって、
少なくともW又はCrの一方を含むNi合金ターゲットと反応ガスを用いたスパッタリング時に、負の基板バイアス電圧を前記基板に印加して前記非磁性シード層を形成する、磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】
前記中間層はRuで形成し、
前記Ni合金ターゲットはNiWCr合金で形成され、基板バイアス電圧は−200V〜−500Vの範囲に選定される、請求項5記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】
前記中間層はRuで形成し、
前記Ni合金ターゲットはNiW合金で形成され、基板バイアス電圧は−100V〜−300Vの範囲に選定される、請求項5記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】
前記非磁性シード層のW含有量は5at.%〜10at.%である、請求項6又は7記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項9】
前記中間層はRuで形成し、
前記Ni合金ターゲットはNiCr合金で形成され、基板バイアス電圧は−200V〜−350Vの範囲に選定される、請求項5記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項10】
前記非磁性シード層のCr含有量は5at.%〜10at.%である、請求項6,8,9のいずれか1項記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項11】
磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に対する情報の記録と前記磁気記録媒体からの情報の読み出しを行うヘッドを備え、
前記磁気記録媒体は、基板の上方に軟磁性層、非磁性シード層、中間層及び磁気記録層が積層された構造を有し、
前記非磁性シード層は、少なくともW又はCrの一方を含むNi合金で形成されており、
前記非磁性シード層の成膜時に使用し、且つ、前記非磁性シード層内に残留する反応ガスのイオンカウントは、成膜時に基板バイアス電圧を印加しないで形成された基準非磁性シード層のイオンカウントの10倍以上である、記憶装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−129115(P2010−129115A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301665(P2008−301665)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
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