説明

磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法および装置

【課題】 ガラス基板を研磨後、洗浄液中に浸漬して洗浄するに当たり、処理中の基板に洗浄液の乾燥による新たな欠陥が生じるのを防止することのできる磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法および装置を提供する。
【解決手段】 ガラス基板を研磨砥粒を用いて研磨した後、洗浄液に浸漬して洗浄するための洗浄液を含む洗浄槽が設置された洗浄装置内を加湿するための加湿装置を設け、洗浄装置内を加湿して洗浄処理操作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法および装置に関する。より詳しくは、本発明は、ガラス基板を研磨後、テクスチャー処理前に、洗浄を行うことからなる磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク等の磁気記録媒体に用いるためのガラス基板には、高度の平坦性や平滑性が求められる。そのため、ガラス基板は、その表面の研磨のための工程とそれに続く洗浄工程に付される。そして、これによって得られた磁気記録媒体用ガラス基板は、表面処理のためのテクスチャー工程に付される。
【0003】
ガラス基板表面を効率よく研磨するためには、研磨剤として、酸化セリウムを酸化ジルコニウム等の研磨砥粒が用いられるが、これらの研磨砥粒はガラス表面に付着するという問題がある。そのため、研磨工程で付着した研磨砥粒やガラスの削り屑等を、テクスチャー処理の前に、洗浄により除去することが必要になる。
【0004】
磁気記録媒体用ガラス基板の製造において、ガラス基板を蓚酸等の有機酸やフッ酸、硫酸、硝酸、燐酸、塩酸等の無機酸の水溶液または強アルカリ水溶液を用いて洗浄することは知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。かかる洗浄は、一般に、洗浄槽を設置した洗浄装置内にその上部からクリーンエアを送り込みながら、研磨後のガラス基板を多数枚(通常約50〜100枚)まとめて洗浄用の基板キャリアに装填した状態で洗浄槽に充填された洗浄液中に浸漬し、所定時間後に洗浄槽から引き上げることにより行われる。この場合、かかる洗浄槽は通常洗浄装置内に複数槽が、場合によっては数槽から数十槽が設置され、洗浄液での洗浄や水洗が繰り返して行われるのが普通である。
【0005】
しかるに、この場合、基板キャリアを1つの洗浄槽から引き上げて次の洗浄槽まで移送して再び浸漬を行うまでに相当の時間を要する場合があり、その間に基板表面が乾燥し、液中に含まれていた異物の粒子が凝集して処理中の基板の表面に新たな欠陥が発生することがある。
【0006】
【特許文献1】特開2004−2163号公報
【特許文献2】特開2000−311336号公報
【特許文献3】特開2000−302482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ガラス基板を研磨後、洗浄液中に浸漬して洗浄するに当たり、処理中の基板に洗浄液の乾燥による新たな欠陥が生じるのを防止することのできる磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法および装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討の結果、ガラス基板の研磨後の洗浄液による浸漬洗浄する際に、洗浄液を収納する洗浄槽を設置した洗浄装置内を加湿することにより基板表面に新たに欠陥が生じるのを防止することができることを見出し、この知見に基づき本発明を完成させるに至ったものである。
【0009】
よって、本発明は、例えば、下記の事項からなる。
【0010】
〔1〕 ガラス基板を研磨砥粒を用いて研磨した後、洗浄装置内に設置した洗浄槽中の洗浄液に浸漬して洗浄するに当たり、洗浄装置内を加湿して洗浄処理操作を行うことを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【0011】
〔2〕 ガラス基板を研磨砥粒を用いて研磨した後、洗浄液に浸漬して洗浄するための洗浄液を含む洗浄槽が設置された洗浄装置内を加湿するための加湿装置を設けたことを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板の製造装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、研磨後のガラス基板を洗浄するに当たり、基板表面に新たな欠陥を生じさせることなく磁気記録媒体用ガラス基板を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき説明する。ただし、これらの説明は本発明を実施する場合の好ましい例を具体的に説明することを主眼とするものであって、これによって本発明に何らの限定を加えようとするものではないことを理解されたい。
【0014】
本発明においては、好ましくは、ガラス基板として通常の板状ガラスが用いられる。
【0015】
ガラス基板表面の研磨には、研磨剤として、酸化セリウムや酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素などの研磨砥粒を用いることができる。なかでも、研磨効率等の観点から、酸化セリウムからなる研磨砥粒を用いるのが好ましい。研磨剤は、これらの砥粒を水に懸濁させて懸濁液として用いられるのがよい。
【0016】
研磨されたガラス基板は、次いで、洗浄工程に付される。洗浄は、一般に、洗浄槽を設置した洗浄装置内にその上部からクリーンエアを送り込みながら、研磨後のガラス基板を多数枚(通常約50〜100枚)まとめて洗浄用の基板キャリアに装填した状態で洗浄槽に充填された洗浄液中に浸漬し、所定時間後に洗浄槽から引き上げることにより行われる。この場合、かかる洗浄槽は通常洗浄装置内に複数槽が、場合によっては数槽から数十槽が設置され、洗浄液での洗浄や水洗が繰り返して行われるのが普通である。
【0017】
本発明においては、かかる洗浄装置に加湿装置を設けて、洗浄装置内を加湿することを特徴とする。これによって、基板キャリアを1つの洗浄槽から引き上げて次の洗浄槽まで移送して再び浸漬を行うまでの間に基板表面が乾燥し、液中に含まれていた異物の粒子が凝集して処理中の基板の表面に新たな欠陥が発生することを防止するものである。
【0018】
加湿は、洗浄装置内の湿度が50〜99%となる程度に行われるのが好ましく、70〜90%であるのがさらに好ましい。
【0019】
本発明においては、洗浄液による浸漬洗浄を行う前に、ガラス基板は、通常のブラシスクラブ洗浄等の機械的洗浄に付されるのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、基板の研磨後の洗浄液による浸漬洗浄の間に基板表面に新たな欠陥を生じさせることなく磁気記録媒体用ガラス基板を製造することを可能にするので、産業上極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板を研磨砥粒を用いて研磨した後、洗浄装置内に設置した洗浄槽中の洗浄液に浸漬して洗浄するに当たり、洗浄装置内を加湿して洗浄処理操作を行うことを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項2】
ガラス基板を研磨砥粒を用いて研磨した後、洗浄液に浸漬して洗浄するための洗浄液を含む洗浄槽が設置された洗浄装置内を加湿するための加湿装置を設けたことを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板の製造装置。

【公開番号】特開2006−92717(P2006−92717A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−239660(P2005−239660)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】