説明

磁気記録媒体用ガラス基板

【課題】破壊強度を維持しつつ、基板表面上に形成される金属層との密着強度を高めることが可能なガラス基板を提供する。
【解決手段】結晶化度が10〜25%であるガラス基板によると、磁気記録媒体に要求される破壊強度を維持しつつ、基板表面上に形成される金属層との密着強度を高めることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無電解めっきが容易な磁気記録媒体用ガラス基板に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等に用いられる磁気ディスク記録装置、例えばハードディスクには、アルミニウム合金又はガラスのディスクが基板として用いられている。この基板上に金属磁気薄膜が形成され、金属磁気薄膜を磁気ヘッドで磁化することにより情報が記録される。
【0003】
磁気記録媒体用の基板として、従来は主にアルミニウム合金が用いられていた。しかし、近年はノート型パソコンなどの携帯できるパソコンにも磁気ディスク記録装置が採用されており、また、磁気ディスク記録装置の応答速度を高めるために、磁気記録媒体を10000[rpm]以上で高速回転させる必要がある。従って、高強度な磁気記録媒体用の基板が必要とされてきており、これらの必要性を満たすものとしてガラス基板が用いられるようになった。このガラス基板には、結晶化ガラス基板や化学強化ガラス基板が用いられていた。
【0004】
ここで、磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法について簡単に説明する。まず、一般的なドーナツ状のガラス基板の製造方法について説明する。はじめに、ガラス素材を溶融し(ガラス溶融工程)、溶融したガラスを平面形状の金型に流し込み、その金型で溶融ガラスを挟むことによりプレス成形し、円盤状のガラス基板を作製する(プレス成形工程)。そのガラス基板の中心部に孔を開け、ドーナツ状のガラス基板を作製する。
【0005】
ドーナツ状のガラス基板は、両表面を研削・研磨加工され、基板の平行度、平坦度、及び厚さが予備調整される(第1ラッピング工程)。平行度等が予備調整されたガラス基板は、外周端面、孔の内周端面が研削され、面取りされて、ガラス基板の外径寸法及び真円度、並びに孔の内径寸法等が微調整される(端面研削加工工程)。なお、ダイヤモンドを用いて削る工程を研削工程と称する。外径寸法等が微調整されたガラス基板は再度、研削・研磨加工され、ガラス基板の平行度、平坦度、及び厚さが微調整される(第2ラッピング工程)。平行度等が微調整されたガラス基板は、両表面が研磨され、表面の凹凸が均一にされ(ポリッシング工程)、最後に洗浄され、磁気記録媒体用のガラス基板となる。
【0006】
通常、ガラス基板は、その破壊強度を高めるために、内部に結晶相が生成された結晶化ガラスを用いるか、ポリッシング工程終了後に化学強化を施した化学強化ガラスを用いる、
【0007】
結晶化ガラス基板を作製する場合は、上記のプレス成形工程を経たガラス基板をセラミック製の板で挟んで熱処理して結晶化させる(結晶化工程)。結晶化工程の後は、上述した第1ラッピング工程〜ポリッシング工程の処理が施される。
【0008】
また、化学強化ガラス基板を作製する場合は、溶融及びプレス成形して得られたガラス基板に対して、ポリッシング工程までの処理を施した後、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の混合された溶融塩中に浸漬することにより表面に圧縮応力層を形成して破壊強度を高める。その後洗浄工程の処理が施される。
【0009】
このようにして作製されたガラス基板の表面に磁性材料をスパッタリング法などにより成膜することで磁気記録媒体が作製される。また、磁気記録媒体に記録された磁気記録情報を読み取るための磁気ヘッドは、磁気記録媒体に対してその表面から浮上した状態で移動するように構成されている。
【0010】
磁気記録密度は近年すさまじい勢いで向上しており、年率100%、すなわち毎年2倍の磁気記録密度を達成する競争が繰り広げられている。磁気記録媒体側での記録密度向上策は従来の面内磁気記録による改善と、垂直磁気記録を採用する方法がある。
【0011】
面内磁気記録による改善には、ガラス基板表面にテクスチャーを施し、磁気ヘッドの低浮上化と電磁変換特性を改善する方法が採られる。ガラス基板表面に「テクスチャー」と呼ばれる円周状の微細な溝を形成するテクスチャー加工が行われる(例えば特許文献1)このテクスチャー加工を行うことにより、磁気記録媒体上を磁気ヘッドが浮上し、シークするときに、磁気記録媒体と磁気ヘッドとが接触し摩擦するのを防止し、また、面内での磁化方向を記録方向である円周方向に配向させることができる。円周方向に配向させることにより、いわゆる「異方性媒体」として高密度記録が可能となる。
【0012】
このテクスチャー加工により基板表面に形成される溝は、幅が1[μm]以下で、深さが0.1[nm]程度の同心円状である必要がある。この同心円状の溝に沿って磁性体を配列し、1つのビットを形成する。この加工をした磁性体は同心円に沿って異方性を持ち、N極とS極とが分離しやすくなるので、電磁変換特性のS/N比を高めることが可能となる。
【0013】
テクスチャー加工は、ガラス基板の表面にダイヤモンドスラリーを滴下しながらテープ部材をガラス基板の表面に摺接することにより行われる、テクスチャー加工を行う装置は特に限定されず、いわゆるテクスチャーマシンが使用される。このテクスチャー加工の制御は、ガラス基板の微小うねり、表面平均粗さにも依存する。
【0014】
一方、アルミニウム合金基板に対しては、ガラス基板よりも容易にテクスチャー加工を施すことができる。
【0015】
アルミニウム合金基板を用いて磁気記録媒体を製造する場合、一般的にアルミニウム合金基板上に、無電解めっき法によりニッケル−リン(Ni−P)合金層を形成し、更に研磨により平滑化し、その後、テクスチャー加工が行われている。なお、無電解めっき法により形成されるニッケル合金層の厚さは5〜20μmである。すなわち、アルミニウム合金基板については、ニッケル合金層に対してテクスチャー加工を施している訳であり、ガラス基板についても、表面にニッケル合金層が形成されていれば、容易にテクスチャー加工を施すことが可能であると考えられる。
【0016】
一方、高密度化技術として期待の大きい垂直磁気記録媒体においては、磁性体を基板表面に垂直に並べる必要があり、そのためには、磁性体と基板との間に軟磁性層を形成する必要がある。軟磁性層は約100μmの厚さが必要であるため、磁性体を形成するためのスパッタリング法では膨大な時間がかかるため、量産化を実現する際の障害になっている。この軟磁性層の代表的な合金として、ニッケル−コバルト(Ni−Co)合金が挙げられる。従って、成膜速度がスパッタリング法よりも速くて大量処理が容易な無電解めっき法によりニッケル合金をガラス基板に成膜できれば、垂直磁気記録媒体の量産化も可能であると考えられる。
【0017】
【特許文献1】特開2002−251716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、ガラス基板上に密着性が高いニッケル−リン合金層やニッケル−コバルト合金層などのニッケル合金を形成することは困難であり、従来から様々な対応策が検討されているが、十分な密着性は得られていない。
【0019】
ガラス基板にニッケル合金を無電解めっき法にて成膜する技術については、上記結晶化ガラス基板又は上記化学強化ガラス基板を用いて、主にめっき処理前における前処理方法を工夫する試みがなされている。しかしながら、このように前処理方法を工夫しても、めっき処理後になされる平滑化のための研磨工程において、その研磨の加工圧力に耐えられる程度にニッケル合金の密着強度を高くすることができず、研磨工程においてニッケル合金層が剥がれてしまい、量産化が困難となっている。
【0020】
無電解めっき法は、めっきの目的の金属よりもイオン化傾向の高い卑金属を種晶として基板表面に付着させ、その後、その基板を、目的の金属イオンを含有するめっき液に浸漬する。そのことにより、目的の金属が種晶の金属とイオン交換し、目的の金属のめっきが進行して基板表面に目的の金属が形成される。
【0021】
従来、ニッケル合金層の密着強度を高めるには種晶がガラス基板表面に強固に食い込んでいることが重要であり、そのためには、表面に適度に凹凸があった方が良いとの考えに基づき、基板表面を粗面化する工夫がなされてきた。例えば、結晶化ガラスは結晶相と非結晶相が混在していることから、ガラス基板の表面を粗面化するには好都合であり、そのため、結晶化ガラスはめっきが容易であるとされている。
【0022】
しかしながら、今後求められる更なる高密度記録への対応が可能な基板は、表面が平滑化されていることが必要であると考えられている。従って、ニッケル合金層を形成するためにガラス基板の表面を粗面化することは、更なる高密度記録を阻害することになる。また、めっきによりニッケル合金層が形成された面を研磨することにより表面を平滑化しようとしても、下地(ガラス基板)の凹凸が表面に影響を与えるため、十分に平滑化できず、高密度記録に要求されるレベルまで表面を平滑にすることができないといった問題がある。
【0023】
この発明は上記の問題を解決するものであり、破壊強度を維持しつつ、基板表面上に形成される金属層との密着強度を高めることが可能な磁気記録媒体用ガラス基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この出願に係る発明者は、結晶化ガラスの結晶化度(ガラス基板に含まれる結晶相の質量の割合)に着目し、結晶化度と金属層の密着強度との関係を調べた結果、結晶化度を低くした方が金属層の密着強度が高くなることが分かった。ガラス基板の結晶化度を低くすると破壊強度がそれに伴って低くなってしまうが、この出願に係る発明者は、磁気記録媒体に要求される破壊強度を維持しつつ、金属層と基板表面との密着強度を高めることが可能な結晶化度を明らかにした。そして、結晶化度が10〜25%であれば、密着強度と破壊強度とを両立させることができることを見出した。結晶化度が10〜25%であれば、磁気記録媒体に要求されている破壊強度の条件を満たし、さらに、基板表面と金属層との密着強度を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によると、ガラス基板の結晶化度を10%〜25%にすることによって、破壊強度を維持しつつ、表面に形成される金属層との密着強度を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
[実施例]
この実施例に係る磁気記録媒体用ガラス基板は、平面を有する円盤状のガラス基板である。まず、この実施例に用いられるガラス基板について説明する。
【0027】
<ガラス基板の種類>
この実施例に係るガラス基板として、例えば、リチウムシリケートガラスが用いられる。この実施例では以下に示すガラス基板を用いた。
リチウムシリケートガラス:コニカミノルタオプト製EX−5
【0028】
次に、この実施例に係る磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法について説明する。まず、結晶化処理が行われる前段階の半製品のガラス基板(ブランクス材)を作製する(ステップS01)。次に、そのブランク材に対して結晶化処理を施す(ステップS02)。そして、研削・研磨工程が施される前段階のガラス基板(穴開きブランクス材)を作製する(ステップS03)。次に、その穴開きブランクス材を研削加工し、研磨前(Ready To Polish:RTP)のガラス基板(以下、RTPガラス基板と称する)を作製する(ステップS04)。その後、ガラス基板の主表面を研磨し(ステップS05)、ガラス基板を洗浄する(ステップS06)。これらの工程を経ることで、この実施例に係る磁気記録媒体用ガラス基板が作製される。そして、洗浄後の磁気記録媒体用ガラス基板に対して無電解めっき法によりニッケル合金層を形成する(ステップS07)。以下、各工程における具体的な処理内容を説明する。
【0029】
<ステップS01:ブランクス材の作製工程>
まず、ガラス素材を溶融し(ガラス溶融工程)、溶融したガラスを平面形状の金型に流し込み、その金型で溶融ガラスを挟むことによりプレス成形し、円盤状のガラス基板を作製する(プレス形成工程)。このプレス成形工程により作製された半製品のガラス基板を「ブランクス材」と称する。
【0030】
<ステップS02:結晶化処理>
次に、ブランクス材を熱処理して結晶相を析出させる。この結晶化処理は公知の方法と同じであり、熱処理は保持温度と時間で規定され、組成に基づいて結晶化度を制御できる。この結晶化処理によって、ガラス基板の結晶化度を10〜25%にする。結晶化度は、X線回折によって得られる、析出した結晶のX線回折強度の半値幅から計算により求められる。
【0031】
<ステップS03:穴開きブランクス材の作製>
結晶化処理後のブランクス材の中央に内径6[mm]の穴をダイヤモンドコアドリルで開ける。このプロセスを経て、外径66[mm]、内径19[mm]、板厚1.1[mm]のドーナツ状の穴開きブランクス材を得る。
【0032】
<ステップS04:研削加工、RTPガラス基板の作製工程>
ステップS03にて作製された穴開きブランクス材を、ダイヤモンドペレットが貼り付けられたプレートを保持した両面研削機にて研削を行い、板厚を0.8[mm]に加工する。その後、内径と外径とを同時に加工できる加工装置にて、外径65[mm]、内径20[mm]に加工する。その後、さらに、上記両面研削機にて、厚さが0.67[mm]になるまで穴空きブランクス材を研削する。この研削加工まで終了したガラス基板がRTPガラス基板と称される。
【0033】
<ステップS05:研磨処理の工程>
次に、研削加工が施されたガラス基板の主表面を研磨する。この研磨では、両面研磨機を用いて2回に分けて研磨を行う。以下、第1の研磨処理と第2の研磨処理の条件を説明する。
【0034】
(第1の研磨処理の条件)
研磨機として、スピードファム社製の16Bタイプの研磨機を用いた。1回あたりの処理枚数は100枚である。研磨機の上下のプレートには発泡ポリウレタンからなる研磨布(ロデール製MHC14)が貼られている。研磨材には、酸化セリウムを主成分とする研磨材(三井金属製E−21)を水に含ませて100g/L程度のスラリー濃度に調整した研磨スラリーを用いた。
【0035】
圧力150[kg/cm]、回転数20[rpm]、研磨時間30分程度の研磨加工条件で、上記研磨スラリーを循環させながら両面研磨機にて、第1の化学強化処理が終了したガラス基板を研磨した。ガラス基板を研磨することで、片面で約15[μm]、両面合わせて約30[μm]を研磨した。
【0036】
(第2の研磨処理の条件)
研磨機は、上記第1の研磨処理で用いた研磨機(スピードファム社製の16Bタイプの研磨機)を用いた。カネボウ製のスエード研磨布を上下のプレートに接着させて使用した。研磨材には、酸化セリウムを主成分とする微細な研磨材(昭和電工製V2104)を水に含ませて100g/L程度のスラリー濃度に調整した研磨スラリーを用いた。
【0037】
圧力80[g/cm]、回転数50[rpm]、研磨時間10分程度の研磨加工条件で、上記研磨スラリーを循環させながら両面研磨機にて、第1の研磨処理が終了したガラス基
板を研磨した。ガラス基板を研磨することで、片面で約2[μm]、両面合わせて約4[μm]を研磨した。
【0038】
このステップS05における研磨処理の工程で第1の研磨処理及び第2の研磨処理を実施することにより、ガラス基板の厚さを約0.635[mm]とした。
【0039】
<ステップS06:洗浄の工程>
次に、研磨処理後のガラス基板を洗浄する。ここでは、PVA製のスポンジブラシでスクラブ洗浄を行い、その後、超音波浸漬槽内で洗剤を用いて洗浄する。そして、IPAの蒸気中で洗浄後のガラス基板を乾燥する。
【0040】
<ステップS07:めっき工程>
以上の工程を経て作製された磁気記録媒体用ガラス基板に、無電解めっき法によってニッケル合金層を形成する。この方法は公知の方法と同じであるが、脱脂、感受性化、活性化の処理を行った後、無電解めっきを施してニッケル合金層を形成する。
【0041】
ステップS07では、「表面技術Vol.44 No.10、1993年(ガラスと無電解ニッケルめっきの密着性)」に記載されている一般的なニッケル合金のめっきを施した。ここで、脱脂処理、感受性化処理、活性化処理、及び無電解めっきについて詳しく説明する。
脱脂処理:磁気記録媒体用ガラス基板を、パーカコーポレーション製のアルカリ洗剤PK−LCG22(5%水溶液、50℃)に15分間浸漬し、その後水洗を実施した。
感受性化処理:試薬の塩化第1スズ(SnCl)の0.1g/L水溶液中に5分間浸漬し、その後水洗を実施した。
活性化処理:試薬の塩化パラジウム(PdCl)の0.1g/L水溶液中に5分間浸漬し、その後水洗を実施した。
無電解めっき:上記脱脂、感受性化、活性化の処理を行った後、上村工業製のニッケル−リンめっき液に浸漬し、20μmのニッケル−リン合金層を形成した。
ベーキング:無電解めっきを施した後、150℃で2時間のベーキングを行った。
【0042】
<密着強度の評価>
ステップS07でニッケル合金層が形成されたガラス基板に対して、剥離テスト(JIS K5400 8.15)を実施し、密着強度の評価を行った。
【0043】
<破壊強度の評価>
2.5インチ基板を搭載するランプロードタイプの東芝製ハードディスク装置にステップ06までの処理で得られたガラス基板を1枚搭載し、高さ2mから鉄板上へ自由落下させた。そして、10枚のガラス基板について落下試験を行い、破損したガラス基板の枚数によって破壊強度を評価した。
【0044】
次に、具体的な実施例と実施例に対する比較例を説明する。
【0045】
(実施例1)
実施例1に用いたガラス基板の条件を以下に示す。
ガラスの種類:リチウムシリケートガラス
結晶化度:20%(非結晶相の比率:80%)
ステップS01にて作製されたブランクス材に対して結晶化処理を施し、結晶化度が20%のガラス基板を得た。その後、ステップS03〜S06の処理を施し、表面粗さRa=5Åのガラス基板を作製した。なお、この表面粗さRaは、JIS B0601の規定による「表面粗さ」の算術平均粗さRaである。
外径:65[mm]
内径:20[mm]
厚さ:0.635[mm]
【0046】
<密着強度の評価>
このガラス基板に対して無電解めっき法を施すことによりニッケル−リン合金層を形成し、ニッケル合金層とガラス基板表面との密着強度を評価した。
評価:上記剥離テスト(JIS K5400 8.15)を実施し、密着強度が高いことが分かった。
【0047】
<破壊強度の評価>
ステップS06までで作製されたガラス基板をハードディスク装置に搭載し、上記落下試験を行った。ここでは、10枚のガラス基板に対して落下試験を行った。
割れ枚数:0枚(10枚中)
このように、破壊強度が高いことが分かった。
【0048】
以上のように、実施例1に係るガラス基板によると、磁気記録媒体に要求される破壊強度を維持しつつ、基板表面との密着強度が十分に高いニッケル合金層を無電解めっき法により形成することが可能となる。
【0049】
(実施例2)
実施例2に用いたガラス基板の条件を以下に示す。
ガラスの種類:リチウムシリケートガラス
結晶化度:10%(非結晶相の比率:90%)
ステップS01にて作製されたブランクス材に対して結晶化処理を施し、結晶化度が10%のガラス基板を得た。その後、ステップS03〜S06の処理を施し、表面粗さRa=5Åのガラス基板を作製した。
外径:65[mm]
内径:20[mm]
厚さ:0.635[mm]
【0050】
<密着強度の評価>
このガラス基板に対して無電解めっき法を施すことによりニッケル−リン合金層を形成し、ニッケル合金層とガラス基板表面との密着強度を評価した。
評価:上記剥離テスト(JIS K5400 8.15)を実施し、密着強度が高いことが分かった。
【0051】
<破壊強度の評価>
ステップS06までで作製されたガラス基板をハードディスク装置に搭載し、上記落下試験を行った。ここでは、10枚のガラス基板に対して落下試験を行った。
割れ枚数:0枚(10枚中)
このように、破壊強度が高いことが分かった。
【0052】
以上のように、実施例2に係るガラス基板によると、磁気記録媒体に要求される破壊強度を維持しつつ、基板表面との密着強度が十分に高いニッケル合金層を無電解めっき法により形成することが可能となる。
【0053】
(実施例3)
実施例3に用いたガラス基板の条件を以下に示す。
ガラスの種類:リチウムシリケートガラス
結晶化度:25%(非結晶相の比率:75%)
ステップS01にて作製されたブランクス材に対して結晶化処理を施し、結晶化度が25%のガラス基板を得た。その後、ステップS03〜S06の処理を施し、表面粗さRa=5Åのガラス基板を作製した。
外径:65[mm]
内径:20[mm]
厚さ:0.635[mm]
【0054】
<密着強度の評価>
このガラス基板に対して無電解めっき法を施すことによりニッケル−リン合金層を形成し、ニッケル合金層とガラス基板表面との密着強度を評価した。
評価:上記剥離テスト(JIS K5400 8.15)を実施し、密着強度が高いことが分かった。
【0055】
<破壊強度の評価>
ステップS06までで作製されたガラス基板をハードディスク装置に搭載し、上記落下試験を行った。ここでは、10枚のガラス基板に対して落下試験を行った。
割れ枚数:0枚(10枚中)
このように、破壊強度が高いことが分かった。
【0056】
以上のように、実施例3に係るガラス基板によると、磁気記録媒体に要求される破壊強度を維持しつつ、基板表面との密着強度が十分に高いニッケル合金層を無電解めっき法により形成することが可能となる。
【0057】
次に、上記実施例に対する比較例について説明する。
【0058】
(比較例1)
比較例1に用いたガラス基板の条件を以下に示す。
ガラスの種類:リチウムシリケートガラス
結晶化度:60%(非結晶相の比率:40%)
ステップS01にて作製されたブランクス材に対して結晶化処理を施し、結晶化度が60%のガラス基板を得た。その後、ステップS03〜S06の処理を施し、表面粗さR1=5Åのガラス基板を作製した。
外径:65[mm]
内径:20[mm]
厚さ:0.635[mm]
【0059】
<密着強度の評価>
このガラス基板に対して無電解めっき法を施すことによりニッケル−リン合金層を形成し、ニッケル合金層とガラス基板表面との密着強度を評価した。
評価:上記剥離テスト(JIS K5400 8.15)を実施し、密着強度が低いことが分かった。
【0060】
<破壊強度の評価>
ステップS06までで作製されたガラス基板をハードディスク装置に搭載し、上記落下試験を行った。ここでは、10枚のガラス基板に対して落下試験を行った。
割れ枚数:0枚(10枚中)
このように、破壊強度が高いことが分かった。
【0061】
以上のように比較例1に係るガラス基板によると、結晶化度が高いため破壊強度を維持することができるが、基板表面との密着強度が高いニッケル合金層を形成することができなかった。
【0062】
(比較例2)
比較例2に用いたガラス基板の条件を以下に示す。
ガラスの種類:リチウムシリケートガラス
結晶化度:0%(非結晶相の比率:100%)
比較例2では、ステップS02の結晶化処理を行わず、ステップS01、S03〜S06の処理を施し、表面粗さRa=5Åのガラス基板を作製した。
外径:65[mm]
内径:20[mm]
厚さ:0.635[mm]
【0063】
<密着強度の評価>
このガラス基板に対して無電解めっき法を施すことによりニッケル−リン合金層を形成し、ニッケル合金層とガラス基板表面との密着強度を評価した。
評価:上記剥離テスト(JIS K5400 8.15)を実施し、密着強度が高いことが分かった。
【0064】
<破壊強度の評価>
比較例2に係るガラス基板をハードディスク装置に搭載し、上記落下試験を行った。ここでは、10枚のガラス基板に対して落下試験を行った。
割れ枚数:6枚(10枚中)
このように、破壊強度が低いことが分かった。
【0065】
以上のように比較例2に係るガラス基板によると、基板表面との密着強度が高いニッケル合金層を形成することができるが、結晶化度が低いため、磁気記録媒体に要求される破壊強度が得られなかった。
【0066】
実施例1〜3、比較例1、2をまとめた結果を図1の表に示す。実施例1〜3に係るガラス基板は、磁気記録媒体に要求される条件を満たし、比較例1、2に係るガラス基板は、その条件を満たしていないことが分かる。図1の表中、総合評価の合格が上記条件を満たし、不合格が条件を満たしていないことを示している。従って、ガラス基板の結晶化度を10〜25%とすることで、磁気記録媒体に要求される破壊強度を維持しつつ、基板表面とニッケル合金層との密着強度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】密着強度及び破壊強度の評価結果を示す表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面を有する円盤状のガラス基板であって、結晶化度が10〜25%であることを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板。
【請求項2】
無電解めっき法により析出されたニッケル合金からなる金属層が前記平面上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。


【図1】
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【公開番号】特開2007−188601(P2007−188601A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6664(P2006−6664)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】