説明

磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールおよびその製造方法

【課題】 ベースフィルムの幅方向、長手方向に差なく安定的に高品質である磁気記録テープを製造できる磁気記録媒体用ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】
ポリエステルフィルムの磁性面側に平均粒径6〜30nmの微細粒子と有機化合物とを含有する被膜を設け、該被膜に前記微細粒子による微細表面突起を1,000万〜1億個/mmの密度で存在せしめ、幅方向に任意に7点以上で測定した微細表面突起の平均個数に対する標準偏差の比が0.10以下、中心線平均表面粗さ(Ra)の平均値に対する標準偏差の比が0.12以下、長手方向に1,000m間隔で測定した微細表面突起の平均個数に対する標準偏差の比が0.12以下、表面粗さ(Ra)の平均値に対する標準偏差の比が0.15以下、である磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体、特にデジタルビデオカセットテープに代表される金属蒸着磁気記録媒体を生産性良く高品質で製造するために好適な磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールに関する。
【背景技術】
【0002】
1995年に実用化された民生用デジタルビデオテープは、厚み6〜7μmのベースフィルム上にコバルトの金属磁性薄膜を真空蒸着により設けられ、その表面にダイヤモンド状カーボン膜をコーティングして製造されており、デジタルビデオミニカセットを使用したカメラ一体型ビデオの場合には基本仕様(SD仕様)で1時間の録画が可能となっている。
【0003】
このデジタルビデオカセット(DVC)は、家庭用においては世界で初のデジタルビデオカセットであり、a.小型ボディながら膨大な情報を記録できる、b.雑音の妨害を受けないため高画質・高音質が楽しめる、c.信号が劣化しないため何年たっても画質・音質が衰えない、d.ダビングを繰り返しても映像が劣化しない等のメリットがあり、市場での評価は高い。
【0004】
このDVC用のベースフィルムとしては、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリマーブレンド体と粒径5〜50nmの微細粒子を主体とした不連続被膜とからなり、該不連続被膜には水溶性ポリエステル共重合体が含有され、微細粒子により不連続被膜上に微細突起が形成されたポリエステルフィルム(例えば特許文献1参照)や、ポリエステルフィルムの表面に平均粒径0.1μm以下の微粒子を含有する連続薄膜(磁性層のプライマー)が塗設してあり、該被膜には微粒子による微少突起とバインダー樹脂のみの微少突起が存在しているポリエステルフィルム(例えば特許文献2参照)等が用いられている。
【0005】
塗液の塗布方式としては、ロッドにワイヤーが巻かれたメタリングバー(メイヤーバーとも呼ばれる)を用いて塗布する方式が一般的であるが、ベースフィルムへの塗布量が同一製造ロット内で、また、製造ロット間でばらつき易く、結果としてフィルム表面上の表面粗さにばらつきが生じ、そのベースフィルムから製造されるDVCテープの品質、特にドロップアウト(DO)特性にばらつきが生じがちであるという問題があった。
【0006】
このような問題に対し、メタリングバーのフィルム接触表面部分のRaの幅方向平均値が2.0〜8.0μm、幅方向の最大・最小差が0.4μm以下であるメタリングバーを用いて塗布を行う方法(例えば特許文献3参照)等が提案され、実施されている。
【0007】
ところで、民生用デジタルビデオテープは非常に好評で、市場に今まで以上に多くのテープを投入することが望まれており、テープメーカーは蒸着機の増設や蒸着速度の高速化でこれに対処している。それに伴うベースフィルムの供給量増大に対し、1回の蒸着操作でより多量のデジタルビデオテープが製造できるように、ロール状に巻かれるベースフィルム(フィルムロール)の拡幅化あるいは長尺化が要求されている。
【0008】
一方では市場拡大に伴う価格低下の圧力により、コストダウン要求も厳しくなってきている。蒸着速度の高速化はコストダウンにも対応するが、その他にコバルトの金属磁性薄膜をさらに薄膜化する等の手段も検討されている。
【0009】
このようにフィルムロールの拡幅化と長尺化、蒸着速度の増大と金属磁性薄膜の更なる薄膜化が相まって、次第にベースフィルムの同一製造ロットの幅方向や長手方向で、表面粗さのばらつき、あるいは微細表面突起個数のばらつきに伴うテープ特性のばらつきの問題が顕著になってきた。
【特許文献1】特公昭63−57238号公報
【特許文献2】特開2002−150538号公報
【特許文献3】特開2003−91810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高品質の磁気記録テープを安定的に生産性良く製造できるようにするため、微細表面突起個数のばらつきと表面粗さのばらつきがいずれも小さい磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明は、ポリエステルフィルムの磁性層が形成される側の面(A面)に平均粒径が6〜30nmの微細粒子と有機化合物とを含む被膜が形成され、この被膜上には前記微細粒子による微細表面突起が1,000万〜1億個/mmの密度で存在し、かつ以下の(a)〜(d)を同時に満足する磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールを特徴とする。
【0012】
(a)長手方向の任意の位置において幅方向に少なくとも7箇所について測定した微細表面突起密度の平均値[αbt]と標準偏差[βbt]との比[βbt/αbt]が0.10以下
(b)長手方向の任意の位置において幅方向に少なくとも7箇所について測定した中心線平均表面粗さ(Ra)の平均値[αrt]と標準偏差[βrt]との比[βrt/αrt]が0.12以下
(c)長手方向に1,000m間隔で測定した微細表面突起密度の平均値[αbm]と標準偏差[βbm]との比[βbm/αbm]が0.12以下
(d)長手方向に1,000m間隔で測定した中心線平均表面粗さ(Ra)の平均値[αrm]と標準偏差[βrm]との比[βrm/αrm]が0.15以下
また、平均粒径6〜3nmの微細粒子と有機化合物とを含む塗液を溝掘り型メタリングバーを用いてポリエステルフィルムの磁性層が形成される側の面(A面)に塗布した後、乾燥させて、前記微細粒子による微細表面突起が1,000万〜1億個/mmの密度で存在する被膜を形成する、磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールの製造方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールによると、ベースフィルムの同一製造ロットの幅方向や長手方向において(1)微細表面突起個数のばらつき、(2)表面粗さのばらつきが小さくなり、これによりテープ特性のばらつきが小さくなり、高品質の磁気記録テープを安定的に生産性良く製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明におけるポリエステルは分子配向により高強度フィルムとなるポリエステルであれば用いることができるが、その中でもポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートが特に好ましい。エチレンテレフタレート、エチレンナフタレート以外のポリエステル共重合体成分としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、p−キシリレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸成分、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能ジカルボン酸成分、p−オキシエトキシ安息香酸などを用いることができる。
【0015】
さらに上記のポリエステルは、他にポリエステルと非反応性のスルホン酸のアルカリ金属塩誘導体、該ポリエステルに実質的に不溶なポリアルキレングリコールなどの少なくとも一つを5重量%を超えない程度で混合してもよい。
【0016】
本発明の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロール(以下、単に磁気記録媒体用ポリエステルフィルムということがある)のA面(磁性層が設けられる側の面)には、平均粒径が6〜30nmの微細粒子と有機化合物とを含有する被膜が形成されており、該被膜には前記微細粒子による微細表面突起が存在し、該微細表面突起の個数が1,000万〜1億個/mmである。上記微細粒子の平均粒径は好ましくは8〜27nmであり、さらに好ましくは8〜25nmである。また、微細表面突起の個数(密度)は、好ましくは1,500万〜9,500万個/mmであり、さらに好ましくは2,000万〜9,000万個/mmである。
【0017】
この微細表面突起により、A面に形成される被膜上に真空蒸着によって形成される磁性層(例えば、強磁性金属薄膜層)は記録・再生時において磁気ヘッドとの摩耗が少なくなる。微細粒子の平均粒径が6nm未満であったり、微細表面突起個数が1,000万個/mmより少ないと、表面が平滑になりすぎてしまい、DVCビデオテープレコーダー内の記録、再生時において磁気ヘッドにより強磁性金属薄膜層などの磁性層が摩耗してしまう傾向がある。一方、微細粒子の平均粒径が30nmを超えると、磁気テープの磁性層表面上に現れる微細表面突起の高さが高くなり、磁気テープの出力特性が低下しやすい。また、微細表面突起個数が1億個/mmより多いと、強磁性金属薄膜層などの磁性層の表面が粗面すぎて、磁気記録テープの出力特性が低下しやすい。
【0018】
また、本発明の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムにおけるA面の中心線平均表面粗さ(Ra、被膜形成後の値)は、A面上に真空蒸着により形成される強磁性金属薄膜などの磁性層の記録・再生時において磁気ヘッドによる摩耗を極力少なくし、さらに磁気テープの出力特性を良好に保つために1〜6nmであることが好ましく、1.5〜5nmであることがより好ましい。Raが1nmを下回ると、A面が滑りにくくなって、DVCビデオカメラ内での録画、再生時に、磁気ヘッドによる磁気テープの強磁性金属薄膜摩耗が大きくなりやすい。また、Ra値が6nmを超えると、磁気ヘッドとの接触不足により、磁気テープの出力特性が低下しやすい。
【0019】
さらに本発明の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールは、以下の(a)〜(d)を同時に満足している。
【0020】
(a)長手方向の任意の位置において幅方向に少なくとも7箇所について測定した微細表面突起密度の平均値[αbt]と標準偏差[βbt]との比[βbt/αbt]が0.10以下
(b)長手方向の任意の位置において幅方向に少なくとも7箇所について測定した中心線平均表面粗さ(Ra)の平均値[αrt]と標準偏差[βrt]との比[βrt/αrt]が0.12以下
(c)長手方向に1,000m間隔で測定した微細表面突起密度の平均値[αbm]と標準偏差[βbm]との比[βbm/αbm]が0.12以下
(d)長手方向に1,000m間隔で測定した中心線平均表面粗さ(Ra)の平均値[αrm]と標準偏差[βrm]との比[βrm/αrm]が0.15以下
それぞれの好ましい値としては、(a)について[βbt/αbt]の値は、好ましくは0.07以下であり、より好ましくは0.06以下である。(b)について[βrt/αrt]の値は、好ましくは0.09以下であり、より好ましくは0.07以下である。(c)について[βbm/αbm]の値は、好ましくは0.08以下であり、より好ましくは0.06以下である。(d)について[βrm/αrm]の値は、好ましくは0.10以下であり、より好ましくは0.07以下である。(a)、(b)、(c)、(d)における比(それぞれ[βbt/αbt]、[βrt/αrt]、[βbm/αbm]、[βrm/αrm])は値が小さいほど好ましく、下限は特に限定されないが、実際にはすべて0.01程度が下限である。
【0021】
上記した(a)〜(d)の諸特性を同時に満足すれば、磁気テープを製造した際に特性にばらつきが生じにくく、高品質の磁気記録テープを安定的、かつ高い歩留まりで製造できる。
【0022】
本発明の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムのA面に設ける被膜は、ポリエステルフィルム原料を溶融し、シート状に押出し、冷却し、長手方向(縦方向、すなわちフィルムの進行方向)に延伸した後、平均粒径6〜30nmの微細粒子と有機化合物とを含んだ塗液を計量塗布し、乾燥し、長手方向と直角方向(横方向)に延伸することにより設けることができる。前記塗液に含まれる微細粒子の粒子種としてはシリカ、炭酸カルシウム、アルミナ等の無機系粒子、ポリ(メタ)アクリル、ポリスチレン、ジビニルベンゼン、シリコーン等の単独重合体又は共重合体である有機系粒子、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等の無機系粒子を核として上記の有機系粒子成分で被覆した粒子等が使用できるが、これらに限定されない。
【0023】
塗液に含まれる有機化合物はポリビニルアルコール、トラガントゴム、ガゼイン、ゼラチン、セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、アクリルーポリエステル樹脂、イソフタル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂等の有極性高分子、およびこれらのブレンド体等が使用できる。これらのうち、セルロース誘導体と水溶性ポリエステルのブレンド体が特に好ましい。セルロース誘導体としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース等が好ましく用いられる。また、水溶性ポリエステルとしては、ジカルボン酸成分とグリコール成分が重縮合したポリエステルであって、例えばスルホン酸基を有するジカルボン酸成分のような機能性酸成分を全カルボン酸成分の5モル%以上共重合せしめること、及び/又は、グリコール成分としてポリアルキレンエーテルグリコール成分を2〜70重量%共重合せしめることによって水溶性を付与したものが好ましいが、これらに限定されるものではない。スルホン酸基を有するジカルボン酸としては、好ましくは5−スルホイソフタル酸、2−スルホテレフタル酸などや、それらの金属塩、ホスホニウム塩などが使用でき、5−ナトリウムスルホイソフタル酸が特に好ましい。5−ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合せしめる際の他のジカルボン酸成分としてはイソフタル酸、テレフタル酸、セバシン酸、トリメリット酸などが好ましく、グリコール成分としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオールなどが好ましい。なお、水溶性ポリエステルのガラス転移点は40℃以上、さらには50℃以上であることが好ましい。フィルム製膜工程、あるいは磁性層加工工程ともにフィルムは熱を受けるため、ガラス転移点が40℃未満の樹脂を用いた場合にはフィルムが工程内の搬送ロールに貼り付きやすく、かえってシワ発生などの原因になることがある。
【0024】
また、前記塗液中にはシリコーン化合物を含有させることが好ましい。シリコーン化合物の含有により、塗布中にメタリングバー部より発生する塗布スジが発生しにくくなるので好ましい。塗布スジが存在すると、その部分は塗布量が多くなり、結果的にその部分の微細表面突起の個数が多くなって、Raが大きくなりやすい。当然、そのばらつきも大きくなり、磁気テープを製造した際に特性にばらつきが生じやすく、高品質の磁気記録テープを安定的に、かつ高い歩留まりで製造することが難しくなる。シリコーン化合物としては、主鎖がSi−Oの結合で高分子となっていれば特に限定されないが、ポリジメチルシロキサン、メチルハイドロジエンポリシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、環状ジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等が使用できる。これらのうち、の点でアミノ変性シリコーンが好ましく、具体的にはポリプロピルジメチル[γ−(β−アミノエチルアミノ)]シロキサン、ポリプロピルメチルジメチル{3−[2−(アミノエチル)アミノ]}シロキサン、ポリプロピルメチルジメチルヒドロキシ{3−[2−(アミノエチル)アミノ]}シロキサン、ポリプロピルエチルメチル[N−(アミノプロピル)イミノエチル]シロキサン等が好ましく用いられる。
【0025】
また本発明においては、前記塗液中に、さらにシランカップリング剤を含有させることは、シリコーン化合物の遊離を防ぎ、さらに、被膜とフィルムとの接着性を向上させ得る点でより好ましい。シランカップリング剤としては、その分子中に2個以上の異なった反応基をもつ有機ケイ素単量体が用いられ、その反応基の一つはメトキシ基、エトキシ基、シラノール基などであり、もう一つの反応基はビニル基、エポキシ基、メタアクリル基、アミノ基、メルカプト基などである。反応基としては水溶性高分子の側鎖、末端基およびポリエステルと結合するものが選ばれるが、シランカップリング剤としてビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4エピキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が適用できる。
【0026】
本発明において、塗液中の微細粒子/有機化合物の比率は、乾燥後、すなわち被膜中の固形分重量比で1〜25/99〜75(重量%)となるよう配合せしめたものであることが好ましい。塗液組成のより好ましい具体例としては、微細粒子/セルロース誘導体/水溶性ポリエステル/シリコーン化合物/シランカップリング剤であるが、この場合の被膜中の固形分重量比は1〜25/10〜40/88.89〜10/0.01〜10/0.1〜15(重量%)であることが好ましい。上記範囲外では、フィルムのA面が滑りにくくなって、DVCビデオカメラ内での録画、再生時に、磁気ヘッドによる磁気テープの強磁性金属薄膜などの磁性層の摩耗が大きくなりやすいか、あるいは、磁気ヘッドとの接触不足により磁気テープの出力特性が低下しやすい。
【0027】
また、塗液中の全固形分濃度は0.03〜6重量%が好ましく、より好ましくは0.06〜3重量%、さらには0.1〜1重量%が最も好ましい。全固形分濃度が0.03重量%未満の場合、A面の微細突起の密度が不足して滑りが不足し、DVCビデオカメラ内での録画、再生時に、磁気ヘッドによる磁気テープの強磁性金属薄膜などの磁性層の摩耗が大きくなりやすい。また、必要な特性を得るためには、塗布量が多くなり、フィルム破れが起こりやすくなる。一方、6重量%を超えると、磁気テープと磁気ヘッドとの接触不足による磁気記録テープの出力特性が低下しやすく、あるいは塗布スジが発生しやすくなり、磁気テープ特性のばらつきにより磁気テープの製造安定性と歩留まりが低下しやすい。
【0028】
本発明の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムは、溝掘り型のメタリングバーを用いて塗液をA面に塗布することにより被膜を設けることができる。メタリングバー方式は、所望の表面塗布量の数倍量に相当する量の液を一旦付着させた後、余分の液量をかきおとすことにより、塗布液量を所望量にするという定量的塗布方式である。ロッドに一定径の極細ワイヤーが螺旋状に巻かれた従来のメイヤーバーとは異なり、溝掘り型メタリングバーは、ロッドそのものに微細溝を形成させたバーである。
【0029】
図1に示すように、巻線型メイヤーバーの場合、液が通過する部分の形状はサイクロイド状になっており、塗液の表面張力や溝内部の目詰まりによって塗布状態が影響を受けやすく、結果として幅方向及び長手方向の塗布液量にばらつきが大きくなりやすい。更にメイヤーバーの場合、ワイヤーの太さのばらつきや隣接するワイヤーの距離のばらつきもあり、幅方向及び長手方向で塗布液量のばらつきを小さくすることには不利な点が多い。これに対し図2に示すように、溝掘り型メタリングバーの場合、液が通過する部分の形状は滑らかな曲線になっており、塗液の表面張力に起因する塗布状態への影響が発生しにくく、溝の目詰まりも起こしにくい。更に溝掘り型メタリングバーの場合、溝の深さや溝間隔のばらつきも小さく、幅方向及び長手方向で塗布液量のばらつきを小さくすることに有利な点が多いことが特徴である。
【0030】
上記塗液を塗布する際に用いる溝掘り型メタリングバーは、溝深さの平均値が5〜50μmが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。溝深さの平均値が5μmより小さいと溝深さのばらつきの影響を受けやすく、塗布状態にばらつきが出やすい。また、溝深さの平均値が50μmより大きいと塗布量過多となって製膜中の破れが頻発し、生産効率の低下を招きやすい。
【0031】
また、溝深さのばらつき(溝深さの最大値−溝深さの最小値)は、0〜2.5μmであることが好ましく、より好ましくは0〜2.0μm、さらには0〜1.5μmであることが最も好ましい。
【0032】
溝深さのばらつきが2.5μmより大きい場合、塗布状態のばらつきが出やすく、微細表面突起の密度とRaのばらつき(上述の(a)〜(d))を本発明の範囲内とすることが困難となりやすい。なお、従来のメイヤーバーに比べて溝掘り型メタリングバーは、製造時に溝深さのばらつきを抑制しやすいことは、前述の通りである。
【0033】
また、溝掘り型メタリングバーの溝のピッチ(山−山、または谷−谷の間隔)は10〜500μmが好ましく、より好ましくは20〜400μm、さらには30〜300μmが最も好ましい。上記範囲外では溝深さのばらつきが大きくなる、塗布スジが出やすい、塗布量過多で製膜中の破れ頻発で生産効率が低下しやすい等の問題がある。
【0034】
また、本発明においては、溝掘り型メタリングバーを用いて塗液を塗布するに際し、その設置条件として平行度(単位長さ当たりのバー左右の高さの差)が0〜0.25%であることが好ましく、より好ましくは0〜0.20%、さらには0〜0.15%が最も好ましい。平行度が0.25%より大きい場合、塗布状態のばらつきが出やすく、微細表面突起の密度とRa値のばらつきを本発明の範囲内とすることが困難となりやすく、場合によっては塗布スジが出て微細表面突起個数、Raそのものが大きくなって、磁気記録テープの出力特性が低下しやすい。
【0035】
溝掘り型メタリングバーのロッドの材質としては、真鍮、アルミ、ステンレス、ステンレススチール等のものを用いることができ、中でも耐久性、耐薬品性(耐酸性、耐アルカリ性)等の点でステンレスが好ましい。ステンレスの種類としては、例えば、SUS304、SUS304L、SUSS04LN、SUS316、SUS316L、SUS316N、SUS316LN、SUS317、SUS317L、SUS321、SUS347、SUS405、SUS410L、SUS410S、SUS436L等が好ましく用いられる。
【0036】
さらに、上記溝掘り型メタリングバーの表面には、ニッケル、クロム、チタン、モリブデン、タングステン、タングステンカーバイトなどのメッキ加工またはコーティング加工を施すと、より耐久性を向上させることができるため好ましい。
【0037】
なお、塗液のフィルムへの塗布量としては、乾燥後の固形分重量で1〜50mg/mが好ましく、より好ましくは2〜40mg/m、さらには3〜20mg/mが最も好ましい。塗布量が1mg/mより少ないと、A面の微細突起の密度が不足して滑りが不足し、DVCビデオカメラ内での録画、再生時に、磁気ヘッドによる磁気テープの強磁性金属薄膜などの磁性層の摩耗が大きくなりやすく、あるいは塗布スジが発生しやすくなり、磁気テープ特性のばらつきにより磁気テープの製造安定性と歩留まりが低下しやすい。一方、塗布量が50mg/mより多いとフィルム破れが起こりやすくなったり、磁気テープと磁気ヘッドとの接触不足による磁気記録テープの出力特性が低下しやすくなる。
【0038】
本発明おいては、前述したように微細粒子の平均粒径と含有量、及び/又は上述の溝掘り型メタリングバーの溝深さを適宜コントロールすることにより、A面における微細突起の密度を本発明の要件である1,000万〜1億個/mmとし、Raを好ましい範囲である1〜6nmの範囲とすることが可能となる。
【0039】
さらに本発明においては、溝掘り型メタリングバーの溝深さの平均値、溝深さのばらつき、並びにバー設置時の平行度を上述の範囲内とすることにより、該述の要件(a)〜(d)を満たすことが可能となる。
【0040】
本発明において、被膜形成塗液の塗布方法は、溝掘り型メタリングバーを用いたメタリングバー方式であるが、その塗布工程としては、フィルムの製膜工程内で塗布する方法(インラインコート)、製膜後のフィルム上に塗布、乾燥する方法(オフラインコート)のいずれの方法であってもよいが、溝掘り型メタリングバーの特徴である塗布の均一性、さらに薄膜塗布の容易性および経済性等の点で、インラインコートがより優れた方法である。さらに、インラインコートでは、ポリエステルフィルムを例に挙げれば、ポリエステルフィルムの配向、結晶化が完了する以前に塗布を行うことが好ましく、例えば逐次二軸延伸製膜工程では、縦延伸後のフィルムに塗布し、横延伸、熱固定を経る間に、被膜とフィルムとの密着性を向上せしめる方法が一般的である。また、コート前のフィルムには塗布性改良を目的として、予めその表面にコロナ放電処理、プラズマ処理などの前処理を施しておくことも可能である。
【0041】
また、被膜形成塗液の液媒体は水系、溶剤系あるいは両者混合系のいずれの液媒体でもよいが、インラインコート法による場合には、取扱性や防爆などの安全性の点で水系または水を主体とした両者混合系の液媒体が好ましく用いられる。また、塗液には、フィルムへの濡れ性を向上させるために界面活性剤(アニオン型、ノニオン型)を添加してもよい。
【0042】
本発明の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムのもう一方の表面であるB面(上記のA面の反対側の表面である)のRaは、ポリエステルフィルムを製膜した後、ポリエステルフィルムを所定の幅にスリットする際、巻姿の良い製品を採取しやすくし、ポリエステルフィルムのA面上に強磁性金属薄膜層などの磁性層を設けた後にロール状の巻取りによりB面の粗さが反対側の表面に転写されて強磁性金属薄膜層などの磁性層にうねり状の変形が起きることを最小限に抑えるために、5〜35nmであることが好ましく、より好ましくは8〜25nmである。Raが5nmより小さいとA面とB面との摩擦係数が高くなりすぎて滑りにくく、ロール上で互いに貼り付いた状態になり、またテープ化工程で各所のガイドロールとの接触でしわが入り易くなる。本フィルムのB面のRaはフィルムを製膜した後、所定の幅にスリットする際に、巻姿の良い製品を採取しやすくするには大きい方が好ましいが、大きすぎるとフィルムの表面A上に強磁性金属薄膜層などの磁性層を設けた後にロール状の巻取りによりB面の粗さが転写し強磁性金属薄膜層などの磁性層にうねり状の変形が起きるので、35nmが上限である。
【0043】
なお、B面側のRaをA面側のRaより大きい構成とした場合、より具体的には、そのRa比率(A面のRa/B面のRa)が0.05〜0.7である場合、製膜・加工時のフィルム搬送性、加工後の磁気テープ特性とテープ搬送性を両立せしめることが可能となるため、好ましい態様である。Ra比率が上記範囲外の場合にはフィルム・テープ搬送性、および磁気テープ特性が低下しやすい。また、Ra比率のより好ましい範囲は0.1〜0.6であり、さらには0.1〜0.55が最も好ましい。
【0044】
上記構成の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムのB面側にはA面側の被膜中に含有される微細粒子より平均粒径の大きい不活性粒子を含有するポリエステルフィルム層を(1)塗布によって設ける、(2)複合押出によって積層して設ける、(3)不活性粒子を含有しないポリエステルフィルム層と別々に押出してラミネートする、のいずれの方法でも構わないが、B面のRaのばらつき抑制と経済的観点から、(2)の複合押出により積層する方法が好ましい。なお、ここで用いられる不活性粒子としては炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、コロイダルシリカ、シリカ−アルミナ複合体等の無機系粒子、あるいはポリスチレン、ジビニルベンゼン、シリコーン、ポリ(メタ)アクリル等の単独重合体又は共重合体、あるいはこれらを架橋硬化させた有機系粒子が好ましく用いられる。上記のうちでは、磁性層を例えば蒸着加工後にロール状で放置した際の磁性層面側への影響の点で有機系粒子が好ましく、架橋ポリスチレン、架橋ジビニルベンゼン、架橋シリコーンの単独重合体もしくは共重合体が特に好ましいものである。無機系粒子としてはシリカ、アルミナが粒子添加時の調整のし易さの点で、好ましく使用できる。なお、アルミナには結晶形によりα形、β形、γ形、θ形の各種が存在するが、いずれを用いてもよい。また、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等の無機系粒子を核として上記の有機系粒子成分で被覆した粒子等も使用できる。
【0045】
この不活性粒子としては、平均粒径が50〜1,000nmが好ましく、より好ましくは100〜900nm、最も好ましくは200〜800nmである。さらに不活性粒子の含有量は、積層したポリエステルフィルム層中で0.05〜2重量%が好ましく、より好ましくは0.08〜1重量%、さらには0.15〜0.8重量であることが最も好ましい。不活性粒子を含有させる態様として、粒子種及び/又は平均粒径の異なる複数種を混合させることは、拡幅化及び/又は長尺化時のフィルムロール巻姿(外観)を安定化させる点で、より好ましいものである。
【0046】
上記の(2)または(3)の方法で不活性粒子を含有するポリエステルフィルム層を設けた場合、該層の上にさらに被膜を設けると、加工時のフィルムの搬送性と耐久性がさらに向上させることができるため、より好ましい態様である。該被膜としては、A面に設けた被膜のうち、微細粒子を除いた処方を適用することが好ましい。
【0047】
本発明の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムは、全体の厚みが3〜10μmであることが好ましく、より好ましくは4〜8μmである。厚みが3μmを下回ると、あまりにもフィルム剛性が低下しすぎ、磁気テープとビデオテープレコーダー内の磁気ヘッドとの接触が弱くなり磁気テープの磁気変換特性、特に出力が低下しやすい。また、厚みが10μmを上回ると、所定の大きさのカセット内に収まるように作製したDVCテープで録画時間が60分以上を確保することが困難となる。
【0048】
本発明の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムにより製造された磁気記録テープは、本発明のポリエステルフィルムのA面上に磁性層を設けることにより得ることができる。この磁性層としては、塗布型磁性層であっても強磁性金属薄膜型磁性層であってもよいが、強磁性金属薄膜型磁性層(強磁性金属薄膜層)であることが好ましい。その場合に使用する金属としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、またはそれらの合金の強磁性体からなるものが好ましい。さらに強磁性金属薄膜上に10nm程度の厚みのダイヤモンド状カーボン膜をコーティングし、更にその上に潤滑剤層を設けてもよい。
【0049】
上記の磁気記録テープは、本発明の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムのB面(A面と反対側の面)上にバックコート層を設けてもよい。この場合、バックコートとしては微粒子、潤滑剤、有機高分子、結合剤などを含む層を、有機溶媒を用いた溶液の塗布、乾燥により設けることが好ましい。バックコート層の厚みは0.5〜1.5μm程度である。微粒子としてはカーボンブラック、アルミナ等が、潤滑剤としてはシリコーン、フッソ化合物等が、結合剤としてはポリウレタン、エポキシ樹脂等を用いることができるが、これらに限定されない。
【0050】
次に、本発明の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムと、これを用いた磁気記録テープの製法を説明するが、これらに限定されるものではない。
【0051】
磁性層を形成する側の面(A面)を構成するA層として、乾燥したポリエステルのチップを押出機Aに供給する。一方、A層と反対面のB面を構成するB層として、ポリエステルのチップと平均粒子径50〜1,000nmの不活性粒子のマスターチップとを、不活性粒子が0.05〜2重量%となるように混合したものを押出機Bに供給し、溶融してTダイ複合口金内に導入して口金内でA層/B層の2層に積層されるよう合流せしめた後、シート状に共押出して溶融積層シートとする。A層/B層の厚み比率は2/1〜30/1が好ましい。
【0052】
この溶融積層シートを、表面温度10〜60℃に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸積層フィルムを作製する。該未延伸フィルムを70〜120℃に加熱したロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちフィルムの進行方向)に2〜5倍延伸し、20〜30℃のロール群で冷却する。
【0053】
続いて長手方向に延伸した積層フィルムの表面にそのまま、あるいは必要に応じてコロナ放電処理を施した後、被膜形成塗液を塗布する。被膜形成塗液の構成は、平均粒径が6〜30nmの微細粒子と有機化合物とを含み、塗液中の微細粒子/有機化合物の比率は、乾燥後、すなわち被膜中の固形分重量比で1〜25/99〜75(重量%)となるよう配合せしめたものが好ましい。塗布の方法は、溝掘り型メタリングバーを用いたメタリングバー方式とし、その設置条件として溝掘り型メタリングバーの溝深さの平均値が10〜30μm、溝深さのばらつきが0〜2.0μmのものを用い、バー設置時の平行度が0〜0.25%となるようにすることが好ましい。
【0054】
この被膜形成塗液を塗布された積層フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き90〜150℃に加熱した雰囲気中で長手方向と直角方向(横方向)に2〜5倍に延伸する。
【0055】
延伸倍率は、縦、横それぞれ2〜5倍とするが、その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は6〜20倍であることが好ましい。面積倍率が6倍未満であると得られるフィルム強度が不十分となり、逆に面積倍率が20倍を超えると延伸時に破れを生じ易くなる傾向がある。
【0056】
このようにして得られた二軸延伸積層フィルムの結晶配向を完了させて平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内にて150〜230℃で1〜30秒間の熱処理を行ない、均一に徐冷後、室温まで冷却して巻き取ることにより、本発明のフィルムを得ることができる。なお、上記熱処理工程中では、必要に応じて横方向あるいは縦方向に1〜12%の弛緩処理(リラックス)を施してもよい。また、二軸延伸は上述の逐次延伸の他に同時二軸延伸でもよく、同時二軸延伸の場合のインラインコートは、溶融シートをドラム上に密着冷却固化した未延伸フィルム表面に必要に応じてコロナ放電処理を施した後、被膜形成塗液を塗布し、延伸すればよい。また二軸延伸後に縦、横いずれかの方向に再延伸してもよい。
【0057】
被膜形成塗液中の微細粒子によりA面上に微細表面突起が形成されるが、前記微細粒子の種類、平均粒径、添加量等を上記範囲内で調整することにより、微細表面突起の密度や被膜の表面(A面)のRaを調節することができる。また、前記微細粒子の種類、平均粒径、添加量等を上記範囲内とした上で、塗布の方法として溝掘り型メタリングバーを用い、その設置条件(溝深さの平均値、溝深さのばらつき、平行度)を上記範囲内とすることにより、長手方向(縦方向)と横方向の各々について、微細突起の密度の平均値と標準偏差の比率、およびRaの平均値と標準偏差の比率を規定した要件(a)〜(d)を満足させることができる。
【0058】
磁気記録テープは、本発明のポリエステルフィルムの被膜を設けた側(A面側)に、例えばコバルト等の強磁性金属薄膜を真空蒸着により膜厚80〜300nmで形成し、この金属薄膜上に3〜30nmの厚みのダイヤモンド状カーボン膜をコーティングし、さらにその上に潤滑剤を3〜30nmの厚みに塗布し、B面側には固体微粒子および結合剤からなり必要に応じて各種添加剤を加えた溶液を塗布することによってバックコート層を0.1〜1μmの厚みで設けるなどして製造することができる。
【実施例】
【0059】
本実施例で用いた測定法を下記に示す。
【0060】
(1)バーの溝深さの平均値とばらつき
ホンメルテスターT−1000型(ホンメルワーク社製)を用い、バーの溝部分の任意の10箇所を選んで測定した。10箇所のRzの数平均値をバーの溝深さの平均値とし、Rzの最大値と最小値の差をバーの溝深さのばらつきとした。測定長さ1.5mm、カットオフ0.25mmで測定した。
【0061】
(2)バーの平行度
予め、バーを設置してバーの両端部と中心部の計3箇所について、デジタル傾斜角度計M474L−55T((株)シロ産業製)を用いて傾斜角度を測定した後、数平均値θを求め、以下式より平行度を算出した。
【0062】
tanθ × 100(%)
(3)フィルムサンプリング
スリット後のポリエステルフィルムロールについて、長手方向の任意の位置における幅方向に沿って任意に7点のサンプルを切り出した。また、長手方向については1,000m毎に1点ずつ切り出した。
【0063】
(4)微細粒子の粒径
電子顕微鏡(電顕)試験台上に微細粒子粉体を、この粒子ができるだけ重ならないように散在せしめ、透過型電子顕微鏡により倍率10万倍で観測し、少なくとも100個の粒子について面積円相当径を求め、この数平均値をもって粒径とした。
【0064】
(5)フィルム上の微細表面突起の密度
走査型電子顕微鏡により3万倍の拡大倍率でフィルム表面を20視野以上観測し、突起状に見える表面突起が1mmあたり何個あるかを求めることにより測定した。
【0065】
(6)中心線平均表面粗さ(Ra)
セイコーインスツルメンツ(株)製卓上プローブ顕微鏡“ナノピクス”(測定ヘッドNPX100[NPX1MAP001]およびコントローラNanopics1000[NPX1EBP001])を用いて測定した。測定条件は次のとおりである。
【0066】
測定面積:40μm角
スキャン速度:380sec/FRAME
スキャン回数:512本
振幅度合い:磁性層加工面側はLLモード、走行面側はHHモード
解析は同社製の解析ソフト「Nanopics Version 2.00」を用いた。
【0067】
(7)微細表面突起密度および中心線平均表面粗さ(Ra)の平均値・標準偏差・それらの比
([αbt],[βbt],[βbt/αbt],[αrt],[βrt],[βrt/αrt],
[αbm],[βbm],[βbm/αbm],[αrm],[βrm],[βrm/αrm])
平均値αは次式(1)によって求める。
【0068】
Xiは微細表面突起密度または中心線平均表面粗さ(Ra)の測定値、nは測定数である。
【0069】
【数1】

【0070】
同様に、n数測定したときの標準偏差Vnは次式(2)によって求める。
【0071】
【数2】

【0072】
(8)磁気テープの特性(ドロップアウト(DO)個数)
製作したDVCテープについて、無作為に60巻を選び、市販のカメラ一体型デジタルビデオテープレコーダー(DVCビデオカメラ)を用いて静かな室内でDVCテープに録画し、1分間の再生をして画面にあらわれたモザイク状のブロック個数(DO個数)を観察した。
【0073】
判定は60巻の数平均値を下記の基準で評価する。○又は△を合格とした。
【0074】
(平均値の判定基準)
○ : 0 個以上 1.0 個未満
△ : 1.0 個以上 3.0 個未満
× : 3.0 個以上 10.0 個未満
××: 10.0 個以上
また、ポリエステルフィルムロール長手方向について、ロール表層から−100m〜−50mの位置に相当する磁気テープを、幅方向において任意に7巻選び、幅方向の磁気テープ特性のばらつき(DO個数の最大値−DO個数の最小値)を下記基準で判定した。またポリエステルフィルムロール幅方向について、中央位置に相当する磁気テープを、長手方向1,000m間隔で各50m長さの範囲内で任意に選び、長手方向の磁気テープ特性のばらつき(DO個数の最大値−DO個数の最小値)を、同様に下記基準で判定した。いずれも○又は△を合格とした。
【0075】
(幅方向および長手方向のばらつきの判定基準)
○ : 0 個
△ : 1.0 個以上 2.0 個未満
× : 2.0 個以上 5.0 個未満
××: 5.0 個以上
[実施例1]
(1)ポリエステル原料の製造
原料としてテレフタル酸ジメチルを100重量部、エチレングリコールを64重量部計量し、エステル交換反応装置に仕込んだ。原料を仕込んだ後、装置内温度を150℃に加熱して内容物を溶解し撹拌した。次いで、撹拌しながら触媒として酢酸マグネシウム四水塩を0.06重量部、三酸化アンチモンを0.03重量部計量し、エステル交換反応装置に仕込んだ。
【0076】
触媒を仕込んだ後、反応内容物の温度を150℃から235℃まで3時間かけて昇温してエステル交換反応を進め、生成するメタノールを反応装置から留出させた。
【0077】
エステル交換反応が終了し、メタノールが留出しなくなった時点でトリメチルリン酸0.023重量部を添加した。
【0078】
粒子スラリー添加10分後にエステル交換反応装置内の反応生成物を重合反応装置へ移行した。
【0079】
重合装置内容物を撹拌しながら、その温度を120分かけて235℃から290℃まで昇温し、同時に120分かけて反応装置内の圧力を常圧から150Pa以下まで減圧した。
【0080】
重合装置の撹拌トルクが所定の値に達したら重合装置の撹拌を停止し、重合装置内に窒素ガスを送りこんで常圧に戻した。
【0081】
重合装置底部のバルブを開け、装置内を窒素ガスで加圧しながらポリエステル樹脂をストランド状に押し出した。ストランドは水槽で冷却固化させ、カッターに導き、径約5mm長さ約7mmの円柱状のポリエチレンテレフタレート(以降、PETという)のチップを得た。このPETチップの等価球直径は6.4mm、固有粘度は0.63であった。
【0082】
(2)ポリエステルフィルムの製造方法
A面側を構成するA層を形成するため、上記(1)の方法で製造したPETチップ(原料A)を180℃で3時間乾燥した後、押出機Aに供給し、常法により285℃で溶融してTダイ複合口金に導入した。
【0083】
一方、B面側を構成するB層を形成するため、上記PETをベースに、平均粒径300nmのシリカを0.20重量%含有させたチップ原料を180℃で3時間減圧乾燥した後に、押出機B側に供給し、常法により285℃で溶融して同様にTダイ複合口金に導入した。なお、シリカの製造および添加方法は以下の通りである。
【0084】
(シリカの製造方法)
「新実験化学講座」18界面とコロイド(1977年10月20日丸善株式会社発行)の第330〜331頁に記載の技術を参考に製造した。
【0085】
具体的には、ケイ酸ナトリウムの3.5重量%水溶液(SiO換算)をH型イオン交換樹脂で脱塩し、これに1.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9に調整する。この水溶液の一部を分取し、攪拌しながら100℃で15分間加熱後、90℃で保持する。次いで、この水溶液に脱塩してpH=9に調整したケイ酸ナトリウム水溶液を、攪拌しながら徐々に加えて反応を行い、300nmのシリカを含む水分散液を得た。
【0086】
(シリカの添加方法)
得られたシリカの水溶液にエチレングリコールを添加し、100℃に加熱することで水を留出させ、シリカの10重量%エチレングリコールスラリーとした。
【0087】
(1)のポリエステル原料の製造において、エステル交換反応が終了し、トリメチルリン酸を添加した5分後に、シリカを10重量%含有したエチレングリコールスラリーを2重量部添加した。
【0088】
次いで、該口金内でA層:B層=6:1の厚み比に積層されるよう合流せしめた後、シート状に共押出して溶融積層シートとし、冷却ドラムに密着させシート化し、110℃でロール延伸法により3.0倍に縦延伸した。
【0089】
同縦延伸の後の工程で、表面Aの外側のフィルム表面Aに溝深さが25μm、溝深さのばらつきが0.7μm、溝のピッチが125μm、ロッドの材質がSUS304である溝掘り型メタリングバーを用い、バー設置の平行度を0.1%としたメタリングバー方式により、下記水溶液を乾燥後の固形分重量で10mg/mとなるように塗布した。
【0090】
表面Aへの塗布水溶液:
メチルセルロース : 0.120重量%
水溶性ポリエステル : 0.290重量%
平均粒径18nmの極微細シリカ : 0.050重量%
(メチルセルロース)
セルロース(パルプ)を水酸化ナトリウムで処理した後、酸化エチレンと反応させて水溶性セルロースエーテル化したもの(セルロースのグルコース環単位当たり、メトキシル基で置換された水酸基の平均個数1.5)。
【0091】
(水溶性ポリエステル)
酸性分:テレフタル酸/イソフタル酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸=34/8/8(モル%)
グリコール成分:エチレングリコール/ネオペンチルグリコール/ジエチレングリコール=40/7/3(モル%)
上記酸性分とグリコール成分を用い、エステル交換反応によって得た、側鎖にカルボン酸基を有さないポリエステル
(平均粒径18nmの極微細シリカ)
「新実験化学講座」18界面とコロイド(1977年10月20日丸善株式会社発行)の第330〜331頁に記載の技術を参考に製造した。
【0092】
具体的には、ケイ酸ナトリウムの3.5重量%水溶液(SiO換算)をH型イオン交換樹脂で脱塩し、これに1.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9に調整し、攪拌しながら90℃で10分間加熱して反応を行い、平均粒子径18nmの極微細シリカを含む水分散液を得た。
【0093】
その後、ステンターにて横方向に110℃で4.2倍に延伸し、215℃で熱処理し、中間スプールに巻き、スリッターで小幅にスリットし、円筒コアーにロール上に巻取り、厚み6.3μm、幅635mm、長さ20,050mのポリエステルフィルムロールを得た。
【0094】
このポリエステルフィルムのA面側の被膜上に真空蒸着により150nmのコバルト−酸素薄膜(強磁性金属薄膜)を形成した。次に蒸着膜上にCVD法によりダイヤモンド状カーボン膜を厚みが10nmとなるように形成させた。続いてフッ素含有脂肪酸エステル系樹脂剤を3nm塗布し、最後にB面側にバックコート層を厚みが400nmとなるように塗布した後、幅6.35mm・長さ50mに切断して磁気テープを製造した。ポリエステルフィルムロール長手方向について19,950m〜20,000m位置に相当する磁気テープを幅方向において50〜150mm間隔で任意に7巻選び、幅方向の磁気テープ特性判定サンプルとした。またポリエステルフィルムロール幅方向において、端部から311.15mm〜317.50mm位置に相当する磁気テープを、長手方向に0m〜50m、1,000m〜1,050m、2,000m〜2,050m、・・・、20,000m〜20,050mというように1,000m間隔で各50m長さの範囲内で任意に21巻選び、長手方向の磁気テープ特性判定サンプルとした。
【0095】
被膜の主要な塗布条件を表1、得られたポリエステルフィルム、磁気テープの特性を表2に示す。表2の通り、ポリエステルフィルムは幅方向、長手方向ともA面の微細表面突起の密度、Raのばらつきが小さく、磁気テープもDO個数の平均値及びばらつきが小さく、優れた特性を示した。
【0096】
[実施例2]
実施例1のポリエステルフィルムロール製造において、塗布水溶液中の極微細シリカの平均粒径を11nmに変更し、含有量を0.020重量%に変更したことの他は実施例1と同様にして厚み6.3μm、幅635mm、長さ20,050mのポリエステルフィルムロールを作製した。得られたポリエステルフィルムロールを用いて実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造し、磁気テープ特性を評価した。
【0097】
得られたポリエステルフィルム、磁気テープ特性を表2に示す。
【0098】
(平均粒子径11nmの極微細シリカの製造方法)
実施例1のコロイダルシリカ製造において、1.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9に調整した後、攪拌しながら90℃で6分間加熱して反応を行い、平均粒子径11nmの極微細シリカを含む水分散液を得た。
【0099】
[実施例3]
実施例1のポリエステルフィルムロール製造において、使用する溝掘り型メタリングバーの溝深さのばらつきを0.7μmに変更し、その他は実施例1と同様にして厚み6.3μm、幅635mm、長さ20,050mのポリエステルフィルムロールを作製した。得られたポリエステルフィルムロールを用いて実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造し、磁気テープ特性を評価した。
【0100】
得られたポリエステルフィルム、磁気テープ特性を表2に示す。
【0101】
[実施例4]
実施例1のポリエステルフィルムロール製造において、使用する溝掘り型メタリングバー設置の平行度を0.05%に変更し、その他は実施例1と同様にして厚み6.3μm、幅635mm、長さ20,050mのポリエステルフィルムロールを作製した。得られたポリエステルフィルムロールを用いて実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造し、磁気テープ特性を評価した。
【0102】
得られたポリエステルフィルム、磁気テープ特性を表2に示す。
【0103】
[実施例5]
実施例2のポリエステルフィルムロール製造において、使用する溝掘り型メタリングバーの溝深さの平均値を20μm、溝深さのばらつきを1.8μm、バー設置の平行度を0.20%にに変更し、その他は実施例1と同様にして厚み6.3μm、幅635mm、長さ20,050mのポリエステルフィルムロールを作製した。得られたポリエステルフィルムロールを用いて実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造し、磁気テープ特性を評価した。
【0104】
得られたポリエステルフィルム、磁気テープ特性を表2に示す。
【0105】
[比較例1]
実施例1のポリエステルフィルムロール製造において、使用するメタバーを溝深さが125μm、溝深さのばらつきが3.5μm、溝ピッチが55μmである巻線型のメイヤーバーに変更し、塗布量を乾燥後の固形分重量で18mg/mとなるように塗布し、その他は実施例1と同様にして厚み6.3μm、幅635mm、長さ20,050mのポリエステルフィルムロールを作製した。得られたポリエステルフィルムロールを用いて実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造し、磁気テープ特性を評価した。
【0106】
得られたポリエステルフィルム、磁気テープ特性を表2に示す。
【0107】
[比較例2]
実施例2のポリエステルフィルムロール製造において、使用するメタバーを比較例1と同じ溝深さが55μm、溝深さのばらつきが3.5μm、溝ピッチが125μmである巻線型のメイヤーバーに変更し、塗布量を乾燥後の固形分重量で18mg/mとなるように塗布し、その他は実施例2と同様にして厚み6.3μm、幅635mm、長さ20,050mのポリエステルフィルムロールを作製した。得られたポリエステルフィルムロールを用いて実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造し、磁気テープ特性を評価した。
【0108】
得られたポリエステルフィルム、磁気テープ特性を表2に示す。
【0109】
[比較例3]
実施例1のポリエステルフィルムロール製造において、塗布水溶液中の極微細シリカの粒径を5nmに変更し、添加量を0.002重量%と変更し、塗布量を乾燥後の固形分重量で9mg/mとなるように塗布した。その他は実施例1と同様にして厚み6.3μm、幅635mm、長さ20,050mのポリエステルフィルムロールを作製した。得られたポリエステルフィルムロールを用いて実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造し、磁気テープ特性を評価した。
【0110】
得られたポリエステルフィルム、磁気テープ特性を表2に示す。
【0111】
(平均粒子径5nmの極微細シリカの製造方法)
実施例1のコロイダルシリカ製造において、1.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH8.5に調整した後、攪拌しながら85℃で5分間加熱して反応を行い、平均粒子径5nmの極微細シリカを含む水分散液を得た。
【0112】
[比較例4]
実施例1のポリエステルフィルムロール製造において、塗布水溶液中の極微細シリカの粒径を38nmに変更し、添加量を0.300重量%と変更し、塗布量を乾燥後の固形分重量で16mg/mとなるように塗布した。その他は実施例1と同様にして厚み6.3μm、幅635mm、長さ20,050mのポリエステルフィルムロールを作製した。得られたポリエステルフィルムロールを用いて実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造し、磁気テープ特性を評価した。
【0113】
得られたポリエステルフィルム、磁気テープ特性を表2に示す。
【0114】
(平均粒子径38nmの極微細シリカの製造方法)
実施例1のコロイダルシリカ製造において、1.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9に調整した後、攪拌しながら110℃で15分間加熱して反応を行い、平均粒子径38nmの極微細シリカを含む水分散液を得た。
【0115】
[比較例5]
実施例1のポリエステルフィルムロール製造において、塗布水溶液中の粒径を18nm極微細シリカの添加量を0.010重量%と変更した。その他は実施例1と同様にして厚み6.3μm、幅635mm、長さ20,050mのポリエステルフィルムロールを作製した。得られたポリエステルフィルムロールを用いて実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造し、磁気テープ特性を評価した。
【0116】
得られたポリエステルフィルム、磁気テープ特性を表2に示す。
【0117】
[比較例6]
実施例2のポリエステルフィルムロール製造において、塗布水溶液中の11nm極微細シリカの添加量を0.040重量%と変更した。その他は実施例2と同様にして厚み6.3μm、幅635mm、長さ20,050mのポリエステルフィルムロールを作製した。得られたポリエステルフィルムロールを用いて実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造し、磁気テープ特性を評価した。
【0118】
得られたポリエステルフィルム、磁気テープ特性を表2に示す。
【0119】
[比較例7]
実施例1のポリエステルフィルムロール製造において、塗布方式をエアーナイフ方式に変更し、その他は実施例1と同様にして厚み6.3μm、幅635mm、長さ20,050mのポリエステルフィルムロールを作製した。塗布量は、エアーナイフで液を掻き取る前に付着させる液の量とエアーナイフのエア圧及びリップ径で制御した。エアーナイフで掻き取る前に付着させる液の固形分塗布量を100mg/mとし、エア圧を200kPa、エアーナイフのリップ径を1mmとして塗布を行った。乾燥後の塗布量は、固形分重量で11mg/mであった。得られたポリエステルフィルムロールを用いて実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造し、磁気テープ特性を評価した。
【0120】
得られたポリエステルフィルム、磁気テープ特性を表2に示す。
【0121】
[比較例8]
実施例2のポリエステルフィルムロール製造において、使用する溝掘り型メタリングバーの溝深さのばらつきを3.0μm、さらにバー設置の平行度を0.35%に変更し、その他は実施例2と同様にして厚み6.3μm、幅635mm、長さ20,050mのポリエステルフィルムロールを作製した。得られたポリエステルフィルムロールを用いて実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造し、磁気テープ特性を評価した。
【0122】
得られたポリエステルフィルム、磁気テープ特性を表2に示す。
【0123】
【表1】

【0124】
【表2】

【0125】
表2に示す磁気テープ特性から明らかなように、本発明の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールを用いて製造された磁気テープはDO個数が少なく高品質のものであり、またフィルムの幅方向、長手方向に相当する、いずれのばらつきも少ないため、テープ生産性にも優れている。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は磁気記録媒体用ポリエステルフィルムの代表としてデジタルビデオテープ用に優れたポリエステルフィルムを提供するが、デジタルビデオテープ用のみならずデータストレージ用においても優れている。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】従来の巻線型メイヤーバーを示す概略図および拡大概略断面図である。
【図2】本発明において用いることができる溝掘り型メタリングバーを示す概略図および拡大概略断面図である。
【符号の説明】
【0128】
1 巻線型メイヤーバー
2 ロッド
3 ワイヤー(巻線)
4 液が通過する部分
5 溝掘り型メタリングバー
6 ロッド
7 液が通過する部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの磁性層が形成される側の面(A面)に、平均粒径が6〜30nmの微細粒子と有機化合物とを含む被膜が形成され、この被膜上には前記微細粒子による微細表面突起が1,000万〜1億個/mmの密度で存在し、かつ以下の(a)〜(d)を同時に満足する磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロール。
(a)長手方向の任意の位置において幅方向に少なくとも7箇所について測定した微細表面突起密度の平均値[αbt]と標準偏差[βbt]との比[βbt/αbt]が0.10以下
(b)長手方向の任意の位置において幅方向に少なくとも7箇所について測定した中心線平均表面粗さ(Ra)の平均値[αrt]と標準偏差[βrt]との比[βrt/αrt]が0.12以下
(c)長手方向に1,000m間隔で測定した微細表面突起密度の平均値[αbm]と標準偏差[βbm]との比[βbm/αbm]が0.12以下
(d)長手方向に1,000m間隔で測定した中心線平均表面粗さ(Ra)の平均値[αnr]と標準偏差[βrm]との比[βrm/αrm]が0.15以下
【請求項2】
長さが15,000m以上である、請求項1に記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項3】
ポリエステルがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートである、請求項1または2に記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項4】
デジタル記録方式の磁気テープに用いられる、請求項1〜3のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項5】
磁性層が強磁性金属薄膜層である、請求項1〜4のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項6】
平均粒径6〜30nmの微細粒子と有機化合物とを含む塗液を、溝掘り型メタリングバーを用いてポリエステルフィルムの磁性層が形成される側の面(A面)に塗布した後、乾燥させて、前記微細粒子による微細表面突起が1,000万〜1億個/mmの密度で存在する被膜を形成する、請求項1〜5のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−30209(P2008−30209A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202853(P2006−202853)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】