説明

磁気記録媒体

【課題】優れた電磁変換特性と良好な走行性を併せ持つ、薄層磁性層を有する磁気記録媒体を提供すること。
【解決手段】非磁性支持体の一方の面に結合剤と無機粉末を含む中間層を塗布して乾燥したあとその層上に塗布してなる、強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有し、他方の面にカーボンブラックおよび/または無機粉末を含むバックコート層を有する磁気記録媒体。前記磁性層の厚さは0.01〜0.15μmの範囲であり、前記バックコート層は潤滑剤を含むことにより、再生出力が良好で、耐久性も優れた磁気記録媒体が提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高密度記録用磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気記録媒体の高記録密度化に伴い、記録波長が短くなる傾向にあり、磁性層が厚くなると出力が低下する記録時の自己減磁損失の問題が大きくなっている。このため、磁性層を薄くすることが行われている。ところで、0.3μm以下の極めて薄い磁性層を支持体に直接塗布しようとすると、磁性層中の研磨剤やカーボン等の添加剤や、磁性粉の凝集体、非磁性支持体の影響を受けて、磁性層の表面が粗く、電磁変換特性やドロップアウトが悪化するという問題があった。
【0003】
この問題を解決する手段の1つとして、支持体と磁性層との間に中間層である非磁性層(以下、下層ともいう)を設けた所謂重層構成の磁気記録媒体が提案され、広く実用化されている。記録媒体の高密度化、大容量化対応に伴い、ここ数年では特にコンピューターバックアップ用の塗布型磁気記録媒体では重層構成がほとんどを占める。
【0004】
近年、分散技術が発達し、磁性層塗布液を高度に分散することが可能になってきている。このように磁性層の分散性が高まると、媒体の平滑性は、上層の磁性層と中間層である下層の非磁性層との界面のみだれや磁性層の下層に位置する非磁性層の表面性の影響を大きく受けるようになる。そのため、非磁性層の表面粗さや非磁性層上の突起により、磁性層の表面平滑性が劣化し、電磁変換特性が低下するという問題が生じてきた。
【0005】
重層構成の塗布型磁気記録媒体を作製する方法も当初の頃は、上層である磁性層の塗料と下層の非磁性の塗料を同時に非磁性支持体上に塗布する同時重層塗布方式が圧倒的に多かったが(例えば文献1,2)、流体である塗料同士のために上下層界面の領域の乱れが生じやすく、これを防止するために先に下層を形成する非磁性塗料を塗布して一度これを乾燥して成膜させた後に下層の上に磁性塗料を塗布する逐次重層方法もとられるようになった(文献3)。下層は単に乾燥させるだけでなくカレンダによって鏡面化処理などをして平滑化したあと上層を塗布する。
【0006】
このような逐次重層方法を採用することで、同時重層のときに生じることのあった塗料同士の界面での混合による境界の乱れは低減されるものの下層をカレンダ処理して下層の表層が圧密されているために、本来の機能であった下層に含まれる潤滑剤が上層に供給されにくくなって、磁性層表面が十分な潤滑剤で保護されなくなった。そのために走行安定性が得られず、信頼性において走行中にエラーレートが上昇しやすくなった結果、再生出力のC/Nが劣化するという問題が生じてきた。
【0007】
このため、逐次重層で作製した薄層磁性層を有する重層構成の磁気記録媒体において、優れた電磁変換特性と良好な走行性を両立するための手段が求められていた。
【0008】
【特許文献1】特許公報第2566070号
【特許文献2】特許公報第2646303号
【特許文献3】特開2001−126232号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、優れた電磁変換特性と良好な走行性を併せ持つ、薄層磁性層を有する磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、
(請求項1)非磁性支持体の一方の面に結合剤と無機粉末を含む中間層を塗布して乾燥、硬化した後に塗布形成してえた少なくとも一層からなる強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有し、他方の面にカーボンブラックおよび/または無機粉末を含むバックコート層を有する磁気記録媒体であって、前記磁性層の厚さは0.01〜0.15μmの範囲であり、前記磁性層の表面粗さはRaが3.0nm以下であり、かつ、 前記バックコート層は潤滑剤を含むことを特徴とする磁気記録媒体。
(請求項2)前記バックコート層は、前記カーボンブラックおよび無機粉末の合計量100重量部に対して、0.5部〜8.0部の潤滑剤を含む請求項1に記載の磁気記録媒体。
(請求項3)前記バックコート層には平均粒子径の異なる2種類のカーボンブラックが含まれており、大きい平均粒子径のカーボンブラックの平均粒子径が60nm未満である請求項1乃至2に記載の磁気記録媒体。
(請求項4)前記バックコート層に含まれる全カーボンブラック含有量が、全固形分100重量部に対して60重量部より多く、95重量部より少ない請求項1乃至3に記載の磁気記録媒体。
(請求項5)前記磁性層に含まれる強磁性粉末は、平均板径が10〜35nmの六方晶フェライト粉末または平均長軸長が10〜100nmの強磁性金属粉末である請求項1乃至4に記載の磁気記録媒体。
とすることで前記課題が解決されることを見出した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた電磁変換特性と長時間走行後もC/Nが低下しない良好な信頼性を併せ持つ高密度記録用磁気記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0013】
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の一方の面に結合剤と無機粉末を含む中間層を塗布して乾燥、硬化した後に塗布形成して得た少なくとも一層からなる強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有し、他方の面にカーボンブラックおよび/または無機粉末を含むバックコート層を有する磁気記録媒体であって、前記磁性層の厚さは0.01〜0.15μmの範囲であり、 前記磁性層の表面粗さはRaが3.0nm以下であり、かつ、前記バックコート層は潤滑剤を含むことを特徴とする磁気記録媒体である。
【0014】
本発明の磁気記録媒体は、磁性層と非磁性支持体との間に、結合剤と無機粉末を含む中間層を有する。この中間層用の塗料を非磁性支持体上に塗布して乾燥、硬化したあとにこの中間層上に磁性塗料を塗布硬化して重層構造の磁気記録媒体をうる。
【0015】
本発明において、中間層を塗布、硬化したあとに磁性層を塗布して設けることにより得られる効果について、以下に説明する。
【0016】
本発明の磁気テープにおいては、最上層磁性層の平滑性の向上、耐久性の向上のため、下層を形成するのが望ましい。特に、磁性層厚さが90nm以下の磁気テープにおいては下層形成効果が大きい。また、最上層磁性層の磁気記録信号を乱さないため、通常、下層は非磁性である。
【0017】
下層の厚さは、0.10〜1.5μmが好ましく、0.10〜1.0μmがより好まし好ましい。0.10μm未満では、磁気テープの耐久性向上効果が小さく、1.5μmを超えると、磁気テープの耐久性の向上効果が飽和し、またテープ全厚が厚くなり、1巻当りのテープ長さが短くなり、記憶容量が小さくなる。
【0018】
下層には、塗料粘度やテープ剛性の制御を目的で、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウムなどの非磁性粉末を含ませることができる。非磁性の酸化鉄には、針状のほか、粒状または無定形のものがある。針状のものは、平均長軸長50〜200nmが好ましく、粒状または無定形のものは、平均粒径5〜200nmであるのが好ましい。5〜100nmであるのがより好ましい。粒径が5nmよりも小さいと均一分散が難しく、また200nmよりも大きいと下層と磁性層の界面の凹凸が増加しやすい。
【0019】
下層には、導電性改良の目的で、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラックを含ませることができる。
【0020】
これらのカーボンブラックは、平均粒径が通常5〜200nmであるのが好ましく、より好ましくは10〜100nmである。カーボンブラックは、ストラクチャー構造を持っており、平均粒径が小さすぎるとカーボンブラックの分散が難しくなり、大きすぎると表面平滑性が悪くなる。なお、表面平滑性を損なわない範囲で、平均粒径が前記範囲を超える大粒径のカーボンブラックを含ませることを排除するものではない。この場合、下層へのカーボンブラックの添加量は、両者のカーボンブラックを合わせて、無機粉末100重量部に対して、通常2〜70重量部、とくに5〜50重量部とするのが好ましい。
【0021】
通常に中間層に使用される結合剤としての樹脂は、磁性層形成に使われる結合剤樹脂と同じものか似たものが使用される。それゆえ上層の磁性塗料と中間層の非磁性塗料に用いられる有機溶剤もよく互いに混合し合うことになる。
【0022】
このため重層構成の磁気記録媒体の初期に多く採られた、上層塗料と下層塗料を例えばエクストルージョン型のダイを用いて同時に二つのスリットから非磁性体支持体上に塗布する(ウエット・オン・ウエット)方法の場合、下層塗料の上に瞬時に上層塗料がのることになり、両者の界面はどちらも液体状態で接することになって完全に両者の界面を分離することは極めて困難であった。わずかながらの両者の界面での塗料の混合領域が発生した。
【0023】
混合領域が発生するということは、上層である磁性層の厚みが記録媒体全長に渡って均一でなく変動が生じるということである。0.5ギガビット/平方インチ以上の高記録密度記録となる短波長域の波長の信号を記録する媒体にあっては、ごくわずかの磁性層の厚みムラもC/Nの低下につながり防止しなければならなくなった。実際にこのような上下層の混合領域によって発生する厚みムラの程度を規定することが開示されている(特許文献4,5)。
【0024】
【特許文献4】特許公報第3181039号
【特許文献5】特許公報第3181038号 厚み変動の原因となる上下層の混合領域を比較的容易に低減する方法が、先に述べた逐次重層塗布方式である。すなわち非磁性支持体上に中間層となる非磁性塗料を塗布して一度乾燥、硬化したあとにこの中間層上に磁性塗料を塗布して重層構造の磁気記録媒体をうる方法である。一度乾燥、硬化させたあとに鏡面化処理を実施して磁性層となる磁性塗料を塗布してもよい。
【0025】
一度乾燥硬化させて固化した中間層の上に液体の磁性塗料を塗布するので、非磁性層と磁性層の界面は、同時重層の場合の液/液界面と異なり液/固界面となって界面での混合領域による磁性層の厚みムラは大きく低減される。よって厚みムラによる出力変動やC/Nの劣化は同時重層の場合より良好な結果が得られる。
【0026】
しかしながら、重層構造を持つことによる下層から上層への潤滑剤の供給は、圧密された下層表面のために潤滑剤の供給路としての空隙が少なく十分でなくなる。このために長時間走行においては磁性層表面の潤滑剤が不足して、摩擦係数が上昇したり、磁性層表面がダメージを受けやすくなって信頼性が損なわれるという問題が生じる。
【0027】
そこで、良好な電磁変換特性を維持して安定な走行特性をうるために本発明の磁気記録媒体のバックコート層は次の方策を採用するとよいことを見出した。
(1)前記バックコート層は、前記カーボンブラックおよび無機粉末の合計量100重量部に対して、0.5〜8.0重量部の潤滑剤を含むこと。
(2)前記バックコート層には平均粒子径の異なる2種類のカーボンブラックが含まれており、大きい平均粒子径のカーボンブラックの平均粒子径が60nm未満であること。
(3)前記バックコート層に含まれる全カーボンブラック含有量が、結合剤100重量部に対して60重量部より多く、95重量部より少ないこと。
【0028】
また良好な電磁変換特性を維持するためには、磁性層に含まれる強磁性粉末は、平均板径が10〜35nmの六方晶フェライト粉末または平均長軸長或は平均粒子径が10〜100nmの強磁性金属粉末であることで前記課題が解決されることを見出した。
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。
【0030】
図1に本発明における磁気記録媒体の一例の概略断面図を示す。磁気記録媒体は、非磁性支持体1上に、下層非磁性層3と磁性層2とが重層塗布形成された構成を有しており、さらに反対側の面には、バックコート4が塗布してある。
【0031】
非磁性支持体1の材料としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート、セルロースダイアセテート、セルロースブチレート等のセルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド等のプラスチック、アルミニウム合金、チタン合金等の軽金属、アルミナガラス等のセラミック等が挙げられる。
【0032】
次に磁性層2について説明する。磁性層2は、磁性粉末と結合剤を主成分とするものとし、その他潤滑剤、帯電防止剤、研磨剤、防錆剤等の添加剤を混合し、有機溶剤を用いて混練、分散させ、調製した磁性塗料を塗布することにより形成されるものである。
【0033】
磁性粉末は、適用するVTRフォーマット、データドライブフォーマットの記録再生特性に好適な磁気特性(保磁力、磁化量)を有するものを選択する。例えば、Fe系、及びFe−Co系の金属粉末、バリウムフェライト、炭化鉄、酸化鉄、窒化鉄等が挙げられる。なお、副元素として、Co、Ni、Cr、Mnmg、Ca、Ba、Sr、Zn、Ti、Mo、Ag、Cu、Na、K、Li、Al、Si、Ge、Ga、Y、Nd、La、Ce、Zr等の金属化合物が共存していても良い。
【0034】
本発明の磁気記録媒体の磁性層を構成する結合剤樹脂としては、ポリウレタン系樹脂や、塩化ビニル系樹脂等に架橋反応付与した構造の樹脂が好ましい。しかしながら結合剤樹脂はこれらに限定することなく、目的とする磁気記録媒体に対して要求される物性等に応じて、その他、電子線硬化型の樹脂や従来公知の他の樹脂を適宜配合してもよい。配合する樹脂としては、通常、塗布型の磁気記録媒体に用いられる樹脂であれば、特に限定されない。
【0035】
例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重体、アクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−塩化ビニル共重合体、メタクリル酸エステル−エチレン共重合体、ポリ弗化ビニル、塩化ビニリデン−アルリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(セルロースアセテートブチレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロース)、スチレンブタジエン共重合体、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、合成ゴム等が挙げられる。
【0036】
また、熱硬化性樹脂、または反応型樹脂の例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0037】
また、上記各結合剤樹脂には、磁性粉末の分散性を向上させる目的で、−SOM、−OSOM、−COOM、P=O(OM)等の極性官能基が導入されていてもよい。ここで、式中Mは、水素原子、あるいはリチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属である。
【0038】
更に、極性官能基としては、−NR、−(NRの末端基を有する側鎖型のもの、>(NRの主鎖型のものが挙げられる。ここで、式中R、R、Rは、水素原子、あるいは炭化水素基であり、Xは弗素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン元素イオンあるいは無機・有機イオンである。また、極性官能基としては、−OH、−SH、−CN、エポキシ基等も挙げられる。
【0039】
磁性層2には、非磁性補強粒子として、酸化アルミニウム(α、β、γ)、酸化クロム、酸化珪素、ダイヤモンド、ガーネット、エメリー、窒化ホウ素、チタンカーバイト、炭化珪素、炭化チタン、酸化チタン(ルチル、アナターゼ)等を含有させてもよい。
【0040】
磁性層2を形成するための、磁性塗料調製用の溶剤としては、下記に示すようなものを適用できる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、乳酸エチル、エチレングリコールアセテート等のエステル系溶媒、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2−エトキシエタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、適宜混合して用いてもよい。
【0041】
磁性塗料調製用の混練装置としては、連続二軸混練機、多段階で希釈可能な連続二軸混練機、ニーダー、加圧ニーダー、ロールニーダー等、従来から公知の混練機をいずれも使用でき、何ら限定されるものではない。
【0042】
また、分散装置には、ロールミル、ボールミル、横型サンドミル、縦型サンドミル、スパイクミル、ピンミル、タワーミル、DCP、ホモジナイザー、超音波分散機等がいずれも使用可能である。
【0043】
次に、下層非磁性層3について説明する。下層非磁性層3は、非磁性粉末と結合剤を主成分とするものとし、その他潤滑剤、各種添加剤を混合し、有機溶剤を用いて混練、分散させ、調製した下層非磁性層用塗料を塗布することにより形成されるものである。
【0044】
非磁性粉末としては、針状、球状、板状等、各種形状の微粒子を適宜使用することができる。下層非磁性層3を構成する結合剤としては、上述した磁性層2において適用可能なものをいずれも使用することができる。
【0045】
また、下層非磁性層用の塗料を作製するための有機溶剤や、分散装置、及び混練装置についても、上述した磁性層の場合と同様のものが適用できる。
【0046】
また、下層非磁性層3においては、樹脂にポリイソシアネートを併用して、これを架橋硬化させるようにしてもよい。ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート、及びこれらの付加体、アルキレンジイソシアネート、及びこれらの付加体等が挙げられる。樹脂に電子線照射硬化型樹脂を用いて電子線照射によって硬化させてもよい。
【0047】
架橋硬化させるときのポリイソシアネートの添加量は、下層非磁性層3の結合剤樹脂100重量部に対して5〜80重量部、更には10〜50重量部が好ましい。なお、ポリイソシアネート類は、下層非磁性層3のみならず、磁性層2にも用いてもよく、いずれか一方のみ用いてもよい。両層に用いる場合には、その量を各層で等しくしてもよく、任意の比率で変えても良い磁性層2及び下層非磁性層3に含有させる潤滑剤としては、例えば、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸と、炭素数2〜12の1価〜6価アルコールのいずれかとのエステル、これらの混合エステル、またはジ脂肪酸エステル、トリ脂肪酸エステルを適宜用いることができる。
【0048】
潤滑剤の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ペンチル、ステアリン酸ヘプチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチルが挙げられる。
【0049】
上述したような材料を用いて調製した磁性塗料、及び下層非磁性層用塗料を、非磁性支持体1上に重層塗布し、乾燥処理を行うことにより、磁性層2、下層非磁性層3が形成される。なお、塗料の塗布方法としては、下層塗料を塗布して乾燥させ、この乾燥された下層塗膜上に上層塗料を塗布して乾燥させる、いわゆるウェット・オン・ドライ塗布方式(逐次重層塗布方式)と湿潤状態にある下層塗膜の上に上層塗膜を重ねて塗布する、いわゆるウェット・オン・ウェット塗布方式(同時重層塗布方式)とがある。本発明の磁気記録媒体は、ウェット・オン・ドライ塗布方式を適用した場合に限定される。バックコート層に潤滑剤を含有させた場合、ウェット・オン・ウェット塗布方式で得た媒体においては下層非磁性層に含まれた潤滑剤が上層磁性層に供給されやすいので、バックコート層からさらに潤滑剤が転移することで磁性層の表面に潤滑剤が過剰になって塗膜表面を軟弱化させたり、走行によって過剰の潤滑剤をヘッドに付着させたりしてスペーシングロスを発生させてかえってテープの特性を低下させることになる。
【0050】
続いて、磁性層形成面とは反対側の主面に、バックコート層を形成する。本発明のバックコート4の基本構成は平均粒子径の異なる2種類のカーボンブラックと結合剤、結合剤を三次元架橋させるための硬化剤である。本発明のバックコート中には潤滑剤のほか結合剤樹脂の可塑剤、硬化剤の反応助剤、分散剤、溶媒の残渣、が含有されていても良い。
【0051】
しかし、酸化アルミニウムや酸化チタン、酸化鉄に代表される金属酸化物の無機粒子を含有させる場合は磁気記録面への傷つきを防止するために平均粒子径が0.3μm以下のものにするのが好ましい。
【0052】
粒子径が異なる2種類のカーボンブラックを含有させるのは、小さい粒子径のカーボンブラック(以下カーボンブラック(A)と略する)は表面粗さの制御と電気抵抗を低くする機能に、大きい粒子径のカーボンブラック(以下カーボンブラック(B)と略する)は主に走行中の摩擦係数を低くする機能に分けてそれぞれに特化させるためである。
【0053】
カーボンブラック(A)の平均粒子径は10〜30nm、カーボンブラック(B)の平均粒子径は50〜60nmのカーボンブラックを使用することが好ましい。
【0054】
カーボンブラック(B)の平均粒子径が範囲で好ましいのは、粒子径の大きいカーボンブラック(B)は該粒子がバックコートに突起として存在するために、バックコート面の摩擦係数を低く安定に抑えることが可能である。しかしながら、最近の大容量媒体に使用される磁性層の磁性粉末はその平均長軸長や平均粒子径、平均板状径が60nm以下のものが多く、テープが巻回されたとき磁性粉末の粒子径より大きなサイズのカーボンブラックが存在するバックコートと密接することになりその突起で非常に平滑な磁性層表面にキズをつけて短波長域の記録信号の出力を低下させるからである。
【0055】
カーボンブラック(A)の平均粒子径のこの範囲が好ましいのは、10nm以下の平均粒子径であるカーボンブラックは現実的には工業的に生産されておらず、30nmを超えるとバックコート層表面の粗さが大きくなってカーボンブラック(B)が突起として存在する確率が低くなって摩擦係数を低く安定に抑えることの機能が損なわれるからである。
【0056】
バックコート層は、全固形分100重量部に対して全カーボンブラックは60重量部から95重量部を含むのが好ましい。また、前記カーボンブラック(A)と、前記カーボンブラック(B)とを、A/B=90/10〜98/2の重量比率で含むことが好ましい。カーボンブラック(A)はバックコート層形成用顔料の主成分であり、カーボンブラック(B)はカーボンブラック(A)よりも少ない重量範囲で用いることが好ましい。前記カーボンブラック(B)の前記カーボンブラック(A)に対する重量比率が上記範囲の上限を超えると、バックコート層表面の凹凸特に凸が大きくなるために、ドロップアウトの悪化、特に高温高湿保存後のドロップアウトが悪化する傾向がある。一方、前記カーボンブラック(B)のカーボンブラック(A)に対する重量比率が上記範囲の下限未満であると、バックコート層表面の凹凸が小さくなるために、摩擦が悪くなる傾向がある。
【0057】
結合剤は、電気抵抗を低く抑えるためには、配合量を少なくすることが必要である。結合剤の量が前述の範囲より少ない場合、当然、粒子と粒子の結合が弱くなるために、塗膜が脆くなりやすい。よってこの状態でも結合力を保持することが重要である。逆に結合剤の量が前述の範囲より多い場合は、テープ全体の電気抵抗を十分に低下させることができず、テープ走行中に静電気の発生で最近使用されるMR(Magneto-Resistive)ヘッドを破損させるおそれがある。本発明ではガラス転移点を低い樹脂を配合し、かつ樹脂と反応して3次元架橋構造を形成することが可能な硬化剤を配合し、塗膜形成後に熱処理を加えて3次元架橋構造の形成を促進させ、塗膜の脆性を抑える。
【0058】
バックコート4は、塗料化工程、塗布工程、乾燥工程、場合によってカレンダ工程、熱硬化工程を経て作製される。
【0059】
まず塗料化工程は、カーボンブラック、結合剤、溶媒(溶剤)を磁性塗料作製のときに用いたと同様の混練機で混練したあと、攪拌機能付きの容器内で一次分散し、続いてサンドミルなどのミル分散機で粒子を分散せしめて、塗料とする。
【0060】
このとき、サンドミル以外の分散機を用いてもよい。これらの方法は磁性層用塗料や下層用塗料の作製方法の項で説明した同様の方法を用いてよい。
【0061】
塗布方法はダイ方式やグラビア方式に代表されるいずれの塗布方式を用いてよく、乾燥方法についても溶剤を除去できる方法であれば、どの方法でも良い。
【0062】
カレンダ処理は、実施してもしなくても良いが、実施したほうが、表面が平滑になるだけでなく、塗膜の空隙が減って強度が向上する。
【0063】
硬化工程は、結合剤樹脂のガラス転移温度が30〜50℃であるために、50℃以上で行うことが望ましい。時間については長いほど、架橋反応の効果が期待でき、好ましくは20時間以上の期間が望ましい。
【0064】
バックコート4の形成後は、目的とする磁気テープの幅に裁断する。その後必要に応じて消磁を行い、記録フォーマットによっては、サーボ信号を専用の記録装置で記録後、テープをカートリッジに収容する。
【0065】
つぎに、本発明の実施例を記載して、さらに具体的に説明するがそのまえに、前記してない各実施例で得られた特性値を測定した方法について予め説明しておく。
<磁気テープの表面粗さ>
ZYGO社製NewView5000を用い、走査型白色光干渉法にて50倍の対物レンズにより、ズーム倍率を100倍(測定視野72μm×54μm)に設定して測定し、中心線平均粗さRaを求めた。
<磁気テープの電磁変換特性>
テープの電磁変換特性測定には、ドラムテスターを用いた。データ信号の出力及びノイズは、ドラムテスターには電磁誘導型ヘッド(トラック幅25μm、ギャップ0.2μm)とMRヘッド(トラック幅5.5μm、シールド間隔0.17μm)を装着し、誘導型ヘッドで記録、MRヘッドで再生を行った。ファンクションジェネレータにより矩形波を記録電流電流発生器に入力制御して書き込み、MRヘッドの出力をプリアンプで増幅後、シバソク製スペクトラムアナライザーに読み込んだ。0.4μmのキャリア値を媒体出力Cとした。また0.4μmの矩形波を書き込んだときに、記録波長0.4μm以上に相当するスペクトルの成分から、出力及びシステムノイズを差し引いた値の積分値をノイズ値Nとして用いた。更に両者の比をとってC/Nとし、比較例1における走行前のテープの値を基準として、それとの相対値を求めた。
<磁気テープの走行信頼性試験>
IBM社製LTO4ドライブを使用して、室温環境下で全長かつ全トラックを300時間連続で走行させた。走行後のテープからドラムテスターでのC/Nを測定するのに必要なテープ長を切り取りC/Nを測定した。走行信頼性試験で磁性層がダメージを受けてエラーレートが増加するとC/Nが低下するので走行後のC/Nが信頼性の尺度になる。
【0066】
以下具体的な実施例を説明する。ただし、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、部とあるの重量部を示すものとする。
【0067】
本発明の磁気テープを作製した。まず塗料成分と組成であるが、非磁性支持体および下層塗料は成分、組成とも、実施例も比較例もまったく同じである。磁性層塗料は、成分の磁性粉末や磁性層厚みが異なる以外同じである。各塗料成分および組成は次に示す。これらの塗料を塗布して磁気テープを作製した。
【実施例1】
【0068】
非磁性下塗層塗料、中間層塗料および磁性塗料の組成、ならびに各塗料の調整方法を以下に示す。
<1.下塗層塗料組成>
(1.1)混練工程組成物
非磁性針状酸化鉄粉末(平均粒径:100nm、軸比:5) 68部
粒状アルミナ粉末(平均粒径:80nm) 8部
カーボンブラック(平均粒径:25nm) 24部
ステアリン酸 2.0部
塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 8.8部
(含有−SONa基:1×10-4当量/g)
ポリエステルポリウレタン樹脂 4.4部
(Tg:40℃、含有−SONa基:1×10-4当量/g)
シクロヘキサノン 25部
メチルエチルケトン 40部
トルエン 10部
(1.2)希釈工程組成物
ステアリン酸ブチル 1部
シクロヘキサノン 70部
メチルエチルケトン 50部
トルエン 20部
(1.3)配合工程組成物
ポリイソシアネート 1.4部
シクロヘキサノン 10部
メチルエチルケトン 15部
トルエン 10部
<2.磁性塗料組成>
(2.1)混練工程組成物
Co-鉄系金属磁性粉末 100部
粒子径(長軸長):60nm
塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 13部
(含有−SONa基:0.7×10-4当量/g)
ポリエステルポリウレタン樹脂 4.5部
(含有−SONa基:1.0×10-4当量/g)
メチルアシッドホスフェート 2部
テトラヒドロフラン 20部
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(重量で1:1) 9部
(2.2)希釈工程組成物
パルミチン酸アミド 1.5部
ステアリン酸n−ブチル 1部
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(重量で1:1) 350部
(2.3)別分散スラリー組成物
粒状アルミナ粉末(平均粒径:80nm) 10部
塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 1部
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(重量で1:1) 15部
(2.4)配合工程組成物
ポリイソシアネート 1.5部
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(重量で1:1) 29部
上記の下層塗料成分のうち、(1.1)混練工程組成物を回分式ニーダーで混練したのち、(1.2)希釈工程組成物を加えて、攪拌後、サンドミルで滞留時間を60分として分散処理を行い、これに(1.3)配合工程組成物を加えて、攪拌、ろ過したのち、下層塗料とした。
【0069】
これとは別に、上記の磁性塗料成分のうち、(2.1)混練工程組成物中の磁性粉末全量と樹脂および溶剤の所定量を予め高速撹拌混合しておき、その混合粉末に前記(2.1)混練工程組成物中の残量を加え、所定の混練工程組成物となるように調整したのち、連続式2軸混練機で混練した。さらに(2.2)希釈工程組成物を加えて、連続式2軸混練機で少なくとも2段階以上に分けて希釈を行い、サンドミルで分散メディアとして直径0.5mmのジルコニアビ−ズを用いて、滞留時間を45分として分散した。これに(2.3)別分散スラリー組成物をサンドミルで滞留時間を40分として分散したものを加え、さらに(2.4)配合工程組成物を加えて、撹拌、ろ過したのち、磁性塗料とした。
【0070】
ポリエチレンナフタレート支持体(厚さ6.1μm、MD=8GPa、MD/TD=1.1、商品名:PEN、帝人社製)からなる非磁性支持体(ベースフィルム)上に、上記の下層塗料を、乾燥、カレンダ後の厚さが1.0μmとなるように塗布し、乾燥、カレンダ処理した。その後、この下層が塗工された非磁性支持体の下層表面に、磁性層の乾燥、カレンダ処理後の厚さが80nmとなるように、ウエット・オン・ドライで塗布し、磁場配向処理後、ドライヤを用いて乾燥し、磁気シートを作製した。
【0071】
なお、磁場配向処理はドライヤ前にN−N対向磁石(5kG)を設置し、ドライヤ内で塗膜の指蝕乾燥位置の手前側75cmからN−N対向磁石(5kG)を2基50cm間隔で設置して行った。塗布速度は100m/分とした。
<3.バックコート層用塗料組成>
カーボンブラック(A)(平均粒径:25nm) 80部
カーボンブラック(B)(平均粒径:58nm) 10部
粒状酸化鉄粉末(平均粒径:50nm) 10部
ニトロセルロース 45部
ポリウレタン樹脂(SONa基含有) 30部
シクロヘキサノン 260部
トルエン 260部
メチルエチルケトン 525部
上記バックコート層用塗料成分を、サンドミルで滞留時間45分として分散したのち、ステアリン酸ブチル1部とポリイソシアネート15部を加えて、ろ過したのち、バックコート層用塗料を調製した。この塗料を、前記の方法で作製した磁気シートの磁性層の反対面に、乾燥、カレンダ後の厚さが0.5μmとなるように、塗布し、乾燥した。
【0072】
その後、この磁気シートを、金属ロールからなる7段カレンダで、温度100℃、線圧200kg/cmの条件で、鏡面化処理し、さらに磁気シートをコアーに巻いた状態で、70℃、72時間エージングしたのち、1/2インチ幅に裁断した。
【0073】
このようにして得られた磁気テープにサーボライタで磁気サーボ信号を記録し、コンピュータ用磁気テープを作製した。
【実施例2】
【0074】
磁気シートの製造において、磁性層の乾燥、カレンダ処理後の厚さが50nmとなるように、ウエット・オン・ドライで塗布したした以外は実施例1と同様にした。
【実施例3】
【0075】
磁気シートの製造において、磁性層塗布後のカレンダ条件を温度100℃、線圧250kg/cmの条件で、鏡面化処理した以外は実施例1と同様にした。
【実施例4】
【0076】
バックコート塗料の製造において、塗料に加えるステアリン酸ブチルの添加量を5部にした以外は実施例1と同様にした。
【実施例5】
【0077】
バックコート塗料の製造において、塗料に加える潤滑剤をミリスチン酸1部を添加した以外は実施例1と同様にした。
【実施例6】
【0078】
バックコート塗料の製造において、塗料に加える潤滑剤をミリスチン酸とステアリン酸ブチル各1部を添加した以外は実施例1と同様にした。
【実施例7】
【0079】
バックコート塗料の製造において、使用する小粒子径のカーボンブラックの粒子径が16nmのカーボンブラックを使用した以外は実施例1と同様にした。
【実施例8】
【0080】
バックコート塗料の製造において、使用する小粒子径のカーボンブラックを70部、大粒子径のカーボンブラックを8.8部使用した以外は実施例1と同様にした。
【実施例9】
【0081】
磁気シートの製造において、磁性層の磁性粉を板状径が30nmの六方晶系のバリウムフェライトを使用した以外は実施例1と同様にした。
【実施例10】
【0082】
磁気シートの製造において、磁性層の磁性粉を粒子径が17nmの略粒状の窒化鉄磁性粉末を使用した以外は実施例1と同様にした。
(比較例1)
磁気シートの製造において、下層の上に磁性層をウエット・オン・ウエットで塗布した以外は実施例1と同様にした。
(比較例2)
磁気シートの製造において、磁性層の乾燥、カレンダ処理後の厚さが120nmとなるように、ウエット・オン・ドライで塗布したした以外は実施例1と同様にした。
(比較例3)
磁気シートの製造において、磁性層塗布後のカレンダ条件を温度80℃、線圧180kg/cmの条件で、鏡面化処理した以外は実施例1と同様にした。
(比較例4)
バックコート塗料の製造において、塗料に加えるステアリン酸ブチルの添加量を0.2部にした以外は実施例1と同様にした。
(比較例5)
バックコート塗料の製造において、塗料に加えるステアリン酸ブチルの添加量を9部にした以外は実施例1と同様にした。
(比較例6)
バックコート塗料の製造において、使用する大粒子径のカーボンブラックの粒子径が70nmのカーボンブラックを使用した以外は実施例1と同様にした。
(比較例7)
バックコート塗料の製造において、使用する小粒子径のカーボンブラックの粒子径が35nmのカーボンブラックを使用した以外は実施例1と同様にした。
(比較例8)
バックコート塗料の製造において、全固形分を100部とした時に小粒子径のカーボンブラックが85部、大粒径のカーボンブラックを11部使用した以外は実施例1と同様にした。
(比較例9)
バックコート塗料の製造において、全固形分を100部とした時に小粒子径のカーボンブラックが50部、大粒径のカーボンブラックを6部使用した以外は実施例1と同様にした。
(比較例10)
磁気シートの製造において、磁性層の磁性粉を粒子径が110nmの鉄系金属磁性粉末を使用した以外は実施例1と同様にした。
【0083】
実施例1から10および比較例1から10の各テープの主な作製条件と、信頼性試験の走行前後での磁性層平滑性とC/Nの値を表1から表4にまとめた。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【0087】
【表4】

【0088】
表1、2に示すように、実施例1から10はすべて信頼性試験の走行前のC/Nおよび走行後のC/Nが基準値である表3、4の比較例1や他の比較例2から10の値よりも大きいことがわかる。
【0089】
下層非磁性層と上層磁性層をウエット オン ウエットで同時に塗布した比較例1は、下層から潤滑剤が十分に供給されるうえにバックコート層からの潤滑剤も磁性層に転移するので磁性層表面は潤滑剤が過剰になり、過剰な潤滑剤の付着によってヘッドが汚れたり、磁性層表面を可塑化してダメージを受けやすい。そのため走行後のC/Nは低下する。
【0090】
比較例2は磁性層が厚いために厚み損失が生じ、比較例3は磁性層塗布後の鏡面化工程のカレンダ条件がゆるいために表面平滑性が劣るためにC/Nが劣る。
【0091】
比較例4はバックコート層の潤滑剤量が少なくて十分の量の潤滑剤が磁性層へ転移されず磁性層が傷ついて、比較例5は逆にバックコート層の潤滑剤量が多すぎて磁性層へ転移しすぎて比較例1と同じような理由でヘッド汚れや磁性層に傷が発生してどちらも走行後のC/Nが低下した。
【0092】
比較例6のテープはバックコート層に含まれる大粒径のカーボンブラックの粒径が70nmと大きいために巻回されたときバックの大粒径カーボンの突起が磁性層に影響を与えて平滑性を損ねるために初期のC/Nが劣る。
【0093】
比較例7のテープは小粒径カーボンブラックの粒径が大粒径カーボンブラックのそれと差が小さいために、大粒径カーボンブラックで形成される適度な突起による摩擦係数の低減がなされないために走行後の表面が粗くなりC/Nが低下した。
【0094】
比較例8は、バックコート層の結合剤量に対するカーボンブラック量が多すぎるためにカーボンブラックの分散が不十分でバックコートから磁性層表面に粉落ちしたカーボンブラックが転移してそれが走行中のドロップアウトの原因となってC/Nを低下させた。
【0095】
比較例9は比較例8と逆に、バックコート層の結合剤量がカーボンブラック量に対して多すぎるために摩擦係数が低くならず走行中に磁性層表面をキズつけてC/Nを低下させた。
【0096】
比較例10は磁性粉の粒径が大きく、粒子性ノイズが高くなるため、初期からC/Nが低い。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施形態例を示す断面図。
【符号の説明】
【0098】
1 非磁性支持体
2 磁性層
3 下層非磁性層
4 バックコート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性支持体の一方の面に結合剤と無機粉末を含む中間層を塗布して該中間層を乾燥した表面に塗布形成して得た少なくとも一層からなる強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有し、他方の面にカーボンブラックおよび/または無機粉末を含むバックコート層を有する磁気記録媒体であって、
前記磁性層の厚さが0.01〜0.15μmの範囲にあり、前記磁性層の表面粗さRaが3.0nm以下であり、かつ、前記バックコート層は潤滑剤を含むことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
前記バックコート層は、前記カーボンブラックおよび無機粉末の合計量100重量部に対して、0.5〜8.0重量部の潤滑剤を含む請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記バックコート層には平均粒子径の異なる2種類のカーボンブラックが含まれてなり、平均粒子径の大きいカーボンブラックの平均粒子径が60nm未満である請求項1乃至2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記バックコート層に含まれる全カーボンブラック含有量が、全固形分100重量部に対して60重量部より多く、95重量部より少ない請求項1乃至3に記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
前記磁性層に含まれる強磁性粉末は、平均板径が10〜35nmの六方晶フェライト粉末または平均長軸長或は平均粒子径が10〜100nmの強磁性金属粉末である請求項1乃至4に記載の磁気記録媒体。

【図1】
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【公開番号】特開2009−283082(P2009−283082A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135246(P2008−135246)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】