説明

磁気軸受のための積層コアおよびこのような積層コアの構成方法

ラジアル・アキシアル複合磁気軸受の内部のコアは、それぞれが半径方向の切れ目を少なくとも1つ備えた複数の被膜された層から成るスタックである。これらの切れ目は、スタックの中心孔を通る変動する軸方向制御磁束によって引き起こされる循環電流の誘起を防止する。各層をその前の層に対して特定の角度だけ旋回させることによって、磁気対称性が維持される。この配置は、軸受における損失を減らすだけでなく、軸方向チャネルの性能も向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械のための磁気軸受であって、軸受がラジアル・アキシアル統合設計を有し、軸方向制御磁束が軟磁性コアの中心開口部を通って流れる磁気軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気軸受を用いると、非接触式の懸架を得ることができる。磁気軸受は、その摩擦損失が少ないために、高速用途のために魅力的である。高速回転機械の設計は、ロータの動的制約により複雑になることが多い。その意味において、シャフトの軸長の短縮は、ロータの動的余裕度に貢献する。この特性は、いわゆる複合軸受において最大に利用される。複合軸受は、その設計が軸方向チャネルと半径方向チャネルとが1つのコンパクトな構成に統合され、いくつかの機能部分を共用する軸受である。
【0003】
複合軸受のさまざまな例が特許明細書および文献に見出される。多くの場合、軸方向制御磁束の経路は、強磁性物質の積層スタックの中心孔を横切る。この例は、米国特許第5514924号、米国特許第6268674号、米国特許第6727617号、国際公開第2008074045号、中国特許第1737388号の特許明細書または特許出願明細書に見出される。他の例は、例えばイモベルドルフ(Imoberdorf)ら、ピチョット(Pichot)ら、およびバックナー(Buckner)らの論文などの文献に見出される。ブルーメンストック(Blumenstock)の米国特許第6359357号に示されている機種の複合軸受においては、軸方向制御磁束は、強磁性物質の積層スタックの中心孔を横切らない。
【0004】
軸方向制御磁束の経路が積層スタックの中心孔を横切る場合、あるいは、より一般的には、導電性経路によって制御磁束が取り囲まれる領域が複合軸受に含まれている場合は、複合軸受の軸方向チャネルの性能に悪影響が及ぼされうる。その場合、変動する制御磁束が周囲の材料に電圧を誘起しうる。周りの経路が閉じており、かつ導電性である場合は、これらの誘起電圧は循環電流を引き起こし、ひいてはジュール損失を招く。実際に、このような積層スタックは、軸方向制御コイルが一次コイルである変圧器の短絡された二次コイルと見なすことができる。この影響は周波数に応じて異なる。すなわち、周波数の増加に伴い損失は増大する。特定の軸方向制御電流および周波数が与えられると、ジュール損失は実現可能な力を低減させる。この結果、軸方向チャネルの性能が損なわれる。
【0005】
同様の現象は、アキシアルアクチュエータが作用する積層スタックに発生しうる。その場合、制御磁束はスタック自体に入り込むが、物理的説明は同じである。米国特許第6268674号において、高橋(Takahashi)は、このような対象積層スタックの内部に一連の半径方向スリットを均等に分散させて設けることを提案している。回転中に十分な強度を維持するために、各層の切れ目はその厚さ全体にわたらないことは言うまでもない。そうすることによって、制御磁束がスリット領域のみに入るとすれば、誘起電流は局所に留まる。この手法は、対象積層スタックにおける損失を減らすための解を提供しているだけである。広域制御磁束は依然としてステータスタックによって囲まれている。
【0006】
発明者らの知る限りでは、この種の損失を減らすための他の手法は報告されていない。この特許には、損失低減のための異なる技術が提示されている。この技術は、複合磁気軸受のロータスタックおよびステータスタックの両方に適用されうる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、永久磁石バイアス式または電流バイアス式のラジアル・アキシアル複合磁気軸受のステータまたはロータの積層コアに関する。この積層コアは、個々の平坦な軟磁性層を複数積み重ねた立体スタックを備える。個々の層は、各層の平面における循環電流に対して少なくとも1つの完全な物理的中断を生じさせるように、球体とホモトピー同値であるという位相的性質を有する。この立体スタックは、磁気対称性を生じさせるように、トーラスとホモトピー同値であるという位相的性質を示す。
【0008】
この文脈において、循環電流は、積層コアを取り囲む閉道に従って軟磁性体を通って流れる電流と定義される。
【0009】
平坦な層と球体との間のホモトピー同値とは、平坦な層が球体になるように曲げ、伸長、および/または収縮操作のみを用いて実質的に成形可能であることを示す。この場合、切断または接着操作は許されない。同様に、立体スタックとリングとの間のホモトピー同値とは、スタックがリングになるように曲げ、伸長、および/または収縮操作のみを加えることによって実質的に成形可能であることを示す。
【0010】
ここでの「各層の平面における循環電流に対して少なくとも1つの完全な物理的中断を生じさせる」という表現は、換言すると、循環電流に対して少なくとも1つの物理的中断を有する、ロータを包み込む軟磁性のほぼ完全な閉道が各層の平面に発生することを意味する。
【0011】
「ロータを包み込む軟磁性のほぼ完全な閉道」とは、ロータを包み込む、好ましくは少なくとも75%の軟磁性材料で構成された道を意味する。あるいは、より好ましくは、少なくとも95%の軟磁性材料で構成された道を意味する。
【0012】
本発明は、ラジアル・アキシアル複合磁気軸受のステータまたはロータのための積層コアの構成方法にさらに関する。本方法は、
−位相的形状が球体とホモトピー同値である一組の平坦な軟磁性層を設けるステップと、
−循環電流に対する少なくとも1つの物理的中断が得られるように、第1の軟磁性層を配置するステップと、
−後続の全ての軟磁性層をそれぞれに先行する軟磁性層に対して旋回および/または回転させるステップと、
−得られた一組の軟磁性層を凝固させるステップと、
を含む。
【0013】
本発明は、ラジアル・アキシアル複合磁気軸受のステータまたはロータのための積層コアの構成方法にさらに関する。本方法は、
−位相的形状が球体とホモトピー同値である一組の平坦な軟磁性層を設けるステップと、
−循環電流に対する少なくとも1つの物理的中断が得られ、かつ全ての隣接層における少なくとも1つの物理的中断が一致するように、第1の複数の軟磁性層を配置するステップと、
−後続の複数の層を第1の複数の軟磁性層と同じように、しかし後続の複数の軟磁性層をそれぞれに先行する軟磁性層に対して全て旋回および/または回転させるように、配置するステップと、
−得られた一組の軟磁性層を凝固させるステップと、
を含む。
【0014】
複合軸受のステータコアまたはロータコアをこのように構成すると、変動する制御磁束による循環渦電流が発達できない。この結果、軸受における損失が減り、アキシアルアクチュエータの性能が向上する。
【0015】
本発明の特徴をより良く示すために、制限的な意図は一切なしに単なる例として、本発明によるラジアル・アキシアル複合磁気軸受のステータまたはロータのための積層コアの好適な実施形態の一部を添付図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来技術による第1の永久磁石バイアス式複合軸受機種の長手方向半断面を示す。
【図2】従来技術による第2の永久磁石バイアス式複合軸受機種の長手方向断面を示す。
【図3】従来技術による第3の電流バイアス式複合軸受機種の長手方向断面を示す。
【図4】従来技術による第1の複合軸受機種の四極ラジアルアクチュエータ部分の断面を示す。
【図5】従来技術による第2の複合軸受機種の三極ラジアルアクチュエータ部分の断面を示す。
【図6】裂け目が対称軸上にある、複合軸受の四極ラジアルアクチュエータ部分の360°層の断面を示す。
【図7】図6の層を、磁極の位置を維持した状態で、旋回しうる全ての姿勢を示す。
【図8】10μmの被膜が両面に施された層厚0.35mmの層シート4枚で構成されたスタックにおける接線方向寸法0.5mmの裂け目の近傍における磁力線の分布を示す。
【図9】10μmの被膜が両面に施された層厚0.35mmの層シート4枚で構成されたスタックにおける接線方向寸法0.5mmの裂け目の近傍における磁束密度の分布を示す。
【図10】裂け目が対称軸上にない、複合軸受の四極ラジアルアクチュエータ部分の360°層の断面を示す。
【図11】図10の層を、磁極の位置を維持した状態で、旋回および/または反転しうる全ての姿勢を示す。
【図12】裂け目が対称軸上にある、複合軸受の三極ラジアルアクチュエータ部分の360°層の断面を示す。
【図13】図12の層を、磁極の位置を維持した状態で、旋回しうる全ての姿勢を示す。
【図14】裂け目が対称軸上にない、複合軸受の三極ラジアルアクチュエータ部分の360°層の断面を示す。
【図15】図14の層を、磁極の位置を維持した状態で、旋回および/または反転しうる全ての姿勢を示す。
【図16】複合軸受の四極ラジアルアクチュエータ部分の180°層セグメントの断面を示す。
【図17】図16の層を、磁極の位置を維持した状態で、旋回および/または反転しうる全ての姿勢を示す。
【図18】複合軸受の三極ラジアルアクチュエータ部分の120°層セグメントの断面を示す。
【図19】図18の層セグメントを、磁極の位置を維持した状態で、旋回および/または反転しうる全ての姿勢を示す。
【図20】裂け目が設けられたアクチュエータ対象スタック用360°層の断面を示す。
【図21】非直線切れ目と絶縁スペーサとを有する360°層の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
既存の複合軸受機種の長手方向断面のいくつかが図1、図2、および図3に示されている。既存の複合軸受機種の2つの可能な半径方向断面が図4および図5に示されている。図示されているこれらの代替設計は何れも、幾何学的回転軸X−X’を有する積層ロータスタック1と、積層ステータスタック2と、ステータヨーク3と、2つの軸方向磁極4aおよび4bと、少なくとも3つの半径方向磁極5とで構成されている。軸方向力は、回転対称構成を有する軸方向制御コイル6によって制御される。半径方向力は、半径方向制御コイル7によって制御される。半径方向制御コイル7は半径方向磁極5に巻き付けられている。バイアス磁場が永久磁石8によって生成されない場合は、何らかの方法でバイアス電流を軸方向制御電流に追加することによって、または軸方向制御コイル6に近付けて配置された回転対称形状を有する別個のバイアスコイルにバイアス電流を供給することによって、バイアス磁場を発生させることができる。
【0018】
電流が半径方向制御コイル7に供給されると、ステータスタック2の各層の平面に磁束が流れ始める。軸方向制御コイル6に供給された電流によって生成された磁束は、ステータヨーク3を通って流れ、その後に軸方向磁極4aに入り、ロータスタック1に向かって間隙を横切り、反対側の軸方向磁極4bに向かって間隙を横切り、最終的にステータヨーク3に戻る。この結果、軸方向制御電流が時間と共に変動するため、時間変動磁束がステータスタック2の中心孔を横切る。ファラデー・レンツの法則およびオームの法則により、ステータスタック2の各層に循環電流が誘起される。したがって、本発明の目的は、これら誘起された循環電流の道を物理的に中断することである。
【0019】
この物理的中断を実現する1つの可能性は、四極ステータスタック2の場合は、図6に示されているようなステータスタック2の各360°層10に単一の切れ目9を設けることである。360°という表記は、切れ目9の存在により、層がカバーする角度が360°に僅かに満たないことを示す。0.25mm未満の切削加工幅を得ることは難しいが、このような切れ目9がかなりの接線方向磁気抵抗を実際に導入することは明らかである。したがって、層10は、半径方向制御磁場に対してその磁気対称性の一部を失う。単一の層10のみを有する仮想ステータスタックは、切れ目により半径方向チャネル性能のかなりの損失を呈するであろう。ただし、複数の層10を積み重ねることにより、この性能損失を回避する方法がもたらされる。
【0020】
図7は、図6の単一の切れ目9を有する360°層10を、4つの磁極5の位置に影響を及ぼさずに、旋回させうる全ての姿勢を示す。したがって、隣接する360°層10の切れ目9が互いに必ず離隔されるようにステータが積層される場合は、磁力線は360°層10から移動することによって切れ目を横切ることができる。その結果、磁力線は、隣接する層10の被膜を2回横断する必要がある。ここで重要な問題は、層の被膜を切れ目の幅よりはるかに薄く、例えば少なくとも250μmに対して1μmに、できることである。
【0021】
図8は、4つの層10で構成されたステータスタック2の断面を示す。この図は、1つの層10に作成された切れ目9の位置における、各層10の平面に直角な、かつスタックの中心に対して接線方向の断面である。図8には、切れ目9の近傍における半径方向制御磁場の磁力線の分布が示されている。この特定の例において、各層10は厚さが0.35mm、切れ目9の幅が0.5mm、被膜の厚さが10μm、すなわち軟磁性部分の間の厚さ(両面被膜)が20μmである。切れ目9に近付くと、磁力線は2つに分割される。切れ目9の内部には、磁力線は殆どない。切れ目9をいったん越えると、2つの磁力線は元の層10において再び一緒になる。
【0022】
これは、図8に示されているのと同一のステータスタック2に対して、図9に示されているように、切れ目9の近傍の局所的磁束密度に影響を及ぼすことは明らかである。切れ目9の内部には磁力線が殆どないので、そこでは磁束密度がほぼゼロになる。これは、図9に紺青(DB)の網掛けで示されている。層の平面に沿って切れ目の領域を離れると、紺青(DB)からシアン(CN)、緑(GR)を経て黄(YL)への色変化で表されているように、磁束密度はその公称値まで徐々に上昇する。隣接する層においては、切れ目に近付くと、黄(YL)からオレンジ(OR)を経て赤(RD)への色変化によって表されているように、磁束密度が上昇する。
【0023】
被膜がかなり厚いこの特定の例においては、磁束密度は隣接する層10においてのみ大きく影響される。その他の層は僅かしか影響されない。理論上、層10における磁束密度は、局所的にはその平常値の1.5倍まで上昇しうる。ただし、被膜が薄いほど磁力線は広がるため、局所的なピーク磁束密度のさらなる低下が引き起こされると予想されうる。
【0024】
図8および図9から、磁束密度が切れ目9の影響を受ける領域の大きさは数ミリメートル以内であるとさらに結論付けうる。この結果、大きな半径方向制御電流が供給される場合は、何らかの局所的飽和が起こりうるが、軸受の総合的性能に対するその影響は小さく留まるであろう。
【0025】
本来の磁気対称性を全体的に回復させるために、ステータスタック2の周囲全体にわたって切れ目9を均等に分散させることが勧められる。図7の360°層10の複数の代替姿勢を考えると、例えば、4つの360°層の繰り返しパターンを有するステータスタック2を作成可能である。この場合、切れ目9の間の軸方向最短距離は、各層10の厚さの約4倍に等しい。
【0026】
図6に示されている360°層10には、対称軸と一致する切れ目9が設けられている。ただし、対称軸との一致は必須ではない。これに対し、切れ目9の間の軸方向最短距離をさらに増すために、対称軸と一致しない切れ目も考えられる。例えば、図10に示されている4つの磁極5を有する360°層10には、対称軸と一致しない切れ目9が設けられている。この層10を旋回および/または反転させることによって、図11に示されているように、磁極5の位置が維持される8つの異なる姿勢が見出される。このような層10を積み重ねると、8つの層10の繰り返しパターンを有する磁気的に対称なステータスタック2が得られ、切れ目間の軸方向最短距離も8つの層10になる。
【0027】
図12は、単一の切れ目9が対称軸上に設けられた、磁極5が3つだけの360°層10を示す。図13は、図12の層10を旋回させると、磁極5の位置が維持される姿勢として3つの異なる姿勢のみが得られることを示す。スタック全体が磁気的に対称になるようにこれらの層10を積み重ねると、切れ目9の間の軸方向最短距離は3つの層10に等しくなる。この特定の構成においては、磁力線は1つの層10の距離にわたってのみ分散できるので、切れ目9近くの磁束密度の上昇は50%に近づく可能性が高い。
【0028】
3つの磁極5を有するステータスタック2の場合に切れ目9の間の軸方向最短距離を大きくするには、図14に示されているように対称軸と一致しない切れ目9を作成する必要がある。その場合、図14の層10を旋回および/または反転させると、図15に示されているように、磁極5の位置が維持される切れ目9の代替姿勢が6つ得られる。この場合の切れ目9の間の最短軸方向距離は、層10の厚さの約6倍に等しい。
【0029】
これまで、単一の切れ目9を有する例のみを示してきた。ただし、切れ目9の数は1つに限定されない。例えば、図16に示されているような180°層11を用いて4つの磁極5を有するステータスタック2を構成できる。このような2つの180°層11は、適正に配置されると、2つの切れ目9に相当するものを有する合成層構成13を形成する。図16の180°層11を旋回および/または反転することによって、図17に示されているように、切れ目9が異なる位置にあり、かつ磁極5の位置が維持された4つの構成を見出すことができる。これらの層11を積み重ねると、4つの180°層11から成る反復的軸方向パターンを有し、かつ切れ目9の間の軸方向最短距離も4つの180°層11になるステータスタック2が得られる。単一の切れ目9を有する360°層10の代わりに、このような複数の180°層11による構成を選択する1つの理由は、例えば、打ち抜きによって発生しうる廃棄物の削減である。
【0030】
図17の合成層構成13は、対称軸と一致しない切れ目を2つ有することに注目されたい。対称軸と一致した場合、2つの代替配置のみが見出されることになる。これは、切れ目9の近くの磁束密度の倍加を意味するため、あまり魅力的でない。図18に示されているような3つの磁極5と3つの切れ目9とを有する設計のための120°層12の場合も同様の状況が発生する。この場合、3つの切れ目9が対称軸と一致しなければ、図19に示されているように可能な配置が2つだけ見出される。ここでは、対称的な120°層12は、全ての切れ目が一致するため、使用できない。
【0031】
前の説明は、三極および四極設計のためのいくつかの代替案に焦点を合わせた。ただし、磁極5の数がより多い設計、または磁極5が皆無の設計にも、普遍性を損なうことなく、同じ思想を拡大適用可能である。磁極5が皆無の層10の一例が図20に示されている。このような設計は、例えば、アクチュエータ対象スタック1を回転部の上に組み立てるために使用可能である。
【0032】
360°層10に単一の切れ目9を含めると、その機械的剛性が劇的に低下する。ただし、この発明の原理に従って360°層10を積み重ねると、得られたスタックの剛性と機械的完全性は、切れ目9がない場合に比べ、殆ど低下しない。180°層11または120°層12、あるいは他の合成層構成13を用いた場合、同様の機械的特性を得ることはより困難であるが不可能ではない。
【0033】
前の全ての例において、切れ目9は半径方向に設けられており、複数の磁極5がある場合は、スタックの最も薄い部分を通って設けられていた。本発明の思想はこれらの特定のケースに限定されるものではない。例えば、磁極5を通る切れ目を設けることも考えられる。同じように、半径方向以外の直線切れ目9または直線以外の切れ目9によって物理的中断を実現することも考えられうる。半径方向以外の切れ目を適用する1つの理由は、切れ目の近傍における磁束密度をさらに低下させうることによる。直線以外の切れ目を適用する1つの理由は、動作時にスタックが回転しているとき、またはスタックが180°層11または120°層12を用いて組み立てられた場合に、スタックの構造上の特性を向上させうるからである。このような場合、例えば、蟻継ぎのような形状の、好ましくは、発生しうるあらゆる電気的接触を回避するために絶縁スペーサ材料14がその間に設けられた、切れ目9を考えることができる。この思想は図21に示されている。
【0034】
上記説明が当てはまる全ての可能な実施形態において、隣接する層の切れ目9は決して一致しない。この条件を僅かに緩めてもよい。隣接する層の切れ目9の全てまたは一部が一致するという特性を有する、少なくとも2つの隣接する層から成るサブスタックをそれぞれ旋回および/または反転させた一連のサブスタックとしてアクチュエータ対象スタック1またはステータスタック2を組み立てることもできる。この場合、完成されたスタックの円周全体にわたって全ての切れ目9を均等に分散させることによって磁気対称性を守ることができる。そうすることによって、磁場が、隣接サブスタックを介して、切れ目の近傍に磁気抵抗の低い経路を必ず見出すことができる構成がもたらされる。ただし、この構成においては磁力線はより多くの被膜層を横切る必要があるため、あまり有利な配置とは見なされない場合がある。他方、構造上の問題点はこの構想を実現可能な代替案にしうる。
【0035】
ただし、本発明は、上で説明したような、または図面に示したような、積層コアの実施形態の形態に決して限定されるものではなく、このような積層コアは、本発明の範囲から逸脱することなく、あらゆる形状および寸法で作成可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石バイアス式または電流バイアス式のラジアル・アキシアル複合磁気軸受のステータまたはロータの積層コア(1−2)において、前記積層コア(1−2)は個々の平坦な軟磁性層(10−11−12)から成る立体スタックを備え、前記個々の層(10−11−12)は、前記層の平面における循環電流に対して少なくとも1つの物理的中断(9)を生じさせるように球体とホモトピー同値であるという位相的性質を有し、前記立体スタックは、磁気対称性を生じさせるようにトーラスとホモトピー同値であるという位相的性質を示すことを特徴とする積層コア(1−2)。
【請求項2】
前記個々の層(10−11−12)の何れもが互いに電気的に接触していないことを特徴とする、請求項1に記載の積層コア(1−2)。
【請求項3】
隣接する層(10−11−12)における前記少なくとも1つの物理的中断(9)は互いに対して旋回されていることを特徴とする、請求項1に記載の積層コア(1−2)。
【請求項4】
前記立体スタックは複数のサブスタックを備えることを特徴とし、前記サブスタックは、隣接する全ての層(10−11−12)における前記少なくとも1つの物理的中断(9)が一致していることを特徴とする、請求項1に記載の積層コア(1−2)。
【請求項5】
前記サブスタックの前記少なくとも1つの物理的中断(9)は互いに対して旋回されていることを特徴とする、請求項4に記載の積層コア(1−2)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの物理的中断(9)に電気絶縁材料(14)が充填されていることを特徴とする、請求項1に記載の積層コア(1−2)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの物理的中断(9)は直線であり、かつ半径方向に向いていることを特徴とする、請求項1に記載の積層コア(1−2)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの物理的中断(9)は直線であり、かつ半径方向に向いていないことを特徴とする、請求項1に記載の積層コア(1−2)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの物理的中断(9)は蟻継ぎのような形状に形作られていることを特徴とする、請求項1に記載の積層コア(1−2)。
【請求項10】
前記立体スタックの断面は磁極(5)を一切見せないことを特徴とする、請求項1に記載の積層コア(1−2)。
【請求項11】
前記立体スタックの断面は複数の層(11−12)を見せることを特徴とする、請求項1に記載の積層コア(1−2)。
【請求項12】
ラジアル・アキシアル複合磁気軸受のステータまたはロータのための積層コアの構成方法であって、
−位相的形状が球体とホモトピー同値である一組の平坦な軟磁性(10−11−12)層を設けるステップと、
−誘起された循環電流に対する物理的中断(9)が少なくとも1つ得られるように第1の軟磁性層を配置するステップと、
−後続の全ての軟磁性層をそれぞれに先行する軟磁性層に対して旋回および/または回転させるステップと、
−前記得られた一組の軟磁性層を凝固させるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの物理的中断(9)の内部に電気絶縁材料(14)が設けられることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ラジアル・アキシアル複合磁気軸受のステータまたはロータのための積層コアの構成方法であって、
−位相的形状が球体とホモトピー同値である一組の平坦な軟磁性層(10−11−12)を設けるステップと、
−誘起された循環電流に対する物理的中断(9)が層ごとに少なくとも1つ得られ、かつ隣接する全ての層における少なくとも1つの物理的中断が一致するように第1の複数の軟磁性層を配置することによって第1のサブスタックを組み立てるステップと、
−前記第1の複数の軟磁性層を有する前記第1のサブスタックと同じように、しかし複数の軟磁性層をそれぞれ有する後続の全てのサブスタックが複数の軟磁性層を有するそれぞれの先行サブスタックに対して旋回および/または回転されるように後続の複数の軟磁性層を配置することによって後続サブスタックを組み立てるステップと、
−前記得られた一組の軟磁性層を凝固させるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの物理的中断(9)の内部に電気絶縁材料(14)が設けられることを特徴とする、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2013−510270(P2013−510270A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537269(P2012−537269)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【国際出願番号】PCT/BE2010/000075
【国際公開番号】WO2011/054065
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(593074329)アトラス コプコ エアーパワー,ナームローゼ フェンノートシャップ (45)
【氏名又は名称原語表記】ATLAS COPCO AIRPOWER,naamloze vennootschap
【Fターム(参考)】