説明

磁石材料組成物

【課題】 従来のマグネットローラは、強磁性体粉末を用いるため、マグネットピースの成形時に印加磁場に反応して変形し、これによりクラック等が発生し、また成形品が断裂して連続押出成形が難しい。また、マグネットピースをシャフト外周面に貼り合わせる際、蛇行が発生して、精度良く貼り合わせることが難しく、画質が低下する可能性がある。特に、強磁性粉末として希土類系磁性粉を主体に用いた場合、その高残留磁束密度のため、印加磁場に非常に反応しやすく、連続押出成形がさらに困難となる。
【解決手段】 強磁性粉末と樹脂バインダーを主体とする混合物において、該混合物中の強磁性粉末の重量比が50wt%以上95wt%以下であって、該混合物の溶融粘度が30N・m以上45N・m以下、かつ、成形後の曲げ強度が150×10N/m以上250×10N/m以下である押出成形用磁石材料組成物を用いることにより、上記課題が解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に組み込まれるマグネットローラ用の磁石材料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ等における粉末トナーを用いた画像形成装置に組み込まれるマグネットローラとしては、金属シャフトの外周に複数のマグネットピースを配置したマグネットローラが代表的であり、従来から、(1)磁石材料組成物として、樹脂またはゴムからなるバインダーと、磁性粉と、粒径1μm以下の微粒子の混合または混練物を用い、これを磁場中押出成形した、変形が少なくかつ磁力の大きいマグネットローラ(特許文献1)、あるいは、(2)強磁性体粉末と樹脂バインダーを用いた押出成形用樹脂磁石材料において、樹脂バインダーがエチレンエチルアクリレート系樹脂を主成分とし、該樹脂バインダーに対して水添スチレン系熱可塑性エラストマーを20〜40部添加することにより、磁束密度の低下がなくマグネットピースの割れを防止することができるマグネットローラ(特許文献2)等が知られている。
【特許文献1】特開平9−283315
【特許文献2】特開2006−199804
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のマグネットローラは、フェライト系磁性粉等の強磁性体粉末を用いるため、マグネットピースの成形時に印加磁場に反応して変形し、これによりクラック等が発生したり、また成形品が断裂して連続押出成形しにくい問題がある。また、マグネットピースをシャフト外周面に貼り合わせる際、蛇行が発生して、外周面に精度良く貼り合わせることが難しく、磁極位置のバラツキの原因となり、画質が低下する可能性がある。さらに、環境変化(温度や湿度、等)により該マグネットピースに反りが発生する場合がある。特に、高磁束密度のマグネットピースを得る目的で、強磁性粉末として希土類系磁性粉を主体に用いた場合、その高い残留磁束密度(Br)のため、印加磁場に非常に反応しやすく、そのため磁場印加時の変形はフェライト系磁性粉よりはるかに大きく、連続押出成形がさらに困難となる。
【0004】
特許文献1でも、特に強磁性粉末として高い残留磁束密度(Br)である希土類系磁性粉を多量に用いた場合、高Brが故に印加磁場に強く反応し、その結果、磁場押出成形中に成形品が大きく変形し、該成形品にクラックが入ったり、断裂したりし、押出成形性が低下する場合がある。
【0005】
また、特許文献2でも、水添スチレン系熱可塑性エラストマーを添加することにより、成形品のクラックが良好となるが、特に高い残留磁束密度(Br)である異方性希土類磁性粉末を多量に用いた場合、印加磁場による変形が大きくなり、クラックが発生する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、強磁性粉末と樹脂バインダーを主体とする混合物において、該混合物中の強磁性粉末の重量比が50wt%以上95wt%以下であり、該混合物の溶融粘度が30N・m以上45N・m以下、かつ、成形後の曲げ強度が150×10N/m以上250×10N/m以下とした押出成形用磁石材料組成物である。
【0007】
また、本発明は、好ましくは上記強磁性粉末が少なくとも異方性希土類磁性粉とフェライト系磁性粉とを含み、該異方性希土類磁性粉:該フェライト系磁性粉=100〜50:0〜50、とした押出成形用磁石材料組成物である。
【0008】
さらに、該樹脂バインダーを、好ましくはメルトマスフローレイト(MFR)が2g/10min以上5g/10min以下のポリオレフィン系樹脂とした押出成形用磁石材料組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、磁場印加時の変形を防止できクラックが発生せず連続押出成形が可能となり、かつ、所望の高磁束密度のマグネットピースを得ることができ、マグネットピースをシャフトの外周部に精度よく貼り合わせることができ、高画質化が可能となる。さらに、異方性希土類磁性粉等の高残留磁束密度(Br)の磁性粉であっても、押出成形性や磁気特性を犠牲にすることなく、樹脂中の磁性粉含率を高くすることができ、また、成形品の強度が向上し、押出成形性を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の押出成形用磁石材料組成物について例をあげて詳細に説明する。
【0011】
本発明は、強磁性粉末と樹脂バインダーを主体とする混合物において、強磁性粉末の重量比が50wt%以上95wt%以下であり、溶融粘度が30N・m以上45N・m以下、かつ、成形後の曲げ強度が150×10N/m以上250×10N/m以下とした押出成形用磁石材料組成物である。
【0012】
前記樹脂バインダーとしてポリオレフィン系樹脂を5〜50重量%(滑剤、安定剤等を含む)、前記強磁性粉末として異方性フェライト系磁性粉末を95〜50重量%とし、必要に応じて、前記強磁性粉末の表面処理剤としてシラン系やチタネート系等のカップリング剤、流動性を良好にするポリスチレン系・フッ素系滑剤等、安定剤、可塑剤、もしくは難燃剤などを添加し、混合分散し、溶融混練し、ペレット状に成形する。
【0013】
上記ペレットを溶融状態にして、図1のような成形装置(金型)を用いて、150K・A/m〜2400K・A/mの磁場を印加しながら押出成形をし、図2のような配向着磁されたマグネットピース(3)を得る。成形時に印加する配向着磁磁場は、各磁極に要求される磁束密度仕様により適宜選択すればよい。また、要求磁気特性によっては成形時に配向着磁磁場を印加せず、成形後に着磁してもよい。
【0014】
上記で得られたマグネットピース(3)をシャフト(5)の外周部に貼り合わせて図3のようなマグネットローラを形成する。
【0015】
上記ペレットは、樹脂バインダーの分子量、エラストマーの添加、可塑剤(炭化水素系)の添加量、フェライトの粒径分布や含率、成形条件(成形温度等)等を調整することにより、溶融粘度が170〜180℃で30N・m以上45N・m以下、成形後のマグネット成形品の曲げ強度が150×10N/m以上250×10N/m以下となるようにする。溶融粘度は、樹脂バインダーの分子量を高くしたり、可塑剤の添加量を少なくしたり、成形温度を下げたりすると高くなる。曲げ強度は、エラストマーを添加したり、樹脂バインダーとしてエチレンエチルアクリレート樹脂を選択した場合はエチレンエチル基(EA基)を多くすると高くなる。
【0016】
上記溶融粘度が30N・m未満の場合は、磁場中押出成形時に金型(押出ダイス)から押出されるマグネットピースの印加磁場による変形が大きくなり、所望の形状が得られなくなったり、変形によりクラック等が発生し、また成形品が断裂し連続押出成形ができなくなる場合があり、45N・mを超える場合は、マグネットピース中の磁性粒子の配向度が低下し、所望の磁気特性が得られなくなったり、また、押出成形時の押出トルクが大きくなり、押出機の破損に繋がったりする場合がある。
【0017】
上記マグネットピースの曲げ強度が150×10N/m未満の場合は、該マグネットピースをシャフト外周面に貼り合わせる場合、蛇行が発生し、磁極位置のバラツキの原因となり、画質が低下する可能性があり、250×10N/mを超える場合は、シャフト外周面には精度良く貼り合わせることができるが、環境変化(温度や湿度、等)により該マグネットピースに反りが発生し、シャフトから剥がれたり、マグネットローラ全体の反りの原因となる場合がある。
【0018】
上記に示した強磁性粉末の含有率が50重量%未満では、磁性粉不足により、マグネットピースの磁気特性が低下して所望の磁力が得られにくくなり、また該強磁性粉末の含有率が95重量%を超えると、バインダー不足となり成形性が損なわれるおそれがある。
【0019】
ここで、上記フェライト磁性粉は等方性あるいは異方性のどちらでもよいが、磁気特性への寄与を考えると異方性フェライト磁性粉の方が好ましい。
【0020】
上記のフェライト磁性粉としては、MO・nFe(nは自然数)で代表される化学式を持つフェライト磁性粉などがあげられる。式中のMとして、Sr、Baまたは鉛などの1種または2種以上が適宜選択して用いられる。
【0021】
また、本発明は、上記強磁性粉末が少なくとも異方性希土類磁性粉とフェライト系磁性粉とを含み、該異方性希土類磁性粉:該フェライト系磁性粉=100〜50:0〜50とした押出成形用磁石材料組成物であることが好ましい。
【0022】
異方性希土類磁性粉末の割合を50wt%未満にした場合、所望の高磁束密度を満足するマグネットピースを得られない場合がある。
【0023】
より高い磁束密度のマグネットピースを得るためには、該異方性希土類磁性粉を通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上含むことが望ましい。
【0024】
前記樹脂バインダーとしてポリオレフィン系樹脂を5〜50重量%(滑剤、安定剤等を含む)、強磁性粉末を95〜50重量%とし、該強磁性粉末中の異方性希土類磁性粉末(SmFeN系等)の割合を100〜50wt%とし、必要に応じて、前記強磁性粉末の表面処理剤としてシラン系やチタネート系等のカップリング剤、流動性を良好にするポリスチレン系・フッ素系滑剤等、安定剤、可塑剤、もしくは難燃剤などを添加し、混合分散し、溶融混練し、ペレット状に成形する。
【0025】
上記ペレットを溶融状態にして、図1のような成形装置(金型)を用いて、150K・A/m〜2400K・A/mの磁場を印加しながら押出成形をし、図2のような配向着磁されたマグネットピース(3)を得る。成形時に印加する配向着磁磁場は、各磁極に要求される磁束密度仕様により適宜選択すればよい。また、要求磁気特性によっては成形時に配向着磁磁場を印加せず、成形後に着磁してもよい。
【0026】
上記で得られたマグネットピース(3)をシャフト(5)の外周部に貼り合わせて図3のようなマグネットローラを形成する。
【0027】
成形時の溶融粘度および成形品の曲げ強度は上記と同様に調整する。
【0028】
また、上記に示した少なくとも異方性希土類磁性粉とフェライト系磁性粉とを含む強磁性粉末の含有率が50重量%未満では、磁性粉不足により、マグネットローラの磁気特性が低下して所望の磁力が得られにくくなり、またそれらの含有率が95重量%を超えると、バインダー不足となり成形性が損なわれるおそれがある。
【0029】
上記の異方性希土類磁性粉としては、SmFeN系以外にNdFeB系等などがあげられる。また、異方性希土類磁性粉の残留磁束密度(Br)は1T以上が好ましい。
【0030】
特に、異方性希土類磁性粉末のように高い残留磁束密度(Br)の場合、印加磁場に非常に反応しやすく、その結果磁場印加時の変形はフェライト系磁性粉よりはるかに大きい。
【0031】
上記のように、従来法での磁場中押出成形では、磁場印加による成形品の変形が大きく、該変形により成形品にクラックが発生し、連続押出成形ができない場合がる。また、該変形を修正するため押出金型(押出ダイス)を調整するのに時間を要する場合もある。更に、従来法で成形時の変形を小さくするように押出成形用磁石材料組成物を調整した場合、所望の磁束密度が得られない場合(所望より低くなる)がある。
【0032】
本発明は、磁場押出成形時の溶融粘度、かつ、成形品の曲げ強度をそれぞれ特定の範囲にすることにより、磁場印加時の変形を防止できクラックが発生せず連続押出成形が可能となり、かつ、所望の高磁束密度のマグネットピースを得ることができ、マグネットピースをシャフトの外周部に精度よく貼り合わせることができ、高画質化が可能となる。
【0033】
マグネットピース材料として、すべてのマグネットピースに上記ペレットを用いてもよいが、要求磁束密度仕様やコスト等を考慮し、高磁束密度が必要な磁極用のマグネットピースにのみに上記ペレットを用い、それ以外のマグネットピースには従来の異方性フェライト系樹脂磁石材料等を用いてもよく、適宜設計すればよい。また、上記ペレット以外の成形方法は、射出成形、圧縮成形、等いずれでもよい。
【0034】
マグネットピース材料の樹脂バインダーとしては、上記ではポリオレフィン系樹脂を用いて説明したが、これに制限されるものではなく、磁性粉を混ぜた場合、混合物の溶融粘度が30N・m以上45N・m以下、かつ、成形後の曲げ強度が150×10N/m以上250×10N/m以下になるものが、一般に使用できる。
【0035】
通常、樹脂バインダーとしては、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンスフィド)、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)及びPVC(ポリ塩化ビニル)などの1種類または2種類以上、もしくはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びポリイミド樹脂などの熱硬化樹脂の1種類または2種類以上を混合して用いることができる。なかでも、メルトマスフローレイト(MFR)が2g/10min以上5g/10min以下であるポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0036】
なお、上記のメルトマスフローレイト(MFR)は、JIS K−6922−2に準拠して、加熱された円筒容器内で一定量の合成樹脂を、定められた温度で加熱・加圧し、容器底部に設けられた開口部(ノズル)から10分間あたりに押出された樹脂量で測定される。
【0037】
メルトマスフローレイト(MFR)が2g/10min以上5g/10min以下であるポリオレフィン系樹脂を用いることにより、上述した、磁場押出成形時の溶融粘度、かつ、成形品の曲げ強度をそれぞれ特定の範囲に容易に調整することができる。
【0038】
なお、このメルトマスフローレイトは以後、MFRと略して記載する。
【0039】
また、本明細書においては、5極構成のマグネットロールで説明したが、本発明は5極構成のマグネットロールのみに限定されない。すなわち、所望の磁束密度と磁界分布により、磁極数や磁極位置も適宜設定すればよい。
【実施例】
【0040】
以下に本発明を実施例および比較例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
図4のN1のマグネットピース材料は、その組成を、強磁性粉末として異方性フェライト磁性粉(同和エレクトロニクス株式会社製NF−350)90重量%、樹脂バインダーとしてエチレンエチルアクリレート樹脂(日本ユニカー株式会社製NCU−6220、MFR=4g/10min)10重量%(可塑剤、滑剤、安定剤、含む)とし、これらを混合し、溶融混練し、ペレット状に成形し、このペレットを溶融状態にし、図1の成形装置(金型)を用いて160℃で押出成形した。
【0042】
上記ペレットの溶融粘度を175℃で38N・mとし、押出成形後のマグネットピースの曲げ強度を200×10N/mとした。
【0043】
上記で得られたマグネットピースを、外径φ6mm、長さ370mmのSUM22製シャフトの外周に貼り合わせ、図3のようなマグネットローラを得た。マグネットローラ本体部の外径はφ13.6、マグネット本体部(マグネットピース)の長さは320mm、とした。
【0044】
溶融粘度は、ラボプラストミル(東洋精機製30C150)を用い、ミキサー空間60cmの80%を満たすようにペレットを投入し、175℃、スクリュー回転速度25rpmで10分間撹拌して、最低トルク値を測定し、該溶融粘度とした。
【0045】
曲げ強度は、ASTM D790に準拠して測定した。
【0046】
得られたマグネットローラの磁束密度は、マグネットローラの両端軸部を支持し、マグネットローラを回転させながら、マグネットローラの中心から8mm離れた位置(スリーブ上)にプローブ(Bell社製磁束密度センサー)をセットし、ガウスメータにて周方向磁束密度値を軸方向において3箇所測定し(マグネット両端部から中央部に向かって10mmの位置および軸方向中央部)、主極(最も磁束密度が高い極)であるN1極の磁束密度値と該磁極位置を求めた。磁極位置のネジレは、上記3箇所で測定した磁極位置で、最大磁極位置(角度)から最小磁極位置(角度)を引いた値である。N1極磁束密度は85mT以上、磁極位置のネジレは3°以下であれば実用上問題ない。
【0047】
押出成形性は、観察により、次の4段階で評価した。◎:成形性良好、○:成形性実用上問題なし、△:成形性やや悪い(形状保持できず、微少クラック有り、等)、×:成形性悪い(クラック有り、断裂有り、等)
たわみ量は、図5のように、マグネットピース(全長320mm)の軸方向端部(20mm)のみを保持し、たわみ量を測定した。たわみ量は140mm以下であれば実用上問題ない。
【0048】
主極であるN1極原料の溶融粘度および曲げ強度、押出成形性、N1極の磁束密度および磁極位置のネジレ、成形品(マグネットピース)のたわみ量の評価結果を表1に示した。
【0049】
【表1】

(実施例2)
樹脂バインダーとしてエチレンエチルアクリレート樹脂(日本ユニカー株式会社製NC
U−6225、MFR=5g/10min)を用い、上記ペレットの溶融粘度を175℃
で30N・mとし、押出成形後のマグネットピースの曲げ強度を150×10N/mとする以外はすべて実施例1と同様に行なった。
【0050】
(実施例3)
樹脂バインダーとしてエチレンエチルアクリレート樹脂(日本ユニカー株式会社製NCU−6221、MFR=3g/10min)を用い、上記ペレットの溶融粘度を175℃で45N・mとし、押出成形後のマグネットピースの曲げ強度を250×10N/mとする以外はすべて実施例1と同様に行なった。
【0051】
(実施例4)
図4のN1のマグネットピース材料の強磁性粉末として異方性希土類磁性粉(住友金属鉱山製SFN合金微粉B)90重量%とする以外はすべて実施例1と同様に行なった。
各評価結果を表1に示した。N1磁束密度は120mT以上であり、実用上好ましい。
【0052】
(実施例5)
図4のN1のマグネットピース材料の強磁性粉末として異方性希土類磁性粉(住友金属鉱山製SFN合金微粉B)90重量%とする以外はすべて実施例2と同様に行なった。
各評価結果を表1に示した。N1磁束密度は120mT以上であり、実用上好ましい。
【0053】
(実施例6)
図4のN1のマグネットピース材料の強磁性粉末として異方性希土類磁性粉(住友金属鉱山製SFN合金微粉B)90重量%とする以外はすべて実施例3と同様に行なった。
各評価結果を表1に示した。N1磁束密度は120mT以上であり、実用上好ましい。
【0054】
(実施例7)
図4のN1のマグネットピース材料の強磁性粉末として、異方性希土類磁性粉(住友金属鉱山製SFN合金粉B):異方性フェライト磁性粉(同和エレクトロニクス株式会社製NF−350)=95wt%:5wt%の割合で混合し、前記混合磁性粉を90wt%とする以外はすべて実施例2と同様に行った。
各評価結果を表1に示した。N1磁束密度は120mT以上であり、実用上好ましい。
【0055】
(比較例1)
樹脂バインダーとしてエチレンエチルアクリレート樹脂(日本ユニカー株式会社製NCU−6170、MFR=6g/10min)を用い、上記ペレットの溶融粘度を175℃で25N・mとし、押出成形後のマグネットピースの曲げ強度を100×10N/mとする以外はすべて実施例1と同様に行なった。各評価結果を表1に示した。
【0056】
(比較例2)
樹脂バインダーとしてエチレンエチルアクリレート樹脂(日本ユニカー株式会社製NCU−6520、MFR=1.6g/10min)を用い、上記ペレットの溶融粘度を175℃で50N・mとし、押出成形後のマグネットピースの曲げ強度を300×10N/mとする以外はすべて実施例1と同様に行なった。各評価結果を表1に示した。
【0057】
(比較例3)
樹脂バインダーとしてエチレンエチルアクリレート樹脂(日本ユニカー株式会社製NCU−6170、MFR=6g/10min)を用い、上記ペレットの溶融粘度を175℃で25N・mとし、押出成形後のマグネットピースの曲げ強度を100×10N/mとする以外はすべて実施例4と同様に行なった。各評価結果を表1に示した。
【0058】
(比較例4)
樹脂バインダーとしてエチレンエチルアクリレート樹脂(日本ユニカー株式会社製NCU−6520、MFR=1.6g/10min)を用い、上記ペレットの溶融粘度を175℃で50N・mとし、押出成形後のマグネットピースの曲げ強度を300×10N/mとする以外はすべて実施例4と同様に行なった。各評価結果を表1に示した。
【0059】

実施例1〜7は比較例1〜4を比べ、押出成形性、磁気特性(N1磁束密度、N1磁極ネジレ)、たわみ量、が良好となっている。
【0060】
実施例2と比較例1、実施例5と比較例3、を比べると、比較例1と3は押出成形性が△あるいは×〜△、N1磁極ネジレが3°を超え、たわみ量も140mmを超えていることから、溶融粘度は30N・m以上、曲げ強度は150N/m以上の範囲で良好となることがわかる。
【0061】
実施例3と比較例2、実施例6と比較例4、を比べると、比較例2と4は押出成形性が△あるいは×〜△、N1磁束密度が低いことから、溶融粘度は45N・m以下、曲げ強度は250N/m以下の範囲で良好となることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】マグネットピースの成形装置(金型)
【図2】マグネットピースの斜視図
【図3】マグネットローラの斜視図
【図4】マグネットローラの磁気パターン図
【図5】マグネットピースのたわみ量の測定方法を説明する図
【符号の説明】
【0063】
1 励磁源
2 ヨーク
3 マグネットピース
4 磁性粒子配向方向
5 シャフト
6 磁束密度パターン
7 N1極磁束密度ピーク値およびN1磁極位置
8 スリーブ
9 マグネットピース支持治具
10 マグネットピースたわみ強度測定装置ベース台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性粉末と樹脂バインダーを主体とする混合物において、該混合物中の強磁性粉末の重量比が50wt%以上95wt%以下であり、該混合物の溶融粘度が30N・m以上45N・m以下、かつ、成形後の曲げ強度が150×10N/m以上250×10N/m以下であることを特徴とする押出成形用磁石材料組成物。
【請求項2】
上記強磁性粉末が少なくとも異方性希土類磁性粉とフェライト系磁性粉とを含み、該異方性希土類磁性粉:該フェライト系磁性粉=100〜50:0〜50であることを特徴とする請求項1記載の押出成形用磁石材料組成物。
【請求項3】
樹脂バインダーが、メルトマスフローレイト(MFR)2g/10min以上5g/10min以下のポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の押出成形用磁石材料組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−242544(P2009−242544A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90253(P2008−90253)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【出願人】(596087214)栃木カネカ株式会社 (64)
【Fターム(参考)】