説明

磁粉探傷方法及び磁粉探傷装置

【課題】 明瞭な磁粉模様を形成することにより高精度な磁粉探傷を可能とする磁粉探傷方法及び磁粉探傷装置を供給する。
【解決手段】 本発明に係る磁粉探傷装置100は、水平に配設された管状の被検査材表面Pに回転磁界を作用させる磁化装置11、12と、被検査材表面に磁粉液を散布するノズル装置21A、21B、22A、22Bと、磁化装置及びノズル装置を被検査材の周方向に沿って前記被検査材の中心軸周りに一体的に回動させる駆動機構3とを備えている。ノズル装置は、磁化装置の移動方向両端部にそれぞれ設けられ、磁粉液の流れる方向と同一方向側の端部に設けられたノズル装置から磁粉液を散布し、駆動機構は、散布された磁粉液の流れる方向と同一方向に磁化装置を移動させると共に、磁化装置の移動速度と散布された直後の磁粉液の流速とが略同一となるように磁化装置を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁粉探傷方法及び磁粉探傷装置に関する。特に、本発明は、明瞭な磁粉模様を形成することによって、例えば鋼管といった管状の被検査材に対しても高精度な磁粉探傷を行うことができる磁粉探傷方法及び磁粉探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁粉探傷は、磁性体の表面やその近傍に存在する欠陥の非破壊検査法として知られる。この磁粉探傷は、磁性体からなる被検査材を磁化すると、被検査材の表面やその近傍に磁束を遮る欠陥が延在する場合には、この欠陥延在部において磁束が表面空間に漏洩して漏洩磁界が形成されることを利用する技術である。
【0003】
具体的には、被検査材の表面に所定の液体に微細な磁粉(鉄粉)を分散させた磁粉液を散布する。磁粉液に含まれる磁粉は、欠陥延在部に形成される漏洩磁界により磁化される。磁化された磁粉同士には吸引力が作用するため、磁粉同士は鎖状につながって欠陥延在部に凝集吸着する。これにより、欠陥延在部には、存在する欠陥の数倍から数十倍の大きさの磁粉の凝集模様(本明細書では「磁粉模様」という)が形成されるため、この磁粉模様を目視することによって欠陥を検出する。
【0004】
この磁粉探傷では、欠陥の延在方向と磁化の方向とが垂直であれば、漏洩磁界の磁束が多くなる。このため、大きな磁粉模様を形成して欠陥を検出することができる。一方、欠陥の延在方向と磁化の方向とが同一であると、漏洩磁界を殆ど生じないため、欠陥を検出することが困難になる。
【0005】
このため、例えば特許文献1〜5には、複数の磁極を所定位置周りに例えば120°ピッチで配置するとともに各磁極に例えば120°ずつ位相が異なる電流を通電することによって、各磁極間に形成される磁界の方向が時々刻々変化する回転磁界を生成し、この回転磁界によって被検査材を磁化する発明が提案されている。この回転磁界によれば、磁化の方向が時々刻々変化して360°回転する。このため、欠陥の延在方向が何れの方向であっても、ある時点において磁化の方向が欠陥の延在方向と垂直になるために漏洩磁界を必ず生じ、何れの方向に延在する欠陥であっても高精度で検出できる。したがって、現在では、回転磁界を利用した磁粉探傷が多数実用化されている。
【特許文献1】特公昭61−25312号公報
【特許文献2】実開平3−104851号公報
【特許文献3】実公昭62−23059号公報
【特許文献4】実開昭62−141756号公報
【特許文献5】実開平6−22955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1〜5に記載された発明に基づいて磁粉探傷を行っても、例えば鋼管等の管状体である被検査材の内面又は外面に明瞭な磁粉模様を形成できないために欠陥を精度良く検出できないことがある。
【0007】
すなわち、特許文献1〜4には磁粉液の散布方法は記載されていない。また、特許文献5には、磁粉探傷装置の磁化装置の進行方向の前後両端側になる位置に磁粉液の散布装置を設けておき、磁化装置が被検査材の水平面をある方向へ移動する際にはその方向の先端側の散布装置から磁粉液を散布するとともに、これとは反対方向へ移動する際にはその方向の先端側の散布装置から磁粉液を散布することが開示されている。
【0008】
しかし、特許文献5に開示された散布装置は、被検査材が水平配置された板材を対象とするものであり、特許文献5には、被検査材が例えば鋼管等の管状体である場合における磁粉液の散布方法は開示されていない。
【0009】
このため、特許文献5により開示された散布装置を用いて、例えば鋼管等の管状体である被検査材の内面又は外面に磁粉液を散布すると、特に略縦面において、磁粉液が内面又は外面に沿って流れ落ちてしまうために明瞭な磁粉模様を形成できなくなり、欠陥を精度良く検出できないことがある。
【0010】
特に鋼管の端面の磁粉探傷では、品質管理上の観点から厳重な検査が要求されるのであり、鋼管の円周方向の部位によって欠陥の検出精度が低下することは早急に解決しなければならない重要な技術課題である。
【0011】
本発明は、従来の技術が有するこのような課題に鑑みてなされたものであり、被検査材が例えば鋼管等の管状体である場合であっても、被検査材の全周について、明瞭な磁粉模様を形成して高精度な磁粉探傷を行うことができる磁粉探傷方法及び磁粉探傷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、被検査材が例えば鋼管等の管状体である場合に被検査材の全周について明瞭な磁粉模様を形成できなくなるために高精度な磁粉探傷を行うことができない原因を鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
【0013】
散布装置から管状の被検査体の内面及び/又は外面に散布された磁粉液は、その自重によって被検査体の内面及び/又は外面に沿って下方へ流下する。このため、磁化装置の移動方向がこの磁粉液の流下方向と逆であると、すなわち磁化装置が下方から上方へ向けて移動すると、磁化装置により磁化されることによって被検査体の内面及び/又は外面における欠陥延在部に明瞭に形成された磁粉模様が、被検査体の内面及び/又は外面を伝わって上方から流下する磁粉液に掻き消されて消失し、明瞭な磁粉模様が形成されなくなるために欠陥を高精度で検出できない。
【0014】
そこで、本発明者らはさらに検討を重ねた結果、回転磁界を、被検査体の内面及び/又は外面に散布された磁粉液が内面及び/又は外面に沿って流下する方向と同一となる方向、すなわち、内面及び/又は外面の上部から下部への方向へ向けて移動させることにより、被検査体の内面及び/又は外面を伝わって上方から流下してくる磁粉液によって欠陥延在部に明瞭に形成された磁粉模様が掻き消されることを抑制できることを知見し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0015】
本発明は、略水平に配置される管状の被検査材の内面及び/又は外面に磁粉液を散布するとともに、この内面及び/又は外面に沿って被検査材の中心軸周りに移動する回転磁界をこの内面及び/又は外面に作用させることによって磁粉探傷を行う際に、回転磁界の移動が、この内面及び/又は外面に散布される磁粉液が内面及び/又は外面に沿って流下する方向と同じ方向、換言すれば、内面及び/又は外面の上部から下部への方向へ向けて、行われることを特徴とする磁粉探傷方法である。
【0016】
この本発明によれば、散布される磁粉液が流下する方向と同じへ向けて回転磁界を移動させるため、被検査材の所定位置に形成された欠陥の磁粉模様が上方から流下する磁粉液によって掻き消されて消失することを事実上防止できる。したがって、本発明によれば、明瞭な磁粉模様を形成でき、これにより高精度な磁粉探傷を行うことができる。
【0017】
この本発明に係る磁粉探傷方法では、回転磁界の移動の速度が、散布される磁粉液が被検査材の内面及び/又は外面に沿って流下する速度と略同一であることが望ましい。これにより、散布される磁粉液が磁化されることなく回転磁界が通過したり、回転磁界で磁化する際にはすでに磁粉液の流れが止まっていることを事実上防止できる。したがって、より明瞭な磁粉模様を形成することができ、これにより、高精度な磁粉探傷を行うことができる。
【0018】
本発明により被検査材の内面及び外面の双方を探傷する場合には、回転磁界を被検査材の内面及び外面の双方に作用させるとともに、磁粉液を被検査材の内面及び外面の双方に散布する。これに対し、被検査材の内面及び外面の何れか一方のみを探傷する場合には、この探傷する表面についてのみ回転磁界を作用させて磁粉液を散布すればよい。
【0019】
本発明において、回転磁界の移動速度(被検査材の周方向に沿った移動速度)と散布される磁粉液が流下する速度とを略同一にするには、散布される磁粉液の流下する速度が、磁粉液の散布量や濃度、磁粉を分散される液体の粘性の他に被検査材の表面状態等によっても種々異なることから、用いる磁粉液の流速を予め実験的に算出しておき、算出した速度に略一致するように回転磁界の移動速度を設定すればよい。
【0020】
さらに、散布される磁粉液が流下する速度は、磁粉液が散布される被検査材の部位に応じて傾斜が異なるために厳密には異なり、散布直後の流下の加速度が部位により異なるため、散布された直後に磁粉液が流下する速度も一定ではない。このため、回転磁界の移動速度と散布された磁粉液が流下する速度とを被検査材の全部位に亘って厳密に同一にするには、回転磁界の現在位置に応じてその移動速度を時々刻々変化させることが好ましい。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、散布された磁粉液が流下する速度を被検査材の全周に亘って平均化するか、あるいは被検査材の特定部位における磁粉液が流下する速度の代表値とし、この平均値又は代表値を磁粉液が流下する速度として、これと略同一の一定の移動速度で回転磁界を移動させるようにしてもよい。
【0021】
これらの本発明に係る磁粉探傷方法では、磁粉液が、回転磁界の移動方向の前側又は回転磁界の直下へ散布されることが望ましい。これにより、被検査材の所定位置に形成された欠陥の磁粉模様が上方から流下する磁粉液によって消失することが事実上解消され、明瞭な磁粉模様を形成することができるために高精度な磁粉探傷を行うことができる。
【0022】
これらの本発明に係る磁粉探傷方法では、回転磁界の移動速度及び/又は磁粉液の散布量が、被検査材の径に応じて変更されることが望ましい。
一般に、回転磁界の被検査材の中心軸周りの回転速度(角速度)を一定にすると、回転磁界の被検査材の周方向に沿った移動速度は、被検査材の径(外径又は内径)によって異なる。具体的には、被検査材の中心軸周りの回転速度が一定である場合、被検査材の径が大きくなればなるほど外周(又は内周)が長くなるため、被検査材の周方向に沿った移動速度は速くなる。
【0023】
このため、前述したように、回転磁界の移動速度(周方向に沿った移動速度)と散布される磁粉液が流下する速度とを略同一にするには、被検査材の径が変更された場合には、被検査材の径に応じて回転磁界の被検査材の中心軸周りの回転速度(角速度)を変更すること、具体的には被検査材の径が大きくなれば回転速度を小さくし、被検査材の径が小さくなれば回転速度を大きくすることが好ましい。
【0024】
又は、回転磁界の被検査材の中心軸周りの回転速度(角速度)を被検査材の径にかかわらず一定とし、磁粉液の散布量を被検査材の径に応じて変更すること、具体的には被検査材の径が大きくなれば散布量を増加し、被検査材の径が小さくなれば散布量を減少するようにしてもよい。すなわち、回転磁界の被検査材の中心軸周りの回転速度(角速度)が一定である場合、被検査材の径が大きくなれば回転磁界の移動速度(周方向に沿った移動速度)が速まるため、これに応じて磁粉液の散布量を増加することにより、散布される磁粉液が流下する速度を速める。逆に、被検査材の径が小さくなれば回転磁界の移動速度が低下するため、これに応じて磁粉液の散布量を低下させることにより、散布された直後の磁粉液の流速を低下させ、回転磁界の移動速度と散布された直後の磁粉液の流速とを略同一にすることも可能である。
【0025】
別の観点からは、本発明は、略水平に配置される管状の被検査材の内面及び/又は外面に回転磁界を作用させるための磁化装置と、被検査材の内面及び/又は外面に磁粉液を散布するための散布装置と、磁化装置及び散布装置を被検査材の内面及び/又は外面に沿って被検査材の中心軸周りに一体的に移動させるための駆動装置とを備え、この駆動装置が、探傷時の磁化装置及び散布装置を、内面及び/又は外面に散布される磁粉液が内面及び/又は外面に沿って流下する方向と同じ方向、換言すれば、内面及び/又は外面の上部から下部への方向へ向けて、移動させることを特徴とする磁粉探傷装置である。
【0026】
本発明によれば、散布される磁粉液が流下する方向と同じ方向に磁化装置を移動させて回転磁界を移動させるため、被検査材の所定位置に形成された欠陥の磁粉模様が上方から流下する磁粉液によって消失することを事実上解消できる。したがって、明瞭な磁粉模様を形成することができ、これにより高精度な磁粉探傷を行うことができる。
【0027】
この本発明に係る磁粉探傷装置では、駆動装置は、探傷時の磁化装置及び散布装置を、散布される磁粉液が内面及び/又は外面に沿って流下する速度と略同じ速度で、移動させることが望ましい。本発明によれば、散布される磁粉液が磁化されることなく回転磁界が通過したり、回転磁界で磁化する際にはすでに磁粉液の流れが止まっていることを事実上解消できる。したがって、より明瞭な磁粉模様を形成することができ、これにより高精度な磁粉探傷を行うことができる。
【0028】
さらに、本発明に係る磁粉探傷装置では、散布装置が、(a)磁化装置の移動方向の前後両側にそれぞれ配置されること、又は(b)磁化装置の移動方向の前側又は後側に配置されること、特に前側の配置位置、又は後側の配置位置のいずれかに可変に配置されることが望ましい。
【0029】
本発明によれば、被検査材の所定位置に形成された欠陥の磁粉模様が上方から流下する磁粉液によって消失することを事実上解消できるために明瞭な磁粉模様を形成することができ、これにより高精度な磁粉探傷を行うことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る磁粉探傷方法及び磁粉探傷装置によれば、被検査材が例えば鋼管等の管状体である場合であっても、被検査材の全周について、明瞭な磁粉模様を形成することによって高精度な磁粉探傷を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る磁粉探傷方法及び探傷装置を実施するための最良の形態を、添付図面を参照しながら説明する。
【0032】
図1(a)〜図1(f)は、本実施の形態に係る磁粉探傷装置を用いて鋼管Pの内面及び外面の磁粉探傷を行う状況を経時的に示す説明図である。図2は、図1のA−A矢視拡大図である。図3は、図2に示す内面磁化用の磁化装置を構成する磁極の配列を示す平面図である。
【0033】
図1に示すように、本実施の形態の磁粉探傷装置100は、管状の被検査材として鋼管Pの軸方向の端部における内面を磁粉探傷するための内面磁化用の磁化装置11と、外面を磁粉探傷するための外面磁化用の磁化装置12とを備える。磁化装置11、12は、いずれも、3相(R相、S相、T相)交流電流の各相の電流がそれぞれ通電されるR相コイル、S相コイル、T相コイルがそれぞれ巻回され、平面視で(図1の紙面上方から見て)所定位置周りに120°ピッチで配置された磁極R、S、Tを有する。これにより、鋼管Pの内面及び外面に回転磁界を作用させることができる。
【0034】
図2に示すように、磁化装置11は、鋼管Pの内部の一端部から中央部に向けて配置されたヨーク(継鉄)Yの鋼管Pに対向する各突出部に、R相コイルRC、S相コイルSC、T相コイルTCがそれぞれ巻回された磁極R(R1〜R3)、S(S1〜S3)、T(T1〜T3)を有し、図3に示すように、各磁極が所定位置周りに120°ピッチで配置される。同様に、磁化装置12も、鋼管Pの外部の一端部から中央部に向けて配置されたヨーク(継鉄)Yの鋼管Pに対向する各突出部に、R相コイルRC、S相コイルSC、T相コイルTCがそれぞれ巻回された磁極R(R4〜R6)、S(S4〜S6)、T(T4〜T5)を有し、各磁極が所定位置周りに120°ピッチで配置される。
【0035】
また、図1又は図2に示すように、磁粉探傷装置100は、鋼管Pの内面に磁粉液を散布する散布装置21A、21Bと、鋼管Pの外面に磁粉液を散布する散布装置22A、22Bとを備える。
【0036】
本実施の形態では、散布装置21A、21Bが磁化装置11の移動方向の両端側にそれぞれ設けられ、また散布装置22A、22Bが磁化装置12の移動方向の両端側にそれぞれ設けられる。なお、各散布装置21A〜22Bは、当該各散布装置21A〜22Bに磁粉液を供給するための配管に設けられた開閉弁(図示しない)を開閉することによって、磁粉液の散布を個別に制御することができる。
【0037】
さらに、図1では省略しているが図2に示すように、磁粉探傷装置100は、駆動装置3を備える。駆動装置3は、磁化装置11、12の磁極が鋼管Pの内面、外面に対して所定距離だけ離間して位置するように、磁化装置11、12が備えるヨークYの端部を所定距離だけ離間させた状態で保持する保持機構(図示せず)と、この保持機構を鋼管Pの中心軸周りに回動させるためのインバータモータ(図示せず)と、さらにはこの保持機構やインバータモータを支持するとともに鋼管Pの軸方向に沿って移動させるための台車とを備える。
【0038】
駆動装置3は、このように構成されるので、磁化装置11、12のヨークYが鋼管Pの一端部から中央部へ向けて所定距離だけ進出した状態(図2に示す状態)で、磁化装置11、12及び散布装置21A、21B、22A、22Bが、鋼管Pの周方向に沿って鋼管Pの中心軸周りに一体的に回動することができる。
【0039】
なお、駆動装置3は、公知の各種機械要素やアクチュエータ等によって構成され、上述した機能を有する駆動装置を種々の態様で構成し得ることは当業者にとっては自明であるため、駆動装置3の構造に関するこれ以上の説明は省略する。
【0040】
以上の構成を有する磁粉探傷装置100によって磁粉探傷を行う状況を説明する。
先ず、駆動装置3によって磁化装置11、12のヨークYを鋼管Pの一端部から中央部に向けて所定距離だけ移動させる。
【0041】
次に、磁化装置11、12の磁極R、S、Tに3相交流を通電し、駆動装置3によって図1(a)に示す初期位置から図の矢符(細線)に示す方向(反時計方向)に磁化装置11、12及び散布装置21A、21B、22A、22Bを移動させながら、散布装置21A、22Aから磁粉液を散布する。
【0042】
そして、図1(b)に示す状態を経て、磁化装置11、12が鋼管Pの底部に到達する(図1(c))まで、磁極R、S、Tへの通電と、散布装置21A、22Aからの磁粉液の散布とを継続する。この際、鋼管Pの周方向へ沿った磁化装置11、12の移動速度は、予め実験的に算出した散布された磁粉液の流下速度と略同一となるように設定されており、駆動装置3は設定した移動速度で磁化装置11、12を鋼管Pの中心軸周りに反時計方向へ回転移動させる。
【0043】
磁化装置11、12が鋼管Pの底部に到達した後、磁極R、S、Tへの通電と、散布装置21A、22Aからの磁粉液の散布とをいずれも停止し、駆動装置3によって、図1(c)に示す位置から図1(d)に示す原位置に磁化装置11、12及び散布装置21A、21B、22A、22Bを復帰させる。この際、磁化装置11、12及び散布装置21A、21B、22A、22Bの移動方向は、時計方向及び半時計方向の何れであってもよい。
【0044】
磁化装置11、12が鋼管Pの頂部の原位置に復帰した状態(図1(d))で、磁化装置11、12の磁極R、S、Tに3相交流を通電し、駆動装置3によって図1(d)に示す位置から図の矢符(細線)に示す方向(時計方向)に磁化装置11、12及び散布装置21A、21B、22A、22Bを移動させながら、散布装置21B、22Bから磁粉液を散布する。そして、図1(e)に示す状態を経て、磁化装置11、12が鋼管Pの底部に到達する(図1(f))まで、磁極R、S、Tへの通電と、ノズル装置21B、22Bからの磁粉液の散布とを継続する。前述したのと同様に、この際の磁化装置11、12の移動速度は、散布された磁粉液の流下速度と略同一となるように設定されており、駆動装置3は、駆動装置3は設定した移動速度で磁化装置11、12を鋼管Pの中心軸周りに時計方向へ移動させる。
【0045】
磁化装置11、12が鋼管Pの底部に到達した後、駆動装置3によって磁化装置11、12のヨークYを鋼管Pの端部から離間した位置まで移動させる。そして、その状態で或いは鋼管Pを別の場所まで搬送した後、鋼管Pの内面及び外面について欠陥によって生じた磁粉模様を目視観察することによって、鋼管Pの内面及び外面における欠陥を検出する。
【0046】
以上に説明したように、本実施の形態に係る磁粉探傷装置100を用いた磁粉探傷方法によれば、図の矢符(太線)に示す磁粉液の流れる方向と同一方向側の端部に設けられた散布装置(図1(a)〜(c)に示す場合には散布装置21A及び22A、図1(d)〜(f)に示す場合には散布装置21B及び22B)から磁粉液を散布するととともに、散布された磁粉液の流下方向と同一方向に磁化装置11、12を移動させて磁化装置11、12によって生じる回転磁界を移動させる。
【0047】
このため、本実施の形態によれば、鋼管Pの内面及び外面に形成された欠陥の磁粉模様が、磁化装置11、12が通過した後に上方から流れてきた磁粉液によって消失することを防止できる。しかも、駆動装置3によって、散布された磁粉液の流下速度と略同一の移動速度で磁化装置11、12を移動させるので、散布された磁粉液が磁化されることなく磁化装置11、12(回転磁界)が通過したり、磁化装置11、12で磁化する際にはすでに磁粉液の流れが止まっていることも防止できる。
【0048】
このようにして、本実施の形態の磁粉探傷装置100によれば、明瞭な磁粉模様を形成することができ、これにより高精度な磁粉探傷を行うことができる。
なお、被検査材としての鋼管Pの径は多種に亘る。このため、磁化装置11、12の鋼管Pの中心軸周りの回動速度(角速度)を鋼管Pの径にかかわらず一定にしたのでは磁化装置11、12の鋼管Pの周方向に沿った移動速度が大きく異なってしまう場合には、鋼管Pの径に応じて、磁化装置11、12を鋼管Pの中心軸周りの回動速度を変更することが好ましい。鋼管Pの径が大きくなれば、駆動装置3が備えるインバータモータの回転速度(角速度)を低下させることによって磁化装置11、12の鋼管Pの周方向に沿った移動速度を低下させ、逆に鋼管Pの径が小さくなれば、インバータモータの回転速度を速めることによって磁化装置11、12の鋼管Pの周方向に沿った移動速度を速くし、これにより磁化装置11、12の移動速度(回転磁界の移動速度)と散布された磁粉液の流速とを略同一にすることが好ましい。
【0049】
あるいは、磁化装置11、12の鋼管Pの中心軸周りの回動速度を、鋼管Pの径にかかわらず一定(インバータモータの回転速度は一定)とし、磁粉液の散布量を鋼管Pの径に応じて変更することによっても同様の効果を奏することができる。すなわち、鋼管Pの径が大きくなれば、例えば散布装置に磁粉液を供給するための配管に設けられた絞り弁を開ける等によって磁粉液の散布量を増加し、逆に鋼管Pの径が小さくなれば、絞り弁を絞る等によって磁粉液の散布量を低減し、これにより、磁化装置11、12の移動速度(回転磁界の移動速度)と散布された直後の磁粉液の流下速度とを略同一にすることが可能である。
【0050】
本実施の形態において説明した駆動装置3による磁化装置11、12等の進退動や回動等の動作は、駆動装置3に電気的に接続された所定のコントローラを介してオペレータが手動操作し、インバータモータ等を駆動することによって実現することができる。しかし、この態様に限定されるものではなく、例えば、駆動装置3に電気的に接続されているとともに一連の動作手順をプログラミングした制御装置を設け、この制御装置からの信号によって駆動機構3を制御することにより自動的に動作させるようにしてもよい。
【0051】
また、散布装置21A、21B、22A、22Bの切り替え動作、すなわち磁化装置11、12の両端部に設けられた散布装置のうち磁粉液の流れる方向と同一方向の側の端部に配置された散布装置から磁粉液を散布する動作についても、前述した開閉弁に電気的に接続されたコントローラを介してオペレータが手動操作し、磁粉液を散布させるべき散布装置に対応する開閉弁を開き、他の開閉弁は閉じることによって実現することができる。さらに、駆動装置3のインバータモータの回転数をパルスジェネレータを用いて計測する等によって磁化装置11、12の現在位置や移動方向を検出し、開閉弁やパルスジェネレータに電気的に接続された制御装置によって、前記検出結果に応じたノズル装置に対応する開閉弁を開かせるように制御することで自動的に動作させることもできる。
【0052】
さらに、磁化装置11、12の移動速度の変更や磁粉液の散布量の変更等についても手動操作で行ってもよい。しかし、制御装置がプロセスコンピュータ等から鋼管Pの径情報を受信し、この径情報に応じて制御装置がインバータモータの回転数や絞り弁の開閉を制御することにより自動的に動作させるようにしてもよい。
【0053】
なお、本実施の形態では、鋼管Pの内面及び外面の双方を磁粉探傷するべく、磁粉探傷装置100が内面磁化用の磁化装置11と、外面磁化用の磁化装置12とを備える態様を説明したが、本発明はこの態様に限定されるものではなく、鋼管Pの内面及び外面の何れか一方のみを探傷することも無論可能である。この場合、磁化装置11及び散布装置21A、21B、又は、磁化装置12及び散布装置22A、22Bの何れか一方のみにより、磁粉探傷装置を構成すればよい。
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態を説明する。なお、以降の各実施の形態の説明では、上述した第1の実施の形態と相違する部分を説明し、共通する部分については、同一の図中符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0054】
図4(a)〜図4(f)は、本実施の形態に係る磁粉探傷装置100−1を用いて鋼管Pの内面及び外面の磁粉探傷を行う状況を経時的に示す説明図である。この磁粉探傷装置100−1が第1の実施の形態の磁粉探傷装置100と相違する最大の点は、磁化装置11に散布装置23が一つ設けられるとともに、磁化装置12に散布装置24が一つ設けられる点である。
【0055】
すなわち、磁化装置11には、散布装置23を一方の側の配置位置(図4(a)に示す位置)、又は他方の配置位置(図4(d)に示す位置)のいずれかに切り換えて可変に配置するための散布装置配置切換え装置25が設けられ、この散布装置配置切換え装置25により散布装置23が支持される。また、磁化装置12には、散布装置24を一方の側の配置位置(図4(a)に示す位置)、又は他方の配置位置(図4(d)に示す位置)のいずれかに切り換えて可変に配置するための散布装置配置切換え装置26が設けられ、この散布装置配置切換え装置26により散布装置24が支持される。
【0056】
これ以外の構成は第1の実施の形態の磁粉探傷装置100と同じである。以上の構成を有する本実施の形態の磁粉探傷装置100−1によって磁粉探傷を行う状況を説明する。
先ず、散布装置23、24が図4(a)に示す側に存在する状態で、駆動装置3によって磁化装置11、12のヨークYを鋼管Pの一端部から中央部に向けて所定距離だけ移動させる。
【0057】
次に、磁化装置11、12の磁極R、S、Tに3相交流を通電し、駆動装置3によって図4(a)に示す初期位置から図の矢符(細線)に示す方向(反時計方向)に磁化装置11、12及び散布装置23、24を移動させながら、散布装置23、24から磁粉液を散布する。
【0058】
そして、図4(b)に示す状態を経て、磁化装置11、12が鋼管Pの底部に到達する(図4(c))まで、磁極R、S、Tへの通電と、散布装置23、24からの磁粉液の散布とを継続する。この際、鋼管Pの周方向へ沿った磁化装置11、12の移動速度は、予め実験的に算出した散布された磁粉液の流下速度と略同一となるように設定されており、駆動装置3は設定した移動速度で磁化装置11、12を鋼管Pの中心軸周りに反時計方向へ回転移動させる。
【0059】
磁化装置11、12が鋼管Pの底部に到達した後、磁極R、S、Tへの通電と、散布装置23、24からの磁粉液の散布とをいずれも停止し、駆動装置3によって、図4(c)に示す位置から図4(d)に示す原位置に磁化装置11、12及び散布装置23、24を復帰させる。
【0060】
ここで、本実施の形態では、磁化装置11、12が鋼管Pの頂部の原位置に復帰した状態で、散布装置配置切換え装置25、26を起動して散布装置23、24をいずれも、一方の側の配置位置(図4(a)に示す位置)から他方の配置位置(図4(d)に示す位置)に切り換える。
【0061】
そして、磁化装置11、12の磁極R、S、Tに3相交流を通電し、駆動装置3によって図4(d)に示す位置から図の矢符(細線)に示す方向(時計方向)に磁化装置11、12及び散布装置23、24を移動させながら、散布装置23、24から磁粉液を散布する。そして、図4(e)に示す状態を経て、磁化装置11、12が鋼管Pの底部に到達する(図4(f))まで、磁極R、S、Tへの通電と、散布装置23、24からの磁粉液の散布とを継続する。前述したのと同様に、この際の磁化装置11、12の移動速度は、散布された磁粉液の流下速度と略同一となるように設定されており、駆動装置3は、駆動装置3は設定した移動速度で磁化装置11、12を鋼管Pの中心軸周りに時計方向へ移動させる。
【0062】
磁化装置11、12が鋼管Pの底部に到達した後、駆動装置3によって磁化装置11、12のヨークYを鋼管Pの端部から離間した位置まで移動させる。そして、その状態で或いは鋼管Pを別の場所まで搬送した後、鋼管Pの内面及び外面について欠陥によって生じた磁粉模様を目視観察することによって、鋼管Pの内面及び外面における欠陥を検出する。
【0063】
本実施の形態によれば、散布装置配置切換え装置25、26を介して散布装置23、24の設置位置を切換え自在としたため、上述した第1の実施の形態に比較して、散布装置23、24の設置数を半減することができる。これにより、散布装置23、24のメンテナンスに要する手間を削減できるとともに、鋼管Pの全周に同一の散布装置23、24により磁粉液を塗布することができるために鋼管Pの探傷精度の周方向のばらつきをさらに抑制することができる。
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態を説明する。
【0064】
図5(a)〜図5(f)は、本実施の形態に係る磁粉探傷装置100−2を用いて鋼管Pの内面及び外面の磁粉探傷を行う状況を経時的に示す説明図である。この磁粉探傷装置100−2が第2の実施の形態の磁粉探傷装置100−1と相違する最大の点は、散布装置配置切換え装置25、26が設けられておらず、このために磁化装置11に設けられる散布装置23、磁化装置12に設けられる散布装置24が、いずれも配置位置が固定されている点である。
【0065】
そして、以上の構成を有する本実施の形態の磁粉探傷装置100−2によって磁粉探傷を行う状況を説明する。
先ず、散布装置23、24が図5(a)に示す側に存在する状態で、駆動装置3によって磁化装置11−2、12−2のヨークYを鋼管Pの一端部から中央部に向けて所定距離だけ移動させる。
【0066】
次に、磁化装置11−2、12−2の磁極R、S、Tに3相交流を通電し、駆動装置3によって図5(a)に示す初期位置から図の矢符(細線)に示す方向(反時計方向)に磁化装置11−2、12−2及び散布装置23、24を移動させながら、散布装置23、24から磁粉液を散布する。なお、図5(a)〜図5(f)において鋼管に付したハッチングは磁粉探傷を終了した部分を示す。
【0067】
そして、図5(b)に示す状態を経て、磁化装置11−2、12−2が鋼管Pの底部に到達する(図5(c))まで、磁極R、S、Tへの通電と、散布装置23、24からの磁粉液の散布とを継続する。この際、鋼管Pの周方向へ沿った磁化装置11−2、12−2の移動速度は、予め実験的に算出した散布された磁粉液の流下速度と略同一となるように設定されており、駆動装置3は設定した移動速度で磁化装置11−2、12−2を鋼管Pの中心軸周りに反時計方向へ回転移動させる。
【0068】
磁化装置11−2、12−2が鋼管Pの底部に到達した後、磁極R、S、Tへの通電と、散布装置23、24からの磁粉液の散布とをいずれも停止し、駆動装置3によって、図5(c)に示す位置から図5(d)に示す原位置に磁化装置11−2、12−2及び散布装置23、24を復帰させる。
【0069】
ここで、本実施の形態では、磁化装置11−2、12−2が鋼管Pの頂部の原位置に復帰した後、磁化装置11−2、12−2のヨークYを鋼管Pの端部から離間した位置まで退避させる。
【0070】
そして、鋼管Pをその中心軸を回転軸として180度回転させる。回転させる手段は特に限定を要するものではなく、公知の手段を適宜用いることができる。
鋼管Pの180°の回転を完了した後、退避させた磁化装置11−2、12−2のヨークYを鋼管Pの一端部から中央部に向けて所定距離だけ移動させる(図5(d)参照)。
【0071】
そして、磁化装置11−2、12−2の磁極R、S、Tに3相交流を通電し、駆動装置3によって図5(d)に示す位置から図の矢符(細線)に示す方向(時計方向)に磁化装置11−2、12−2及び散布装置23、24を移動させながら、散布装置23、24から磁粉液を散布する。そして、図5(e)に示す状態を経て、磁化装置11−2、12−2が鋼管Pの底部に到達する(図5(f))まで、磁極R、S、Tへの通電と、散布装置23、24からの磁粉液の散布とを継続する。前述したのと同様に、この際の磁化装置11−2、12−2の移動速度は、散布された磁粉液の流下速度と略同一となるように設定されており、駆動装置3は、駆動装置3は設定した移動速度で磁化装置11−2、12−2を鋼管Pの中心軸周りに時計方向へ移動させる。
【0072】
磁化装置11−2、12−2が鋼管Pの底部に到達した後、駆動装置3によって磁化装置11−2、12−2のヨークYを鋼管Pの端部から離間した位置まで移動させる。そして、その状態で或いは鋼管Pを別の場所まで搬送した後、鋼管Pの内面及び外面について欠陥によって生じた磁粉模様を目視観察することによって、鋼管Pの内面及び外面における欠陥を検出する。
【0073】
本実施の形態によれば、磁化装置11−2、12−2の構造を簡素化できるので、設備コストの上昇をできるだけ抑制することができるとともに、鋼管Pの全周に同一の散布装置23、24により磁粉液を塗布することができるために鋼管Pの探傷精度の周方向のばらつきをさらに抑制することができる。
【実施例】
【0074】
さらに、本発明を実施例を参照しながら、より具体的に説明する。
外径244.5mm、肉厚13.84mmの鋼管(普通鋼)の端部外面の所定位置(鋼管の端面から軸方向に100mm内側で頂部から周方向に90°の位置、200mm内側で頂部から周方向に45°、90°、135°の位置、300mm内側で頂部から周方向に90°の位置)計5箇所にそれぞれA型標準試験片A1−30/100(円)を貼り付けた。
【0075】
そして、図1〜図3を参照して説明した磁粉探傷装置100を用い、散布された磁粉液の流れる方向と同一方向に磁化装置21A〜22Bを移動させるとともに、磁化装置21A〜22Bの移動速度を適宜変更して、各移動速度について得られた試験片の磁粉模様を観察した。なお、磁粉液としては濃度0.3ml/100mlのマークッテック(株)製LY−11を用いた。
【0076】
図6に、磁粉模様の観察結果をまとめて示す。図6(a)に示す表中に図示されたパターンが、前述した各位置(図6(b)参照)においてそれぞれ観察された試験片の磁粉模様である。ここで、図6(a)の(1)の欄に示すパターンは磁化装置21A〜22Bの周方向の移動速度を約82mm/秒とした場合、(2)の欄に示すパターンは70mm/秒とした場合、(3)の欄に示すパターンは約64mm/秒とした場合にそれぞれ観察された磁粉模様である。なお、磁化装置21A〜22Bの周方向の移動速度を約64mm/秒とした場合に、各位置において散布された直後の磁粉液の流速が磁化装置21A〜22Bの移動速度と略同一になることを目視により確認した。
【0077】
図6(a)に示すように、散布された直後の磁粉液の流速が磁化装置21A〜22Bの移動速度と略同一になるに従って、全ての位置で明瞭な磁粉模様を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1(a)〜図1(f)は、第1の実施の形態に係る磁粉探傷装置を用いて鋼管の内面及び外面の磁粉探傷を行う状況を経時的に示す説明図である。
【図2】図1のA−A矢視拡大図である。
【図3】図2に示す内面磁化用の磁化装置を構成する磁極の配列を示す平面図である。
【図4】図4(a)〜図4(f)は、第2の実施の形態に係る磁粉探傷装置を用いて鋼管の内面及び外面の磁粉探傷を行う状況を経時的に示す説明図である。
【図5】図5(a)〜図5(f)は、第3の実施の形態に係る磁粉探傷装置を用いて鋼管の内面及び外面の磁粉探傷を行う状況を経時的に示す説明図である。
【図6】本発明の実施例において得られた磁粉模様の観察結果を示す。
【符号の説明】
【0079】
11,12・・・磁化装置
21A,21B,22A,22B・・・散布装置
3・・・駆動機構
100・・・磁粉探傷装置
P・・・鋼管(被検査材)
R,S,T・・・磁極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略水平に配置される管状の被検査材の内面及び/又は外面に磁粉液を散布するとともに、前記内面及び/又は外面に沿って前記被検査材の中心軸周りに移動する回転磁界を該内面及び/又は外面に作用させることによって磁粉探傷を行う際に、
前記回転磁界の移動は、前記内面及び/又は外面の上部から下部への方向へ向けて、行われること
を特徴とする磁粉探傷方法。
【請求項2】
略水平に配置される管状の被検査材の内面及び/又は外面に磁粉液を散布するとともに、前記内面及び/又は外面に沿って前記被検査材の中心軸周りに移動する回転磁界を該内面及び/又は外面に作用させることによって磁粉探傷を行う際に、
前記回転磁界の移動は、前記内面及び/又は外面に散布される磁粉液が該内面及び/又は外面に沿って流下する方向と同じ方向へ向けて、行われること
を特徴とする磁粉探傷方法。
【請求項3】
前記回転磁界の移動の速度は、前記散布される磁粉液が前記内面及び/又は外面に沿って流下する速度と略同一であること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載された磁粉探傷方法。
【請求項4】
前記磁粉液は、前記回転磁界の移動の方向の前側又は該回転磁界の直下へ散布されること
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された磁粉探傷方法。
【請求項5】
前記回転磁界の移動の速度、及び/又は、前記磁粉液の散布量は、前記被検査材の径に応じて変更されること
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された磁粉探傷方法。
【請求項6】
略水平に配置される管状の被検査材の内面及び/又は外面に回転磁界を作用させるための磁化装置と、
前記被検査材の内面及び/又は外面に磁粉液を散布するための散布装置と、
前記磁化装置及び前記散布装置を前記被検査材の内面及び/又は外面に沿って前記被検査材の中心軸周りに一体的に移動させるための駆動装置とを備え、
該駆動装置は、探傷時の前記磁化装置及び前記散布装置を、前記内面及び/又は外面の上部から下部への方向へ向けて、移動させること
を特徴とする磁粉探傷装置。
【請求項7】
略水平に配置される管状の被検査材の内面及び/又は外面に回転磁界を作用させるための磁化装置と、
前記被検査材の内面及び/又は外面に磁粉液を散布するための散布装置と、
前記磁化装置及び前記散布装置を前記被検査材の内面及び/又は外面に沿って前記被検査材の中心軸周りに一体的に移動させるための駆動装置とを備え、
該駆動装置は、探傷時の前記磁化装置及び前記散布装置を、前記内面及び/又は外面に散布される磁粉液が該内面及び/又は外面に沿って流下する方向と同じ方向へ向けて、移動させること
を特徴とする磁粉探傷装置。
【請求項8】
前記駆動装置は、探傷時の前記磁化装置及び前記散布装置を、前記散布される磁粉液が前記内面及び/又は外面に沿って流下する速度と略同じ速度で、移動させること
を特徴とする請求項6又は請求項7に記載された磁粉探傷装置。
【請求項9】
前記散布装置は、前記磁化装置の移動方向の前後両側にそれぞれ配置されること
を特徴とする請求項6から請求項8までのいずれか1項に記載された磁粉探傷装置。
【請求項10】
前記散布装置は、前記磁化装置の移動方向の前側又は後側に配置されること
を特徴とする請求項6から請求項8までのいずれか1項に記載された磁粉探傷装置。
【請求項11】
前記散布装置は、前記前側の配置位置、又は前記後側の配置位置のいずれかに可変に配置されること
を特徴とする請求項10に記載された磁粉探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−119122(P2006−119122A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−241253(P2005−241253)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】