説明

磨耗特性を改善する添加剤および潤滑剤調合物

【課題】 潤滑面、可動部環の磨耗を低減させる方法、潤滑剤、および磨耗低減剤を含む潤滑剤濃縮物。
【解決手段】 当該潤滑面には、炭化水素に可溶なチタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、ならびに、チタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、およびマグネシウム化合物を欠いている潤滑剤組成物の場合の表面の磨耗の減少よりも、さらに表面の磨耗を低減させるのに効果的な量の、少なくとも一つの炭化水素に可溶なマグネシウム化合物と、潤滑粘性の基油とが含有される。この潤滑剤組成物には約800ppm以下のリンが含有され、またこれはカルシウム洗浄剤および有機モリブデン化合物を欠いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の実施例は、炭化水素に可溶なチタンおよびマグネシウム添加剤の組み合わせ、および潤滑剤調合物、特にリン含有量の低減された添加剤を含有する調合物の耐摩耗性を向上させるための、そのようなチタンおよびマグネシウム添加剤の潤滑調合物中での用法に関連する。
【背景技術】
【0002】
次世代の乗用車のモーターオイルおよびヘビーデューティーディーゼルエンジンオイルの分野では、より厳しい公害防止装置の汚染を低減するため、リンおよび硫黄レベルの低減された調合物中で、同等の耐摩耗性が必要とされている。硫黄およびリンを含有した添加剤が、完成したオイルに耐摩耗性をもたらすこと、しかしまた公害防止装置の効果を害するかさもなければ低減させることがよく知られている。
【0003】
ジンクアルキルジチオホスフェート(Zn DDPs)は長年にわたり潤滑油中で使用されている。Zn DDPはまた、優れた耐摩耗性を有し、Seq IVAやTU3磨耗試験などのようなカムの磨耗試験に合格するために使用されてきた。これらのすべてが参照することにより完全なものとして本明細書に組み込まれている特許文献1、2、および3を含む多くの特許が、Zn DDPの生成および用途に取り組んでいる。
【0004】
硫黄を含有した耐磨耗剤もまたよく知られており、ジヒドロカルビルポリスルフィド;硫化オレフィン;天然起源および合成起源の両方の硫化脂肪酸エステル;トリチオン;硫化チエニル誘導体;硫化テルペン;硫化ポリイン;硫化ディールス・アルダー付加物、その他が含まれる。具体例としては、硫化イソブチレン、硫化ジイソブチレン、硫化トリイソブチレン、ジシクロヘキシルポリスルフィド、ジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジノニルポリスルフィド、そして中でもジ−t−ブチルトリスルフィド、ジ−t−ブチルテトラスルフィドテトラスルフィド、およびジ−t−ブチルペンタスルフィドの混合物などのような、ジ−t−ブチルポリスルフィドの混合物などが挙げられる。上記のうち、硫化オレフィンは多くの用途に使用される。硫化オレフィンの生成方法は、特許文献4、5、6、7、8、および9に記載されている。特許文献10に記載の硫化オレフィン誘導体もまた有用である。その他の硫黄含有耐磨耗剤については、特許文献11、12、および13に記載されている。
【特許文献1】米国特許第4,904,401号
【特許文献2】米国特許第4,957,649号
【特許文献3】米国特許第6,114,288号
【特許文献4】米国特許第2,995,569号
【特許文献5】米国特許第3,673,090号
【特許文献6】米国特許第3,703,504号
【特許文献7】米国特許第3,703,505号
【特許文献8】米国特許第3,796,661号
【特許文献9】米国特許第3,873,454号
【特許文献10】米国特許第4,654,156号
【特許文献11】米国特許第4,857,214号
【特許文献12】米国特許第5,242,613号
【特許文献13】米国特許第6,096,691号
【発明の開示】
【0005】
優れた耐摩耗性を提供し、また自動車やディーゼルエンジンのために使用される公害防止装置との相性のよい潤滑剤が必要とされている。
【0006】
上述の事項を考慮して、本明細書に開示された例示的実施例は、潤滑面、可動部間の磨耗を減少させる方法、潤滑剤、および磨耗減少剤を含んだ潤滑剤濃縮物を提供している。この潤滑面は、潤滑粘性の基油、炭化水素に可溶なチタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、そしてチタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、およびチタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤及びマグネシウム化合物を欠いている潤滑剤組成物による表面の磨耗の減少よりも、さらに表面の磨耗を低減させるのに効果的な量の、少なくとも一つの炭化水素に可溶なマグネシウム化合物を含有している。この潤滑剤組成物は、約800ppm以下のリンを含有し、またカルシウム洗浄剤および有機モリブデン化合物を欠いている。
【0007】
一つの例示的実施例では、可動部を有する車が提供されるが、当該の車は可動部を潤滑する潤滑剤を含んでいる。この潤滑剤は、炭化水素に可溶なチタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、ならびにチタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、およびマグネシウム化合物を欠いている潤滑剤組成物の場合の表面の磨耗の減少よりも、さらに表面の磨耗を低減させるのに効果的な量の少なくとも一つの炭化水素に可溶なマグネシウム化合物の組み合わせを提供する量の耐磨耗剤、ならびに潤滑粘性のオイルである。この潤滑剤組成物は、約800ppm以下のリンを含有し、またカルシウム洗浄剤および有機モリブデン化合物を欠いている。
【0008】
また別の実施例では、炭化水素に可溶なチタン含有化合物、金属を含まない摩擦調整剤、ならびにチタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、およびマグネシウム化合物を欠いている潤滑剤組成物の場合の表面の磨耗の減少よりも、さらに表面の磨耗を低減させるのに効果的な量の、少なくとも一つの炭化水素に可溶なマグネシウム化合物の組み合わせにより提供された一定量の耐磨耗剤と潤滑粘性の基油成分とを含有する、完全に調合された潤滑剤組成物が提供される。この潤滑剤組成物は、約800ppm以下のリンを含有し、またカルシウム洗浄剤および有機モリブデン化合物を欠いている。
【0009】
本開示のさらなる実施例では、潤滑剤組成物に改善された耐摩耗性をもたらすための潤滑剤濃縮物が提供される。この濃縮物は実質的にカルシウムおよびモリブデンを欠いており、またヒドロカルビル担体液と、約10ppmから約500ppmのチタンと約120ppmから約2000ppmのマグネシウムとを、濃縮物を含有する潤滑剤組成物にもたらすのに十分な炭化水素に可溶なチタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、および炭化水素に可溶なマグネシウム化合物との、相乗的な量の組み合わせを含んでいる。
【0010】
上記に簡単に説明されているように、本開示の実施例は、潤滑剤組成物の耐摩耗性を著しく改善し、それによって同等の耐摩耗性を得るのに必要とされる耐磨耗剤中のリンおよび硫黄の量を減少させることのできる、炭化水素に可溶なチタン化合物と、金属を含まない摩擦調整剤と、炭化水素に可溶なマグネシウム化合物との組み合わせを含む耐摩耗剤を提供する。この添加剤は、表面の磨耗を減少させるために表面に塗布する油性の流体と混合されることがある。その他の用途では、この添加剤は完全に調合された潤滑剤組成物中に提供される。当該添加剤は特に、現在提案されている乗用車のモーターオイル用のGF−4規準、およびヘビーデューティーディーゼルエンジンオイル用のPC−10規準を満たすことを目的としている。
【0011】
本明細書に記載の組成物および方法は、自動車の公害防止装置の汚染を低減するために特に適しており、また一方で当該組成物は、潤滑剤調合物中の耐磨耗剤の性能を改善するのに適している。本明細書に記載の組成物および方法のその他の特徴および利点は、本明細書に記載の実施例を限定することなくその態様を例示することを目的とした、以下の詳細な説明を参照することで明らかになる。
【0012】
前述の概要および以下の詳しい説明は、共に例示および説明のみを目的としたものであり、開示・請求された実施例のさらなる説明を提供することが意図されたものであると理解される。
【実施例】
【0013】
一つの実施例では、潤滑油組成物中の成分として有用な、マグネシウム化合物、チタン化合物、および金属を含まない摩擦調整剤の組み合わせが紹介されマグネシウム化合物は、マグネシウムスルホネート、マグネシウムフェネート、サリチル酸マグネシウム、およびそれらの混合物から成るグループから選択された、炭化水素に可溶なマグネシウム化合物を含む。
【0014】
「炭化水素に可溶な」という用語は、マグネシウム化合物と炭化水素材料の反応または錯体形成により、化合物が実質的に炭化水素材料中に懸濁あるいは溶解することを意味する。本明細書中で使用される「炭化水素」という用語は、炭素、水素、および/または酸素を様々な組み合わせで含んでいる、任意の多数の化合物を意味する。
【0015】
「ヒドロカルビル」という用語は、炭素原子が分子の残りの部分に結合しており、また主に炭化水素の特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例には以下のものが含まれる:
(1)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えばアルキルまたはアルケニル)置換基、脂環式(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、また芳香族、脂肪族、および脂環基によって置換された芳香族置換基、また環が分子の別の部分によって完成されている(例えば二つの置換基が一緒になって脂環式ラジカルを形成している)ような環状置換基;
(2)置換された炭化水素置換基、すなわち、本発明の状況下で、主に炭化水素である置換基を変化させないような、非炭化水素基(例えばハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ)を含んだ置換基;
(3)ヘテロ置換基、すなわち、主に本発明の状況下で、主に炭化水素の特性を有しながら、そうでなければ炭素原子から成る環または鎖の中に炭素以外の原子を含んでいるような置換基。ヘテロ原子には硫黄、酸素、および窒素があり、またピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基が含まれる。通常、ヒドロカルビル基中、炭素原子10個につき二つ以下、一般的には一つ以下の非炭化水素置換基が存在する。一般的にヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は存在しない。
【0016】
マグネシウム化合物は、望ましくは、超過量のマグネシウム陽イオンを含有する、塩基性あるいは過塩基性のマグネシウム塩である。通常、塩基性あるいは過塩基性の塩の金属比は約40以下、より具体的には約2から約30あるいは40までの間である。
【0017】
通常用いられる塩基性(または過塩基性)マグネシウム塩の生成方法には、化学両論的に超過量の金属中和剤を含む酸の鉱油溶液、例えば金属酸化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、硫化物などを、約50℃より上で熱することが含まれる。加えて、超過量の金属の取り込みを促進するため、過塩基化のプロセス中に各種のプロモーターが使用される。これらのプロモーターには、フェノール系の物質、例えばフェノール、ナフトール、アルキルフェノール、チオフェノール、硫化アルキルフェノール、およびホルムアルデヒドとフェノール系物質との様々な縮合生成物;メタノール、2−プロパノール、オクチルアルコール、セロソルブカルビトール、エチレングリコール、ステアリルアルコール、およびシクロヘキシルアルコールなどのようなアルコール;アニリン、フェニレンジアミン、フェノチアジン、フェニル−ベータ−ナフチルアミン、およびドデシルアミンのようなアミンなどの化合物が含まれる。
【0018】
マグネシウム塩が由来する有機酸性化合物は、少なくとも一つの硫黄酸(sulfur acid)、カルボン酸、リン酸、またはフェノールやそれらの混合物である。硫黄酸としては、スルホン酸、チオスルホン酸、スルフィン酸、スルフェン酸、部分的にエステルである硫酸、亜硫酸、およびチオ硫酸などがある。スルホン酸は、炭化水素に可溶なマグネシウム化合物の生成での使用に特に好適である。
【0019】
成分(B)の生成に役立つスルホン酸には、以下の式で表されるものがある:
T(SOH) (I)
および
(SOH) (II)
これらの式中で、Rは、脂肪族化合物あるいは脂肪族置換の脂環式炭化水素であるか、または本質的にアセチレン不飽和のない、炭素数が約60以下の炭化水素基である。Rが脂肪族化合物である場合、その炭素数は通常少なくとも約15であり、脂肪族置換の脂環基である場合は、この脂肪族置換基の炭素数は合計で少なくとも約12である。Rの例としては、アルキル、アルケニル、アルコキシアルキルラジカル、および脂肪族置換の脂環基などがあり、このとき当該脂肪族置換基は、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、カルボキシアルキル等である。通常脂環核は、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセンあるいはシクロペンテンのようなシクロアルカンまたはシクロアルケンから得られる。Rの具体例として、セチルシクロヘキシル、ラウリルシクロヘキシル、セチルオキシエチル、オクタデセニル、および石油、飽和および不飽和のパラフィンワックス、また、各オレフィンモノマーユニットに付き2から8の炭素を含む、重合モノオレフィンおよびジオレフィンを含んだオレフィンポリマーから得られる基が挙げられる。Rにはまた、フェニル、シクロアルキル、ヒドロキシ、メルカプト、ハロ、ニトロ、アミノ、ニトロソ、低級アルコキシ、低級アルキルメルカプト、カルボキシ、カルバルコキシ、オキソ、チオ、または、本質的に炭化水素の特性が損なわれさえしなければ−NH−、−O−あるいは−S−のような遮断(interrupting)基などの他の置換基も含まれる。
【0020】
式IのRは通常炭化水素であるか、あるいは本質的にアセチレン性不飽和がなく、約4から約60の脂肪族炭素原子を含む、例えばアルキルやアルケニルのような脂肪族炭化水素基である。しかしながらこの化合物には、置換基や、本質的に炭化水素の特性が損なわれないという条件下で、上記に列挙された遮断基が含まれる。通常、RまたはR中に存在する炭素以外の原子が、いずれも総重量の10%以上を占めることはない。
【0021】
上記の式中、Tはベンゼン、ナフタレン、アントラセン、あるいはビフェニルなどのような芳香族炭化水素、またはピリジン、インドール、あるいはイソインドールのような複素環式化合物から得られる環状核である。通常Tは芳香族炭化水素の核、特にベンゼンまたはナフタレンの核である。
【0022】
上記の式中の下付き文字xは、少なくとも1、通常は1から3の間である。下付き文字rおよびyは、各分子につき平均約1から2の間、通常は1である。
【0023】
当該のスルホン酸は通常、石油スルホン酸あるいは合成的に生成されたアルカリールスルホン酸である。石油スルホン酸の中で最も有用なものは、適切な石油の一フラクションをスルホン化し、続いて酸性スラッジを除去し、精製することによって生成されたものである。合成アルカリールスルホン酸は、通常ベンゼンとテトラプロピレンのようなポリマーとのフリーデル・クラフツ反応の生成物のようなアルキル化ベンゼンから生成される。以下に挙げるのは、本明細書に記載の水素に可溶なマグネシウム化合物の生成に役立つスルホン酸の具体例である。このようなスルホン酸には、マホガニースルホン酸、ブライトストックスルホン酸、ペトロラタムスルホン酸、モノおよびポリワックス置換ナフタレンスルホン酸、セチルクロロベンゼンスルホン酸、セチルフェノールスルホン酸、セチルフェノールジスルフィドスルホン酸、セトキシカプリルベンゼンスルホン酸、ジセチルチアントレンスルホン酸、ジラウリル・ベータナフトールスルホン酸、ジカプリルニトロナフタレンスルホン酸、飽和パラフィンワックススルホン酸、不飽和パラフィンワックススルホン酸、ヒドロキシ置換パラフィンワックススルホン酸、テトラ−イソブチレンスルホン酸、テトラアミレンスルホン酸、クロロ置換パラフィンワックススルホン酸、ニトロソ置換パラフィンワックススルホン酸、石油ナフテンスルホン酸、セチルシクロペンチルスルホン酸、ラウリルシクロヘキシルスルホン酸、モノおよびポリワックス置換シクロヘキシルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、「二量体アルレート(dimer alkylate)」スルホン酸等が含まれるが、これらに限定はされない。
【0024】
ドデシルベンゼン「ボトム」スルホン酸を含み、アルキル基の炭素数が少なくとも8であるアルキル置換ベンゼンスルホン酸が、特に有用である。ドデシルベンゼン「ボトム」スルホン酸とは、ベンゼンリングに1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の分岐鎖C12置換基を取り込むために、プロピレン四量体、あるいはイソブテン三量体でアルキル化されたベンゼンから得られる酸のことである。主としてモノおよびジドデシルベンゼンの混合物であるドデシルベンゼンボトムは、家庭用洗剤の生成の副産物として入手することができる。線状アルキルスルホン酸塩(LAS)の生成中に形成されるアルキル化ボトム(alkylation bottom)から得られる同様の生成物もまた、本明細書に記載のスルホン酸塩の生成に有用である。
【0025】
炭化水素に可溶なマグネシウム化合物の生成に適したカルボン酸として、脂肪族、脂環式および芳香族のモノおよびポリ塩基性の、アセチレン不飽和のないカルボン酸を含み、これらにはナフテン酸、アルキル置換またはアルケニル置換のシクロペンタン酸、アルキル置換またはアルケニル置換のシクロヘキサン酸およびアルキル置換またはアルケニル置換の芳香族カルボン酸が含まれる。脂肪族酸には通常、約8から約50、望ましくは約12から約25の炭素原子が含まれる。脂環式および脂肪族のカルボン酸は特に好適であり、飽和でも不飽和でもよい。具体例には、2−エチルヘキサン酸、リノレン酸、プロピレン四量体置換のマレイン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、ラウリン酸、オレイン酸、リシノール酸、ウンデシル酸、ジオクチルシクロペンタンカルボン酸、ミリスチン酸、ジラウリルデカヒドロナフタレン−カルボン酸、ステアリル−オクタヒドロインデンカルボン酸、パルミチン酸、アルキルおよびアルケニルコハク酸、ペトロラタムまたは炭化水素ワックスの酸化により形成された酸、およびトールオイル酸、樹脂酸、等のような二つ以上のカルボン酸の市販の混合物が含まれる。
【0026】
また、炭化水素に可溶なマグネシウム化合物は、フェノール、つまり芳香環に直接結合したヒドロキシル基を含む化合物から生成されることもある。本明細書で使用される「フェノール」という用語には、カテコール、レゾルシノール、およびヒドロキノンのような、芳香環に一つ以上のヒドロキシ基が結合している化合物が含まれる。また、クレゾールやエチルフェノールのようなアルキルフェノール、およびアルケニルフェノールもこれに含まれる。ヘプチルフェノール、オクチルフェノール、ドデシルフェノール、テトラプロペン−アルキル化フェノール、オクタデシルフェノール、およびポリブテニルフェノールなどのような、炭素数が約3から100、特に約6から50の間であるアルキル置換基を含んだフェノールは特に好適である。一つを超える以上のアルキル置換基を含んだフェノールが使用されることもあるが、モノアルキルフェノールの方が、入手しやすくまた生成も容易であるため、より好適である。
【0027】
上述のフェノールと、少なくとも一つの低級アルデヒドあるいはケトンとの縮合生成物もまた有用である。ここで「低級」という用語はアルデヒドやケトンに含まれる炭素数が7以下であることを意味している。好適なアルデヒドとして、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、およびベンズアルデヒドが挙げられる。パラホルムアルデヒド、トリオキサン、メチロール、メチルフォルムセル(formcel)、およびパラアルデヒドのような、アルデヒドを生成する試薬もまた好適である。
【0028】
例示的実施例の潤滑剤に含まれる炭化水素に可溶なマグネシウム化合物の量もまた様々であり、特定の潤滑油組成物中で有用な量は、当技術分野に精通した技術者により容易に決定される。本明細書に記載の潤滑剤中に含まれるマグネシウム化合物の量は、潤滑剤の総重量を基にして、約0.15重量%から約2.0重量%である。オイル組成物中に含まれるマグネシウム化合物の量は、目的となる耐磨耗性をもたらすのに十分な量である。
【0029】
本明細書で開示された潤滑油組成物について、摩擦低減および/または極圧特性、および/または抗酸化性、および/または耐摩耗性を有する、炭化水素に可溶な任意のチタン化合物が潤滑油組成物中で使用されることがある。
【0030】
例えば磨耗低減剤、摩擦調整剤、極圧添加剤、または抗酸化剤としての仕様に適した、炭化水素に可溶なチタン化合物は、チタンアルコキシドと約Cから約C25のカルボン酸との反応性生物によってもたらされる。この反応生成物は以下の化学式で表されることがある:
【0031】
【化1】

式中、nは2、3、および4の中から選ばれた整数であり、Rは炭素数が約5から約24のヒドロカルビル基である。またこの反応生成物は次の化学式で表されることもある:
【0032】
【化2】

式中R、R、R、およびRはそれぞれに、同一のものあるいは異なったものであり、炭素数が約5から約25のヒドロカルビル基の中から選択される。上述の組成物中の化合物は実質的にリンおよびイオウを欠いている。
【0033】
ある実施例では、炭化水素に可溶なチタン化合物を含む潤滑剤あるいは調合された潤滑剤パッケージのイオウ含有量が約0.7重量%以下、またリン含有量が約0.12重量%以下というように、炭化水素に可溶なチタン化合物は実質的あるいは本質的にイオウおよびリン原子を欠いているあるいはそれらを含有していない。
【0034】
別の実施例では、この炭化水素に可溶なチタン化合物は、実質的に活性イオウを含有していないことがある。「活性」イオウとは完全に酸化されていないイオウのことをいう。活性イオウはさらに酸化されることで、使用時にオイル中でより酸性となる。
【0035】
また別の実施例では、炭化水素に可溶なチタン化合物は実質的にすべてのイオウを含まない。さらなる実施例では、炭化水素に可溶なチタン化合物は実質的にすべてのリンを含まない。またさらなる実施例では、炭化水素に可溶なチタン化合物は、実質的にすべてのイオウおよびリンを含まない。例えば、その中にチタン化合物が溶解していることのある基油には、一つの実施例では約0.5重量%未満、また別の実施例では約0.03重量%以下というように、比較的少量のイオウが含まれていることもあり(例えばグループIIの基油)、またさらに別の実施例では、イオウおよび/またはリンの量は、基油中で完成したオイルが、モーターオイルのイオウおよび/またはリンの、所定の時間実施される適切な仕様を満たすことを可能にするだけの量に限定されている。
【0036】
チタン/カルボン酸の生成物の例としては、本質的にカプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸等からなる群の中から選ばれた酸とチタンとの反応生成物が挙げられるが、これらに限定はされない。このようなチタン/カルボン酸の生成物の生成方法は、その記述が参照することによって本明細書に組み込まれている、例えば米国特許第5,260,466号に記載されている。
【0037】
以下の例は実施例の態様を例示することを目的としたものであり、実施例をいかようにも制限することを意図したものではない。
【0038】
(例1)
ネオデカン酸チタンの合成
ネオデカン酸(約600グラム)を、コンデンサー、ディーンスタークトラップ、温度計、熱電対、およびガスの注入口を備えた反応容器に入れた。酸の中に窒素バブルを入れた。激しくかくはんしながら、チタンイソプロポキシド(約245グラム)をゆっくりと反応容器に加えた。この反応物を約140℃まで加熱し、1時間かくはんした。反応により得られたオーバーヘッドと凝縮物をトラップ内に収集した。反応容器を減圧し、反応物質をさらに2時間、反応が完了するまでかくはんした。生成物の分析により、当生成物の100℃での運動学的粘性が約14.3cSt、またチタン含有量が約6.4重量パーセントであることが示された。
【0039】
(例2)
オレイン酸チタンの合成
オレイン酸(約489グラム)を、コンデンサー、ディーンスタークトラップ、温度計、熱電対、およびガスの注入口を備えた反応容器に入れた。酸の中に窒素バブルを入れた。激しくかくはんしながら、チタンイソプロポキシド(約122.7グラム)をゆっくりと反応容器に加えた。この反応物を約140℃まで加熱し、1時間かくはんした。反応により得られたオーバーヘッドと凝縮物をトラップ内に収集した。反応容器を減圧し、反応物質をさらに2時間、反応が完了するまでかくはんした。生成物の分析により、当生成物の100℃での運動学的粘性が約7.0cSt、またチタン含有量が約3.8重量パーセントであることが示された。
【0040】
本明細書に記載の実施例の炭化水素に可溶なチタン化合物は、潤滑剤組成物中に効果的に組み込まれている。従ってこの炭化水素に可溶なチタン化合物を、潤滑油組成物に直接加えることができる。しかしながら一つの実施例では、炭化水素に可溶なチタン化合物は、鉱油、合成油(例えばジカルボン酸のエステル)、ナフサ、アルキル化(例えばC10−C13のアルキル)ベンゼン、トルエン、またはキシレンのような、実質的に不活性で通常は液体である有機希釈剤によって希釈され、金属添加剤濃縮物を形成する。チタン系添加剤濃縮物には通常、約0重量%から約99重量%の希釈油が含有されている。
【0041】
開示された実施例の潤滑組成物には、少なくとも10ppmのチタンを組成物に提供するだけの量のチタン化合物が含有される。例えばチタン化合物から得られる少なくとも10ppmのチタンは、単独で、あるいは窒素を含有する摩擦調整剤、有機ポリスルフィド摩擦調整剤、アミンを含まない摩擦調整剤、および/または有機無灰の窒素を含有しない摩擦調整剤などの中から選ばれる、第二の摩擦調製剤との組み合わせによって摩擦を調製する効果があることが分かっている。
【0042】
望ましくは、チタン化合物から得られたチタンが、潤滑剤組成物の総重量に基づき、例えば10ppmから1000ppm、より望ましくは約50ppmから約500ppm、またさらに望ましくは約75ppmから約250ppmというように、約10ppmから約1500ppmの間の量で存在する。このようなチタン化合物はまた、潤滑油組成物に耐摩耗性をもたらすこともあるため、これを使用することによって、使用される金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート耐摩耗剤(例えばZDDP)の量を減少させることができる。業界の動向は、リンの含有量を250ppmから750ppm、あるいは250ppmから500ppmというように1000ppm未満とするために、潤滑油に加えるZDDPの量の減少に向かっている。このようなリン含有量の低い潤滑油組成物に十分な耐摩耗性を提供するためには、少なくとも質量50ppmのチタンを提供できる量のチタン化合物が存在しなくてはならない。チタンおよび/または亜鉛の量は、ASTM D5185に記載の方法により、誘導結合プラズマ(ICP)発光スペクトロスコピーを使用して決定される。
【0043】
同様に、潤滑組成物中でのチタン化合物の使用により、潤滑剤組成物中の抗酸化剤および極圧添加剤の減少が進む。
【0044】
本明細書に記載の潤滑油組成物中に組み込まれることのある油溶性の摩擦調整剤は、金属を含まない摩擦調整剤である。従って、この摩擦調整剤は、窒素を含有した、または窒素を含まない、および/またはアミンを含まない摩擦調整剤の中から選択される。一般的に摩擦調整剤は、潤滑油組成物の総重量の約0.02重量%から約2.0重量%の間の量で使用される。望ましくは0.05重量%から1.0重量%、より望ましくは0.1重量%から0.5重量%の摩擦調整剤が使用される。
【0045】
このような使用される窒素含有摩擦調製剤の例として、イミダゾリン、アミド、アミン、コハク酸イミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、第4級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアナジン(amino guanadine)、アルカノールアミド等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0046】
このような摩擦調整剤には、直鎖、分岐鎖、または芳香族のヒドロカルビル基やそれらの混合物、また飽和あるいは不飽和のヒドロカルビル基の中から選択されたヒドロカルビル基が含まれる。ヒドロカルビル基は主に炭素と水素から成るが、硫黄や酸素などの一つ以上のヘテロ原子が含まれてもよい。好適なヒドロカルビル基の炭素数は12から25であり、飽和でも不飽和でもかまわない。より望ましくは、これらは線状ヒドロカルビル基である。
【0047】
例示的摩擦調整剤として、ポリアミンのアミドが挙げられる。このような化合物は、飽和あるいは不飽和またはその混合である線状のヒドロカルビル基を有し、その炭素数は約12から約25以下である。
【0048】
その他の例示的摩擦調整剤として、アルコキシル化アミンとアルコキシル化エーテルアミンがあるが、アルコキシル化アミンには窒素1モルにつき約2モルのアルキレンオキシドが含まれていることが最も望ましい。このような化合物は、飽和あるいは不飽和またはその混合である線状のヒドロカルビル基を有することができる。これらの炭素数は約12から約25以下であり、ヒドロカルビル鎖中に一つ以上のヘテロ原子が含まれていてもよい。エトキシル化アミンおよびエトキシル化エーテルアミンは、特に好適な窒素含有摩擦調整剤である。アミンおよびアミドは、そのまま、あるいは付加化合物、または酸化ホウ素、ホウ素ハロゲン化物、メタホウ酸塩、ホウ酸、またはホウ酸モノアルキル、ホウ酸ジアルキル、あるいはホウ酸トリアルキルのようなホウ素化合物との反応生成物の形態で使用される。
【0049】
摩擦調整剤として使用される無灰有機ポリスルフィド化合物として、以下の式で表される、二つ以上の隣接した硫黄原子を有する硫黄原子基が分子構造中に存在する、オイルの硫化物、または脂肪あるいはポリオレフィンのような有機化合物がある。
【0050】
【化3】

上記の式中、RおよびRはそれぞれ、直鎖、分岐鎖、脂環式ユニット、あるいは芳香族ユニットがあらゆる組み合わせで選択的に含まれている、直鎖、分岐鎖、脂環式、あるいは芳香族の炭化水素基を表している。不飽和結合が含まれることもあるが、飽和炭化水素基のほうが望ましい。これらの中では、アルキル基、アリル基、アルキルアリル基、ベンジル基、およびアルキルベンジル基が特に好適である。RおよびRはそれぞれ、二つの結合サイトがあり、直鎖、分岐鎖、脂環式ユニット、あるいは芳香族ユニットがあらゆる組み合わせで選択的に含まれている、直鎖、分岐鎖、脂環式、あるいは芳香族の炭化水素基を表している。不飽和結合が含まれることもあるが、飽和炭化水素基のほうが望ましい。これらの中では、アルキレン基が特に好適である。
【0051】
およびRはそれぞれ、二つの結合サイトがあり、直鎖、分岐鎖、脂環式ユニット、あるいは芳香族ユニットがあらゆる組み合わせで選択的に含まれている、直鎖、分岐鎖、脂環式、あるいは芳香族の炭化水素基を表している。不飽和結合が含まれることもあるが、飽和炭化水素基のほうが望ましい。これらの中では、アルキレン基が特に好適である。
【0052】
およびRはそれぞれに、直鎖または分岐鎖の炭化水素基を表している。下付き文字「x」および「y」はそれぞれ2以上の整数を表している。
【0053】
具体的には、例えば特に硫化マッコウクジラ油、硫化ピネン油、硫化大豆油、硫化ポリオレフィン、ジアルキルジスルフィド、ジアルキルポリスルフィド、ジベンジルジスルフィド、ジ−t−ブチルジスルフィド、ポリオレフィンポリスルフィド、およびビス−アルキルポリスルファニルチアジアゾールのようなチアジアゾール系化合物、および硫化フェノールなどについて言及されることがある。これらの化合物の中では、ジアルキルポリスルフィド、ジベンジルジスルフィド、およびチアジアゾール系の化合物が好適である。特に好適なのはビス−アルキルポリスルファニルチアジアゾールである。
【0054】
上述の無灰有機ポリスルフィド化合物(以後簡単に「ポリスルフィド化合物」と記す)は、硫黄(S)として計算された場合、潤滑剤組成物の総量に対して0.01重量%から0.4重量%、一般的には0.1重量%から0.3重量%、また望ましくは0.2重量%から0.3重量%の量で添加される。添加量が0.01重量%以下であると目的とする効果が得にくくなり、また0.4重量%以上であると腐食磨耗が増加する危険がある。
【0055】
本明細書で開示された潤滑油組成物中で使用される、窒素を含まない、有機、無灰(無金属)の摩擦調整剤は一般に知られたものであり、これにはカルボン酸および無水物をアルカノールあるいはグリコールと反応させることによって形成されるエステルが含まれるが、このとき特に好適なカルボン酸は脂肪酸である。その他の有用な摩擦調整剤には、通常、親油性の炭化水素鎖に共有結合した、末端が極性の基(例えばカルボキシル基やヒドロキシル基)が含まれる。カルボン酸および無水物とアルカノールとのエステルは、米国特許第4,702,850号に記載されている。チタン化合物およびマグネシウム化合物と組み合わせて使用するのに特に好適な金属を含まない摩擦調整剤は、グリセロールモノオレエート(GMO)のようなエステルである。
【0056】
上述の摩擦調整剤は、チタン化合物およびマグネシウム化合物と組み合わせて、組成物を確実に高周波往復運動リグ試験(HFRR)にパスさせるのに効果的な量で、本明細書で開示された潤滑油組成物に含まれる。例えば、摩擦調整剤は、平均HFRR磨耗傷を約130平方ミクロン以下とするのに十分な量でチタンおよびマグネシウムを含有した潤滑油組成物に加えられる。一般的に、目的の効果を得るため、摩擦調整剤は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.25重量%から約2.0重量%(AI)の量で添加される。
【0057】
潤滑組成物の生成において、例えばミネラル潤滑油やその他の適切な溶媒などの炭化水素中に、1重量%から99重量%の濃縮物の活性成分の形態で添加剤が、一般的な方法として加えられる。通常これらの濃縮物は、完成した潤滑油、例えばクランクケースモーターオイルの形成の際、添加剤パッケージの重量部として0.05重量部から10重量部の潤滑油と共に加えられる。濃縮物の目的は、もちろん、多様な物質の処理をより簡易に扱いやすくすること、そして最終的な混和物中での溶解または分散を促進することである。
【0058】
上述の炭化水素に可溶なチタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、および炭化水素に可溶なマグネシウム化合物で作られた潤滑剤組成物は、広範囲にわたる用途に使用される。圧縮点火エンジンや火花添加エンジン用では、潤滑剤組成物が公表されたGF−4あるいはAPI−CI−4基準を満たす、あるいは超えることが望ましい。上述のGF−4あるいはAPI−CI−4基準に則った潤滑剤組成物には、完全に組成された潤滑剤を提供するため、基油およびオイル添加剤パッケージが含まれる。本開示に則った潤滑剤の基油は、天然潤滑油、合成潤滑油、およびそれらの混合物の中から選択された、潤滑粘性のオイルである。このような基油には、自動車やトラックのエンジン、船や鉄道のディーゼルエンジン等の火花添加および圧縮点火内燃エンジン用のクランクケース 潤滑油として、従来から使用されていた基油が含まれる。
【0059】
天然油としては、動物油および植物油(例えばヒマシ油やラードオイル)、液体石油、および水素化精製され、溶媒処理あるいは酸処理された、パラフィン系、ナフテン系、およびパラフィン・ナフテン混合系の潤滑油がなどがある。石炭または頁岩から得られる潤滑粘性のオイルもまた有用な基油である。本開示の例示的実施例で使用される合成潤滑油には、これらに限定はされないが、ポリアルファオレフィン、アルキル化芳香族、アルキレンオキシドポリマー、インターポリマー、コポリマー、およびそれらの誘導体などを含んだ、通常使用される多くの合成炭化水素オイルのいずれかが含まれ、このとき末端ヒドロキシル基は、エステル化やエーテル化など、またジカルボン酸とシリコンベースのオイルとのエステルによって修正されている。
【0060】
完全に割合された潤滑剤には、従来より、本明細書で分散剤/阻害剤パッケージまたはDIパッケージと呼ばれ、組成物に必要な特性をもたらす添加剤パッケージが含まれている。好適なDIパッケージについては、例えば米国特許第5,204,012号および6,034,040号に記載されている。添加剤パッケージ中に含まれている添加剤の種類には、分散剤、シール膨張剤、抗酸化剤、消泡剤、潤滑剤、防錆剤、腐食防止剤、解乳化剤、粘度指数向上剤等がある。これらの化合物のうちいくつかは、当技術分野に精通した技術者には周知のものであり、通常、従来の量で、添加剤および本明細書に記載の組成物と共に使用される。
【0061】
分散剤
潤滑剤組成物のもう一つの成分に、ポリアルキレン化合物から得られた少なくとも一つの分散剤がある。このポリアルキレン化合物の数平均分子量は、約400から約5000、あるいはそれ以上である。使用されることのある分散剤には、アミン、アルコール、アミド、またはしばしば架橋基を通してポリマーの骨格に結合したエステルの極性部分などがあるが、これらに限定はされない。分散剤は、例えば米国特許第3,697,574号や3,736,357号に記載のマンニッヒ分散剤;米国特許第4,234,435号および4,636,322号に記載の無灰コハク酸イミド分散剤;米国特許第3,219,666号、3,565,804号、および5,633,326号に記載のアミン分散剤;米国特許第5,936,041号、5,643,859号、および5,627,259号に記載のコッホ分散剤、また米国特許第5,851,965号、5,853,434号、および5,792,729号に記載のポリアルキレンコハク酸イミド分散剤などの中から選択される。
【0062】
得に好適な分散剤は、ポリイソブテン(PIB)化合物から得られたポリアルキレンコハク酸イミド分散剤である。この分散剤は、数平均分子量が約800から約3000で、反応性PIBの含有量が約50%から約60%であるような分散剤の混合物であってもよい。潤滑剤組成物中の分散剤の総量は、潤滑剤組成物の総重量の約1重量パーセントから約10重量パーセントである。
【0063】
耐磨耗剤
金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート耐磨耗剤が、チタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、およびマグネシウム化合物との組み合わせで、例示的実施例に則った潤滑油組成物に添加されてもよい。このような耐磨耗剤はジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩から成り、このとき金属はアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属、またはアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、または亜鉛などである。潤滑油中で最も一般的に使用されるのは亜鉛塩である。
【0064】
ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩は、周知の技術に基づき、まず通常は一つ以上のアルコールあるいはフェノールとPを反応させることによってジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を形成し、次に形成されたDDPAを金属化合物で中和させて製造される。例えば、ジチオリン酸は第1級アルコールと第2級アルコールの混合物を反応させることによって作られる。一方複数のジチオリン酸が製造され、片方のヒドロカルビル基の特性が完全に第2級のものであり、もう片方のヒドロカルビル基の特性が完全に第1級のものとなることもある。金属塩を作るためにどの塩基性あるいは中性の金属化合物を使用してもかまわないが、酸化物、水酸化物、および炭酸塩が最も一般的に使用される。市販の添加剤には、中和反応において超過量の塩基性金属化合物が使用されるため、しばしば超過量の金属が含有されている。
【0065】
一般的に使用されるジンクジヒドロカルビルジチオホスフェート(ZDDP)は、ジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性の塩であり、以下の式で表される。
【0066】
【化4】

式中RおよびRは、炭素数が1から18、一般的には2から12であり、アルキルラジカル、アルケニルラジカル、アリルラジカル、アリルアルキルラジカル、アルカリルラジカル、および脂環式ラジカルなどのラジカルを含んだ、同一のあるいは別々のヒドロカルビルラジカルである。RおよびRとして特に望ましいのは、炭素数が2から8のアルキル基である。従ってこのラジカルは、例えばエチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、アミル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2−エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルなどである。油溶性を得るためのジチオリン酸中の炭素原子の総数(すなわちRおよびR)は、通常5以上である。従ってジンクジヒドロカルビルジチオホスフェートは、ジンクジアルキルジチオホスフェートを含むことができる。
【0067】
ZDDPによって潤滑油組成物に導入されるリンの量を0.1重量%(1000ppm)以下に制限するため、ZDDPは望ましくは潤滑油組成物の総重量に基づき約1.1−1.3重量%以下の量で潤滑油組成物中に添加されるべきである。
【0068】
その他の添加剤もまた本明細書で開示された潤滑油組成物中に存在してよい。
【0069】
粘度調整剤
粘度調整剤(VM)は、潤滑油に高温および低温での操作性を与えるために機能する。使用されるVMは、単一機能性であっても多機能性であってもよい。
【0070】
分散剤としても機能する、多機能性の粘度調整剤もまた知られている。好適な粘度調整剤には、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンのコポリマー、高級アルファオレフィン、ポリメタクリレート、ポリアルキルメタクリレート、メタクリレートコポリマー、不飽和ジカルボン酸とビニル化合物とのコポリマー、スチレンとアクリルエステルのインターポリマー、および部分的に水素化されたスチレン/イソプレンコポリマー、スチレン/ブタジエン、およびイソプレン/ブタジエン、また部分的に水素化されたブタジエンとイソプレンとイソプレン/ジビニルベンゼンのホモポリマーなどがある。
【0071】
酸化防止剤
酸化防止剤または抗酸化剤は、ベースストックの使用中に悪化する傾向を低減させるが、この劣化は金属表面上のスラッジやワニス状の堆積物のような酸化生成物、および粘度の増加によって証明できる。このような酸化防止剤には、ヒンダードフェノール、CからC12のアルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、カルシウムノニルフェノールスルフィド、無灰油溶性フェネートおよび硫化フェネート、ホスホ硫化あるいは硫化炭化水素、リン酸エステル、金属チオカルバメート、および米国特許第4,867,890号に記載の油溶性銅化合物などが含まれる。
【0072】
防錆剤
非硫黄ン性ポリオキシアルキレンポリオールとそのエステル、ポリオキシアルキレンフェノール、および陰イオン性アルキルスルホン酸からなるグループから選択された防錆剤が使用されることもある。
【0073】
腐食防止剤
銅および鉛を含んだ腐食防止剤が使用されることもあるが、通常は開示された実施例の組成物に必要とされてはいない。一般にこのような化合物は、炭素数が5から50のチアジアゾールポリスルフィド、それらの誘導体、およびそれらのポリマーなどである。米国特許第2,719,125号、2,719,126号、および3,087,932号に記載されているような、1,3,4チアジアゾールの誘導体が一般的である。その他の同様な物質について、米国特許第3,821,236号、3,904,537号、4,097,387号、4,107,059号、4,136,043号、4,188,299号、および4,193,882号に記載されている。その他の添加剤に、英国特許出願公開明細書第1,560,830号に記載されているような、チアジアゾールのチオおよびポリチオスルフェンアミドがある。ベンゾトリアゾール誘導体もまたこの種の添加剤に含まれる。これらの化合物は、潤滑組成物中に含まれると場合、通常活性成分が0.2重量%を超えない量で存在する。
【0074】
乳化破壊剤
少量の乳化破壊成分が使用されてもよい。好適な乳化破壊成分はEP 330,522号に記載されている。乳化破壊成分は、アルキレンオキシドと、ビス−エポキシドと多水酸基性アルコールとを反応させて得られた付加化合物とを反応させることによって作られる。乳化破壊成分は、活性成分が0.1質量%を超えないレベルで使用される。活性成分0.001質量%から0.05質量%の処理率が便利である。
【0075】
流動点降下剤
別名潤滑油流動性向上剤としても知られている流動点降下剤は、流体が流動するまたは注がれることのできる最低温度を下げる。このような添加剤はよく知られている。流体の低温流動性を改善するこれらの添加剤の典型的な例として、CからC18のフマル酸ジアルキル/ビニルアセテートコポリマー、ポリアルキルメタクリレート等が挙げられる。
【0076】
消泡剤
例えばシリコーンオイルあるいはポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン系の消泡剤を含む、多くの化合物によって泡がコントロールされる。
【0077】
上述の添加剤のいくつかは、複数の効果を提供し、そのため、例えば単一の添加剤が分散剤/酸化防止剤として働く。このアプローチについてはよく知られているので、これ以上説明の必要はないものとする。
【0078】
個々の添加剤は、任意の便利な方法でベースストック中に組み込まれる。従って、各成分を望みの濃度レベルでベースストックあるいは基油ブレンドに分散あるいは溶解させることにより、ベースストックあるいは基油ブレンドに直接添加することができる。このような混和は室温、または高温で起こる。
【0079】
チタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、およびマグネシウム化合物の添加剤は、潤滑油組成物に直接加えられる。しかしながら、一つの実施例においてこれらは、添加剤濃縮物を形成するため、鉱油、合成油、ナフサ、アルキル化(例えばC10からC13のアルキル)ベンゼン、トルエンあるいはキシレンのような、実質的に不活性であり一般的に液体の有機希釈剤によって希釈された。これらの濃縮物は通常約1重量%から約100重量%、また一つの実施例では約10重量%から約90重量のチタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、およびマグネシウム化合物を含んでいる。
【0080】
本明細書に記載の組成物、添加剤、および濃縮物を調合するための使用に適した基油は、合成あるいは天然油、またはそれらの混合物のいずれから選択されてもよい。合成基油には、ジカルボン酸のアルキルエステル、ポリグリコールやアルコール、またポリブテン、アルキルベンゼン、リン酸の有機エステル、およびポリシリコンオイルを含むポリアルファオレフィンなどが含まれる。天然の基油には、原油のもと、例えばそれらがパラフィン系、ナフテン系、あるいはその混合物であるかどうかに関して多岐に渡るミネラル潤滑油がある。基油の粘度は一般に、100℃で約2.5cStから約15cSt、望ましくは約2.5cStから約11cStである。
【0081】
従って、使用される基油は、米国石油協会(API)の基油の互換性に関するガイドラインに指定された、グループIからグループVの任意の基油の中から選択される。このような基油のグループを以下に示す。
【表1】

【0082】
本明細書に記載の組成物の調合に使用された添加剤は、個々に、あるいは様々な組み合わせによって基油中に混和される。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち添加剤と、炭化水素溶媒のような希釈剤)を使用して、すべての成分を同時に混和することが望ましい。添加剤濃縮物の使用により、添加剤濃縮物の形態である場合に成分の組み合わせによって得られる相互の互換性が生かされる。また濃縮物の使用により、混和の時間が短縮され、また混和のエラー発生の可能性が低くなる。
【0083】
本実施例は、添加される炭化水素に可溶なマグネシウム化合物の濃度が比較的低く、マグネシウム元素として約120ppmから約2000ppmのマグネシウムをオイル中に提供する、内燃エンジン用の潤滑油を提供する。一つの実施例で、マグネシウム化合物は約250ppmから約1500ppmのマグネシウムを供給するのに十分な量で潤滑油組成物中に存在し、またさらなる実施例では約450ppmから約1000ppmのマグネシウム金属を供給するのに十分な量で潤滑油組成物中に存在する。
【0084】
同様に、本開示の実施例は、元素に関していうとオイル中に約10ppmから約500ppmのチタンをもたらす程度に、添加された炭化水素に可溶なチタン化合物の濃度の比較的低い内燃エンジン用の潤滑油を提供する。オイル中のチタン金属のより好適な濃度は、約50ppmから約300ppmである。
【0085】
以下の例は、実施例の態様を例示することを目的とするものであり、実施例をいかようにも制限することを意図したものではない。
【0086】

上述のマグネシウム、金属を含まない摩擦調整剤、および/またはチタン添加剤を含んでいるものと含んでいないものをあわせて、四種類の、従来型の添加剤を含有する完全に組成された潤滑剤組成物を生成した。各潤滑剤組成物には約9重量パーセントの潤滑剤組成物を提供する、従来型のDIパッケージが含有される。このDIパッケージには、下記の表1に示されるように、従来からの量の分散剤、耐摩耗剤、消泡剤、および抗酸化剤が含まれている。従来型の添加剤は一般に、それらの目的とする機能を果たすのに十分なだけの量で基油中に混和されている。チタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、および/またはマグネシウム成分と共にクランクケース潤滑剤中で使用された場合の、従来型の添加剤の典型的な有効量を下記の表1に表す。すべての値は重量パーセントを表す。
【0087】
【表2】

表1の従来型の添加剤を、チタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、および/またはマグネシウム添加剤と組み合わせることにより、オイルB−Dを得た。オイルAはチタン化合物のみを含む、従来型の潤滑剤組成物である。完全に調合された潤滑剤調合物を表2に表す。表2に示されるすべての数量は重量パーセントを表す。
【0088】
【表3】

表2に示された潤滑剤調合物の元素分析を以下の表3に示す。表3のすべての数量はppmを表す。
【0089】
【表4】

オイルA−Dの耐摩耗性を、高周波往復運動摩擦試験装置(HFRR)によって測定した。HFRRテストでは、オイルに浸されたスチール製のボールを、速度20Hz、1mm軌道で、スチール製のディスクを横断するように振動させた。ボールとディスクの間には7ニュートン(〜1.0GPa)の負荷をかけ、オイルを120℃に保って、1時間テストを行った。テストの後、ディスク上の傷の二次元プロファイルを測定した。磨耗傷の断面積を記録し、表4に示す。このとき、断面積が小さいほどオイルの耐摩耗性は優れている。磨耗傷の測定の標準偏差も表4に示す。
【0090】
【表5】

マグネシウム添加剤、金属を含まない摩擦調整剤、およびチタン添加剤を含有するオイルDの磨耗傷データは、特にリンのレベルが500ppm以下の場合に、チタン添加剤を欠いているオイル(オイルC)、マグネシウム添加剤を欠いているオイル(オイルA)、および/または金属を含まない摩擦調整剤を欠いているオイル(オイルAおよびオイルB)と比べ、優れていた。リンを含まない潤滑油組成物を得るために、本明細書に記載のチタン添加剤、金属を含まない摩擦調整剤、およびマグネシウム添加剤が利用されることもまた、期待されている。上述の例は、グループIIの基油を使った組成物のみに限定されるものではない。マグネシウムおよびチタン添加剤によってもたらされる利点はまた、グループI、グループIII、グループIV、グループV、およびそれらの混合物の中から選択された基油においても明らかである。
【0091】
本明細書の全体を通した多くの箇所で、多数の米国特許が参照されている。このような引用文献はすべて、完全に説明されたものとして本開示に明白に組み込まれている。
【0092】
前述の実施例は、その実行においてかなり変化の余地がある。従って本実施例は、上記に述べられた特定の例証に制限されることを意図したものではない。むしろ前述の実施例は法律的に使用可能なそれらの対応範囲を含む、添付の請求項の精神および範囲内にある。
【0093】
当特許権者は、開示された実施例のいずれをも一般に提供することは意図しておらず、また開示された修正あるいは変更は、それらがすべて完全に請求項の範囲内に収まらない状態になるまで、均等論により当実施例の一部であるとみなされる。
【0094】
本発明の主な特徴及び態様を挙げれば以下のとおりである。
【0095】
1.潤滑粘性の基油、炭化水素に可溶なチタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、ならびにチタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、およびマグネシウム化合物を欠いている潤滑剤組成物の場合の表面の磨耗の減少よりも、さらに表面の磨耗を低減させるのに有効な量の少なくとも一つの炭化水素に可溶なマグネシウム化合物を含有した潤滑剤組成物を含んだ潤滑面であり、この潤滑剤組成物が約800ppm以下のリンを含有し、またカルシウム洗浄剤および有機モリブデン化合物を欠いているような潤滑面。
【0096】
2.潤滑面にエンジンドライブトレインが含まれる、上記1に記載の潤滑面。
【0097】
3.潤滑面に内燃エンジンの内側面あるいは構成成分が含まれる、上記1に記載の潤滑面。
【0098】
4.潤滑面に圧縮点火エンジンの内側面あるいは構成成分が含まれる、上記1に記載の潤滑面。
【0099】
5.マグネシウム化合物にスルホン酸マグネシウムが含まれる、上記1に記載の潤滑面。
【0100】
6.スルホン酸マグネシウムに、全塩基価(TBN)が約300から約500の間である過塩基性スルホン酸塩が含まれる、上記5に記載の潤滑面。
【0101】
7.チタン化合物から得られるチタンが約10ppmから約500ppmの量で存在する、上記1に記載の潤滑面。
【0102】
8.チタン化合物に、チタンアルコキシドと、約Cから約C25のカルボン酸との反応生成物が含まれる、上記1に記載の組成物。
【0103】
9.当該のカルボン酸が、本質的にカプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸、およびそれらの混合物からなる群の中から選択されている、上記8に記載の組成物。
【0104】
10.チタン化合物にネオデカン酸チタンが含まれている、上記9に記載の組成物。
【0105】
11.チタン化合物にオレイン酸チタンが含まれている、上記9に記載の組成物。
【0106】
12.チタン化合物が実質的にイオウおよびリン原子を欠いている、上記1に記載の組成物。
【0107】
13.潤滑剤組成物中のリン含有量が約250ppmから約500ppmである、上記1に記載の潤滑面。
【0108】
14.金属を含まない摩擦調整剤が、グリセロールエステルおよびアミン化合物からなる群の中から選択されている、上記1に記載の潤滑面。
【0109】
15.上記1に記載の潤滑面を含んだ自動車。
【0110】
16.潤滑剤組成物中の炭化水素に可溶なマグネシウム化合物の量が、約0.15重量パーセントから約2.0重量パーセントである、上記1に記載の潤滑面。
【0111】
17.可動部を有し、その可動部を潤滑するための潤滑剤を含んでいる車両であり、その潤滑剤には、炭化水素に可溶なチタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、ならびにチタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、およびマグネシウム化合物を欠いている潤滑剤組成物の場合の該可動部の表面の磨耗の減少よりも、さらに該可動部の表面の磨耗を低減させるのに効果的な、少なくとも一つの炭化水素に可溶なマグネシウム化合物物の組み合わせをもたらす、一定量の耐磨耗剤と、潤滑粘性のオイルとが含まれており、この潤滑剤組成物が、約800ppm以下のリンを含有し、またカルシウム洗浄剤および有機モリブデン化合物を欠いている車両。
【0112】
18.マグネシウム化合物にスルホン酸マグネシウムが含まれる、上記17に記載の車両。
【0113】
19.スルホン酸マグネシウムに、全塩基価(TBN)が約300から約500の間である過塩基性スルホン酸塩が含まれる、上記18に記載の車両。
【0114】
20.チタン化合物から得られるチタンが約10ppmから約500ppmの量で存在している、上記17に記載の車両。
【0115】
21.チタン化合物が、ネオデカン酸チタンおよびオレイン酸チタンからなる群の中から選択された化合物を含む、上記17に記載の車両。
【0116】
22.潤滑剤組成物中のリン含有量が約250ppmから約500ppmである、上記17に記載の車両。
【0117】
23.金属を含まない摩擦調整剤が、グリセロールエステルおよびアミン化合物からなる群の中から選択されている、上記17に記載の車両。
【0118】
24.可動部がヘビーデューティーディーゼルエンジンを含む、上記17に記載の車両。
【0119】
25.潤滑粘性の基油成分と、炭化水素に可溶なチタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、ならびに、チタン、金属を含まない摩擦調整剤、およびマグネシウム化合物の組み合わせを欠いている潤滑剤組成物の場合の表面の磨耗の減少よりも、さらに表面の磨耗を低減させるのに効果的な、少なくとも一つの炭化水素に可溶なマグネシウム化合物の組み合わせによって得られた一定量の耐磨耗剤とを含んだ、完全に調合された潤滑剤組成物であり、この潤滑剤組成物が、約800ppm以下のリンを含有し、またカルシウム洗浄剤および有機モリブデン化合物を欠いているような、完全に調合された潤滑剤組成物。
【0120】
26.潤滑剤組成物に、圧縮点火エンジン用に適している低灰、低イオウおよび低リンの潤滑剤組成物が含まれる、上記25に記載の潤滑剤組成物。
【0121】
27.スルホン酸マグネシウムに、全塩基価(TBN)が約300から約500の間である過塩基性スルホン酸塩が含まれる、上記25に記載の潤滑剤組成物。
【0122】
28.潤滑剤組成物中のリン含有量が約250ppmから約500ppmである、上記25に記載の潤滑剤組成物。
【0123】
29.金属を含まない摩擦調整剤が、グリセロールエステルおよびアミン化合物からなる群の中から選択されている、上記25に記載の潤滑剤組成物。
【0124】
30.潤滑剤組成物中のマグネシウム化合物の量が約0.15重量パーセントから約2.0重量パーセントである、上記25に記載の潤滑剤組成物。
【0125】
31.チタン化合物から得られるチタンが約10ppmから約500ppmの量で存在している、上記25に記載の潤滑剤組成物。
【0126】
32.チタン化合物が、ネオデカン酸チタンおよびオレイン酸チタンからなる群の中から選択された化合物を含む、上記31に記載の潤滑剤組成物。
【0127】
33.潤滑剤組成物に改善された耐磨耗性を提供するための潤滑剤添加剤濃縮物であり、この濃縮物がカルシウムおよびモリブデンを欠き、ヒドロカルビル担体液と、約10ppmから約500ppmのチタンと約120ppmから約2000ppmのマグネシウムを、濃縮物を含有する潤滑剤組成物にもたらすのに十分な量の、相乗量の炭化水素に可溶なチタン化合物、モノオレイン酸グリセロール、および炭化水素に可溶なマグネシウム化合物の組み合わせを含む潤滑剤添加剤濃縮物。
【0128】
34.マグネシウム化合物に、全塩基価(TBN)が約300から約500の間である過塩基性スルホン酸マグネシウムが含まれる、上記33に記載の添加剤濃縮物。
【0129】
35.チタン化合物から得られるチタンが約10ppmから約500ppmの量で存在している、上記33に記載の添加剤濃縮物。
【0130】
36.チタン化合物が、ネオデカン酸チタンおよびオレイン酸チタンからなる群の中から選択された化合物を含む、上記33に記載の添加剤濃縮物。
【0131】
37.基油および上記33に記載の添加剤濃縮物を含む、潤滑剤組成物。
【0132】
38.耐摩耗性の改善された潤滑油で可動部を潤滑する方法であり、実質的にカルシウムを欠いている耐磨耗添加剤の組み合わせであって、約10ppmから約500ppmのチタンと約120ppmから約2000ppmのマグネシウムとを潤滑油にもたらすのに十分な量の、ヒドロカルビル担体液、炭化水素に可溶なチタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、および炭化水素に可溶なマグネシウム化合物を含む耐磨耗添加剤の組み合わせ、そして基油を含有した潤滑剤組成物を、一つ以上の可動部用の潤滑油として使用することを含む方法。
【0133】
39.可動部にエンジンの可動部が含まれるような、上記38に記載の方法。
【0134】
40.エンジンが、圧縮点火エンジンおよび火花点火エンジンからなる群の中から選択されている、上記39に記載の方法。
【0135】
41.エンジンに、クランクケースを有する内燃エンジンが含まれており、潤滑油にエンジンのクランクケース中に存在するクランクケースオイルが含まれる、上記39に記載の方法。
【0136】
42.潤滑油に、エンジンを含む車両のドライブトレイン中に存在するドライブトレイン潤滑剤が含まれる、上記38に記載の方法。
【0137】
43.金属を含まない摩擦調整剤が、グリセロールエステルおよびアミン化合物からなる群の中から選択されている、上記38に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑粘性の基油、炭化水素に可溶なチタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、ならびにチタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、およびマグネシウム化合物を欠いている潤滑剤組成物の場合の表面の磨耗の減少よりも、さらに表面の磨耗を低減させるのに有効な量の少なくとも一つの炭化水素に可溶なマグネシウム化合物を含有した潤滑剤組成物を含んだ潤滑面であり、この潤滑剤組成物が約800ppm以下のリンを含有し、またカルシウム洗浄剤および有機モリブデン化合物を欠いているような潤滑面。
【請求項2】
チタン化合物から得られるチタンが約10ppmから約500ppmの量で存在する、請求項1に記載の潤滑面。
【請求項3】
チタン化合物に、チタンアルコキシドと、約Cから約C25のカルボン酸との反応生成物が含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
チタン化合物にネオデカン酸チタンが含まれている、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
チタン化合物にオレイン酸チタンが含まれている、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
潤滑剤組成物中のリン含有量が約250ppmから約500ppmである、請求項1に記載の潤滑面。
【請求項7】
可動部を有し、その可動部を潤滑するための潤滑剤を含んでいる車両であり、その潤滑剤には、炭化水素に可溶なチタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、ならびに、チタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、およびマグネシウム化合物を欠いている潤滑剤組成物の場合の該可動部の表面の磨耗の減少よりも、さらに該可動部の表面の磨耗を低減させるのに効果的な、少なくとも一つの炭化水素に可溶なマグネシウム化合物物の組み合わせをもたらす量の耐磨耗剤と、潤滑粘性のオイルとが含まれており、この潤滑剤組成物が、約800ppm以下のリンを含有し、またカルシウム洗浄剤および有機モリブデン化合物を欠いている車両。
【請求項8】
潤滑粘性の基油成分と、炭化水素に可溶なチタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、ならびに、チタン、金属を含まない摩擦調整剤、およびマグネシウム化合物の組み合わせを欠いている潤滑剤組成物の場合の表面の磨耗の減少よりも、さらに表面の磨耗を低減させるのに効果的な、少なくとも一つの炭化水素に可溶なマグネシウム化合物の組み合わせによって得られた一定量の耐磨耗剤とを含んだ、完全に調合された潤滑剤組成物であり、この潤滑剤組成物が、約800ppm以下のリンを含有し、またカルシウム洗浄剤および有機モリブデン化合物を欠いている、完全に調合された潤滑剤組成物。
【請求項9】
潤滑剤組成物に改善された耐磨耗性を提供するための潤滑剤添加剤濃縮物であり、この濃縮物がカルシウムおよびモリブデンを欠き、ヒドロカルビル担体液と、約10ppmから約500ppmのチタンと約120ppmから約2000ppmのマグネシウムを、濃縮物を含有する潤滑剤組成物にもたらすのに十分な量の、相乗量の炭化水素に可溶なチタン化合物、モノオレイン酸グリセロール、および炭化水素に可溶なマグネシウム化合物の組み合わせを含む潤滑剤添加剤濃縮物。
【請求項10】
耐摩耗性の改善された潤滑油で可動部を潤滑する方法であり、実質的にカルシウムを欠いている耐磨耗添加剤の組み合わせであって、約10ppmから約500ppmのチタンと約120ppmから約2000ppmのマグネシウムとを潤滑油にもたらすのに十分な量の、ヒドロカルビル担体液、炭化水素に可溶なチタン化合物、金属を含まない摩擦調整剤、および炭化水素に可溶なマグネシウム化合物を含む耐磨耗添加剤の組み合わせ、そして基油を含有した潤滑剤組成物を、一つ以上の可動部用の潤滑油として使用することを含む方法。

【公開番号】特開2008−223010(P2008−223010A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22972(P2008−22972)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】