説明

神経ペプチド2受容体(Y−2R)アゴニスト及びその使用

本発明は、式(I):Y−R1−R2−X−R3−R4−R5−R6−R7−R8−R9−R−10−R11−R12-R13−R14−NH2の神経ペプチド2受容体アゴニスト、ならびにその薬学的に許容される塩、誘導体及びフラグメントに関し、ここで置換基は、本明細書に開示されるとおりである。これらの化合物及びそれらを含む医薬組成物は、例えば肥満及び糖尿病などの疾患の処置に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPYY3−36の短縮された類似体を提供する。この類似体は神経ペプチド2受容体のアゴニストであり、例えば肥満、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性及び脂質異常症などの代謝疾患及び代謝障害の処置に有用である。
【0002】
本発明は特に式(I):
Y−R−R−X−R−R−R−R−R−R−R−R10−R11−R12−R13−R14−NH (I)
[式中、
Xは、(4−アミノメチル−ビフェニル−3−イル)−酢酸(Cba)、(5−ピペラジン−1−イル−インドール−1−イル)−酢酸(Cip)、3−(4−オキソ−6−ピペラジン−1−イル−4H−キナゾリン−3−イル)−プロピオン酸(HomPqa)、(6−[1,4]ジアゼパン−1−イル−4−オキソ−4H−キナゾリン−3−イル)−酢酸(Dqa)、(6−オキソ−2−ピペラジン−1−イル−1,6−ジヒドロプリン−7−イル)−酢酸(Pdp)、(2−ピペラジン−1−イル−プリン−7−イル)−酢酸(Ppa)、(6−アミノ−2−ピペラジン−1−イル−9H−プリン−8−イル)−酢酸(Appa)、((1R,4S)−6−2−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−イル−4−オキソ−4H−キナゾリン)−酢酸(Bqa)又は(1−オキソ−7−ピペラジン−1−イル−1H−イソキノリン−2−イル)−酢酸(Pipa)であり;
YはH又はアシル部分であり;
は、Ile、Ala、(D)Ile、N−メチルIle、Aib、1−1Aic、2−2Aic、Ach又はAcpであり;
は、Lys、Ala、(D)Lys、N−メチルlys、Nle又は(Lys−Gly)であり;
は、Arg、Ala、(D)Arg、N−メチルArg、Phe、3,4,5−トリフルオロPhe又は2,3,4,5,6−ペンタフルオロPheであり;
は、His、Ala、(D)His、N−メチルHis、4−MeOApc、3−Pal又は4−Palであり;
は、Tyr、Ala、(D)Tyr、N−メチルTyr、Trp、Tic、Bip、Dip、(1)Nal、(2)Nal、3,4,5−トリフルオロPhe又は2,3,4,5,6−ペンタフルオロPheであり;
は、Leu、Ala、(D)Leu又はN−メチルLeuであり;
は、Asn、Ala又は(D)Asnであり;
は、Leu又はTrpであり;
は、Val、Ala、(D)Val又はN−メチルValであり;
10は、Thr、Ala又はN−メチルThrであり;
11は、Arg、(D)Arg又はN−メチルArgであり;
12は、Gln又はAlaであり;
13は、Arg、(D)Arg又はN−メチルArgであり、
14は、Tyr、(D)TyrもしくはN−メチルTyr、修飾Tyr、Phe、修飾Phe、(1)Nal、(2)Nal、Cha、C−α−メチルTyr又はTrpである]で示される神経ペプチド2受容体アゴニスト又はその薬学的に許容される塩に関する。
【背景技術】
【0003】
代謝疾患及び代謝障害は、先進国における深刻な健康上の問題として広く認識されており、米国では流行レベルに達している。例えば肥満に関する最近の研究では、米国の人口の50%超が過体重であると考えられており、25%超が臨床的に肥満でありかつ心疾患、2型糖尿病及びある種の癌の相当な危険性があると診断されている。年間700億ドルを超える推定肥満治療費用が米国だけで予想されることから、この流行は医療制度に対する著しい負担となっている。肥満を治療するための戦略は食物摂取の減少及びエネルギー消費の増大を含む。
【0004】
36アミノ酸ペプチド神経伝達物質である神経ペプチドY(NPY)は、末梢神経系と中枢神経系との両方に存在することがわかっている神経伝達物質/神経ホルモンの膵臓ポリペプチドクラスのメンバーである。NPYは、最も強力な公知の食欲促進剤の1つであり、ヒトを含む動物における食物摂取の調節に大きな役割を果たすことがわかっている。
【0005】
ロドプシン様Gタンパク質共役7膜貫通受容体(GPCR)に属する6つの神経ペプチドY受容体(NPY)、すなわちY1、Y2、Y3、Y4及びY5及びY6サブタイプをクローニングした。NPY Y2受容体(Y2R)は、他の公知のNPY受容体との低い相同性を示しながらGを経由してアデニルシクラーゼの活性化を阻害する、381アミノ酸受容体である。98%アミノ酸同一性を有するラット及びヒトのY2受容体の間には高い保存度が存在する。
【0006】
げっ歯類とヒトとの両方における中枢神経系内にはY2R受容体が広く分布している。視床下部では、Y2 mRNAは弓状核、視索前核及び背内側核に局在化している。ヒト脳内では、Y2Rが優勢なY受容体サブタイプである。弓状核内では、NPYニューロンの80%超がY2R mRNAを共発現させる。Y2選択的アゴニストの適用がインビトロでの視床下部切片からのNPYの放出を減少させることがわかっている一方、Y2非ペプチドアンタゴニストBIIE0246はNPY放出を増加させる。NPY放出を制御し、そのため摂食の制御に関与し得るシナプス前自己受容体としてのY2Rの役割を、これらの発見は支持している(Kaga, T. et al., Peptides 22: 501-506 (2001)及びKing PJ et al., Eur J Pharmacol 396: R1-3 (2000))。
【0007】
ペプチドYY3−36(PYY3−36)は、神経ペプチドY2(NPY2R)アゴニスト活性を有する34アミノ酸線状ペプチドである。弓状核内(IC)又は腹腔内(IP)のPYY3−36注射がラットにおける摂食を減少させ、臨床治療として体重増加を減少させたことが示されている。PYY3−36の90分間の静脈内(IV)注入(0.8pmol/kg/分)は、24時間にわたる肥満の及び正常なヒト対象における食物摂取を減少させた。これらの発見は、PYY系が肥満の処置における治療標的となり得ることを示唆している(Batterham RL et al., Nature 418: 650-654 (2002); Batterham RL et al., New Engl J Med 349: 941-948 (2003))。さらに、ラット空腸の電位固定粘膜調製物を通じる電流の減少が証明するように、残基5〜24が長さ5〜8炭素のメチレン鎖で置き換えられたPYYのCys−(D)Cys27環化バージョンが腸PYY受容体の活性化を示した(Krstenansky, et al. in Peptides, Proceedings of the Twelfth American Peptide Symposium. J. Smith and J. Rivier Editors, ESCOM. Leiden Page 136-137)。
【0008】
さらに、最近のデータは、Roux−enY胃バイパス術患者が、早期の血糖コントロール及び長期の体重維持の原因の一部となり得るPYYレベルの早期かつ過剰な増加を伴うことを示しており、このことは代謝疾患の病因におけるこのペプチドの重要性を証明している。PYYの他の公知の作用は、食後血糖コントロール改善の原因となる胃内容排出減少及び胃腸管通過遅延を含む。HbA1C及びフルクトサミンなどの高血糖の指標は、2型糖尿病の動物モデルにおけるPYY3−36の末梢投与後の用量依存的減少を示す。したがって、これらの結果は、PYY3−36又は薬学的に関連性のあるアゴニストが血糖及び体重のコントロールに対する長期の治療アプローチを提示し得ることを示している(Korner et al., J Clin Endocrinol Metabol 90: 359-365 (2005); Chan JL et al., Obesity 14: 194-198 (2006); Stratis C et al., Obes Surg 16: 752-758 (2006); Borg CM et al., Br J Surg 93: 210-215 (2006); and Pittner RA et al., Int J Obes 28: 963-971 (2004))。
【0009】
しかし、同等以上のY1、Y4及びY5受容体に対する効力及び選択性、薬物動態特性、ならびに薬理特性を有しながらより小さい分子量を有するPYYの新規改変類似体の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0010】
本発明の化合物は代謝疾患及び代謝障害の処置に有用であることが好ましい。そのような代謝疾患及び代謝障害は、例えば肥満、糖尿病、好ましくは2型糖尿病、メタボリックシンドローム(シンドロームXとしても知られる)、インスリン抵抗性、脂質異常症、空腹時血中ブドウ糖不良及び耐糖能障害を含む。
【0011】
Xが、(4−アミノメチル−ビフェニル−3−イル)−酢酸(Cba)、(5−ピペラジン−1−イル−インドール−1−イル)−酢酸(Cip)、3−(4−オキソ−6−ピペラジン−1−イル−4H−キナゾリン−3−イル)−プロピオン酸(HomPqa)、(6−[1,4]ジアゼパン−1−イル−4−オキソ−4H−キナゾリン−3−イル)−酢酸(Dqa)、(6−オキソ−2−ピペラジン−1−イル−1,6−ジヒドロプリン−7−イル)−酢酸(Pdp)、(2−ピペラジン−1−イル−プリン−7−イル)−酢酸(Ppa)、(6−アミノ−2−ピペラジン−1−イル−9H−プリン−8−イル)−酢酸(Appa)、((1R,4S)−6−2−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−イル−4−オキソ−4H−キナゾリン)−酢酸(Bqa)又は(1−オキソ−7−ピペラジン−1−イル−1H−イソキノリン−2−イル)−酢酸(Pipa)であり;
Yがアシル部分である、
式(I)で示される神経ペプチド2受容体アゴニストが好ましい。
【0012】
式(II):
Y−Ile−Lys−X−Arg−His−Tyr−Leu−Asn−Trp−Val−Thr−Arg−Gln−(NMe)Arg−Tyr−NH (II)
[式中、
Xは、(4−アミノメチル−ビフェニル−3−イル)−酢酸(Cba)、(5−ピペラジン−1−イル−インドール−1−イル)−酢酸(Cip)、3−(4−オキソ−6−ピペラジン−1−イル−4H−キナゾリン−3−イル)−プロピオン酸(HomPqa)、(6−[1,4]ジアゼパン−1−イル−4−オキソ−4H−キナゾリン−3−イル)−酢酸(Dqa)、(6−オキソ−2−ピペラジン−1−イル−1,6−ジヒドロプリン−7−イル)−酢酸(Pdp)、(2−ピペラジン−1−イル−プリン−7−イル)−酢酸(Ppa)、(6−アミノ−2−ピペラジン−1−イル−9H−プリン−8−イル)−酢酸(Appa)、((1R,4S)−6−2−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−イル−4−オキソ−4H−キナゾリン)−酢酸(Bqa)又は(1−オキソ−7−ピペラジン−1−イル−1H−イソキノリン−2−イル)−酢酸(Pipa)であり;
Yはアシル部分である]を有する神経ペプチド2受容体アゴニスト及びその薬学的に許容される塩がさらに好ましい。
【0013】
以下から選択される請求項1記載の神経ペプチド2受容体アゴニストが特に好ましい:
【0014】
【表1】

【0015】
本発明はまた、治療有効量の上記定義の神経ペプチド2受容体アゴニスト又はその塩と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0016】
本発明の化合物は、例えばPYY3−36の短縮型であることが理由で有利である。より短いペプチドは、例えば化合物のより容易な合成及び精製を促進するだけでなく、製造手順を改善しかつ製造支出を減少させる。さらに、本発明の化合物はY2受容体と相互作用しかつNPY Y1、Y4及びY5などの相同受容体とは相互作用しないことが好ましい。それにより、望まれないアゴニスト又はアンタゴニストの副反応が最小化される。
【0017】
本発明が本明細書に記載の本発明の特定の態様に限定されず、特定の態様の変更を行うことができ、それらが依然として添付の特許請求の範囲の範囲内にあるということを理解すべきである。使用される用語は特定の態様を記述するためのものであり、限定的であることを意図していないということも理解すべきである。その代わり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲により確立される。
【0018】
本明細書に記載のものと類似又は同等の任意の方法、装置及び材料が本発明の実施又は試験において使用可能であるが、好ましい方法、装置及び材料をここに記載する。
【0019】
本明細書で言及するすべてのペプチド配列は通常の慣行に従って記述され、したがって特記なき限り、N末端アミノ酸は左側にあり、C末端アミノ酸は右側にある。2つのアミノ酸残基間の短い線はペプチド結合を示す。アミノ酸が異性体形態を有する場合、別途明示されない限り表示されるのはアミノ酸のL形である。本発明を記述する上での便宜のために、様々なアミノ酸について慣行的及び非慣行的略語を使用する。これらの略語は当業者に公知であるが、明確にするために以下に列挙する:
Asp=D=アスパラギン酸;Ala=A=アラニン;Arg=R=アルギニン;Asn=N=アスパラギン;Gly=G=グリシン;Glu=E=グルタミン酸;Gln=Q=グルタミン;His=H=ヒスチジン;Ile=I=イソロイシン;Leu=L=ロイシン;Lys=K=リジン;Met=M=メチオニン;Phe=F=フェニルアラニン;Pro=P=プロリン;Ser=S=セリン;Thr=T=スレオニン;Trp=W=トリプトファン;Tyr=Y=チロシン;Cys=C=システイン;及びVal=V=バリン。
【0020】
修飾Tyrとは、例えばメチル−チロシン、3−ヨード−チロシン、3,5−ジフルオロ−チロシン、2,6−ジ−フルオロチロシン及び2,6−ジメチル−チロシンなどのチロシンに対する任意の修飾のことである。
【0021】
修飾Pheとは、例えば4−メトキシ−フェニルアラニン、4−アミノ−フェニルアラニン、4−フルオロ−フェニルアラニン、4−ヒドロキシメチル−フェニルアラニン、4−トリフルオロメチル−フェニルアラニン、3−フルオロ−フェニルアラニン、2,3,4,5−ペンタフルオロ−フェニルアラニン及び3,4−ジクロロフェニルアラニンなどのフェニルアラニンに対する任意の修飾のことである。
【0022】
やはり便宜のために、本発明で使用する部分、試薬などを表すために以下の略語又は記号を使用する:
Pqaは、(4−オキソ−6−ピペラジン−1−イル−4H−キナゾリン−3−イル)−酢酸であり;
Cbaは、(4−アミノメチル−ビフェニル−3−イル)−酢酸であり;
Cipは、(5−ピペラジン−1−イル−インドール−1−イル)−酢酸であり;
HomPqaは、3−ヒドロキシ−2−(4−オキソ−6−ピペラジン−1−イル−4H−キナゾリン−3−イル)−プロピオン酸であり;
Dqaは、(6−[1,4]ジアゼパン−1−イル−4−オキソ−4H−キナゾリン−3−イル)−酢酸であり;
Pdpは、(6−オキソ−2−ピペラジン−1−イル−1,6−ジヒドロプリン−7−イル)−酢酸であり;
Ppaは、(2−ピペラジン−1−イル−プリン−7−イル)−酢酸であり;
Appaは、(6−アミノ−2−ピペラジン−1−イル−9H−プリン−8−イル)−酢酸であり;
Bqaは、((1R,4S)−6−2−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−イル−4−オキソ−4H−キナゾリン)−酢酸であり;
Pipaは、(1−オキソ−7−ピペラジン−1−イル−1H−イソキノリン−2−イル)−酢酸であり;
Fmocは、9−フルオレニルメチルオキシカルボニルであり;
Mttは、4−メチルトリチルであり;
2Pipは、2−フェニルイソプロピルエステルであり;
Pmcは、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニルであり;
CHClは、塩化メチレンであり;
AcOは、無水酢酸であり;
CHCNは、アセトニトリルであり;
DMAcは、ジメチルアセトアミドであり;
DMFは、ジメチルホルムアミドであり;
DIPEAは、N,N−ジイソプロピルエチルアミンであり;
TFAは、トリフルオロ酢酸であり;
iPrSiHは、トリイソプロピルシランであり;
HOBTは、N−ヒドロキシベンゾトリアゾールであり;
DICは、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミドであり;
BOPは、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウム−ヘキサフルオロホスフェートであり;
HBTUは、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム−ヘキサフルオロホスフェートであり;
NMPは、1−メチル 2−ピロリジノンであり;
Tmobは、2,4,6−トリメトキシベンジルであり;
Dodは、4,4−ジメトキシジチル、(ビス−(4−メトキシフェニル)−メチル)であり、
Trtは、トリチルであり;
Mtsは、メシチレン−2−スルホニルであり;
FAB−MSは、高速原子衝撃イオン化質量分析であり;
ES−MSは、エレクトロスプレーイオン化質量分析である。
【0023】
本明細書で使用する「アシル」という用語は、カルボニル基を経由して結合している場合により置換されているアルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基又はヘテロアリール基を意味し、アセチル、プロピオニル、ベンゾイル、3−ピリジニルカルボニル、2−モルホリノカルボニル、4−ヒドロキシブタノイル、4−フルオロベンゾイル、2−ナフトイル、2−フェニルアセチル、2−メトキシアセチルなどの基を含む。
【0024】
本明細書で使用する、単独又は他の基との組み合わせでの「アルキル」という用語は、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜16個の炭素原子、より好ましくは1〜10個の炭素原子の、分岐鎖又は直鎖の、一価の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。
【0025】
「シクロアルキル」という用語は、3〜10個、好ましくは3〜6個の炭素原子の一価の単炭素環式又は多炭素環式基を意味する。この用語はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ボルニル、アダマンチルなどの基によりさらに例示される。好ましい態様では、「シクロアルキル」部分は1個、2個、3個又は4個の置換基で置換されていてもよく、特記なき場合は前記置換基がさらに置換されていることはないと理解される。シクロアルキル部分の例は場合により置換されているシクロプロピル、場合により置換されているシクロブチル、場合により置換されているシクロペンチル、場合により置換されているシクロペンテニル、場合により置換されているシクロヘキシル、場合により置換されているシクロヘキシレン、場合により置換されているシクロヘプチルなど、又は本明細書で具体的に例示されているものを含むがそれに限定されない。
【0026】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、炭素環原子のうち1個、2個又は3個がN、O又はSなどのヘテロ原子で置き換えられている単環式又は多環式アルキル環を意味する。ヘテロシクロアルキル基の例はモルホリニル、チオモルホリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、1,3−ジオキサニルなどを含むがそれに限定されない。ヘテロシクロアルキル基は非置換でも置換でもよく、結合は炭素骨格を通じてでも、適切な場合はそのヘテロ原子を通じてでもよく、前記置換基がさらに置換されていることはないと理解される。
【0027】
単独又は他の基との組み合わせでの「低級アルキル」という用語は、1〜9個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子の、分岐鎖又は直鎖のアルキル基を意味する。この用語はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、3−メチルブチル、n−ヘキシル、2−エチルブチルなどの基でさらに例示される。
【0028】
「アリール」という用語は、少なくとも1個の芳香環を有する6〜12個の炭素原子の芳香族単炭素環式又は多炭素環式基を意味する。そのような基の例はフェニル、ナフチル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、1,2−ジヒドロナフタレン、インダニル、1H−インデニルなどを含むがそれに限定されない。
【0029】
アルキル基、低級アルキル基及びアリール基は置換でも非置換でもよい。置換の場合は、例えば1〜4個の置換基が一般に存在するものであり、特記なき場合は前記置換基がさらに置換されていることはないと理解される。これらの置換基は、それらが接続しているアルキル基、低級アルキル基又はアリール基と共に環を形成してもよい。
【0030】
「ヘテロアリール」という用語は、N、O及びSから選択される1個、2個又は3個の環ヘテロ原子を含有し、残りの環原子がCである、少なくとも1個の芳香環を有する、5〜12個の原子の芳香族単環式又は多環式基を意味する。ヘテロアリール基の1個又は2個の環炭素原子をカルボニル基で置き換えてもよい。
【0031】
先に記載のヘテロアリール基は1個、2個又は3個の置換基で独立して置換されていてもよく、特記なき場合は前記置換基がさらに置換されていることはないと理解される。
【0032】
式Iで示される化合物は、1個又は複数の不斉炭素原子を有することができ、光学的に純粋な鏡像異性体、例えばラセミ体などの鏡像異性体の混合物、光学的に純粋なジアステレオ異性体、ジアステレオ異性体の混合物、ジアステレオ異性体のラセミ体、又はジアステレオ異性体のラセミ体の混合物の形態で存在することができる。光学的に活性な形態は、例えば、ラセミ体の分割、不斉合成、又は不斉クロマトグラフィー(キラル吸着剤もしくは溶離液を用いたクロマトグラフィー)により得ることができる。本発明は、これらの形態のすべてを包含する。
【0033】
代表的な本化合物は、アミノ酸間のペプチド結合の形成用の任意の公知の慣行的手順によって容易に合成することができる。そのような慣行的手順は、そのカルボキシル基及び他の反応性基が保護された、アミノ酸の遊離αアミノ基又はその残基と、そのアミノ基又は他の反応性基が保護された、別のアミノ酸の遊離一級カルボキシル基又はその残基との間の縮合を可能にする、任意の溶液相手順を例えば含む。
【0034】
本発明の新規化合物を合成するためのそのような慣行的手順は、任意の固相ペプチド合成法を例えば含む。そのような方法では、固相法の一般的原理に従って成長ペプチド鎖に所望のアミノ酸残基を1つ毎に順次組み入れることで、新規化合物の合成を行うことができる。そのような方法は、参照により本明細書に組み入れられるMerrifield, R. B., J. Amer. Chem. Soc. 85, 2149-2154 (1963); Barany et al., The Peptides, Analysis, Synthesis and Biology, Vol. 2, Gross, E. and Meienhofer, J., Eds. Academic Press 1-284 (1980)に例えば開示されている。
【0035】
ペプチドの化学合成に共通しているのは、好適な保護基による様々なアミノ酸部分の反応性側鎖基の保護であり、これにより、保護基が最終的に除去されるまで、化学反応がその部位で発生することを防ぐ。通常やはり共通しているのは、アミノ酸又は断片上のαアミノ基の、その実体がカルボキシル基で反応している間の保護、それに続く、後続の反応がその部位で行われるようにするためのαアミノ保護基の選択的除去である。固相合成法に関して具体的な保護基が開示されているが、溶液層合成において各アミノ酸用に慣行的に使用される保護基で各アミノ酸を保護することができるということに留意すべきである。
【0036】
アリルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル(Z)、ならびにp−クロロベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、p−ビフェニル−イソプロピルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)及びp−メトキシベンジルオキシカルボニル(Moz)などの置換ベンジルオキシカルボニルなどの芳香族ウレタン型保護基;t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、ジイソプロピルメチルオキシカルボニル及びイソプロピルオキシカルボニルなどの脂肪族ウレタン型保護基から選択される好適な保護基でαアミノ基を保護することができる。ここで、Fmocがαアミノ保護に最も好ましい。
【0037】
グアニジノ基は、ニトロ、p−トルエンスルホニル(Tos)、(Z)、ペンタメチルクロマンスルホニル(Pmc)、4−メトキシ−2,3,6,−トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr)などの好適な保護基で保護することができ、(Pmc)及び(Mtr)がアルギニン(Arg)について最も好ましい。
【0038】
εアミノ基は、2−クロロベンジルオキシカルボニル(2−Cl−Z)、2−ブロモベンジルオキシカルボニル(2−Br−Z)及びt−ブチルオキシカルボニル(Boc)などの好適な保護基で保護することができる。Bocが(Lys)について最も好ましい。
【0039】
ヒドロキシル基(OH)は、ベンジル(Bzl)、2,6−ジクロロベンジル(2,6−diCl−Bzl)及びtert−ブチル(t−Bu)などの好適な保護基で保護することができ、(t−Bu)が(Tyr)、(Ser)及び(Thr)について最も好ましい。
【0040】
Asn及びGlnのβ及びγアミド基は、4−メチルトリチル(Mtt)、2,4,6−トリメトキシベンジル(Tmob)、4,4−ジメトキシジチルビス−(4−メトキシフェニル)−メチル(Dod)及びトリチル(Trt)などの好適な保護基で保護することができる。Trtが(Asn)及び(Gln)について最も好ましい。
【0041】
インドール基はホルミル(For)、メシチル−2−スルホニル(Mts)及びt−ブチルオキシカルボニル(Boc)から選択される好適な保護基で保護することができる。Bocが(Trp)について最も好ましい。
【0042】
イミダゾール基はベンジル(Bzl)、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)及びトリチル(Trt)から選択される好適な保護基で保護することができる。Trtが(His)について最も好ましい。
【0043】
アミノ酸Pqaの合成は、J. Hutchinson et. al(J .Med. Chem. 1996, 39, 4583-4591)に記載されている。Fmoc−Pqa誘導体はNeoMPS,Inc.(カリフォルニア州サンジエゴ)から購入した。
【0044】
{4’−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−メチル]−ビフェニル−3−イル}−酢酸(Fmoc−Cba−OH)は、慣行的な手段で、例えば4−ブロモフェニル酢酸メチルエステルと4−ホルミルフェニルボロン酸との間の鈴木カップリング、続いて得られた4’−ホルミルビフェニル酢酸メチルエステルの還元的アミノ化を行ってアミノメチルビフェニル酢酸誘導体を得ることで調製することができる。典型的鈴木カップリングの一例はH. Heitsch, et al, Synthesis 1996, 1325に示されている。還元的アミノ化は、E. Baxter, et al. Organic Reactions 2002, 59, 1-714で概観されている標準的方法を経由して行うことができる。9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル誘導体としてのアミノ基のエステル加水分解及び保護は標準的な変換である。典型的手順は中間体の調製の説明において記載する。
【0045】
すべての溶媒、すなわちイソプロパノール(iPrOH)、塩化メチレン(CHCl)、ジメチルホルムアミド(DMF)及びN−メチルピロリドン(NMP)をFisher又はBurdick & Jacksonから購入し、さらに処理せずに使用した。トリフルオロ酢酸をHalocarbon又はFlukaから購入し、さらに精製せずに使用した。
【0046】
ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)及びジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)をFluka又はAldrichから購入し、さらに精製せずに使用した。ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、ジメチルスルフィド(DMS)及び1,2−エタンジチオール(EDT)をSigma Chemical Co.から購入し、さらに精製せずに使用した。保護アミノ酸は一般にL配置のものであり、Bachem又はNeosystemから商業的に得た。これらの試薬の純度を、使用前に薄層クロマトグラフィー、NMR及び融点により確認した。ベンズヒドリルアミン樹脂(BHA)は、Bachem又はAdvanced Chemtechから得たスチレン−1%ジビニルベンゼンの共重合体(100〜200又は200〜400メッシュ)であった。これらの樹脂の全窒素含有量は一般に0.3〜1.2meq/gであった。
【0047】
好ましい態様では、Merrifield,(J. Amer. Chem. Soc., 85, 2149 (1963))に一般に記載の方法により固相合成を用いてペプチドを調製したが、当業者に公知の他の同等の化学合成を先に言及したように使用する可能性がある。保護αアミノ酸を好適な樹脂にカップリングすることで、ペプチドのC末端から固相合成を開始する。そのような出発原料は、αアミノ保護アミノ酸をエステル結合によりp−ベンジルオキシベンジルアルコール(Wang)樹脂に結合させるか、又はp−((R,S)−α−(1−(9H−フルオレン−9−イル)−メトキシホルムアミド)−2,4−ジメチルオキシベンジル)−フェノキシ酢酸(Rinkリンカー)などのFmocリンカーとベンズヒドリルアミン(BHA)樹脂との間のアミド結合により調製することができる。ヒドロキシメチル樹脂の調製は当技術分野で周知である。Fmocリンカー−BHA樹脂支持体は市販されており、合成される所望のペプチドがC末端で非置換アミドを有する場合に一般に使用される。
【0048】
典型的には、アミノ酸又は模倣体のFmocリンカー−BHA樹脂上に対するカップリングを、アミノ酸又は模倣体のFmoc保護形態を用い、アミノ酸2〜5当量及び好適なカップリング試薬によって行う。カップリング後、樹脂を洗浄し、減圧乾燥させることができる。樹脂上に対するアミノ酸の結合は、Fmoc−アミノ酸樹脂のアリコートのアミノ酸分析、又はUV分析によるFmoc基の決定により決定することができる。樹脂を塩化メチレン中の無水酢酸及びジイソプロピルエチルアミンと反応させることで任意の未反応アミノ基を封止することができる。
【0049】
αアミノFmoc保護基を塩基性条件下で除去する。DMF中ピペリジン、ピペラジン又はモルホリン(20〜40% 体積/体積)をこの目的のために使用することができる。DMF中40%ピペリジンを使用することが好ましい。
【0050】
αアミノ保護基の除去後、引き続き保護アミノ酸を所望の順序で段階的にカップリングして中間体の保護ペプチド樹脂を得る。ペプチドの固相合成におけるアミノ酸のカップリングに使用する活性化試薬は当技術分野で周知である。例えば、そのような合成に適切な試薬はベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリ−(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、ブロモ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBroP)、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)及びジイソプロピルカルボジイミド(DIC)である。HBTU及びDICが好ましい。他の活性化剤はBarany and Merrifield(The Peptides, Vol. 2, J. Meienhofer, ed., Academic Press, 1979, pp 1-284所収)に記載されており、これらを使用することができる。1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、N−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)及び3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HOBT)などの各種試薬をカップリング混合物に加えることで、合成サイクルを最適化することができる。ここでHOBTが好ましい。
【0051】
N末端アセチル誘導体の調製のために、5% DIEAを有するDMF中20%無水酢酸で樹脂結合ペプチドを処理することでアセチル化を行った。他のN末端アシル化について、DIC/HOBtによりインサイチューで30分間活性化した対応するカルボン酸を使用してアシル化を行った。
【0052】
典型的合成サイクルのプロトコールは以下の通りである。
プロトコール1
【0053】
【表2】

【0054】
すべての洗浄及びカップリング用の溶媒を10〜20ml/g樹脂の量になるように測量した。合成を通じてのカップリング反応をKaiserニンヒドリン試験でモニタリングして、完了の程度を決定した(Kaiser et at. Anal.Biochem.34, 595-598 (1970))。緩徐な反応動態がFmoc−Arg(Pmc)について及び立体障害性の酸による二級アミンに対するカップリングについて観察された。任意の不完全なカップリング反応は、新たに調製した活性化アミノ酸と再カップリングしたか、又は先に記載のようにペプチド樹脂を無水酢酸で処理することで封止した。完全に構築したペプチド樹脂を数時間減圧乾燥させた。
【0055】
大部分の化合物について、ブロッキング基を除去し、ペプチドを樹脂から切断した。例えば、ペプチド樹脂を樹脂1グラム当たりエタンジチオール100μL、ジメチルスルフィド100μl、アニソール300μL及びトリフルオロ酢酸9.5mLにて室温で180分間処理した。あるいは、ペプチド樹脂を樹脂1グラム当たりトリイソプロピルシラン1.0mL及びトリフルオロ酢酸9.5mLにて室温で180分間処理した。樹脂を濾去し、濾液を冷却エチルエーテル中で析出させた。析出物を遠心分離し、エーテル層をデカントした。残渣を2又は3体積のEtOで洗浄し、再遠心分離した。粗生成物を減圧乾燥させた。
【0056】
粗ペプチドの精製を、Shimadzu LC−8Aシステム上で、逆相C−18カラム(50x250mm、300Å、10〜15μm)上の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により好ましく行った。ペプチドをカラムに対して最小量の0.1 AcOH/HO又はCHCH/HO中に注入した。グラジエント溶出を2% B緩衝液で一般に開始し、2%〜70%のBで70分間にかけて(緩衝液A:0.1% TFA/HO、緩衝液B:0.1% TFA/CHCN)、50ml/分の流量で行った。UV検出を220/280nmで行った。生成物を含有する画分を分離し、その純度をShimadzu LC−10AT分析システム上で逆相Ace C18カラム(4.6x50mm)を用いて流量2ml/分、10分間にわたるグラジエント(2〜70%)(緩衝液A:0.1% TFA/HO、緩衝液B:0.1% TFA/CHCN)で判定した。高純度を有すると判定された画分をプールし、凍結乾燥させた。
【0057】
先に述べたように、最終生成物の純度を分析用HPLCにより逆相カラム上で点検した。全生成物の純度は約95〜99%と判定された。また、すべての最終生成物を高速原子衝撃質量分析(FAB−MS)又はエレクトロスプレー質量分析(ES−MS)に供した。すべての生成物は許容される範囲内の予想される親M+Hイオンを生成した。
【0058】
本発明の化合物を薬学的に許容される塩の形態で与えることができる。好適な塩の例は、薬学的に許容される有機酸、例えば酢酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸又はパモ酸、及びタンニン酸又はカルボキシメチルセルロースなどのポリマー酸と形成されるもの、ならびにハロゲン化水素酸(例えば塩酸)、硫酸又はリン酸などの無機酸と形成される塩である。当業者に公知である薬学的に許容される塩を得るための任意の手順を使用することができる。
【0059】
本発明の方法の実施において、有効量の本発明のペプチドのいずれか1つもしくは本発明のペプチドのいずれかの組み合わせ、又はその薬学的に許容される塩を、単独又は組み合わせでの当技術分野で公知の通常かつ許容される方法を経由して投与する。投与は、例えば1日1回、3日に1回又は週1回であり得る。したがって、化合物又は組成物を、経口的に(例えば頬側口腔)、舌下に、非経口的に(例えば筋肉内、静脈内もしくは皮下に)、直腸に(例えば坐薬もしくは洗液で)、経皮的に(例えば皮膚電気穿孔)、又は吸入により(例えばエアロゾルにより)、錠剤及び懸濁液剤を含む固体、液体又は気体剤形の形態で投与することができる。投与は、単一単位剤形で連続療法により、又は単一用量療法で自由に、行うことができる。また、治療用組成物は、パモ酸などの親油性塩との組み合わせでの油乳濁液もしくは分散液の形態、又は皮下もしくは筋肉内投与用の生分解性持続放出組成物の形態であり得る。
【0060】
したがって、本発明の方法は、症状の軽減が特に必要であるかおそらくは緊急である場合に実施される。あるいは、本発明の方法は連続治療又は予防治療として有効に実施される。
【0061】
本明細書の組成物の調製用の有用な薬学的担体は、固体、液体又は気体であり得るものであり、したがって組成物は錠剤、丸剤、カプセル剤、坐薬、散剤、腸溶コーティング製剤又は他の保護製剤(例えばイオン交換樹脂上に結合もしくは脂質−タンパク質ベシクル中に包装)、持続放出製剤、溶液剤、懸濁液剤、エリキシル剤、エアロゾル剤などの形態を取り得る。担体は石油、動物、植物又は合成起源のものを含む各種の油、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などから選択することができる。水、食塩水、ブドウ糖水溶液及びグリコールが、特に(血液と等張性の場合)注射液剤について好ましい液体担体である。例えば、静脈内投与用製剤は、固体有効成分を水に溶解させて水溶液を生成し、溶液を滅菌することで調製される、有効成分の滅菌水溶液を含む。好適な薬学的賦形剤はデンプン、セルロース、タルク、グルコース、乳糖、タルク、ゼラチン、麦芽、イネ、小麦粉、チョーク、シリカ、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどを含む。組成物を防腐剤、安定剤、湿潤剤又は乳化剤、浸透圧を調整するための塩、緩衝剤などの慣行的な薬学的添加剤に供することができる。好適な薬学的担体及びその調合はE. W. MartinのRemington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。いずれにせよ、そのような組成物は、有効量の活性化合物を、レシピエントに対する適切な投与のために適切な剤形を調製するために好適な担体と共に含有する。
【0062】
本発明の化合物の用量は、例えば投与様式、対象の年齢及び体重、ならびに処置される対象の状態などのいくつかの要因に依存するものであり、担当の医師又は獣医師により最終的に決定される。担当の医師又は獣医師により決定される活性化合物のそのような量を本明細書及び特許請求の範囲では「有効量」と呼ぶ。例えば、鼻腔内投与の用量は、典型的には約0.001〜約0.1mg/kg体重の範囲である。ヒトでは、ペプチド含有量に基づく好ましい皮下用量は約0.001mg〜約100mg、好ましくは約0.1mg〜約15mgである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
ここで限定を行う性質を有さない以下の実施例により本発明を説明する。
【0064】
実施例
中間体の調製
【0065】
中間体1の調製
実施例6で使用する中間体(4−(1−カルボキシメチル−1H−インドール−5−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル(Fmoc−Cip−OH)を以下のように調製した。
【0066】
【化1】

【0067】
工程1:
1−(3−メチル−4−ニトロ−フェニル)−ピペラジンの調製
【0068】
【化2】

【0069】
ピペラジン(86.14g)及びジメチルホルムアミド(150mL)を110℃で攪拌して溶解させた。この時点でジメチルホルムアミド10mLに溶解した4−フルオロ−2−メチル−1−ニトロ−ベンゼン(100mL)の溶液を3分かけて加え、次に100℃で30分間攪拌した。この時点で砕氷及び水(700mL)を反応混合物に加え、得られた黄色固体を濾去した。濾液を水300mLで洗浄し、次に真空オーブン中で乾燥させた。このようにして固体19.40gを得た。H−NMR分光測定は1−(3−メチル−4−ニトロ−フェニル)−ピペラジンと一致したスペクトルを示した。
【0070】
工程2:
4−(3−メチル−4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
【0071】
【化3】

【0072】
1−(3−メチル−4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン(19.40g)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.20グラム)をテトラヒドロフラン200mL中にて室温で攪拌して溶解させた。次に炭酸ジ−tert−ブチルエステル(Boc)O 96.45gを1回で加えた。この混合物を室温で1時間攪拌した。この時点で反応混合物を蒸発乾固させ、得られた黄色固体を水400mLに15分間懸濁させた後、濾過し、固体を水で洗浄した。濾過後に残留する固体を減圧乾燥させて27.9gを得た。H−NMR分光測定は4−(3−メチル−4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルと一致したスペクトルを示した。
【0073】
工程3:
4−[4−ニトロ−3−((E)−2−ピロリジン−1−イル−ビニル)−フェニル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
【0074】
【化4】

【0075】
4−(3−メチル−4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(27.9g)をDMF 50mLに溶解させ、この溶液にN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(DMF−DMA)を加え、次に混合物を100℃にて18時間加熱した。この時点で混合物を水で希釈し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を水で4回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧濃縮して赤色油状物を得た。この油状物をジエチルエーテル及びヘキサンの混合物で粉砕して所期の生成物31.31gを得た。H−NMR分光測定は4−[4−ニトロ−3−((E)−2−ピロリジン−1−イル−ビニル)−フェニル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルと一致したスペクトルを示した。
【0076】
工程4:
4−(1H−インドール−5−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
【0077】
【化5】

【0078】
4−[4−ニトロ−3−((E)−2−ピロリジン−1−イル−ビニル)−フェニル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルを窒素雰囲気下、メタノール50mL中にて室温で攪拌した。この混合物にラネーニッケル1.5mL、続いてヒドラジン2.35gを加えた。この混合物を15分間攪拌した。この時点でヒドラジンをさらに1.17g加え、混合物を終夜攪拌した。次に、反応混合物をセライト濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をジエチルエーテル及び水の混合物中に分配した。有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、等量のヘキサンで希釈し、1:1(体積/体積)ジエチルエーテル/ヘキサンで溶出するシリカゲルプラグを通じて濾過した。濾液の減圧濃縮により得た固体をジエチルエーテル/ヘキサンの混合物で粉砕した。これによりオフホワイト固体3.33gを得た。H−NMR分光測定は4−(1H−インドール−5−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルと一致したスペクトルを示した。
【0079】
工程5:
4−(1−tert−ブトキシカルボニルメチル−1H−インドール−5−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
【0080】
【化6】

【0081】
4−(1H−インドール−5−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(8.50g)をDMF 70mL中で攪拌し、氷/水浴で冷却した。この混合物に水素化ナトリウム(鉱油中60%懸濁液1.35g)を少しずつ加えた。添加が完了した後、混合物を0℃で30分間攪拌し、その後ブロモ酢酸tert−ブチルエステル7.15gを加えた。反応混合物を2時間攪拌しながら室温に到達させた。この時点でブラインを混合物に加え、酢酸エチルを有機可溶性成分の抽出に使用した。有機層を水で4回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧濃縮して得た帯赤色油状物をヘキサン70mlに溶解させた。3日間の静置により析出物を形成した。濾過及び析出物のペンタンによる洗浄後、固体を乾燥させた。このようにして所望の生成物8.85gを得た。H−NMR分光測定は4−(1−tert−ブトキシカルボニルメチル−1H−インドール−5−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルと一致したスペクトルを示した。
【0082】
工程6:
(5−ピペラジン−1−イル−インドール−1−イル)−酢酸の調製
【0083】
【化7】

【0084】
4−(1−tert−ブトキシカルボニルメチル−1H−インドール−5−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(8.80g)をTFA 60mLの塩化メチレン120mL中混合物により室温で終夜処理した。この時点で溶媒を減圧除去した。これにより淡黄色残渣11.26gを得た。この残渣をさらに精製せずに次の工程で使用した。
【0085】
工程7:
4−(1−カルボキシメチル−1H−インドール−5−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステルの調製
【0086】
【化8】

【0087】
前回の工程で得た残渣の一部に炭酸カリウム6.65gならびにジオキサン及び水各20mLを加えた。この混合物にクロロギ酸9−フルオレニルメチルエステル(2.49g)を少しずつ加えた。次にこの混合物を1時間攪拌した後、水で希釈した。酢酸を使用して反応混合物を酸性化した。次に混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を減圧濃縮した。酢酸エチル除去により残留した残渣を、酢酸エチル、続いて塩化メチレン中10%メタノール(体積/体積)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーを通じて濾過した。次に、合わせた画分を、炭酸カリウム5gを含有する水300mLで処理し、この混合物をジエチルエーテルで2回抽出した。エーテル層を廃棄し、水層を酢酸で酸性化した。これにより形成された白色固体を濾取した。固体を水で洗浄し、真空オーブン中にて五酸化リンで乾燥させた。このようにして生成物1.71gを得た。H−NMR質量分析技術は4−(1−カルボキシメチル−1H−インドール−5−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステルと一致したスペクトルを示した。
【0088】
中間体2の調製
実施例7で使用する中間体4−[3−(1−カルボキシ−2−ヒドロキシ−エチル)−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−6−イル]−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル(Fmoc−HmoPqa−OH)を以下のように調製した。
【0089】
【化9】

【0090】
工程1:
2−ニトロ−5−ピペラジン−1−イル−安息香酸の調製
【0091】
【化10】

【0092】
5−クロロ−2−ニトロ−安息香酸(44g)及びピペリジン(90g、4.8当量)を無溶媒で混合し、110℃で6時間加熱した後、室温で終夜攪拌した。この時点で混合物は固体化した。この固体に10% KHSO(重量/体積、pH4〜5)水溶液を加え、混合物を超音波処理した。上清をデカントし、新たな10% KHSO(重量/体積)水溶液を加えた。このようにして10% KHSO4(重量/体積)水溶液合計1.8リットルを加え、デカントした。室温で攪拌後、固体を濾過し、水ですすいだ。残留固体を真空オーブン中で乾燥させて黄橙色固体(53.1g)を得た。この材料をさらに精製せずに次の工程に回した。
【0093】
工程2:
4−(3−カルボキシ−4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステルの調製
【0094】
【化11】

【0095】
前回の反応からの固体(15g)を10% NaHCO(重量/体積)水溶液(150mL)及びジオキサン(120mL)に懸濁させた。反応混合物を0℃に冷却し、この懸濁液に40分間かけてクロロギ酸9−フルオレニルメチルエステル(14.74g)のジオキサン(70mL)溶液を加えた。反応混合物を室温に到達させ、終夜攪拌した。この時点で水及び酢酸エチルを反応混合物に加え、相を分離した。水相を分離した後、濃塩酸でpH3〜4に酸性化した。析出した固体を濾過し、水で洗浄した後、真空オーブン中で乾燥させた。このようにして固体17.86gを得た。H−NMR分光測定は4−(3−カルボキシ−4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステルと一致したスペクトルを示した。
【0096】
工程3:
4−[3−(2−tert−ブトキシ−1−tert−ブトキシカルボニル−エチルカルバモイル)−4−ニトロ−フェニル]−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステルの調製
【0097】
【化12】

【0098】
4−(3−カルボキシ−4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル(16.8g)及びO−tert−ブチル−L−セリンtert−ブチルエステル塩酸塩(9.0g)の塩化メチレン懸濁液にN−ヒドロキシベンゾトリアゾール35.5mmolを加え、反応混合物を0℃に冷却した。この懸濁液にトリエチルアミン(10.4mL)を加えた。これにより懸濁液は溶液になった。この時点で1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(7.5g)を加えた。反応混合物を0℃で1時間、次に室温で2日間攪拌した。この時点で塩化メチレンを減圧除去し、酢酸エチルを加えて固体を形成した。酢酸エチルを蒸発させ、塩化メチレンを加えた。この有機層を10% KHSO(重量/体積)水溶液及びブラインで洗浄した後、5% NaHCO(重量/体積)水溶液で洗浄し、最後に再度ブラインで洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させて固体を得た。この固体を熱酢酸エチル(約2L)で粉砕した。これは固体の大部分を溶解させた。得られた溶液を硫酸マグネシウムで再度乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させて得た橙色油状物を室温への冷却により凝固した。この固体をジエチルエーテルにより室温で攪拌しながら粉砕した。濾過及びペンタンでの洗浄により固体20gを得た。H−NMR分光測定は4−(3−カルボキシ−4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イル−メチルエステルと一致したスペクトルを示した。
【0099】
工程4:
3−tert−ブトキシ−2−(2−ニトロ−5−ピペラジン−1−イル−ベンゾイルアミノ)−プロピオン酸tert−ブチルエステルの調製
【0100】
【化13】

【0101】
ジメチルホルムアミド(180mL)を使用して4−(3−カルボキシ−4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル(17g)を溶解させ、この溶液にジエチルアミン(18mL)を加えた。この混合物を室温で15分間攪拌した。この時点で水及び酢酸エチルを加えた。有機相を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。残渣をジエチルエーテルにより室温で粉砕し、固体を濾過し、ペンタンで洗浄した。これにより固体7.29gを得た。H−NMR分光測定は3−tert−ブトキシ−2−(2−ニトロ−5−ピペラジン−1−イル−ベンゾイルアミノ)−プロピオン酸tert−ブチルエステルと一致したスペクトルを示した。
【0102】
工程5:
4−[3−(2−tert−ブトキシ−1−tert−ブトキシカルボニル−エチルカルバモイル)−4−ニトロ−フェニル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
【0103】
【化14】

【0104】
3−tert−ブトキシ−2−(2−ニトロ−5−ピペラジン−1−イル−ベンゾイルアミノ)−プロピオン酸tert−ブチルエステル(8.59g)をテトラヒドロフラン(150mL)に溶解させ、ジ−tert−ブチルジカルボナート(4.56g)及び4−ジメチルアミノピリジン(230mg)を室温で加えた。反応混合物を室温で2時間攪拌した。この時点で溶媒を減圧除去し、残渣を水及び酢酸エチルに溶解させた。合わせた有機相を10% KHSO(重量/体積)水溶液、水で洗浄した後、5% NaHCO(重量/体積)水溶液で洗浄し、最後にブラインで洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させて少量にした。ペンタンの添加により固体析出物を形成した。固体を濾過し、真空オーブン中で乾燥させた。このようにして固体9.6gを得た。H−NMR分光測定は4−[3−(2−tert−ブトキシ−1−tert−ブトキシカルボニル−エチルカルバモイル)−4−ニトロ−フェニル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルと一致したスペクトルを示した。
【0105】
工程6:
4−[4−アミノ−3−(2−tert−ブトキシ−1−tert−ブトキシカルボニル−エチルカルバモイル)−フェニル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
【0106】
【化15】

【0107】
4−[3−(2−tert−ブトキシ−1−tert−ブトキシカルボニル−エチルカルバモイル)−4−ニトロ−フェニル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(10g)をメタノール250mLに溶解させた。この溶液を窒素雰囲気下、10%(重量/重量)パラジウム炭素触媒1.2gで処理した。次に混合物を脱気した後、水素ガス1気圧下室温で約2.5時間攪拌した。この時点で反応混合物をセライト濾過し、大量のメタノールで洗浄した。濃色濾液を減圧濃縮し、残渣を五酸化リンでさらに乾燥させた。このようにして所期の生成物9.49gを灰紫色固体として得た。H−NMR分光測定は4−[4−アミノ−3−(2−tert−ブトキシ−1−tert−ブトキシカルボニル−エチルカルバモイル)−フェニル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルと一致したスペクトルを示した。
【0108】
工程7:
4−[3−(2−tert−ブトキシ−1−tert−ブトキシカルボニル−エチル)−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−6−イル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
【0109】
【化16】

【0110】
4−[4−アミノ−3−(2−tert−ブトキシ−1−tert−ブトキシカルボニル−エチルカルバモイル)−フェニル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(8.7g)をホルムアミジン酢酸塩4.63gに溶解させ、この混合物を100〜115℃に40分間加熱した。その時点で反応混合物を室温に冷却し、混合物を減圧濃縮した。残渣を酢酸エチル及び水中に溶解させた。有機相を分離し、ブラインで洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過及び濾液の減圧濃縮により紫色残渣を得た。酢酸エチル:ヘキサンのステップグラジエント(20%、30%、35%)で溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ200g)によりこの残渣を精製した。適切な画分の回収及び溶媒の減圧除去の後、得られた残渣をペンタンで処理し、再度蒸発させた。真空オーブン中で残渣を乾燥させた後、淡色泡状物5.7gを得た。H−NMR分光測定は4−[3−(2−tert−ブトキシ−1−tert−ブトキシカルボニル−エチル)−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−6−イル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルと一致したスペクトルを示した。
【0111】
工程8:
3−ヒドロキシ−2−(4−オキソ−6−ピペラジン−1−イル−4H−キナゾリン−3−イル)−プロピオン酸の調製
【0112】
【化17】

【0113】
4−[3−(2−tert−ブトキシ−1−tert−ブトキシカルボニル−エチル)−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−6−イル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(4.7g)をアニソール(8mL)に溶解させ、氷水浴中で冷却した。トリフルオロ酢酸(80mL)をゆっくりと加えた。混合物を氷水浴で冷却しながら5分間攪拌した後、室温で5時間攪拌し、この時間のあいだに反応混合物の色は橙色から赤色、紫色、濃青色に経時的に変化した。この時点で反応溶媒を減圧除去して青色油状物を得た。この油状物を乾燥ジエチルエーテルで粉砕し、蒸発乾固させた。残渣を乾燥ジエチルエーテルで再度粉砕し、この溶媒と共に終夜攪拌した。この時点で混合物を濾過し、得られた固体をジエチルエーテルで洗浄し、真空オーブン中で乾燥させて固体4.4gを得た。この固体をさらに精製せずに次の工程で使用した。H−NMR分光測定は3−ヒドロキシ−2−(4−オキソ−6−ピペラジン−1−イル−4H−キナゾリン−3−イル)−プロピオン酸と一致したスペクトルを示した。
【0114】
工程9:
4−[3−(1−カルボキシ−2−ヒドロキシ−エチル)−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−6−イル]−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステルの調製
【0115】
【化18】

【0116】
3−ヒドロキシ−2−(4−オキソ−6−ピペラジン−1−イル−4H−キナゾリン−3−イル)−プロピオン酸(8.85mmol)を10%(重量/体積)炭酸水素ナトリウム水溶液に溶解させ、氷浴中に冷却した。ジオキサン30mLに溶解した炭酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステル9H−フルオレン−9−イルメチルエステル2.96gの溶液を0.5時間かけて滴下した。次に混合物を0℃で1時間、次に室温で4時間攪拌した。薄層クロマトグラフィーは反応が4時間の時点で完了したことを示したが、攪拌を終夜続けた。この時点で反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで2回抽出した。水相を0℃に冷却し、2N HCl水溶液でpH3に酸性化した。酸性化した水相を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過後、固体が析出し始めるまで濾液を減圧濃縮した。このようにして固体2.4gを得た。濾液のさらなる濃縮により第2の析出物(0.96g)を得た。濾液にジエチルエーテルを加えることで第3の画分を得た(1.15g)。合わせた材料の量は4.53gであった。H−NMR分光測定は4−[3−(1−カルボキシ−2−ヒドロキシ−エチル)−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−6−イル]−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステルと一致したスペクトルを示した。
【0117】
中間体3の調製
実施例8で使用する中間体4−(3−カルボキシメチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−6−イル)−[1,4]ジアゼパン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル(Fmoc−Dqa−OH)を以下のように調製した。
【0118】
【化19】

【0119】
工程1:
5−[1,4]ジアゼパン−1−イル−2−ニトロ−安息香酸の調製
【0120】
【化20】

【0121】
5−クロロ−2−ニトロ−安息香酸(42.3g)及びホモピペリジン(100g、4.8当量)を無溶媒で混合し、110℃で加熱した。10分後、混合物を溶融させて橙色の濃厚溶液を得た。45分の全反応時間後、混合物は濃黒褐色になり、非常に濃厚になった。この時点で混合物を室温に冷却し、10% KHSO(重量/体積)水溶液(pH4)で希釈した。この混合物を室温で約1時間攪拌した後、濾過した。固体をヘキサン及びジエチルエーテルの混合物、ジエチルエーテル、次にヘキサンですすいだ。次に固体を減圧乾燥させた。これにより濃褐色固体40.8g(73%)を得た。化合物をさらに分析又は精製せずに次の工程に回した。
【0122】
工程2:
4−(3−カルボキシ−4−ニトロ−フェニル)−[1,4]−ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
【0123】
【化21】

【0124】
5−[1,4]ジアゼパン−1−イル−2−ニトロ−安息香酸(40.8g)を1N NaOH溶液693mLに溶解させて濃褐色溶液を得た。この溶液にジオキサン1000mLを加えた。この混合物を0℃に1時間冷却した後、(Boc)O(53.8g、1.6当量)を加えた。反応混合物を終夜攪拌しながら室温にした。この時点で溶媒を減圧除去した。残渣を水2L中に溶解させた。未溶解の固体を濾去した。水性濾液を10% KHSO水溶液でpH3に酸性化した。析出した固体を濾去し、水ですすいだ。依然として湿潤しているが、固体を酢酸エチル(約3L)で粉砕した。上記酢酸エチル濾液を10% KHSO及びブラインで洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過及び濃縮により析出物が形成され始めた。この析出物を濾過し、ジエチルエーテル及びペンタンですすいだ。このようにして淡褐色固体246g(46%)を得た。
【0125】
工程3:
4−[3−(メトキシカルボニルメチル−アミノカルボニル)−4−ニトロ−フェニル]−[1,4]ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
【0126】
【化22】

【0127】
4−(3−カルボキシ−4−ニトロ−フェニル)−[1,4]−ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(37.27g、102mmol)及びグリシンメチルエステル塩酸塩107.1mmolを塩化メチレンに懸濁させた。この懸濁液にN−ヒドロキシベンゾトリアゾール102mmolを加え、混合物を氷水浴で冷却した。トリエチルアミン(214mmol)を加え、溶解させた。この時点で1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩1.1当量を加えた。この混合物を0℃で1時間、次に室温で3日間攪拌した。この時点で薄層クロマトグラフィーは4−[3−(カルボキシメチル−アミノカルボニル)−4−ニトロ−フェニル]−[1,4]ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの存在を示した。グリシンメチルエステル塩酸塩及びN−ヒドロキシベンゾトリアゾールさらに各5.1mmolならびにトリエチルアミン10.3mmolを加えた。反応混合物を室温でさらに24時間攪拌した。この時点で反応混合物を塩化メチレンで希釈し、水、10%(重量/体積)KHSO溶液、再度水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、再度水、最後にブラインで洗浄した。塩化メチレン溶液を減圧下で濃縮乾固させて濃褐色油状物を得た。油状物をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した。すなわち、カラムに塩化メチレン溶液を装入した後、酢酸エチル:ヘキサン(7:3)、最後に酢酸エチルで溶出した。このようにして、画分を回収し、減圧濃縮して4−[3−(メトキシカルボニルメチル−アミノカルボニル)−4−ニトロ−フェニル]−[1,4]ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル42.05g(94.4%)を得た。
【0128】
工程4:
4−[4−アミノ−3−(メトキシカルボニルメチル−アミノカルボニル)−フェニル]−[1,4]ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
【0129】
【化23】

【0130】
4−[3−(メトキシカルボニルメチル−アミノカルボニル)−4−ニトロ−フェニル]−[1,4]ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(38.4g)をメタノールに溶解させ、炭素上10%(重量/重量)パラジウム触媒4gを水(1000mL)と共に窒素雰囲気下で加えた。次に混合物を脱気した後、水素ガス1気圧下室温で約8時間攪拌した。この時点で反応混合物をセライト濾過し、大量のメタノールで洗浄した。濾液を減圧濃縮した。残渣にアセトニトリルを加えた後、溶媒を蒸発させた。4−[4−アミノ−3−(メトキシカルボニルメチル−アミノカルボニル)−フェニル]−[1,4]ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルを濃緑色油状物34.05g(95%)として得た。
【0131】
工程5:
4−(3−メトキシカルボニルメチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−6−イル)−[1,4]ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
【0132】
【化24】

【0133】
4−[4−アミノ−3−(メトキシカルボニルメチル−カルバモイル)−フェニル]−[1,4]ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(30.6g)をオルトギ酸トリエチル375mLにより125℃で18時間攪拌しながら処理した。この時点で反応混合物を減圧濃縮し、得られた残渣を酢酸エチル及び水中に溶解した。有機相を10%KHSO水溶液で3回、水で1回、ブラインで1回洗浄した。次に有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧濃縮した。ヘキサン中60%〜70%酢酸エチルで溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ500g)により生成物を精製した。適切な画分を回収し、蒸発乾固させた。得られた残渣をジエチルエーテルに溶解させ、再蒸発させ、この溶解及び再蒸発をペンタンを使用して繰り返した。泡状物として得られたすべての固体をプールして全収量15.56gの4−(3−メトキシカルボニルメチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−6−イル)−[1,4]ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルを得た。
【0134】
工程6:
4−(3−カルボキシメチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−6−イル)−[1,4]ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
【0135】
【化25】

【0136】
4−(3−メトキシカルボニルメチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−6−イル)−[1,4]ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(11.4g)をテトラヒドロフラン140mL及び水50mLに溶解させた。水90mlに溶解した水酸化リチウム一水和物2.3gをこの混合物に滴下した。この混合物を室温で終夜攪拌した。この時点で反応混合物を減圧濃縮した。水を加え、混合物を氷浴で冷却した。反応混合物を10% KHSO4(重量/体積)水溶液の添加によりpH4に酸性化して得た析出物を濾過し、水で洗浄した。真空オーブン中で乾燥させた後、固体7.5gを得た。得られた濾液を減圧濃縮し、ペンタンで粉砕した。これにより固体2.5gを得た。固体を合わせて4−(3−カルボキシメチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−6−イル)−[1,4]ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル10gを得た。
【0137】
工程7:
(4−オキソ−6−ピペラジン−1−イル−4H−キナゾリン−3−イル)−酢酸塩酸塩の調製
【0138】
【化26】

【0139】
4−(3−カルボキシメチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−6−イル)−[1,4]ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(9.8g)をジオキサン20mLに懸濁させた。この懸濁液に4N HCl/ジオキサン溶液(100mL)及びジオキサン20mLを加え、混合物を室温で3時間攪拌した。この時点で反応混合物の減圧濃縮により溶媒を除去し、残渣にテトラヒドロフランを加えた。混合物を再度減圧濃縮した。残渣を乾燥ジエチルエーテルで粉砕し、濾過し、乾燥ジエチルエーテルで洗浄した。このようにして固体14.74gを得た。この固体をさらに精製せずに使用した。
【0140】
工程8:
4−(3−カルボキシメチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−6−イル)−[1,4]ジアゼパン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステルの調製
【0141】
【化27】

【0142】
前回の工程で得た粗材料(4−オキソ−6−ピペラジン−1−イル−4H−キナゾリン−3−イル)−酢酸塩酸塩は10%(重量/体積)炭酸水素ナトリウム水溶液(pH9.5)に溶解させ、氷浴中に冷却した。ジオキサン60mLに溶解した炭酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステル9H−フルオレン−9−イルメチルエステル8.16gの溶液を1時間かけて滴下した。次に混合物を0℃で1時間、次に室温で1時間攪拌した。この時点で反応混合物は濃厚懸濁液になった。この混合物を水(1500mL)で希釈してゲルを得た。混合物を氷浴で冷却し、機械的攪拌をしながら濃塩酸でpH3に酸性化した。次に混合物を濾過し、水で洗浄した。固体を真空オーブン中で乾燥させて固体12.5gを得た。固体を熱酢酸エチルで粉砕した。室温に冷却することにより4−(3−カルボキシメチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−6−イル)−[1,4]ジアゼパン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル11.65gを濾取することができた。
【0143】
中間体4の調製
実施例9で使用する中間体4−(7−カルボキシメチル−6−オキソ−6,7−ジヒドロ−1H−プリン−2−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル(Fmoc−Pdp−OH)を以下のように調製した。
【0144】
【化28】

【0145】
【化29】

【0146】
工程1:
6−クロロ−3,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−4−オン2の調製
4,6−ジクロロ−3,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5−c]ピリジンの水溶液にNaOH水溶液(2当量)を加えた。反応の完了(TLCによりモニタリング)まで反応混合物を90℃で攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、濾過して淡黄色残渣を得た。残渣を水に溶解させ、pH3〜4に酸性化し、濾過して2を得た。
【0147】
工程2:
4−(4−オキソ−4,5−ジヒドロ−3H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−6−イル)ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル3の調製
6−クロロ−3,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−4−オン2のエチレングリコールモノメチルエーテル溶液にBoc−ピペラジン(1.1当量)を加えた。反応混合物を終夜攪拌還流させた後、濾過して固体を得た。固体を水で洗浄して3を得た。
【0148】
工程3:
4−(3−エトキシカルボニルメチル−4−オキソ−4,5−ジヒドロ−3H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−6−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル4の調製
4−(4−オキソ−4,5−ジヒドロ−3H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−6−イル)ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル3及び炭酸カリウム(0.8当量)のジメチルホルムアミド溶液にジメチルホルムアミド中ClCHCOOEt(1当量)を滴下した。溶液を終夜攪拌した。次に混合物を水で希釈し、塩化メチレンで抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を蒸発させた。酢酸エチルで溶出するシリカカラムクロマトグラフィーで生成物をさらに精製して4を固体として得た。
【0149】
工程4:
(4−オキソ−6−ピペラジン−1−イル−4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−3−イル)−酢酸エチルエステル5の調製
4−(3−エトキシカルボニルメチル−4−オキソ−4,5−ジヒドロ−3H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−6−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル4をN下室温で乾燥塩化メチレンに溶解させた。CFCOOH(5当量)を加え、反応混合物を1.5時間攪拌した。次に塩化メチレンを減圧除去し、残渣を精製せずに次の工程に使用した。
【0150】
工程5:
4−(3−エトキシカルボニルメチル−4−オキソ−4,5−ジヒドロ−3H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−6−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル6の調製
(4−オキソ−6−ピペラジン−1−イル−4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−3−イル)−酢酸エチルエステル5の塩化メチレン溶液に炭酸カリウム(2当量)及びわずかなテトラヒドロフラン/水(1:1)を加えた。混合物を20分間攪拌した。次に、塩化メチレンに溶解した炭酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステル9H−フルオレン−9−イルメチルを溶液に加えた。混合物を室温で終夜攪拌し、濾過し、溶媒を除去して得た残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して6を得た。
【0151】
工程6:
4−(3−カルボキシメチル−4−オキソ−4,5−ジヒドロ−3H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−6−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル7の調製
テトラヒドロフラン/水(7:1)に溶解した4−(3−エトキシカルボニルメチル−4−オキソ−4,5−ジヒドロ−3H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−6−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル6の溶液に1N LiOH水溶液(5当量)を室温で加えた。次に混合物を室温で10分間攪拌した。溶液を1N HClで酸性化した(pH=3〜4)。次にテトラヒドロフランを加えた。シリカゲルクロマトグラフィーによる精製により7を得た。
【0152】
中間体5の調製
実施例10で使用する中間体4−(7−カルボキシメチル−6−オキソ−6,7−ジヒドロ−1H−プリン−2−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル(Fmoc−Ppa−OH)を以下のように調製した。
【0153】
【化30】

【0154】
工程1
2−クロロ−1,7−ジヒドロ−プリン−6−オン2の合成
化合物2,6−ジクロロ−7H−プリン1(60g、300mL)及びNaOH(30g)の水中混合物を100℃で5時間攪拌した後、反応混合物を室温に冷却し、濾過した。固体を酢酸エチルで洗浄した後、水に溶解させ、pHが4に調整されるまでHCl水溶液で処理した。析出物を終夜形成し、固体を濾過し、わずかな水で洗浄し、乾燥させて2を得た。
【0155】
工程2
4−(6−オキソ−6,7−ジヒドロ−1H−プリン−2−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル3の合成
2−クロロ−1,7−ジヒドロ−プリン−6−オン2(5g)、ピペラジン(5.5g)及びエチレングリコールモノメチルエーテル30mLの混合物を終夜還流させた後、室温に冷却した。溶媒を濾去し、固体を水で洗浄して3を得た。
【0156】
工程3
4−(7−エトキシカルボニルメチル−6−オキソ−6,7−ジヒドロ−1H−プリン−2−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル4の合成
4−(6−オキソ−6,7−ジヒドロ−1H−プリン−2−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル3(1g)、炭酸カリウム及びジメチルホルムアミドの混合物を室温で2時間攪拌した後、ClCHCOOEtの溶液(0.38g/ジメチルホルムアミド5mL)を反応混合物に滴下した。15時間攪拌後、溶液を酢酸エチルと水との間で分配した。酢酸エチル溶液を水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧蒸発させ、カラムクロマトグラフィーの使用による残渣の精製により4を得た。
【0157】
工程4
(6−クロロ−2−ピペラジン−1−イル−プリン−7−イル)−酢酸エチルエステル5の合成
4−(7−エトキシカルボニルメチル−6−オキソ−6,7−ジヒドロ−1H−プリン−2−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル4 0.6gのPOCl 20mL中混合物を80℃に4時間加熱した。過剰のPOClを減圧濃縮により除去した。残渣を氷水に注いだ。pHを5N NaOHで調整した。溶液を塩化メチレンで抽出した。有機相を減圧濃縮して5を得た。
【0158】
工程5
(2−ピペラジン−1−イル−プリン−7−イル)−酢酸エチルエステル6の合成
(6−クロロ−2−ピペラジン−1−イル−プリン−7−イル)−酢酸エチルエステル5 1.47gのメタノール100mL溶液にN下で10% Pt/C 400mg及びMgO 1.1gを加えた後、反応液を4時間水素化した。触媒及びMgOを濾過し、メタノールで洗浄した。メタノールの減圧蒸発により6を得た。
【0159】
工程6
4−(7−エトキシカルボニルメチル−7H−プリン−2−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルエステル7の合成
(2−ピペラジン−1−イル−プリン−7−イル)−酢酸エチルエステル6 18mg及びFmoc−OSu 20mgを塩化メチレン20mLに溶解させ、反応混合物を5時間攪拌した後、濾過し、塩化メチレンを減圧除去し、得られた固体をカラムクロマトグラフィーで精製して7を得た。
【0160】
工程7
4−(7−カルボキシメチル−7H−プリン−2−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル8の合成
1N LiOH 0.1mL及び4−(7−エトキシカルボニルメチル−7H−プリン−2−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルエステル10mgのテトラヒドロフラン/水(7/1)2.1mL中混合物を室温で10分間攪拌した。3N HClを加えてpHを3〜4に調整し、混合物を減圧蒸発させて8を得た。
【0161】
中間体6の調製
実施例11で使用する中間体4−(6−アミノ−7−カルボキシメチル−7H−プリン−2−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルエステル(Fmoc−Appa−OH)を以下のように調製した。
【0162】
【化31】

【0163】
工程1
6−アミノ−2−クロロプリン2の調製
2,6−ジクロロ−プリン1(30g、0.159mol)をNH/MeOH溶液(300ml、MeOH中30重量% NH)に溶解させた。反応混合物をオートクレーブ中で攪拌し、100℃に48時間加熱した。冷却後、混合物を濾過し、固体をメタノールで洗浄した。次にそれを減圧乾燥させて2を淡黄色粉末(16g、収率60%)として得た。
【0164】
工程2
(6−アミノ−2−クロロ−プリン−7−イル)−酢酸1,1−ジメチルエチルエステル3の調製
化合物6−アミノ−2−クロロプリン(55g、0.324mol)、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム(8.6g、32.4mmol)及びKCO(53.7g、0.389mol)のDMSO(600ml)中混合物を0℃で攪拌した。2−ブロモ酢酸tert−ブチルを滴下した。反応が完了した時点で混合物をブラインに注ぎ、酢酸エチル(300ml×5)で抽出した。合わせた有機層をブラインで4〜5回洗浄した後、NaSOで乾燥させ、蒸発させた。CHCl:CHOH(8:1)で溶出するクロマトグラフィーで残渣を精製して3、6−アミノ−2−クロロ−プリン−7−イル)−酢酸1,1−ジメチルエチルエステル(5g、収率6%)を得た。
【0165】
工程3
4−(6−アミノ−7−tert−ブトキシカルボニルメチル−7H−プリン−2−イル)ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル4の調製
(6−アミノ−2−クロロ−プリン−7−イル)−酢酸1,1−ジメチルエチルエステル3(5g、17.6mmol)のジメチルスルホキシド(50ml)中攪拌混合物にピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチル(10g、53.8mmol)を120℃で加えた。添加後、混合物を約14時間攪拌した。水(100ml)及び酢酸エチル(100ml)を反応混合物に加えた。次に有機層をHOで数回洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮して得た粗生成物4−(6−アミノ−7−tert−ブトキシカルボニルメチル−7H−プリン−2−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル4(7g)を精製せずに次の工程に直接使用した。
【0166】
工程4
4−(6−アミノ−7−カルボキシメチル−7H−プリン−2−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル6の調製
粗生成物4(7g)のCHCl(200ml)中攪拌混合物にCFCOH(200ml)を徐々に加えた。混合物を終夜攪拌した。次に炭酸カリウムを加えてpHを7.5に調整した。次に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてpH8〜9を保持した。pHの調整後、THF中Fmoc−OSuc(10g)を混合物に加え、それをさらに5時間攪拌した。THFを蒸発させ、混合物を酢酸エチル(150ml×2)で洗浄した。水層を2N HClでpH3に調整し、ジクロロメタン(150ml×7)で抽出した。有機層をNaSOで乾燥させ、濃縮させて粗生成物(0.5g)を得た。分取HPLCによるさらなる精製により4−(6−アミノ−7−カルボキシメチル−7H−プリン−2−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル6(50mg)を得た。
【0167】
中間体7の調製
実施例12で使用する中間体5−(3−カルボキシメチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−6−イル)−2−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル(Fmoc−Bqa−OH)を以下のように調製した。
【0168】
【化32】

【0169】
工程1
シクロペンタジエン2の合成
ジシクロペンタジエン(200g、1.513mol)を180℃で蒸留して2を150g得た(収率:75%)。
【0170】
工程2
2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン3及び2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸フェニルメチルエステル4の合成
シクロペンタジエン2(120g、1.82mol)、塩化アンモニウム(291.8g、5.46mol)及び40%ホルムアルデヒド(221mL、2.73mol)の水(1L)中混合物を室温で48時間攪拌した。次にこの混合物にNaOH(220g、5.5mol)、CbzCl(310.5g、1.82mol)を加え、混合物を室温で終夜攪拌した。有機層を分離し、水相を酢酸エチルで2回抽出した。有機層を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させた。残渣を(石油エーテル/酢酸エチル=10:1)で溶出するシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーで精製して生成物4を透明油状物(192g、収率:46%)として得た。
【0171】
工程3
endo−5−ヒドロキシ−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−カルボン酸フェニルメチルエステル5の合成
4(50g、0.218mol)のテトラヒドロフラン(500mL)溶液にBH・テトラヒドロフラン(1M、218mL)を0℃で滴下した。添加後、混合物を室温で2時間攪拌した。反応液を水(130mL)の添加によりクエンチした後、NaOH(6M、130mL)及び水(30%、130mL)を加え、混合物を室温で30分間攪拌した。テトラヒドロフラン層を分離し、水相を酢酸エチルで3回抽出した。有機層を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させた。塩化メチレン/酢酸エチル(2/1)で溶出するクロマトグラフィーでの精製により生成物5を21.6g得た(収率:40%)。
【0172】
工程4
5−オキソ−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−カルボン酸フェニルメチルエステル6の合成
酸化クロム(23.5g)を濃硫酸(21mL)に冷却しながら溶解させてジョーンズ試薬を調製した後、蒸留水で希釈して全量175mLを得た。溶液の色が緑色から橙黄色に変化するまで、5(20g、0.08mol)にジョーンズ試薬を室温で加えた。混合物を酢酸エチルで抽出し、水で3回洗浄した。有機層を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させて6(17g、収率:85%)を得た。
【0173】
工程5
N−アセチルアントラニル酸8の合成
アントラニル酸(60g、0.44mol)の無水酢酸(60g、0.60mol)の混合物を65℃に加熱した。5分後、混合物を120℃で約3時間還流させた。反応混合物を水500mLに注いだ。固体を濾過し、乾燥させて生成物8(68g、収率:87%)を得た。
【0174】
工程6
N−アセチル−5−ブロモ−アントラニル酸9の合成
8(68g、0.38mol)の酢酸(500mL)中混合物に臭素(70g、0.44mol)を慎重に加えた後、混合物を室温で約18時間攪拌した。次に反応混合物を水(500mL)に注ぎ、濾過した。析出物を水で数回洗浄した。固体を乾燥させて生成物9(71g、72.4%)を得た。
【0175】
工程7
5−ブロモ−アントラニル酸10の合成
9(71g、0.275mol)の1,4−ジオキサン(400mL)中混合物にHCl(400mL)を加えた。混合物を110℃で4時間還流させた。次に混合物を濃縮し、水300mLに加えた。混合物を濾過し、pHを2N NaOHで6に調整し、水で洗浄し、乾燥させて10を白色固体(54.5g、収率:91.7%)として得た。
【0176】
工程8
6−ブロモキナゾリン11の合成
10(54.5g、0.252mol)の2−メトキシエタノール500mL溶液にホルムアミジン酢酸塩(34.1g、0.328mol)を加えた。反応混合物を4時間還流させ、室温に冷却し、水500mLを加えた。得られた黄色析出物を濾取して11(44.1g、収率:79%)を得た。
【0177】
工程9
5−ヒドロキシ−5−(4−オキソ−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−6−イル)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−カルボン酸ベンジルエステル12の合成
−78℃で攪拌した11(20g、88.8mmol)のテトラヒドロフラン(500mL)溶液にMeLi(40mL、120.4mmol)を滴下した。添加後、反応混合物を−78℃で10分間攪拌した。次に上記溶液にn−BuLi(46mL、2.5M)を−78℃で滴下した。添加後、混合物を−78℃で1時間攪拌した。次に、上記反応混合物に6(21.8g、88.9mmol)を加え、混合物を−78℃で2時間攪拌した後、水でクエンチした。混合物のpHを2N HClで3に調整した後、酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させた。塩化メチレン/酢酸エチル1/1→塩化メチレン/酢酸エチル/MeOH 1/1/0.1で溶出するシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーで残渣を精製して12を20.8g得た(収率59%)。
【0178】
工程10
5−(3−エトキシカルボニルメチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロキナゾリン−6−イル)−5−ヒドロキシ−2−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−カルボン酸ベンジルエステル13の合成
12(10g、25.6mmol)のジメチルホルムアミド(100mL)中混合物にBrCHCOCHCH(5.55g、33.21mmol)を加えた。混合物を室温で終夜攪拌した。反応液を水でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を水で5回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮して生成物13(9.7g、80%)を得た。
【0179】
工程11
5−(3−カルボキシメチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−6−イル)−2−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステルの合成
13(22.4g、47mmol)のHOAc(448mL)中混合物にHI(268mL)を加えた。混合物を120℃で終夜加熱還流させた。反応混合物を蒸発させ、そのpHを炭酸カリウム及びNaHCOで6〜7に調整した。次にテトラヒドロフラン50mLを加えた。混合物にFmocCl(15.68g、61mmol)を加え、室温で5時間攪拌した。次に反応混合物を酢酸エチルで抽出し、水で3回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させた。クロマトグラフィー(溶離液:塩化メチレン→塩化メチレン/MeOH/HAc 8/1/0.1)による精製により得た粗製の5−(3−カルボキシメチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−6−イル)−2−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル10.3gを分取HPLCでさらに精製して純粋な5−(3−カルボキシメチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−6−イル)−2−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル2.7gを得た(2工程で収率11%)。
【0180】
中間体8の調製
実施例13で使用する中間体4−(2−カルボキシメチル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−イソキノリン−7−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル10(Fmoc−Pipa−OH)を以下のように調製した。
【0181】
【化33】

【0182】
工程1
4−ブロモ桂皮酸2の調製
4−ブロモベンズアルデヒド1(110g、0.59mol)、マロン酸(112.5g、1.189mol)、ピペリジン(11mL)のピリジン(350mL)溶液を80℃で1時間加熱した後、3時間還流させた。次に反応混合物を室温に冷却し、冷水で満たした大型ビーカーに注いだ後、濃塩酸25mLをゆっくりと加えることで酸性化した(pH<3)。得られた析出物を濾過し、冷水で洗浄した。粗生成物を水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、酸性化し(pH<3)(1:1塩酸/水)、濾過し、洗浄した(冷水)。固体を減圧乾燥させて(60〜70℃)2(118.8g、88%)を得た。
【0183】
工程2
4−ブロモシンナモイルクロリド3の調製
化合物2(113.8g、0.5mol)の塩化チオニル溶液を1.5時間還流させた。次に混合物を減圧濃縮し、粗生成物3を得た(126.9g、93%)。
【0184】
工程3
4−ブロモシンナモイルアジド4の調製
【0185】
【化34】

【0186】
アジ化ナトリウム(67g、1mol)を水及びアセトンの混合物(300mL、1:1)に懸濁させた。混合物を0℃に冷却し、化合物3(126.9g、0.52mol)の乾燥アセトン(400mL)溶液を5℃で加えた。得られた混合物を0〜5℃で4時間攪拌した後、水(1.5L)に注いだ。析出物を濾去し、水で洗浄し、乾燥させた。Pでのさらなる減圧乾燥により4(130.3g、100%)を得た。
【0187】
工程4
7−ブロモ−2H−イソキノリン−1−オン5の調製
化合物4(121.6g、0.48mol)及びトリブチルアミン(177.9g、0.96mol)のジフェニルエーテル(1.2L)溶液をN下210℃で2時間加熱した。次に混合物を室温に冷却し、析出物を濾過し、ヘキサンで洗浄し、乾燥させて5(32g、30%)を得た。
【0188】
工程5
7−ブロモ−2−(2−ヒドロキシエチル)−イソキノリン−1−オン6の調製
化合物5(19.8g、88.4mmol)、炭酸カリウム(18.3g、133mmol)及び2−ブロモエタノール(13.3g、106mmol)のジメチルホルムアミド(200mL)溶液を80℃で12時間攪拌した。次に混合物を室温に冷却し、水に注いだ。混合物を酢酸エチルで抽出し(500mLで3回)、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、濃縮し、シリカゲル上のクロマトグラフィーで精製して6(16.2g、68%)を得た。
【0189】
工程6
4−[2−(2−ヒドロキシ−エチル)−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−イソキノリン−7−イル]ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル7の合成
化合物6(6.8g、25.4mmol)、ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチル(5.68g、30.5mmol)、Pd(dba)(775mg、0.85mmol)、S−Phos(1.16g)及びt−BuOK(5.7g、50.8mmol)のトルエン(100mL)溶液を窒素下90℃に終夜加熱した。次に混合物を室温に冷却し、濾過した。濾液を濃縮し、残渣を塩化メチレンに溶解させ、水で洗浄し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)で精製して7(6.1g、64%)を得た。
【0190】
工程7
化合物2−(2−ヒドロキシ−エチル)−7−ピペラジン−1イル−イソキノリン−1−オン8の合成
化合物7(6g、16.1mmol)の塩化メチレン(20mL)及びトリフルオロ酢酸(20mL)溶液を室温で1時間攪拌した。次に混合物を減圧濃縮して化合物8(4.3g、98%)を得た。
【0191】
工程8
4−[2−(2−ヒドロキシ−エチル)−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−イソキノリン−7−イル]ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル9の合成
飽和NaHCO水溶液(80mL)、化合物8(4.3g、15.7mmol)のテトラヒドロフラン溶液にクロロギ酸9−フルオレニルメチルエステル(1.5当量)を加えた。混合物を室温で2時間撹拌した後、濃縮した。残渣を酢酸エチルで抽出し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮して9(4.6g、収率59%)を得た。
【0192】
工程9:
標的化合物4−(2−カルボキシメチル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−イソキノリン−7−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル10の合成
塩化オキサリル(1.73g、13.6mmol)の塩化メチレン10mL溶液にジメチルスルホキシド(1.42g、18.2mmol)を−70℃で25分間かけて滴下した後、化合物9(2.25g、4.54mmol)の塩化メチレン(20mL)溶液を−70℃で50分間かけて滴下した。反応混合物を−55℃でさらに1時間攪拌した後、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(3.52g、27.2mmol)を5分間かけて加えた。混合物を0℃で30分間攪拌した。1M塩酸溶液(50mL)を反応混合物に加えた後、混合物を塩化メチレンで抽出し(100mLで3回)、合わせた有機相を飽和NaHCO水溶液及び水で洗浄し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮してアルデヒドを得た。
【0193】
このアルデヒド(2.2g、4.46mmol)、m−C(OH)(0.98g、8.92mmol)、NaHPO水溶液(10mL)、t−BuOH(5mL)のDMSO(50mL)溶液を0℃に冷却した後、NaClO水溶液(5mL)を滴下した。反応混合物を0℃で3時間攪拌し、水100mLを加え、pH<5に調整し、酢酸エチルで抽出し(100mLで3回)、乾燥し(硫酸ナトリウム)、濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル)で精製して標的化合物4−(2−カルボキシメチル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−イソキノリン−7−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル10(1.35g、収率58.7%)を得た。
【0194】
ここで本発明を以下の実施例においてさらに説明するが、これらは例示のみとして意図されており、本発明の範囲を限定しない。
【0195】
調製例
実施例1
Fmocリンカー−BHA樹脂の調製
ベンズヒドリルアミンコポリスチレン−1%ジビニルベンゼン架橋樹脂(10.0g、9.3ミリ当量、100〜200 ASTMメッシュ、Advanced ChemTech)をCHCl 100mL中で膨潤させ、濾過し、CHCl、6% DIPEA/CHCl(2回)、CHCl(2回)各100mlで連続的に洗浄した。樹脂を25%DMF/CHCl 100mL中p−((R,S)−α−(1−(9H−フルオレン−9−イル)−メトキシホルムアミド)−2,4−ジメトキシベンジル)−フェノキシ酢酸(Fmocリンカー)(7.01g、13.0mmole)、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(2.16g、16.0mmole)及びジイソプロピル−カルボジイミド(2.04ml、13.0mmol)を室温で24時間処理した。樹脂を濾過し、CHCl(2回)、イソプロパノール(2回)、DMF及びCHCl(3回)各100mlで連続的に洗浄した。カイザーニンヒドリン分析は陰性であった。樹脂を減圧乾燥させてFmocリンカー−BHA樹脂16.12gを得た。この樹脂の一部(3.5mg)をFmoc脱保護及びUV定量分析に供し、この分析は0.56mmol/gの添加を示した。
【0196】
実施例2
フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)化学を使用するApplied Biosystem 433Aシンセサイザーによるペプチドの合成のプロトコール
Applied Biosystem 433Aシンセサイザー(カリフォルニア州フォスターシティ)による0.25mmolスケールペプチド合成において、FastMoc 0.25mmoleサイクルを樹脂サンプリング又は非樹脂サンプリングのいずれかの41mL反応容器と共に使用した。Fmoc−アミノ酸樹脂をNMP 2.1g、0.45M HOBT/HBTU 2gと共にDMF及び2M DIEAに懸濁させた後、反応容器に移した。塩基性FastMocカップリングサイクルを「BADEIFD」として表した。ここで各文字はモジュール(Applied Biosystemsの定義による)を表す。例えば:
Bは20%ピペリジン/NMP及び関連洗浄液を使用するFmoc脱保護ならびに30分間の読み取り(UVモニタリング又は伝導率のいずれか)のためのモジュールを表し;Aはカートリッジ内のアミノ酸の0.45M HBTU/HOBt及び2.0M DIEAによる活性化ならびにNバブリングによる混合のためのモジュールを表し;Dは反応容器中の樹脂のNMP洗浄のためのモジュールを表し;Eはカップリング用の反応容器への活性化アミノ酸の移動のためのモジュールを表し;Iは反応容器上での又は反応容器から外してのボルテックスを伴う10分間の待機期間のためのモジュールを表し;Fはカートリッジの洗浄、約10分間のカップリング及び反応容器からの排出のためのモジュールを表す。典型的にはモジュール「I」を1回又は複数回付加することでカップリングを延長した。例えば、「BADEIIADEIFD」という手順を行うことで二重カップリングを実行した。塩化メチレン洗浄用のc及び無水酢酸でのキャッピング用の「C」などの他のモジュールも利用可能とした。例えば移動する溶媒又は試薬の量を改変するために移動時間などの様々な関数のタイミングを変化させることで各モジュールの改変も可能であった。上記サイクルを1つのアミノ酸のカップリングに典型的に使用した。しかし、テトラペプチドの合成にはサイクルを繰り返しかつつなぎ合わせた。例えば、BADEIIADEIFDを第1のアミノ酸のカップリングに使用し、続いてBADEIIADEIFDを第2のアミノ酸のカップリングに使用し、続いてBADEIIADEIFDを第3のアミノ酸のカップリングに使用し、続いてBADEIIADEIFDを第4のアミノ酸のカップリングに使用し、続いてBIDDccを最終脱保護及び洗浄に使用した。
【0197】
実施例3
H−Ile−Lys−Pro−Glu−Ala−Pro−Gly−Glu−Asp−Ala−Ser−Pro−Glu−Glu−Leu−Asn−Arg−Tyr−Tyr−Ala−Ser−Leu−Arg−His−Tyr−Leu−Asn−Leu−Val−The−Arg−Gln−Arg−Tyr−NH(PYY3−36)の調製
Applied Biosystem 433Aシンセサイザー上でFmoc化学を使用して上記ペプチドを合成した。実施例2に記載のモジュールを使用してシンセサイザーを二重カップリング用にプログラムした。実施例1からのFmocリンカー−BHA樹脂(450mg、0.25mmole)を使用して0.25mmoleスケールで合成を行った。合成の終わりに、切断のために樹脂を振盪機上の反応容器に移した。97% TFA/3% HO 13.5mL及びトリイソプロピルシラン1.5mLを室温で180分間使用してペプチドを樹脂から切断した。脱保護溶液を冷EtO 100mLに加え、TFA 1mL及び冷EtO 30mLで洗浄してペプチドを析出させた。ペプチドを2x50mLポリプロピレンチューブで遠心分離した。各チューブからの析出物を単一チューブ内にて合わせ、冷EtOで3回洗浄し、ハウスバキューム下、デシケーター中で乾燥させた。
【0198】
粗材料をPursuit C18カラム(250x50mm、粒径10μm)上で分取HPLCにより精製し、2〜70% Bのリニアグラジエント(緩衝液A:0.1% TFA/HO;緩衝液B:0.1% TFA/CHCN)により90分、流量60mL/分及び検出220/280nmにて溶出した。画分を回収し、分析用HPLCで点検した。純粋な生成物を含む画分を合わせて凍結乾燥させ、白色アモルファス粉末151mg(15%)を得た。(ES)+−LCMS m/e C1802795354の計算値(「calcd」)4049.55 実測値4050.40
【0199】
実施例4
Ac−Ile−Lys−Pqa−Arg−His−Tyr−Leu−Asn−Trp−Val−Thr−Arg−Gln−(NMe)Arg−Tyr−NHの調製
【0200】
【化35】

【0201】
実施例1からのFmocリンカー−BHA樹脂(450mg、0.25mmole)を、Fmoc−Pqaを使用する実施例3に記載の一般的手順に従って固相合成及び精製に供して白色アモルファス粉末53mg(9%)を得た。(ES)+−LCMS m/e C1061563422の計算値(「calcd」)2257.21 実測値2257.19.
【0202】
実施例5
Ac−Ile−Lys−Cba−Arg−His−Tyr−Leu−Asn−Trp−Val−Thr−Arg−Gln−(NMe)Arg−Tyr−NHの調製
【0203】
【化36】

【0204】
Fmocリンカー−BHA樹脂(450mg、0.25mmole)を実施例11に記載のように調製し、実施例3の一般的手順に従いかつFmoc−Cbaを使用することで固相合成及び精製に供して白色アモルファス粉末18mg(3.2%)を得た。(ES)+−LCMS m/e C1071553121の計算値(「calcd」)2210.20,実測値2210.19
【0205】
実施例6
Ac−Ile−Lys−Cip−Arg−His−Tyr−Leu−Asn−Trp−Val−Thr−Arg−Gln−(NMe)Arg−Tyr−NHの調製
【0206】
【化37】

【0207】
Fmocリンカー−BHA樹脂(450mg、0.25mmole)を実施例1に記載のように調製し、Fmoc−Cipを使用して実施例3の一般的手順に従うことで固相合成及び精製に供して白色アモルファス粉末16mg(3%)を得た。(ES)+−LCMS m/e C1061573321の計算値(「calcd」)2228.22、実測値2228.21。
【0208】
実施例7
Ac−Ile−Lys−HomPqa−Arg−His−Tyr−Leu−Asn−Trp−Val−Thr−Arg−Gln−(NMe)Arg−Tyr−NHの調製
【0209】
【化38】

【0210】
Fmocリンカー−BHA樹脂(450mg、0.25mmole)を実施例1に記載のように調製し、Fmoc−HomPQAを使用して実施例3の一般的手順に従うことで固相合成及び精製に供して白色アモルファス粉末11mg(2%)を得た。(ES)+−LCMS m/e C1071583423の計算値(「calcd」)2287.22、実測値2287.24。
【0211】
実施例8
Ac−Ile−Lys−Dqa−Arg−His−Tyr−Leu−Asn−Trp−Val−Thr−Arg−Gln−(NMe)Arg−Tyr−NHの調製
【0212】
【化39】

【0213】
Fmocリンカー−BHA樹脂(450mg、0.25mmole)を実施例1に記載のように調製し、Fmoc−Dqaを使用して実施例3の一般的手順に従うことで固相合成及び精製に供して白色アモルファス粉末22mg(4%)を得た。(ES)+−LCMS m/e C1071583422の計算値(「calcd」)2271.23、実測値2271.24。
【0214】
実施例9
Ac−Ile−Lys−Pdp−Arg−His−Tyr−Leu−Asn−Trp−Val−Thr−Arg−Gln−(NMe)Arg−Tyr−NHの調製
【0215】
【化40】

【0216】
Fmocリンカー−BHA樹脂(450mg、0.25mmole)を実施例1に記載のように調製し、Fmoc−Pdpを使用して実施例3の一般的手順に従うことで固相合成及び精製に供して白色アモルファス粉末17mg(3%)を得た。)+−LCMS m/e C103H1543622の計算値(「calcd」)2247.21、実測値2247.19。
【0217】
実施例10
Ac−Ile−Lys−Ppa−Arg−His−Tyr−Leu−Asn−Trp−Val−Thr−Arg−Gln−(NMe)Arg−Tyr−NHの調製
【0218】
【化41】

【0219】
Fmocリンカー−BHA樹脂(450mg、0.25mmole)を実施例1に記載のように調製し、Fmoc−Ppaを使用して実施例3の一般的手順に従うことで固相合成及び精製に供して白色アモルファス粉末117mg(21%)を得た。(ES)+−LCMS m/e C1031563621の計算値(「calcd」)2233.22、実測値2233.20。
【0220】
実施例11
Ac−Ile−Lys−Appa−Arg−His−Tyr−Leu−Asn−Trp−Val−Thr−Arg−Gln−(NMe)Arg−Tyr−NHの調製
【0221】
【化42】

【0222】
Fmocリンカー−BHA樹脂(450mg、0.25mmole)を実施例1に記載のように調製し、Fmoc−Appaを使用して実施例3の一般的手順に従うことで固相合成及び精製に供して白色アモルファス粉末98mg(17%)を得た。(ES)+−LCMS m/e C1031553721の計算値(「calcd」)2246.22、実測値2246.20。
【0223】
実施例12
Ac−Ile−Lys−Bqa−Arg−His−Tyr−Leu−Asn−Trp−Val−Thr−Arg−Gln−(NMe)Arg−Tyr−NHの調製
【0224】
【化43】

【0225】
Fmocリンカー−BHA樹脂(450mg、0.25mmole)を実施例1に記載のように調製し、Fmoc−Bqaを使用して実施例3の一般的手順に従うことで固相合成及び精製に供して白色アモルファス粉末79mg(4%)を得た。(ES)+−LCMS m/e C1081573322の計算値(「calcd」)2268.22、実測値2268.24。
【0226】
実施例13
Ac−Ile−Lys−Pipa−Arg−His−Tyr−Leu−Asn−Trp−Val−Thr−Arg−Gln−(NMe)Arg−Tyr−NHの調製
【0227】
【化44】

【0228】
Fmocリンカー−BHA樹脂(450mg、0.25mmole)を実施例1に記載のように調製し、Fmoc−Pipaを使用して実施例3の一般的手順に従うことで固相合成及び精製に供して白色アモルファス粉末118mg(21%)を得た。(ES)+−LCMS m/e C1071573322の計算値(「calcd」)2256.22、実測値2256.21。
【0229】
実施例14
cAMPアゴニストアッセイ
環状AMPアッセイ
この実施例では以下の材料を使用した:384ウェルプレート;Tropix cAMPスクリーンキット;cAMP ELISAシステム(Applied Biosystems、カタログ番号T1505;CS 20000);フォルスコリン(Calbiochemカタログ番号344270);細胞:ヒトNPY2受容体を発現させるHEK293細胞;増殖培地:DMEM(Gibcoカタログ番号11995065)、10%熱不活性化FBS(Gibcoカタログ番号10082−147)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibcoカタログ番号15140−122)、500mg/mL G418(ジェネテシン、Gibcoカタログ番号11811−031);プレーティング培地:DMEM/F12、フェノールレッドなし(Gibcoカタログ番号1133032)、10%熱不活性化FBS(Gibcoカタログ番号10082−147)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco カタログ番号15140−122)、500mg/mL G418(ジェネテシン、Gibcoカタログ番号11811−031);Versene(Gibcoカタログ番号15040066)。
【0230】
ヒトNPY2受容体を発現させるHEK293細胞を384ウェルプレートにマルチドロップディスペンサーを用いて9000細胞/ウェルの密度でプレーティングし、プレートを37℃で終夜増殖させた。翌日、75〜85%コンフルエンスに到達した細胞を実験に使用した。
【0231】
培地及び試薬を室温に昇温した。希釈液を調製する前に、NPY2受容体リガンド及び対照のジメチルスルホキシド(DMSO、Sigmaカタログ番号D2650)のストック溶液を32℃に5〜10分間昇温した。インキュベーション培地[0.5mM 3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX、Calbiochemカタログ番号410957)及び0.5mg/mL BSA(Sigmaカタログ番号A8806)を含有するDMEM/F12培地]を使用して希釈を行った。インキュベーション培地中のDMSO及びフォルスコリンの終濃度をそれぞれ1.1%及び5μMとした。
【0232】
プレーティング培地を、ペーパータオル上で384ウェルプレートをやさしくひっくり返すことで除去し、様々な濃度のNPY2受容体リガンド(4つの複製物/濃度)を含有するインキュベーション培地(50μL/ウェル)で置き換えた。プレートを室温で30分間インキュベートした。30分の処理期間後、インキュベーション培地を廃棄し、アッセイ溶解緩衝液(Tropixキットで与える)50μL/ウェルで置き換えた。プレートを37℃で45分間インキュベートすることで細胞を溶解させた。Tropixキットで供給したプレコーティング抗体プレート(384ウェル)に溶解液(20μl)を移した。AP抱合体(10μL)及び抗cAMP抗体(20μL)を各ウェルに加え、プレートを振盪機上にて室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液(70μL/ウェル/洗浄)で5回洗浄し、プレートをタップ乾燥させた。CSPD/Saphire-II RTU基質/エンハンサー溶液(30μL/ウェル)を加え、室温で45分間インキュベートした。各ウェルのシグナルをルミノメーター(VICTOR−V)を使用して測定した(1秒/ウェル)。
【0233】
実施例15
CaFluxアッセイ
Hek−293細胞にGタンパク質キメラGaqi9を安定的にトランスフェクトし、ハイグロマイシンB耐性遺伝子にヒトNPY2受容体及びG418抗生物質セレクションをさらにトランスフェクトした。ハイグロマイシンBとG418との両方における選択の後、個々のクローンをそのPYYに対する応答についてアッセイした。10%ウシ胎仔血清、50μg/mlハイグロマイシンB、2mMグルタミン、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン及び250μg/ml G418を補充したDMEM培地中でトランスフェクト細胞を培養した。細胞をトリプシン−EDTAで収集し、ViaCount試薬を用いて計数した。細胞緩衝液の容量を完全増殖培地で4.8x10細胞/mlに調整した。25μLのアリコートを384ウェルポリDリジンコーティング黒色/透明マイクロプレート(Falcon)に注ぎ、マイクロプレートを37℃ COインキュベーター中に終夜配置した。20mM HEPES及び5mMプロベネシドを含有するハンクス平衡塩類溶液1000mlに1つのバイアル(Express Kit)の内容物を溶解させて、添加緩衝液(カルシウム−3アッセイキット、Molecular Devices)を調製した。希釈色素25μLのアリコートを細胞プレートに分注し、次にプレートを37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション中、試験化合物をHBSS(20mM HEPES)/0.05% BSA/1% DMSO中の所望濃度の3.5倍で調製し、FLIPR上での使用のために384ウェルプレートに移した。インキュベーション後、細胞プレートと化合物プレートとの両方をFLIPRに運び、希釈化合物20μLをFLIPRにより細胞プレートに移した。アッセイ中、1.5秒毎に細胞プレートの全384ウェルから同時に蛍光読み取りを取得した。5つの読み取りを取得して安定的なベースラインを確立した後、試料20μLを速やかに(30μL/秒)かつ同時に細胞プレートの各ウェルに加えた。100秒の全経過時間において、試料添加の前、途中及び後に蛍光を連続的にモニタリングした。添加後の各ウェルにおける応答(ピーク蛍光の増加)を決定した。リガンド刺激の前の各ウェルからの初期蛍光読み取りを、そのウェルからのデータのゼロベースライン値として使用した。応答は正の対照の最大応答の%として表した。cAMPアッセイ及びCaFluxアッセイ(FLIPR)において示すように、本発明の化合物はインビトロでの選択的神経ペプチド2受容体活性を示した。実施例3〜13のインビトロ結果の概要を以下の表1に示す。
【0234】
【表3】

【0235】
式(I)に係る化合物は0.001nM〜10nMという上記アッセイのうち1つにおける活性(Y2R EC50)を有する。式(I)で示される最も好ましい化合物は0.001nM〜5nM、好ましくは0.001nM〜1nMという上記アッセイのうち1つにおける活性(Y2R EC50)を有する。
【0236】
実施例A
以下の成分を含有するフィルムコーティング錠剤を慣行的な様式で製造することができる。
成分 1錠剤当たり
カーネル:
式(I)で示される化合物 10.0mg 200.0mg
微結晶セルロース 23.5mg 43.5mg
含水乳糖 60.0mg 70.0mg
ポビドンK30 12.5mg 15.0mg
グリコール酸デンプンナトリウム 12.5mg 17.0mg
ステアリン酸マグネシウム 1.5mg 4.5mg
(カーネル重量) 120.0mg 350.0mg
フィルムコート:
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 3.5mg 7.0mg
ポリエチレングリコール6000 0.8mg 1.6mg
タルク 1.3mg 2.6mg
酸化鉄(イエロー) 0.8mg 1.6mg
二酸化チタン 0.8mg 1.6mg
【0237】
有効成分を篩い分け、微結晶セルロースと混合し、混合物をポリビニルピロリドンの水溶液と共に顆粒化する。顆粒をグリコール酸デンプンナトリウム及びステアリン酸マグネシウムと混合し、圧縮して120mg又は350mgのカーネルをそれぞれ得る。カーネルを上記フィルムコートの水溶液/水性懸濁液でラッカー塗装する。
【0238】
実施例B
以下の成分を含有するカプセル剤を慣行的な様式で製造することができる。
成分 カプセル剤当たり
式(I)で示される化合物 25.0mg
乳糖 150.0mg
トウモロコシデンプン 20.0mg
タルク 5.0mg
【0239】
これらの成分を篩い分け、混合し、サイズ2のカプセルに充填する。
【0240】
実施例C
注射液剤は以下の組成を有し得る。
式(I)で示される化合物 3.0mg
ポリエチレングリコール400 150.0mg
酢酸 適量約pH5.0
注射液剤用水 約1.0ml
【0241】
有効成分をポリエチレングリコール400及び注射液剤用水(一部)の混合物に溶解させる。pHを酢酸で5.0に調整する。残りの量の水を加えることで容量を1.0mlに調整する。溶液を濾過し、適切な過剰量を使用してバイアルに充填し、滅菌する。
【0242】
実施例D
以下の成分を含有する軟ゼラチンカプセル剤を慣行的な様式で製造することができる。
カプセル内容物
式(I)で示される化合物 5.0mg
黄蝋 8.0mg
硬化大豆油 8.0mg
部分硬化植物油 34.0mg
大豆油 110.0mg
カプセル内容物の重量 165.0mg
ゼラチンカプセル
ゼラチン 75.0mg
グリセロール85% 32.0mg
Karion 83 8.0mg (乾燥物)
二酸化チタン 0.4mg
酸化鉄イエロー 1.1mg
【0243】
有効成分を他の成分の暖かい溶融物中に溶解させ、混合物を適切なサイズの軟ゼラチンカプセルに充填する。充填した軟ゼラチンカプセルを通常の手順に従って処理する。
【0244】
実施例E
以下の成分を含有するサシェ剤を慣行的な様式で製造することができる。
式(I)で示される化合物 50.0mg
乳糖、微粉 1015.0mg
微結晶セルロース(AVICEL PH 102) 1400.0mg
カルボキシメチルセルロースナトリウム 14.0mg
ポリビニルピロリドンK 30 10.0mg
ステアリン酸マグネシウム 10.0mg
調味添加剤 1.0mg
【0245】
有効成分を乳糖、微結晶セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムと混合し、ポリビニルピロリドンの水中混合物と共に顆粒化する。顆粒をステアリン酸マグネシウム及び調味添加剤と混合し、サシェ剤に充填する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
Y−R−R−X−R−R−R−R−R−R−R−R10−R11−R12−R13−R14−NH (I)
[式中、
Xは、(4−アミノメチル−ビフェニル−3−イル)−酢酸(Cba)、(5−ピペラジン−1−イル−インドール−1−イル)−酢酸(Cip)、3−(4−オキソ−6−ピペラジン−1−イル−4H−キナゾリン−3−イル)−プロピオン酸(HomPqa)、(6−[1,4]ジアゼパン−1−イル−4−オキソ−4H−キナゾリン−3−イル)−酢酸(Dqa)、(6−オキソ−2−ピペラジン−1−イル−1,6−ジヒドロプリン−7−イル)−酢酸(Pdp)、(2−ピペラジン−1−イル−プリン−7−イル)−酢酸(Ppa)、(6−アミノ−2−ピペラジン−1−イル−9H−プリン−8−イル)−酢酸(Appa)、((1R,4S)−6−2−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−イル−4−オキソ−4H−キナゾリン)−酢酸(Bqa)又は(1−オキソ−7−ピペラジン−1−イル−1H−イソキノリン−2−イル)−酢酸(Pipa)であり;
YはH又はアシル部分であり;
は、Ile、Ala、(D)Ile、N−メチルIle、Aib、1−1Aic、2−2Aic、Ach又はAcpであり;
は、Lys、Ala、(D)Lys、N−メチルlys、Nle又は(Lys−Gly)であり;
は、Arg、Ala、(D)Arg、N−メチルArg、Phe、3,4,5−トリフルオロPhe又は2,3,4,5,6−ペンタフルオロPheであり;
は、His、Ala、(D)His、N−メチルHis、4−MeOApc、3−Pal又は4−Palであり;
は、Tyr、Ala、(D)Tyr、N−メチルTyr、Trp、Tic、Bip、Dip、(1)Nal、(2)Nal、3,4,5−トリフルオロPhe又は2,3,4,5,6−ペンタフルオロPheであり;
は、Leu、Ala、(D)Leu又はN−メチルLeuであり;
は、Asn、Ala又は(D)Asnであり;
は、Leu又はTrpであり;
は、Val、Ala、(D)Val又はN−メチルValであり;
10は、Thr、Ala又はN−メチルThrであり;
11は、Arg、(D)Arg又はN−メチルArgであり;
12は、Gln又はAlaであり;
13は、Arg、(D)Arg又はN−メチルArgであり、
14は、Tyr、(D)TyrもしくはN−メチルTyr、修飾Tyr、Phe、修飾Phe、(1)Nal、(2)Nal、Cha、C−α−メチルTyr又はTrpである]で示される神経ペプチド2受容体アゴニスト又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
Xが、(4−アミノメチル−ビフェニル−3−イル)−酢酸(Cba)、(5−ピペラジン−1−イル−インドール−1−イル)−酢酸(Cip)、3−(4−オキソ−6−ピペラジン−1−イル−4H−キナゾリン−3−イル)−プロピオン酸(HomPqa)、(6−[1,4]ジアゼパン−1−イル−4−オキソ−4H−キナゾリン−3−イル)−酢酸(Dqa)、(6−オキソ−2−ピペラジン−1−イル−1,6−ジヒドロプリン−7−イル)−酢酸(Pdp)、(2−ピペラジン−1−イル−プリン−7−イル)−酢酸(Ppa)、(6−アミノ−2−ピペラジン−1−イル−9H−プリン−8−イル)−酢酸(Appa)、((1R,4S)−6−2−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−イル−4−オキソ−4H−キナゾリン)−酢酸(Bqa)又は(1−オキソ−7−ピペラジン−1−イル−1H−イソキノリン−2−イル)−酢酸(Pipa)であり;
Yがアシル部分である、
請求項1記載の神経ペプチド2受容体アゴニスト。
【請求項3】
式(II):
Y−Ile−Lys−X−Arg−His−Tyr−Leu−Asn−Trp−Val−Thr−Arg−Gln−(NMe)Arg−Tyr−NH (II)
[式中、
Xは、(4−アミノメチル−ビフェニル−3−イル)−酢酸(Cba)、(5−ピペラジン−1−イル−インドール−1−イル)−酢酸(Cip)、3−(4−オキソ−6−ピペラジン−1−イル−4H−キナゾリン−3−イル)−プロピオン酸(HomPqa)、(6−[1,4]ジアゼパン−1−イル−4−オキソ−4H−キナゾリン−3−イル)−酢酸(Dqa)、(6−オキソ−2−ピペラジン−1−イル−1,6−ジヒドロプリン−7−イル)−酢酸(Pdp)、(2−ピペラジン−1−イル−プリン−7−イル)−酢酸(Ppa)、(6−アミノ−2−ピペラジン−1−イル−9H−プリン−8−イル)−酢酸(Appa)、((1R,4S)−6−2−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−イル−4−オキソ−4H−キナゾリン)−酢酸(Bqa)又は(1−オキソ−7−ピペラジン−1−イル−1H−イソキノリン−2−イル)−酢酸(Pipa)であり;
Yはアシル部分である]を有する、請求項1又は2記載の神経ペプチド2受容体アゴニスト。
【請求項4】
以下から選択される、請求項1〜3のいずれか一項記載の神経ペプチド2受容体アゴニスト。
【表4】

【請求項5】
治療活性物質として使用される、請求項1〜4のいずれか一項記載の神経ペプチド2受容体アゴニスト。
【請求項6】
神経ペプチド2受容体アゴニストにより調節される疾患の治療又は予防のための治療活性物質として使用される、請求項1〜4のいずれか一項記載の神経ペプチド2受容体アゴニスト。
【請求項7】
治療有効量の請求項1〜4のいずれか一項記載の神経ペプチド2受容体アゴニストと薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項8】
神経ペプチド2受容体アゴニストにより調節される疾患の治療又は予防のための請求項1〜4のいずれか一項記載の神経ペプチド2受容体アゴニストの使用。
【請求項9】
肥満、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性又は脂質異常症の治療又は予防のための請求項1〜4のいずれか一項記載の神経ペプチド2受容体アゴニストの使用。
【請求項10】
肥満、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性又は脂質異常症の治療又は予防のための医薬の調製のための請求項1〜4のいずれか一項記載の神経ペプチド2受容体アゴニストの使用。
【請求項11】
肥満、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性又は脂質異常症の治療又は予防のための方法であって、有効量の請求項1〜4のいずれか一項記載の神経ペプチド2受容体アゴニストを投与する段階を含む方法。
【請求項12】
以上に記載の発明。

【公表番号】特表2012−502888(P2012−502888A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526471(P2011−526471)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061524
【国際公開番号】WO2010/031707
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】