説明

神経保護作用を有する栄養補助食品

【課題】改善された神経保護活性を有し、神経変性を予防し、改善しまたは阻止し、そして認知機能低下を予防し、阻止しおよび/または改善する、新規な栄養補助食品混合物を提供すること。
【解決手段】配列1:NMVPFPRまたは配列2:ASAFQGIGSTHWVYDGVGNSにより定義される2種のペプチドのうちの少なくとも1種を含むペプチド調合物を含み、神経保護活性を有する新規の栄養補助食品混合物が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経保護剤として有用であり、経口で投与される、新規の栄養補助食品に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者の数は世界中で着実に増加している。現在、高齢者がより長生きするようになったことは事実である。従って、加齢性欠損症(age−related deficiencies)、例えば、老年性記憶障害、認知低下等が、社会における重要な健康問題となっている。
【0003】
特許文献1は、α−リポ酸およびγ−リノール酸または大豆リン脂質のような、神経保護活性を有する天然物質を、抗炎症性および抗酸化性、および糖および脂肪代謝制御特性を有する化合物と組み合わせて、ビタミンBの複合体と一緒に、均整のとれた量で含む栄養補助食品を開示している。
【特許文献1】欧州特許出願(EP−A2)第1325747号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、改善された神経保護活性を有し、神経変性を予防し、改善しまたは阻止し、そして認知機能低下を予防し、阻止しおよび/または改善する、新規な栄養補助食品混合物を提供することにある。
【0005】
本発明のもう1つの目的は、経口剤形で投与するための栄養補助食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
神経保護活性を有する新規の栄養補助食品混合物は、配列1:NMVPFPRまたは配列2:ASAFQGIGSTHWVYDGVGNSにより定義される、2種のペプチドのうちの少なくとも1種を含むペプチド調合物を含む。
【0007】
新規の栄養補助食品混合物は、加齢性の神経変性、加齢性の認知低下および加齢性の記憶障害を予防または改善することができる。これは、ヒト、特にヒト高齢者における記憶、注意および覚醒(vigilance)を改善する物質として利用できる。
【0008】
[図面の簡単な説明]
[図1]図1は、シアン化ナトリウムへの暴露により誘導される細胞毒性の低酸素後24時間での、神経の生存率における本発明の種々の用量での効果を示す。
[図2]図2は、シアン化ナトリウムへの暴露により誘導される細胞毒性の低酸素後48時間での、神経の生存率における本発明の種々の用量での効果を示す。
[図3]図3は、コルヒチンへの暴露により誘導される細胞骨格崩壊後24時間での、神経の生存率における本発明の種々の用量での効果を示す。
[図4]図4は、コルヒチンへの暴露により誘導される細胞骨格崩壊後48時間での、神経の生存率における本発明の種々の用量での効果を示す。
[図5]図5は、1日目と5日目との間の逃避潜時における差異を示す。
[図6]図6は、試験1〜4、5〜8および9〜12日目での、モリス水迷路における遊泳軌跡の長さを示す。
[図7]図7は、海馬体の種々の領域におけるシナプトフィシン免疫反応性の領域を、コントロール値のパーセントで示す。
[図8]図8は、健康で高齢な被験者における、ADASの記憶項目を用いることにより評価される記憶能力に対する本発明の効果を示す。
【0009】
新規の栄養補助食品混合物は、主として10kDa以下の分子量を有する分子を含み、以下の配列:
配列1:NMVPFPR
配列2:ASAFQGIGSTHWVYDGVGNS
により定義されるペプチドのうち少なくとも1種を含む。
【0010】
配列決定は、一般的な公知の技術、例えば質量分析、タンデム質量分析、電気泳動、クロマトグラフ分離、それに続く配列決定等により実施した。
【0011】
新規の栄養補助食品混合物はさらに、10kDa以下の分子量を有する追加のペプチドを含むことができる。
【0012】
それはさらに、アミノ酸を含むことができる。
【0013】
適当なアミノ酸は、例えばアスパラギン(N)、メチオニン(M)、グルタミン酸(E)、バリン(V)、プロリン(P)、アルギニン(R)、アラニン(A)、システイン(C)、フェニルアラニン(F)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、スレオニン(T)、イソロイシン(I)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、スレオニン(T)、セリン(S)、ヒスチジン(H)、アスパラギン酸(D)、リジン(K)、ロイシン(L)等である。アミノ酸は、好ましくはそれらの光学活性体で使用され、最も好ましくはL−アミノ酸が使用される。
【0014】
新規の栄養補助食品混合物はさらに、ビタミン、例えばビタミンA、B群の種々のビタミン、ビタミンC、ビタミンD、Eおよび/またはKを含むことができる。さらに、それはミネラル物質および/または微量元素、例えばカルシウム、マグネシウム、鉄、銅、ナトリウム、亜鉛、マンガン、ヨウ素、カリウム、セリン、クロム、モリブデン、フッ素、塩素、リンを含むことができる。さらなる成分はカフェインおよびタウリン、Ω−脂肪酸のような脂肪酸、アルファリポ酸、リン脂質、ホスファチジルセリン、植物抽出物、例えば、イチョウ、ヒューペルジン、DMAE(ジメチルアミノエタノール)のような神経伝達物質の前駆体等であってもよい。
【0015】
それはさらに、フレーバー物質、着色剤、例えば二酸化チタン、酸化鉄等および/または防腐剤等を含むことができる。防腐剤は、以下のものでよい:
− エチルパラベン(p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル)
− 塩化ベンズアルコニウム
− 塩化ベンゼトニウム
− 安息香酸
− ブチルパラベン(p−ヒドロキシ安息香酸ブチルエステル)
− メチルパラベン(p−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル)
− ソルビン酸カリウム
− プロピオン酸
− プロピルパラベン(p−ヒドロキシ安息香酸プロピルエステル)
− 安息香酸ナトリウム
− プロピオン酸ナトリウム
− ソルビン酸。
【0016】
前記混合物はさらに、許容可能な添加剤、増量剤および/または賦形剤、例えば微結晶性セルロース、マルトデキストリン、ステアリン酸マグネシウム、コロイダルシリカ、二酸化ケイ素、ラクトース、マルト−ス、カルボキシメチルセルロースナトリウム、改質セルロース、植物セルロース、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム、植物グリセリン、ナトリウムスターチ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルポリピロリドン、セルロースガム、ステアリン酸、ゼラチン、マンニトール、アスコルビン酸ナトリウム、グリセリン、米粉(riceflour)、マルトデキストリンジ−カリウムホスフェート等を含むことができる。
【0017】
好ましくは、本発明の栄養補助食品混合物は、10〜30重量%のペプチド、2〜20重量%のアミノ酸、および2〜76重量%までの上述に定義されるような追加成分、増量剤等を含むことができる。
【0018】
前記栄養補助食品混合物は、錠剤、コーティング錠剤、カプセル剤、泥膏、チュアブル錠(chewing tablets)または飲料用溶液(drinking solutions)の形態で経口的に投与することができる。コーティング錠剤が使用される場合には、前記調合物は胃液に対して耐性のものでよく、すなわち腸溶コーティング剤形(enteric coated dosage form)を使用することができる。栄養補助食品混合物は、経口剤形で、少なくとも1日に1回投与される。
【0019】
本発明の栄養補助食品生成物は、好ましくは哺乳類、特にヒト、最も好ましくはヒト高齢者において、加齢の過程に関連する欠損症を予防し、改善し、阻止するのに有用である。
【0020】
これは、低酸素または虚血の結果による加齢性の神経損傷、細胞内カルシウム過多による加齢性の神経損傷の結果、例えばL−グルタメート(L−glutamate)により誘導される加齢性の神経損傷の結果、および酸化的ストレスによる加齢性の神経損傷の結果を予防し、阻止し、および/または改善するために、代謝低下および加齢の過程に伴うストレスに対して神経を保護するための物質として使用することができる。
【0021】
これはまた、加齢に伴う神経変性の結果の予防、阻止および/または改善に、細胞性ストレス、神経変性を引き起こす事象および中毒による神経細胞死の予防に、加齢の過程の間の正常な神経細胞構造の維持および保存に、シナプス機能およびシナプス密度の支持および/または改善に、シナプス可塑性およびシナプス密度の加齢性の低下の結果、過程の予防、阻止および/または改善に、注意および記憶能力に関連する大脳メカニズムの活性化に、認知機能低下の予防、阻止および/または改善に、記憶機能低下の予防、阻止および/または改善に、注意欠陥の予防、阻止および/または改善に、加齢過程に伴う覚醒の減少の予防、阻止および/または改善に、および長期記憶および手続き記憶ならびに学習能力、注意および覚醒の支持、維持および/または改善に、および加齢過程の間の健康な精神機能の保存/支持に、特に有用である。
【実施例】
【0022】
<実施例1>
粉末混合物の製造:
− 6.7%のペプチド、17.5%のアミノ酸および75.8%のラクトースを含む49.490kgの粉末−6.738kgのカルボキシメチルセルロース
− 9.607kgの微結晶性セルロース
− 0.525kgのコロイダルシリカ無水物
を、1.2mmの篩スクリーン(sieving screen)を用いてステンレス鋼製ドラム中に篩別(sieved)し、タンブル型ミキサー(tumble type mixer)を用いて、6rpmのミキサースピードで10分間混合した(混合物1)。
【0023】
1.015kgのステアリン酸マグネシウムを、1.2mmの篩スクリーンを用いて、混合物1を含むステンレス鋼製ドラム中に篩別した。その後、顆粒全体をタンブル型ミキサーを用いて、4rpmのミキサースピードで5分間混合した(最終混合物)。
【0024】
粉末混合物の圧縮(錠剤化)
1時間あたり約40,000錠剤の打錠スピードで、混合物を打錠機で圧縮した。直径が11mmで、円形の、両面が凸状であるパンチ(punch)の形状を使用した。
【0025】
これにより、以下の特性を有する錠剤が得られた:
− 平均重量:385.0+/−7.7mg
− 硬度:40〜70N
− 崩壊性:15.00分以下
− 摩損度:1.00%以下
(全ての試験法は欧州薬局方(Ph.Eur.)に従う)
<実施例2>
錠剤のコーティング
実施例1により得られた錠剤はコーティングすることができる。
【0026】
以下の成分をプロペラミキサーで混合してフィルムコーティング懸濁液を形成させる:− 23.810kgのセルロースアセテートフタレート(30%水溶液)
− 0.595kgのタルク
− 0.833kgの二酸化チタン
− 1.429kgのクエン酸トリエチル。
【0027】
ドラム式コーティング機(drum coater)において、フィルム錠剤(filmtablet)あたり428.0mgの最終重量になるまで錠剤をフィルムコーティング懸濁液でコーティングした。
【0028】
コーティング錠剤は、ワックスまたはパラフィンで光沢を与えることができる。
【0029】
これにより、以下のパラメーターを有するフィルムコーティングされた白色の錠剤が得られた:
− 平均重量:428.0+/−8.6mg
− 崩壊性:30.00分以下
− 摩損度:1.00%以下
(全ての試験法は欧州薬局方に従う)
<実施例3>
錠剤化に使用する粉末混合物(実施例1参照)は、あるいは硬ゼラチンカプセルに充填することができる。
【0030】
サイズが0または#1の硬ゼラチンカプセルに、385mgの粉末混合物を充填する。そして、以下のパラメーターを有するカプセル剤が得られる:
− 平均重量:462.0+/−28.8mg(サイズ1)
− 平均重量:481.0+/−28.8mg(サイズ0)
− 崩壊性:15.00分以内。
【0031】
サイズ2および3の硬ゼラチンカプセルを、同等の顆粒含量に対して代わりに使用することができる。
【0032】
<実施例4>
飲料用溶液の製造
− 6.7%のペプチド、17.5%のアミノ酸および75.8%のラクトースを含む70.72gの粉末
− 400.00gのサッカロース
− 5.00gの安息香酸
を、プロペラミキサーに装備されたガラスフラスコ中で1500gの水に溶解する。ほぼ透明な溶液が形成する(溶液1)。
【0033】
− 85.0mgのリボフラビン
− 17.00gのストロベリーエッセンス
− 10.00gのアロマミルク−カラメルまたは2.6gのアロマオレンジ
を、プロペラミキサーに装備されたガラスフラスコ中で溶液1に溶解する。ほぼ透明な溶液が形成する(溶液2)。
【0034】
− 125.0mgのビタミンE
を、プロペラミキサーに装備されたガラスフラスコ中で200.00gの水に懸濁した。この懸濁液を溶液2に添加した(溶液3)。
【0035】
− 5.00gのアルギン酸ナトリウム
を、500.00gの温水に溶解し、溶液3に添加する(溶液4)。
【0036】
溶液4を水で5000mlにし、プロペラミキサーに装備されたガラスフラスコ中で混合した。ほぼ透明な溶液が形成し、それをさらに0.45μmの膜フィルターを通したろ過により浄化する。該溶液を、ねじぶたを有する20mlのガラス瓶に充填する。
【0037】
<実施例5>
神経保護効果−種々の加齢に伴う損傷に対する、培養皮質ニューロンの保護
(5.1. 方法)
必要な器具類は全て、実験前に滅菌を行った。原液は既に滅菌されているものを購入し、最終溶液は層流空気流キャビネット(laminar airflow cabinet)中で混合した。
【0038】
損傷のアッセイ用の培養培地は、4.5gのグルコース/L、5%のウシ胎仔血清、0.01%のゲンタマイシンおよび2mMのL−グルタミンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)からなる。培地中のL−グルタミンは増殖および分化に必要であり、ゲンタマイシンは細胞培養にマイコプラズマまたはその他の不要な微生物が感染するのを防ぐために添加されなくてはならない。栄養培地は、各実験ごとに、滅菌条件下にある層流空気流キャビネット中で新たに調製された。
【0039】
実験に使用された細胞は、ローマンブラウンニワトリ胎仔(Lohman Brown chicken embry)のハイブリッドであった。1日齢の受精卵を近辺のニワトリ生産者(Schlierbach Gefluegel GmbH、オーストリア)から購入し、適当な条件下(12±0.3℃および80±5%の湿度)にある実験室に置いた。胎生期0日目に、卵を飼育インキュベーターに移し、胎生期8日目まで38±0.5℃および55±5%の湿度で、一定の回転下に置いておく。ニューロンの単離のためには、実験毎に3〜4羽のニワトリ胎仔を使用する。発生の一定期間においてのみ、脳はほとんど独占的に神経細胞および5%未満のグリアを含むので、胎仔の年齢は非常に重要である(Pettmann, B., Louis, J.C. and Sensenbrenner, LM. (1979) Nature 281:378−380)。
【0040】
卵を70%エタノールで拭き、丸い部分を大きなピンセットで割った。胎児の断頭後、終脳を覆う組織を除去して半球(hemispheres)を回収した。リース組織(lease tissue)および残った髄膜を除去した後、半球を栄養培地を含むディッシュに移した。その後、1mlのピペットを用い、100μmの孔径を有する滅菌したナイロンのふるいを通して3回圧搾することにより、組織を機械的に分離させた。
【0041】
標準的なトリパンブルー色素排除試験(PM Laboratories社)を用いて、細胞数および細胞生存率を測定した。細胞計測においては、1部の細胞懸濁液を9部のトリパンブルー溶液(270IJ I PBSおよび180IJI 0.5%トリパンブルー溶液)で希釈しなければならない。生細胞および青色に染色された死細胞を、Buerker−Tuerk血球計算板で計測する。細胞の総数から染色された死細胞を引くことにより、元気な細胞の数が得られる。
【0042】
損傷に関するアッセイにおいては、最初の組織培養培地は細胞から除去され、保管される。シアン化ナトリウムまたはコルヒチン(シアン化ナトリウム0.01mM;0.1mM;1mM、コルヒチン0.1μM;1μM;10μM)を含む新しい培地を添加し、細胞と一緒に30分間置いた。その後、損傷培地を除去し、廃棄して、最初の培養培地に取り替え、培養をさらに24または48時間の回復期間だけ維持する。その後生存率アッセイを行った。実験においては、記載のポリ−D−リシンコート96ウェルマイクロタイタープレートを使用した。前もって調製し、すでに物質が追加されている80_1培地を含むマイクロタイタープレートの各ウェルに、6x105細胞/mlを含む80_1培地を添加した。従って、各ウェルにおける最終細胞数は、栄養培地1mlあたり3x105であった。損傷した、および損傷していないコントロールを、実験全体の間のみ栄養培地で増殖させた。プレートを調製する場合には、通常、蒸発を防ぐためだけに、外側のウェルに栄養培地を満たす。プレートを37℃、95%湿度および5%のCO2に維持し、実験の終わりまで培地は交換しない。培養の2、3時間後に、ニューロンが突起を広げ始める。
【0043】
本発明の混合物は、アンプル中のレディー・トゥー・ユース(ready to use)型の溶液として使用した。1.25、2.5、5、10、20、40、80、160μl/mlの培地濃度を達成するために、前記混合物をDIV 1において適当な濃度で1度ウェルに添加し、実験の終了までニューロンと一緒に置いた。DIV 8に損傷が開始し、細胞生存率の評価を、それぞれDIV 9およびDIV 10に行った。損傷が生じた後の残された培養期間の間には、さらなる物質は添加しなかった。
【0044】
損傷アッセイにおいては、異なる2つの日に同一の条件下で本発明の混合物の試験を行った。各実験においては、損傷および非損傷コントロールに対して個々の値を少なくとも6つ採取し、それぞれの濃度に対して2つ採取した(全部でn=12)。本発明の混合物は、1mlの培地あたり1.25、2.5、5、10、20、40、80、160μlの濃度で追加された。種々の損傷を有する種々の実験群について調べた。
【0045】
各実験の終わりに、残った神経細胞の生存率を比色分析のMTT還元アッセイを用いて測定した。このアッセイは、ミトコンドリアデヒドロゲナーゼ(コハク酸デヒドロゲナーゼ)による、黄色のMTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5,ジフェニルテトラゾリウムブロミド)の、紺青色のホルマザン結晶への還元に基づいている。記載の反応は、生細胞においてのみ触媒されるので、前記アッセイは、細胞生存率の定量化に使用することができる。細胞生存率の測定において、MTT溶液は0.5mg/mlの最終濃度で各ウェルに添加された。2時間後に、MTT含有培地を吸引(aspired)した。細胞を3%のSDSで溶解し、ホルマザン結晶をイソプロパノール/HClに溶解した。光学濃度を評価するために、プレートリーダー(Anthos HT II)を使用した(570nm)。神経の生存率は光学濃度(OD)で表される。
【0046】
解析には記述統計的方法を使用した。MTT値(ODs)は、平均±標準偏差として表す。
【0047】
(5.2. 結果)
最初に、種々の濃度の損傷化化合物(lesioning compounds)(シアン化ナトリウムおよびコルヒチン)を、非損傷ニューロンと比較して約50%のニューロン損傷を達成させるように使用した。適当な、損傷化のための用量および損傷時間を、全体の損傷は十分であるが、なおニューロンが生き残りそして回復することができるように選択した。あまりにも高用量だと、急速なニューロン死を引き起こし、神経保護物質がそれらを救出する可能性を制限してしまい;また、あまりにも低用量だと、損傷と非損傷コントロールとの間の差異が非常に小さいので、保護化合物の確実な評価ができなくなってしまう。
【0048】
30分のシアン化ナトリウムによる中毒の48時間後の細胞生存率の評価では、なお本発明の有意な神経保護効果が示されるが、24時間後に観察されるよりも多少の低下が見られる(図1および2)。コルヒチンによる細胞骨格崩壊はまた、大規模な神経変性を引き起こす。24時間後、0.4mgの低用量の本発明は有意な救出を示すことができないが、その他の用量は全てニューロン生存率を損傷コントロールのレベルより約50%以上増加させる。損傷の発生後48時間において、全ての用量が明らかな神経保護効果を有し、3.2mgの高用量群では生存率がすでに非損傷コントロールを超えて100%以上の生存率となっていることから、ニューロンの大部分がレスキューされていることが示される(図3および4)。
【0049】
図1〜4は、無処理の損傷コントロール(=100%)と比較した、本発明の混合物の使用による生存率における相対変化を表す。
【0050】
【表1】

【0051】
図1は、シアン化ナトリウムへの暴露により誘導される細胞毒性の低酸素後24時間での、神経の生存率における本発明の種々の用量での効果を示す。
【0052】
【表2】

【0053】
図2は、シアン化ナトリウムへの暴露により誘導される細胞毒性の低酸素後48時間での、神経の生存率における本発明の種々の用量での効果を示す。
【0054】
【表3】

【0055】
図3は、コルヒチンへの暴露により誘導される細胞骨格崩壊後24時間での、神経の生存率における本発明の種々の用量での効果を示す。
【0056】
【表4】

【0057】
図4は、コルヒチンへの暴露により誘導される細胞骨格崩壊後48時間での、神経の生存率における本発明の種々の用量での効果を示す。
【0058】
これらの実験から得られる全体的な結論は、本発明が、神経細胞の生存を維持し、代謝ストレスおよび代謝不全からそれらを保護し、細胞の生存、神経炎過程での伸張およびそれらの分岐を刺激できることを明確に示している。インビトロでの種々の毒素により引き起こされる神経損傷があまりにも重篤な場合には、わずかな保護のみが達成され、軽度から中度な損傷条件の場合には、顕著な用量依存的効果を確認することができる。
【0059】
しかし、本発明の複合体組成物は、ペプチドが、神経栄養の刺激、抗アポトーシス因子および構造タンパク質の合成の増加、異常にアップレギュレートされたプロテアーゼの阻害、および代謝調節を組み合わせて、相乗的な様式で作用することを示唆している。この効果を要約すると、この栄養補助食品の、インビトロにおいて非常に傷つきやすい細胞を保護するという興味深い有効性が示される。
【0060】
<実施例6>
生理食塩水の経口投与との比較における、高齢ラットの長期治療(3ヶ月の経口での強制摂取による毎日の治療)
(6.1. 方法)
(6.1.1. 治療および行動試験)
全ての実験は18月齢(±1月齢)のロングエバンスラットで行った。ラットが、ランダムに、本発明混合物で処理されるか、またはコントロールとして生理食塩水で処理されるかのどちらかの異なる群になるように計画した。1群あたりの動物の数は、12〜15であった。両実験群における動物を、1日に1回の、実施例5に定義される本発明の混合物または生理食塩水のどちらかの経口による強制摂取により、3ヶ月の期間をかけて処理した。各月の最後の4処理日(処理27〜30日目=試行日1〜4;処理56〜60日目=試行日5〜8、および処理87〜90日目=試行日9〜12)の間に、動物の学習および記憶機能を評価するために、MWMにおける行動試験を行った。
【0061】
使用されるMWMは、直径170センチメートルおよび高さ45センチメートルを有する丸型の遊泳プールからなる。さらに、内部のアルミニウム環を、隠されたプラットホームにコンピューターシステムを接続するケーブルを全て隠すために利用した。これは、通常の学習行動に影響を及ぼす迷路内(inter−maze)の目印を動物に与えないために必要なものである。透明なプレキシガラスのプラットホームが外側から見つからないように、プールの内面は黒く塗られる。水中のプラットホーム(直径15センチメートル)は、常にプールの正確に同一の位置、南東の四分円(south−east quadrant)に置かれた。各ラットの遊泳の跡を発光ダイオードを用いて検出し、シグナルをパーソナルコンピューターに接続したビデオカメラにより検出することによって、遊泳軌跡(swimming path)の連続的な追跡が可能であった。特別に設計されたソフトウェア(ART3)により、遊泳軌跡の長さ、隠されたプラットホームへ到達するまでの潜時、四分円で過ごす時間、目的領域の通過、および学習および記憶機能の評価に適したその他の全てのパラメーターを計算することができる。プラットホームを発見するための逃避潜時(Escape Latency)ならびに遊泳軌跡の長さは、本発明混合物の学習機能における効果に関する、統計的な計算のために使用された。各試行(訓練)日に、各動物は4回の遊泳試行を行った。統計解析は、KruskalおよびWallisによるh−検定を用いるか、または通常、分散値の場合には、ANOVAおよびpost hoc解析に関するScheffe検定を用いて行った。
【0062】
(6.1.2. 組織学的検査)
MWMにおける行動実験の終了後直ちに、各群の4〜6匹のラットを過剰用量のネンブタールにより屠殺した。適当な組織標本を得るために、生理食塩水およびホルマリンを用いるトランスカーディアル・パーフュージョン(transcardial perfusion)を行った。完全な固定のために、脳を10%のホルマリンに移し、その後パラフィン中に包埋した。ミクロトームにおいて厚さ3μmの切片(ブレグマレベル〜−4.00mm)を切り、小胞タンパク質であるシナプトフィシンに対する抗体とともにインキュベーションを行った。免疫反応は酵素反応(APC法、ペルオキシダーゼ標識二次抗体、ジアミノベンジジンを基質として使用)を用いて可視化した。
【0063】
シナプス密度とシナプトフィシン免疫反応性との間に良好な相関が見られるという事実から、画像解析システム(LUCIA−Nikon Photo Systems社製、オーストリア)を用いて、シナプス数の光学顕微鏡による定量化を行った。画像解析は、明確に定義される海馬のサブ領域(CA1放射線維層、CA2放射線維層、CA3放射線維層、CA3淡明層、歯状回外側ブレード(dentate gyrus lateral blade)および歯状回内側ブレード(dentate gyrus medial blade))ならびに内嗅皮質(第2層および第3層)において行った。この目的のために、シナプトフィシン免疫反応性の点の数および該点が全面的に及ぶ領域を測定し、統計学的な計算(Kruskal−Wallis ANOVA)を行った。
【0064】
(6.2. 結果)
(6.2.1. MWMにおける行動試験)
(6.2.1.1. 逃避潜時)
逃避潜時は、MWMにおいて動物を水泳プールに置いた時間と隠されたプラットホームを首尾よく発見した時間との間の時間として定義される。動物は、上述のように特別な迷路の目印を用いて自分の位置を確認しなければならない。逃避潜時は、学習および記憶の指標である。
【0065】
投与の1ヶ月後の第1訓練過程の間には、両実験群の間で有意な差異は検出できなかった。しかし、本発明の混合物で処理したラットが課題達成の速さを獲得しているという明らかな傾向は存在するが、訓練の4日後では同一の結果であった。
【0066】
第2月の終わりには、本発明の混合物群と最初の訓練日に生理食塩水処理を行ったコントロールとの間に統計学的に有意な差異が見られた(p=0.0049)。これは、長期記憶の安定化、および最も起こりそうなものである手続き学習の改善も示している。本発明の混合物処理ラットは、最初のプラットホーム位置を最初の試行から覚えており、言い換えれば、ラットは1ヶ月の期間中その位置を忘れない。なぜならラットは、コントロールよりも上手に行うための課題の手続きについて既に知っているからである。ラットは、第2月の終わりでの最初の訓練日においてすでに、非常に低い逃避潜時を示すので、さらなる改善は遊泳スピードの限界による天井効果のために不可能である。コントロール動物は、訓練日から訓練日まで連続的な改善を示すが、最後の日においてもまだ、本発明混合物処理動物に比べて悪い。3ヶ月の治療期間の終わりに、本発明混合物処理ラットは、なおコントロール群より低い潜時により開始する。しかし、両群とも非常に良好な能力を示し、改善の余地がない。
【0067】
(6.2.1.2. 長期記憶における研究)
4日目の試行4と5日目の試行1との間、ならびに8日目の試行4と9日目の試行1との間の、逃避潜時における差異の解析
長期記憶の評価(第1月の終わりでの最終試験日の最終試行と第2月の終わりでの最初の訓練日の最初の試行との間での潜時の差異;第2月の終わりでの訓練日の最終試行と3ヶ月の治療期間の終わりでの最初の訓練日の最初の試行との間での差異)により、本発明混合物処理ラットにおける長期記憶の明確な改善傾向が示される。第1月の最後の訓練日における最後の試行の逃避潜時を、2ヶ月間の最初の訓練日における最初の試行の潜時と比較すると、本発明混合物処理動物は、その能力において約10秒改善された。これに対して、コントロール動物はわずかに遅い。2ヶ月間の終わりでの最終訓練日における最終試行と、処理期間の終了後の最初の訓練日における最初の試行との間での能力を比較することにより、本発明混合物の群において10秒以上の改善が再び示された。生理食塩水処理コントロールは変化を示さず、このことは、本発明混合物処理ラットにおける長期記憶が改善されていることを示す。
【0068】
それぞれ、1ヶ月間後の最初の訓練日と、処理後2ヶ月の最初の訓練日と、3ヶ月の処理期間後の最初の訓練日との間の逃避潜時の解析
長期記憶に関する第2の測定として、最初の学習日と、治療後2ヶ月および3ヶ月の最初の訓練日との間での差異を評価した。これは、実験未使用の状態を再訓練の状態と比較した、逃避潜時における全体の改善の指標として機能を果たす。大きな差異は、よりよい長期記憶を反映し;小さな差異は、動物が訓練のない治療期間の間にプラットホームの位置を忘れたことを示している。
【0069】
図5(訓練1日目(1ヶ月治療)と5日目(2ヶ月治療)との間の逃避潜時における差異;データは平均±SEMで表す。**=P<0.01)は、実験未使用のラットがMWMに初めて置かれるまさに最初の訓練日と、治療後2ヶ月の再訓練との間の差異を示す。本発明混合物処理動物は、最初の訓練日と比較して約25秒または約50%改善され、一方、生理食塩水処理コントロールは、約12秒または25%以下の改善を示すのみである。最初の訓練日と、処理期間(3ヶ月)の終了後の最初の学習日における再訓練との間の逃避潜時の差異の比較は、群間で有意な差異を示さない。本発明混合物での処理のほうが有利な傾向はなお見られるが、データは、訓練の反復により全ての治療群が最終的に成功につながることを明確に示唆している。全ての実験が、高齢の、さらに明確な神経障害のない健康な動物で行われたことを考慮しなければならない。従って、訓練を長期化すれば、どちらの処理群においても認知能力が連続的に増加することが期待されていた。
【0070】
【表5】

【0071】
図5は、1日目と5日目との間の逃避潜時における差異を示す。
【0072】
(6.2.1.3. 遊泳軌跡の長さの評価)
逃避潜時は運動の差異により偏るので、遊泳軌跡の長さもまた計算した。遊泳スピードの増加または遊泳スピードの減少は、異なる点で学習および記憶における変化を模倣する。遊泳跡の長さは、遊泳スピードからは独立した学習および記憶行動の独立した指標である。
【0073】
このデータにより、2ヶ月の処理期間の終了後最初の訓練日における、本発明混合物処理ラットとコントロールとの間の統計学的に有意な差異が確認される(p=0.0133)。このことは、これまでの解析データが一致していること、および本発明混合物による処理が、運動行動におけるいずれの変化からも独立した認知能力を改善することを示唆するものである(図6)。
【0074】
【表6】

【0075】
図6は、試験1〜4、5〜8および9〜12日目での、モリス水迷路における遊泳軌跡の長さを示す。データは、平均±SEMを表す。*=P<0.01[MOI=本発明の混合物;con=コントロール]。
【0076】
4日目の試行4と5日目の試行1との間、ならびに8日目の試行4と9日目の試行1との間の、遊泳軌跡の長さにおける差異の解析
最初の一連の訓練期間における最後の試行と、2ヶ月の処理後の第2の訓練期間における最初の試行との間での遊泳軌跡の長さの比較は、逃避潜時の評価において見られたことを正確に反映した。遊泳軌跡の長さは、本発明混合物処理群において約2.1メートル短く、これはこの群が、訓練しない4週の後でさえ、より正確に進むことを意味する。コントロールは、プラットホームを発見するのに1.4メートル長く必要であり、これは、初期回復のある程度の困難性、言い換えれば、目標への正確かつ最も短い道順を再学習しなければならないことを反映している。
【0077】
第2過程の最後の試験日(処理の2ヶ月後)の最後の訓練試行の能力を、3ヶ月の期間の終わりでの最初の訓練日の最初の試行における行動と比較した場合に、遊泳軌跡の長さは約2メーター短い。このことはあらためて、長期記憶機能における本発明混合物の強い影響力を示している。コントロール動物は、さらなる改善を示さない。
【0078】
(6.2.2. シナプス密度の組織学的評価)
シナプトフィシン免疫反応性の「点(dots)」の数
本発明混合物の3ヶ月の処理過程により、調べた領域のうち4箇所において、シナプス密度の統計学的に有意な増加が生じる。CA3放射線維層および歯状回外側ブレードでは、本発明混合物処理動物において、シナプス密度の増加に関して少なくとも強力な傾向が見られ、CA3淡明層でのみ、処理の結果シナプス密度の増加が生じない。
【0079】
シナプトフィシン免疫反応性の領域の評価
それぞれ1つの免疫反応性の点を計測した上述の評価とは対照的に、シナプトフィシン免疫反応性により覆われる全体的な領域を、血管および組織崩壊の抑制後の脳切片の全体的な領域と比較して測定した。この結果は、内嗅皮質における効果が有意水準よりわずかに低いこと(p=0.0550)だけを除いて、免疫反応性の点の計測により得られたデータを反映している。その他の差異については全て有意であり、本発明混合物処理ラットにおける全般的なシナプス密度増加傾向を確認することができた。
【0080】
【表7】

【0081】
図7は、海馬体の種々の領域におけるシナプトフィシン免疫反応性の領域を、コントロール値のパーセントで示す。100%=生理食塩水コントロール群において計測された免疫反応性の点。バーは、平均±SEMを表す。*=P<0.05[MOI=本発明混合物;CN=コントロール]。
【0082】
モリス水迷路における行動試験の結果により、第2月の終わりから本発明混合物処理群とコントロール群との間での統計学的に有意な差異が示される。本発明混合物で処理された動物は、モリス水迷路の隠されたプラットホームをコントロール群よりも早く見つける。このことは、本発明の混合物が健康で高齢なラットにおける長期記憶を改善することを示している。前記のデータは、ペプチドのような増殖因子の長期摂取がよく許容され、神経栄養的な刺激を脳に与えることができることを示唆するものである。この実験において示される、本発明混合物により改善された認知能力は、海馬の形態変化と相関している。要約すると、本発明は、加齢における記憶および学習能力の維持を助けることができ、そして加齢過程に伴う認知機能の欠失のリスクを減少させることができる、新規の栄養補助食品を構成する。
【0083】
<実施例7>
健康なヒト高齢者における認知機能の増強
(7.1. 方法)
6人の健康な大人(女性4人および男性2人)、年齢63.0:3.6歳(範囲:51〜76歳)が本研究に含められた。被験者の体重、身長、BMI(肥満度指数)およびその他の生物学的特性を記録した。
【0084】
医学的および心理的評価、定量的なEEGおよびECG、ならびに実験的解析を、参加前の全ての被験者において実施した。老人性痴呆症に関するDSM−IVおよび/またはNINCDS−ADRDA基準(American Psychiatric Association, 1994; McKhann et al., 1984)に合致する被験者はいなかった。全ての被験者が完全に、試験前および試験中においては薬物を服用していなかった。全ての試験参加者から同意書を得た。試験は、施設内倫理委員会により、そして医薬品の臨床試験の実施の基準ガイドライン(Good Clinical Practice guidelines)に従って実施された。
【0085】
試験は非盲検の探索的試験であり、経口的に投与され、単回投与である、健康なヒト高齢者での脳機能における本発明混合物の効果を評価することを目的とする。全部で6人の50歳以上の被験者が含まれた。各参加者に対する試験期間は2日である。参加者は、1日目、本発明混合物の投与24時間前に認知に関する評価を受け、そして2日目、本発明混合物の投与後6時間に第2の治療後評価を受けた。全ての試験参加者が、本発明混合物の単独経口投与を受けた(180mg)。
【0086】
(7.2. 結果)
試験被験者における、ベースラインでの平均MMSEスコアは28.4±0.4点であった。本発明混合物での治療後に、ADAS−記憶スコアの有意な改善が観察された(ベースラインでの6.9±1.0の脱落(omissions)に対して、治療後は4.9±1.0の脱落;p<0.01)。この
記憶改善は、テスト教示の再生能力(word recognition)項目においても統計学的に有意であった(2.8±0.6の脱落対1.5±0.7の脱落;p<0.05)−図8。
【0087】
【表8】

【0088】
図8は、健康で高齢な被験者における、ADASの記憶項目を用いることにより評価される記憶能力に対する本発明の効果を示す。ADAS記憶スコア(脱落)は、単語再任およびテスト教示の再生能力項目の合計を表す。
【0089】
この試験の結果においては、本発明混合物は、単回投与の投与後に、健康な高齢被験者における記憶行動を維持および改善する。本発明混合物により誘導される改善は、テスト教示の再生能力(word recognition)課題およびADASの記憶のサブスコア全体において十分な値に達するが、単語再任(word recall)項目においては達しない。本発明の混合物はまた、有意ではないが、注意および記憶能力の両方に関連するSKTの認識課題における能力も増強する。本発明混合物での治療後に最もよい効果が見られる個々のSKTの課題には、ブロックの配列(arranging blocks)、記号の算出(counting symbols)および記憶の認識(recognition memory)の項目が含まれる。これらの効果は、認識障害のない大人−高齢者の人々において、注意および記憶機能を増強できることを示している。
【0090】
今回の結果は、本発明の混合物が、健康な高齢の志願者における脳機能を、認知能力(記憶および注意)における明確な陽性結果をもって支持することを示唆している。従って、本発明混合物は、高齢の被験者における認知能力および注意を支持および改善するために有用な栄養補助食品を構成すると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列1:NMVPFPRまたは配列2:ASAFQGIGSTHWVYDGVGNSにより定義される2種のペプチドのうちの少なくとも1種を含むペプチド調合物を含み、神経保護活性を有する栄養補助食品混合物。
【請求項2】
追加のアミノ酸をさらに含む、請求項1記載の栄養補助食品混合物。
【請求項3】
10kDa以下の分子量を有するペプチドをさらに含む、請求項1記載の栄養補助食品混合物。
【請求項4】
微量元素および/またはミネラル物質および/またはビタミンおよび/またはカフェインおよび/またはタウリンおよび/または脂肪酸および/またはリン脂質および/またはホスファチジルセリンおよび/または植物抽出物を含む、請求項1記載の栄養補助食品混合物。
【請求項5】
許容可能な添加剤および/または賦形剤および/または増量剤および/または着色物質(colouring substances)および/またはフレーバー物質を更に含む、請求項1記載の栄養補助食品混合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の栄養補助食品混合物、および許容可能な添加剤および/または賦形剤および/または増量剤および/または着色物質および/またはフレーバー物質および/または溶剤を含む経口用剤形。
【請求項7】
2〜20重量%のペプチドを含む、請求項1記載の栄養補助食品混合物を含む経口用剤形。
【請求項8】
10〜30重量%のアミノ酸をさらに含む、請求項7記載の経口用剤形。
【請求項9】
加齢に伴う記憶障害および/または加齢に伴う認知低下および/または良性老年性健忘(benign senescent forgetfulness)を予防、改善または改良するために、請求項1〜8のいずれか1つに記載の栄養補助食品混合物を使用する方法。
【請求項10】
代謝低下および加齢の過程に伴うストレスに対して神経を保護するために、請求項1〜5のいずれか1つに記載の栄養補助食品混合物を使用する方法。
【請求項11】
低酸素または虚血による加齢性の神経損傷の結果、細胞内カルシウム過多による加齢性の神経損傷の結果、L−グルタメートおよび興奮毒性事象により誘導される加齢性の神経損傷の結果、および酸化的ストレスによる加齢性の神経損傷の結果を予防し、阻止し、および/または改善するために、請求項1〜5のいずれか1つに記載の栄養補助食品混合物を使用する方法。
【請求項12】
加齢に伴う神経変性の結果の予防、阻止および/または改善に、細胞性ストレス、神経変性を引き起こす事象および中毒による神経細胞死の予防に、加齢の過程の間の正常な神経細胞構造の維持および保存に、シナプス機能およびシナプス密度の支持および/または改善に、シナプス可塑性およびシナプス密度の加齢性の低下の結果の予防、阻止および/または改善に、請求項1〜5のいずれか1つに記載の栄養補助食品混合物を使用する方法。
【請求項13】
注意および記憶能力に関連する大脳メカニズムの活性化に、請求項1〜5のいずれか1つに記載の栄養補助食品混合物を使用する方法。
【請求項14】
認知機能低下の予防、阻止および/または改善に、記憶機能低下の予防、阻止および/または改善に、注意欠陥の予防、阻止および/または改善に、加齢過程に伴う覚醒の減少の予防、阻止および/または改善に、および長期記憶および手続き記憶ならびに学習能力、注意および覚醒の支持、維持および/または改善に、請求項1〜5のいずれか1つに記載の栄養補助食品混合物を使用する方法。
【請求項15】
加齢過程の間の健康な精神機能の保存/支持に、請求項1〜5のいずれか1つに記載の栄養補助食品混合物を使用する方法。

【公開番号】特開2011−26352(P2011−26352A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−250804(P2010−250804)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【分割の表示】特願2006−550087(P2006−550087)の分割
【原出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(506260571)エーファー・ノイロ・ファルマ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (2)
【Fターム(参考)】