説明

神経刺激性ピペラジンの合成

本発明は、ニコチン酸およびベンジル部分で誘導体化されたピペラジンに対する改善された合成を記載する。生成化合物は神経学的状態の処置のために有用である。本発明の方法は、環窒素の1つにおいて保護されているか、または1つの環窒素のみに対する選択的反応によって保護されているピペラジンと、置換型ニコチン酸とを出発材料として用い、最終的には環窒素の1つにベンジル置換を含む二置換型ピペラジンを提供することになる。この合成は、この二置換型ピペラジンを好適な塩に転化することをさらに含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2009年8月24日に出願された米国仮特許出願第61/236,477号の優先権を主張し、この米国仮特許出願の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、神経発生剤として有用な化合物およびその塩に対する合成法に関する。より具体的には、本発明はベンジルおよびニコチン酸部分とカップリングされた二置換型ピペラジンを調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
本明細書において引用により援用される特許文献1は、神経発生剤として、本明細書にその合成が記載されている化合物のクラスを含むさまざまな化合物を記載している。すなわち、本発明の方法に従って調製される化合物は、ヒト海馬の多能性幹細胞/前駆細胞およびニューロン前駆体の増殖/分化によって神経発生を促進することから利益を得るさまざまな状態の処置に有用である。こうした状態は、アルツハイマー病、軽度認知障害、認知症、発作、外傷性脳損傷、脊髄損傷、統合失調症などを含む。本発明によって提供される合成法は、ベンジルピペラジンなどの規制物質の使用を回避する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,560,553号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の方法は、環窒素の1つにおいて保護されているか、または1つの環窒素のみに対する選択的反応によって保護されているピペラジンと、置換型ニコチン酸とを出発材料として用い、最終的には環窒素の1つにベンジル置換を含む二置換型ピペラジンを提供することになる。この合成は、この二置換型ピペラジンを好適な塩に転化することをさらに含んでもよい。すなわち1つの局面において、本発明は次式の化合物を合成するための方法に関し、
【0006】
【化1】

【0007】
であって、ここで
はアルキルであり、
はHまたはアルキルであり、
およびRの各々は独立にアルキル、アルケニル、ハロ、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、NR、SR、またはORであり、ここでRはアルキルまたはアリールであり、
nは0、1または2であり、
mは0、1、2または3であり、
この方法は、次式の化合物、すなわち
【0008】
【化2】

【0009】
であって、ここでR、R、mおよびnは式(1)において定義されたものと同様であり、Lは脱離基である化合物を、
次式の化合物、すなわち
【0010】
【化3】

【0011】
であって、ここでRおよびRは式(1)において定義されたものと同様である化合物と反応させる工程を含む。
【0012】
式(2)の化合物は、次式の化合物、すなわち
【0013】
【化4】

【0014】
であって、ここでRおよびnは式(1)において定義されたものと同様であり、Lは脱離基である化合物を、
次式の化合物、すなわち
【0015】
【化5】

【0016】
であって、ここでRおよびmは式(1)において定義されたものと同様であり、L’は脱離基である化合物と反応させるか、または次式の化合物、すなわち
【0017】
【化6】

【0018】
と反応させることによってイミンを形成した後に、該イミンを還元することによって調製されてもよい。
【0019】
次に、式(3)の化合物は、次式の化合物、すなわち
【0020】
【化7】

【0021】
であって、ここでRおよびnは式(1)において定義されたものと同様であり、Lは脱離基である化合物を、
次式の化合物、すなわち
【0022】
【化8】

【0023】
であって、ここでPrは保護基である化合物と反応させて、
その後この保護基を除去するか、または非保護ピペラジンを用いて一方の窒素と選択的にカップリングさせることによって得られてもよい。保護基を用いる反応は、ペプチドカップリング剤の存在下で式(4)の化合物を保護ピペラジンと接触させる(contracting)ことによって行なわれてもよいし、式(4)の化合物を対応するハロゲン化ベンゾイルに転化し、弱塩基の存在下で保護ピペラジンを加えることによって行なわれてもよい。
【0024】
式(1)の化合物は、好適な酸付加塩、たとえば硫酸塩、リン酸塩、ハロゲン化水素酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、トシレート、またはベシル酸塩に転化されてもよい。モノ塩およびビス塩の両方が形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、スキーム1の工程1Bに対する最適プロセスを示す。
【図2】図2は、スキーム1の工程2に対する最適プロセスを示す。
【図3】図3は、スキーム1の工程3および4に対する最適プロセスを示す。
【図4】図4は、スキーム1の工程5に対する最適プロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
上で参照した米国特許第7,560,553号に記載されているとおり、式(1)の化合物およびその塩、特に式1Eの化合物およびその塩は神経発生活性を有することが実証されている。以下の実施例1〜5に示されるとおり、本発明は、これらの化合物の合成に対する改善された方法に関するものである。
【0027】
より一般的に、これらの化合物の合成は以下の工程を含む。
【0028】
【化9】

スキーム1に示されるとおり、弱塩基および適切な溶媒の存在下で、2位に脱離基を含む必要に応じて置換されたニコチン酸を、ペプチドカップリング剤の存在下で半保護(semi−protected)ピペラジンと反応させる。典型的に、この反応は周囲条件にて進行して式(3)の化合物の保護形態を与え、それは、次いで少し温度を上昇させて、親水性溶媒中の酸において脱保護される。その結果得られた式(3)の生成物を、やはり上昇した温度にて弱塩基および好適な溶媒の存在下で、メチレン部分に脱離基を含む必要に応じて置換されたベンジルと反応させて式(2)の化合物を与え、この化合物は単離する必要はなく、上昇した温度および適切な溶媒にて一級または二級アミンと反応させて式(1)の化合物を得る。次いで式(1)の化合物を1モルまたは2モルの酸と反応させて酸付加塩を得てもよい。工程3が、ベンズアルデヒドをベンジルL’の代わりにすることによって行われるとき、イミンが形成され、それは次いでほぼあらゆる有機溶媒中で水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、または水素化ホウ素リチウムを用いてアミンに還元される。
【0029】
典型的に、工程1Aが行なわれるときの温度は20℃から30℃の間である。典型的な塩基は、トリエチルアミンまたは他の三級アミン、および過剰な半極性の非プロトン性溶媒、たとえば酢酸ブチルまたは酢酸イソプロピルを含む。工程2は典型的に、50℃から60℃の間で、アルコール溶媒の存在下でHClまたは硫酸などの強酸を用いて行なわれる。工程3および4については、工程3は45℃から60℃の間で、工程4は80℃から90℃の間で行なわれる。工程3は、トリエチルアミンなどの弱塩基と、アセトニトリルまたはDMSOなどの非プロトン性溶媒とを用いて行なわれる。工程4も非プロトン性溶媒の存在下で行なわれる。
【0030】
工程5は、酸の性質によって決まる条件下で行なわれる。好適な塩を得るために、1当量または2当量の酸が用いられてもよい。
【0031】
工程1Aの代替形において、式(3Pr)の化合物は、高価なペプチドカップリング剤を用いずに工程1Bを用いて調製されてもよい。
【0032】
【化10】

工程1Bは60℃から70℃の間で、過剰な半極性の非プロトン性溶媒、たとえば酢酸ブチルまたは酢酸イソプロピル中で、三級アミンなどの塩基の存在下で行なわれる。すなわち、ニコチン酸がSOClの存在下でハロゲン化アシルに転化されることを除いては、工程1Bは工程1Aと同様の条件下で行なわれる。
【0033】
残りのスキームは同じのままであってもよいが、工程3が行なわれるときの温度をわずかに低くすることによって収率が改善され得る。
【0034】
上に示したとおり、RおよびRの両方がアルキルであってもよく、ニコチン酸およびベンジル部分に必要に応じて存在するものの中にもアルキル置換基が含まれる。さらに、RがアルキルであるNR SR ORが置換基であってもよい。置換基RおよびRもアルケニルであってもよい。
【0035】
本明細書において用いられる「アルキル」および「アルケニル」という用語は、直鎖状、分枝鎖状および環状の一価ヒドロカルビル基およびその組み合わせを含み、それらは置換されていないときにはCおよびHのみを含む。その例には、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、シクロヘキシル、シクロペンチルエチル、2−プロペニル、3−ブテニルなどが含まれる。こうした基の各々における炭素原子の総数が記載されることがあり、たとえばその基が最大10個の炭素原子を含み得るとき、それを1〜10CまたはC1〜C10もしくはC1〜10と表わすことができる。一般的に、RおよびRの一方はHで、他方は最大10個または8個の炭素原子を有するアルキルであることが好ましく、RおよびRがアルキルまたはアルケニルとして実施されるときには、典型的に最大8個または6個の炭素原子を含むことが好ましい。
【0036】
典型的に、本発明のアルキルおよびアルケニル置換基は1〜10C(アルキル)または2〜10C(アルケニル)を含む。好ましくは、それらの置換基は1〜8C(アルキル)または2〜8C(アルケニル)を含む。場合によっては、それらの置換基は1〜4C(アルキル)または2〜4C(アルケニル)を含む。単一の基が2つ以上の二重結合を含んでもよい。こうした基は「アルケニル」という用語の定義に含まれる。
【0037】
アルキルおよびアルケニル基は置換されていなくてもよいし、合成手順および最終生成物の特性の見地からそのような置換が化学的に意味をなす程度まで置換されてもよい。非置換形態が好ましい。
【0038】
上にさらに示されたとおり、RおよびRはアリールまたはヘテロアリールであってもよい。
【0039】
本明細書において用いられる「アリール」とは、芳香性の特徴を有する単環式または縮合二環式の部分を指す。その例にはフェニルおよびナフチルが含まれる。同様に「ヘテロアリール」とは、環員としてO、SおよびNから選択される1つまたはそれ以上のヘテロ原子を含む、こうした単環式または縮合二環式の環系を指す。ヘテロ原子を含むことによって、5員環ならびに6員環における芳香性が可能になる。典型的なヘテロ芳香族系は、単環式C5〜C6芳香族基、たとえばピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、チエニル、フラニル、ピロリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリルおよびイミダゾリル、ならびにこれらの単環式基の1つをフェニル環と縮合させるかまたはヘテロ芳香族単環式基のいずれかと縮合させてC8〜C10二環式基を形成することによって形成された縮合二環式部分、たとえばインドリル、ベンゾイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、イソキノリル、キノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、ピラゾロピリジル、キナゾリニル、キノキサリニル、シンノリニルを含む。環系全体の電子分布の点で芳香性の特徴を有するあらゆる単環式または縮合環二環式系がこの定義に含まれる。この定義は、少なくとも残りの分子に直接結合した環が芳香性の特徴を有するような二環式基も含む。典型的に、この環系は5〜12個の環員原子を含む。好ましくは、単環式ヘテロアリールは5〜6環員を含み、二環式ヘテロアリールは8〜10環員を含む。
【0040】
同様に、「アリールアルキル」および「ヘテロアリールアルキル」とは、OおよびSから選択される1つまたはそれ以上のヘテロ原子を必要に応じて含む飽和または不飽和の環式または非環式のリンカーを含む、アルキレンなどの連結基を通じてその結合点に結合された芳香族環系およびヘテロ芳香族環系を指す。典型的に、そのリンカーはC1〜C8アルキルまたはC1〜C8ヘテロアルキルリンカーである。アリールアルキル基はたとえばフェニル環およびC1〜C4アルキレンであってもよく、ここでアルキルまたはヘテロアルキル基は必要に応じて環化して、シクロプロパン、ジオキソラン、またはオキサシクロペンタンなどの環を形成してもよい。
【0041】
本明細書において使用される「アルキレン」とは二価のヒドロカルビル基を指す。それは二価であるため、2つの他の基をいっしょに連結することができる。典型的にアルキレンは−(CH−を指し、ここでnは1〜8であり、好ましくはnは1〜4であるが、特定の場合、アルキレンが他の基で置換されていてもよいし、他の長さのものであってもよく、さらに空いている原子価(open valences)は鎖の対向端部になくてもよい。よって−CH(Me)−および−C(Me)−もアルキレンと呼ばれてもよいし、シクロプロパン−1,1−ジイルなどの環状基もアルキレンと呼ばれ得る。
【0042】
アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルおよびヘテロアリールアルキル基は置換されていなくてもよいし、合成手順および最終生成物の特性の見地からその置換が化学的に意味をなす程度まで置換されてもよい。非置換形態が好ましい。
【0043】
本明細書において使用される「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを含む。しばしばクロロおよびブロモが好ましい。
【0044】
LおよびL’についての好適な脱離基は、ハロ、たとえばクロロ、ヨードまたはブロモ、トシレート(OTs)、およびトリフレート OTf)を含む。その他の好適な脱離基は、メシレート(OMs)およびブロシレート(OBr)を含む。
【0045】
ペプチドカップリング剤は、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)ならびに1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、2−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、N,N’ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、およびN−ヒドロキシコハク酸アミド(NHS)を含む。
【0046】
好適な保護剤は、9−フルオロエニルメチルカルバメート(Fmoc)、およびt−ブチルカルバメート(Boc)、ならびにTBDMS、TMS、TES、TIPS、TBDPS、ベンゾイルおよびカルバメートまたは一般的なアミドを含む。
【0047】
これらのリストは網羅的なものではなく、多くの好適な脱離基、保護基およびペプチドカップリング剤が当該技術分野において公知であり、その多くが商業的に入手可能である。
【0048】
これらの反応はすべて有機溶媒または水性有機溶媒において行なわれてもよく、そのような溶媒はテトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、塩化メチレン、MTBE、すべてのアルカン、NMP、DMA、EtOAcなどであり、工程(2)以外においてはアルコール溶媒を除く。
【0049】
好ましい実施形態は、RがHであり、Rがエチル、プロピル、ブチルまたはアミルであってそのアイソフォームも含むものを含む。さらに好ましい形態は、mおよび/またはnが0または1、好ましくは0であるものである。好ましい脱離基はハロ、好ましくはクロロである。
【0050】
以下の実施例は、本発明を限定するためではなく例示するために提供されるものである。
【実施例】
【0051】
実施例1〜5は以下の一連の反応を詳述するものである。
【0052】
【化11】

(実施例1)
保護された3Eの調製(工程1A)
【0053】
【化12】

【0054】
A.クロロニコチン酸(5.0g)(4E)を丸底フラスコに入れ、続いてアセトニトリル(無水、40mL)およびTBTU(1.4当量)を入れた。その結果得られた溶液にトリエチルアミン(2.0当量)を加え、混合物を周囲温度にて30分間撹拌した。Boc−ピペラジン(1.4当量)を分割して加え、フラスコ内の温度を<20℃に保った。反応物をゆっくり加熱して40℃にし、4時間後にHPLC分析によって完了を判断した。
【0055】
反応混合物を飽和NaHCO溶液(40mL)でクエンチし、酢酸イソプロピル(IPAc)(2×40mL)で抽出した。有機層を合わせて、50%のブライン溶液(40mL)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、元の体積の4分の1に濃縮した。その結果得られた油は、撹拌すると濃い懸濁物になった。
【0056】
メチルtertブチルエーテル(MTBE、100mL)を加え、得られた懸濁物を氷水浴中で冷却して1時間撹拌した。Whatman(登録商標)#1濾紙での濾過によって固体を回収し、濾過ケークを冷MTBE(20mL)で洗浄した。この固体を周囲温度にて真空オーブン中で乾燥させて、6.7g(収率65%)の3EPrを薄茶色の固体として得た。
【0057】
上記の反応を同一の条件および同じスケールで繰り返した結果、6.5g(収率65%)の3EPrが得られた。
【0058】
B.クロロニコチン酸を5gの代わりに1g用い、対応する量の他の反応成分を用い、かつ溶媒として酢酸エチルまたは酢酸イソプロピルを用いて、段落Aの手順を繰り返した。その収率は次のとおりであった。
【0059】
・酢酸エチル:50%、HPLC純度は95.5%(226nmにおけるAUC)。
【0060】
・酢酸イソプロピル:80%、HPLC純度は97.8%(226nmにおけるAUC)。
【0061】
C.段落Aから変更した手順において、クロロニコチン酸(5.0g)を丸底フラスコに入れ、続いてIPAc(試薬グレード、40mL)およびトリエチルアミン(2.0当量)を入れた。その結果得られた溶液にTBTU(1.4当量)を加え、混合物を周囲温度にて30分間撹拌した。Boc−ピペラジン(1.4当量)を分割して加え、フラスコ内の温度を<20℃に保った。反応物を週末にわたり周囲温度にて撹拌し、50時間後にHPLC分析によって完了を判断した。反応混合物を飽和NaHCO溶液(40mL)でクエンチし、IPAc(2×40mL)で抽出した。有機層を合わせて、50%のブライン溶液(40mL)で洗浄した。
【0062】
有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、元の体積の4分の1に濃縮した。
【0063】
その結果得られた油にMTBE(100mL)を加え、得られた懸濁物を周囲温度にて5.5時間撹拌し、さらに2時間氷水浴中で撹拌した。Whatman(登録商標)#1濾紙での濾過によって固体を回収し、濾過ケークを冷MTBE(20mL)で洗浄した。生成物を周囲温度にて真空オーブン中で乾燥させて、6.3g(収率61%)の4EPrを薄茶色の固体として得た。HPLC純度は>99.9%(226nmにおけるAUC)であった。
【0064】
D.段落Cの反応を10gにスケールアップし、反応を16時間後に完了させた。上記と同じ様式での水性処理(aqueous workup)の後に得られたIPAc抽出物を、2つの等しい部分に分けた。各部分を減圧下で20g(重量比で約1:1 IPAc/生成物)に減らした。
【0065】
部分1:結果として得られたスラリーにMTBE(100mL)を加えた。その結果得られた懸濁物を周囲温度にて16時間撹拌し、さらに2時間氷水浴中で撹拌した。Whatman(登録商標)#1濾紙での濾過によって固体を回収し、濾過ケークを冷MTBE(20mL)で洗浄した。生成物を周囲温度にて真空オーブン中で乾燥させて、6.8g(収率66%)の4EPrを薄茶色の固体として得た。HPLC純度は>99.9%(226nmにおけるAUC)であった。
【0066】
部分2:部分2に対するプロセスは部分1と同じであったが、ただし逆溶媒(antisolvent)としてヘプタンを用いて、結果として8.2g(収率80%)の4EPrを薄茶色の固体として得た。HPLC純度は>99.9%(226nmにおけるAUC)であった。
【0067】
(実施例2)
工程1Bによる3EPrの調製
A.クロロニコチン酸(5.0g、31.7mmol)を丸底フラスコに入れ、続いてトルエン(無水、40mL)およびDMF(120μL、0.05当量)を入れた。その結果得られたスラリーを55℃に加熱し、次いで塩化チオニル(4.6mL、2.0当量)を5分間にわたって滴下して加えた。スラリーを55℃にて3時間撹拌し、その間に気体の発生が観察されて、混合物が均質になった。サンプルを取ってトリエチルアミンを含むメタノール中でクエンチすることによって、HPLC分析のためのメチルエステルを得た。HPLCによる分析は、酸塩化物への転化が完了していることを示した。フラスコを蒸留のために適合させて、加熱して還流させた。約20mLの溶媒が除去されてから、溶液を周囲温度まで冷却した。別のフラスコにN−Boc−ピペラジン(7.1g、1.2当量)、アセトニトリル(30mL、6体積(vol))、およびトリエチルアミン(13.3mL、3.0当量)を入れた。わずかな吸熱がみられた。次いで酸塩化物の調製溶液を、内部温度を35℃より下に維持するような速度で加えた。その結果得られたスラリーを周囲温度にて1時間撹拌した。HPLCによる分析は、反応が完了していることを示した。反応混合物を飽和NaHCO溶液(20mL)でクエンチし、水層を酢酸イソプロピル(20mL)で抽出した。有機層を合わせて水(10mL)で洗浄した。水洗浄物のHPLC分析は、生成物がいくらか水層に失われていることを示した。有機層を約2体積に濃縮し、次いでヘプタン(50mL)を加えて沈殿を誘導した。その結果得られたスラリーを周囲温度にて30分間撹拌し、0〜5℃に1時間冷却し、濾過して、ヘプタンで洗浄した。次いで湿ったケークを真空下で一晩乾燥させて、9.85gの3EPr[MDM−W−1(14)、収率95%、HPLCによる99.8面積%]を薄黄色の固体として得た。
【0068】
B.この実施例の段落Aの手順を、1.2当量の塩化チオニルおよび1.1当量のN−Boc−ピペラジンを用いて行なった。2−クロロニコチン酸と塩化チオニルとの反応は、気体発生をより良く制御するために65℃にて行なった。酸塩化物中間体とN−Boc−ピペラジンとの反応は、クエンチの間の重炭酸ナトリウムの沈殿防止を助けるために、アセトニトリルの代わりにIPAc中で行なった。この反応で、3EPrをオフホワイト色の固体として得た[MDM−W−5(8)、9.83g、収率95%、HPLCによる>99.9面積%]。
【0069】
C.重炭酸ナトリウム水溶液による反応のクエンチおよび処理によって、分離に時間がかかるエマルジョンがもたらされ得る。水クエンチに切り換えると、小スケールではこの問題が軽減されたが、スケールを大きくするにつれてかなりの小片(rag)層が残った。二相性の混合物を30〜35℃にわずかに温めることによって、この小片層を溶解できた。
【0070】
(実施例3)
脱保護(工程2)
A.実施例1または実施例2において調製された3EPrの1gを、50℃にて2当量のHClおよび5〜6NのTF2−プロパノールで処理した。反応は6時間以内に完了することが見出された(fond to)。
【0071】
B.段落Aの方法を、6.7gの3EPrを用いて繰り返した。2−プロパノール中の3EPr(6.65g)(5体積)の溶液に、2−プロパノール中の5〜6N HCl(2当量)を加えた。反応物を40℃に加熱し、4時間後にHPLC分析によって完了を判断した。この間に白色の懸濁物が形成された。
【0072】
反応物を周囲温度まで冷却し、Whatman(登録商標)#1濾紙での濾過によって固体を回収した。濾過ケークを2−プロパノール(20mL)で洗浄した。この固体を高真空下で乾燥させて、4.63g(収率86%)の3E・HClを白色の固体として得た。H NMRは指定された構造に一致し、HPLC純度は>99.9%(226nmにおけるAUC)であった。
【0073】
C.段落Aのプロセスを、11.5gの3EPrを用いて繰り返した。IPA中の3EPr(11.5g)(70mL、6体積)の溶液に、IPA中の5〜6N HCl(2当量)を加えた。反応を50℃に加熱し、9時間後にHPLC分析によって完了を判断した。このときに白色の懸濁物が形成された。
【0074】
反応を周囲温度まで冷却し、Whatman(登録商標)#1濾紙での濾過によって固体を回収した。濾過ケークをIPA(2×15mL)で洗浄した。この固体を高真空下で乾燥させて、9.01g(収率97%)の3E・HClを白色の固体として得た。H NMRは指定された構造に一致し、HPLC純度は>99.9%(226nmにおけるAUC)であった。
【0075】
前述の各々の場合において、2−プロパノール中の酸の添加は、55℃または60℃などのより高い温度で行なわれてもよい。これによって気体の発生がより良く制御される。
【0076】
D.化合物3EPr(9.0g、27.6mmol)を丸底フラスコに入れ、続いて2−プロパノール(5体積)を入れた。スラリーを55℃に加熱すると、この間に混合物は均質になり、そこに2−プロパノール中の5〜6N HCl(2当量)を滴下して加えた。反応混合物を55℃にて4時間撹拌すると、この間に濃い懸濁物が形成された。HPLC分析は、反応が完了していることを示した。その結果得られたスラリーを周囲温度まで冷却し、2−プロパノール(2体積)で洗浄しながら濾過した。湿ったケークを周囲温度にて真空下で乾燥させて、3Eを得た[MDM−W−11(3)、6.9g、収率96%、HPLCによる>99.9面積%]。
【0077】
E.段落Dの反応を6倍のスケールにし、反応熱量測定法(RC1、Mettler−Toledo)によって評価した。気体発生の正確な測定を確実にするために、気体流量計を配置および較正した。化合物3EPr(56.6g、174mmol)を2−プロパノール(300mL)に懸濁し、スラリーを55℃に加熱すると、この間に混合物は均質になった。2−プロパノール中の塩酸(1当量)(3.8M)を、添加ポンプを介して30分間にわたって線形速度で加えると、その間にオフガスがみられ、沈殿が始まった。次いで反応物を30分間撹拌した後に、塩酸(1当量)を同じ速度で加えた。その結果得られたスラリーを55℃にて4時間撹拌した。スラリーを周囲温度まで冷却し、2−プロパノールで洗浄しながら濾過し、週末にわたり周囲温度にて真空下で乾燥した後に、44.0gの薄黄色の固体を得た[MDM−W−56(1)、収率97%、HPLCによる>99.9面積%]。−57.8kJ/molの反応エンタルピーおよび−9.6Kの断熱温度変化を与える非常に穏やかな吸熱の熱プロファイルが観察された。気体発生の速度は穏やかだった。マスフロー曲線の積分から、実験中に3.9Lの気体が発生したことが示された。マスフロー曲線は、HCl添加の中断のほぼ直後に気体発生の速度が減速したことを示し、このことは、気体発生が適切に用量制御されていたことを示唆した。
【0078】
(実施例4)
1Eへの転化(工程3および4)
A.実施例3で調製した3Eの粗サンプルをTFAと複合体化させて(complexed)ベンズアルデヒドと反応させ、生成物をカラムクロマトグラフィ(2〜6%メタノール/DCM)によって精製した。生成物を含む画分を集め、減圧下で溶媒を除去して、化合物2Gを濃い油として得た。H NMRは指定された構造に一致した。2Eは油であったため、3Eは2工程のテレスコーピング方法(telescoped method)で化合物1Eに転化された。
【0079】
B.2−プロパノール中の3E・HClの0.6gサンプルにトリエチルアミン(2当量)を加え、続いて塩化ベンジル(1.2当量)を加えた。その結果得られた懸濁物を50℃に加熱すると、懸濁物が透明な溶液になった。HPLCによって反応をモニタし、3時間後に完了したと判断された。
【0080】
反応混合物を周囲温度まで冷却し、固体(TEA・HCl塩)を濾過した。濾液にイソアミルアミン(10当量)を加え、得られた溶液を75℃に加熱した。HPLCによって反応をモニタし、48時間後に36%の転化しか起こっていないことが見出された。
【0081】
C.段落Bの手順を、アセトニトリル(20mL)中の3.5gの3E・HClを用いて行なった。トリエチルアミン(3.0当量)の存在下で1.0当量の塩化ベンジルを用いて反応を行なった。50℃にて4.5時間撹拌した後に、HPLC分析によって反応の完了を判断した。反応混合物を周囲温度まで冷却し、固体を濾過した。濾液を汲み上げて乾燥させた。残留物をイソアミルアミン(20mL)に溶解し、90℃に加熱した。24時間後にHPLC分析によって反応の完了を判断した。反応混合物を周囲温度まで冷却し、溶媒を減らして残留物の重量を9.5gに調整した。これにヘプタン(30mL)を加えた結果、薄茶色の懸濁物が形成された。これを周囲温度にて1時間撹拌し、さらに1時間氷水浴中で撹拌した。Whatman(登録商標)#1濾紙での濾過によって固体を回収し、濾過ケークを冷水(2×20mL)で洗浄した。生成物を真空オーブン中で乾燥した結果、HPLC純度が>99.9%(226nmにおけるAUC)の3.98g(収率70%)の化合物1Eが得られた。
【0082】
D.代替的に、アセトニトリル(48mL、6体積)中の3E・HClの8.0gサンプルにトリエチルアミン(2.5当量)を加え、続いて塩化ベンジル(1.05当量)を加えた。その結果得られた懸濁物を50℃に加熱すると、懸濁物が透明な溶液になった。HPLCによって反応をモニタし、3.5時間後に完了したと判断された(3.3%の未反応3E・HCl)。反応混合物を周囲温度まで冷却し、固体(TEA・HCl塩)を濾過した。
【0083】
濾液を蒸発させて、溶液の重量を18g(重量比で約1:1アセトニトリル/生成物)に調整した。これにイソアミルアミン(約4:1イソアミルアミン/アセトニトリル、10当量のイソアミルアミン)を加え、得られた溶液を85℃に加熱した。19時間後にHPLC分析によって反応の完了を判断した(3.0%の未反応2E)。反応混合物を周囲温度まで冷却し、減圧下で溶媒を除去して溶液の重量を22gに調整した(1gの1E当たり1gの溶媒)。冷却により湿った固体が得られ、これをヘプタン(1gの1E当たり6g)で粉砕した。この懸濁物を周囲温度にて16時間撹拌し、Whatman(登録商標)#1濾紙での濾過によって固体を回収し、濾過ケークをヘプタン(20mL)で洗浄した後に水(2×20mL)で洗浄した。生成物を周囲温度にて真空オーブン中で乾燥させて、7.78g(2工程にわたる収率69%)の1Eを薄茶色の固体として得た。HPLC純度は>99.9%(226nmにおけるAUC)であった。
【0084】
E.上に示した手順に続いて、工程3および4を6gのスケールで行なった。化合物3E(6.0g、22.9mmol)をアセトニトリル(30mL)に懸濁し、トリエチルアミンを加え(9.6mL、3当量)、続いて塩化ベンジル(2.8mL、1.05当量)を加えた。反応物を50℃に24時間加熱した。20時間および再び24時間におけるHPLC分析によってさらなる進行がないことが示されたので(10.4%の3Eが残る)、反応物を周囲温度まで冷却し、濾過してアンモニウム塩を除去した。次いでこの溶液を真空下で濃縮して約2体積にすることによって、粗2Eの濃縮溶液(80面積%粗純度)を得た。次いでイソアミルアミン(26mL、10当量)を加え、反応物を加熱して24時間還流させた(81℃)。20時間および再び24時間におけるHPLC分析によってさらなる進行がないことが示されたので(73面積%粗純度)、反応物を周囲温度まで冷却して、減圧下で濃縮して約4体積にした。次いでヘプタン(35mL)を加え、得られたスラリーを週末にわたって撹拌した。薄いスラリーを濾過して水で洗浄すると、固体は溶解して漏斗上には何も残らなかった。二相性の濾液をIPAcで抽出し、次いで濃縮して油にした。この油をIPA(30mL)に溶解した。溶液がやや不透明になるまで水(36mL)をゆっくり加え、次いで少量の化合物1E[DSJ−F−20(15)]を加えて結晶化を誘導した。その結果得られたスラリーを濾過して水で洗浄し、真空下で一晩乾燥させて、5.46gの化合物1Eを得た[MDM−W−26(8)、収率65%、HPLCによる99.9面積%、H NMRによる98.6wt%]。
【0085】
F.25℃から75℃の範囲の温度でN−ベンジル化を評価することによって、反応に対する至適温度およびその熱許容性を決定した。
【0086】
反応速度は温度とともに増加したが、温度に関わらず20時間後にはすべてが95〜96%転化という共通の終点に接近した。HPLCによる分析からは粗純度の差はほとんど示されなかったが、45℃より上では顕著な色変化が起こって反応溶液が薄橙色になった。反応速度および色変化の減少および沈殿のはがれ(shelling)の点から、45℃の反応温度が至適と考えられた。
【0087】
G.塩化ベンジルの量を1.1〜1.15当量に増やし、変色を減らすために反応温度をわずかに下げて45℃にすることによってプロセスを修正した。1Eの形成の前にN−ベンジル化反応の間に生じる不純物を除去するために、N−ベンジル化後の水性処理を組み込んだ。生成物の単離は、逆溶媒として水を加えることによって、反応混合物(イソアミルアミン)から直接結晶化することによって行なった。生成物の濾液への損失は典型的に7%未満であった。1Eは白色の固体として、非常に高い純度で収率約80%で単離された。
【0088】
(実施例5)
スキーム1の完全な実行
A.2−クロロニコチン酸の50gサンプルを、トリエチルアミン(2当量)およびTBTU(1.4当量)の存在下でN−Bocピペラジン(1.2当量)によって処理した。この反応はIPAc(300mL、6体積)中で、周囲温度にて行なった。12時間後にHPLC分析によって反応の完了を判断した。濾過および水性処理の後、真空下でIPAc抽出物を180gに減らした(重量比で約1:1 IPAc/生成物)。
【0089】
結果として得られたスラリーにヘプタンを加えた(重量比で約1:1 IPAc/生成物)。その結果得られた懸濁物を周囲温度にて16時間撹拌し、さらに2時間氷水浴中で撹拌した。Whatman(登録商標)#1濾紙での濾過によって生成物を回収し、濾過ケークをヘプタン(2×25mL)で洗浄した。生成物を周囲温度にて真空オーブン中で乾燥させて、78.53g(収率76%)の化合物3EPrを茶色の固体として得た。HPLC純度は98.9%(226nmにおけるAUC)であった。
【0090】
B.段落Aにおいて得られた化合物3EPrの73.53gを、IPA中の2当量の5〜6N HClの存在下でBoc脱保護反応に供した。この反応は、IPA(6体積)中で50℃にて行なった。7時間後にHPLC分析によって反応の完了を判断した。反応混合物を周囲温度まで冷却し、Whatman(登録商標)#1濾紙で濾過した。濾過ケークをIPA(2×50mL)で洗浄し、高真空下で乾燥させて、56.31g(収率95%)の3E・HClを茶色の固体として得た。HPLC純度は>99.9%であった。
【0091】
C.次いで、3E・HClの54.0gのサンプルをトリエチルアミン(3当量)の存在下で塩化ベンジル(1.05当量)によって処理した。この反応は、アセトニトリル(6体積)中で50℃にて行なった。8時間後にHPLC分析によって反応の完了を判断した。反応混合物を周囲温度まで冷却し、固体をWhatman(登録商標)#1濾紙で濾過した。濾過ケークをアセトニトリル(2×25mL)で洗浄した。減圧下で溶媒を除去して、溶液の重量を110gに調整した(重量比で約1:1アセトニトリル/生成物)。
【0092】
これにイソアミルアミン(220g)を加えて、4:1イソアミルアミン/アセトニトリルを作製した。その結果得られた溶液を85℃に加熱し、22時間後にHPLC分析によって反応の完了を判断した。反応混合物を周囲温度まで冷却し、減圧下で溶媒を除去して、溶液の重量を150gに調整した。その結果得られた混合物にヘプタン(6体積)を加えた。この懸濁物を周囲温度にて16時間撹拌し、Whatman(登録商標)#1濾紙での濾過によって固体を回収し、濾過ケークをヘプタン(250mL×2)で洗浄し、続いて水(250mL×2)で洗浄した。生成物を周囲温度にて真空オーブン中で乾燥させて、60.66g(2工程にわたる収率80%)の1Eを薄茶色の固体として得た。HPLC純度は>99.9%(226nmにおけるAUC)であった。
【0093】
(実施例6)
リン酸塩の調製
A.添加漏斗と、還流凝縮器と、熱電対と、オーバーヘッドスターラーとを備えた22Lの3つ首の丸底フラスコを加熱マントルに入れた。フラスコにエタノール(7.9L、Pharmco lot#0802062)を入れ、続いて脱イオン水(420mL)を入れた。次に1E(700g、2.1mol)をその反応器に入れ、得られた混合物を75℃に加熱した。エタノール中のHPOの1M溶液(4.5L、4.5mol、2.1当量)を、30分間にわたって急速な流れとして加えた。その結果得られた混合物を15分間撹拌し、1E・HPO(0.5g)を再結晶化のためのシードとして加えた。その結果得られた透明な溶液を、20℃/hの速度で周囲温度まで冷却した。
【0094】
冷却した懸濁物を周囲温度にて11時間撹拌し、Whatman(登録商標)#1濾紙で濾過した。エタノール(2.8L×2)を用いて移送を助け、かつ濾過ケークの洗浄も行なった。生成物を25℃にて真空下で乾燥させて一定の重量にすることによって、1E・HPOを白色の固体として得た(751g、収率62%)。HPLCによる分析から>99.9%(226nmにおけるAUC)の純度が示され、H NMRは指定された構造に一致した。
【0095】
B.化合物1E(4.9g、13.3mmol)を、75℃にてエタノール中の水の5%混合物に溶解し、次いでエタノール中の1Mリン酸(2.1当量)を加えた。その結果得られた溶液を20℃/hの速度で周囲温度まで冷却すると、その間に粘着性の沈殿が形成された。混合物を再加熱して沈殿を溶解し、次いでこの系に1Eリン酸塩をシードとして加えて、上述のとおりに冷却した。その結果得られたスラリーを周囲温度にて一晩撹拌してから濾過し、エタノールで洗浄して4.9gの1Eリン酸塩(収率79%、HPLCによる>99.9面積%)を白色の固体として得た。この結果から、適切な結晶形態を確立するためにシードとして加えることが不可欠であることが示された。
【0096】
C.次の条件下で、4つのリン酸塩形成反応を10gのスケールで行なった。
【0097】
MDM−W−126:1.25当量のHPO、12体積のEtOH
MDM−W−128:1.25当量のHPO、12体積の、EtOH中の5%水
MDM−W−130:1.0当量のHPO、12体積のEtOH
MDM−W−131:1.0当量のHPO、12体積の、EtOH中の5%水
各反応物を70℃に加熱し、1Eリン酸塩をシードとして加え[0.1wt%、DAJ−F−40(2)]、20℃/時間の速度で20℃に冷却した。その結果得られた濃いスラリーを一晩撹拌し、濾過し(EtOHで洗浄しながら)、一定の重量になるまで乾燥した。これらの反応の結果を表1に示す。一般的に、EtOH中の5%水を用いた反応から得られたスラリーの方が管理しやすかった。
【0098】
表1
リン酸塩形成スクリーニング
【0099】
【表1】

一リン酸塩の物理的特性
周囲条件下での水への溶解度は>36mg/mLであり、XRPD分析によるとこの塩は結晶性であった。
【0100】
DSC分析は179℃における1つの吸熱事象を示し、これは融点(a melt)と一致する。
【0101】
水分吸着分析から、この材料は中程度に吸湿性であって、60%RHにおいて4.4wt%の水を吸着し、90%RHにおいて11.2wt%の水を吸着することが示された。
【0102】
IC分析は、式(1)と対イオンとの比がその塩の異なるバッチにおいて1:1.6から1:2.3であることを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式の化合物、すなわち
【化13】


であって、ここで
はアルキルであり、
はHまたはアルキルであり、
およびRの各々は独立にアルキル、アルケニル、ハロ、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、NR、SR、またはORであり、ここでRはアルキルまたはアリールであり、
nは0、1または2であり、
mは0、1、2または3である化合物を合成するための方法であって、
該方法は、次式の化合物、すなわち
【化14】


であって、ここでR、R、mおよびnは式(1)において定義されたものと同様であり、Lは脱離基である化合物を、
次式の化合物、すなわち
【化15】


であって、ここでRおよびRは式(1)において定義されたものと同様である化合物と反応させる工程を含む、方法。
【請求項2】
前記式(2)の化合物は、次式の化合物、すなわち
【化16】


であって、ここでRおよびnは式(1)において定義されたものと同様であり、Lは脱離基である化合物を、
次式の化合物、すなわち
【化17】


であって、ここでRおよびmは式(1)において定義されたものと同様であり、L’は脱離基である化合物と反応させるか、または次式の化合物、すなわち
【化18】


と反応させることによってイミンを形成した後に、該イミンを還元することによって調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式(3)の化合物は、次式の化合物、すなわち
【化19】


であって、ここでRおよびnは式(1)において定義されたものと同様であり、Lは脱離基である化合物を、
次式の化合物、すなわち
【化20】


であって、ここでPrは保護基である化合物とペプチドカップリング剤の存在下で反応させて、その後該保護基を除去することによって得られるか、または
前記式(4)の化合物を非保護ピペラジンと選択的にカップリングさせることによって得られるか、または
該式(4)の化合物を塩化ベンゾイルに転化して、該塩化物を次式の前記化合物とカップリングさせ、
【化21】


その後該保護基を除去することによって得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
mおよびnは0である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
および/またはRはアルキルである、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
LおよびL’は独立にハロ、OTsまたはOTfである、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
PrはBocまたはFmocである、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
LおよびL’は独立にハロである、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記式(1)の化合物を薬学的に許容される塩に転化する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記塩はリン酸塩である、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−502462(P2013−502462A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526928(P2012−526928)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/046537
【国際公開番号】WO2011/028548
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(512046420)ニューラルステム, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】