説明

神経計測装置

【課題】損傷された神経の太さを測定するに適した装置を提供することを目的とする。
【解決手段】神経計測装置10は、幅の異なる複数の溝23,24,25が第1面21に設けられた細長な平板材11を備えたものである。細長な平板材11なので、開創を必要以上に大きくすることなく、開創から深い位置まで挿入することができる。平板材11の第1面21に設けられた複数の溝23,24,25を、損傷された神経に沿わせて対比することにより、神経の径が判断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経再生術において使用される神経計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
疾患や事故等により、ヒトの神経、血管、腱、靱帯、又は器官等が損傷された場合の治療として、切断された部位を接続する外科縫合手術や移植等が用いられている。また、最近では、再生医療と称される治療が研究され、例えば、神経が損傷された箇所に人工器具を用いて神経細胞の足場を形成して、神経を再生させる治療法が提案されている。このような神経の再生治療における上記人工器具として、コラーゲンのような生体分解性材料又は生体吸収性材料からなる管状体や、該管状体の内部に生体分解性材料又は生体吸収性材料からなるスポンジ状のマトリックスを形成したものがある(特許文献1参照)。また、血管や腱等を再生するための足場として、同様の生体分解性材料又は生体吸収性材料からなる管状や短冊状の医療用部材が考えられている(特許文献2,3参照)。
【0003】
例えば、コラーゲン等の生体分解性材料又は生体吸収性材料からなる管状体は、その両端から損傷された神経端が管内部に挿入され、該管状体と神経とが生体用縫合糸で縫合されて、生体内における神経組織再生の足場とされる。このような管状体は、神経の太さに応じて内径が異なる複数の種類のものが医療施設等に供給される。また、損傷された様々な神経端の長さ等に合致させるために、供給された状態の管状体は十分に長いものとされ、使用の際に適当な長さに切断されることが一般的である。
【0004】
神経を計測するためのものではないが、医療用の計測器具として顎骨厚み計測ノギスが公知である(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−208808号公報
【特許文献2】特開2004−188037号公報
【特許文献3】国際公開第2005/070340号パンフレット
【特許文献4】特開2006−116271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
神経の径や欠損された長さなどを計測するには、神経が損傷された受傷部を開創して神経を露出させ、計測器具を開創から挿入する必要がある。このような計測器具には専用のものがなく、例えば、前述したノギスのような器具を用いて計測を行うことが想定される。しかしながら、ノギスのように大きなものを開創から挿入するには、必要以上に開創を大きくせざるを得ないという問題がある。また、損傷された神経が開創から深い位置にあるときには、ノギスにより周辺の組織や他の神経などを傷つけるおそれもある。また、ノギスは、複雑な構造なので、分解して洗浄したり滅菌したりすることが難しく、一方、ディスポーザブルとするには高価である。
【0007】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、損傷された神経の太さを測定するに適した装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係る神経計測装置は、幅の異なる複数の指標が第1面に設けられた細長な平板材を備えたものである。
【0009】
細長な平板材なので、開創を必要以上に大きくすることなく、開創から深い位置まで挿入することができる。この平板材の第1面に設けられた複数の指標を、損傷された神経に沿わせて対比することにより、神経の径が判断される。
【0010】
(2) 本神経計測装置は、上記平板材の上記第1面、及び上記第1面と反対側の第2面のうち少なくともいずれかに、長さを測定する目盛りが記されていてもよい。
【0011】
これにより、開創に挿入された平板材によって、神経の径の判断と、欠損された神経の長さを判断することができる。
【0012】
(3) 本神経計測装置は、上記平板材と回動可能に連結された把手を更に備えていてもよい。
【0013】
(4) 上記指標として、溝が挙げられる。
【0014】
(5) 上記指標として、線が挙げられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る神経計測装置によれば、損傷された神経の太さを好適に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る神経計測装置10の外観構成を示す平面図である。
【図2】図2は、図1における矢視IIの箇所の拡大斜視図である。
【図3】図3は、平板材11の第2面22を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。
【0018】
図1に示されるように、神経計測装置10は、平板材11及び把手12を有する。平板材11と把手12は、いずれも細長な平板形状の部材である。平板材11と把手12は、各々の一端において回動可能に連結されている。平板材11と把手12とは、公知の構造により連結することができる。例えば、平板材11の一端に孔を有する円筒部が形成されており、把手12の一端に円柱形状の軸が形成されており、この軸が円筒部の孔に挿入されて脱抜不能に係合されることにより、平板材11と把手12とが回動可能に連結される。
【0019】
なお、平板材11と把手12とは、必ずしも各々の一端同士で連結される必要はなく、例えば、平板材11の長手方向の中央部分と把手12の一端とが回動可能に連結されてもよい。また、神経計測装置10はディスポーザブルであってもよいが、複数回に渡って使用される神経側装置10を滅菌可能とするために、平板材11と把手12との連結構造は、容易に取り外し可能であってもよい。
【0020】
平板材11は、平面視が概ね長方形の平板材であり、厚み方向に対向する2平面が、ここでは、第1面21及び第2面22と称される。第1面21と第2面22とは、相対的な関係にあるものであり、いずれが第1面又は第2面と称されてもよいことは言うまでもない。
【0021】
図2に示されるように、平板材11の第1面21には、把手12と連結されている一端と反対側の他端から、平板材11の長手方向に沿って延びる3つの溝23,24,25が形成されている。各溝23,24,25は、いずれも第1面21から厚み方向へ凹む、断面が半円形状のものであり、その幅(平板材11の短手方向に沿った寸法)が相互に異なる。
【0022】
各溝23,24,25は、溝23、溝24、溝25の順に、その幅が太い。各溝23,24,25の幅は、神経再生術において使用される神経再生誘導管の内径に応じて設定されている。各溝23,24,25が本発明における指標に相当する。
【0023】
各図には示されていないが、神経再生誘導管は、損傷した神経端が挿入される円管形状のものであり、挿入すべき神経の太さに応じて内径及び外径が設定される。これらは任意に設定しうるが、末梢神経や脊椎神経の再生に用いる場合は、通常、外径が約0.3〜20mm程度、内径が0.1〜10mm程度、肉厚が0.1〜5mm程度の範囲内で設定される。神経再生誘導管の長さは任意に設定しうるが、10〜100mm程度のものが一般的である。神経再生誘導管は、生体分解性材料又は生体吸収性材料で形成されたものが好適である。生体分解性材料としては、例えば、コラーゲン、ゼラチンなどのタンパク質、ポリペプチド又はそれらの誘導体などが用いられる。生体吸収性材料としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド又はそれらの誘導体、多糖類又はその誘導体、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、グリコール酸と乳酸の共重合体、乳酸とε−アミノカプロン酸の共重合体、ラクチド重合体などの脂肪酸ポリエステルなどが用いられる。これらのうち、コラーゲンが特に好適である。
【0024】
前述された神経再生誘導管は、例えば、内径が0.5mm毎に異なる複数種のものが供給されている。神経再生術においては、損傷した神経の太さを計測して、如何なる内径の神経再生誘導管を用いるかを判断する必要がある。したがって、溝23,24,25は、神経再生誘導管の内径の種類に対応して、例えば、0.5mm毎に幅が異なるように設定されている。
【0025】
なお、本実施形態では、3つの溝23,24,25が設けられた神経計測装置10が示されているが、溝の数は適宜増減されてもよいことは言うまでもない。また、各溝の幅のピッチも適宜変更されてもよいことも勿論である。
【0026】
また、本実施形態では、各溝23,24,25は、平板材11の他端に設けられて、平板材11の小口面に開口している。このような実施形態によれば、神経を各溝23,24,25に挿入させることが容易なので好適であるが、例えば、各溝23,24,25が、平板材11の中央付近に配置されていたり、平板材11の短手方向へ延びるように形成されていてもよい。
【0027】
図3に示されるように、平板材11の第2面22には、長手方向へ延びる端部に沿って、長さを測定する目盛り26が記されている。目盛り26は、平板材11の他端から長手方向へ延びる長さを測定可能に、例えば1ミリメートル間隔の直線によって記されている。
【0028】
神経計測装置10の使用に際しては、施術者は、把手12の他端側を持って、平板材11を他端側から開創へ挿入する。平板材11は、細長な形状なので、開創を必要以上に大きくすることなく、開創から深い位置まで挿入することができる。また、平板材11の隅をラウンド(R)加工したり面取りしたりすることによって、平板材11が組織や他の神経と接触しても、組織等を傷つけるおそれを抑制できる。また、必要に応じて、平板材11に対して把手12を回動させて、平板材11と把手12との屈曲角度を変更することにより、開創から深い位置や組織の裏側にも平板材11を挿入することができる。また、平板材11に対して把手12の屈曲角度を変更することにより、開創の深い位置から浅い位置へ延びる神経の長さを容易に測定することができる。
【0029】
開創から挿入された平板材11の第1面21に設けられた各溝23,24,25を、損傷された神経に沿わせて対比することにより、神経の径が判断される。また、平板材11を裏向けて、第2面22に記された目盛り26を、神経が欠損された箇所に沿わせることにより、神経が欠損された長さを測定することができる。このようにした判断された神経の径及び神経が欠損された長さに従って、好適な内径の神経再生誘導管を選択して、好適な長さに神経再生誘導管を切断することができる。
【0030】
[本実施形態の作用効果]
前述された神経計測装置10によれば、損傷された神経の太さ及び欠損された神経の長さを好適に測定することができる。
【0031】
また、神経計測装置10によれば、平板材11と把手12とが回動可能に連結されているので、損傷された神経の位置に応じて、平板材11と把手12とを好適な屈曲角度にすることができるので、操作性がよい。
【0032】
[変形例]
なお、前述された実施形態においては、本発明に係る指標として、溝が示されているが、例えば、第1面21に記された幅の異なる直線により、本発明の指標が実現されてもよい。また、前述された実施形態では、平板材11の第1面21に溝23,24,25が形成され、第2面22に目盛り26が記されているが、溝23,24,25と目盛り26とは第1面21又は第2面22の同一面に配置されていてもよい。溝23,24,25と目盛り26とが同一面に配置されることにより、開創から挿入された平板材11を開創内において反転させることなく、損傷された神経の径の判断と、長さの測定とを行うことができる。
【符号の説明】
【0033】
10・・・神経計測装置
11・・・平板材
12・・・把手
21・・・第1面
22・・・第2面
23,24,25・・・溝(指標)
26・・・目盛り


【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅の異なる複数の指標が第1面に設けられた細長な平板材を備えた神経計測装置。
【請求項2】
上記平板材の上記第1面、及び上記第1面と反対側の第2面のうち少なくともいずれかに、長さを測定する目盛りが記された請求項1に記載の神経計測装置。
【請求項3】
上記平板材と回動可能に連結された把手を更に備えた請求項1又は2に記載の神経計測装置。
【請求項4】
上記指標は、溝である請求項1から3のいずれかに記載の神経計測装置。
【請求項5】
上記指標は、線である請求項1から3のいずれかに記載の神経計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−235954(P2012−235954A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107980(P2011−107980)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】