説明

神経賦活性化合物としての環式ヒドロキシルアミン

【化1】


Xが、O又はCHを表し;R及びRが、それぞれ独立に水素又はC1−6アルキルを表し;pが、0又は1を表し;そしてRが:式(II)、(III)及び(IV)から選択される5−若しくは6−員の飽和又は不飽和環を表すか;或いはRが:R及びRが、いっしょにオキソ基を表すか、或いはR及びRが、それぞれ水素、メトキシ又はエトキシを表すか、或いはR及びRが、介在する炭素原子といっしょに、2位を介して接続し、そして一つ若しくはそれより多いメチル又はエチル基を所望により保有する1,3−ジオキソラン或いは1,3−ジオキサン環を形成する(V)及び(VI)から選択される5−又は6−員のオキソで置換された不飽和環を表する;式(I)の化合物:又はその塩は、不安症及び鬱病の治療のために適している。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、不安症及び鬱病の治療のために適した神経賦活性化合物(psychoactive compounds)に関する。特に、本発明は、イソオキサゾール化合物の開環された誘導体のような新規なヒドロキシルアミン化合物、並びにその類似体、その調製、その医薬製剤及び医薬中のその使用に関する。
【0002】
多くの神経賦活性化合物が、不安症及び鬱病の治療において使用するために知られている。ジアゼパム(ベンゾジアゼピンの一つ)は公知であり、そして抗不安剤及び抗鬱剤として広く使用されている。他の既知の神経賦活性化合物は、米国特許第5 707 988号(Boyd et al./British Technology Group Ltd.)中に開示されているような、以下の式(A):
【0003】
【化1】

【0004】
に示す構造を有するある種の三環式縮合ベンゾ[d]イソオキサゾール化合物、又はその塩を含み、式中、X’は、O、S、C=O又はNR’であり、ここにおいてR’は、水素、C1−6アルキル、フェニル又はC7−12フェニルアルキルであり、R’及びR’は、それぞれ水素を表すか、又はいっしょにオキソ基を表し、そしてR’、R’及びR’は、それぞれ水素を表すか、又はR’は水素を表し、そしてR’、R’、R’及びR’の二つは、いっしょに7及び8、8及び9又は9及び10位を結合する二重結合の二番目の結合を表し、残りのR’、R’、R’及びR’の二つは、水素を表す。
【0005】
式(A)の化合物が抗不安剤として良好な効力を証明するが、鬱病の治療におけるその効力は、理想より低いことが見出されている。従って、不安症及び鬱病の両方の治療において、特に両方の症状が起こった病態の治療に対して有効である新しい化合物に対する必要性が存在する。本発明は、この必要性に取り組む。
【0006】
以下の式
【0007】
【化2】

【0008】
の化合物は、合成の中間体として知られている。
2−フェニルピペリジン−1−オールは、以下の文献に記述されている:
・ “Regiochemistry of Mercury(II)oxide oxidation of unsymmetrical N,N−disubstituted hydroxylamines.(非対称性N,N−二置換ヒドロキシルアミンの酸化水銀(II)酸化の位置化学)”Tetrahedron(1996),52(47),14917−28(Ali et al.);
・ “Reaction of pyridine and quinoline N−oxides with phenylmagnesium bromide.(ピリジン及びキノリンN−オキシドの臭化フェニルマグネシウムによる反応)”Y.Org.Chem.(1965),30(3),910−13(Kato et al.);
・ “Cyclic nitrones(I):dimeric 2,3,4,5−tetrahydropyridine N−oxides.(環式ニトロン(I):二量体の2,3,4,5−テトラヒドロピリジンN−オキシド)”Chem.Ber.,vol.89,2159−67(1956)(Thesing et al.)。
【0009】
2−ベンジルピペリジン−1−オールは、以下の文献に記述されている:
・ “Synthesis and cycloadditin of 6−substituted 3,4,5,6−tetrahydropyridine 1−oxides.(6−置換3,4,5,6−テトラヒドロピリジン1−オキシドの合成及び付加環化)”J.Chem.Res.,Synop.(1994),(2),54−5(Ali et al.);
・ “Mercury(II)oxide oxidation of 2−substituted N−hydroxypiperidine:a solution to the regiochemical problem.(2−置換N−ヒドロキシピペリジンの酸化水銀(II)酸化:位置化学の問題に対する一つの答え)”Tet.Lett.(1993),34(33),5325−6(Ali et al.)。
【0010】
然しながら、医薬剤として使用するための化合物の開示は無い。
従って、本発明は、第1の側面において医薬として使用するための以下の式(I):
【0011】
【化3】

【0012】
の化合物;
又はその互変異性体;
或いはその塩を提供し、
式中−
Xは、O又はCHを表し;
及びRは、それぞれ独立に水素又はC1−6アルキルを表し;
pは、0又は1を表し;そして
Rは、以下の式:
【0013】
【化4】

【0014】
から選択される5−若しくは6−員の飽和又は不飽和の環を表し;或いは
Rは、以下の式:
【0015】
【化5】

【0016】
から選択される5−又は6−員のオキソで置換された不飽和環を表し;
式中、R及びRは、いっしょにオキソ基を表すか、又はR及びRは、それぞれ水素、メトキシ又はエトキシを表すか、或いはR及びRは、介在する炭素原子といっしょに、2位を介して接続し、そして一つ若しくはそれより多いメチル又はエチル基を所望により保有する1,3−ジオキソラン或いは1,3−ジオキサン環を表す。
【0017】
Rが、以下の式:
【0018】
【化6】

【0019】
から選択される5−又は6−員のオキソで置換された不飽和環を表し;
式中、R及びRが、いっしょにオキソ基、又はR及びRがそれぞれメトキシ若しくはエトキシを表すそのアセタールを表すか、或いはR及びRが、介在する炭素原子といっしょに、2位を介して接続し、そして一つ若しくはそれより多いメチル又はエチル基を所望により保有する1,3−ジオキソラン或いは1,3−ジオキサン環を表す場合、好ましくはpは0を表す。従って本発明は、好ましくは以下の式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)、(IE)及び(IF):
【0020】
【化7】

【0021】
の化合物、並びに以下の式(IG)及び(IH):
【0022】
【化8】

【0023】
のケトン、並びに式(IG)又は(IH)のケトンの、メタノール又はエタノール;或いは一つ若しくはそれより多いメチル又はエチル基を所望により保有する、エタン−1,2−ジオール又はプロパン−1,2−ジオールとのアセタールを包含する。
【0024】
及びRが、介在する炭素原子といっしょに、一つ若しくはそれより多いメチル又はエチル基を所望により保有する1,3−ジオキソラン或いは1,3−ジオキサン環を表す場合、好ましくは一つのメチル又はエチル基は、1,3−ジオキソラン又は1,3−ジオキサン環の酸素原子のそれぞれに隣接して位置する。好ましくはこれらは、以下の式:
【0025】
【化9】

【0026】
のような化合物を与えるtrans配向にある。
このような化合物は、in vivoで加水分解されて、R及びRがいっしょにオキソ基を表す式(I)の対応する化合物を生じることができる。従って3−ジオキソラン又は1,3−ジオキサン環を有する化合物は、潜在的なプロドラッグを表す。
【0027】
然しながら、好ましくは、R及びRは、いっしょにオキソ基を表す。
Rが、以下の式:
【0028】
【化10】

【0029】
から選択される5−又は6−員のオキソで置換された不飽和環を表す場合;
好ましくはXはOである。
複素環式環がある対称性を示す場合、合成は容易になる。従って、好ましくはR及びRは同一である。好ましくはR及びRは、それぞれ水素を表す。
【0030】
第2の側面において、本発明は、以下の式(II):
【0031】
【化11】

【0032】
の化合物;
又はその互変異性体;
或いはその塩を提供し、
式中−
及びRは、それぞれ独立に水素又はC1−6アルキルを表し;
pは、0又は1を表し;そして
Rは、以下の式:
【0033】
【化12】

【0034】
から選択される5−若しくは6−員の飽和又は不飽和の環を表し;或いは
Rは、以下の式:
【0035】
【化13】

【0036】
から選択される5−又は6−員のオキソで置換された不飽和環を表し;
式中、R及びRは、いっしょにオキソ基を表すか、又はR及びRは、それぞれ水素、メトキシ又はエトキシを表すか、或いはR及びRは、介在する炭素原子といっしょに、2位を介して接続し、そして一つ若しくはそれより多いメチル又はエチル基を所望により保有する1,3−ジオキソラン或いは1,3−ジオキサン環を表す。
【0037】
本発明の更なる好ましい態様は、以下の式(III):
【0038】
【化14】

【0039】
の化合物又はその塩であり、
式中−
及びRは、それぞれ水素を表すか、或いはいっしょにオキソ基を表す。
【0040】
本明細書において、用語“アルキル”は、直鎖及び分枝鎖基の両方、ならびに飽和及び不飽和基を含む。
及びRがいっしょにオキソ基を表す場合、本発明のある種の化合物は、互変異性体として存在することができ、ここでN−ヒドロキシル基は、カルボニル基と反応して、以下の式(IV)又は(V):
【0041】
【化15】

【0042】
のヘミアセタールを形成する。
従って式(IV)又は(V)のヘミアセタールは、本発明の範囲内である。
先に示したように、本発明の化合物は、塩、好ましくはアミン塩の形態で存在することができる。このような塩は、生理学的に受容可能な無機又は有機酸により形成することができる。生理学的に受容可能な酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、イセチオン酸、酢酸、フマル酸、マレイン酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、ラクトビオン酸、ギ酸、マロン酸、パントテン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸及びエタンスルホン酸を含む。塩酸が好ましい。然しながら、一般的に塩よりも遊離塩基の使用が好ましい。
【0043】
本発明の化合物は、N−OH基の窒素に隣接する炭素原子においてキラル中心(*で示す)を保有する。本発明の化合物が、その鏡像異性体の形態に分割することができるか、又はラセミ体として存在することは認識されるであろう。置換基の特質にもよるが、多くのジアステレオ異性体も更に可能である。
【0044】
pが0を表し、そしてRが以下の式:
【0045】
【化16】

【0046】
から選択される5−又は6−員のオキソで置換された不飽和環である場合、本発明の化合物は、以下の式(VI)又は(VIA)の化合物の、以下の式(VII):
【0047】
【化17】

【0048】
の化合物との反応によって調製することができ、
式中、R、R及びXは、式(I)に関して定義したとおりである。これは、R及びRがいっしょにオキソ基を表す場合、次いで式(VI)又は(VIA)の二重結合化合物が、カルボニル基の存在によって活性化されるものであるために、最も明白であるものであることは認識されるものである。他の電子求引性基も更に反応を容易にする。
【0049】
反応は、好ましくは式(VI)又は(VIA)及び(VII)の化合物を、室温ないし100℃の範囲の温度で混合し、そして次いで反応混合物を50ないし150℃、更に好ましくは55ないし65℃の範囲の温度で数時間、適した溶媒中で加熱することによって行われる。周囲圧力を使用することができるが、しかし好ましくは反応は、密封容器中で超高圧で行われる。式(VI)又は(VIA)の化合物は、それ自体反応のために適した溶媒であり;例えば、R及びRが、いっしょにオキソ基を表す場合、得られる2−シクロヘキセノン及び2−シクロペンテノンは、両方とも容易に利用可能である。
【0050】
これによって、式(I)の化合物は、以下の式(VIII)又は(VIIIA):
【0051】
【化18】

【0052】
の三環式中間体の形成によって製造され、これは、単離されるか、又はin situに(反応系中に;現位置に)残すことができる。中間体(VIII)又は(VIIIA)のプロトン化、或いは対応する塩基で触媒される反応は、化合物(I)の形成に導く。開環は、恐らくE1cb脱離(“cb”は“共役塩基”を示す)、或いは対応する酸で触媒された、好ましくは高温における反応によるように見受けられる。
【0053】
式(VII)の化合物は、好ましくは以下の式(IX):
【0054】
【化19】

【0055】
の化合物から酸化、好ましくは過タングステン酸塩で触媒された酸化によってin situで形成される。ニトロン(VII)は、重合する傾向を有し、そして単離することが必要な場合、冷凍庫(freezer)内に保存することによって、重合が起こることを回避するために注意を払わなければならない。
【0056】
本発明の化合物のいずれかは、更に式R(CHMgHalのグリニャール試薬の、以下の式(VII):
【0057】
【化20】

【0058】
の化合物との反応によって調製することができ、
式中、Halは、ハロゲン化物を表し、そしてR、R、R及びXは、式(I)に関して定義したとおりである。本発明者は、塩化物アニオンを使用して調製したグリニャール試薬が、完全に満足すべきものであることを見出した。
【0059】
反応は、好ましくは式R(CHMgHalのグリニャール試薬を、式(VII)の化合物と−10℃の温度で混合し、そして次いで反応混合物を、0℃の温度で適した溶媒中で保持することによって行われる。テトラヒドロフランは、反応のために適した溶媒である。
【0060】
式(I)の化合物が、更にこれらの方法の改変及び当業者にとって明白であるものである他の別の方法によって調製することもできることは認識されるものである。
本発明の化合物は、不安症及び鬱病の両方の治療のために有効であることが見出されている。これらは、ベンゾジアゼピンからの離脱によって(これらは、例えばそれを示さないブスピロンと比較して、これらのベンゾジアゼピンと交差耐性を示すため)起こる不安形成(anxiogenesis)の治療のために特に有用である。化合物は、更にニコチン、アルコール及びコカインのような濫用している薬物の投与の突然の停止によって起こる不安形成の治療においても有用である。
【0061】
有効な抗不安剤又は抗鬱剤活性を達成するために必要な式(I)の化合物の投与量水準は、治療される哺乳動物によって変化するものであり、そして哺乳動物の体重、その表面積、年齢及び一般的な健康状態のような因子に依存するものである。これは、更に投与の様式にも依存するものである。0.01mg/kgないし100mg/kg、特に1mg/kgないし10mg/kgの投与量水準が適している。治療される症状の特質及び重度にもよるが、投与量は、治療の期間中、一日当り2又は3回まで繰返すことができる。これらの範囲外の投与量は、適当である場合、投与することができる。
【0062】
式(I)の化合物は、経口、直腸、非経口、皮下又は局所経路を使用して投与することができる。
式(I)の化合物は、単独で、或いは賦形剤又は希釈剤のような医薬的に受容可能な担体といっしょに投与することができる。従って、本発明は、更に式(I)の化合物を、医薬的に受容可能なその担体と共に含んでなる医薬組成物を提供する。組成物は、更に付加的な治療剤(類)又は成分(類)を含んでなることができる。
【0063】
本発明の化合物及び組成物は、当業者にとって公知である技術を使用して調製される単位剤形として都合よく投与することができる。一般的に、単位剤形の調製は、一つ又はそれより多い治療的に活性な化合物を担体といっしょにする工程を含む。活性化合物(類)及び/又は担体成分(類)は、好ましくは微細に分割された固体又は液体の形態である。
【0064】
経口投与のために適した組成物は、それぞれ所定の量の治療性化合物を含有する錠剤、カプセル、カプレット、カシェ又はロゼンジのような別個の単位を含む。治療性化合物の水性又は非水性液体中の治療性化合物の溶液及び懸濁液も、更に経口投与のために適し、そしてシロップ、エリキシル及び乳剤を含む。化合物は、更に巨丸剤、舐剤又はペーストとして投与することもできる。
【0065】
化合物の非経口経路による投与は、静脈内、腹腔内、筋肉内及び関節内投与を含む。非経口投与のために適した組成物は、都合よくは注射又は注入のために適した活性化合物の滅菌水性製剤を含む。
【0066】
局所投与のために適した組成物は、ローション、クリーム及びペーストを含む。本発明の組成物は、更にエアゾール又は座薬の形態で投与することもできる。
従って、本発明は、更に不安症及び/又は鬱病の徴候を予防又は緩和するための方法も提供し、この方法は、このような治療を必要とする患者、特にヒトのような温血動物に、非毒性の治療的に有効な量の式(I)の化合物、又はその塩、或いはこのような化合物を含有する組成物を投与することを含んでなる。
【0067】
本発明は、更に医薬として使用するための式(I)の化合物、及び不安症及び鬱病の両方の治療、特にベンゾジアゼピンからの離脱、或いはニコチン、アルコール及びコカインのような濫用する薬物の投与の突然の停止によって起こる不安形成の治療のための医薬の製造における式(I)の化合物、又はその塩の使用も含む。
【0068】
本発明は、ここに以下の実施例を参照することによって説明される。本発明の範囲内に入るこれらの実施例の変更は、当業者によって明白であるものである。
実施例
実施例1 2−(4−ヒドロキシ−3−モルホリニル)−2−シクロヘキセノンの調製
【0069】
【化21】

【0070】
モルホリン(10.97g;0.126M)及びタングステン酸ナトリウム水和物(1.54g;4.67mM)を250mLのフラスコ中で0℃に冷却した。過酸化水素(32.5mL(30%水溶液);0.286mM)を反応温度を0℃に保ちながらゆっくりと加えた。反応混合物を更に1.5時間撹拌し、そして過剰の過酸化水素を重硫酸ナトリウムを使用して破壊した。2−シクロヘキセノン(12.1mL;0.125mM)をフラスコにゆっくりと加え、そして反応混合物を更に48時間撹拌した。反応混合物を55℃で2時間、そして次いで65℃で更に2時間加熱した。次いで反応混合物を塩化ナトリウム水溶液中に注ぎ、そしてジクロロメタン(3×100mL)で抽出した。有機層を飽和重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、分離し、そして硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒の除去により、明るい褐色の油状物を得て、これを真空下のKugelrohr蒸留に50−60℃でかけ、暗色の油状物(3.5g;14%)を製造した。この化合物を、ジクロロメタン(CHCl):アセトニトリル(CHCN)溶出剤(5:1;0.27)を使用するシリカのクロマトグラフィーによって、更に精製した。
【0071】
【化22】

【0072】
実施例2 3−フェニルモルホリン−4−オールの調製
【0073】
【化23】

【0074】
活性化されたMnO(0.65g、7.41mmol)を、ジクロロメタン(15mL)中のN−ヒドロキシモルホリン(0.25g、2.47mmol)の溶液に0℃で加え、そして混合物を1時間撹拌した。反応混合物を、CeliteTM及びNaSOのパッドを通して濾過した。濾液を塩化フェニルマグネシウム(テトラヒドロフラン中の2.0M、2.47mL、4.94mmol)の−10℃の溶液に滴下により加えた。反応混合物を0℃で0.5時間撹拌し、そして次いで飽和塩化アンモニウム水溶液(15mL)及びジクロロメタン(15mL)を加えた。水相を分離し、そしてジクロロメタン(2×20mL)で抽出した。混合した有機層を乾燥(NaSO)し、そして減圧下で濃縮した。粗製生成物を、ヘキサン中の25%ジエチルエーテルで溶出するSiOのフラッシュクロマトグラフィーにかけて、表題化合物(0.045g、11%)を、白色の結晶質の固体として得た。
【0075】
【化24】

【0076】
実施例3 3−ベンジルモルホリン−4−オール[P2]の調製
【0077】
【化25】

【0078】
活性化されたMnO(1.29g、14.8mmol)を、ジクロロメタン(25mL)中のN−ヒドロキシモルホリン(0.50g、4.95mmol)の溶液に0℃で加え、そして混合物を1時間撹拌した。反応混合物を、CeliteTM及びNaSOのパッドを通して濾過した。濾液を塩化ベンジルマグネシウム(テトラヒドロフラン中の2.0M、4.95mL、9.90mmol)の−10℃の溶液に滴下により加えた。反応混合物を0℃で0.5時間撹拌し、そして次いで飽和塩化アンモニウム水溶液(25mL)及びジクロロメタン(25mL)を加えた。水相を分離し、そしてジクロロメタン(2×30mL)で抽出した。混合した有機層を乾燥(NaSO)し、そして減圧下で濃縮した。粗製生成物を、ヘキサン中の25%ジエチルエーテルで溶出するSiOのフラッシュクロマトグラフィーにかけて、表題化合物(0.326g、34%)を、白色の結晶質の固体として得た。
【0079】
【化26】

【0080】
実施例4 3−シクロヘキシルモルホリン−4−オールの調製
【0081】
【化27】

【0082】
活性化されたMnO(1.29g、14.8mmol)を、ジクロロメタン(25mL)中のN−ヒドロキシモルホリン(0.50g、4.95mmol)の溶液に0℃で加え、そして混合物を1時間撹拌した。反応混合物を、CeliteTM及びNaSOのパッドを通して濾過した。濾液を塩化シクロヘキシルマグネシウム(ジエチルエーテル中の2.0M、4.95mL、9.90mmol)の−10℃の溶液に滴下により加えた。反応混合物を0℃で0.5時間撹拌し、そして次いで飽和塩化アンモニウム水溶液(25mL)及びジクロロメタン(25mL)を加えた。水相を分離し、そしてジクロロメタン(2×30mL)で抽出した。混合した有機層を乾燥(NaSO)し、そして減圧下で濃縮した。粗製生成物を、ヘキサン中の50%ジエチルエーテルで溶出するSiOのフラッシュクロマトグラフィーにかけて、表題化合物(0.220g、24%)を、白色の結晶質の固体として得た。
【0083】
【化28】

【0084】
実施例5 3−シクロペンチルモルホリン−4−オールの調製
【0085】
【化29】

【0086】
活性化されたMnO(1.29g、14.8mmol)を、ジクロロメタン(25mL)中のN−ヒドロキシモルホリン(0.50g、4.95mmol)の溶液に0℃で加え、そして混合物を1時間撹拌した。反応混合物を、CeliteTM及びNaSOのパッドを通して濾過した。濾液を塩化シクロペンチルマグネシウム(ジエチルエーテル中の2.0M、4.95mL、9.90mmol)の−10℃の溶液に滴下により加えた。反応混合物を0℃で0.5時間撹拌し、そして次いで飽和塩化アンモニウム水溶液(25mL)及びジクロロメタン(25mL)を加えた。水相を分離し、そしてジクロロメタン(2×30mL)で抽出した。混合した有機層を乾燥(NaSO)し、そして減圧下で濃縮した。粗製生成物を、ヘキサン中の70%ジエチルエーテルで溶出するSiOのフラッシュクロマトグラフィーにかけて、表題化合物(0.246g、29%)を、白色の結晶質の固体として得た。
【0087】
【化30】

【0088】
実施例6 2−フェニルピペリジン−1−オールの調製
【0089】
【化31】

【0090】
活性化されたMnO(1.29g、14.8mmol)を、ジクロロメタン(25mL)中のN−ヒドロキシピペリジン(0.50g、4.95mmol)の溶液に0℃で加え、そして混合物を1時間撹拌した。反応混合物を、CeliteTM及びNaSOのパッドを通して濾過した。濾液を塩化フェニルマグネシウム(テトラヒドロフラン中の2.0M、4.95mL、9.90mmol)の−10℃の溶液に滴下により加えた。反応混合物を0℃で0.5時間撹拌し、そして次いで飽和塩化アンモニウム水溶液(25mL)及びジクロロメタン(25mL)を加えた。水相を分離し、そしてジクロロメタン(2×30mL)で抽出した。混合した有機層を乾燥(NaSO)し、そして減圧下で濃縮した。粗製生成物を、ヘキサン中の30%ジエチルエーテルで溶出するSiOのフラッシュクロマトグラフィーにかけて、表題化合物(0.330g、38%)を、白色の結晶質の固体として得た。
【0091】
【化32】

【0092】
実施例7 2−ベンジルピペリジン−1−オールの調製
【0093】
【化33】

【0094】
活性化されたMnO(1.29g、14.8mmol)を、ジクロロメタン(25mL)中のN−ヒドロキシピペリジン(0.50g、4.95mmol)の溶液に0℃で加え、そして混合物を1時間撹拌した。反応混合物を、CeliteTM及びNaSOのパッドを通して濾過した。濾液を塩化ベンジルマグネシウム(テトラヒドロフラン中の2.0M、4.95mL、9.90mmol)の−10℃の溶液に滴下により加えた。反応混合物を0℃で0.5時間撹拌し、そして次いで飽和塩化アンモニウム水溶液(25mL)及びジクロロメタン(25mL)を加えた。水相を分離し、そしてジクロロメタン(2×30mL)で抽出した。混合した有機層を乾燥(NaSO)し、そして減圧下で濃縮した。粗製生成物を、ヘキサン中の60%ジエチルエーテルで溶出するSiOのフラッシュクロマトグラフィーにかけて、表題化合物(0.309g、33%)を、白色の結晶質の固体として得た。
【0095】
【化34】

【0096】
実施例8 2−シクロヘキシルピペリジン−1−オールの調製
【0097】
【化35】

【0098】
活性化されたMnO(1.29g、14.8mmol)を、ジクロロメタン(25mL)中のN−ヒドロキシ−ピペリジン(0.50g、4.95mmol)の溶液に0℃で加え、そして混合物を1時間撹拌した。反応混合物を、CeliteTM及びNaSOのパッドを通して濾過した。濾液を塩化シクロヘキシルマグネシウム(ジエチルエーテル中の2.0M、4.95mL、9.90mmol)の−10℃の溶液に滴下により加えた。反応混合物を0℃で0.5時間撹拌し、そして次いで飽和塩化アンモニウム水溶液(25mL)及びジクロロメタン(25mL)を加えた。水相を分離し、そしてジクロロメタン(2×30mL)で抽出した。混合した有機層を乾燥(NaSO)し、そして減圧下で濃縮した。粗製生成物を、ヘキサン中の40%ジエチルエーテルで溶出するSiOのフラッシュクロマトグラフィーにかけて、表題化合物(0.241g、27%)を、白色の結晶質の固体として得た。
【0099】
【化36】

【0100】
実施例9 2,6−ジメチル−3−フェニルモルホリン−4−オール
【0101】
【化37】

【0102】
9.1. 1−ヒドロキシ−2,6−ジメチルモルホリンの調製
2,6−ジメチルモルホリン(26.74mL、0.22mmol)を、0℃に冷却し、そして過酸化水素(32.2mL、27.5%、0.26mmol)を、撹拌しながら液滴として加えた。溶液を0℃で6時間保存した(発熱の危険性)。生成物をエーテルで抽出し、そして有機相を分離し 乾燥(硫酸マグネシウム)し、そして濃縮した。エーテル 石油(7:3)を溶出剤として使用するシリカゲルのクロマトグラフィーにより、生成物(17%)を、syn及びantiジアステレオ異性体の混合物として得て、これを直ちにニトロンの調製に使用した。
【0103】
9.2. 2,6−ジメチル−3−フェニルモルホリン−4−オールの調製
活性化されたMnO(0.50g、1.91mmol)を、ジクロロメタン(15mL)中の1−ヒドロキシ−2,6−ジメチルモルホリン(0.25g、5.72mmol)の溶液に0℃で加え、そして混合物を1時間撹拌した。反応混合物を、CeliteTM及びNaSOのパッドを通して濾過した。濾液を塩化フェニル−マグネシウム(テトラヒドロフラン中の2.0M、1.91mL、3.82mmol)の−10℃の溶液に滴下により加えた。反応混合物を0℃で0.5時間撹拌し、そして次いで飽和塩化アンモニウム水溶液(15mL)及びジクロロメタン(15mL)を加えた。水相を分離し、そしてジクロロメタン(2×20mL)で抽出した。混合した有機層を乾燥(NaSO)し、そして減圧下で濃縮した。粗製生成物を、ヘキサン中の60%ジエチルエーテルで溶出するSiOのフラッシュクロマトグラフィーにかけて、表題化合物(0.11g、28%)を、白色の結晶質の固体として得た。
【0104】
【化38】

【0105】
実施例10 抗不安症活性−黒と白の箱試験
実施例1の化合物(Abio 09/01)の抗不安症効果を、市販されている抗不安剤、ジアゼパム、及び対応する式(A)の化合物、即ちcis−1,2,3,4,5,6a,7,8,9,10a,10b−ドデカ−1,4−オキサジノ−[3’,4’:2,3]ベンゾ[d]イソオキサゾール−4−オン(本明細書中で以下、「比較化合物A」と呼ぶ)のそれと比較した。この試験モデルにおいて、対照又は治療的量の表1において言及する化合物の一つを投与されたマウスの探索行動に対するストレス性の刺激の影響を研究した。
【0106】
【表1】

【0107】
黒と白の箱は、暗く、そして静かな部屋の床面から86.5cm上のベンチ上に置かれたPlexiglasの天井のない箱(45×27×27cm高さ)で構成されていた。試験箱は、仕切り(高さ60cm)によって二つの区画(2:3の比)に分割されていた。箱の五分の二(2/5)は、ラック(lack)に塗られ、そして赤色灯(4×15W;10ルックス)で照明され;箱の残りは、白色に塗られ、そして60W(400ルクス)の光源で照明されていた。赤色及び白色の照明は、箱の17cm上に位置している。仕切りは、黒色の区画に面する側面は黒色であり、そして白色の区画に面する側面は白色である。区画は、仕切りの底部の中心の7.5cm×7.5cmの開口部によって接続される。白色の区画の床は、9個の領域に分割され、そして黒色の区域の床は、6個の領域に分割される。試験室は、黒色のカーテンによって二つの部分に分離される。薬物処置は、最小の赤色照明をして部屋の一つの部分で行われ;照明のない部屋の他の部分は、試験装置を含有している。
【0108】
この試験装置において、正常なマウスは、立上がり行動、線の交差及び明るく照明された白色の部分の嫌悪特性の結果としての暗黒部分で過ごす時間として測定される、探索に対する選択を示す。ベンゾジアゼピン系の抗不安剤の特徴的作用は、抑制された行動を脱抑制し、白色部分における探索活動の再分布を起こす。黒と白の箱試験は、この手順に対して更に適した種のマウスにおいて確認されている(Costall et al.,Pharm.Bioch.& Behaviour,32,777−785(1989))。
【0109】
30ないし35gの未処置のBKWオスのアルビノマウスを、全ての実験で使用した。通常10匹のマウスをそれぞれの籠に収容し、そして少なくとも2週間、07.00時に消灯される12時間の明/暗サイクルに保った。行動性試験は、赤色灯で照明された暗室中で13.00ないし18.00時の間に行われた。マウスを、暗い保管部屋から試験部屋へ囲われたトロリーで運び、そして少なくとも1時間新しい環境に慣らさせた。
【0110】
マウスは、それぞれ対照又は活性薬剤を、試験の40分前に腹腔内に投与される。試験の開始時に、マウスは箱の白色部分に、仕切りの反対の壁に面して置かれ、そしてその行動は、5分間の実験期間にわたって遠隔ビデオによって記録する。
【0111】
結果を以下の表2に示し、表中、TB=白色部分にいた時間;FI=初期能力;PT=仕切りを通る全通過数;Atot=全探索活動;Ctot=交差の全数;Rtot=立上がりの全数;RB/TB=白色区画中の立上がり/白色中の時間;CB/TB=白色区画中の交差/白色中の時間;RN/TN=黒色区画中の立上がり/黒色中の時間;CN/TN=黒色区画中の交差/黒色中の時間である。
【0112】
【表2】

【0113】
実施例11 抗不安症活性−ラットの高所プラス型迷路
X−迷路は、Perspex(登録商標)で構築され、そして中心の四角(9.5×9.5)によって接続された、それぞれ50cm長さ、9.5幅及び40高さ(閉鎖腕のみ)の4本の腕(2本の開放及び2本の閉鎖)から構成されている。開放腕は、小さい縁(3mm)を有して、ラットが腕に留まるのを補助する。装置は、弱められた照明条件下の部屋に収容された。
【0114】
このモデルは、高さ及びしばしば空間によって生じる嫌悪環境におかれたラットの自発的活動の観察に基づいている。開放腕は、より多い恐れを起こし、そしてこれはより少ない探索となる。抗不安剤は、探索活動及び開放腕への進入の数を増加する。ラットは、試験開始前に少なくとも1時間環境に慣らされた。薬物処置は、行動性試験の40分前に、偽無作為のブラインド設計でIPで適宜に与えられた。ラットは、規定された開放腕に面して、X−迷路の中心の四角部に置かれ、そしてその行動は、5分間の実験期間にわたって遠隔ビデオによって記録された。行動性のパラメータは、ビデオテープを検討する技術者によってその後評価され、そして:それぞれの種類の腕への進入、それぞれの種類の腕上で過した時間、立上がり、伸身待機姿勢及び前傾を含んでいた。結果を以下の表3に示す。
【0115】
【表3】

【0116】
実施例12 抗鬱病活性
Meloni等によってPharmacol.Biochem.Behav.46,423−6(1993)、並びにBehav.Pharmacol.6,66−73(1995)及びNeuropsychopharmacol.21,247−57(1999)にGambarana等によって記載されているような、“学習した無力さ”の古典的パラダイムから誘導された“逃避消失”試験を使用した。不可避なストレスへの暴露は、機能亢進性の行動を誘発し、これは、24時間後、ラットを侵害受容性の刺激から逃避することが不可能にする。不可避なストレスに暴露されたラットは、30回の試行で0−5回の逃避を行い、一方未処置のラットは、26−30回の逃避を実現する。古典的抗鬱病剤は、長期の治療(15日)後に、逃避消失の発生を防止する。
【0117】
ラットを、腹腔内(IP)的に15日間処置し、そして次いで不可避なストレス(最後の投与の16時間後)にかけてから、逃避試験(最後の投与の24時間後)にかけた。結果を以下の表4に示す。
【0118】
【表4】

【0119】
実施例10−12 結論
これらの結果から、本発明の化合物及び比較の従来の技術の化合物(同じ群の化合物である)の抗不安症効果は同様であるが、抗鬱病活性に対する試験における本発明の化合物の結果が、比較の従来の技術の化合物のそれより有意に大きいことを知ることができる。ここに報告された結果において、本発明の化合物は、ラットの行動を、未処置のラット(不可避なストレスにかけられていない)の水準に戻すこととなる。
【0120】
実施例13 抗鬱病活性−断念及び開放広場試験
実施例1の化合物で処置されたラットを、古典的な抗鬱剤、クロミプラミン又は対照で処置されたいずれかのラットと、断念試験(強制遊泳)で比較した。同じグループを更に解放広場行動におけるレセルピンで誘発された変化に対しても試験した。
【0121】
13.1.動物
体重220−240gのWistar系のオスのラット(Charles River,Italyから購入)を全ての実験を通して使用した。実験の少なくとも1週間前に、21℃の一定温度及び12時間の明/暗サイクル(08:00ないし20:00の間点燈)下の、食餌及び水を制約無く利用可能な籠に4匹収容した。
【0122】
13.2.薬物及び処置
ラットのグループは、クロミプラミン塩酸塩(50及び100mg/kg)の処置を受けた。Sigma(USA)によって購入された薬物を、生理学的食塩水中に新しく希釈し、そして腹腔内(IP)に注射した。断念試験にかけられるラットは、このような注射を、行動性試験の24、5及び1時間前の3回投与された。生理学的食塩水(生理食塩水)を、対照ラットにIPで注射した。実施例1の化合物(0.2及び0.5mg/kg)を、ラットのグループにIPで注射した。
【0123】
クロミプラミン塩酸塩(50mg/kg)又は実施例1の化合物(0.2及び0.5mg/kg)或いは生理学的食塩水の急性IP注射を、開放広場試験におけるレセルピンで誘発された変化にかけられるラットに行った(注射は最後のレセルピンの投与といっしょに、例えば開放広場試験の1時間前に行った)。
【0124】
全てのラットは、経験のある施設の管理者によって、いずれもの環境的又は物理的ストレスを回避するように穏やかに取扱われた。薬物又は生理学的食塩水の投与にかけられるラットは、31mmの長さ(IP注射に対して)又は21mmの長さ(SC注射に対して)の23番ゲージのステンレス鋼の針による1mLの標準体積の溶液の注射を受けた。ラットは、いずれもの処置グループに無作為に割当てられ、そして行動性実験にただ1回のみ使用された。
【0125】
13.3.行動性試験
断念試験のために、ラットを、25℃に維持された15cmの水を含有する縦型のPlexiglasの円筒内で、個別に泳ぐことを強制された(Nature 266:730−732,Porsolt et al.,1977)。水中での15分後、ラットを取出し、そして加熱した容器内で15分間乾燥させてから、保管籠に戻した。ラットは、24時間後に円筒に再び入れられ、そして5分の試験中の全不動期間を測定した。ラットは、わずかに背を曲げ、しかし直立の位置で、その頭を表面にわずかに出して、水中に受動的に浮かんだままであるときに、不動であると判定された。
【0126】
開放広場行動のレセルピンで誘発された変化は、Naunyn−Schmiedeberg’s Arch.Pharmacol.293:109−114(Vetulani et al.,1976)に記載されている方法によって研究した。レセルピン(Sigma,USA)を、生理学的食塩水中に溶解し、そして14日間毎日0.1mg/kgの投与量で皮下(SC)注射した。レセルピンの最後の注射の1時間後の期間に、ラットを開放広場試験にかけた。これは、17の等しい部分に分割され、そして中心に吊下げられた電灯によって照明された円形の領域中のラットの歩行行動及び立上がりの測定からなっていた。5分間の試験中に、ラットによって少なくとも前足で探索された領域を記録した。5分間の試験中の、中心又は壁に対する立上がりのエピソードも更に記録した。
【0127】
13.4.統計的分析
全てのデータを、一変量無作為設計分散分析(一元配置ANOVA)及び多重比較のための事後的Dunnett検定を使用して分析した。0.05又はそれより小さいP値を、有意差の表示と考えた。示されていない場合、一元配置ANOVAは、分散の有意な水準を明らかにしない。
【0128】
偽薬としての生理学的食塩水、50mg/kgのクロミプラミン又は実施例1の化合物(0.2及び05mg/kg)を注射されたラットの、断念試験(強制遊泳)における不動の期間を表5に示す。
【0129】
【表5】

【0130】
値は、平均±S.E.M.である。括弧内に、それぞれのグループ当りのラットの数を示す。
*偽薬で処置された対照と比較して有意に異なる(p<0.05、多重比較に対するDunnett検定)。
【0131】
偽薬としての生理学的食塩水、50mg/kgのクロミプラミン又は実施例1の化合物(0.2及び05mg/kg)を注射されたラットの、床単位の数及び立上がりエピソード。
【0132】
偽薬としての生理学的食塩水、50mg/kgのクロミプラミン又は実施例1の化合物(0.2及び05mg/kg)を注射されたラットの、床単位の数及び立上がりエピソードを、表6に示す。
【0133】
【表6】

【0134】
値は、平均±S.E.M.である。括弧内に、それぞれのグループ当りのラットの数を示す。一元配置ANOVAは、“床単位の数”[F(3,29)=2.27(p<0.10)]及び“立上がりエピソード”[F(3,29)=2.10(p<0.10)]に対する処置に対する分散の有意な水準を明らかにしなかった。
【0135】
*レセルピン+偽薬対照と比較して有意に異なる(p<0.05、多重比較に対するDunnett検定)。
13.5.結果及び結論
これらの結果は、0.5mg/kgの実施例1の化合物で処置されたラットが、対照グループと比較して、断念試験における不動時間の有意な減少を示すことを示す。この効果は、50mg/kgのクロミプラミンで処置されたラットのそれと同様であった。
【0136】
レセルピン試験の開放広場の成績は、0.5mg/kgの実施例1の化合物で処置されたラットの、対照と比較した歩行行動(進入した床単位の数)及び立上がり(エピソードの数)の減少を明らかにした。これらの効果は、50mg/kgのクロミプラミンで処置したラットのそれと同様であった。
【0137】
実施例14 抗不安症活性−黒と白の箱試験
更なる研究を、実施例1の化合物及び実施例2−7の化合物[化合物P1−P6]の抗不安症効果を、市販の抗不安症剤、ジアゼパム、及び対応する式(A)の化合物(比較化合物A)のそれと比較して行った。
【0138】
黒/白試験装置(B/W箱)において、正常なマウスは、明るい照明の嫌悪特性の結果として、黒色の部分で過す時間によって測定されるより嫌悪感の少ない区画に残ること、並びに立上がり行動及び線交差によって測定される探索に対する選択を示した。抗不安剤の特徴的作用は、探索活動及び白色部分で過ごす時間の再分布を起こすことである。
【0139】
それぞれのマウスを、白色の明るく照明された領域の中心に、B/W区画間の開口部に背を向けて置いた。マウスの行動は、遠隔ビデオカメラによって5分間記録された。記録は、その後、薬物治療を知らない二人の操作員によってTV上で評価された。以下の行動性のパラメータが記録された:
a)白色から黒色領域への最初の移動の潜伏期:L(秒);
b)白色領域で過ごした時間TW(秒);黒色領域で過ごした時間は、差によって計算した:5−TW=TB(秒);
c)二つの区画間の移行の数T(回/5分);
d)白色及び黒色の区画中の全活動、Atot(回/5分);
e)白色領域で過ごした時間中の白色領域中の全活動:AtotW/TW(回/秒);
f)黒色領域で過ごした時間中の黒色領域中の全活動:AtotB/TB(回/秒);
g)探索性立上がりの全数:Rtot(回/5分);
h)線交差の全数:Ctot(回/5分);
i)白色部分における探索性立上がりの数RW/TW(回/秒);
j)白色部分における線交差の数CW/TW(回/秒)。
【0140】
処置は、
1.ベヒクル 0
2.ジアゼパム 1.25mg/kg
3.比較化合物A 0.1mg/kg
4.実施例1の化合物、0.1mg/kg
5.P1 0.1mg/kg
6.P2 0.1mg/kg
7.P3 0.1mg/kg
8.P4 0.1mg/kg
9.P5 0.1mg/kg
10.P6 0.1mg/kg
であった。
【0141】
それぞれのグループは、8匹のマウスから構成されていた。
結果を以下の表に示す。
【0142】
【表7】

【0143】
L:ANOVA比較は、有意ではなかった。
【0144】
【表8】

【0145】
【表9a】

【0146】
【表9b】

【0147】
【表10】

【0148】
【表11】

【0149】
【表12】

【0150】
【表13】

【0151】
【表14】

【0152】
totW/TW:ANOVA比較は、有意ではなかった。
【0153】
【表15】

【0154】
【表16a】

【0155】
【表16b】

【0156】
【表17】

【0157】
【表18】

【0158】
【表19】

【0159】
【表20】

【0160】
【表21】

【0161】
RW/TW:ANOVA比較は、有意ではなかった。
【0162】
【表22】

【0163】
CW/TW:ANOVA比較は、有意ではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬として使用するための以下の式(I):
【化1】

[式中−
Xは、O又はCHを表し;
及びRは、それぞれ独立に水素又はC1−6アルキルを表し;
pは、0又は1を表し;そして
Rは、以下の式:
【化2】

から選択される5−若しくは6−員の飽和又は不飽和の環を表し;或いは
Rは、以下の式:
【化3】

から選択される5−又は6−員のオキソで置換された不飽和環を表し;
式中、R及びRは、いっしょにオキソ基を表すか、又はR及びRは、それぞれ水素、メトキシ又はエトキシを表すか、或いはR及びRは、介在する炭素原子といっしょに、2位を介して接続し、そして一つ若しくはそれより多いメチル又はエチル基を所望により保有する1,3−ジオキソラン或いは1,3−ジオキサン環を表す]
の化合物;
又はその互変異性体;
或いはその塩。
【請求項2】
Rが、以下の式:
【化4】

から選択される5−又は6−員のオキソで置換された不飽和環を表し;
式中、R及びRは、いっしょにオキソ基を表すか、又はR及びRは、それぞれメトキシ又はエトキシを表すか、或いはR及びRは、介在する炭素原子といっしょに、2位を介して接続し、そして一つ若しくはそれより多いメチル又はエチル基を所望により保有する1,3−ジオキソラン或いは1,3−ジオキサン環を表し、そしてpは0を表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
及びRが、いっしょにオキソ基を表す、請求項1又は2のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項4】
Rが、以下の式:
【化5】

から選択される5−又は6−員のオキソで置換された不飽和環であり;そしてXがOである、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
及びRが、同一である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
及びRが、それぞれ水素を表す、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
以下の式(II):
【化6】

[式中−
及びRは、それぞれ独立に水素又はC1−6アルキルを表し;
pは、0又は1を表し;そして
Rは、以下の式:
【化7】

から選択される5−若しくは6−員の飽和又は不飽和の環を表し;或いは
Rは、以下の式:
【化8】

から選択される5−又は6−員のオキソで置換された不飽和環を表し;
式中、R及びRは、いっしょにオキソ基を表すか、又はR及びRは、それぞれ水素、メトキシ又はエトキシを表すか、或いはR及びRは、介在する炭素原子といっしょに、2位を介して接続し、そして一つ若しくはそれより多いメチル又はエチル基を所望により保有する1,3−ジオキソラン或いは1,3−ジオキサン環を表す]
の化合物;
又はその互変異性体;
或いはその塩。
【請求項8】
以下の式(III):
【化9】

の化合物であり、
式中−R及びRは、それぞれ水素を表すか、或いはいっしょにオキソ基を表す、請求項7に記載の化合物又はその塩。
【請求項9】
pが0を表し、そしてRが、以下の式:
【化10】

から選択される5−又は6−員のオキソで置換された不飽和環を表す請求項7又は8のいずれか1項に記載の式(I)の化合物の製造のための方法であって、XがOであり、そしてR及びRが、式(I)に関して定義されたとおりである以下の式(VI)又は(VIA)の化合物と、以下の式(VII):
【化11】

の化合物との反応による、前記方法。
【請求項10】
及びRが、いっしょにオキソ基を表す、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
式(VII)の化合物が、以下の式(IX):
【化12】

の化合物からin situで酸化により形成される、請求項9又は10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
式R(CHMgHalのグリニャール試薬と、XがOであり、Halがハロゲン化物を表し、そしてR、R及びRが、式(I)に関して定義されたとおりである以下の式(VII):
【化13】

の化合物との反応による、請求項7又は8に記載の式(I)の化合物の製造のための方法。
【請求項13】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその塩を、医薬的に受容可能なその担体と共に含んでなる、医薬組成物。
【請求項14】
不安症又は鬱病の治療のための医薬の製造における、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその塩の使用。
【請求項15】
ベンゾジアゼピンからの離脱によって、又は濫用している薬物の投与の突然の中断によって起こる、不安形成(anxiogenesis)の治療のための医薬の製造における、請求項14に記載の使用。

【公表番号】特表2006−527242(P2006−527242A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516370(P2006−516370)
【出願日】平成16年6月1日(2004.6.1)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002324
【国際公開番号】WO2004/111021
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(500431508)ビーティージー・インターナショナル・リミテッド (41)
【Fターム(参考)】