説明

移動体システム

【課題】壁面と移動体の位置関係、又は撮像画像と記憶している画像の照合結果を基に移動体の進行方向を決定する移動体システムを提供する。
【解決手段】外環境を撮像する撮像装置13が取付けられた移動体12と、撮像装置13によって撮像する画像を、移動体12の走行経路11上で予め撮像しておいた画像と照合する画像解析手段14と、走行経路11に沿って配置された壁面15、15aに対する移動体12の向き、及び壁面15、15aと移動体12の距離を検出する壁面検出手段16と、画像解析手段14、又は壁面検出手段16からの出力によって、走行経路11に対する移動体12のずれ量を検知して、移動体12の、走行経路11上を進行するための進行方向を算出する進行方向算出手段24とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体システムに関する。
【背景技術】
【0002】
生産工場等では、省力化のため製品や部材の搬送に自律走行する移動体が利用されている。このような移動体は、床に設置した反射テープ、マグネットテープなどのガイドレールに沿って走行するものが主流であった。ところが、ガイドレールを用いる場合、1)ガイドレールの設置作業が煩雑である、2)走行経路の変更が容易でない、3)ガイドレールに破損や汚れが生じやすく移動体の誘導精度が低下する、及び4)移動体の走行の自由度が制限される等の問題が生じていた。
これらの問題を解消するため、最近ではガイドレールを用いない移動体が提案され、その具体例が特許文献1、2に記載されている。
特許文献1の移動体は、走行中に、走行方向前方の所定距離内に存在する物体の位置及び形状と移動体の走行方向の関係から、走行経路通過点を求めて走行予定経路を算出する。
特許文献2の移動体は、走行経路の周囲に配置されたマーカを撮像し、記憶していたマーカの位置情報及び方向情報に基づいて移動体の位置及び姿勢を認識する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−293975号公報
【特許文献2】特開2009−52924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、壁面と移動体の位置関係、又は撮像画像と記憶している画像の照合結果を基に移動体の進行方向を決定する移動体システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う本発明に係る移動体システムは、外環境を撮像する撮像装置が取付けられた移動体と、前記撮像装置によって撮像する画像を、前記移動体の走行経路上で予め撮像しておいた画像と照合する画像解析手段と、前記走行経路に沿って配置された壁面に対する前記移動体の向き、及び該壁面と該移動体の距離を検出する壁面検出手段と、前記画像解析手段又は前記壁面検出手段からの出力によって、前記走行経路に対する前記移動体のずれ量を検知して、該移動体の、前記走行経路上を進行するための進行方向を算出する進行方向算出手段とを有する。
【0006】
本発明に係る移動体システムにおいて、前記画像解析手段は、前記撮像装置によって撮像された画像が前記走行経路上で予め撮像しておいた画像と照合できない画像照合不可の信号を前記進行方向算出手段に送信して、該進行方向算出手段の出力信号受信元が該画像解析手段から、前記壁面検出手段に切り替えられるのが好ましい。
【0007】
本発明に係る移動体システムにおいて、前記壁面検出手段は、前記移動体からレーザー光を照射し、その反射レーザー光から前記壁面の位置を検知するのが好ましい。
【0008】
本発明に係る移動体システムにおいて、前記壁面検出手段は、前記反射レーザー光に平面視して予め設定された長さ以上の直線部の情報があるのを検出して、前記壁面を検知するのが好ましい。
【0009】
本発明に係る移動体システムにおいて、前記壁面検出手段は、前記壁面に、平面視して前記走行経路までの距離が異なる領域があるのを検知したとき、該領域又は該領域の延長線上と前記移動体との平均距離を、前記壁面と該移動体の距離として導出するのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る移動体システムは、画像解析手段、又は壁面検出手段からの出力によって、走行経路に対する移動体のずれ量を検知して、移動体の、走行経路上を進行するための進行方向を算出する進行方向算出手段を有するので、画像解析手段による画像の照合ができない箇所では、壁面を参照して移動体の進行方向を算出することができる。
【0011】
本発明に係る移動体システムにおいて、画像解析手段が、画像照合不可の信号を進行方向算出手段に送信して、進行方向算出手段の出力信号受信元を画像解析手段から、壁面検出手段に切り替える場合、画像解析手段による画像の照合ができない状態になっても、移動体を進行させるための進行方向の算出を継続可能である。
【0012】
本発明に係る移動体システムにおいて、平面視して予め設定された長さ以上の直線部の情報があるのを検出して、壁面を検知する場合、移動体の進行方向を決定するための入力として参照すべきでない壁面以外の物を、参照情報から除外することができる。
【0013】
本発明に係る移動体システムにおいて、壁面検出手段が、壁面に、平面視して走行経路までの距離が異なる領域があるのを検知したとき、その領域又はその領域の延長線上と移動体との平均距離を、壁面と移動体の距離として導出する場合、壁面検出手段は、走行経路までの距離が異なる壁面から、移動体の進行方向を算出するために必要な壁面と移動体の距離を導出することが可能である。
【0014】
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)は本発明の一実施の形態に係る移動体システムの移動体の側面図であり、(B)は同移動体システムの一部省略ブロック図である。
【図2】同移動体システムの移動体の走行経路の説明図である。
【図3】同移動体システムの撮像装置の撮像方向と移動体の位置との関係を示す説明図である。
【図4】(A)、(B)は撮像装置によって撮像された画像中の位置と撮像方向の関係を示す説明図である。
【図5】(A)、(B)はそれぞれ同移動体システムの壁面検出手段による壁面の検知を示す説明図である。
【図6】(A)、(B)はそれぞれ同移動体システムの壁面検出手段による壁面の検知を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)、(B)、図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る移動体システム10は、工場、オフィス、病院、又は商業施設等で用いられ、移動体12を、予め定められた走行経路11上に沿って走行させるシステムである。
移動体システム10は、外環境を撮像する撮像装置13が取付けられた移動体12と、撮像装置13によって撮像する画像を、移動体12の走行経路11上で予め撮像しておいた画像と照合する画像解析手段14を有している。更に、移動体システム10は、走行経路11に沿って配置された壁面15、15aに対する移動体12の向き、及び壁面15、15aと移動体12の距離を検出する壁面検出手段16を有している。以下、詳細に説明する。
【0017】
図1(A)、(B)、図2に示すように、走行経路11上を走行する移動体12は、下部一側(前側)及び下部他側(後側)に駆動車輪17、17a及び従動車輪18、18aをそれぞれ備えるボディー部19を有している。ボディー部19には、駆動車輪17、17aの角速度及び向きを制御する走行制御手段21が搭載されている。移動体12は、走行制御手段21による駆動車輪17、17aの制御によって、前進、後退、又は方向変換等を行うことができる。
【0018】
撮像装置13は、撮像する画像の中に移動体12が入らないように、ボディー部19の高い位置に配置されている。撮像装置13は、駆動車輪17、17aの向きに合わせて撮像方向が変化するように移動体12に取付けられ、撮像装置13はボディー部19の進行方向の外環境を撮像する。
【0019】
画像解析手段14は、ボディー部19に搭載され、ボディー部19が走行経路11を走行している際に、撮像装置13によって撮像された複数の画像を記憶することができる。
画像解析手段14は、撮像装置13が撮像している現在の画像(以下、「実画像」ともいう)と、予め走行経路11上で撮像し記憶していた複数の画像(以下、「記憶画像」ともいう)を照合(パターンマッチング)する。画像解析手段14は、実画像中から識別可能な特徴点(形状、模様等からなる)を抽出し、この特徴点を基に、実画像と複数の記憶画像の同一性を照合する。
画像解析手段14は、照合の結果、実画像と同一性を有すると判定した一の記憶画像を選択し、この選択した記憶画像中における特徴点の位置と実画像中における特徴点の位置を比較して、選択した記憶画像に対する実画像のずれ幅を検出する。
【0020】
図3に示すように、選択された記憶画像を記憶画像20、実画像を撮像している撮像装置13の現在の撮像方向をR1、記憶画像20と同じ画像を現在位置から撮像するための撮像装置13の撮像方向をR2として、画像解析手段14は、記憶画像20に対する実画像のずれ幅から、R1に対するR2の角度(角度差)Rを算出する。
角度Rの算出方法について、以下に説明する。
【0021】
図4(A)、(B)に示すように、今、撮像装置13の撮像範囲に、特徴点22があるとすると、この特徴点22は、実画像23に写し出されていることになる。平面視して、実画像23における撮像装置13の撮像方向中心の角度位置を0度、実画像23の左端及び右端の角度位置をそれぞれS度及び−S度、実画像23の左端及び右端の水平画素位置をそれぞれ0画素及びW画素、特徴点22の角度位置及び水平画素位置をそれぞれTH度及びX画素とすると、式1が成立する。
tan(TH)=(1−2×X/W)×tan(S) (式1)
【0022】
式1より、特徴点22の角度位置は、実画像23中の特徴点22の水平画像位置から求められることが分かる。式1は、記憶画像に対しても適用可能である。
図4(A)、(B)では、角度位置の単位が”deg”、画素位置の単位が”pixel”で記載されている。図4(B)に記載された縦の実線及び破線は、それぞれ角度位置及び画素位置を表している。
【0023】
画像解析手段14は、実画像23と記憶画像20に写し出されている同一の特徴点22について、実画像23における水平画素位置と、記憶画像20における水平画素位置を検出する。画像解析手段14は、実画像23と記憶画像20のそれぞれについて、式1を用いて、特徴点22の水平画素位置から、特徴点22の角度位置を算出し、その角度位置の差分から角度Rを求めることができる。
【0024】
角度Rが0(零)度のとき、実画像23を撮像しているボディー部19(移動体12)は、記憶画像20を撮像したときのボディー部19の位置にあることなり、ホディー部19は、走行経路11上を走行していることになる。
一方、図3に示すように、角度Rが0度でないとき、ボディー部19は、走行経路11上を走行していないことになる。ボディー部19には、ボディー部19の進行方向を導出する進行方向算出手段24が搭載されている。進行方向算出手段24は、角度Rの値を参照して、ボディー部19が走行経路11上を走行しているか否かを検知する。
【0025】
角度Rが0度でないとき、走行経路11に対する撮像装置13の位置及び撮像方向は、角度Rの値のみから特定することができず、これは、走行経路11に対するボディー部19の位置及び進行方向も同様である。従って、進行方向算出手段24は、ボディー部19の進行方向を算出するために、走行経路11に対するボディー部19の位置及び進行方向を用いることはできない。
【0026】
一方で、ボディー部19は、角度Rが0度のとき、走行経路11上を走行することになるので、ボディー部19は、角度Rを0度にする向きに進行方向が制御されれば、走行経路11上を移動するようになることが分かる。
進行方向算出手段24は、角度Rのみを参照し、角度Rが角度0以外の値のとき、その角度Rを走行経路11に対するボディー部19のずれ量として検知する。進行方向算出手段24は、角度Rのずれ量を検知したとき、角度Rが角度0になるボディー部19の進行方向を算出し、この算出した値を走行制御手段21に送信する。走行制御手段21は、進行方向算出手段24によって算出された進行方向に沿ってボディー部19が走行するように、駆動車輪17、17aを制御する。
【0027】
進行方向算出手段24は、壁面15、15a(図2参照)に対するホディー部19の進行方向及び壁面15、15aとボディー部19の距離を基に、走行経路11に対するボディー部19のずれ量を検知することもできる。これは、移動体システム10に設けられた壁面15、15aが走行経路11と間隔を有し、走行経路11に沿って配置されているためである。
図1(A)、(B)に示すように、ボディー部19には、壁面検出手段16が設けられている。壁面検出手段16は、ボディー部19から予め設定された距離内にある物体を検出する距離センサー25と、距離センサー25の出力から壁面15(壁面15aについても同じ)の存在を検知するスキャニング解析部26とを有している。
【0028】
距離センサー25は、図5(A)、(B)に示すように、平面視して、予め定められた角度範囲(角度ε)内において、予め設定された角度間隔でレーザー光を照射する。距離センサー25は、ボディー部19から一定距離内にある物体によって反射されたレーザー光(以下、「反射レーザー光」ともいう)を受信する。距離センサー25は、受信する反射レーザー光から、レーザー光を反射した物体の、距離センサー25に対する位置を求め、更に、最小二乗法によってその物体の形状を求める。図5(B)に描かれた複数の点は、レーザー光の反射箇所を示している。
【0029】
スキャニング解析部26は、レーザー光を反射した物体の形状及び位置の情報を、距離センサー25から取得する。スキャニング解析部26は、その物体の形状が、平面視して予め設定された長さ以上の直線部を有するとき(即ち反射レーザー光に平面視して予め設定された長さ以上の直線部の情報があるのを検出したとき)、その物体が壁面であるのを検知する。
スキャニング解析部26は、レーザー光を反射した物体の位置と形状から距離センサー25(移動体12)と壁面の距離X、及びその壁面15に対するホディー部19の進行方向の角度θを求める。
【0030】
進行方向算出手段24は、壁面15と走行経路11の距離Lを記憶している。進行方向算出手段24は、スキャニング解析部26から距離Xの情報を取得して距離Xと距離Lの差分△Xを求めると共に、スキャニング解析部26から角度θの情報を取得する。進行方向算出手段24は、走行経路11から外れた場所を走行しているボディー部19を壁面15に沿って(即ち、走行経路11上を)進行させるため、△X及び角度θが共に0になるボディー部19の進行方向を算出する。走行制御手段21は、ボディー部19が進行方向算出手段24の算出結果に従って進行するように、駆動車輪17、17aを制御する。
【0031】
壁面15には、図5(A)に示すように、平面視して走行経路11との距離が一定となる直線部からなる領域と、図6(A)に示すように、突出している箇所、段差のある箇所等が存在する領域がある。
図6(A)、(B)に示すように、W1、W2及びW3は、スキャニング解析部26が反射レーザー光の情報から壁面であると判断する部分、即ち平面視して所定長さ以上の長さを有する直線部である。図6(A)にN1で示す領域では、壁面15が途切れている。図6(A)にN2及びN3で示す領域は、平面視して所定の長さより短い直線部からなり、スキャニング解析部26が壁面ではないと判断する部分である。
【0032】
スキャニング解析部26は、距離センサー25からの出力により、レーザー光の照射範囲のW1〜W3、N2及びN3に物体が存在することを検出する。スキャニング解析部26は、W1〜W3、N2及びN3から、壁面であると判断した部分、即ちW1〜W3のみを抽出する。スキャニング解析部26は、W1及びW2の各延長線上と距離センサー25とのそれぞれの距離Y1及びY2と、W3と距離センサー25の距離Y3を求める。
【0033】
Y1〜Y3が同一の値でないとき、スキャニング解析部26は、壁面15に走行経路11までの距離が異なる領域W1〜W3があるのを検知して、Y1〜Y3の平均値を算出する。スキャニング解析部26は、Y1〜Y3の平均値を壁面15と距離センサー25の距離Yとして導出し、進行方向算出手段24に送信する。進行方向算出手段24は、距離Yと記憶している距離Lの差分△Yを算出する。
なお、壁面15には、図6(A)に示すW1〜W3を含む箇所のように、走行経路11までの距離が一定でない箇所があり、このような箇所については、走行経路11とW1〜W3までの各距離の平均値から、進行方向算出手段24に記憶される距離Lが算出される。
【0034】
スキャニング解析部26は、W1〜W2の位置及び形状の情報からホディー部19の進行方向の、W1〜W3に対する角度φ1〜φ3をそれぞれ求め、角度φ1〜φ3の平均角度φを算出し、この角度φの情報を進行方向算出手段24に送信する。
進行方向算出手段24は、△Y及び角度φが0になり、ボディー部19が走行経路11上を進行するように、ボディー部19の進行を制御する。
【0035】
角度φは、角度φ1〜φ3の平均角であり、角度φが0度のときでも、厳密にはボディー部19が走行経路11上を走行しないこともあり得る。しかしながら、角度φが0度となるようにボディー部19の進行を制御することにより、ボディー部19は、実質的に走行経路11上を走行することになる。
画像解析手段14、走行制御手段21、進行方向算出手段24及びスキャニング解析部26は、例えば、マイクロコンピュータに搭載されたプログラム等からなり、そのマイクロコンピュータはボディー部19に内蔵されている。
【0036】
次に、ボディー部19(移動体12)が、図2に示すA地点、B地点、C地点及びD地点を結ぶ走行経路11上を自律走行する工程について説明する。
壁面15は走行経路11のA地点〜B地点の区間に沿って、走行経路11と間隔を有して配置され、壁面15aは、走行経路11のB地点〜D地点の区間に沿って、走行経路11と間隔を有して配置されている。
ボディー部19が自律走行するための事前準備として、オペレーターは、マニュアル操作等によって、ボディー部19を走行経路11上を移動させながら、走行経路11上の複数箇所で、撮像装置13による撮像を行う。撮像装置13によって撮像された画像は、画像解析手段14に記憶され、事前準備が完了する。
【0037】
A地点〜B地点及びC地点〜D地点の各区間では、進行方向算出手段24は、原則として、画像解析手段14からの出力値からボディー部19の進行方向を算出する。進行方向算出手段24は、画像解析手段14が実画像に対応する記憶画像を選択できない状態のときのみ、スキャニング解析部26の出力値をボディー部19の進行方向を算出するための入力として用いる。
画像解析手段14が実画像に対応する記憶画像を選択できない状態は、例えば、太陽光の影響から、同じ位置から撮像される画像が時間によって変化すること等により生じる。
【0038】
ボディー部19が、A地点〜B地点及びC地点〜D地点の各区間を進行している際に、画像解析手段14が実画像に対応する記憶画像を選択できなくなった場合、画像解析手段14は、画像の照合不可の信号を進行方向算出手段24に送信する。進行方向算出手段24は、画像解析手段14から画像の照合不可の信号を受け取ったとき、ボディー部19の進行方向を算出するための出力信号受信元をスキャニング解析部26に切り替える。画像解析手段14が実画像に対応する記憶画像を選択可能な状態になったとき、進行方向算出手段24の出力信号受信元は画像解析手段14に戻される。
【0039】
B地点〜C地点の区間は、進行方向に特徴となる物体が少なく、進行方向は直線的に続く経路に沿っているため、ボディー部19が進行しても、撮像装置13によって撮像される画像にほとんど変化がない場所である。進行方向算出手段24は、撮像装置13の撮像する画像に変化が少ないため、B地点〜C地点の区間のどの地点に自身が位置するのかの判定が困難である。
そのため、進行方向算出手段24は、B地点〜C地点の区間において、スキャニング解析部26の出力のみを参照して壁面15aに沿うようにボディー部19の進行方向を算出するよう予め設定されている。
【0040】
事前準備の段階で、B地点及びC地点から見た外環境が撮像され、この撮像された画像が画像解析手段14に記憶されている。壁面15はC地点で途切れており、C地点到達前後で撮像装置13の撮像する画像には大きな変化が生じる。
進行方向算出手段24は、画像解析手段14の実画像と記憶画像の比較によって、ボディー部19がB地点又はC地点を通過するのを検知したとき、ボディー部19の進行方向を算出するための出力信号受信元を、画像解析手段14から壁面検出手段16に、又は、壁面検出手段16から画像解析手段14に切り替える。
【0041】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、画像解析手段及び進行方向算出手段は、移動体に設けず、移動体とデータ通信が可能な装置に設けることができる。
例えば、実施の形態のB地点からC地点では、スキャニング解析部の出力から壁面が途切れていることを検知することで、C地点に到達したと判定する構成としてもよい。
また、移動体の前方の壁面の長さを検知して予め入力された情報と照合し、C地点に到達したと判定する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10:移動体システム、11:走行経路、12:移動体、13:撮像装置、14:画像解析手段、15、15a:壁面、16:壁面検出手段、17、17a:駆動車輪、18、18a:従動車輪、19:ボディー部、20:記憶画像、21:走行制御手段、22:特徴点、23:実画像、24:進行方向算出手段、25:距離センサー、26:スキャニング解析部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外環境を撮像する撮像装置が取付けられた移動体と、
前記撮像装置によって撮像する画像を、前記移動体の走行経路上で予め撮像しておいた画像と照合する画像解析手段と、
前記走行経路に沿って配置された壁面に対する前記移動体の向き、及び該壁面と該移動体の距離を検出する壁面検出手段と、
前記画像解析手段又は前記壁面検出手段からの出力によって、前記走行経路に対する前記移動体のずれ量を検知して、該移動体の、前記走行経路上を進行するための進行方向を算出する進行方向算出手段とを有することを特徴とする移動体システム。
【請求項2】
請求項1記載の移動体システムにおいて、前記画像解析手段は、前記撮像装置によって撮像された画像が前記走行経路上で予め撮像しておいた画像と照合できない画像照合不可の信号を前記進行方向算出手段に送信して、該進行方向算出手段の出力信号受信元が該画像解析手段から、前記壁面検出手段に切り替えられることを特徴とする移動体システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の移動体システムにおいて、前記壁面検出手段は、前記移動体からレーザー光を照射し、その反射レーザー光から前記壁面の位置を検知することを特徴とする移動体システム。
【請求項4】
請求項3記載の移動体システムにおいて、前記壁面検出手段は、前記反射レーザー光に平面視して予め設定された長さ以上の直線部の情報があるのを検出して、前記壁面を検知することを特徴とする移動体システム。
【請求項5】
請求項3又は4記載の移動体システムにおいて、前記壁面検出手段は、前記壁面に、平面視して前記走行経路までの距離が異なる領域があるのを検知したとき、該領域又は該領域の延長線上と前記移動体との平均距離を、前記壁面と該移動体の距離として導出することを特徴とする移動体システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−258065(P2011−258065A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133151(P2010−133151)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】